説明

コラーゲンバイオ繊維、ならびにその調製方法および使用

本発明は、本明細書においてコラーゲンバイオ繊維と称する、羊膜から産生されるコラーゲン膜に関する。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、天然未処理羊膜の構造的完全性(すなわち、天然の三次および四次構造)を有する。本発明は、羊膜を脱細胞化することにより、漿膜および羊膜を有する胎盤膜(好ましくはヒト胎盤膜)から、コラーゲンバイオ繊維を調製する方法を提供する。好適な実施形態では、羊膜は完全に脱細胞化される。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、例えば、血管修復、血管の構築および代替、腱および靭帯の代替、創傷包帯、手術用移植片、眼科的用途、縫合等、医療および手術分野で多数の利用性を有する。バイオ繊維の利点は、一部に、生体力学的強度、柔軟性、縫合性、および低い免疫原性(特に、ヒト胎盤から誘導した場合)等の物理的性質によるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年3月26日に出願した米国特許出願第10/106,653号(参照によりその全体を本明細書に援用する)の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、本明細書においてコラーゲンバイオ繊維と称する、羊膜から産生されるコラーゲン膜に関する。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、天然未処理羊膜の構造的完全性(すなわち、天然の三次および四次構造)を有する。本発明は、羊膜を脱細胞化することにより、漿膜および羊膜を有する胎盤膜(好ましくはヒト胎盤膜)から、コラーゲンバイオ繊維を調製する方法を提供する。好適な実施形態では、羊膜は完全に脱細胞化される。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、例えば、血管修復、血管の構築および代替、腱および靭帯の代替、創傷包帯、手術用移植片、眼科的用途、縫合等、医療および手術分野で多数の利用性を有する。バイオ繊維の利点は、一部に、生物力学的強度、柔軟性、縫合性、および低い免疫原性(特に、ヒト胎盤から誘導した場合)等の物理的性質によるものである。
【背景技術】
【0003】
2.1 羊膜:構造および組織
胎盤嚢(placental sac)は、疎性結合組織により密接した二層からなる。これらは、羊膜および漿膜層として知られている(図1を参照)。羊膜層は、二層の最も内側にあり、胎児を囲む羊水と接触し、それらが一緒になって羊膜嚢を形成する。羊膜層は血管がなく、基底膜を覆う単層円柱上皮により覆われ、30〜60ミクロンの厚みを有する。漿膜は嚢の外側の層であり、密に細胞化(cellularize)されている。血管樹(tree)は胎盤から始まり、漿膜層を介して胎盤膜まで延伸する。漿膜層は、疎性結合組織によって羊膜層と分離されており、一緒になると二層で120〜180ミクロンの厚みを有する。胎盤膜は、ムコ多糖類で満たされたコラーゲンマトリックスを有し、これらは、発達胎児のための保護嚢として主に作用すると考えられている。膜はまた、母体循環系に存在する感染物質および免疫物質に対するバリアを維持する。胎盤膜は、能動的および受動的輸送機関の両方を有する。最も小さい分子およびタンパク質は、これらを通って自由に移動できるが、IgM等の大きなタンパク質は基底膜を通ることができない。
【0004】
95%エチルアルコール、または組織培養培地と50-50%の比率で混合されるグリセロールのいずれかでの(動物またはヒト由来源のいずれかに由来する)胎盤膜の保存は、冷凍前の羊膜の保存のために利用されてきた。これらの保存液は、核を濃縮させる胎盤組織の活性を失活させるが、コラーゲンマトリックスおよび基底膜は保存される。興味深いことに、両方の形態の保存液とも、移植膜の抗原性およびあらゆる潜在的な有害な剤も失わせる。通常、保存は、羊膜を漿膜から注意深く分離した後で行われる。基底膜および上皮を有する羊膜側面は光沢があり、漿膜に面する反対側面は光沢がない。
【0005】
2.2 羊膜のこれまでの臨床的用途
動物原性感染症を持つかまたは異種間拒絶を生じる異種組織(他の種に由来する組織)の可能性のある問題により、これらの組織はあまり望まれていなかった。同種移植片、または同種の異なる個体からの移植片が、依然としてヒト移植材料の好ましい由来源である。移植用のヒトドナー組織の不足は、高まりを見せる問題であり、組織移植用の新規材料の開発を促進している。生物学的原材料用のこれらの由来源は、ほとんどの場合に乏しく、入手困難で、非常に費用がかかる。しかし、ヒト羊膜からのコラーゲンシートは、組織移植用途において有用な、望ましい生物力学的特徴を有する。従って、羊膜は、同種移植材料として優良な由来源である。
【0006】
羊膜および漿膜を含む胎膜は、早くも1910年に記録された手術に使用されており、1979年にTrelfordおよびTrelford-Sauderにより概説されている(TrelfordおよびTrelford-Sauder, 1979, Am. J. Obstet. Gynecol. 833を参照)。例えば火傷および潰瘍化した皮膚上への皮膚移植における外科材料としての胎膜の使用を、1910年に、Davisが初めて報告した(Davisら, 1910, Johns Hopkins Med. J.; 15: 307)。これらの研究は、主に動物におけるものであり、ヒト治験では期待外れであることが判明した。それ以降、手術における羊膜の使用は拡張されてきた(例えば、Sternら, 1913, JAMA, 13:973-4;Sabellaら, 1913 Med. Records NY, 83: 478-80;de Rotthら, 1940 Arch. Opthalmol, 23:522-5;Sorsbyら, 1946, Br. J. Opthamlol. 30: 337-45を参照)。現在は、火傷した皮膚、皮膚創傷および脚の慢性潰瘍のための生物包帯として、人工膣の外科的再構築における補助組織として、ならびに臍帯ヘルニアの修復のために利用されている(例えば、TrelfordおよびTrelford-Sauder, 1979, 134 Am. J. Obstet. Gynecol. 833;Colochoら, 1974 Arch. Surg. 109: 370-3;Faulkら 1980, Lancet, 1156;Prasadら, 1986, J. Trauma, 26: 945-6;Subrahmanyanら, 1995, J. Plastic Surg. 48: 477-8;Grussら, 1978, J. Can. Med. Assoc. 118: 1237-46;Wardら, 1984, Br. J. Plastic Surg. 37: 191-3;Dhall, 1984, J. Obstet. Gynaecol. 91:279-82を参照)。腹部、頭部および骨盤の手術過程における組織付着を予防するためにも使用されている(Gharibら, 1996, Pediatr. Surg. Int. 11: 96-9;Rennekampffら, 1994, Invest. Surg. 7: 187-93)。1940年代には、数人の著者が、様々な眼球表面障害を治療する際の羊膜の有益な役割を報告している(例えば、Rotthら, 1940 Arch. Opthalmol, 23: 522-5;Sorsbyら, 1946, Br. J. Opthalmol. 30: 337-45;Laveryら, 1946, Trans. Opthalmol. Soc. UK, 66:668を参照)。
【0007】
移植に使用するための羊膜の調製および保存を最適化する分野において多数の試みが既に記載されている(概要については、例えば、Duaら, 1999, Br. J. Opthalmol. 83: 748-52("Dua")を参照)。様々な羊膜調製が、食塩水および抗生物質の混合液による保存、アルコール脱水を、羊膜層と漿膜層との分離の有無に関わらず含んできた。しかし、Duaおよび上記参考文献に記載されている方法の全てが、羊膜の調製および保存の改善により対処する必要がある短所を未だに抱えている。
【0008】
より最近になって、角膜上皮欠損を治すための組織移植手術過程用途用の羊膜の保存のために冷凍に依存する方法が開示された。例えば、米国特許第6,152,142号および6,326,019B1号("Tseng")を参照。Tsengは、基板上に載置され、ダルベッコ改良型イーグル培地およびグリセロールの混合液中に保存され、-80℃にて冷凍された羊膜を開示している。調製の間の任意の時点において組織を冷凍する処理は、Tseng羊膜を脆弱にし、解凍および活性化のステップの後にはさらに脆弱にする。さらに、解凍および活性化ステップは、羊膜の扱いに必要な時間を増す。さらに、保存および調製処理における冷凍ステップにより生じるTseng羊膜の脆弱さにより、保存の間のTseng羊膜の構造的完全性を確実にするための構造的支持または裏打ちが必要となる。これにより、保存された羊膜を裏打ちから分離する困難性がさらに加わる(その脆弱さから、取り扱いおよび無傷のまま分離することが困難であり得る)。従って、裏打ちから羊膜を分離することで、膜が裂ける可能性が高まり、手術過程を行う前に活性化溶液を冷凍羊膜に完全に含浸させて羊膜を活性化するのに必要な時間が長くなり、一連の手術における準備時間が長くなる。保存および輸送も、-80℃での冷凍の必要性から複雑になる。最後に、Tsengの膜は、通常脱細胞化されない;その結果、このように調製された羊膜は典型的に不透明で、均一な構造組成を持たない。
【0009】
より最近では、Yuiら、米国特許第5,618,312号(「'312特許」)は、組織膜の細胞層からのコラーゲンシートの調製を記載している。記載されている物質は主にコラーゲンであるが、医療的用途用(例えば、縫合可能)に十分に強くするために架橋させる別個のステップを必要とする処理からして既に弱い。'312特許に記載されている架橋方法の1つでは、高熱処理(好ましくは100℃〜110℃)を採用し、これは、コラーゲンの天然の立体構造に悪影響を及ぼすと考えられている。Yuiら、米国特許第5,876,451号は、胎盤に由来する同様のコラーゲン材料を記載している。しかし、この材料は、調製の間に、脱細胞化ステップの一部としてプロテアーゼで処理され、これはマトリックスの成分の天然立体構造の破壊および/または崩壊を生じる可能性が高い;従って、得られるコラーゲンマトリックスは、その天然立体構造を維持しない。
【0010】
従って、当該分野において、改善された構造特徴を有する、医療、診断および美容用途での使用のための改善された羊膜の需要が残っている。本発明は、従来のコラーゲン利用型バイオ繊維とは異なり、天然のコラーゲン四次構造を保持したコラーゲンを含むこのようなバイオ繊維を提供する。その結果、本発明のバイオ繊維は、調製し易く、使用し易く、医療および手術目的のために十分に強度があり、創傷治癒のための優良な基板を提供する。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、一部に、物理的および生物物理的性質が改善された新規コラーゲンバイオ繊維を生じる、胎盤、好ましくはヒト胎盤からのコラーゲンバイオ繊維の新規調製方法の発明者らによる発見に基づく。調製方法には、羊膜の扱いが最小限に関与することが好ましい。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、従来技術に記載されているものと異なり、その処理される手法により、無傷の天然三次および四次構造を有する。本発明は、高い抗張力、縫合性、および低い免疫原性(宿主-移植片拒絶が低下する)の優れた特徴を有する胎盤由来羊膜またはバイオ繊維も提供する。本発明は、冷凍または低温保存の必要なく脱水状態シートとして保存できる胎盤由来羊膜またはバイオ繊維も提供する。胎盤由来羊膜は、ヒト患者での使用のためにヒト胎盤に由来することが好ましい。しかし、動物患畜での獣医学的使用のために様々な動物種に由来する胎盤を使用して同じ方法が採用できる。
【0012】
本発明は、胎盤(好ましくはヒト胎盤)を得ること、羊膜層と漿膜層とを互いから分離すること、および該羊膜を、下にある細胞外マトリックスの構造を保持しつつ脱細胞化することを含む、コラーゲンバイオ繊維の調製方法を提供する。この方法は、脱細胞化膜を洗浄および乾燥することをさらに伴う。この方法は、室温の滅菌保存状態で安定したままでいられる脱水状態の脱細胞化バイオ繊維を産生し、これはその後、再水和し、被検体に移植または埋め込む。
【0013】
特定の実施形態では、胎盤は、帝王切開分娩または自然分娩を経たヒト女性に由来する。好適な実施形態では、当業者に公知の一般的な血清および細菌アッセイを使用して、ドナーの胎盤が伝染病を持っていないことを判断する。特定の実施形態では、胎盤は、少なくとも1つの伝染病を持っていないことをテストされたものである。別の実施形態では、胎盤の由来源は、ドナーの病歴、血液型、免疫学的データ、および遺伝子型特性を含めて知られている。胎盤はあらゆる哺乳動物に由来し得るが、ドナーはヒト女性であることが好ましい。一部の実施形態では、胎盤は、羊膜を漿膜から分離する前に、当業者に公知の一般的な方法を使用して放血させる。
【0014】
本発明の方法による羊膜の脱細胞化は、目に見える全ての細胞成分および細胞屑を羊膜から(例えば、羊膜の母体側面および羊膜の胎児側面から)除去することを含む。羊膜の脱細胞化は、羊膜の構造的完全性の崩壊を生じたり、生化学組成を変化させてはならない。従って、本発明の方法により羊膜を脱細胞化すると、羊膜調製中のどの時点においても冷凍したり、または膜をプロテアーゼと接触させることはない。羊膜は、弱性界面活性剤含有溶液(例えば、0.01〜1.0%デオキシコール酸ナトリウム塩水和物、非イオン界面活性剤、Triton X-100、陰イオン界面活性剤、もしくはドデシル硫酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせを含む溶液)を使用して脱細胞化することが好ましい。
【0015】
本発明の方法により羊膜を脱細胞化した後、膜を洗浄および(好ましくは真空下にて低温で)乾燥し得る。
【0016】
一部の実施形態では、本発明は、脱水状態で、脱細胞化され、基板を含まないため、天然の三次および四次構造を有する羊膜を含むコラーゲンバイオ繊維を提供する。他の実施形態では、本発明は、コラーゲン、エラスチンおよびフィブロネクチンからなる、脱細胞化された、基板を含まない羊膜を含むコラーゲンバイオ繊維を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、脱水状態の、脱細胞化された、均一、透明、かつ基板を含まない羊膜を含むコラーゲンバイオ繊維を、羊膜はプロテアーゼと全く接触していないという規定に従い提供する。
【0017】
一部の実施形態では、バイオ繊維は、1つ以上の生体分子(例えば、抗生物質、ホルモン、成長因子、抗癌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン、抗炎症剤、抗感染薬、創傷治癒薬、創傷シーリング材、細胞誘引物質(cellular attractants)および足場剤等を含むがこれらに限定されない治療薬)をさらに含む。具体的な例では、コラーゲンバイオ繊維は、1つ以上の成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子等)を含浸されてもよい。バイオ繊維は、1つ以上の小分子(例えば、膜受容体阻害剤、キナーゼ阻害剤、成長阻害剤、抗癌剤、抗生物質等の特定の生化学プロセスの特異的阻害剤等の小有機分子を含むがこれらに限定されない)を含浸されてもよい。一部の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、生成または調製の間にその意図する用途に応じて手術用に生分子を含浸される。
【0018】
一部の実施形態では、本発明は、本発明のバイオ繊維を少なくとも2層を含む積層板、およびその調製方法を包含する。別の実施形態では、本発明は、積層板を、意図する用途に応じて、シート、繊維、球体、管を含むがこれらに限定されない複合三次元足場に形成することを包含する。
【0019】
一実施形態では、本発明は、羊膜および漿膜を含む胎盤を得ること;該羊膜を該漿膜から分離すること;ならびに該羊膜を脱細胞化すること、を含む羊膜積層板の調製方法を包含する。別の実施形態では、本方法は、脱細胞化した羊膜を少なくとも1回洗浄すること;脱細胞化した羊膜を少なくとも2枚、互いと接触させて積層し、羊膜積層板を形成すること;および脱細胞化した羊膜積層板を乾燥させることをさらに含む。あるいはまた、別の実施形態では、羊膜積層板の調製方法は、本発明の方法により調製した少なくとも2枚の羊膜を乾燥させること、および該少なくとも2枚の羊膜を互いと接触させて積層し、羊膜積層板を形成すること、を含む。
【0020】
一部の実施形態では、本発明の方法により生成した羊膜層は、接着剤の存在下で互いと接触させて、羊膜積層板を形成してもよい。本発明の方法および組成物により使用される接着剤は、当業者に公知の任意の生物学的接着剤、好ましくは生体適合性接着剤(天然接着剤、例えば、フィブロネクチン、フィブリン、合成接着剤が挙げられるがこれらに限定されない)であり得る。他の実施形態では、本発明の方法により調製される羊膜層は、互いと架橋されて、羊膜積層板を形成する。当業者に公知のあらゆる架橋試薬および方法が本発明の範囲内にあり、化学架橋、ペプチド架橋、UV架橋、放射線架橋、フィブロネクチン架橋、フィブリノゲン架橋、ヒドロゲル架橋が挙げられるがこれらに限定されない。他の実施形態では、本発明の方法により生成された羊膜積層板は、接着剤を含まない。
【0021】
一部の実施形態では、本発明は、コラーゲンバイオ繊維を手術用移植片として使用することを意図する。具体的な実施形態では、本発明は、移植片を手術部位に直接置くことを含む、被検体(好ましくはヒト)の手術過程における手術用移植片の使用を意図する。
【0022】
本発明は、1つ以上のヒドロゲル組成物をさらに含む、コラーゲンバイオ繊維、羊膜積層板、または三次元足場、およびそれらの調製方法を提供する。ヒドロゲル組成物は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ならびにそれらの誘導体および類似体を含むポリマーを含み得る。
【0023】
