説明

コモンモードノイズフィルタ

【課題】信号の劣化を防ぐことができるコモンモードノイズフィルタを提供する。
【解決手段】第1のコイル導体15と接続された第1の引出用導体19と、前記第1のコイル導体15と対向する第2のコイル導体16と接続された第2の引出用導体20と、本体部の側面に設けられた第1〜第4の外部電極とを備え、前記第1の引出用導体19と第2の引出用導体20を、第1、第2のビア21、22と前記本体部の側面との間の一部分において上面視にて重なるようにするとともに、前記第1の引出用導体19と第2の引出用導体20とが上面視にて重なる部分の終端部25と前記本体部の側面との間は、前記終端部25と前記第3、第4の外部電極とを最短距離で結ぶような直線状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用されるコモンモードノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコモンモードノイズフィルタは、図5に示すように、第1〜第4の絶縁層1a〜1dの各々の上面に第1、第2の渦巻状導体2a、3aと、第1、第2の引出用導体2b、3bとを設け、そして第1の渦巻状導体2aと第1の引出用導体2bとをビア電極4aを介して接続することにより1つのコイルを形成するとともに、第2の渦巻状導体3aと第2の引出用導体3bとをビア電極4bを介して接続することにより他のコイルを形成し、さらに第2の引出用導体3bの上面と第1の絶縁層1aの下面に磁性体からなる第5の絶縁層5をそれぞれ設けていた。そして、第1、第2の引出用導体2b、3bの形状は、その外部電極(図示せず)とビア電極4a、4bとを最短距離で結ぶような直線状としたものである。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−150168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の高速デジタル信号伝送においては、信号の高速化に伴い伝送線路及びそこに使用される部品に対して、信号の反射、損失等によりデジタル信号が劣化しないようにインピーダンス整合が必要となっている。そして、伝送線路の伝送インピーダンスを規定する量として、特性インピーダンスが規定され、近年の高速差動信号データ伝送に用いられている伝送線路の特性インピーダンスは、一般に、USB2.0で90Ω±15%(76.5Ω〜103.5Ω)、HDMIで100Ω±15%(85Ω〜115Ω)となるように要求されている。すなわち、この伝送線路上に配置されるコモンモードノイズフィルタにおいても特性インピーダンスが前述の規定の範囲内であれば信号の反射、損失が少なく信号の劣化が防げる。そして、特性インピーダンスは√(L/C)に比例する(Lは伝送線路の単位長さあたりのコイルのインダクタンス値、Cは単位長さあたりのコイル間の容量)。
【0006】
しかしながら、上記した従来のコモンモードノイズフィルタにおいては、第1、第2の引出用導体2b、3b同士が上面視にて重ならないため、第1、第2の引出用導体2b、3b間の磁気結合が小さくなり、これにより、第1、第2の引出用導体2b、3bにおいて残留インダクタンス成分が増加してしまう。このため、特性インピーダンスが高くなるため、特性インピーダンスが規定の範囲内から外れてしまう場合があり、これにより、信号の劣化を防ぐことができない可能性があるという課題を有していた。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、信号の劣化が防げるコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0009】
本発明の請求項1に記載の発明は、第1のコイル導体と、前記第1のコイル導体と第1のビアを介して接続された第1の引出用導体と、前記第1のコイル導体と対向するように設けられた第2のコイル導体と、前記第2のコイル導体と第2のビアを介して接続された第2の引出用導体と、前記第1、第2のコイル導体、第1、第2の引出用導体を備えた複数の絶縁層と、これらを一体化した本体部と、前記本体部の側面に設けられ前記第1、第2のコイル導体、第1、第2の引出用導体のそれぞれと接続された第1〜第4の外部電極とを備え、前記第1の引出用導体と第2の引出用導体を、前記第1、第2のビアと前記本体部の側面との間の一部分において上面視にて重なるようにするとともに、前記第1の引出用導体と第2の引出用導体とが上面視にて重なる部分の終端部と前記本体部の側面との間は、前記終端部と前記第3、第4の外部電極とを最短距離で結ぶような直線状としたもので、この構成によれば、第1の引出用導体と第2の引出用導体の一部が上面視にて重なるため、第1、第2の引出用導体間の磁気結合が大きくなり、これにより、第1、第2の引出用導体における残留インダクタンス成分が減少する。この結果、特性インピーダンスが低くなるため、特性インピーダンスが規定の範囲内から外れてしまう可能性が減り、これにより、信号の劣化を防ぐことができるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明のコモンモードノイズフィルタは、第1の引出用導体と第2の引出用導体を、第1、第2のビアと本体部の側面との間の一部分において上面視にて重なるようにするとともに、前記第1の引出用導体と第2の引出用導体とが上面視にて重なる部分の終端部と本体部の側面との間は、前記終端部と第3、第4の外部電極とを最短距離で結ぶような直線状としているため、第1の引出用導体と第2の引出用導体の一部が上面視にて重なり、これにより、第1、第2の引出用導体間の磁気結合が大きくなるため、第1、第2の引出用導体における残留インダクタンス成分が減少する。この結果、特性インピーダンスが低くなるため、特性インピーダンスが規定の範囲内から外れてしまう可能性が減り、これにより、信号の劣化を防ぐことができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図2】同コモンモードノイズフィルタの斜視図
