説明

コラーゲンの製造方法

【課題】動物組織からコラーゲンを未分解のまま、変性させずに効率よく回収し、化粧品、健康食品又は医薬品等の原料に適したコラーゲンを安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】コラーゲンの製造方法は、コラーゲンを含有する動物組織を少なくとも過酢酸を含む溶液に浸漬する工程と、浸漬後の動物組織を回収する工程とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンを含有する魚類、鳥類又は哺乳類等の軟骨組織等からコラーゲンを回収し、製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは真皮、骨または軟骨等に含まれるタンパク質であり、動物の細胞外マトリックスの主要構成成分である。コラーゲンは分子量10万程度のペプチド鎖が3本集まって水素結合により3重らせん構造を形成している。たとえば、骨や真皮に存在するI型コラーゲンはα1鎖2本とα2鎖1本とが3重らせん構造を形成しており、軟骨に多く存在するII型コラーゲンはα1鎖3本が3重らせん構造を形成している。コラーゲンは保湿機能を有し、生体内では軟骨に弾力性を与える機能や細胞間の情報伝達等のさまざまな機能を有していることから、化粧品や健康食品、医薬品等の原料として人気が高い。そのため、動物組織から効率的にコラーゲンを製造する方法の開発が行われている。
【0003】
コラーゲンを含有する動物組織、たとえば軟骨組織には総タンパク質が約3%、糖質(糖タンパク質であるプロテオグリカン)が約2%、そして脂質が約1%含まれており、残りの約94%は水分として保持されている。この軟骨組織から有機溶剤(アセトン、ヘキサン、エタノール等)で脂質を除去し、乾燥した軟骨組織(脱脂軟骨)に含まれる総タンパク質の割合は約60%であり、そのうち70〜80%がコラーゲン(II型コラーゲン)である。また、この脱脂軟骨には、コラーゲンの他に、プロテオグリカンが約30〜35%、脂質が約0.1%含まれている。このように、軟骨組織にはコラーゲンだけでなく、プロテオグリカンも多く存在しており、さらには、このプロテオグリカンはコラーゲンと結合した状態で存在している。したがって、コラーゲンを動物組織から選択的に抽出して、コラーゲンを製造する方法が開発されている。
【0004】
特許文献1には、ペプシンやパパイン等の酵素で動物組織を2〜4回多段的に処理してコラーゲンを抽出する方法が記載されている。また、特許文献2には、30w/v%の水酸化ナトリウム溶液と30%の過酸化水素水とで動物組織を処理してコラーゲンを得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−327599号公報
【特許文献2】特開2006−213624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された酵素処理によりコラーゲンを抽出する方法では、添加された酵素によりコラーゲン自身が分解されたり、酵素そのものもタンパク質であることから、コラーゲンの純度が低くなるという問題があった。たとえば、医薬品の一次原料は高純度であり、単一の成分であることが望ましいとされている。さらに、酵素を多段的に使用するため、工程が煩雑であると共にコストが高くなるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載された30w/v%の水酸化ナトリウム溶液と30%の過酸化水素水とで動物組織を処理する方法では、タンパク質であるコラーゲンが、これら高濃度のアルカリ剤及び酸化剤によって変性したり、分解してしまうという問題が生じていた。そのため、もともと非変性の状態又は未分解の状態でコラーゲンが有していた機能が失われてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上述した点に鑑み案出されたもので、その目的は、動物組織からコラーゲンを未分解のまま、変性させずに効率よく回収し、健康食品、医薬品又は化粧品等の原料に適したコラーゲンを安価に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、過酢酸を用いて動物組織を処理することで、コラーゲンを未分解のまま、変性させずに動物組織から効率よく回収できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明のコラーゲンの製造方法は、コラーゲンを含有する動物組織を、少なくとも過酢酸を含む溶液に浸漬する工程と、浸漬後の動物組織を回収する工程とを含んでいる。
【0011】