一部の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維、積層板、三次元足場、またはそれらのヒドロゲル組成物は、さらに細胞(幹細胞、分化成熟細胞、前駆細胞等(好ましくはヒト))で均一かつコンフルエントに密集され得る。
【0024】
本発明は、コラーゲンバイオ繊維、その積層板、その三次元足場、およびそのヒドロゲル組成物の高いレベルでの生産、特に商業的規模の生産(ただしこれに限定されない)の方法を提供する。本発明は、臨床治験および販売に使用するための大規模な量の羊膜を生産する問題を解決する。
【0025】
本発明は、薬剤送達;組織工学;泌尿器関連用途(例えば、尿失禁の矯正);眼科用途(例えば、眼球表面障害の治療のため、および眼科手術移植片として);血管用途(例えば、血管修復、血管の構築および置換);心臓用途(例えば、疾患弁を構築する際の人工装置として);神経関連間(例えば、傷害神経、特に切断された末梢神経の修復、硬膜代用物、および神経吻合部周辺の人工器官として);骨関連用途(例えば、整形外科的欠損の治療用、骨代用物として);皮膚科的用途(例えば、(外部および内部)創傷、急性および慢性創傷、先天性創傷、ならびに火傷の治療);皮膚症状の治療用(例えば、皮膚外傷、老齢肌、しわ、小じわ、皮膚の薄層化、皮膚の弾力性の低下、肌荒れ、および日焼けで損傷した肌);創傷包帯;ならびに創傷感染の治療、に適した本発明のコラーゲンバイオ繊維を含む組成物を包含する。
【0026】
具体的な実施形態では、本発明は、被検体の眼科関連疾患または障害(例えば、眼球表面疾患)を治療および/または予防する方法を包含し、該方法は、例えば、バイオ繊維を手術用移植片として被検体の疾患した角膜表面上に置くことにより、本発明のコラーゲンバイオ繊維を使用することを含む。別の実施形態では、本発明は、被検体の皮膚症状を治療および/または予防する方法を包含し、該方法は、例えば皮膚をバイオ繊維と接触させることにより、本発明のバイオ繊維を使用することを含む。さらに別の実施形態では、本発明は、創傷および/または火傷を本発明のバイオ繊維と接触させることを含む、被検体の創傷および/または火傷の治療を包含する。別の具体的な実施形態では、本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維をインプラントとして使用することを含む、被検体(好ましくはヒト)の尿失禁を矯正する方法を包含する。
【0027】
他の実施形態では、本発明は、被検体を本発明のコラーゲンバイオ繊維と接触させることを含む、被検体に治療薬を送達する方法を包含する。本発明はさらに、本発明のコラーゲンバイオ繊維または積層板を、例えば組織工学において生存細胞で密集させることを含む、被検体に細胞を送達する方法も包含する。
【0028】
本発明は、手術過程における使用のために本発明のバイオ繊維を含む手術用移植片を提供する。手術用移植片は、被検体(好ましくはヒト)の内部または外部部位に適用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトの胎盤に由来するコラーゲン性膜またはバイオ繊維を提供する。コラーゲンバイオ繊維は、最終生産物において天然コラーゲン立体構造(すなわち、天然の三次および四次立体構造)が保持されるように調製される。コラーゲンバイオ繊維に加えて、本発明は、コラーゲンバイオ繊維の作製方法、および医療状況におけるバイオ繊維の使用方法も提供する。
【0030】
本発明は、脱水状態で、脱細胞化され、基板を含まない、天然の三次および四次構造を有する羊膜を含むコラーゲンバイオ繊維を提供する。一部の実施形態では、本発明は、コラーゲン、エラスチンおよびフィブロネクチンからなる脱細胞化され、基板を含まないコラーゲンバイオ繊維を提供する。
【0031】
一部の実施形態では、本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維を含む羊膜積層板を提供する。本発明の方法により調製される羊膜積層板は、羊膜積層板を形成するように互いと接触された少なくとも2層のコラーゲンバイオ繊維を含む。他の実施形態では、本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維を含む、管などの三次元足場を提供する。さらに他の実施形態では、本発明は、ヒドロゲル組成物をさらに含む、本発明のコラーゲンバイオ繊維、その積層板、その三次元足場を提供する。
【0032】
従って、本発明は、積層板、三次元足場、およびヒドロゲル組成物を含む(ただしこれらに限定されない)様々な形態および構造のコラーゲンバイオ繊維を提供する。本発明は、あらゆる医療上有用な形態の本発明の組成物を提供する。具体的な形態または構造とは無関係に、本発明の組成物は、1つ以上の生分子、好ましくは治療薬をさらに含み得る。生分子を含む本発明の組成物は、本明細書に詳しく記載するように医療分野で多数の利用性を有する。一部の実施形態では、本発明は、本発明の組成物を、均一かつコンフルエントに生存細胞で密集させることを包含する。細胞で密集された本発明の組成物は、例えば組織工学的用途等、医療および歯科分野で多数の利用性を有する。
【0033】
本発明はまた、コラーゲンバイオ繊維、その積層板、その三次元足場、またはヒドロゲル組成物の調製方法に関する。具体的な実施形態では、本発明は、羊膜および漿膜を有する胎盤からコラーゲンバイオ繊維を調製する方法を提供し、該方法は:漿膜から羊膜を分離すること;および該羊膜を脱細胞化して、羊膜が酵素(例えば、プロテアーゼ)と接触しないようにすること、を含む。他の実施形態では、本方法は、脱細胞化した羊膜を洗浄および乾燥することをさらに包含する。別の具体的な実施形態では、本発明は、羊膜および漿膜を有する胎盤から羊膜積層板を調製する方法を提供し、該方法は:羊膜を漿膜から分離すること;該羊膜を脱細胞化すること;および該脱細胞化した羊膜を少なくとも2枚互いと接触するように積層して羊膜積層板を形成すること、を含む。具体的な実施形態では、脱細胞化した羊膜を、積層する前に乾燥させる。別の具体的な実施形態では、脱細胞化した羊膜は、積層後に乾燥させて、少なくとも2枚の脱細胞化した羊膜を互いと接触させる。
【0034】
本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維、その積層板、その三次元足場、またはそのヒドロゲル組成物を、医療、歯科および手術状況において使用する方法を提供する。実際、本発明の組成物は、当該分野で公知の他の生体材料と比べて向上した治療的および臨床的有用性を有する。一部の実施形態では、本発明は、本発明の組成物を使用して、被検体の眼関連疾患または障害を治療および/または予防する方法を提供する。具体的な実施形態では、本発明は、被検体の疾患眼球表面上にバイオ繊維を置くことを含む、被検体の眼関連疾患または障害を治療および/または予防する方法を提供する。
【0035】
他の実施形態では、本発明は、本発明の組成物を使用して、被検体(好ましくはヒト)の皮膚症状を治療および/または予防する方法を提供する。具体的な実施形態では、本方法は、被検体の皮膚を組成物と接触させることを含む。別の実施形態では、皮膚症状の部位である被検体の皮膚の表面に組成物を直接置く。
【0036】
本発明はまた、組成物を創傷または火傷の部位に接触させることを含む、被検体(好ましくはヒト)の創傷または火傷を治療する方法も提供する。
【0037】
他の実施形態では、本発明は、眼科手術;心臓血管手術;歯周手術;神経手術、歯科手術、および整形外科手術等の手術過程における本発明の組成物(例えば、コラーゲンバイオ繊維、羊膜積層板)の使用を提供する。
【0038】
本発明は、生分子(好ましくは治療薬)を、被検体(好ましくはヒト)に送達するための本発明の組成物の使用方法を提供する。本発明はまた、細胞でさらに密集された本発明の組成物を使用して、被検体(好ましくはヒト)に細胞を送達する方法も包含する。
【0039】
5.1 コラーゲンバイオ繊維
本発明は、本明細書においてコラーゲンバイオ繊維と称するコラーゲン性羊膜を提供する。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、天然未処理羊膜の構造的完全性を維持する(すなわち、コラーゲン、エラスチン、そして可能性的にフィブロネクチン等の組成において構造タンパク質の天然の三次および四次構造を保持する)。従って、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、天然または未処理羊膜と同じ構造タンパク質からなる。従来技術の羊膜の調製方法は、プロテアーゼの使用または高熱処理を必要とし、その結果、膜はそれらの組成中で構造タンパク質の三次および四次構造を維持しない。
【0040】
具体的な実施形態では、本発明は、脱水状態で、脱細胞化し、基板を含まず(すなわち、フィルター裏当てが無く)、天然の三次および四次構造を有する羊膜を提供する(図2AおよびBを参照)。本発明の脱水状態の、脱細胞化羊膜は、左巻き三重らせんαらせんシートの脱細胞化マトリックスからなる図3に示す外見を有する、均一で(すなわち、ほぼ無細胞成分)透明なバイオ繊維である(例えば、Molecular Biology of the Cell, 1989, Albertsら編, Garland Publishing Inc., New York, NYを参照;参照によりその全体を本明細書に援用する)。
【0041】
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、任意の哺乳動物(例えば、ウマ、ウシ、ブタまたは狭鼻猿類)の羊膜に由来し得るが、ヒト胎盤に由来することが最も好ましい。好適な実施形態では、本発明のバイオ繊維は、その組成が天然の三次および四次構造のコラーゲン性物質を有する。
【0042】
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、従来技術に記載のものと比べて、最小限に操作されている(すなわち、本発明コラーゲンバイオ繊維は、多くても1つの化学的または生物学的処理または操作(例えば、弱性界面活性剤中での脱細胞化)にしか供されない)。本明細書で使用する「最小限に操作する」とは、コラーゲンバイオ繊維の調製の間の任意のステップにおける本発明の羊膜を、酵素処理(例えば、プロテアーゼ処理)、高熱処理、過酷な化学処理、強い界面活性剤または酸への暴露を欠くことを指す。脱細胞化ステップの一部としての羊膜のプロテアーゼ処理は、バイオ繊維の構造完全性を損なう(例えば、コラーゲン材料の三次および/または四次構造に影響を及ぼす)。対照的に、本発明のバイオ繊維の調製における羊膜の最小限の操作は、従来技術のものと比べて機械的強度が向上し、生産物が透明になる。
【0043】
本発明の脱細胞化され、基板を含まないコラーゲンバイオ繊維は、コラーゲン(コラーゲンI、IVおよびII型を含むがこれらに限定されない)、フィブロネクチン、およびエラスチンを含む。この組合せは、一部には、本明細書に記載する方法により調製する本発明のバイオ繊維の機械的強度の向上に関与する。最小限の処理および操作の結果、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、天然膜の組成を保持する。コラーゲンは、脊椎動物の主要構造物質で、主に機械的機能の組織中に存在する。コラーゲン分子は、α鎖(それぞれ、約1000アミノ酸の長さ)と呼ばれる、規則的な左巻き超らせんを形成する3本のよられたロープのように互いと巻きついた3本のポリペプチド鎖からなる。少なくとも19種類のコラーゲンが同定されており、それらは全て同じ三次元機構を有する(例えば、Leeら, 2001, International J. of Pharmaceutics, 221: 1-22を参照)。
【0044】
本発明の羊膜は、形態、生体力学的、および構造的特徴が従来技術で報告されたものよりも優れており、本明細書に記載する、羊膜の調製方法の発見、ならびに制御されかつ十分なヒト胎盤の調達に一部基づいて本発明者らに発見された(5.2節を参照)。
【0045】
特に、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、1つ以上の従来技術羊膜と比べて、以下の特徴を1つ以上有する:すなわち、増強した引張強度;優れた縫合性;宿主-移植片拒絶応答の低下をもたらす免疫原性の低下;冷凍および低温保存が必要ない保存および輸送の簡易;使用前の取扱いおよび活性化(すなわち、再水和)の最小限の調製後要件;ならびに構造および機能的完全性を保ったまま、長期間室温にて保存され得る能力。表1に、本発明のバイオ繊維の利点を、従来技術のものと比較してまとめた。
【0046】
代替的な実施形態では、本発明は、脱水状態で、脱細胞化され、基板を含まない漿膜(好ましくはヒト漿膜)を含むコラーゲンバイオ繊維を提供する。漿膜を含むコラーゲンバイオ繊維は、羊膜を含む本発明のコラーゲンバイオ繊維に匹敵する特性を有することが期待される。本発明は、漿膜を含むコラーゲンバイオ繊維の全ての医療上有用な形態(積層板、三次元足場、およびヒドロゲル組成物が挙げられるがこれらに限定されない)を提供する。
【表1】

【0047】
好適な実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は透明(すなわち、視覚的に澄んでいる)。別の好適な実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は薄く、軽量である。具体的な実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、0.3〜0.6 mg/cm2である。具体的な実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、少なくとも30ミクロンの厚さである。別の具体的な実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、約10〜40ミクロンの厚さである。
【0048】
本発明は、様々な構成(例えば、インサート、シールド)での本発明のコラーゲンバイオ繊維の使用を包含する。一般的に、バイオ繊維は、あらゆる医療的に有用な形態に形成され得る。例えば、コラーゲンバイオ繊維は、全体的に使用されるように形成され得る(すなわち、胎盤全体に由来するコラーゲンバイオ繊維の使用)。あるいはまた、コラーゲンバイオ繊維は、ストリップ、パッチもしくはロールに切断されるか、または糸に編まれてもよい。別の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、単層シートまたは積層板のいずれでも、規則的な間隔で切断および拡張されて(例えば、メッシュを形成して)もよい。
【0049】
一部の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は平面である(例えば、勾配または反りがない)。他の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、完全に平面ではなく、くぼみのある表面(例えば、表面上に凹部またはへこみ)を有する。
【0050】
具体的な好適な実施形態では、本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維を少なくとも2層含む積層板を包含する。これらの層は、物理的に互いと(例えば、のり、締め具の使用、または層を融合させるためにバイオ繊維の一部(例えば、少なくとも1層の周縁)を熱封印することにより)結合され得る。バイオ繊維は「粒子(grain)」を有するため、バイオ繊維は、様々な手法で積層され得る。一実施形態では、上記積層板の層は全て同じ粒子配向を有する。別の実施形態では、少なくとも1枚の層の粒子配向は、少なくとも1枚の他の層の粒子配向と約90℃回転されている(すなわちほぼ直角である)。より具体的な実施形態では、この直角の層は互いと隣接している。さらに別の実施形態では、積層板は、少なくとも3層のコラーゲンバイオ繊維を含み、該少なくとも3層それぞれの粒子構造は他の2層の粒子構造と約60℃回転されている。別の実施形態では、積層板は、少なくとも第1の物質および第2の物質を含み、該第1の物質は本発明のコラーゲンバイオ繊維であり、該第2の物質はコラーゲンバイオ繊維と積層板を形成できる任意の他の物質である。具体的な実施形態では、この第2の物質は、羊膜以外の膜に由来するシートまたは膜である。別の具体的な実施形態では、この第2の物質は、例えば、ポリラクトン、ポリ酢酸、プラスチックフィルム等の非天然物質である。一部の実施形態では、羊膜積層板は、本発明の方法により調製された、少なくとも6枚、少なくとも8枚、少なくとも10枚、少なくとも20枚、少なくとも80枚、少なくとも100枚、少なくとも1000枚の羊膜を含む、多層体である。本発明の羊膜積層体は、無限数の層を含み得る。
【0051】
積層板は構造的な硬さが高いため、積層板を複雑な三次元構造に形作ることができる。このような三次元構造は、シート、管、小球体を含み得る。
【0052】
コラーゲンバイオ繊維は、単層シートとしてもまたは積層板としても、別の物質とも会合し得る。例えば、バイオ繊維は、柔軟性のあるプラスチックフィルム、ガーゼ、プラスチックシーティング、ステント、弁、矯正装置、帯具、パッチ等と会合(すなわち結合)し得る。
【0053】
コラーゲンバイオ繊維は、バイオ繊維のコラーゲンマトリックスを構成しない1つ以上の化合物または物質を含み得る。例えば、コラーゲンバイオ繊維は、製造の間または手術の準備の間に、生分子を含浸され得る。このような生分子としては、抗生物質(クリンダマイシン(Clindamycin)、ミノサイクリン(Minocycline)、ドキシシクリン、ゲンタマイシン等)、ホルモン、成長因子、抗癌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン、抗炎症剤、銀等(ただしこれに限定されない)の抗感染薬(硝酸銀およびスルファジアジン銀が挙げられるがこれらに限定されない銀塩等)、元素銀、抗生物質、殺菌酵素(リソゾーム等)、創傷治癒薬(PDGF、TGF、チモシン(thymosin)が挙げられるがこれらに限定されないサイトカイン等)、創傷治癒薬としてのヒアルロン酸、創傷シーリング材(トロンビンを含むか含まないフィブリン等)、細胞誘引物質、および足場剤(フィブロネクチン等)等が挙げられるがこれらに限定されない。具体的な実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、少なくとも1つの成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子等)を含浸され得る。バイオ繊維はまた、特定の生化学プロセスの特定の阻害剤(例えば、膜受容体阻害剤、キナーゼ阻害剤、成長阻害剤、抗癌剤、抗生物質等)等の小有機分子等の小分子で含浸され得る。