【図3】同コモンモードノイズフィルタの一部透過上面図
【図4】同コモンモードノイズフィルタと異なる構造を示す一部透過上面図
【図5】従来のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図、図2は同コモンモードノイズフィルタの斜視図である。
【0014】
本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタは、図1、図2に示すように、第1〜第3の非磁性層11〜13で形成された非磁性体部14と、この非磁性体部14の内部に形成された第1、第2のコイル導体15、16と、前記非磁性体部14の上方および下方にそれぞれ設けられた複数の磁性層17からなる磁性体部18と、前記非磁性体部14と磁性体部18の間に形成された第1、第2の引出用導体19、20と、第1、第2のコイル導体15、16と第1、第2の引出用導体19、20とそれぞれ接続する第1、第2のビア21、22を備えている。このような構成により、コモンモードノイズフィルタの本体部23が構成されるものである。
【0015】
上記構成において、前記第1〜第3の非磁性層11〜13は、Cu−Znフェライト、ガラスセラミックス等の非磁性材料によりシート状に構成されているもので、絶縁性を有している。また、この第1〜第3の非磁性層11〜13は、下から順に積層されて非磁性体部14を構成し、そして、第2の非磁性層12の厚みは、他の非磁性層11、13よりその厚みが厚くなっている。そしてまた、第1、第3の非磁性層11、13の所定位置にはそれぞれ第1、第2のビア21、22が形成されている。なお、この第1、第2のビア21、22は、第1の非磁性層11、第3の非磁性層13に貫通する孔をそれぞれ形成し、そして、この孔に銀等の導電体を充填することにより構成する。さらに、第1のビア21、第2のビア22は上面視にて互いに重なるように位置している。
【0016】
また、前記第1のコイル導体15は、第1の非磁性層11の上面に、銀等の導電材料を渦巻状にめっきすることにより形成されている。そして、第1の非磁性層11に形成された第1のビア21を介して第1の磁性層11の下面に形成された第1の引出用導体19と接続され、一つのコイルが構成される。そしてまた、前記第2のコイル導体16は、第2の非磁性層12の上面に銀等の導電材料を渦巻状にめっきすることにより形成されている。そして、第3の非磁性層13に形成された第2のビア22を介して第3の非磁性層13の上面に形成された第2の引出用導体20と接続され、他のコイルが構成される。
【0017】
さらに、前記第1のコイル導体15と第2のコイル導体16は第2の非磁性層12を介して上下方向に隣り合うように形成され、かつ前記第2のコイル導体16は、その大部分が第1のコイル導体15と第2の非磁性層12を介して上面視にて重なるように対向している。これにより、第1のコイル導体15と第2のコイル導体16は、互いに磁気的な影響を及ぼし合うため、第1のコイル導体15と第2のコイル導体16との間で磁気結合することになり、これにより、コモンモード成分のインピーダンスを大きくすることができる。
【0018】
そして、前記磁性層17は、Ni−Cu−Znフェライト等の磁性材料によりシート状に構成されているもので、絶縁性を有している。さらに、所定枚数の磁性層17で構成された磁性体部18を2つ設け、2つの磁性体部18の間に非磁性体部14が介在するように積層することにより、磁性層、非磁性層の集合体であるコモンモードノイズフィルタの本体部23が形成される。
【0019】
なお、全ての絶縁層11〜13、17は、磁性体で構成してもよい。また、絶縁層11〜13、17の枚数は、図1に記載された枚数に限定されるものではない。そして、第1のコイル導体15、第2のコイル導体16は、渦巻状ではなく、らせん状であってもよい。
【0020】
さらに、前記本体部23には、その両側面23a、23bに、図2に示すように、第1〜第4の外部電極24a、24b、24c、24dが設けられ、そしてこの第1〜第4の外部電極24a、24b、24c、24dはそれぞれ前記第1、第2のコイル導体15、16、第1、2の引出用導体19、20と接続されている。このとき、本体部23の一方の側面23aには、第1、第2のコイル導体15、16と接続された第1、第2の外部電極24a、24bが、本体部23の他方の側面23bには、第1、2の引出用導体19、20と接続された第3、第4の外部電極24c、24dが形成されている。なお、第1〜第4の外部電極24a、24b、24c、24dは、本体部23の側面23a、23bに銀を印刷することにより形成され、またこれらの表面にめっきによってニッケルめっき層を形成するとともに、このニッケルめっき層の表面にめっきによってすずやはんだ等の低融点金属めっき層を形成する。
【0021】
図3は、第1の引出用導体19と第2の引出用導体20を上面視したときの構成を示す図である。図3から明らかなように、第1の引出用導体19と第2の引出用導体20は、第1、第2のビア21、22と本体部23の側面23bとの間の途中の部分までは上面視にて重なり、第1の引出用導体19と第2の引出用導体20の重なる部分の終端部25(前記途中の部分)と本体部23の側面23bとの間は、終端部25と第3、第4の外部電極24c、24dとを最短距離で結ぶような直線状となり、両者は重ならない。すなわち、第1の引出用導体19と第2の引出用導体20は、第1、第2のビア21、22と本体部23の側面23bとの間で、上面視にて重なる部分と重ならない部分とからなる。そして、重なる部分は本体部23の側面23bよりも第1、第2のビア21、22の側に存在し、重ならない部分は、それぞれ当該重なる部分の終端部25で折れ曲がり、この重なる部分に対して斜めになっている。この結果、第1、第2の引出用導体19、20を上面から視るとY字形状となる。なお、図3では、説明を簡単にするために構成の一部を省略している。また、太線は第1の引出用導体19と第2の引出用導体20が重なっている部分、直線は第1の引出用導体19のみの部分、破線は第2の引出用導体20のみの部分を示す。
