説明

コラーゲンペプチド含有飲料及びその製造方法

【課題】コラーゲンペプチドに特有の臭気や風味がマスキングされた風味良好なコラーゲンペプチド含有及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】コラーゲンペプチドを1〜20重量%、酵母エキスを0.01〜1重量%含有し、かつ植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を総量0.1ppm〜100ppm含有することを特徴とするコラーゲン臭を抑えたコラーゲンペプチド含有飲料。該飲料は、水又は緩衝液にコラーゲンペプチド及び酵母エキスを添加し、その後植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を添加してコラーゲンペプチド溶液を調製する工程、得られたコラーゲンペプチド溶液を飲料と混合する工程を経て製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンペプチド含有飲料及びその製造方法に関し、詳しくは、コラーゲンペプチドに由来する獣臭又はコラーゲン臭、及び不快味をマスキングすることに関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは動物組織における主要な構成タンパク質であり、皮膚、血管、内臓、骨等のいたるところに存在していることが知られている。特に、近年まではコラーゲンを分解したコラーゲンペプチドに関しては、コラーゲン臭と呼ばれる独特の獣臭や動物臭だけでなく、低分子が原因として生じる不快味が原因となって、美味しく、且つ、手軽に摂取することは困難であった。低分子ほどコラーゲン臭及びエグ味がきつく、重量平均分子量(これより平均分子量と略記する)2,700以下のナノサイズコラーゲンペプチドや特許文献1で示されているようなオリゴコラーゲンペプチドは強烈な臭いやエグ味を生じる。これらのコラーゲンペプチドは飲料やキャンディ、ゼリー、タブレット等の形態で摂る場合が多く、コラーゲン臭並びに不快味による違和感や不快感を生じるという問題がある。特に近年、美容飲食品としてのコラーゲン飲料市場規模が国内外共に目覚しい成長を遂げていることから、飲料中にコラーゲンペプチドを加えた場合のコラーゲン臭の低減に関しては極めて重要な問題となっている。例としてかつては美味しく、且つ手軽に摂取できるようにするために、オレンジ等の柑橘系のフレーバー等で味を改善する従来の試みやオリゴ糖の添加(特許文献2)が行われてきたが、コラーゲン臭のような強烈な不快味に対するマスキング効果としては、不十分であった。
【0003】
近年、コラーゲン臭のマスキングあるいは不快味の改善方法に関してフレーバー及びオリゴ糖添加以外のいくつかの方法を試みた例がある。一つはコラーゲン含有食品に甘味料であるスクラロースを含有すること(特許文献3)や、魚由来コラーゲンペプチドに加えて難消化性デキストリンを含有すること(特許文献4)や、コラーゲン、コラーゲンペプチド及びゼラチンから選ばれた1種以上のものにエチルオクタノエートを含有すること(特許文献5)、及びコラーゲン飲食品にステビア抽出物及びスクラロースを含有すること(特許文献6)、及び桑葉を含有すること(特許文献7)についての提案があった。
【0004】
しかしながら前述したコラーゲン臭あるいは不快味のマスキング方法は、コラーゲン飲食物に物質を付加する方法であり、味のバランスを調整する方法として手軽に行うことが可能である。しかしながら、飲食品の味をも左右してしまうことから不十分な点も多く残る。
【0005】
また、コラーゲン臭のマスキング方法として、コラーゲンペプチドとエタノールが含まれる水溶液を加熱することを特徴とする方法も公表されている(特許文献8)。コラーゲン臭に関与するメタンジオールとジメチルジスルフィドを少量のエタノールを含む水溶液中で熱処理することによって低減することを目的としている。しかしながら、魚由来のコラーゲンペプチドに関しての有効性は示されているが、その他の動物由来のコラーゲンに関しては明示されていない。しかも、コラーゲン臭のマスキングに関して、完全にコラーゲン臭を除去することが困難である。特に、コラーゲンペプチドの重量平均分子量(Mw)が2,700以下になると、コラーゲン臭が非常に強くなり、上記の方法では望ましい消臭効果が見られなかった。
前述したコラーゲン臭あるいは不快味のマスキング方法は、コラーゲン飲食物に物質を添加する方法であり、味のバランスを調整する方法として手軽に行うことが可能である。しかしながら、飲食品の味をも左右してしまうことから不十分な点も残る。