【0054】
さらに別の実施形態では、本発明のコラーゲン繊維は、ヒドロゲルと組み合わせられ得る。当業者に公知のあらゆるヒドロゲル組成物が、本発明に包含される。例えば、以下の概論に開示されるヒドロゲル組成物のいずれか:すなわち、Graham, 1998, Med. Device Technol. 9(1): 18-22;Peppasら, 2000, Eur. J. Pharm. Biopharm. 50(1): 27-46;Nguyenら, 2002, Biomaterials, 23(22): 4307-14;Heninclら, 2002, Adv. Drug Deliv. Rev 54(1): 13-36;Skelhorneら, 2002, Med. Device. Technol. 13(9): 19-23;Schmedlenら, 2002, Biomaterials 23: 4325-32;これらの全てが参照により全体的に本明細書に援用される。具体的な実施形態では、ヒドロゲル組成物は、コラーゲンバイオ繊維上に塗布される(すなわち、コラーゲンバイオ繊維の表面上に放出される)。ヒドロゲル組成物は、例えば、コラーゲンバイオ繊維上に噴射されるか、バイオ繊維の表面上に飽和されるか、コラーゲンバイオ繊維を浸されるか、コラーゲンバイオ繊維を入浴させるか、またはコラーゲンバイオ繊維の表面上を覆うことができる。
【0055】
本発明の方法および組成物に有用なヒドロゲルは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、デキストラン、またはそれらの誘導体および類似体を含む当該分野で公知の水(水相互性(water-interactive))または水溶性ポリマーから作製され得る。
【0056】
一部の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、ヒドロゲルと組み合わせられる前に、1つ以上の生分子でさらに含浸される。他の実施形態では、ヒドロゲル組成物は、本発明のコラーゲンバイオ繊維と組み合わされる前に、1つ以上の生分子でさらに含浸される。このような生分子は、抗生物質(クリンダマイシン、ミノサイクリン、ドキシシクリン、ゲンタマイシン等)、ホルモン、成長因子、抗癌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン、抗炎症剤、銀等(ただしこれに限定されない)の抗感染薬(硝酸銀およびスルファジアジン銀を含むがこれらに限定されない銀塩等)、元素銀、抗生物質、殺菌酵素(リソゾーム等)、創傷治癒薬(PDGF、TGF、チモシンを含むがこれらに限定されないサイトカイン等)、創傷治癒薬としてのヒアルロン酸、創傷シーリング材(トロンビンを含むか含まないフィブリン等)、細胞誘引物質、および足場剤(フィブロネクチン等)等が挙げられるがこれらに限定されない。具体的な実施形態では、コラーゲンバイオ繊維またはヒドロゲル組成物は、少なくとも1つの成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子等)を含浸され得る。生分子は、治療薬であることが好ましい。
【0057】
一部の実施形態では、ヒドロゲル組成物は、本発明のバイオ繊維を含む積層板と組み合わせられる。
【0058】
ヒドロゲル/コラーゲンバイオ繊維組成物は、創傷、火傷および皮膚症状の治療(例えば、傷の治療)を含むがこれらに限定されない医療分野、美容的用途(例えば、美容外科)、およびインプラントとしてのあらゆる用途において利用性を有する。一部の実施形態では、ヒドロゲル/コラーゲンバイオ繊維組成物は、例えば、創傷の治療のために、被検体に局所的(すなわち、皮膚の表面上)に適用される。別の実施形態では、ヒドロゲル/コラーゲンバイオ繊維素生物は、被検体の内部において、例えば、インプラントとして使用されて、身体中の永久または半永久的構造物となり得る。一部の実施形態では、ヒドロゲル組成物は、非生分解性として作製され得る。さらに他の実施形態では、ヒドロゲル組成物は、生分解性として作製される。具体的な実施形態では、ヒドロゲル組成物は、数日で分解するように作製される。別の具体的な実施形態では、ヒドロゲル組成物は、数ヶ月で分解するように作製される。
【0059】
一部の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、均一かつコンフルエントに細胞で密集される。本発明のバイオ繊維を密集するのに使用され得る細胞としては、幹細胞(好ましくはヒト幹細胞)、ヒト分化成熟細胞、全能幹細胞、多能性幹細胞、マルチポテント(multipotent)幹細胞、組織特異性幹細胞、胚様幹細胞、単一分化(committed)前駆細胞、線維芽様細胞が挙げられるがこれらに限定されない。他の実施形態では、本発明は、本発明のバイオ繊維を、特定のクラスの前駆細胞(軟骨細胞、肝細胞、造血性細胞、膵臓実質細胞、神経芽細胞、および筋肉前駆細胞が挙げられるがこれらに限定されない)で密集することを包含する。
【0060】
5.2 コラーゲンバイオ繊維の生成処理
本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維を調製する方法を提供する。特に、本発明は、羊膜および漿膜を含む胎盤を得ること;該漿膜から該羊膜を分離すること;ならびに該羊膜を脱細胞化することを含む、コラーゲンバイオ繊維を調製する方法を包含する。具体的な実施形態では、本方法は、脱細胞化した羊膜を洗浄および乾燥することをさらに含む。
【0061】
胎盤は、ヒト被検体に使用するためにヒト胎盤に由来することが好ましい。一部の実施形態では、本発明は、ヒト被検体に使用するために動物種に由来する胎盤を包含する。他の実施形態では、本発明は、動物被検体において獣医学的に使用する動物種に由来する胎盤を包含する。
【0062】
好適な実施形態では、本発明の方法において使用する胎盤は、新生児の分娩後可能な限りすぐに採取する。さらに別の好適な実施形態では、正常の健康な新生児の帝王切開分娩直後に胎盤を採取する。胎盤は、無菌条件下で回収されることとする。一部の実施形態では、胎盤は、それ以上処置する前に、分娩時から48時間保存される。他の実施形態では、胎盤は、それ以上処置する前に分娩時から最長5日間保存される。
【0063】
胎盤、臍帯、および臍帯血は、出産または分娩室から、別の場所(例えば、研究室)に輸送されて、さらに処理されることが好ましい。胎盤は、任意に熱絶縁された、滅菌バッグまたは容器等の滅菌輸送装置に入れられて輸送されることが好ましい。一部の実施形態では、胎盤は、それ以上処置されるまで室温にて保存される。他の実施形態では、胎盤は、それ以上処置されるまで冷蔵される(すなわち、約2℃〜8℃の温度にて保存される)。さらに他の実施形態では、胎盤は、それ以上処置される前に最長5日間滅菌条件下で保存される。最も好適な実施形態では、胎盤は、当業者に公知の手法で、無菌条件下で扱い処理される。研究室は、(クラス1000以上のクリーンルーム等級により規定される)HEPAろ過システムを装備することが好ましい。好適な実施形態では、HEPAろ過システムは、本発明の方法を実施する研究室を使用する前の少なくとも1時間の間作動させる。
【0064】
特定の実施形態では、胎盤は放血される(すなわち、出産後に残った臍帯血を完全に排出させる)。一部の実施形態では、胎盤は、70%放血、80%放血、90%放血、95%放血、99%放血される。
【0065】
本発明は、当業者に公知の標準的な技術を使用して、伝染病(HIV、HBV、HCV、HTLV、梅毒、CMV、および胎盤組織を汚染することが知られている他のウイルス病原体が挙げられるがこれらに限定されない)について、出産時の前に妊婦をスクリーニングすることを包含する。伝染病についてスクリーニングするのに使用する方法は、アメリカ医薬品局(Federal Drug Administration)が規定する規則に従うことが好ましい。妊婦は、出産1ヵ月以内、好ましくは出産2週間以内、さらに好ましくは出産1週間以内、そして最も好ましくは出産時にスクリーニングされ得る(例えば、診断目的のために血液サンプルを採取する)。母体が上記病原体に対して陰性または無反応とテストされたドナーから回収した組織のみを、本発明のバイオ繊維の生成に使用する。例えば詳細な家族歴を含む、胎盤膜のドナーの完全な父親、病歴、および社会歴を得ることが好ましい。
【0066】
当業者に公知の標準的な血清および細菌テストを使用してドナーをスクリーニングする。病原菌を同定するあらゆるアッセイまたは診断アッセイが、本発明の方法の範囲内にあるが、好ましいアッセイは、高い精度とハイスループットの能力が組み合わさったものである。具体的な実施形態では、本発明は、抗原および/または抗体について、当業者に公知の標準的技術を使用してドナーをスクリーニングすることを包含する。抗原および抗体の限定しない例としては:抗体スクリーニング(ATY);アラニンアミノトランスフェラーゼスクリーニング(ALT);肝炎コア抗体(核酸およびELISA);B型肝炎表面抗原;C型肝炎ウイルス抗体;HIV-1およびHIV-2;HTLV-1およびHTLV-2;梅毒テスト(RPR);CMV抗体テスト;ならびにC型肝炎およびHIVテストが挙げられる。使用するアッセイは、当業者に公知の核酸利用型アッセイまたはELISA利用型アッセイであり得る。
【0067】
本発明は、当業者に公知の標準的技術を使用して、新生児の臍帯からの血液をさらにテストすることを包含する(例えば、Cotorrueloら, 2002, Clin Lab. 48(5-6):271-81;Maineら, 2001, Expert Rev. Mol. Diagn., 1(1):19-29;Nielsenら, 1987, J. Clin. Microbiol. 25(8):1406-10を参照;これら全てを参照により本明細書に全体的に援用する)。一実施形態では、当業者に公知の標準的な技術を使用して、新生児の臍帯から得た血液を細菌病原体(グラム陽性およびグラム陰性細菌が挙げられるがこれらに限定されない)、および菌類についてテストする。具体的な実施形態では、新生児の臍帯の血液の血液型およびRh因子を、当業者に公知の標準的技術を使用して決定する。別の実施形態では、当業者に公知の標準的方法を使用して、差異のある(with differential)CBCを、新生児の臍帯の血液から得る。さらに別の実施形態では、当業者に公知の標準的方法を使用して、新生児の臍帯の血液から好気性細菌培養物を採取する。正常範囲内のCBC(例えば、正常レベルから見て、全く異常がないか、または偏差がない)を有し、血清および細菌について陰性とテストされ、かつ感染病および汚染について陰性または無反応とテストされたドナーから回収された組織のみを、本発明のバイオ繊維を生成するために使用する。
【0068】
本発明のコラーゲンバイオ繊維を調製する方法の一例は、以下のステップを含む。
【0069】
ステップI.本発明は、臍帯が胎盤ディスクから分離され(任意)、羊膜が漿膜から分離されるように胎盤膜を処理することを包含する。好適な実施形態では、羊膜は、胎盤膜を切断する前に漿膜から分離される。漿膜からの羊膜の分離は、胎盤膜の端から始めることが好ましい。別の好適な実施形態では、羊膜は、鈍的切開を使用して(例えば、手袋をはめた指で)漿膜から分離される。漿膜および胎盤ディスクから羊膜を分離した後、臍帯断端を(例えば、ハサミで)切断し、胎盤ディスクから離す。特定の実施形態では、組織を裂かなければ羊膜および漿膜の分離が不可能な場合、本発明は、胎盤ディスクから羊膜および漿膜をまとめて切断し、その後それらを互いから剥がすことを含む。
【0070】
その後、羊膜を滅菌食塩溶液中に保存することが好ましい。一部の実施形態では、滅菌食塩溶液は緩衝化される。具体的な好適な実施形態では、羊膜を保存するための滅菌食塩溶液は、0.9%滅菌NaCl溶液である。羊膜は、少なくとも4℃の温度にて冷蔵保存することが好ましい。特定の実施形態では、羊膜は、少なくとも2℃、少なくとも6℃、または最高8℃の温度にて冷蔵する。この時点で、羊膜は、冷蔵され、滅菌食塩水で覆われているという条件で5日間まで保存できる。分離した羊膜は、次の処理ステップの前に、分娩時から最長で72時間冷蔵されることが好ましい。
【0071】
ステップII.羊膜を漿膜から分離した後、本発明は、羊膜を脱細胞化することを包含する。本発明の羊膜を脱細胞化する処理が羊膜の冷凍を含まないという条件で、当業者に公知のあらゆる脱細胞化処理が、本発明の方法に包含される。本明細書で使用する場合、脱細胞化とは、本発明の羊膜から全ての細胞成分および細胞屑(例えば、目に見える全ての細胞成分および細胞屑)を除去することを指す。羊膜の脱細胞化は、羊膜のコラーゲンマトリックスに通常結合している実質的に全ての細胞を確実に除去する。コラーゲンマトリックスに結合した「実質的に全ての」細胞を除去する本発明の羊膜の脱細胞化は、好ましくは細胞の少なくとも90%を除去、より好ましくは細胞の少なくとも95%を除去、そして最も好ましくは細胞の少なくとも99%を除去する。本発明の方法により脱細胞化した羊膜は、均一に薄く(すなわち、10〜40の厚み)、(触ると)滑らかで、見た目が澄んでいる。
【0072】
好適な実施形態では、本発明の羊膜の脱細胞化は、羊膜の母体側面から実質的に全ての細胞成分および細胞屑を除去し、その後、羊膜の胎児側面から全ての細胞成分および細胞屑を除去することを含む。具体的な実施形態では、本発明の羊膜の脱細胞化は、物理的な擦り取りと、滅菌溶液での濯ぎとを組み合わせることを含む。別の具体的な実施形態では、羊膜の物理的な擦り取りは、滅菌細胞スクレーパーでの擦り取りを含む。さらに別の具体的な実施形態では、脱細胞化の間に羊膜を濯ぐための滅菌溶液は、水溶液、生理学的緩衝液を含む溶液、または例えば0.9%NaCl溶液等の食塩溶液である。
【0073】
羊膜の脱細胞化は、天然細胞、ならびに他の抗原および細胞屑を羊膜から除去し、任意に、新しい免疫学的部位の生成を阻害するように処置することを含む。羊膜を脱細胞化するにあたって、有害な免疫応答を引き起こし得る、天然生存細胞、ならびに他の細胞および無細胞構造または成分を除去する。本発明により採用する脱細胞化技術は、羊膜の生体組織の甚だしい破壊を生じるものであったり、その構造的組成の生体力学的性質を変化するものであってはいけない(すなわち、コラーゲン、エラスチン、および場合によってはフィブロネクチンの構造的および生化学的完全性が、脱細胞化によって影響されない)。具体的に、羊膜の過酷な化学処置およびプロテアーゼ処置は、本発明の脱細胞化技術の範囲内にない。
【0074】
羊膜の脱細胞化は、界面活性剤含有溶液の使用を含むことが好ましい。本発明の方法において使用され得る界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、Triton X-100、陰イオン界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の方法において、界面活性剤は、単独でまたは組み合わせて使用できる。pHが6〜8で、起泡性が低いあらゆる弱性陰イオン界面活性剤(すなわち、非苛性界面活性剤)が本発明の方法において使用できる。具体的な実施形態では、0.01〜1%デオキシコール酸ナトリウム塩一水和物(deoxycholic acid sodium salt monohydrate)を、羊膜の脱細胞化に使用する。特定の作用モードに限定されることを意図するものではないが、本発明の方法による羊膜の脱細胞化は、細胞膜を破壊して、羊膜から細胞屑を除去し易くしてもよい。しかし、例えば、羊膜がその後生存細胞で密集されて干渉されるのを避けるために、羊膜の残留界面活性剤レベルを無くすステップを実施するべきである。
【0075】
本発明のバイオ繊維の調製において、プロテアーゼ活性を限定することが重要である。金属イオンキレート剤等の添加物(例えば、1,10-フェナントロリンおよびエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA))は、多くのタンパク質分解酵素に不都合な環境を生じる。コラゲナーゼ等のプロテアーゼ不足状態を得ることにより、溶解ステップの間にコラーゲン等の羊膜組成物が溶解するのを防ぐのを助け得る。低張溶解溶液を調剤して、溶液中に存在するカルシウムおよび亜鉛イオンの量を無くすかまたは限定することにより、プロテアーゼ不足状態が得られる。多くのプロテアーゼは、カルシウムおよび亜鉛イオンの存在下において活性であり、カルシウムおよび亜鉛イオンを含まない環境においてその大部分の活性を失う。低張溶解溶液は、下にある羊膜を有害なタンパク質分解から保護する一方で、溶液が天然細胞を最適に溶解するように、pHの条件、存在量の低いカルシウムおよび亜鉛イオン、金属イオンキレート剤の存在、ならびにコラゲナーゼに特異的なタンパク質分解阻害剤の使用を選択して調製されることが好ましい。例えば、低張溶解溶液は、pH5.5〜8、好ましくはpH7〜8で、カルシウムおよび亜鉛イオンを含まず、EDTA等の金属イオンキレート剤を含む水の緩衝化溶液を含み得る。さらに、低張溶解溶液で羊膜を処置する間の温度および時間パラメーターの制御も、プロテアーゼの活性を限定するために採用され得る。
【0076】
羊膜の脱細胞化処置は、新しい免疫学的部位の生成も限定することが好ましい。コラーゲンの酵素分解は、免疫原性の高まりを生じると考えられているため、本発明は、細胞代謝、タンパク質産生、および細胞分裂を阻害するのに有効な酵素(例えば、ヌクレアーゼ)で羊膜を処置して、羊膜の組成のタンパク質分解を最小限にして、下にある羊膜の構造を保存することを包含する。本発明の方法に使用され得るヌクレアーゼの例として、エキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼの両方を含む天然細胞DNAおよびRNAの消化に有効なものである。本発明の方法により使用され得るヌクレアーゼの限定しない例として、例えばDNAアーゼI(SIGMA Chemical Company, St. Louis, Mo.)およびRNAアーゼA(SIGMA Chemical Company, St. Louis, Mo.)等の細胞活性を阻害するエキソヌクレアーゼ、ならびに例えばEcoR I(SIGMA Chemical Company, St. Louis, Mo.)およびHind III(SIGMA Chemical Company, St. Louis, Mo.)等の細胞活性を阻害するエンドヌクレアーゼが挙げられる。選択するヌクレアーゼは、ヌクレアーゼの活性に最適なイオン(例えば、マグネシウム、カルシウム)を含む生理学的緩衝溶液に入れられることが好ましい。緩衝化溶液のイオン濃度、処置温度、および処置の長さは、当業者により、常套的な実験から所望レベルのヌクレアーゼ活性を確実に得るように選択されることが好ましい。緩衝液は、ヌクレアーゼが細胞内部に到達するのを促すように低張であることが好ましい。
