説明

コランダム型酸化スカンジウム結晶

【課題】
コランダム型構造を常温で保有する酸化スカンジウム結晶を実現することを課題とした。
【解決手段】
上記課題を解決するために、本発明の酸化スカンジウム結晶は、コランダム型構造を常温で保有することを特徴とする手段を採用した。
また、酸化スカンジウム結晶において、コランダム型構造が硫化ガドリニウム型構造から変性されたものであることを特徴とする手段を採用することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コランダム型構造を有する酸化スカンジウム結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1から3に示された高温高圧合成法では、B型希土類構造若しくはC型希土類構造を有する酸化スカンジウムの合成が確認されていた。
しかし、コランダム型構造を常圧で安定して保有するものは、得られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような実情に鑑み、コランダム型構造を常温で保有する酸化スカンジウム結晶を実現することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明1の酸化スカンジウム結晶は、コランダム型構造を常温で保有することを特徴とする。
発明2は、発明1の酸化スカンジウム結晶において、コランダム型構造が硫化ガドリニウム型構造から変性されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
生成したコランダム型酸化スカンジウムは数十ナノサイズの粒子径を有すると共に、従来のC型希土類構造よりより数%高い密度のものであった。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ダイヤモンドアンビルセル高圧装置の原理を示す概念図。
【図2】実施例でえられた酸化スカンジウム(Sc2O3)のX線回折図形。(a)コランダム型構造(実験No.4)(上段の縦棒は酸化スカンジウムの回折線の位置)、(b)C型希土類構造(実験No.2)、下段は金の回折線位置を示す。
【図3】コランダム型酸化スカンジウムの生成経路と各種結晶構造の比較を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
高圧下での構造が、硫化ガドリニウム(Gd2S3)型構造であるが、室温状態での減圧過程においてコランダム構造が安定化させたものを例示する。従来法より高い圧力の発生によりコランダム型構造の酸化スカンジウムの合成に成功した。
下記実施例より、加熱温度1200℃(50℃単位での測定値。以下同じ。)超で、かつ、圧力が18GPa以上であれば、本発明のコランダム型酸化スカンジウム結晶が得られることが明らかである。
【実施例1】
【0008】
ダイヤモンドアンビルセル高圧装置(図1)にC型希土類構造の酸化スカンジウム(Sc2O3)(以下、試料という。)を封入後、表1に示す圧力にて加圧し、この状態にて、赤外レーザーを照射し、表1に示す温度で、同表に示す時間、加熱する。
これにより高圧相の硫化ガドリニウム(Gd2S3)型構造の酸化スカンジウムを合成した。
その後、レーザーを遮断し、温度が30℃以下になった時点で、減圧して、常圧にすることにより、表1に示す構造を有する酸化スカンジウムを合成した(図2a)。
図3に示されるとおり、1300℃以上18GPa以上の高温高圧条件で、硫化ガドリニウム型を経由して、その後、減圧過程でコランダム型が生成する。温度圧力条件が、それ以下であれば、B型希土類型構造にとどまる。
表1に示されたとおり、圧力が18GPaに満たない場合、および温度が室温の場合は、コランダム型酸化スカンジウムは生成できない。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0009】
酸化アルミニウム同様のコランダム型構造をとることから、クロム(Cr)等の遷移金属元素やイットリビウム(Yb)等の希土類元素を添加することにより、蛍光特性を持つ物質になりうる。
C型希土類構造をもつYb:Sc2O3とは違う蛍光特性が期待される。
生成される形状がナノサイズ粒径であることから、塗布材として応用可能である。
C型希土類構造よりコランダム型構造のほうが3.5%密度が大きく硬質であることも予測できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of Geophysical Research, 74号 1969年6月15日,A.F.Reid, A.E.Ringwood
【非特許文献2】Journal of Solid State Chemistry, 89号 1990年, T.Atou, K.Kusaba, K.Fukuoka, M.Kikuchi, Y.Syono
【非特許文献3】American Institute for Physics Conference Proceedings, 309号 1994年, T.Atou, M.Kikuchi, K.Fukuoka, Y.Syono

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コランダム型構造を有する酸化スカンジウム結晶であって、コランダム型構造を常温で保有することを特徴とする酸化スカンジウム結晶。
【請求項2】
請求項1に記載の酸化スカンジウム結晶において、前記コランダム型構造が硫化ガドリニウム型構造から変性されたものであることを特徴とする酸化スカンジウム結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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