説明

コラーゲンペプチド含有飲料

【課題】室温及び冷蔵で飲用した際のテクスチャーが優れている上に、肌状態の改善効果が高いコラーゲンペプチド含有飲料を提供する。
【解決手段】
平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドを25%(w/v)以上含有してなり、室温における液粘度が10〜35mPa・sの範囲に、また4℃における液粘度が20〜50mPa・sの範囲にすることでテクスチャーと効果を両立させた。更にプロリン、リジン、オルニチン及びαシクロデキストリンを添加することで風味と効果を更に高めることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンペプチド含有飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、ゼラチンとして、食品分野で従来から用いられている動物性タンパク質であるが、真皮や結合組織などの主成分であることから、近年、医療分野や美容分野の面からも特に注目を集めている。このため、機能性の高いコラーゲンを簡便に摂取するために、多くのコラーゲン入り飲食品が開発されている(例えば特許文献1等)。また摂取したコラーゲンを体内で効率的に利用するために、高分子のコラーゲンを低分子量化した、コラーゲンペプチド入りの飲食品も開発されている(例えば特許文献2等)。また近年では高い効果を得るために、一本あたり10,000mgのコラーゲンペプチドを配合した飲料が主流になっている。
【0003】
コラーゲンは独特の粘性、風味、臭気を有する問題を持っているが、これを回避するためにコラーゲンペプチドを低濃度にすると、テクスチャー(口中に含んだときの効果感・満足感)が悪化するという問題がある。特許文献3では平均分子量が2000〜10000のコラーゲンペプチドを用い、キサンタンガムとナトリウムイオンやカリウムイオンといった陽イオンを用いることで、テクスチャーに優れたコラーゲン含有飲料を提供している。しかし、ナトリウムイオンやカリウムイオンといった陽イオンの添加によりpHは上昇するため、コラーゲンペプチドの安定性が低下するといった問題や、コラーゲンの濃度が最大5%(w/v)であるため飲用後に得られる肌効果が十分でないという問題がある。また平均分子量が2000を超えるコラーゲンペプチドを用いると、室温における粘度に対し一般的な冷蔵庫の温度に相当する4℃での粘性が著しく高くなるため、冷蔵庫で冷やしたものを飲用する際のテクスチャーが悪化するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−160956号公報
【特許文献2】特開2006−204287号公報
【特許文献3】特許第3761807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
室温及び冷蔵で飲用した際のテクスチャーが優れている上に、肌状態の改善効果が高いコラーゲンペプチド含有飲料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らはテクスチャーと効果を両立させるとともに、風味の優れた飲料に関して鋭意検討した結果、本発明品を完成させた。
【0007】
本発明は以下の通りである。
[1]平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドを25%(w/v)以上含有してなり、室温における液粘度が10〜35mPa・sの範囲に、また4℃における液粘度が20〜50mPa・sの範囲に含まれるとともに、ヨーグルト、シュガー、ライチ、ピーチ、マンゴー、パイナップル、ラズベリー、ブルーベリー、クランベリー、ペアーのうちいずれかのフレーバーを少なくとも含有することを特徴とするコラーゲンペプチド含有飲料。
[2]更にプロリン、リジン、オルニチンのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、[1]記載のコラーゲンペプチド含有飲料。
[3]更にαシクロデキストリンを含有することを特徴とする、[1]又は[2]記載のコラーゲンペプチド含有飲料。
[4]魚由来のコラーゲンペプチドを用いることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のコラーゲンペプチド含有飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、室温及び冷蔵で飲用した際のテクスチャーが優れている上に、肌状態の改善効果が高いコラーゲンペプチド含有飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