【0077】
具体的な実施形態では、本発明の羊膜の脱細胞化は、以下のステップを含む。まず、羊膜を清潔な滅菌容器に移し、任意に滅菌水で濯ぎ、滅菌ガーゼで乾燥させる。次いで、羊膜を、母体側面を上にして滅菌トレイ上に載せる。滅菌細胞スクレーパー(例えば、32 cm、PEブレード、PSハンドル、NalgeNunc International)を使用して、羊膜の母体側面から目に見える全ての細胞成分を物理的に除去することにより羊膜を部分的に脱細胞化する。必要であれば、滅菌水を使用して細胞および細胞屑を除去し易くする。羊膜の母体側面上の一部脱細胞化を終了した後、羊膜を裏返して胎児側面を上に向ける。胎児側面上の目に見える全ての細胞屑を、羊膜を裂かないように最小限の圧力を使って細胞スクレーパーで優しく除去する。滅菌水を使用して、細胞および屑を除去し易くしてもよい。
【0078】
一実施形態では、脱細胞化した羊膜を、さらなる処理の前に、滅菌生理溶液(例えば、滅菌0.9%NaCl溶液)で満たされた滅菌容器に入れる。本発明の方法によれば、羊膜の次の処理ステップは、羊膜を滅菌生理溶液に入れてから2〜3時間以内に開始しなければならない。ステップIIの直後にステップIIIが続く具体的な実施形態では、羊膜を、滅菌溶液の入った容器に入れる必要はない。
【0079】
羊膜は、クリーニング処理の間に、例えば滅菌外科用メスを使用して、クリーニングし易くするために整形されるか、またはクリーニングできない領域を除去するために切断され得る。
【0080】
ステップIII.脱細胞化の後、羊膜を洗浄して、細胞タンパク質、細胞脂質および細胞核酸を含み得る細胞屑、ならびに細胞外可溶性タンパク質、脂質およびプロテオグリカン等のあらゆる細胞外屑を確実に除去する。いずれかの作用メカニズムに限定することを意図しないが、この細胞および細胞外屑の除去により、羊膜の免疫原性が低くなる。
【0081】
本発明の羊膜を脱細胞化した後、膜をさらに洗浄して、効果的に、目に見える全ての細胞成分および細胞屑を羊膜の両面から完全に除去する。溶液は、天然組織細胞を有効に溶解するように調剤された水性低張溶液または低イオン強度溶液であることが好ましい。このような水性低張溶液は、脱イオン水または水性低張緩衝液であり得る。水性低張緩衝液は、細胞溶解により放出され得るプロテアーゼの活性不足状態をもたらす添加物(例えば、コラゲナーゼ)をさらに含むことが好ましい。
【0082】
羊膜は、界面活性剤中で(例えば揺動プラットホーム上で)緩やかに攪拌されて、脱細胞化し易くすることが好ましい。特定の実施形態では、羊膜は、少なくとも15分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、または120分間まで攪拌される。羊膜は、界面活性剤脱細胞化の後、上記したように再度物理的に脱細胞化され得る;物理的および界面活性剤脱細胞化ステップは、羊膜の完全性が保たれる限り、目に見える細胞成分および細胞屑が残っていない状態まで、必要に応じて繰り返され得る。
【0083】
具体的な実施形態では、羊膜の洗浄は以下のステップを含む:脱細胞化した羊膜を滅菌容器に入れ、これを羊膜を覆うのに十分な量の脱細胞化溶液で満たす;次いで、羊膜および脱細胞化溶液の入った容器を揺動プラットホーム(例えば、モデル100、VWR Scientific Products Corp., P.O. Box 640169, Pittsburgh, PA 15264-0169)上に置く。その後、脱細胞化溶液に入った羊膜を、揺動プラットホーム上で15分〜120分間攪拌する。攪拌ステップの後、羊膜を容器から取り出し、滅菌溶液(例えば、0.9%NaCl溶液)で満たした清潔な滅菌トレイに入れる。新しい滅菌細胞スクレーパーを使用して、残った脱細胞化溶液を除去し、残留細胞成分があれば羊膜の両側から除去する。このステップは、羊膜の両側から目に見える残留細胞成分全てを除去するのに必要な回数だけ繰り返され得る。
【0084】
特定の実施形態では、羊膜を、脱細胞化ステップの直後(すなわち30分以内)に乾燥させる。あるいはまた、それ以上の処理をすぐに実施しない場合は、羊膜は、乾燥前に28日間まで冷蔵(例えば、2〜8℃の温度にて保存)され得る。脱細胞化羊膜は、3日間以上、ただし28日間未満の間保存され、羊膜を覆う滅菌溶液は周期的(例えば、1〜3日毎)に交換することが好ましい。
【0085】
特定の実施形態では、洗浄後に羊膜を冷蔵しない場合、調製のステップIVに進む前に羊膜を少なくとも3回洗浄する。他の実施形態では、羊膜が冷蔵され滅菌溶液が1回交換された場合、調製のステップIVに進む前に羊膜を少なくとも2回洗浄する。さらに他の実施形態では、羊膜が冷蔵され滅菌溶液が2回以上交換された場合、調製のステップIVに進む前に羊膜を少なくとも1回洗浄する。
【0086】
具体的な実施形態では、脱細胞化羊膜は、滅菌条件下で保存され、それ以上の処理は行わない(すなわち乾燥させない)。ステップIVに進む前に、全ての細菌および血清テストを評価して全てのテストが陰性であることを確認することが必須である。
【0087】
ステップIV.本発明の方法の最後のステップは、本発明の脱細胞化羊膜を乾燥させて、コラーゲンバイオ繊維を生成することを含む。平坦な乾燥コラーゲンシートを生成するあらゆる羊膜乾燥方法が使用され得る。しかし、羊膜は真空状態下で乾燥させることが好ましい。
【0088】
具体的な実施形態では、本発明の脱細胞化羊膜の乾燥方法の例は以下のステップを含む:
乾燥させるための脱細胞化羊膜のアセンブリ.脱細胞化羊膜を滅菌溶液から取り出し、過剰な水分は緩く搾り出す。次いで、例えばトレイ上で、胎児側面を下にして、脱細胞化羊膜を平坦になるまで優しく引き伸ばす。次いで、脱細胞化羊膜を裏返して胎児側面を上に向け、乾燥フレーム、好ましくはプラスチックメッシュ乾燥フレーム(例えば、Quick Count(登録商標)プラスチックキャンバス、Uniek, Inc., Waunakee, WI)上に置く。他の実施形態では、乾燥フレームは、加熱滅菌可能なステンレススチールメッシュである。最も好適な実施形態では、羊膜の約0.5センチが乾燥フレームの端部と重なる。特定の実施形態では、乾燥フレームを超えた重複羊膜部分は、(例えば、クランプまたは鉗子(hemostat)を使用して)フレームの上部をくるむようにする。羊膜を乾燥フレーム上に配置した後、熱ドライヤー(またはジェルドライヤー)(例えば、モデル583、Bio-Rad Laboratories, 200 Alfred Nobel Drive, Hercules, CA 94547)の乾燥プラットホーム上に滅菌ガーゼを置き、プラスチックメッシュ乾燥フレーム上に置かれた羊膜よりも僅かに大きな面積が覆われるようにする。ガーゼ層の全体厚みは、2枚に折りたたまれた(one folded)4×4ガーゼの厚みを超えないことが好ましい。シート様材料を乾燥させるのに適したあらゆる熱乾燥装置が使用され得る。乾燥フレームは、プラスチックフレームの端がガーゼ端を好ましくは0.1〜1.0 cm、より好ましくは0.5〜1.0 cm超えるように、乾燥プラットホーム上のガーゼの上に置かれる。最も好適な実施形態では、羊膜を有する乾燥フレームを、羊膜の胎児側面を上にして、滅菌ガーゼの上に置く。一部の実施形態では、別のプラスチックフレームメッシュを羊膜の上に置く。メッシュフレームおよびその中で乾燥される膜の様子を図4に示す。別の実施形態では、薄いプラスチックのシート(例えば、SW 182、透明PVC、AEP Industries Inc., South Hackensack, NJ 07606)、または生適合性シリコンを、膜で覆われたメッシュの上に置いて、シートが全ての端を十分に超えるようにする。この実施形態では、第2のメッシュフレームは必要ない。
【0089】
代替的な実施形態では、羊膜は、1枚以上のTyvek材の滅菌シート(例えば、医療パッケージング用のTyvekシート、Dupont Tyvek(登録商標), P.O. Box 80705, Wilmington, DE 19880-0705)上に置かれ、任意に1枚のTyvekシートを(プラスチックフィルムを置く前に)膜の上に置く。この代替的処理は、本明細書に記載する特定の用途(例えば、細胞拡張用のマトリックスとしての使用)にとって利点となりうるより滑らかな(すなわち、材料の軸方向とその直角方向との間の繊維圧縮領域の異なるパターンが無い)バイオ繊維を作製する。
【0090】
羊膜の乾燥.好適な実施形態では、本発明は、真空下で本発明の羊膜を熱乾燥することを包含する。真空下での乾燥は約0℃〜約60℃の任意の温度にて実施できるが、羊膜は好ましくは約35℃〜約50℃、最も好ましくは約50℃にて乾燥される。50℃を上回る温度ではコラーゲンのいくらかの分解が予想されることに留意されたい。乾燥温度は、延長プローブを使用した目盛り付きデジタル温度計を使用して設定および点検することが好ましい。減圧は、約-22インチのHgに設定されることが好ましい。羊膜のコラーゲンマトリックスが、例えば水分分析機により測定された際に3〜12%未満の水分を含むようになるまで乾燥ステップを続ける。これを達成するために、羊膜を、例えば約60分間、熱真空乾燥して、脱水羊膜を得てもよい。一部の実施形態では、羊膜は、約30分間〜2時間、好ましくは約60分間乾燥される。任意の作用メカニズムに限定されることを意図するものではないが、低い熱設定と減圧との組合せにより、コラーゲンを変性させることなく脱水状態の羊膜が得られると考えられている。
【0091】
本発明による乾燥処理の終了後、真空ポンプを作動させながら羊膜を約2分間冷却する。
【0092】
羊膜のパッケージングおよび保存.記載する本発明の方法により羊膜を乾燥させた後、膜を乾燥フレームから優しく持ち上げ外す。膜を「持ち上げ外す」ことは以下のステップを含み得る:ポンプが作動している間、羊膜を下に押さえながら、羊膜からプラスチックフィルムを端から優しく外す;羊膜を有するフレームを乾燥プラットホームから持ち上げ外し、羊膜側を上にしてカッティングボード上に置く;フレームの端部から1〜2mm離れた端に沿って切る;次いで、羊膜をフレームから剥がし;その後の用途に応じて決まる適切な大きさに切断する。この段階での羊膜の取扱いは滅菌グローブをはめて行うことが好ましい。
【0093】
羊膜を滅菌容器(例えば、剥離パウチ)に入れ、密封する。本発明の方法により作製されるバイオ繊維は、上述したように長期間の間、室温にて保存され得る。
【0094】
代替的な実施形態では、本発明は、漿膜を含むコラーゲンバイオ繊維を調製する方法を提供する。上述した方法が、漿膜を含むバイオ繊維を調製する方法に適用できると思われる。具体的な実施形態では、本発明は、コラーゲンバイオ繊維を調製する方法を包含し、該方法は以下を含む:羊膜および漿膜を含む胎盤を得ること;該羊膜を該漿膜から分離すること;ならびに該漿膜を脱細胞化すること。具体的な実施形態では、本方法は、脱細胞化した漿膜を洗浄および乾燥することをさらに包含する。
【0095】
5.2.1 三次元足場および積層板の調製方法
本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維を含む、三次元足場、三次元構造および積層板の調製方法を提供する。
【0096】
一部の実施形態では、本発明は、以下を含む、羊膜積層板の調製方法を提供する:羊膜および漿膜を含む胎盤(好ましくはヒト胎盤)を得ること;本明細書に開示する方法を使用して、該羊膜を該漿膜から分離すること;本明細書に開示する方法を使用して、該羊膜を脱細胞化すること;本明細書に開示した方法を使用して、脱細胞化した羊膜を少なくとも1回洗浄すること;少なくとも2枚の脱細胞化羊膜を互いと接触させて積層し、羊膜積層板を形成すること;ならびに本明細書に開示する方法を使用して、羊膜積層板を乾燥させること。
【0097】
あるいはまた、別の実施形態では、羊膜積層板の調製方法は、本発明の方法により調製した少なくとも2枚の羊膜を乾燥させること、および該少なくとも2枚の羊膜を互いと接触させて羊膜積層板を形成することを含む。
【0098】
一部の実施形態では、本発明の方法により作製した羊膜層は、接着剤の存在下で互いと接触させて羊膜積層板を形成してもよい。本発明の方法および組成物で使用する接着剤は、当業者に公知の任意の生物学的接着剤、好ましくは生体適合性接着剤(天然接着剤、例えば、フィブロネクチン、フィブリン、合成接着剤を含むがこれらに限定されない)であり得る。他の実施形態では、本発明の方法により調製される羊膜層は、互いと架橋されて、羊膜積層板を形成する。当業者に公知のあらゆる架橋試薬および方法が本発明の範囲内にあり、化学架橋、ペプチド架橋、UV架橋、放射線架橋、フィブロネクチン架橋、フィブリノゲン架橋、ヒドロゲル架橋が挙げられるがこれらに限定されない。他の実施形態では、本発明の方法により生成された羊膜積層板は、接着剤を含まない。
【0099】
5.3 コラーゲンバイオ繊維の保存および取扱い
本発明は、脱水状態シートとして、室温(例えば、25℃)にて、本発明のコラーゲンバイオ繊維を保存することを包含する。特定の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、または少なくとも29℃の温度にて保存され得る。本発明のコラーゲンバイオ繊維は冷蔵されないことが好ましい。一部の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、約2〜8℃の温度にて冷蔵され得る。他の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、任意の上記温度にて長期間保存され得る。最も好適な実施形態では、本発明のバイオ繊維は、滅菌かつ非酸化条件下で保存される。本発明の方法により作製したバイオ繊維は、特定の温度にて12ヶ月間以上、コラーゲンバイオ繊維の生化学または構造完全性を変化させること無く(例えば、劣化させること無く)、そして生化学的または生物物理学的特性を変化させること無く保存され得る。本発明の方法により作製したバイオ繊維は、コラーゲンバイオ繊維の生化学または構造完全性を変化させること無く(例えば、劣化させること無く)、そして生化学的または生物物理学的特性が変化すること無く数年間保存され得る。本発明の方法により調製した本発明のバイオ繊維は、無限に保たれることが期待される。バイオ繊維は、長期保存に適した任意の容器に保存され得る。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、滅菌二重剥離パウチパッケージに入れられて保存されることが好ましい。
【0100】
本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維の乾燥状態での取扱いを包含する。具体的な実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、使用の前(例えば、手術移植片として使用される前)に整形される。本発明は、当業者により決定される用途に適した本発明のバイオ繊維のあらゆる次元体のものを包含する。一部の実施形態では、本発明は、1×2 cm;2×3cm;4×4cm;5×5cm;または6×8cmのコラーゲンバイオ繊維を包含する。本発明のバイオ繊維は、羊膜の大きさの限界内であらゆる必要な大きさにも切断され得る。
【0101】
本発明のコラーゲンバイオ繊維の表面配向は、目で識別できる。本発明のコラーゲンバイオ繊維は「格子」パターンを有し、これは、当業者による母体と胎児表面との目による識別を可能にする。具体的な実施形態では、コラーゲンバイオ繊維の表面配向は拡大して識別する。当業者には、コラーゲンバイオ繊維の胎児側面はその凹形の(すなわち、へこんだ)格子パターンから識別できることが理解されるであろう。逆に、母体側面は、その凸形の(すなわち、盛り上がった)格子パターンから識別できる。
【0102】
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、使用前の最小限の準備時間を必要とする。好適な実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、5分未満、10分未満、15分未満で使用可能となる。例えば手術移植片としての本発明のコラーゲンバイオ繊維の使用前の準備時間は、脱水状態のコラーゲンバイオ繊維の再水和による活性化を含む。一部の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、手術部位にて水和される。他の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、皿内で滅菌条件下で水和される。本発明は、滅菌生理学的緩衝液を使用した、本発明のコラーゲンバイオ繊維の水和を包含する。具体的な実施形態では、本発明は、滅菌食塩溶液(例えば、滅菌0.9%NaCl溶液)で本発明のコラーゲンバイオ繊維を水和することを包含する。一部の実施形態では、滅菌食塩溶液は緩衝化される。特定の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維の水和は、少なくとも2分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも15分、または少なくとも20分を要する。好適な実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維の水和は5分以内に完了する。さらに別の好適な実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維の水和は10分以内に完了する。さらに別の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維の水和は10分以上かからない。
【0103】
例えば手術移植片としての使用のために一旦水和した本発明のコラーゲンバイオ繊維は、当業者が判断する際に当該分野の羊膜と比べて縫合性が向上している。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、当該分野の羊膜よりも、裂けにくく、もろくない。本発明は、効果的に縫合できるコラーゲンバイオ繊維を包含する。