動物組織を少なくとも過酢酸を含む溶液に浸漬することにより、動物組織中でコラーゲンに結合していたプロテオグリカンが、動物組織から高い割合で除去される。具体的には、過酢酸は酸化剤として作用することから、過酢酸が動物組織、たとえば軟骨組織の軟骨基質に存在するプロテオグリカンとII型コラーゲンとの結合を切断するか、プロテオグリカンを抽出し易い状態にする等して、プロテオグリカンを過酢酸溶液に移動させるように作用すると考えられる。さらに、動物組織中に含まれる脂質成分等も動物組織から過酢酸溶液に移動して、動物組織から除去される。その際、コラーゲンは過酢酸溶液に抽出されず、未分解のまま、変性せずに動物組織側に留まる。それゆえ、浸漬後の動物組織を回収することにより、コラーゲンを効率よく得ることができる。また、過酢酸は殺菌剤としても作用することから、プロテオグリカンを除去すると同時に、動物組織中に含まれる細菌やウイルスを排除し、コラーゲンを無菌的な状態とすることができる。さらに、過酢酸は溶液中で酢酸と過酸化水素とに分解し、過酸化水素はさらに水と酸素に分解されるため、人体に対する安全性が高い。それゆえ、安全性が高く、経口摂取可能なコラーゲンを製造することができる。
【0012】
また、溶液の過酢酸の濃度は、1×10−4重量%〜2重量%であることが好ましい。過酢酸の溶液中の濃度を1×10−4重量%〜2重量%とすることで、好適にプロテオグリカンを動物組織から除去する溶液中の過酢酸の濃度が選択される。
【0013】
なお、本発明における過酢酸の濃度とは、溶液に動物組織の浸漬を開始した時点の濃度のことをいう。過酢酸は時間の経過や反応に伴って、酢酸と過酸化水素に分解されるため、動物組織の溶液への浸漬後、過酢酸の濃度は徐々に減少する。
【0014】
また、溶液には、酢酸と過酸化水素とがさらに含まれる。溶液には過酢酸原料に含まれている平衡過酢酸組成物として、酢酸と過酸化水素とが含まれ得る。そして、過酢酸の分解物としての酢酸と過酸化水素も含まれ得る。酢酸は食品にも使用される物質であり、過酸化水素は水と酸素に分解されることから安全性が高い。それゆえ、安全性が高く、経口摂取可能なコラーゲンを製造することができる。
【0015】
また、浸漬後の動物組織を回収する工程には、浸漬後の動物組織と溶液との混合物を遠心分離し、沈殿物を回収することが含まれる。浸漬後の動物組織と溶液との混合物を遠心分離することで、コラーゲンを高濃度で含む動物組織とプロテオグリカンの抽出溶液とを簡便に分離し、コラーゲンを高濃度で含む沈殿物を回収することができる。
【0016】
また、コラーゲンを含有する動物組織は、魚類、軟体動物、鳥類若しくは哺乳類の軟骨組織又は魚類、軟体動物、鳥類若しくは哺乳類の皮であることが好ましい。これら軟骨組織や皮はコラーゲンを多量に含み、食品加工の分野では通常廃棄される部位であるため、低コストのコラーゲンを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下のような優れた効果を有するコラーゲンの製造方法を提供することができる。
(1)安全性が高く、経口摂取可能なコラーゲンを高効率かつ簡単な工程で動物組織から製造することができる。
(2)動物組織から細菌やウイルスを排除して無菌的にコラーゲンを得ることができる。
(3)コラーゲンを未分解のまま、変性させずに3重らせん構造を維持した高分子のタンパク質として得ることができる。
(4)加工食品分野で従来廃棄処分されてきた魚類、鳥類又は哺乳類などの軟骨組織等から健康食品、医薬品又は化粧品の原料に適したコラーゲンを安価に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のコラーゲンの製造方法は、動物組織を過酢酸溶液に浸漬して動物組織からプロテオグリカンを除去する工程と、コラーゲンが高濃度で含まれる動物組織を回収する工程とからなる。以下詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明の出発原料として用いられるコラーゲンを含む動物組織について説明する。本発明で用いる動物組織としては、コラーゲンを含有していればよいが、コラーゲンを多量に含み、食品加工の分野で通常廃棄される部位として安価に入手可能である観点から、魚類、軟体動物、鳥類若しくは哺乳類の軟骨組織又は魚類、軟体動物、鳥類若しくは哺乳類の皮が好ましい。これらの組織にはII型コラーゲンが多量に含まれる。特に限定されないが、魚類の軟骨組織としてはサケの鼻軟骨(氷頭)、エイの軟骨又はサメの軟骨、鳥類の軟骨組織としては、鶏の胸軟骨若しくは膝軟骨、哺乳類の軟骨組織としては、ウシの喉軟骨若しくは気管支軟骨又はクジラの軟骨等が好ましく、魚類の軟骨組織であるサケの鼻軟骨又はエイの軟骨がより好ましい。なお、本発明において軟骨組織とは、硝子軟骨、弾性軟骨若しくは線維軟骨をはじめ、軟骨基質、軟骨細胞又は軟骨膜等を有する組織のことをいい、軟骨周辺部位の組織も含まれる。
【0020】
上述した軟骨組織等の動物組織は、動物種や部位毎に処理することもできるが、動物種や部位に関係なく混合して処理することもできる。これらの動物組織は、プロテオグリカンの除去率を高めるために、ミートチョッパー等の破砕手段を用いて予め破砕しておくことが好ましい。さらに、動物組織の脂質に含まれる特有の臭いを除去するために、動物組織に含まれる脂質を予め除去しておくことも好ましい。これらの処理は例えば、細かく破砕した動物組織にエタノール又はアセトン等の有機溶媒を加えて脂質を有機溶媒に抽出させ、有機溶媒を除去することによって行われる。