【0006】
一方、コラーゲンは関節炎の症状を和らげ、骨の形成を促進するため各種飲料に添加するいくつかの特許技術が知られている。コラーゲンを含有する飲料の例として、ペプチドとポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンを組み合わせた渋み低減飲料(特許文献9)、プロアントシアニジン及びグルタチオンを含有する食品組成物(特許文献10)、コラーゲン、並びに、ツボクサ、その乾燥物若しくはその抽出物及び/又は海洋深層水を含有することを特徴とする食品組成物(特許文献11)、タンナーゼを作用させた茶抽出液と、コラーゲンペプチドとを含有することを特徴とするコラーゲンペプチド含有茶飲料、植物ポリフェノールとコラーゲンを含む液体にペクチンを添加することにより、植物ポリフェノールとコラーゲンによる白濁物質および/または沈殿物質の生成が抑制された液体組成物(特許文献12)などがある。但し、前述したコラーゲン含有飲料に関する文献はコラーゲン臭のマスキングに関する目的のものではなく、さらにマスキングを行うための手段としては全く好ましくない。
【特許文献1】特開2005−245285号公報
【特許文献2】特開2005−137362号公報
【特許文献3】特開2000−152757号公報
【特許文献4】特開2006−180812号公報
【特許文献5】特開2006−197856号公報
【特許文献6】特開2006−204287号公報
【特許文献7】特開2004−357584号公報
【特許文献8】特開2007−159557号公報
【特許文献9】特開2006−271259号公報
【特許文献10】特許第3040992号公報
【特許文献11】特開2002−238497号公報
【特許文献12】特許第3416102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、コラーゲンペプチドに特有の臭気や風味がマスキングされた風味良好なコラーゲン含有飲料及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、酵母エキスには特にコラーゲンペプチドやゼラチンの独特の臭みや風味をマスキングする作用が強いことを見出し、さらに、植物由来カテキン、タンニン、ゆずポリフェノーの内一種類を併用することによってマスキング作用が向上することを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、
(1)コラーゲンペプチドを1〜20重量%、酵母エキスを0.01〜1重量%含有し、かつ植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を総量0.1ppm〜100ppm含有することを特徴とするコラーゲンペプチド含有飲料、
(2)前記飲料中に含まれるコラーゲンペプチドの内、分子量2,700以下のものが50%(w/w)以上含有される請求項1に記載のコラーゲンペプチド含有飲料、
(3)水又は緩衝液にコラーゲンペプチド及び酵母エキスを添加し、その後植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を添加してコラーゲンペプチド溶液を調製する工程、得られたコラーゲンペプチド溶液を飲料と混合する工程を含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のコラーゲンペプチド含有飲料の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、飲料中に添加する前のコラーゲンペプチドに、酵母エキスだけでなく、植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を併用して付加することにより、コラーゲンペプチド由来の臭みを簡単にマスキングすることができる。しかも、酵母エキスと植物由来カテキン、タンニン、ゆずポリフェノールの使用量は微量でも十分な効果が奏されるため、飲料本来の風味を損なうことなくコラーゲン臭の改善を成し遂げることが可能となる。
【0011】
また、こうして得られたコラーゲンペプチド入り飲料は、様々な風味を後から付与することも出来るので、バラエティーに富んだ風味をもつ飲料を作製することが可能となる。