【0104】
5.3.1 滅菌
本発明のバイオ繊維の滅菌は、当業者に公知の方法を使用して電子ビーム照射により行われることが好ましい(例えば、Gorham, D. Byrom(編), 1991, Biomaterials, Stockton Press, New York, 55-122)。細菌またはその他の汚染している可能性のある生物の少なくとも99.9%を殺すのに十分な照射線量は全て本発明の範囲内にある。好適な実施形態では、少なくとも18〜25 kGyの線量を使用して、本発明のバイオ繊維の最終的な滅菌を達成する。しかし、本発明のバイオ繊維の滅菌は、抗生物質またはグリセロール中での保存は含まない。
【0105】
5.4 本発明のコラーゲンバイオ繊維の使用方法
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、一部にその物理的性質(例えば、当該分野で使用されている従来膜と比較した場合の生体力学的強度、柔軟性、縫合性、低い免疫原性等)から、医療および外科分野において多数の利用用途を有する。例えば、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、従来技術の膜(例えば、ゴアテックスTM等の合成非再吸収PTFE膜;グリコリド(glycolide)およびラクチドコポリマーから形成される合成非再吸収膜;WO-88/08305、DE-2631909、米国特許第5,837,278号に開示されている膜)と比べて、組織再生誘導法のための治療利用性が向上していると予想される。
【0106】
本発明のコラーゲンバイオ繊維の調製方法は、バイオ繊維の三次および四次構造を確実に保持するため、医療および外科分野における意図する用途に理想的なバイオ繊維が得られる。以下に詳細に記載するように、本発明は、様々な医療および歯科的用途(血管修復、子宮修復、腱代替、角膜代替、人工皮膚、歯周病の治療、および創傷治癒が挙げられるがこれらに限定されない)に適した物理的性質を有するコラーゲンバイオ繊維を提供する。意図する用途に応じて、本発明は、二次元膜(例えば、管を形成するように整形できる膜)、三次元足場(例えば、インプラント)、または一次元の繊維としてコラーゲンバイオ繊維を使用することを包含する。
【0107】
5.4.1 本発明のコラーゲンバイオ繊維を使用した治療方法
5.4.1.1 皮膚症状の治療方法
ヒト皮膚は、表皮および真皮からなる複合物質である。表皮の上部は角質層であり、これは皮膚の最も堅い層であると共に、周囲環境によって最も影響を受けるものである。角質層の下は、表皮の内部部分がある。表皮の下は真皮乳頭層があり、これは皮膚の微起伏を規定する比較的疎性の結合組織からなる。真皮乳頭層の下にある真皮網状層は、空間的に編成された密な結合組織である。真皮網状層はまた、粗いしわを伴う。真皮の下には皮下層がある。
【0108】
皮膚の主な機能としては、保護、排出、分泌、吸収、体温調節、色素生成、蓄積、知覚、および免疫学的プロセスの調節が挙げられる。これらの機能は、老齢および過剰な日光露出による皮膚の構造的変化により悪影響を受ける。皮膚老齢に伴う生理学的変化としては、バリア機能の障害、および表皮細胞のターンオーバーの低下が挙げられる。例えば、Cerimele, D.ら, 1990, Br. J. Dermatol., 122 Suppl.35, p. 13-20を参照。しかし、従来技術の方法および組成物は、皮膚症状の改善(例えば、皮膚の弾力性および柔軟性の改善、またはしわ取り)にはある程度の成果しかあげていない。
【0109】
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、医療用途および美容用途を有する。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、皮膚症状(皮膚外傷、老齢皮膚、しわ、小じわ、皮膚の薄層化、皮膚の弾力性の低下、肌荒れ、先天性および変性皮膚症状、コラーゲンVII欠損、ならびに日焼けで損傷した肌が挙げられるがこれらに限定されない)を治療する臨床的および治療的利用性を有する。特定の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、にきび痕、眉間のしわ、切除傷、または当該分野で公知のその他のあらゆる軟組織不具合等の皮膚症状の皮下インプラントとして使用できる。本発明のコラーゲンバイオ繊維には、皮膚老齢に伴う変化を治療する臨床的および治療的利用性を有する。特定の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、皮膚しわ、ならびに/または皮膚弾力性および柔軟性等のその他の症状を改善することにおいて利用性を有する。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、皮膚症状の治療のために、インプラントとして、積層板として、または三次元巻き形態として使用され得る。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、このような皮膚症状の治療の当該分野で公知の方法(例えば、米国特許第5,972,999号、同第5,418,875号、同第5,332,579号、同第5,198,465号)と比べて、一部にはその安定性からより長期に及ぶ効果を提供し得るため、臨床的利用性が向上していると思われる。
【0110】
好適な実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、皮膚症状を治療するために当該分野で公知の1つ以上の薬剤を補充される。このような薬剤の例としては、ビタミン、ミネラル、カテキン基質剤形、N-アセチルグルコサミン、およびグルコサミンが挙げられるがこれらに限定されない(例えば、Neldner, 1993, Amer. Acad. Derm. Annl. Mtg. Wash. DC.;Lubell 1996, Cosmetic Dermatol, 9(7): 58-60;Swaineら, 1995, J. Am. Board of Family Practice, 8(3): 206-16;Shanら, 1994, Kidney International, 46(2): 388-95を参照;これらは全て参照により本明細書に全体的に援用する)。
【0111】
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、抗生物質(クリンダマイシン、ミノサイクリン、ドキシシクリン、ゲンタマイシン等)、ホルモン、成長因子、抗癌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン、抗炎症剤、銀等(ただしこれに限定されない)の抗感染薬(硝酸銀およびスルファジアジン銀を含むがこれらに限定されない銀塩等)、元素銀、抗生物質、殺菌酵素(リソゾーム等)、創傷治癒薬(PDGF、TGF、チモシンを含むがこれらに限定されないサイトカイン等)、創傷治癒薬としてのヒアルロン酸、創傷シーリング材(トロンビンを含むか含まないフィブリン等)、細胞誘引物質、および足場剤(フィブロネクチン等)等が挙げられるがこれらに限定されない、皮膚症状の治療において利用性のある任意の生分子を含浸され得る。具体的な実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、少なくとも1つの成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子等)を含浸され得る。バイオ繊維はまた、特定の生化学プロセスの特定の阻害剤(例えば、膜受容体阻害剤、キナーゼ阻害剤、成長阻害剤、抗癌剤、抗生物質等)等の小有機分子等の小分子で含浸され得る。
【0112】
5.4.1.2 創傷および火傷
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、一部にその物理的性質により、、当該分野で公知の他の生体材料(例えば、米国特許第3,157,524号;同第4,320,201号;同第3,800,792号;同第4,837,285号;同第5,116,620号に記載のもの)と比べて、創傷包帯として、硬組織および/または軟組織修復を補強するのに臨床的用途が向上している。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、コラーゲンの天然の四次構造を保持するために、コラーゲンマトリックスの間隙への細胞移動を介した組織内部成長が改善されている。本発明のバイオ繊維は、細胞がコラーゲンマトリックスに付着し成長し、それら自体の高分子を合成することを可能にする。これにより、細胞は新しいマトリックスを生成し、これは新しい組織の成長を可能にする。このような細胞発達は、繊維、フリースおよび可溶性コラーゲン等の他の公知コラーゲン形態上では見とめられない。
【0113】
一部の実施形態では、本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維を、例えば接着テープを使用して創傷が覆われるように、被検体の創傷部位上の皮膚上(すなわち、角質層上)に直接置くことにより創傷を治療することを包含する。他の実施形態では、本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維をインプラント(例えば、皮下インプラント)として使用して創傷を治療することを包含する。
【0114】
本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維に、組織内部成長を促進可能な高分子を加えることにより、創傷治癒の速度を向上することを包含する。このような高分子としては、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、ラミニン、およびプロテオグリカンが挙げられるがこれらに限定されない(例えば、Doillonら (1987) Biomaterials 8:195-200;ならびにDoillonおよびSilver(1986) Biomaterials 7:3-8を参照)。
【0115】
本発明は、本明細書の5.4.2.7節に記載するように、薬理活性薬(胎盤由来成長因子、インスリン様成長因子、上皮成長因子、形質転換成長因子β、血管新生因子、抗生物質、抗菌剤、殺精子剤、ホルモン、酵素、酵素阻害剤が挙げられるがこれらに限定されない)、および上記生分子を、本発明のコラーゲンバイオ繊維に取り込んで、皮膚に送達することをさらに包含する。薬理活性薬は、生理学的有効量で供給されることが好ましい。
【0116】
一部の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、創傷部位に適用される前に、生存細胞(同種幹細胞、幹細胞、および自己成熟細胞が挙げられるがこれらに限定されない)でさらに密集される。
【0117】
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、創傷感染(例えば、手術または外傷創傷の破壊後に生じる創傷感染)の治療のために特に有用である。特定の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、創傷感染の治療に有用な治療的有効量の薬剤(抗生物質、抗微生物薬、および抗菌薬が挙げられるがこれらに限定されない)を含浸される。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、当該分野で公知の微生物(例えば、病原生物の溜まり場として知られるヒト身体で起きた創傷に感染するか、または周囲発生源からの微生物)による創傷感染の治療において臨床的および治療的利用性を有する。本発明の方法および組成物により創傷中でのその成長が低減または予防され得る微生物の限定しない例としては、S.オーレウス(S. aureus)、St.エピダーミス(St. epidermis)、β-溶血性連鎖球菌(beta haemolytic Streptococci)、大腸菌、クレブシエラ(Klebsiella)、およびシュードモナス(Pseudomonas)種、ならびに嫌気性細菌ではクロストジウム・ウェルキイ(Clostridium welchii)またはターチウム(tartium)があり、これらは主に深い外傷創傷におけるガス壊疽の原因となる。
【0118】
他の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、表皮創傷、皮膚創傷、慢性創傷、急性創傷、外部創傷、内部創傷(例えば、コラーゲンバイオ繊維を手術中に吻合部位に巻いて、縫合線からの出血を防いだり、身体が縫合材に接着するのを防ぐ)、先天性創傷(例えば、栄養障害性表皮水疱症)等の(ただしこれらに限定されない)創傷治療のために使用される。特に、コラーゲンバイオ繊維は、床ずれ(例えば、褥瘡性潰瘍)の治療における利用性が向上している。床ずれは、長い安静状態にある患者(例えば、四肢麻痺者および下半身不随者)で生じることが多く、局所的な圧力の影響により皮膚損失を患う。この結果生じる圧力痛は、皮膚腐食、ならびに表皮および皮膚付属器(skin appendages)の損失を生じる。
【0119】
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、火傷(第1度火傷、第2度火傷(部分的厚み火傷(partial thickness burns))、第3度火傷(完全厚み火傷)、火傷創傷の感染、切除および非切除火傷創傷の感染、移植創傷の感染、ドナー部位の感染、既に移植または治癒した火傷創傷または皮膚移植ドナー部位からの上皮損失、ならびに火傷創傷膿痂疹が挙げられるがこれらに限定されない)の治療においても使用できる。
【0120】
5.4.1.3 組織工学
本発明は、(例えば、上皮成長および分化を支持するための)培養皮膚細胞の輸送用のビヒクルとしての、本発明のコラーゲンバイオ繊維の使用を包含する。特定の実施形態では、バイオ繊維を細胞で密集させて、組織および/または(身体の器官または腺の構造と表面的外見または構造が似ている)類器官を形成するために、バイオ繊維を細胞接着因子で処置して、バイオ繊維を新しい細胞で再密集させる処理の間の細胞とバイオ繊維との付着を増強できる。特定の実施形態では、細胞の付着の程度は、羊膜を血清(例えば、ヒトまたはウシ胎仔血清)で処置することにより高まる。他の実施形態では、細胞の付着の程度は、羊膜をフィブロネクチンで処置することにより高める。
【0121】
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、誘導組織再生技術において(例えば、疾患または損傷組織を再生または交換するために)使用され得る。本発明は、治療部位にバイオ繊維を直接移植することによるか、または人工器官の形成による、本発明のバイオ繊維の使用を包含する。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、手術(特に口腔または歯科手術)(5.4.2.2節により詳細に記載)の後等、創傷治癒および/または真皮交換が望ましい任意の状況下で特に有用である。誘導組織再生における本発明のコラーゲンバイオ繊維の利用性は、一部、再生が望ましい領域への他の組織の内部成長を防ぐ状況を提供する能力にある。
【0122】
例えば、腐敗または疾患により歯根の実質的な部分を除去する場合、健康な骨再生が生じて除去した骨組織を置き換えることが望ましい。しかし、骨の除去により残る空洞は、結合組織によりすぐに埋まり、この結合組織の内部成長は骨再生を事実上妨げる。このような内部成長を防ぐために、本発明のコラーゲンバイオ繊維を、創傷空洞の周縁に手術により挿入できる。バイオ繊維は、望ましくない細胞型による創傷空洞への侵入を防止または妨害して、空洞内で好ましい細胞を成長させて、創傷を治癒する。
【0123】
一部の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、例えば、スティーブンソン・ジョンソン症候群、化学火傷の後に続く輪部幹細胞欠損、または化学および/もしくは熱火傷を患う被検体における、眼球表面再構築用の移植片としての利用性を有する。本発明のバイオ繊維は、例えば、上皮形成を促進することにより、向上した臨床的利用性を有すると予想される。本発明のバイオ繊維は、組織工学的目的のために当該分野で使用される羊膜と比べて臨床的利用性が向上していることが予想される。例えば、Gomesら, 2003, Opthalmology, 119: 166-73;Tiら, 2001, Opthalmology, 108: 1209-1217;Mellerら, 2000, Opthalmology, 107:980-9;Grisら, 2002 Opthalmology, 109: 508-12;Koizumiら, 2000, Invest. Opthal. and Visual Science, 41: 2506-13;Piresら, 1999, Arch. Opthalmol. 117: 1291-7;Tsengら, 1998, Arch. Opthalmol. 116:431:441;Heilingenhausら, 2001 Invest. Opthal. and Visual Science 42: 1969-74;Andersonら 2001, Br. J. Opthalmol. 85: 567-75を参照。
【0124】
本発明は、コラーゲンバイオ繊維を生存細胞(成熟組織細胞、自己細胞、および幹細胞が挙げられるがこれらに限定されない)で密集させることを包含する。本発明の方法で使用する幹細胞は、全能幹細胞、多能性幹細胞、または分化組織特異的細胞であり得る。本発明の方法で使用する幹細胞は、当業者に公知の標準的方法で得ることができる。幹細胞は、2002年2月13日に出願された米国特許出願第10/74,976号(参照により本明細書に援用する)に開示された方法により回収することが好ましい。
【0125】
本発明は、生体工学組織および類器官(血管、心臓弁、肝臓、膵臓、および靭帯が挙げられるがこれらに限定されない)の発達のための、本発明のコラーゲンバイオ繊維の(例えば、三次元足場としての)使用を包含する。任意の作用メカニズムに限定されることを意図するものではないが、生体工学組織としての本発明のバイオ繊維の利用性は、一部に、血液凝固を促進する止血性質によるものである。本発明のバイオ繊維は、人工血管、および血管手術の移植片として特に有用である。本発明のバイオ繊維は、例えば、血管手術過程の間に縫合線からの出血を防止、および身体が縫合材への接着するのを防止するために血管の(または血管と移植片との)吻合部位を覆う周縁カバーとして使用できる。