【0021】
次に、本発明で動物組織を浸漬させる過酢酸を含む溶液について説明する。この過酢酸溶液に含まれる過酢酸の濃度は、動物組織の浸漬を開始した時点において、1×10−5重量%〜3重量%であることが好ましく、効率よくプロテオグリカンを除去する観点及び動物組織中に含まれる細菌やウイルスを確実に排除して、無菌状態のコラーゲンを得る観点から、1×10−4重量%〜2重量%であることがより好ましい。過酢酸は反応に伴って酢酸と過酸化水素に分解されるため、動物組織を溶液に浸漬した後は、過酢酸の濃度は徐々に減少する。
【0022】
本発明の過酢酸を含む溶液を調製するにあたり、過酢酸原料としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製の過酢酸(過酢酸濃度36〜42重量%)、メルク株式会社製の過酢酸38〜40%(過酢酸濃度38〜40%)、シグマアルドリッチ社製の過酢酸溶液(過酢酸濃度39%)、ADEKAクリーンエイド株式会社製のデオメイトPA(過酢酸濃度6〜9%)又はテックP−10(過酢酸濃度9〜10%)等が挙げられる。これらの過酢酸原料を所定の過酢酸濃度となるように、水で希釈して本発明の過酢酸溶液を作成する。また、これらの過酢酸原料は、単独で使用することもできるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0023】
本発明の過酢酸溶液には、過酢酸の他に酢酸と過酸化水素とがさらに含まれ得る。過酢酸原料には過酢酸の分解を抑制するため、通常、酢酸と過酸化水素とが含まれている。例えば、三菱ガス化学株式会社製の過酢酸(過酢酸濃度36〜42重量%)には、酢酸が38〜45重量%、過酸化水素が4〜6重量%含まれている。それゆえ、本発明の溶液には過酢酸原料中に含まれる平衡過酢酸組成物である、酢酸と過酸化水素とが含まれ得る。そして、過酢酸溶液には、過酢酸の分解物である酢酸と過酸化水素も含まれ得る。本発明の過酢酸溶液に含まれる酢酸濃度としては、好適な過酢酸濃度との関係から、1×10−5重量%〜3重量%であることが好ましく、1×10−4重量%〜2重量%であることがより好ましい。また、過酸化水素濃度としては、好適な過酢酸濃度との関係から、1×10−6重量%〜1重量%であることが好ましく、1×10−5重量%〜0.2重量%であることがより好ましい。
【0024】
本発明の過酢酸溶液には、人体に対する安全性が確保され、プロテオグリカンの除去及びコラーゲンを変性や分解させない範囲において、過酢酸の安定剤等その他の物質がさらに含まれていてもよい。
【0025】
次に、動物組織を過酢酸溶液に浸漬する工程について説明する。浸漬に用いる過酢酸溶液の量は特に限定されないが、動物組織(未処理の状態)1重量部に対して過酢酸溶液2〜15重量部が好ましく、十分に動物組織を過酢酸溶液に浸漬させるために、4〜12重量部がより好ましく、6〜12重量部が特に好ましい。浸漬の際には、コラーゲンの回収純度を高めるために、動物組織と過酢酸溶液とを充分に接触させるべく、スターラーやミキサー等を用いて溶液を攪拌させることが好ましい。
【0026】
動物組織の過酢酸溶液の浸漬温度は、コラーゲンの分解及び変性を防ぐ観点から、0℃超〜20℃以下が好ましく、4℃〜15℃がより好ましい。また、浸漬時間は1時間以上が好ましく、プロテオグリカンを確実に動物組織から除去する観点及び動物組織中に含まれる細菌やウイルスを排除する観点から、3時間以上がより好ましく、6時間以上が特に好ましい。
【0027】
この工程において、動物組織中に含まれるプロテオグリカンは、過酢酸の作用により過酢酸溶液中に効率よく抽出され、動物組織から除去される。さらに、動物組織中に含まれる脂質成分等も動物組織から過酢酸溶液に移動して動物組織から除去される。それゆえ、浸漬後の動物組織には高純度のコラーゲンが含まれる。ここで、コラーゲンは分子量10万程度のペプチド鎖が3本集まって3重らせん構造を形成しているタンパク質であるところ、一般にタンパク質は熱やアルカリ、酸等により変性又は分解しやすい性質を有している。しかし、本発明の過酢酸溶液による浸漬工程においては、コラーゲンは殆ど分解されず、3重らせん構造を維持した非変性状態である。
【0028】
さらに、動物組織を過酢酸溶液に浸漬する工程においては、溶液中の過酢酸の作用により、動物組織中に含まれる細菌やウイルスが排除され、コラーゲンを無菌的に回収することができる。これまで動物組織からコラーゲンを製造する際、殺菌処理が必要とされる場合には、加熱殺菌処理によってコラーゲンは熱変性してしまい、本来の非変性状態での機能が失われてしまっていた。本発明においては、コラーゲンを未分解のまま、変性させずに殺菌処理を行うことができる。このように、本発明のコラーゲンの製造方法は、動物組織からプロテオグリカンを除去してコラーゲンの回収を行う際に同時に細菌及びウイルスの排除も行うことができるため、非常に簡便であり、健康食品、医薬品又は化粧品の原料に適したコラーゲンを安価に製造することができる。