本発明により、コラーゲンペプチドの不快臭を減じることが出来、コラーゲンの苦手な人にとっても親しみやすい、様々な生理活性効果を有するコラーゲンペプチドを含有した飲料を提供することが可能となる。本発明では、従来法では消臭効果が十分でなかった平均分子量(Mw)が2,700以下のコラーゲンペプチドでも優れた消臭を行うことができるため、マスキング効果としては、コラーゲンの由来(例えば、牛皮・牛骨・豚皮・鶏・魚類等)にも制限されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のコラーゲンペプチド含有飲料は、コラーゲンペプチドを1〜20重量%、酵母エキスを0.01〜1重量%含有し、かつ植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を総量0.1ppm〜100ppm含有することを特徴とする。
中でも、本発明では、コラーゲンペプチドに対して特定量の酵母エキスと、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を併用することにより、コラーゲンペプチド由来の臭いを顕著に減少させることができるという優れた効果が奏される。
【0013】
本発明に用いられるコラーゲンペプチドは、コラーゲンあるいはゼラチン等の変性コラーゲンを酸やアルカリあるいは酵素等で加水分解させることで得られる。現在コラーゲンは豚、牛、鶏、魚等多様な動物から抽出されたものを食品として用いている。何れのコラーゲンも特有のコラーゲン臭が存在することが明らかである。中でも、コラーゲンを酵素等で加水分解させたものを用いた場合には、分解物中に存在するコラーゲン、コラーゲンペプチド、及びゼラチンによる様々な生理活性効果が期待されるので好ましい。
【0014】
前記コラーゲンペプチドを作製する際に用いられる酵素としては、コラーゲンを部分加水分解できるものであればよく、例えば、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、フィチン等のシステインプロテアーゼや、ペプシン、及びこれらの酵素を混合した酵素群等が挙げられるが、特に限定されるものではない。このような加水分解は、水又は各種バッファー等の緩衝液中で行われることが好ましい。本発明では、前記の加水分解された水溶液をそのまま使用してもよいし、乾燥処理等で粉末化したものを用いてもよい。
【0015】
本発明のコラーゲンペプチド含有飲料中に含まれるコラーゲンペプチドとしては、分子量2,700以下のコラーゲンペプチドを50%以上含有していることが、本発明の主旨であるマスキング効果を十分に有効化させるという観点から、好ましい。コラーゲンの分子量に関する情報は、粘度測定やHPLC及びゲルろ過法等の定量方法によって得られ、すでに公知の手法を使用することが可能である。なお、ここで分子量とは重量平均分子量をいう。
【0016】
また、本発明では、原料コラーゲンやゼラチンの由来・処理方法の異なる各種のコラーゲンペプチドを当然使用できる。
前記ゼラチンの配合量は、コラーゲンペプチド含有飲飲料中において3〜30重量%が好ましく、7〜20重量%がより好ましい。
【0017】
前記酵母エキスとは、酵母を原料とした食品添加物であり、例えば、酵母由来の旨味成分(イノシン酸、グアニル酸)を多く含んだものや補足的に核酸あるいは乳酸菌等の他種類の菌主に由来する旨味物質を含有しても良い。酵母エキスが持つ旨味に関してはコラーゲンペプチド含有飲飲料の味調整においてあまり影響が無ければ、酵母の種類や特に酵母エキス中の旨味構成成分の組成の違いによる酵母エキスの種類は限定されない。近年、「乾燥酵母」という呼び名で呈味やマスキング作用を持つものも市販されているが、本発明で用いられる酵母エキスの中にはこのような乾燥酵母も含まれる。本発明のコラーゲンペプチド含有飲飲料中に含有される酵母エキスの量としては、0.01〜1重量%であり、さらにマスキング効果に優れていながらコラーゲンペプチド含有飲飲料の風味が向上し、且つ酵母特有の風味を過剰に出現させないためには、0.1〜1重量%が好ましい。
【0018】
本発明のコラーゲンペプチド含有飲料においては、植物由来カテキン、タンニン、ゆずポリフェノールの内一種類以上を必須成分としている。前記の成分はいずれも単独ではコラーゲン臭の低減効果はほとんどみられないが、前記酵母エキスと併用することで、優れたコラーゲン臭の低減効果が奏される。
【0019】
前記のように植物由来カテキン、タンニン又はゆずポリフェノールと酵母エキスとを併用することで優れたコラーゲン臭の低減効果が奏されることは本発明者らが初めて見出した。これらの作用メカニズムの詳細は不明であるが、植物由来カテキン、タンニン又はゆずポリフェノールと、酵母エキス中に含まれる成分(例えば、旨み成分であるペプチドあるいはアミノ酸)と、コラーゲンペプチドとの間で複合体が形成されることで、コラーゲン臭を低減していると考えられる。