【0022】
ここで、第1、第2の引出用導体19、20が折れ曲がる終端部25は第1、第2のコイル導体15、16の最外部から2ターンか3ターン内側に入った部分であり、好ましくは、前記第1の引出用導体19と、第2の引出用導体20との上面視での重なりが、第1、第2のビア21、22と本体部23の側面23bとの間の距離の1/3〜2/3となるようにする。
【0023】
上記したように本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、第1の引出用導体19と第2の引出用導体20を、第1、第2のビア21、22と本体部23の側面23bとの間の一部分において上面視にて重なるようにするとともに、前記第1の引出用導体19と第2の引出用導体20とが上面視にて重なる部分の終端部25と本体部23の側面23bとの間は、前記終端部25と第3、第4の外部電極24c、24dとを最短距離で結ぶような直線状としているため、第1の引出用導体19と第2の引出用導体20の一部が上面視にて重なり、これにより、第1、第2の引出用導体19、20間の磁気結合が大きくなるため、第1、第2の引出用導体19、20における残留インダクタンス成分が減少する。この結果、特性インピーダンスが低くなるため、特性インピーダンスが規定の範囲内から外れてしまう可能性が減り、これにより、信号の劣化を防ぐことができるという効果が得られるものである。
【0024】
一方、図4に示すように、終端部25を本体部23の側面23b近傍に位置させて終端部25と第3、第4の外部電極24c、24dとの間の第1、第2の引出用導体19、20を略直線状になるようにして、本体部23の側面23b近傍まで第1の引出用導体19と第2の引出用導体20とが上面視にて重なるようにした(第1、第2の引出用導体19、20を上面から視るとT字形状となるようにした)場合、直流抵抗値が増加し、さらに、終端部25と第3、第4の外部電極24c、24dとの間における第1、第2の引出用導体19、20の略直線状となった部分と、第1、第2のコイル導体15、16の最外周の直線状となった部分とで上面視にて直線的に重なり、結合容量が増加して、コモンインピーダンスのピーク周波数が低周波側にシフトするため、周波数特性が悪くなってしまう。
【0025】
これに対し、本発明のように、第1の引出用導体19と第2の引出用導体20とが上面視にて重なるのが、第1、第2のビア21、22と本体部23の側面23bとの間の途中の部分までとすれば、直流抵抗値の増加を抑えつつ、特性インピーダンスが規定の範囲内から外れてしまう可能性を減らして、信号の劣化を防ぐことができ、さらに、第1、第2の引出用導体19、20と第1、第2のコイル導体15、16の最外周は上面視で交差するだけで直線的に重なることはないため、結合容量が増加することはなく、これにより、周波数特性の悪化を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係るコモンモードノイズフィルタは、信号の劣化を防ぐことができるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器のノイズ対策として使用されるコモンモードノイズフィルタ等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0027】
11 第1の非磁性層(絶縁層)
12 第2の非磁性層(絶縁層)
13 第3の非磁性層(絶縁層)
15 第1のコイル導体
16 第2のコイル導体
17 磁性層(絶縁層)
19 第1の引出用導体
20 第2の引出用導体
21 第1のビア
22 第2のビア
23 本体部
23a、23b 本体部の側面
24a、24b、24c、24d 第1〜第4の外部電極
25 終端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコイル導体と、前記第1のコイル導体と第1のビアを介して接続された第1の引出用導体と、前記第1のコイル導体と対向するように設けられた第2のコイル導体と、前記第2のコイル導体と第2のビアを介して接続された第2の引出用導体と、前記第1、第2のコイル導体、第1、第2の引出用導体を備えた複数の絶縁層と、これらを一体化した本体部と、前記本体部の側面に設けられ前記第1、第2のコイル導体、第1、第2の引出用導体のそれぞれと接続された第1〜第4の外部電極とを備え、前記第1の引出用導体と第2の引出用導体を、前記第1、第2のビアと前記本体部の側面との間の一部分において上面視にて重なるようにするとともに、前記第1の引出用導体と第2の引出用導体とが上面視にて重なる部分の終端部と前記本体部の側面との間は、前記終端部と前記第3、第4の外部電極とを最短距離で結ぶような直線状としたコモンモードノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−45784(P2013−45784A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180149(P2011−180149)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】