【0029】
次に、過酢酸溶液に浸漬した後の動物組織を回収する工程について説明する。浸漬後の動物組織には、プロテオグリカンが除去された結果、コラーゲンが不溶物として高純度で含まれている。したがって、この浸漬後の動物組織を回収することにより、コラーゲンを得ることができる。ここで、浸漬後の動物組織と溶液との混合物には、コラーゲンを高濃度で含む浸漬後の動物組織の他、プロテオグリカンを含む溶液や動物組織由来の脂質成分が含まれる。よって、浸漬後の動物組織と溶液との混合物について遠心分離処理又は濾過処理等を行って、コラーゲンを含む浸漬後の動物組織をその他の成分から分離して回収することが好ましく、簡便に分離回収が可能である観点から、遠心分離処理を行うことがより好ましい。浸漬後の動物組織と溶液との混合物を遠心分離すると、下層には主にコラーゲンからなる浸漬後の動物組織による沈殿が形成され、上層には動物組織由来の油脂層が形成され、その間の中間層にはプロテオグリカンが抽出された液層が形成される。このうち、下層の沈殿物を回収することによりコラーゲンが得られる。
【0030】
動物組織からのコラーゲンの回収量は、例えば、アミノ酸自動分析法でヒドロキシプロリンを定量し、原料由来別のコラーゲン換算係数を使用して算出することで分析することができる。具体的には、原料が魚類であった場合、その計算式は、コラーゲン(%)=ヒドロキシプロリン量(g/100g)×12.51(フィッシュコラーゲンの換算係数)である。
【0031】
本発明により回収された浸漬後の動物組織は、コラーゲンとして健康食品、医薬品又は化粧品の原料に使用することができる。この浸漬後の動物組織からなるコラーゲンは、精製前においても高純度であるが、用途に合わせてさらなる精製処理を施すこともできる。特に限定されないが、たとえば、回収した浸漬後の動物組織を蒸留水などで懸濁して洗浄し、遠心分離処理を行った後に沈殿物を回収することで精製することができる。さらに、エタノール又はアセトン等の有機溶媒を加えて洗浄したのち、有機溶媒を除去することで、コラーゲンに残存する動物組織由来の脂質成分と水分とを取り除くことも可能である。他方、本発明により得られたこれらのコラーゲンは、真空凍結乾燥又は減圧乾燥処理によって粉末状とすることができる。
【0032】
以下、実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0033】
本実施例においては、コラーゲンを含有する動物組織として、シロサケの鼻軟骨を選択した。−40℃で保管したシロサケの頭部から鼻軟骨を摘出して、電動ミートチョッパーで細かく破砕し、ミンチ状の破砕物を得た。他方、2L容量の容器に4℃に冷却した蒸留水799.92gを準備し、濃度が36〜42重量%の過酢酸(三菱ガス化学株式会社製品)0.08gを添加して過酢酸溶液800gを作成した。過酢酸溶液作成時に過酢酸溶液中に含まれる過酢酸由来の成分濃度は、過酢酸が0.0036〜0.0042重量%、酢酸が0.0038〜0.0045重量%及び過酸化水素が0.0004〜0.0006重量%であった(過酢酸製品濃度からの計算値)。この過酢酸溶液にシロサケ鼻軟骨の破砕物100gを入れ、スターラーで攪拌しつつ4℃で24時間浸漬処理を行った。
【0034】
浸漬処理後、遠心分離機(日立工機株式会社製、型番CF7D2)を用いて、浸漬後の動物組織と過酢酸溶液の混合物を7000rpmで15分間遠心分離を行い、油脂相等を避け、コラーゲンを含む沈殿物(SS分)を回収した。次に、回収した沈殿物に沈殿物の約10倍重量の蒸留水を加えて攪拌して洗浄を行った。洗浄後、遠心分離して水分を除いてから凍結乾燥処理を行い、コラーゲンの固形粉末を得た。
【0035】
次に、得られた固形粉末の乾燥重量を測定した。測定は、得られた固形粉末を定温乾燥器(株式会社三商製、SDN27)で105℃で16時間乾燥させ、完全に水分を蒸発させた後、残った固形分を電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、GX−10K)で精密に測定することにより行われた。その結果、100gのシロサケ鼻軟骨の破砕物から3.5gの乾燥固形分を得ることができ、収率は3.5%であった。
【0036】
他方、コラーゲンの固形粉末中のアミノ酸量をアミノ酸自動分析装置(日立製作所社製、L−8500型)を用いて定量し、コラーゲン量を算出した。この結果、固形粉末中のコラーゲン量(ヒドロキシプロリンg/100g×12.1(フィッシュコラーゲンの換算係数))は、82.1%であった。
【0037】
さらに、得られたコラーゲンの固形粉末について、DSC(示差走査熱量測定)により、タンパク質の熱変性温度を測定した。もし、得られたコラーゲンが変性していた場合、吸熱反応ピークが現れないか、ピークがブロードになり変性温度の判定が出来ない。測定した結果、45℃で吸熱反応ピークが得られた。この結果より、本実施例で得られたコラーゲンは、三重らせん構造を維持した非変性のコラーゲンであることがわかった。