【0020】
また、複合体の状態について、植物由来カテキン及びタンニンとゆずポリフェノールとは別の作用メカニズムによることが考えられる。
例えば、タンパク質及びタンニン(カテキンを含む)とが結合することに関しては渡辺らの研究(T. Watanabe, Y. Matuo, T. Mori, R. Sano, T. Tosa, I. Chibata, J. Solid−Phase Biochemistry, 3, 161(1978)、渡辺泰三,土佐哲也,坂田信行,布川弥太郎,推木 敏,三上重明,日本醸造協会雑誌,79, 193(1983))がある。
一方、ゆずポリフェノールは、タンパク質及び/又はペプチド間と結合することは技術的に知られておらず、ゆずポリフェノールに含まれるナリンジンの苦味成分が酵母エキスと共にコラーゲン臭の低減に作用していることが考えられる。
【0021】
本発明で用いられるカテキンとしては、植物の幹、皮、葉、実等から抽出される天然物であり、化学式C15146で表されるフラボノイド及びその誘導体となるポリフェノールが挙げられる。カテキンは酸化による重合によってタンニンとなる成分である。
また、タンニンは、植物の幹、皮、葉、実等から抽出される天然物であり、環境に優しい物質である。タンニンには、ピロガロール系の加水分解型タンニンとカテコール系の縮合型タンニンがある。
カテキン、タンニンの由来植物としては、柿、茶、ゆず、イモ、ワイン、リンゴ、ブルーベリー、バナナ、栗皮、タマリンド、ミモザ、五倍子等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0022】
また、ゆずポリフェノールとは、「ゆず(柚子)」の植物体から熱水や含水エタノールにより抽出処理されて得られるポリフェノールをいう。抽出処理後には、必要に応じてろ過、精製、乾燥処理を施されてもよい。
【0023】
本発明のコラーゲンペプチド含有飲飲料中における植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールの総量は0.1ppm〜100ppmであり、苦味の度合いや沈殿の頻度の観点から、0.5ppm〜10ppmが好ましい。
【0024】
また、本発明のコラーゲンペプチド含有飲飲料には、前記コラーゲンペプチド、酵母エキス、植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノール以外に糖類及び/又は果汁・酸味料等を含有する。
【0025】
使用可能な糖類としては、特に限定は無い。例えば、ぶどう糖や果糖などの単糖類、ショ糖及び乳糖のような二糖類からラフィノースやスタキオースのような少糖類、トレハロースのようにブドウ糖が還元末端同士で結合したもの、糖アルコール(マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、還元澱粉加水分解物、還元キシロオリゴ糖、パラチニット、還元分岐オリゴ糖など)、タガトースなどのうち1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、水飴や液糖などの混合糖も使用できる。
【0026】
また、本発明のコラーゲンペプチド含有飲料には、必要に応じて、その風味に悪影響を及ぼさない程度に、下記の任意成分を添加することができる。
【0027】
例えば、寒天、ファーセレラン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、タラガム、ペクチン、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、澱粉、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、大豆多糖類、アルギン酸などが挙げられる。
【0028】
また、酸味料、果汁、香料、着色料等を用いることに関しても特に制限されない。
【0029】
また、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類やアミノ酸類等の機能性素材、油脂、乳化剤、乳製品、高甘味度甘味料(アスパルテーム、ネオテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビオシド、レバウディオ、ズルチン、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロースなど)などが用いられる。
【0030】