【0126】
5.4.2 手術過程におけるコラーゲンバイオ繊維の使用方法
本発明は、手術移植片としての本発明のコラーゲンバイオ繊維の使用を包含する。本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維またはその積層板を含む手術移植片を包含する。本発明は、手術用移植片の調製および使用方法をさらに包含する。
【0127】
一部の実施形態では、本発明は、手術用移植片を被検体の手術部位(例えば、内部部位または外部部位)に直接適用する、手術過程における手術用移植片の使用方法を包含する。一部の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、以下により詳細に開示するように、例えば、縫合線からの出血を防止、および身体が縫合材への接着するのを防止するために、手術過程の間に手術用移植片として使用される。他の実施形態では、手術用移植片を、例えば消化器手術の間の消化管の吻合部位を覆うカバーとして、縫合線から腸液および胆汁が漏れるのを防止、ならびに身体が縫合材へ接着するのを防止するために使用する。
【0128】
本発明は、火傷または手術皮膚創傷を覆うため;全ての腹腔内手術における付着、または腹部、胸腔および心膜を覆う漿膜表面上におけるその他の再構築を防ぐため;口腔、鼻腔、気道、消化管および尿生殖路の内側を覆う全ての粘膜表面を再構築するため;脳手術における硬膜修復を支持する基板として;中枢および抹消神経系における神経再生を促すための基板として;ならびに関節または腱修復における付着を防止するための軟組織を再構築するために、移植片または包帯としてバイオ繊維を使用することを包含する。
【0129】
本発明は、本発明の手術用移植片に、具体的に意図する手術用途に応じて1つ以上の生分子、好ましくは治療薬を含浸させることを包含する。このような生分子としては、抗生物質(クリンダマイシン、ミノサイクリン、ドキシシクリン、ゲンタマイシン等)、ホルモン、成長因子、抗癌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン、抗炎症剤、銀等(ただしこれに限定されない)の抗感染薬(硝酸銀およびスルファジアジン銀を含むがこれらに限定されない銀塩等)、元素銀、抗生物質、殺菌酵素(リソゾーム等)、創傷治癒薬(PDGF、TGF、チモシンを含むがこれらに限定されないサイトカイン等)、創傷治癒薬としてのヒアルロン酸、創傷シーリング材(トロンビンを含むか含まないフィブリン等)、細胞誘引物質、および足場剤(フィブロネクチン等)等が挙げられるがこれらに限定されない。具体的な例では、コラーゲンバイオ繊維は、少なくとも1つの成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子等)を含浸されてもよい。バイオ繊維は、小有機分子(例えば、膜受容体阻害剤、キナーゼ阻害剤、成長阻害剤、抗癌剤、抗生物質等の特定の生化学プロセス特異的阻害剤等)を含浸されてもよい。
【0130】
本発明は、本発明の手術用移植片を生存細胞(幹細胞、全能幹細胞、多能性幹細胞、マルチポテント幹細胞、組織特異性幹細胞、胚様幹細胞、単一分化前駆細胞、線維芽様細胞が挙げられるがこれらに限定されない)で密集させることをさらに包含する。他の実施形態では、本発明は、本発明の手術用移植片を、特定のクラスの前駆細胞(軟骨細胞、肝細胞、造血性細胞、膵臓実質細胞、神経芽細胞、および筋肉前駆細胞が挙げられるがこれらに限定されない)で密集することを包含する。
【0131】
5.4.2.1 眼科
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、眼関連疾患または障害の治療における臨床的および治療的利用性を有する。本発明のバイオ繊維は、眼球表面疾患(潰瘍形成/せん孔、水疱性角膜症、眼球類皮/腫瘍、原発性翼状片、永久性角膜上皮欠損、急性および慢性アルカリ火傷、熱傷、無虹彩、アトピー性角膜炎、特発性輪部幹細胞欠損、角膜パンヌス、新血管形成、リウマチ様角膜溶解、眼性瘢痕性類天疱瘡、ろ過胞漏れ、露出型アハメッド弁管、後に瞼球癒着症を伴うセラチア蜂巣炎、ならびに急性および慢性スティーブンソン・ジョンソン症候群が挙げられるがこれらに限定されない)の治療および/または予防のために特に有用である。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、潰瘍形成を伴う永久性角膜上皮欠損の治癒を促進するために;上皮形成を促進するために;上皮および幹細胞の成長を促進するために;炎症および痛みを低減するために;血管形成および瘢痕化を阻害するために;上皮表現型を復元するために;ならびに翼状片の「露出した(bare)強膜」の除去の間の結膜自家移植片の基質代用物として、特に有効である。
【0132】
本発明は、好ましくはヒトにおける、最も好ましくは視力が乏しいヒトにおける、症候性水疱性角膜症の治療のために、本発明のコラーゲンバイオ繊維を使用した移植を包含する。本発明のバイオ繊維は、症候性水疱性角膜症、特に結膜弁(flap)構築の治療のために当該分野で使用される他の標準的手順と比べて治療的および臨床的利用性が向上していると予想される。症候性水疱性角膜症、特に結膜弁構築の治療のために当該分野で使用される他の標準的手順と比べた、本発明のバイオ繊維を使用した移植の利点は、例えば、痛みの低減、動作の緩和、美容上より許容可能な外観、ならびに下垂症および輪部幹細胞欠損等の合併症の低減が挙げられる。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、潰瘍形成を伴う角膜上皮欠損の治癒を促進するための結膜弁の改善された代用物;円蓋部結膜溶解(symbelpharon lysis)に対する結膜表面再構築の改善された方法;結膜または角膜表面からの、腫瘍、損傷または瘢痕組織の改善した手術除去;水疱漏れ(bleb leakage)の修正による改善された緑内障手術方法;翼状片の「露出した強膜」の除去の間の結膜自家移植片の改善した基質代用物;および帯状角膜症の再発の改善された予防方法、を提供する。
【0133】
本発明はまた、眼科手術用移植片としてのバイオ繊維の使用も提供する。本発明は、レシピエントに付着した場合にレシピエントに送達され得る1つ以上の治療薬をさらに含む本発明のバイオ繊維を含む移植片の調製を包含する。本発明のバイオ繊維を使用して送達され得る治療薬の例としては、ピロカルピン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン(netilmycin)、硫酸ポリミクシンB(polymyxin B sulfate)、トリメトプリム、アンホテリシンB、抗癌剤、抗生物質、サイクロスポリン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0134】
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、エキシマレーザ光屈折矯正/治療角膜切除術により引き起こされる角膜の霞みを低減することにも利用性を有する。
【0135】
眼科手順における使用のための本発明のコラーゲンバイオ繊維は、様々な構成(インサート、シールド、粒子、ジェル、水性注射液、スポンジ、フィルムが挙げられるがこれらに限定されない)で提供され得る。
【0136】
当業者に公知の眼科移植片用の従来手術技術は、本発明に包含される。
【0137】
眼科手術移植片としての本発明のコラーゲンバイオ繊維の使用についてのプロトコールの例は、以下のステップを含み得る:疾患した角膜および/または結膜組織を除去するステップ;本発明の方法により調製した手術用移植片を滅菌条件下で得る、角膜上皮または露出した強膜を覆うように自由裁量技術により整形するステップ。縫合を使用して、移植片を露出した強膜と結膜との接合部に固定する;主要(cardinal)縫合を行う;その後移植片の表面上に均一な張力分布を得るために割り込み縫合を使用する;これにより、移植片と、レシピエントの強膜または角膜との間の間隙を回避できる。移植片と宿主との接合部では、移植片の自由端はレシピエント結膜の下に残って、ドナー組織との接合点において基底膜の上で宿主上皮がスライド可能であるようにしなければならない。さもなくば、移植片はレシピエントにより押し出されてしまう。
【0138】
5.4.2.2 歯科
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、歯科において特定の利用性を有する(例えば、歯周手術、歯周組織を再生させるための組織再生誘導法、骨再生誘導法、および歯根被覆(root coverage))。本発明は、歯周骨内欠損(整合(matched)両側性歯周欠損、歯間骨内欠損、深部(deep)3壁性骨内欠損、2壁性骨内欠損、および骨内欠損2および3が挙げられるがこれらに限定されない)の再生を促進するための本発明のコラーゲンバイオ繊維の使用を包含する。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、当該分野で公知の他の技術(例えば、Quteishら, 1992, J. Clin. Periodontol. 19(7): 476-84;Chungら, 1990, J. Periodontol. 61(12): 732-6;Mattsonら, 1995, J. Periodontol. 66(7): 635-45;Benqueら, 1997, J. Clin. Periodontol. 24(8): 544-9;Mattsonら, 1999, J. Periodontol. 70(5): 510-7に開示されるような架橋コラーゲン膜の使用)と比べて、歯周骨内欠損の治療において向上した治療利用性および向上した臨床パラメーターを有すると予想される。本発明のコラーゲンバイオ繊維を使用して向上する臨床パラメーターの例としては、当業者に公知の、歯垢および歯肉指数スコア、プロービングポケット深さ、プロービング付着深さ、ならびに分岐部関与(furcation involment)および骨欠損の分類が挙げられるがこれらに限定されない。
【0139】
本発明は、第II級分岐部欠損(class II furcation defect)(両側性欠損、両頬第II級下顎大臼歯分岐部欠損、および両側性下顎分岐部欠損が挙げられるがこれらに限定されない)を治療するための本発明のバイオ繊維の使用も包含する。第II級分岐部欠損を治療する際の本発明のコラーゲンバイオ繊維の利用性は、一部に、分岐部欠損において失われた歯周組織を再生する能力にある。本発明のバイオ繊維は、第II級分岐部欠損治療のために当該分野で使用されるコラーゲン膜(Paulら, 1992, Int. J. Periodontics Restorative Dent. 12: 123-31;Wangら, 1994, J. Periodontol. 65: 1029-36;Blumenthal, 1993, J. Periodontol. 64: 925-33;Blackら, 1994, J. Periodontol. 54: 598-604;Yuknaら, 1995, J. Periodontol. 67:650-7に開示されるもの等)と比べて、向上した治療および臨床的利用性を有することが予想される。
【0140】
本発明は、歯根被覆手順における本発明のバイオ繊維の使用をさらに包含する。歯根被覆における本発明のバイオ繊維の利用性は、一部に、組織再生誘導法の原理に基づいて、失われた、損傷した、または疾患のある歯肉組織に置き換わる能力にある。本発明のバイオ繊維は、上記引用した理由により、Shiehら, 1997 J. Periodontol., 68:770-8;Zahediら, 1998 J. Periodontol. 69: 975-81;Ozcanら, 1997 J. Marmara Univ. Dent. Fa. 2: 588-98;Wangら, 1997 J. Dent. Res. 78(特別発行): 119(Abstru. 1006) に開示されるもの等の歯根被覆に従来使用されている技術のコラーゲン膜と比べて、歯根被覆における臨床利用性が向上していると思われる。
【0141】
本発明は、歯周病(歯周炎および歯肉炎が挙げられるがこれらに限定されない)を患う被検体におけるコラーゲンバイオ繊維の使用をさらに包含する。本発明のバイオ繊維は、スケーリングおよび歯根治療方針(planning)手順の補助としての臨床的利用性も有する。本発明は、本発明のコラーゲンバイオ繊維を使用して、歯周病を患う被検体を治療することを包含する。本発明のコラーゲンバイオ繊維を使用して被検体の歯周病を治療する方法の例は、(好ましくは、グルコン酸クロルヘキシジン等の抗生物質で含浸された)コラーゲンバイオ繊維を、被検体の1つ以上の歯周ポケット(例えば、5 mm以上)に挿入すること、を含む。コラーゲンバイオ繊維は、生分解性であることが好ましい。
【0142】
歯科用に使用される本発明のコラーゲンバイオ繊維は、治療する歯科障害の種類に応じて1つ以上の生分子で含浸されてもよい。歯科障害の治療のための当該分野で公知のあらゆる生分子が、本発明の方法および組成物に包含される。具体的な実施形態では、感染を伴う歯科障害の治療において使用するコラーゲンバイオ繊維は、1つ以上の抗生物質(ドキソサイクリン(doxocyclin)、テトラサイクリン、グルコン酸クロルヘキシジン、およびミノサイクリンが挙げられるがこれらに限定されない)で含浸され得る。
【0143】
5.4.2.3 神経科
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、損傷神経を修復、特に切断された抹消神経の修復、および神経手術過程においても有用である。本発明は、例えば、硬膜置換および末梢神経修復における、コラーゲンバイオ繊維の使用を包含する。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、上述した理由のために、当該分野で使用される他の方法(例えば、Bergerら, 1970, Acta. Neurochir. 23: 141;Duckerら, 1968, Mil. Med. 133: 298;米国特許第4,778,467号; 同第4,883,618号;同第3,961,805号; 同第5,354,305号)とは対照的に、硬膜代用物としてまたは神経修復において向上した臨床利用性を有する。
【0144】
一部の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、神経吻合周辺の人工器官として使用され得る(例えば、末梢神経吻合を包むために使用され得る)。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、例えば、修復領域に渡る長手方向結合組織の外郭構造の形成を促進して、長手方向パターンの鞘細胞および軸索再生を生じることにより、神経修復において特に利用性を有する。
【0145】
末梢神経の修復は、ニューロラフィー(neurorraphy)として知られる手順において縫合を使用して通常行われる(Jenningsら, 1955, Surgery: 206)。しかし、このアプローチは、切断神経の縫合方法は困難であるため、成果に限界があった。従って、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、例えば、神経端部を本発明のバイオ繊維を含む管状人工器官で囲むことにより、切断端部を接近させて再生させる、神経修復の縫合無用方法の代替方法を提供し得る。
【0146】
5.4.2.4 泌尿器科
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、尿失禁の矯正において特に利用性を有する。尿失禁は、尿貯蔵中に尿道を閉じたままにすることに不具合を有することから生じる。原因は、外因性のものであり得る(例えば、尿道および膀胱頚部の身体構造的支持が乏しいと、失禁を生じ、骨盤底再懸垂(resuspension)に反応する)。あるいはまた、尿道不具合は内因性であり得る(すなわち、尿道機能が乏しい)。従来、コラーゲン、脂肪、シリコン等の充填剤を使用して矯正される(Lightner, 2002, Current Opinion in Urology, 12(4): 333-8の概論を参照)。本発明のコラーゲンバイオ繊維は、当該分野で記載される充填剤と比べて、利用性が向上している(すなわち、排尿の抑制を改善する)。さらに、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、治療的利用性が向上している(例えば、局所合併症の低下、尿路感染の低下、宿主反応が無い、確かな耐久性、およびより高い安全性)。
【0147】
尿失禁の矯正における本発明のコラーゲンバイオ繊維の利用性は、一部に、本明細書に記載するコラーゲンバイオ繊維特有の物理的特徴、特にその非免疫原性にある。一部の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維を、インプラント(例えば、尿道インプラント)として使用する。特定の理論に限定されることを意図するものではないが、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、例えば、尿道締め圧、および尿の能動的でない流出に対する抵抗を高めることにより、向上した治療的利用性を有しうる。
【0148】
5.4.2.5 整形外科
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、整形手術過程において使用され得る。特定の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、整形外科的欠陥(例えば、後天性または先天性欠陥)のために使用され得る。骨腫瘍の外傷または外科的再発(surgical resurrection)により生じる局所欠陥の再構築は、整形外科または顎顔面手術における主要な課題である。典型的に、合成骨代用物、またはコラーゲン性膜は、一部に、骨誘発活性(osteoinductive activities)により使用されてきた(例えば、Raoら, 1995, J. Biomater. Sci. Polymer Edn. 7(7):623-45を参照)。しかし、共通した問題は、移植材料により生じる全身性感染であった。しかし、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、整形外科的欠陥において使用する骨代用物として、特に免疫原性が低いために、当該分野で使用される材料よりも有利である。一部の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、腱、靭帯、および軟骨を再構築するための人工器官として使用され得る。他の実施形態では、本発明のコラーゲンバイオ繊維は、骨代用物としての人工器官として使用され得る。