コラーゲンペプチドは、ゼラチンを酵素や酸で加水分解して得られたものであり、グリシンを多く含むタンパク質であり、市販品としても入手可能である。コラーゲンとしては、哺乳類のコラーゲン組織から抽出したコラーゲンであっても、魚類のコラーゲン組織から抽出したコラーゲンであっても、特に限定されるものではない。近年、商品イメージや安全性等の観点から、魚類由来のコラーゲンであることが好ましい。魚類由来のコラーゲンの原料としては、海水魚であっても淡水魚であってもよく、マグロ(キハダ)、サメ、タラ、ヒラメ、カレイ、タイ、テラピア、サケ等の皮が挙げられる。哺乳類由来のコラーゲンの原料としては、ブタ、牛などが挙げられる。
【0010】
本発明で用いられるコラーゲンペプチドは、平均分子量1200以下の低分子量コラーゲンペプチドである。平均分子量1200以下とすることにより、飲食品として摂取したときのコラーゲンペプチドの吸収性が高くなる。平均分子量は300〜1000であることが好ましく、400〜800以下であることが更に好ましい。平均分子量が1200を超えると吸収性低下及び室温と冷蔵での粘性に大きな差を生じるという問題があり、平均分子量が300以下では必要十分なテクスチャーを有する粘性を得られないという問題がある。なお、コラーゲンペプチドの平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:ポリエチレングリコール(PEG)標準)にて測定した値を意味するが、市販品の場合には、供給元から提供される製品情報に従えばよい。
GPCで平均分子量を求めるには、あらかじめ分子量が既知で異なる高分子:ポリエチレングリコール(PEG)数種を同条件で測定して得られたリテンションタイムと分子量の関係の検量線を元に算出する。
本発明における平均分子量とは、この手法でPEG換算で算出した重量平均分子量を指す。
【0011】
本発明のコラーゲンペプチド含有飲料の粘度は、室温においては10〜35mPa・sの範囲に、また4℃においては20〜50mPa・sの範囲にあることが室温のまま飲用した場合でも冷蔵して飲用した場合でも良好なテクスチャーを実現するために望ましい。室温において10mPa・s又は4℃において20mPa・sに満たない飲料ではさらっとし過ぎており、満足感、効果感が少ない。また室温において35mPa・s又は4℃において50mPa・sを越える飲料ではとろみが強すぎて飲みにくい。すなわちいずれの場合もテクスチャーが悪いという問題がある。
【0012】
本発明で用いられるフレーバーとしては、ヨーグルト、シュガー、ライチ、ピーチ、マンゴー、パイナップル、ラズベリー、ブルーベリー、クランベリー、ペアーのいずれか一つ若しくは二つ以上であることが風味と臭気改善の観点から好ましく、より好ましくはヨーグルト、ライチが挙げられる。これら以外のフルーツフレーバー、例えばグレープフルーツ、オレンジ、レモンなどの柑橘系フレーバー、アセロラ、アップル、ストロベリー、キウイフルーツ、バナナなどの非柑橘系フルーツフレーバー、又はフルーツ以外のフレーバー(ヨーグルト、シュガーを除く)、例えばコーヒー、キャラメル、茶、クリームといったフレーバー群からのみ選択された組み合わせでは低分子コラーゲンペプチドに由来するえぐみや苦みの低減及び臭気のマスキングが十分でないという問題がある。
【0013】
本発明の飲料にはリジン、プロリン及びオルニチンからなる群より選択された少なくとも1つのアミノ酸を添加することが好ましい。リジン、プロリン及びオルニチンは、コラーゲンの構成成分又はコラーゲンの合成促進成分として知られている。体内でのこれらの追加アミノ酸を添加することによって、体内におけるコラーゲンの生成効率及び利用効率が高まる。本発明において好ましく使用される低分子量コラーゲンペプチドの多くは魚類の鱗や皮から抽出したものであるが、魚由来のコラーゲンペプチドは、人や他の動物のコラーゲンに比較してプロリン、リジンの含有量が少ない特徴がある。そのような理由から、本発明の構成に更にプロリンやリジンを追加することによりコラーゲン産生をより高めることができ、単純なコラーゲン摂取量アップでは達成できない肌への効果とテクスチャー、風味のバランスのとれた飲料がはじめて調製可能となることがわかった。これらの追加アミノ酸の添加量は、リジンの場合には、コラーゲンペプチドの質量に対してコラーゲンペプチド中のヒドロキシリジン以外のリジンを含めてトータル5質量%〜30質量%となるように添加することが好ましく、5質量%〜15質量%であることが風味のバランスの観点でより好ましい。同様に、プロリンの場合には、コラーゲンペプチド中のヒドロキシプロリン以外のプロリンを含めてトータル15質量%〜50質量%となるように添加することが好ましく、15質量%〜30質量%であることがより好ましい。オルニチンの場合には0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.1質量%〜20質量%あることがより好ましい。