前記の構成を有する本発明のコラーゲンペプチド含有飲料は、水又は緩衝液にコラーゲンペプチド及び酵母エキスを添加し、その後植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を添加してコラーゲンペプチド溶液を調製する工程、
得られたコラーゲンペプチド溶液を飲料中に混合する工程
を経ることで製造することができる。
【0031】
前記製造方法は、コラーゲンペプチド溶液の調製工程において、水又は緩衝液へのコラーゲンペプチドと酵母エキスと添加した後にタンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれた1種以上を添加する点に一つの特徴がある。かかる添加順序を採用することで、風味を損なうことなくコラーゲン臭が低減した飲料を効率よく得ることができる。
ここで、コラーゲンペプチドと酵母エキスの添加順序については、別々に添加しても、同時に添加してもよく、特に限定はない。また、コラーゲンペプチドと酵母エキスとは水又は緩衝液中に溶解した後、植物由来カテキン、タンニン又はゆずポリフェノールを添加することが好ましい。
【0032】
水又は緩衝液中のコラーゲンペプチドの量としては、10〜60重量%が好ましく、30〜50重量%がより好ましい。
【0033】
コラーゲンペプチドとして、前記のようにコラーゲンを加水分解処理したものを使用する場合には、加水分解処理を水又は緩衝液中で行い、得られた加水分解液をそのまま使用してもよい。
ゼラチンの加水分解には、前記酵素を用いればよく、分解処理の程度としては、得られるゼラチン分解物中におけるコラーゲンペプチドのうち、分子量2,700以下のものが50%以上となるまで行えばよい。また、分解処理条件としては、使用する酵素の最適な条件を選択すればよい。
【0034】
また、飲料中への酵母エキス及び植物由来カテキン、タンニン及びポリフェノールの添加量としては、最終的に前記含有量となるように調整すればよい。
【0035】
また、前記任意成分は、その種類により、上記の工程のうち適当な段階で混合すればよい。
【0036】
前記のように各成分を添加して得られる混合物は、公知の手段により所望の形になるように加工して、本発明の飲料が得られる。
【0037】
以上のようにして本発明のコラーゲンペプチド含有飲料を製造することができる。上記の製造方法は一例であり、本発明の飲料の製造方法を限定するものではない。
【実施例】
【0038】
次に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例の記載中、特に断らない限り、「%」は「重量%」を、「部」は「重量部」を表す。
【0039】
(比較例1〜4)
あらかじめ分子量分布を測定した際に半量以上が分子量2,700以下である豚由来コラーゲンペプチド(SCP−3100;新田ゼラチン社製)を使用する。10mM以下のクエン酸バッファー溶液(クエン酸は酸味料に含まれる)にコラーゲンペプチド(分子量2,700以下のコラーゲンペプチド含有量65%)を溶解し、その後、酵母エキス(SK酵母エキスHU;日本製紙ケミカル社製)を添加した。最終的に飲料中にコラーゲンペプチド水溶液及び香料・酸味料を添加して飲料を作製した。なお飲料の組成を表1に示す。また、酵母エキスの量としては飲料中に、「0.001%」(比較例1)、「0.01%」(比較例2)、「0.1%」(比較例3)、「1.0%」(比較例4)となるように添加した。
【0040】
【表1】

【0041】
比較例1〜4で得られたコラーゲンペプチド含有飲料を用いたコラーゲン臭のマスキング評価を、試飲後にパネラー15名により、下記官能評価基準により評価した。その結果を表2において示す。
【0042】
<官能評価基準>
飲料の風味に対する評価基準
評点:内容
A:飲料として良好な味である。
B:飲料としては良好であるが、コラーゲン臭も微かに感じる。
C:飲料として普通に味わえるが、コラーゲン臭も感じられる。
D:飲料中にコラーゲン臭を強く感じるが、飲むことが出来る。
E:飲料の味よりもコラーゲン臭が強く、不味い。
【0043】
コラーゲン臭に関する評価基準
評点:内容
A:コラーゲン臭がほとんど感じられない。
B:コラーゲン臭が若干感じられる。
C:コラーゲン臭が感じられる。
D:コラーゲン臭がかなり感じられる。
E:コラーゲン臭及びそれ以外の不快臭がかなり感じられる。
【0044】
【表2】

【0045】