【0149】
5.4.2.6 心臓血管手術
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、例えば、(血管の先天性奇形および疾患弁の矯正のために)大血管および小血管を構築するための人工器官として、心臓血管手術過程において使用され得る。
【0150】
本発明のバイオ繊維は、特に、血管手術における移植片(例えば、静脈または動脈移植片)としての利用性を有する。血管手術におけるバイオ繊維の利用性は、一部に、その非毒性、非免疫原性;安定性;取扱い易さ;抗血栓形成性質;血管壁の最小限の移植間隙率;様々な大きさでの入手可能性;材料の再現性にある。一部の実施形態では、本発明のバイオ繊維は、弁代用物として使用され得る。
【0151】
5.4.2.7 薬剤送達
本発明のコラーゲンバイオ繊維は、薬剤(例えば、治療薬)の制御された送達のための薬剤送達ビヒクルとして使用され得る。一部の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、1つ以上の治療薬を被検体(好ましくはヒト)に送達する。本発明の範囲内に包含される治療薬は、タンパク質、ペプチド、多糖類、多糖コンジュゲート、遺伝子利用型ワクチン、弱毒生ワクチン、全細胞である。本発明の方法において使用する薬剤の限定しない例としては、抗生物質、抗癌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤;ワクチン;麻酔薬;鎮痛剤;抗ぜんそく薬;抗炎症剤;抗抑制剤;抗関節炎薬;抗糖尿病薬;抗精神病薬;中枢神経系刺激薬;ホルモン;免疫抑制剤;筋肉弛緩剤;プロスタグランジンがある。
【0152】
コラーゲンバイオ繊維は、被検体(好ましくは、ヒト)に1つ以上の小分子を制御下で送達するための送達ビヒクルとして使用され得る。一部の実施形態では、コラーゲンバイオ繊維は、1つ以上小分子を、被検体(好ましくはヒト)に送達する。本明細書で使用する「小分子」という用語およびそれに類似する用語としては、ペプチド、ペプチド模倣体、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、約10,000グラム未満/モルの分子量を有する有機もしくは無機化合物(すなわち、ヘテロ有機および有機金属化合物を含む)、約5,000グラム未満/モルの分子量を有する有機もしくは無機化合物、約1,000グラム未満/モルの分子量を有する有機もしくは無機化合物、約500グラム未満/モルの分子量を有する有機もしくは無機化合物、約100グラム未満/モルの分子量を有する有機もしくは無機化合物、ならびにこのような化合物の塩、エステルおよびその他の製薬上許容可能な形態が挙げられるがこれらに限定されない。このような化合物の塩、エステルおよびその他の製薬上許容可能な形態も包含される。
【0153】
特定の実施形態では、薬剤送達用ビヒクルとしての本発明のコラーゲンバイオ繊維は、当該分野で公知の他の薬剤送達系と比べて、薬剤の吸収を向上させ;薬物動態学的プロファイルおよび薬物の全身分布を改善する。薬理動態が改善するということは、例えば、最大血漿濃度を得るまでの時間(Tmax);最大血漿濃度の大きさ(Cmax);検出可能な血液または血漿濃度が引き出されるまでの時間(Tlag)等の標準的薬物動態学的パラメーターにより測定して得られる薬物動態学的プロファイルの向上を意味する。吸収が向上するということは、このようなパラメーターにより測定した場合に薬剤の吸収が改善されることを意味する。薬物動態学的パラメーターの測定は、当該分野において常套的に実施されている。
【実施例】
【0154】
6.1 コラーゲンバイオ繊維の産生方法
材料
コラーゲンバイオ繊維の調製において、以下の材料を使用した。
【0155】
材料/機器
・送達記録のコピー
・材料/家族病歴/インフォームドコンセントのコピー
・由来源バーコードラベル(ドナーID番号)
・回収番号(入ってくる材料に連番をつける)
・組織処理記録(書類ID #ANT-19F);各ロット番号の処理の詳細記録を維持する
・ヒト胎盤(処理開始時において48時間未満のもの)
・滅菌外科クランプ/鉗子
・滅菌ハサミ
・滅菌外科用メス
・滅菌細胞スクレーパー(Nalgene NUNC Int. R0896)
・滅菌ガーゼ(非滅菌PSS 4416を滅菌)
・濯ぎ用滅菌ステンレススチールトレイ
・処理用消毒ステンレススチールトレイ
・消毒プラスチックビン
・滅菌0.9%NaCl溶液(Baxter 2F7124)
・滅菌水(Milli Q plus 09195またはBaxter 2F7113)
・滅菌標本容器(VWR 15704-014)
・個人保護用用具(滅菌および非滅菌グローブを含む)
・認定済みクリーンルーム
・予め調製した脱細胞化溶液(D-細胞);0.01〜1%デオキシコール酸ナトリウム塩水和物
・消毒ビン
・揺動プラットホーム(VWRモデル100)
・タイマー(VWR 21376890)
・消毒プラスチックフレームメッシュ
・PVCラップフィルム
・真空ポンプ(Schuco-Vac 5711-130)
・ジェルドライヤー(すなわち、熱ドライヤー;BioRadモデル583)
・消毒ステンレススチールカッティングボード
・パッケージ用パウチ
・滅菌ステンレススチール定規(General Tools MFG. Co 1201)
・追跡可能デジタル温度計(モデル61161-364、Control Company)
・Accu-Seal自動密封機(Accu-Seal、モデル630-1B6)
妊婦を、出産時に、HIV、HBV、HCV、HTLV、梅毒、CMVおよびその他のウイルス等の伝染病、ならびに回収する胎盤組織を汚染しうるその他の病原体についてスクリーニングした。上記病原体に対して母体が陰性または無反応とテストされた母親を持つドナーから回収した組織のみ使用してコラーゲンバイオ繊維を産生した。
【0156】
通常出産後、収縮している子宮から、胎盤、臍帯および臍帯血が自然に出された。胎盤、臍帯および臍帯血を、出産後に回収した。これらの材料を、実験室に運び、そこでHEPAろ過システム(処理の少なくとも1時間前に作動させた)を有するクリーンルームにおいて無菌条件下で処理した。生成物を取り扱う間は常時、(必要に応じて滅菌または非滅菌)グローブをはめていた。羊膜/漿膜の使用しない(廃棄)部分、および組織処理の間にできる汚染液体は全て、可能な限り早く処分した。
【0157】
ステップI
滅菌Steri-Wrapシートおよび以下の器具で滅菌フィールドを設け、処理用の付属品をその上に配置した。
【0158】
・滅菌トレイパック
・滅菌細胞スクレーパー
・滅菌外科用メス
・処理用消毒トレイ
滅菌パックID番号を処理記録に記録した。
【0159】
輸送用容器から胎盤を取り出し、消毒ステンレススチールトレイ上に載せた。外科用クランプおよびハサミを使用して、胎盤ディスクから約2インチのところで臍帯を切断した。臍帯は、以後の処理のために別個の滅菌容器に入れた。容器に組織IDバーコードのラベルを付け;材料および存在する保存溶液(例えば、培地の種類)を識別した。場合により、臍帯は、その他の研究課題からの要望がなければ処分した。
【0160】
胎盤膜の端部から始めて、指による鈍的切開により、羊膜を漿膜から分離した。これは、膜を切断する前に行った。
【0161】
羊膜を漿膜および胎盤ディスクの全面から分離した後、ハサミで、羊膜の臍帯断端の周りを切り、胎盤ディスクと離した。場合により、組織を裂かずには羊膜と漿膜とを分離できない場合には、羊膜および漿膜を一緒に胎盤ディスクから切断し、その後互いから剥がした。
【0162】
漿膜は、他の研究課題に利用するために別個の標本容器に入れた。容器には、組織IDバーコードのラベルを付け、材料および存在する保存溶液(例えば、培地の種類)を識別し、イニシャルおよび日付を付けた。
【0163】
胎盤ディスクに羊膜の一部が少しでも付着していれば、ディスクから剥がし、ハサミで臍帯の周りから切断した。胎盤は、別の研究課題に利用されるために輸送容器に戻した。
【0164】
適切なデータを、組織処理記録に記録した。
【0165】
羊膜は、滅菌0.9%NaCl溶液の入ったトレイに保持した。羊膜は、分娩時から次の処理ステップまで、最大で72時間冷蔵保存されることが好ましい。
【0166】
ステップII
羊膜を、標本容器から一片ずつ取り出し、消毒ステンレススチールトレイ上に載せた。他の片は、洗浄できるようになるまで、滅菌水の入った別の滅菌ステンレススチールトレイに入れた。処理トレイから羊膜の余分な片を取り出し、滅菌水の入った別の濯ぎ用滅菌ステンレススチールトレイに入れた。
【0167】
羊膜は、肉眼で見て血液物質または胎液/物質で汚染されている場合には、滅菌水を必要なだけ替えて、濯いだ。
【0168】
羊膜を、母体側面を上にして、処理トレイ上に置いた。滅菌細胞スクレーパーを使用し、羊膜の母体側面から目に見える汚染物質および細胞成分を可能な限り注意深く除去した。(付記:このステップでは最小限の圧力をかけて、膜を破らないようにする)。滅菌水を使用して、細胞および細胞屑を除去し易くした。羊膜を、別の濯ぎ用滅菌ステンレススチールトレイ上で、滅菌水でさらに濯いだ。
【0169】
羊膜を裏返して、胎児側面を上に向け、処理トレイに戻し、滅菌水で濯いだ。目に見える細胞成分および屑を細胞スクレーパーを使用して優しく除去した(付記:このステップでは最小限の圧力をかけて、膜を破らないようにする)。滅菌水を使用して、細胞および細胞屑を除去し易くした。
【0170】
別個の濯ぎ用滅菌トレイで、洗浄ラウンドの間に、滅菌水で羊膜を濯いだ。膜の両側から目に見える細胞成分および屑を全てでなくとも最大限除去するのに必要なだけの(洗浄ラウンド)回数で、組織を洗浄した。濯ぎ用トレイ中の滅菌水は、濯ぎと濯ぎの間に、交換した。
【0171】
各洗浄ラウンド後に、処理トレイを滅菌水で濯いだ。
【0172】
他の羊膜片も全て同様に処理し、同じ容器に入れた。組織IDバーコードを付け、材料および存在する保存溶液(例えば、培地の種類)を識別し、イニシャル、日付を加えた。
【0173】
適切な情報および日付を、組織処理記録に記録した。
【0174】
ステップIII
濯ぎ用トレイ(または保存容器)から羊膜を取り出し、過剰な液体を指で優しく絞り、膜を滅菌標本容器に入れた。150 mlの印まで、D細胞溶液で容器を満たし、全ての羊膜が覆われていることを確認し、容器を密封した。
【0175】
容器を揺動プラットホーム上のビンに入れた。揺動プラットホームを作動させ、#6の設定で、最低15分間、最大120分間、D細胞溶液中で膜をかき混ぜた。
【0176】
ステップIと同様にして、新しい滅菌機器および消毒トレイで新しい滅菌フィールドを設けた。滅菌パックID#を、処理記録に記録した。
【0177】
かき混ぜが終了した後、揺動プラットホームを止め、膜を容器から出した。膜を新しい滅菌ステンレススチール処理トレイに載せた。トレイの底を覆うように、滅菌0.9% NaCl溶液を加えた。
【0178】
新しい滅菌細胞スクレーパーを使用して、(存在すれば)残ったD細胞および細胞成分を、組織の両側から除去した。このステップは、両側全面から目に見える残留細胞成分を可能な限り除去するのに必要なだけの回数で繰り返した。洗浄ラウンドの間に、膜を、別の濯ぎ用トレイの中で滅菌0.9% NaCl溶液で濯いだ。濯ぎと濯ぎの間に、濯ぎ用トレイ中の滅菌0.9% NaCl溶液を替えた。
【0179】
最後の洗浄ラウンドが終了したら、膜を滅菌0.9% NaCl溶液で濯ぎ、滅菌0.9% NaCl溶液で満たした新しい滅菌標本容器に入れた。
【0180】
残った全ての羊膜片を、全く同じようにして処理した。
【0181】
全ての羊膜片を処理し、滅菌0.9% NaCl溶液の入った容器に入れたら、容器を揺動プラットホーム上のビンに入れ、#6の設定で、最低5分間かき混ぜた。かき混ぜが終了したら、膜を標本容器から取り出し、容器中の滅菌0.9% NaCl溶液を替えて、膜を標本容器に戻した。
【0182】
標本容器には、組織IDバーコードおよび検疫ラベルを付けた。材料および存在する保存溶液(例えば、培地の種類)を識別し、イニシャルおよび日付を付けた。標本容器を、清潔なジップロックバッグに入れ、冷蔵庫(2〜8℃)に入れた。
【0183】
適切なデータを全て、組織処理記録に記録した。
【0184】
血清結果が入手可能になったら、適切なラベル(血清検査陰性、または研究用途目的専用)を、検疫ラベルの上に貼り、これらの容器は、検疫容器と別にした。
【0185】
ステップIV
ステップIVに進む前に、組織状態検査をチェックして、全ての適用テスト結果が陰性であることを確認した。
【0186】
滅菌Steri-Wrapシート、ならびに全ての滅菌および消毒済みの器具および付属品で設けた滅菌フィールドは、ステップIIおよびIIIと同様にして設けた。
【0187】
膜を冷蔵庫から出し、新しい滅菌ステンレススチール処理トレイに入れた。トレイの底を覆うように、滅菌0.9% NaCl溶液を加えた。
【0188】
(存在すれば)目に見える細胞成分および屑を全て、新しい滅菌細胞スクレーパーを使用して優しく除去した(付記:このステップでは最小限の圧力をかけて、膜を破らないようにする)。滅菌0.9% NaCl溶液を使用して、細胞および屑を除去し易くした。
【0189】
滅菌0.9% NaCl溶液で満たした別個の濯ぎ用滅菌ステンレススチールトレイ中で、膜を濯いだ。洗浄ラウンドの間に、0.9% NaCl溶液を替えた。膜を、新しい滅菌標本容器に入れ、容器を新鮮な滅菌0.9% NaCl溶液で満たし、揺動プラットホーム上に載せ、#6の設定で、最低5分間かき混ぜた。
【0190】
上のステップを3回繰返し、各回のかき混ぜごとに滅菌0.9% NaCl溶液を替えた。適切なデータを、組織処理記録に記録した。
【0191】
膜を1片ずつ標本容器から取り出し、過剰な液体を指で優しく絞り、膜を滅菌処理トレイに置いた。平らになるまで膜を優しく引き伸ばした;胎児側面が下を向いていることを確認した。
【0192】
消毒プラスチックシートを滅菌ハサミで切ってフレームを用意した。フレームの大きさは、膜切片よりも全ての方向に約0.5 cm小さくなければならない。フレームを、滅菌0.9%NaCl溶液で満たした濯ぎ用トレイで濯いだ。
【0193】
僅かに引き伸ばした膜表面上にフレームを載せ、膜に優しく押し付けた。プラスチックフレームの滑らかな面が組織に面することが必須である。
【0194】
外科用メスを使用して、フレームの周縁において、フレーム端部から約0.5 cmを残して、膜を切断した。余分な膜は、標本容器に戻した。
【0195】
クランプまたはピンセットを使用して、フレームからはみ出ている膜の端部でフレームの端部を包み、同じトレイの脇に置いた。
【0196】
次の膜片を同様に処理した。乾燥させる合計面積が、1体の熱ドライヤーにつき300 cm2を超えないことが重要である。膜片を「フレーム切り出し」している間、未フレーム化片は、滅菌0.9%NaCl溶液の入った容器に入れたままでなければならない。
【0197】
ドライヤーの乾燥温度を設定し、延長プローブを有する目盛り付きデジタル温度計を使用して確認した。乾燥温度は50℃に設定した。データを、組織処理記録に記録した。
【0198】
真空ポンプを作動させた。
【0199】
熱ドライヤーの乾燥プラットホーム上に、フレーム化膜の面積よりも僅かに大きい面積を覆うように滅菌ガーゼを置いた。ガーゼ層の合計厚みが、2枚に折りたたまれた4×4ガーゼの厚みを確実に超えないことが重要である。
【0200】
プラスチックフレーム化メッシュを1シート、ガーゼの上に置いた。プラスチックメッシュ端部は、ガーゼ端部から約0.5〜1.0 cmはみ出るべきである。
【0201】
フレーム化膜を優しく持ち上げ、膜側面が上を向くように、熱ドライヤープラットホーム上のプラスチックメッシュの上に置いた。最大量の(300 cm2を超えない)膜が熱ドライヤープラットホームに載るまでこれを繰り返した。(付記:羊膜の胎児側面を上に向ける)。
【0202】
熱ドライヤーの乾燥プラットホーム全体を覆うのに十分な大きさに1フィートを加えて、PVCラップフィルムを切断した。
【0203】
真空ポンプが作動している間、熱ドライヤーの乾燥プラットホーム全体を、プラスチックフィルムで、乾燥プラットホーム端部の両側から1/2フィートがはみ出るように優しく覆った。膜およびフレームシートに対してフィルムがきつく引っ張られるようにし(すなわち、真空により「吸い込まれる」ようにし)、空気漏れや組織領域にしわが寄らないように注意した。その後、蓋を閉めた。
【0204】
真空ポンプは、約-22インチHgの真空状態に設定した。2〜3分の乾燥サイクルの後に、ポンプゲージを記録した。膜を、約60分間、熱真空乾燥した。乾燥処理から約15〜30分間して、熱ドライヤ内で滅菌ガーゼ層を新しいものに取り替えた。ガーゼ層の合計厚みは、2枚に折りたたまれた4×4ガーゼの厚みを超えてはならない。
【0205】
替えた後は、膜およびフレームシートに対してプラスチックフィルムがきつく引っ張られ、空気漏れや組織領域にしわが寄らないように注意した。
【0206】
ポンプ圧圧力計をチェックして、真空封止の完全性を周期的にチェックした。乾燥処理の終了後、熱ドライヤーを開け、ポンプを作動させながら、約2分間、膜を冷却した。
【0207】
滅菌Steri-wrap、およびその下に消毒ステンレススチールカッティングボードを敷いて、新しい滅菌フィールドを設けた。この時点で、滅菌グローブを使用した。ポンプを作動させたまま、グローブをはめた手で膜シートを下に押さえながら、プラスチックフィルムを端から膜シートから優しく剥がした。フレームを膜と共に、乾燥プラットホームから優しく持ち上げ、消毒ステンレススチールカッティングボードの上の滅菌フィールド上に、膜側を上に向けて載せた。外科用メスを使用し、フレームの端部から1〜2 mmはみ出たところを切って、膜シートを切断した。グローブ(滅菌グローブ)をはめた手で、膜を配置した。膜シートをゆっくりと剥がしてフレームから持ち上げ、カッティングボード上の滅菌フィールド上に載せた。
【0208】