【0038】
また、得られたコラーゲンの固形粉末について、微生物検査を行った結果、一般細菌数は300個/g以下、大腸菌群は陰性であった。
【実施例2】
【0039】
本実施例においては、コラーゲンを含有する動物組織として、実施例1と同様にシロサケの鼻軟骨を選択した。−40℃で保管したシロサケの頭部から鼻軟骨を摘出して、電動ミートチョッパーで細かく破砕し、ミンチ状の破砕物を得た。この破砕物をアセトンに浸漬させて脱脂及び脱水を行ったのち、減圧乾燥させて試料を得た。他方、3L容量の容器に10℃に冷却した蒸留水1678.32gを準備し、濃度が36〜42重量%の過酢酸(三菱ガス化学株式会社製品)1.68gを添加して過酢酸溶液1680gを作成した。過酢酸溶液作成時に過酢酸溶液中に含まれる過酢酸由来の成分濃度は、過酢酸が0.036〜0.042重量%、酢酸が0.038〜0.045重量%及び過酸化水素が0.004〜0.006重量%であった(過酢酸製品濃度からの計算値)。この過酢酸溶液にシロサケ鼻軟骨の減圧乾燥試料12gを入れ、スターラーで攪拌しつつ10℃で48時間浸漬処理を行った。
【0040】
浸漬処理後、遠心分離機(日立工機株式会社製、型番CF7D2)を用いて、浸漬後の動物組織と過酢酸溶液の混合物を7000rpmで15分間遠心分離を行い、油脂相等を避け、コラーゲンを含む沈殿物(SS分)を回収した。次に、回収した沈殿物に沈殿物の約10倍重量の蒸留水を加えて攪拌して洗浄を行った。洗浄後、遠心分離して水分を除いてから凍結乾燥処理を行い、コラーゲンの固形粉末を得た。
【0041】
次に、得られた固形粉末の乾燥重量を測定した。測定は、得られた固形粉末を定温乾燥器(株式会社三商製、SDN27)で105℃で16時間乾燥させ、完全に水分を蒸発させた後、残った固形分を電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、GX−10K)で精密に測定することにより行われた。その結果、12gのシロサケ鼻軟骨の破砕物から3.6gの乾燥固形分を得ることができ、収率は30%であった。
【0042】
他方、コラーゲンの固形粉末中のアミノ酸量をアミノ酸自動分析装置(日立製作所社製、L−8500型)を用いて定量し、コラーゲン量を算出した。この結果、固形粉末中のコラーゲン量(ヒドロキシプロリンg/100g×12.1(フィッシュコラーゲンの換算係数))は、79.3%であった。
【0043】
さらに、得られたコラーゲンの固形粉末について、DSC(示差走査熱量測定)により、タンパク質の熱変性温度を測定した。もし、得られたII型コラーゲンが変性していた場合、吸熱反応ピークが現れないか、ピークがブロードになり変性温度の判定が出来ない。測定した結果、45℃で吸熱反応ピークが得られた。この結果より、本実施例で得られたコラーゲンは、三重らせん構造を維持した非変性のコラーゲンであることがわかった。
【0044】
また、得られたコラーゲンの固形粉末について、微生物検査を行った結果、一般細菌数は300個/g以下、大腸菌群は陰性であった。
【実施例3】
【0045】
本実施例においては、コラーゲンを含有する動物組織として、実施例1〜2と同様にシロサケの鼻軟骨を選択した。−40℃で保管したシロサケの頭部から鼻軟骨を摘出して、電動ミートチョッパーで細かく破砕し、ミンチ状の破砕物を得た。この破砕物をエタノールに浸漬させて脱脂及び脱水を行ったのち、減圧乾燥させて試料を得た。他方、3L容量の容器に9℃に冷却した蒸留水1678.82gを準備し、濃度が36〜42重量%の過酢酸(三菱ガス化学株式会社製品)1.18gを添加して過酢酸溶液1680gを作成した。過酢酸溶液作成時に過酢酸溶液中に含まれる過酢酸由来の成分濃度は、過酢酸が0.025〜0.029重量%、酢酸が0.027〜0.032重量%及び過酸化水素が0.003〜0.004重量%であった(過酢酸製品濃度からの計算値)。この過酢酸溶液にシロサケ鼻軟骨の減圧乾燥試料12gを入れ、スターラーで攪拌しつつ9℃で48時間浸漬処理を行った。
【0046】
浸漬処理後、遠心分離機(日立工機株式会社製、型番CF7D2)を用いて、浸漬後の動物組織と過酢酸溶液の混合物を7000rpmで15分間遠心分離を行い、油脂相等を避け、コラーゲンを含む沈殿物(SS分)を回収した。次に、回収した沈殿物に沈殿物の約10倍重量の蒸留水を加えて攪拌して洗浄を行った。洗浄後、遠心分離して水分を除いてから凍結乾燥処理を行い、コラーゲンの固形粉末を得た。
【0047】
次に、得られた固形粉末の乾燥重量を測定した。測定は、得られた固形粉末を定温乾燥器(株式会社三商製、SDN27)で105℃で16時間乾燥させ、完全に水分を蒸発させた後、残った固形分を電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、GX−10K)で精密に測定することにより行われた。その結果、12gのシロサケ鼻軟骨の破砕物から3.6gの乾燥固形分を得ることができ、収率は30%であった。
【0048】