表2の結果から、飲料中に酵母エキスを付加することによってマスキング効果が認められたが、1.0%以上の酵母エキスを添加してしまうとマスキング効果は顕著であるが、飲料の風味が損なってしまう。従って、C評価以上をマスキング効果のボーダーラインとすると0.01%〜1.0%の酵母エキスの添加量が、コラーゲンペプチドのマスキングに適していることを示唆している。しかし、マスキング効果としては最高でもB評価であるため、さらなるマスキング効果を追求することが重要であることも明らかである。
【0046】
〔実施例1〕
比較例1〜4と同様に、10mM以下のクエン酸バッファー溶液に豚由来コラーゲンペプチドを溶解し、その後、酵母エキス(SK酵母エキスHU;日本製紙ケミカル社製)を添加してから完全に溶解した。さらに、茶カテキンを10ppmの濃度になるように前記コラーゲンペプチド溶液に添加した(組成を表3に示す)。最終的にコラーゲンペプチド溶液及び香料・クエン酸(酸味料)を添加して飲料を作製した。また、酵母エキスの含有量も比較例1〜4と同様に4段階に調整した。
【0047】
【表3】

【0048】
次いで、酵母エキスの添加量を変化させた各コラーゲンペプチド含有飲料の官能評価を行った。その結果を表4に示す。官能評価基準は前述の評価基準に従い、本発明では、飲料の風味及びコラーゲン臭の評価がいずれも「A」であるか、「A」及び「B」であるものを合格品とした。
【0049】
【表4】

【0050】
表2、4の結果から、コラーゲンペプチド含有飲料中に酵母エキスと茶カテキンを併用することによって、酵母エキス単独の場合に比べて、顕著なマスキング効果が認められた。特に、表2の結果と比較すると、マスキングの評価がおよそ一段階向上し、茶カテキンだけではマスキング作用はあまり効果的でないことから、酵母エキスと茶カテキンの相乗効果によってマスキング作用が向上していることが明らかになった。
【0051】
〔実施例2〕
実施例1と同様に、10mM以下のクエン酸バッファー溶液にコラーゲンペプチドを溶解し、その後、0.1%の酵母エキス(SK酵母エキスHU;日本製紙ケミカル社製)を添加してから完全に溶解した。さらに、茶カテキン、ゆずポリフェノール、ブドウ種子抽出物(タンニン含有)をそれぞれ0.01〜100ppmの濃度になるように前記コラーゲンペプチド溶液に添加した。コラーゲン含有飲料は実施例1と同様に作製し、最終的にコラーゲンペプチド溶液及び香料・クエン酸(酸味料)を添加して飲料を作製した。
得られた飲料について、コラーゲン臭に対するマスキング効果を実施例1と同様に調べた。その結果を表5〜7に示す。
【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
【表7】

【0055】
表5〜7の結果より、カテキンやタンニンあるいはゆずポリフェノールの何れを添加した場合でも、0.1〜100ppmの範囲であれば、コラーゲンペプチド含有飲料の風味とコラーゲン臭のマスキングの評価のいずれか又は両方が「A」を含むものとなり、その結果、顕著なマスキング効果が奏されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のように予めコラーゲンペプチドに酵母エキスを添加し、続いて植物由来カテキン、タンニン、ゆずポリフェノールの内1種類以上を添加することによるマスキング処理を行うことによってコラーゲン臭がほとんどなく、特有な不快な臭いが低減されているとともに、風味に優れたコラーゲンペプチド含有飲料を開発することが可能となった。本発明により、コラーゲン臭の嫌いな人々にも美味しく感じられるコラーゲンペプチドを配合した飲料を提供することができるようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンペプチドを1〜20重量%、酵母エキスを0.01〜1重量%含有し、かつ植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を総量0.1ppm〜100ppm含有することを特徴とするコラーゲンペプチド含有飲料。
【請求項2】
前記飲料中に含まれるコラーゲンペプチドの内、分子量2,700以下のものが50%(w/w)以上含有される請求項1に記載のコラーゲンペプチド含有飲料。
【請求項3】
水又は緩衝液にコラーゲンペプチド及び酵母エキスを添加し、その後植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を添加してコラーゲンペプチド溶液を調製する工程、
得られたコラーゲンペプチド溶液を飲料と混合する工程
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のコラーゲンペプチド含有飲料の製造方法。