外科用メスまたは鋭いハサミを使用して、膜シートを指定の大きさの切片に切断した。全ての片を、パッケージングの前に、切断し、滅菌フィールド上に固定した。膜の1片を、(滅菌した)片手で内部剥離パウチの中に入れ、その間、もう一方の(非滅菌)手ではパウチを支えた。「滅菌した」手でパウチを触らないように注意した。全ての片を、内部パウチの中に入れた後、パウチを封止した。パウチの外側の指定した領域に、適切な情報(例えば、部分番号、ロット番号等)のラベルを付けた。全ての膜片を同様に処理した。ラベル付きの封止した剥離パウチパッケージを、防水ジップロックバッグに入れて、滅菌施設または販売業者に輸送される準備ができるまで保存した。全ての適切なデータを、組織処理記録に記録した。
【0209】
6.2 水和/縫合性についてのコラーゲンバイオ繊維の評価
本発明のバイオ繊維の手術取扱い、水和時間、および縫合性に関する質的および量的フィードバックを作成するために、本発明の方法により調製した羊膜サンプルを、4人の経験豊富かつよく評価されている眼球表面外科医に渡して評価してもらった。ブタ眼標本上に組織移植を施すことにより、本発明のバイオ繊維の取扱い性質および縫合性を決定して、サンプルを外科医が評価する。
【0210】
各外科医により、以下の方法論が使用され得る:
(1) ブタの眼の単一の四分円(single quadrant)に合うようにバイオ繊維を切断乾燥する;
(2)切断したバイオ繊維を、ブタの眼の表面上に載せる;
(3)バイオ繊維を滅菌食塩溶液で水和し、2、5、10および20分間の水和時間の間、ブタの眼の上で移植片を活性化(すなわち、再水和)させる;
(4)バイオ繊維を、数針の9〜0ビクリル(vicryl)縫合により、ブタの眼の上皮に縫合する;ならびに
(5)水和羊膜の組織品質、一貫性、および縫合性に関する質的内容を外科医が書き留める。
【0211】
等価物:
本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態により範囲が限定されるものではない。実際、記載したものに加えて本発明の様々な改変が、上記記載および添付の図面から、当業者に明らかになる。このような改変は、請求の範囲内にあることを意図する。
【0212】
本明細書において、様々な文献、特許、および特許出願を引用したが、これらの開示は参照により全体的に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】ヒト胎盤の漿膜および羊膜の画像である。
【図2A】処理前のコラーゲンバイオ繊維の顕微鏡写真である。
【図2B】処理後のコラーゲンバイオ繊維の顕微鏡写真である。
【図3】コラーゲンバイオ繊維の画像である。エンボスパターンを有する均一な透明表面を有する本発明のコラーゲンバイオ繊維の例を示す。
【図4】メッシュフレームおよびその中で乾燥されるバイオ繊維を図示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羊膜および漿膜を有する胎盤からコラーゲンバイオ繊維を調製する方法であって、
(a)羊膜を漿膜から分離すること;および
(b)該羊膜を酵素と接触させないように該羊膜を脱細胞化(decellularize)すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記脱細胞化した羊膜を洗浄および乾燥させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記胎盤がヒト胎盤である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記胎盤が、帝王切開分娩または自然分娩を経たヒト女性に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記胎盤膜が、少なくとも1つの伝染病についてテストしたドナーに由来することを決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ドナーがヒト女性である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記胎盤は、出産の48時間以内に入手する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記羊膜を、ステップ(a)の後かつステップ(b)の前に72時間まで保存するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記保存することが、ステップ(a)で入手した羊膜を5日間まで冷蔵することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)における前記羊膜の脱細胞化は、目に見える全ての細胞成分および細胞屑を羊膜から除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)における前記羊膜の脱細胞化が、目に見える全ての細胞成分および細胞屑を羊膜の母体側面および羊膜の胎児側面から除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)における前記羊膜の脱細胞化が、該膜を物理的に擦ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)における前記羊膜の脱細胞化が、該羊膜を界面活性剤含有溶液で脱細胞化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記界面活性剤含有溶液が、0.01〜1.0%デオキシコール酸ナトリウム塩水和物を含む溶液である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記界面活性剤含有溶液中の界面活性剤が、非イオン界面活性剤、Triton X-100、陰イオン界面活性剤、およびドデシル硫酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記物理的に擦ることは、細胞スクレーパーで擦ることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(b)における前記羊膜の脱細胞化が、滅菌溶液中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記羊膜の洗浄が、滅菌溶液中で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記脱細胞化された羊膜の乾燥が、約35℃〜約50℃の温度にて行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
羊膜および漿膜を有する胎盤から羊膜積層板を調製する方法であって:
(a)羊膜を漿膜から分離すること;
(b)該羊膜を脱細胞化すること;および
(c)該脱細胞化した羊膜の少なくとも2枚を互いと接触させて積層し、羊膜積層板を形成すること
を含む、方法。
【請求項21】
前記脱細胞化した羊膜を、ステップ(b)の後かつステップ(c)の前に少なくとも1回洗浄することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記脱細胞化した羊膜積層版を乾燥させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも2枚の前記羊膜積層板を複合三次元足場にアセンブルすることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
脱水状態で、脱細胞化され、かつ基板を含まず、天然三次および四次構造を有する羊膜を含む、コラーゲンバイオ繊維。
【請求項25】
コラーゲン、エラスチン、およびフィブロネクチンを含む、脱細胞化され、基板を含まないコラーゲンバイオ繊維。
【請求項26】
請求項1の方法により調製されたコラーゲンバイオ繊維。
【請求項27】
前記羊膜がヒト羊膜である、請求項24に記載のコラーゲンバイオ繊維。
【請求項28】
約10〜40ミクロンの厚みの、請求項24〜26のいずれか一項に記載のコラーゲンバイオ繊維。
【請求項29】
1つ以上の生分子をさらに含浸された、請求項24〜26のいずれか一項に記載のコラーゲンバイオ繊維。
【請求項30】
前記生分子が、抗生物質、ホルモン、成長因子、抗癌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン、抗炎症剤、抗感染薬、創傷治癒薬、創傷シーリング材、細胞誘引物質(cellular attractants)、および足場剤からなる群より選択される、請求項29に記載のコラーゲンバイオ繊維。
【請求項31】
1つ以上の小分子をさらに含浸された、請求項29に記載のコラーゲンバイオ繊維。
【請求項32】
均一かつコンフルエントに細胞がさらに密集している、請求項24〜26のいずれか一項に記載のコラーゲンバイオ繊維。
【請求項33】
前記細胞が、ヒト幹細胞またはヒト分化成熟細胞である、請求項32に記載のコラーゲンバイオ繊維。
【請求項34】
1つ以上の治療薬をさらに含む、請求項24〜26のいずれか一項に記載のコラーゲンバイオ繊維。
【請求項35】
前記治療薬が、ホルモン、ポリペプチド、抗生物質、抗菌剤、および酵素からなる群より選択される、請求項34に記載のコラーゲンバイオ繊維。
【請求項36】
1つ以上のヒドロゲル組成物をさらに含む、請求項24〜26のいずれか一項に記載のコラーゲンバイオ繊維。
【請求項37】
ヒドロゲル組成物が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、デキストラン、およびそれらの誘導体または類似体からなる群より選択されるポリマーを含む、請求項36に記載のコラーゲンバイオ繊維。
【請求項38】
請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維を含む、三次元足場。
【請求項39】
前記足場が管である、請求項38に記載の三次元足場。
【請求項40】
1つ以上のヒドロゲル組成物をさらに含む、請求項38に記載の三次元足場。
【請求項41】
前記ヒドロゲル組成物が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、デキストラン、およびそれらの誘導体または類似体からなる群より選択されるポリマーを含む、請求項40に記載の三次元足場。
【請求項42】
請求項20の方法により生成される、羊膜積層板。
【請求項43】
請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維を少なくとも2層含む、羊膜積層板。
【請求項44】
請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維を含む、羊膜積層板。
【請求項45】
1つ以上のヒドロゲル組成物をさらに含む、請求項42〜44のいずれか一項に記載の羊膜積層板。
【請求項46】
前記ヒドロゲル組成物が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、デキストラン、およびそれらの誘導体または類似体からなる群より選択されるポリマーを含む、請求項45に記載の羊膜積層板。
【請求項47】
請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維を含む、手術用移植片。
【請求項48】
手術過程において請求項47の手術用移植片を使用する方法であって、該移植片を被検体の手術部位に直接適用する、方法。
【請求項49】
前記手術部位が、目、皮膚、腹部の漿膜表面、胸腔の漿膜表面、漿膜心膜(serosal pericardium)、口腔の粘膜表面、鼻腔の粘膜表面、気道の表面、消化管の表面、および尿生殖路の表面からなる群より選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記手術用移植片を、被検体の身体の内部部位に適用する、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記手術用移植片を、被検体の身体の外部部位に適用する、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記被検体がヒトである、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維を、被検体の疾患した眼表面上に置くことを含む、被検体の眼疾患の治療および/または予防方法。
【請求項54】
前記眼疾患は、潰瘍形成/せん孔、水疱性角膜症、眼球類皮/腫瘍、原発性(primary)翼状片、永久性角膜上皮欠損、急性および慢性アルカリ火傷、熱傷、無虹彩、アトピー性角膜炎、特発性輪部幹細胞欠損、角膜パンヌス、新血管形成、リウマチ様角膜溶解(rheumatoid corneal melt)、眼性瘢痕性類天疱瘡、ろ過胞漏れ(leaking filtering bleb)、露出型アハメッド弁管(exposed Ahmed valve tube)、後に瞼球癒着症を伴うセラチア蜂巣炎、急性および慢性スティーブンソン・ジョンソン症候群からなる群より選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
眼科手術;心血管手術;歯周手術;神経手術;歯科手術;および整形外科手術からなる群より選択される手術過程における、請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維の使用方法。
【請求項56】
被検体の尿失禁の矯正のための、請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維の使用方法。
【請求項57】
被検体を請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維と接触させることを含む、治療薬を被検体に送達する方法。
【請求項58】
被検体がヒトである、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
前記治療薬が、抗生物質、抗癌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、ワクチン、麻酔薬、鎮痛剤、抗喘息剤、抗炎症剤、抗うつ剤、抗糖尿病薬、抗精神病薬、中枢神経系刺激薬、ホルモン、免疫抑制剤、筋肉弛緩剤、およびプロスタグランジンからなる群より選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
コラーゲンバイオ繊維の調製時間が、コラーゲンバイオ繊維の脱水を含む、請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維の使用方法。
【請求項61】
前記バイオ繊維の脱水が、滅菌食塩溶液での脱水を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記バイオ繊維を、使用の前に少なくとも2分間水和させる、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
生存細胞で積層板を密集することをさらに含む、羊膜積層板の使用方法。
【請求項64】
前記生存細胞が、成熟組織細胞および幹細胞からなる群より選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記幹細胞が全能細胞である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記幹細胞が多能性細胞である、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記幹細胞が組織特異的である、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
被検体において皮膚症状を治療または予防する方法であって、該皮膚症状を請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維と接触させることを含む、方法。
【請求項69】
前記皮膚症状が、皮膚外傷、しわ、小じわ、皮膚の薄層化、皮膚の弾力性の低下、肌荒れ、にきび痕、眉間のしわ、切除傷、軟組織不具合、先天性皮膚症状、変性皮膚症状、コラーゲンVII欠損、および日焼けで損傷した肌からなる群より選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
皮膚症状を治療するために、1つ以上の治療薬を前記被検体に投与することをさらに含む、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記1つ以上の治療薬が、ビタミン、ミネラル、カテキン基質剤形、およびグルコサミンからなる群より選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
創傷を、請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維と接触させることを含む、被検体における創傷の治療方法。
【請求項73】
前記創傷が、表皮創傷、皮膚創傷、床ずれ、慢性創傷、急性創傷、外部創傷、内部創傷、先天性創傷、火傷創傷、手術創傷、および創傷感染からなる群より選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
火傷を、請求項24〜26のいずれか一項のコラーゲンバイオ繊維と接触させることを含む、被検体における火傷の治療方法。
【請求項75】
前記火傷が、第1度火傷、第2度火傷、第3度火傷、感染火傷創傷、および火傷創傷膿痂疹からなる群より選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記被検体がヒトである、請求項68、72または74に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−507851(P2006−507851A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−579744(P2003−579744)
【出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/009304
【国際公開番号】WO2003/082201
【国際公開日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(503291462)アンスロジェネシス コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】