他方、コラーゲンの固形粉末中のアミノ酸量をアミノ酸自動分析装置(日立製作所社製、L−8500型)を用いて定量し、コラーゲン量を算出した。この結果、固形粉末中のコラーゲン量(ヒドロキシプロリンg/100g×12.1(フィッシュコラーゲンの換算係数))は、77.9%であった。
【0049】
さらに、得られたコラーゲンの固形粉末について、DSC(示差走査熱量測定)により、タンパク質の熱変性温度を測定したところ44℃で吸熱反応ピークが得られた。この結果より、本実施例で得られたコラーゲンは、三重らせん構造を維持した非変性のコラーゲンであることがわかった。
【0050】
また、得られたコラーゲンの固形粉末について、微生物検査を行った結果、一般細菌数は300個/g以下、大腸菌群は陰性であった。
【実施例4】
【0051】
本実施例においては、コラーゲンを含有する動物組織として、実施例1〜3と同様にシロサケの鼻軟骨を選択した。実施例2と同様の内容でシロサケの鼻軟骨を破砕してアセトン処理を施し、減圧乾燥させて試料を得た。他方、3L容量の容器に6℃に冷却した蒸留水1677.98gを準備し、濃度が36〜42重量%の過酢酸(三菱ガス化学株式会社製品)2.02gを添加して過酢酸溶液1680gを作成した。過酢酸溶液作成時に過酢酸溶液中に含まれる過酢酸由来の成分濃度は、過酢酸が0.043〜0.050重量%、酢酸が0.046〜0.054重量%及び過酸化水素が0.005〜0.007重量%であった(過酢酸製品濃度からの計算値)。この過酢酸溶液にシロサケ鼻軟骨の減圧乾燥試料12gを入れ、スターラーで攪拌しつつ6℃で24時間浸漬処理を行った。
【0052】
浸漬処理後、遠心分離機(日立工機株式会社製、型番CF7D2)を用いて、浸漬後の動物組織と過酢酸溶液の混合物を7000rpmで15分間遠心分離を行い、油脂相等を避け、コラーゲンを含む沈殿物(SS分)を回収した。次に、回収した沈殿物に沈殿物の約8倍重量の蒸留水を加えて攪拌して洗浄を行った。洗浄後、遠心分離して水分を除いた沈殿物に3倍量のエタノールを添加して30分間攪拌混合した。30分後、濾過処理により固液分離を行い、濾過後の固形物を減圧乾燥させてコラーゲンの固形粉末を得た。
【0053】
次に、得られた固形粉末の乾燥重量を測定した。測定は、得られた固形粉末を定温乾燥器(株式会社三商製、SDN27)で105℃で16時間乾燥させ、完全に水分を蒸発させた後、残った固形分を電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、GX−10K)で精密に測定することにより行われた。その結果、12gのシロサケ鼻軟骨の破砕物から3.2gの乾燥固形分を得ることができ、収率は26.7%であった。
【0054】
他方、コラーゲンの固形粉末中のアミノ酸量をアミノ酸自動分析装置(日立製作所社製、L−8500型)を用いて定量し、コラーゲン量を算出した。この結果、固形粉末中のコラーゲン量(ヒドロキシプロリンg/100g×12.1(フィッシュコラーゲンの換算係数))は、84.5%であった。
【0055】
さらに、得られたコラーゲンの固形粉末について、DSC(示差走査熱量測定)により、タンパク質の熱変性温度を測定した。もし、得られたコラーゲンが変性していた場合、吸熱反応ピークが現れないか、ピークがブロードになり変性温度の判定が出来ない。測定した結果、43℃で吸熱反応ピークが得られた。この結果より、本実施例で得られたコラーゲンは、三重らせん構造を維持した非変性のコラーゲンであることがわかった。
【0056】
また、得られたコラーゲンの固形粉末について、微生物検査を行った結果、一般細菌数は300個/g以下、大腸菌群は陰性であった。
【実施例5】
【0057】
本実施例においては、コラーゲンを含有する動物組織として、実施例1〜4と同様にシロサケの鼻軟骨を選択した。実施例2及び4と同様の内容でシロサケの鼻軟骨を破砕してアセトン処理を施し、減圧乾燥させて試料を得た。他方、3L容量の容器に12℃に冷却した蒸留水1629.6gを準備し、濃度が36〜42重量%の過酢酸(三菱ガス化学株式会社製品)50.4gを添加して過酢酸溶液1680gを作成した。過酢酸溶液作成時に過酢酸溶液中に含まれる過酢酸由来の成分濃度は、過酢酸が1.08〜1.26重量%、酢酸が1.14〜1.35重量%及び過酸化水素が0.12〜0.18重量%であった(過酢酸製品濃度からの計算値)。この過酢酸溶液にシロサケ鼻軟骨の減圧乾燥試料12gを入れ、スターラーで攪拌しつつ12℃で6時間浸漬処理を行った。
【0058】
浸漬処理後、遠心分離機(日立工機株式会社製、型番CF7D2)を用いて、浸漬後の動物組織と過酢酸溶液の混合物を7000rpmで15分間遠心分離を行い、油脂相等を避け、コラーゲンを含む沈殿物(SS分)を回収した。次に、回収した沈殿物に沈殿物の約10倍重量の蒸留水を加えて攪拌して洗浄を行った。洗浄後、遠心分離して水分を除いてから凍結乾燥処理を行い、コラーゲンの固形粉末を得た。
【0059】
次に、得られた固形粉末の乾燥重量を測定した。測定は、得られた固形粉末を定温乾燥器(株式会社三商製、SDN27)で105℃で16時間乾燥させ、完全に水分を蒸発させた後、残った固形分を電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、GX−10K)で精密に測定することにより行われた。その結果、12gのシロサケ鼻軟骨の減圧乾燥試料から4.2gの乾燥固形分を得ることができ、収率は35.0%であった。
【0060】
他方、コラーゲンの固形粉末中のアミノ酸量をアミノ酸自動分析装置(日立製作所社製、L−8500型)を用いて定量し、コラーゲン量を算出した。この結果、固形粉末中のコラーゲン量(ヒドロキシプロリンg/100g×12.1(フィッシュコラーゲンの換算係数))は、53.2%であった。
【0061】
さらに、得られたII型コラーゲンの固形粉末について、DSC(示差走査熱量測定)により、タンパク質の熱変性温度を測定したところ44.5℃で吸熱反応ピークが得られた。この結果より、本実施例で得られたII型コラーゲンは、三重らせん構造を維持した非変性のコラーゲンであることがわかった。
【0062】
また、得られたコラーゲンの固形粉末について、微生物検査を行った結果、一般細菌数は300個/g以下、大腸菌群は陰性であった。
【実施例6】
【0063】
本実施例においては、コラーゲンを含有する動物組織として、実施例1〜5と同様にシロサケの鼻軟骨を選択した。実施例2等と同様の内容でシロサケの鼻軟骨を破砕してアセトン処理を施し、減圧乾燥させて試料を得た。他方、3L容量の容器に7℃に冷却した蒸留水1678.32gを準備し、濃度が約10重量%の過酢酸(ADEKAクリーンエイド株式会社製、テックP−10)1.68gを添加して過酢酸溶液1680gを作成した。過酢酸溶液作成時に過酢酸溶液中に含まれる過酢酸由来の成分濃度は、過酢酸が0.009〜0.010重量%、酢酸が0.015〜0.017重量%及び過酸化水素が0.019〜0.021重量%であった(過酢酸製品濃度からの計算値)。この過酢酸溶液にシロサケ鼻軟骨の減圧乾燥試料12gを入れ、スターラーで攪拌しつつ7℃で24時間浸漬処理を行った。
【0064】
浸漬処理後、遠心分離機(日立工機株式会社製、型番CF7D2)を用いて、浸漬後の動物組織と過酢酸溶液の混合物を7000rpmで15分間遠心分離を行い、油脂相等を避け、コラーゲンを含む沈殿物(SS分)を回収した。次に、回収した沈殿物に沈殿物の約10倍重量の蒸留水を加えて攪拌して洗浄を行った。洗浄後、遠心分離して水分を除いてから凍結乾燥処理を行い、コラーゲンの固形粉末を得た。
【0065】
次に、得られた固形粉末の乾燥重量を測定した。測定は、得られた固形粉末を定温乾燥器(株式会社三商製、SDN27)で105℃で16時間乾燥させ、完全に水分を蒸発させた後、残った固形分を電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、GX−10K)で精密に測定することにより行われた。その結果、12gのシロサケ鼻軟骨の減圧乾燥試料から3.6gの乾燥固形分を得ることができ、収率は30.0%であった。
【0066】
他方、コラーゲンの固形粉末中のアミノ酸量をアミノ酸自動分析装置(日立製作所社製、L−8500型)を用いて定量し、コラーゲン量を算出した。この結果、固形粉末中のコラーゲン量(ヒドロキシプロリンg/100g×12.1(フィッシュコラーゲンの換算係数))は、78.2%であった。
【0067】
さらに、得られたコラーゲンの固形粉末について、DSC(示差走査熱量測定)により、タンパク質の熱変性温度を測定したところ43.5℃で吸熱反応ピークが得られた。この結果より、本実施例で得られたコラーゲンは、三重らせん構造を維持した非変性のコラーゲンであることがわかった。
【0068】
また、得られたコラーゲンの固形粉末について、微生物検査を行った結果、一般細菌数は300個/g以下、大腸菌群は陰性であった。
【実施例7】
【0069】
本実施例においては、コラーゲンを含有する動物組織として、国内産鶏ヤゲン軟骨を選択した。鶏ヤゲン軟骨に付着している肉片を除去した後、電動ミートチョッパーで細かく破砕し、ミンチ状の破砕物を得た。この破砕物をエタノールに浸漬させて脱脂及び脱水を行ったのち、減圧乾燥させて試料を得た。他方、3L容量の容器に12℃に冷却した蒸留水1678.82gを準備し、濃度が36〜42重量%の過酢酸(三菱ガス化学株式会社製品)1.18gを添加して過酢酸溶液1680gを作成した。過酢酸溶液作成時に過酢酸溶液中に含まれる過酢酸由来の成分濃度は、過酢酸が0.025〜0.029重量%、酢酸が0.027〜0.032重量%及び過酸化水素が0.003〜0.004重量%であった(過酢酸製品濃度からの計算値)。この過酢酸溶液に鶏ヤゲン軟骨の減圧乾燥試料12gを入れ、スターラーで攪拌しつつ12℃で24時間浸漬処理を行った。
【0070】
浸漬処理後、遠心分離機(日立工機株式会社製、型番CF7D2)を用いて、浸漬後の動物組織と過酢酸溶液の混合物を7000rpmで15分間遠心分離を行い、油脂相等を避け、コラーゲンを含む沈殿物(SS分)を回収した。次に、回収した沈殿物に沈殿物の約10倍重量の蒸留水を加えて攪拌して洗浄を行った。洗浄後、遠心分離して水分を除いてから凍結乾燥処理を行い、コラーゲンの固形粉末を得た。
【0071】
次に、得られた固形粉末の乾燥重量を測定した。測定は、得られた固形粉末を定温乾燥器(株式会社三商製、SDN27)で105℃で16時間乾燥させ、完全に水分を蒸発させた後、残った固形分を電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、GX−10K)で精密に測定することにより行われた。その結果、12gの鶏ヤゲン軟骨の減圧乾燥試料から3.1gの乾燥固形分を得ることができ、収率は25.8%であった。
【0072】
他方、コラーゲンの固形粉末中のアミノ酸量をアミノ酸自動分析装置(日立製作所社製、L−8500型)を用いて定量し、コラーゲン量を算出した。この結果、固形粉末中のコラーゲン量(ヒドロキシプロリンg/100g×11.1(豚コラーゲンの換算係数:食品分析法))は、79.7%であった。
【0073】
さらに、得られたコラーゲンの固形粉末について、DSC(示差走査熱量測定)により、タンパク質の熱変性温度を測定したところ、63℃で吸熱反応ピークが得られた。この結果より、本実施例で得られたコラーゲンは、三重らせん構造を維持した非変性のコラーゲンであることがわかった。
【0074】
また、得られたコラーゲンの固形粉末について、微生物検査を行った結果、一般細菌数は300個/g以下、大腸菌群は陰性であった。
【実施例8】
【0075】
本実施例においては、コラーゲンを含有する動物組織として、サメの軟骨を選択した。サメから軟骨を摘出して、電動ミートチョッパーで細かく破砕し、ミンチ状の破砕物を得た。この破砕物をアセトンに浸漬させて脱脂及び脱水を行ったのち、減圧乾燥させて試料を得た。他方、3L容量の容器に5℃に冷却した蒸留水1677.98gを準備し、濃度が36〜42重量%の過酢酸(三菱ガス化学株式会社製品)2.02gを添加して過酢酸溶液1680gを作成した。過酢酸溶液作成時に過酢酸溶液中に含まれる過酢酸由来の成分濃度は、過酢酸が0.0432〜0.0504重量%、酢酸が0.0456〜0.054重量%及び過酸化水素が0.0048〜0.0072重量%であった(過酢酸製品濃度からの計算値)。この過酢酸溶液にサメ軟骨の減圧乾燥試料12gを入れ、スターラーで攪拌しつつ5℃で8時間浸漬処理を行った。
【0076】
浸漬処理後、遠心分離機(日立工機株式会社製、型番CF7D2)を用いて、浸漬後の動物組織と過酢酸溶液の混合物を7000rpmで15分間遠心分離を行い、油脂相等を避け、コラーゲンを含む沈殿物(SS分)を回収した。次に、回収した沈殿物に沈殿物の約10倍重量の蒸留水を加えて攪拌して洗浄を行った。洗浄後、遠心分離して水分を除いてから凍結乾燥処理を行い、コラーゲンの固形粉末を得た。
【0077】
次に、得られた固形粉末の乾燥重量を測定した。測定は、得られた固形粉末を定温乾燥器(株式会社三商製、SDN27)で105℃で16時間乾燥させ、完全に水分を蒸発させた後、残った固形分を電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、GX−10K)で精密に測定することにより行われた。その結果、12gのサメ軟骨の破砕物から2.7gの乾燥固形分を得ることができ、収率は22.5%であった。
【0078】
他方、コラーゲンの固形粉末中のアミノ酸量をアミノ酸自動分析装置(日立製作所社製、L−8500型)を用いて定量し、コラーゲン量を算出した。この結果、固形粉末中のコラーゲン量(ヒドロキシプロリンg/100g×12.1(フィッシュコラーゲンの換算係数))は、77.5%であった。
【0079】
また、得られたコラーゲンの固形粉末について、微生物検査を行った結果、一般細菌数は300個/g以下、大腸菌群は陰性であった。
【0080】
本発明は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係るコラーゲンの製造方法は、健康食品、医薬品又は化粧品の原料に適したコラーゲン、すなわち安全性が高く、経口摂取可能なコラーゲンを得るために用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンを含有する動物組織を少なくとも過酢酸を含む溶液に浸漬する工程と、浸漬後の動物組織を回収する工程とを含んでいるコラーゲンの製造方法。
【請求項2】
前記溶液の過酢酸の濃度は、1×10−4重量%〜2重量%である請求項1記載のコラーゲンの製造方法。
【請求項3】
前記浸漬後の動物組織を回収する工程には、浸漬後の動物組織と溶液との混合物を遠心分離し、沈殿物を回収することが含まれる請求項1又は2に記載のコラーゲンの製造方法。
【請求項4】
前記コラーゲンを含有する動物組織は、魚類、軟体動物、鳥類若しくは哺乳類の軟骨組織又は魚類、軟体動物、鳥類若しくは哺乳類の皮である請求項1〜3のいずれか1項に記載のコラーゲンの製造方法。