【0014】
本発明の飲料には、上記の他に任意成分として、甘味料、酸味料、着色料、ビタミン類、カロテノイドやフラボノイドなどの抗酸化成分、カルシウムなどのミネラル類、を適宜加えることが出来る。
【実施例】
【0015】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されることは無い。なお、特に断り無い限り、「%」は質量基準である。
【0016】
[実施例1]
精製水10gにコラーゲンペプチド(魚由来;平均分子量500)11.5gを添加して60℃に加温して溶解した。溶解完了後クエン酸を0.8g添加し、更にエリスリトール1g、スクラロース0.01g、アセスルファムカリウム0.01g及びL−アスコルビン酸0.4gを順次添加し、ライチ香料75μLを添加し、調整用精製水で全量を30mlとし、実施例1の試料液を調製した。得られた試料液のpHは3.9であった。
【0017】
[実施例2〜11]
コラーゲンペプチドの平均分子量及び添加量を表1に記載されているように変更し、更に一部水準についてはプロリン、リジン、オルニチンを加えた以外は、実施例1と同じようにして、実施例2〜11の試料液を調整した。
【0018】
[比較例1〜7]
コラーゲンペプチドの平均分子量及び添加量を表2に記載されているように変更し、一部水準については粘度調整剤を加えた以外は、実施例1と同じようにして、比較例1〜7の試料液を調整した。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
[粘度、テクスチャー試験]
本発明のコラーゲンペプチド含有飲料の粘度は、室温においては10〜35mPa・sの範囲に、また4℃においては20〜50mPa・sの範囲にあることが室温のまま飲用した場合でも冷蔵して飲用した場合でも良好なテクスチャーを実現するために望ましい。室温において10mPa・s又は4℃において20mPa・sに満たない飲料ではさらっとし過ぎており、満足感、効果感が少ない。また室温において35mPa・s又は4℃において50mPa・sを越える飲料ではとろみが強すぎて飲みにくい。すなわちいずれの場合もテクスチャーが悪いという問題がある。
【0022】
実施例1〜11、比較例1〜7の試料液について粘度測定及びテクスチャー評価を実施した。
評価方法としては、パネラー20名に実施例及び比較例の各飲料を試飲してもらい、満足感、効果感等の観点で良好であれば○、満足感、効果感不足、物足りないなどの場合には×で評価してもらい、○の比率が6割を超えた場合に最終評価を○とし、×の比率が6割を超えた場合に最終評価を×として評価した。
【0023】
結果を表3、表4に示す。表に示したとおり、10〜35mPa・sの範囲に、また4℃においては20〜50mPa・sの範囲にあるときに良好なテクスチャーが得られている。また比較例3でも良好なテクスチャーが得られた。
【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】
[肌水分評価試験]
40〜60歳の女性48人を無作為に抽出し、各4人の12グループに分け、それぞれ実施例1〜11及び比較例3の試験液を1回/日で10日間摂取させた。各被験者は摂取前と摂取後における上腕部の肌水分量を、23℃45%の恒温恒湿条件下に2時間居続けさせたのちに測定した。摂取前後の肌水分量の変化を表5に示す。
実施例1〜11の摂取群では肌水分量が顕著に増加し効果を示しているのに対し、比較例3では肌水分量の増加は見られず、効果を示さなかった。
【0027】
【表5】

【0028】
[風味、臭気評価]
[実施例12]
調整水の添加前にヨーグルトフレーバーを75μL添加した以外は全て実施例4と同じようにして、実施例12の試料液を調整した。
【0029】
[実施例13〜21、比較例8〜17]
フレーバーの種類及び量を表6〜表9に示すように変更した以外は全て実施例8と同じようにして、実施例13〜21、比較例8〜17の試料液を調整した。
【0030】
[実施例22〜24]
香料の添加前に表7に示すようにαシクロデキストリンを100mg加えた以外は全て実施例19〜21と同じようにして、実施例22〜24の試料液を調整した。
【0031】
【表6】

【0032】
【表7】

【0033】
【表8】

【0034】
【表9】

【0035】
[官能試験]
実施例12〜24、及び比較例8〜17の試料液について、風味(えぐみ、苦み)及び臭気の試験を行った。
表10に示したように実施例12〜24の試料液は原料由来の風味及び臭気が改善されているが、比較例8〜17の試料液では不十分であった。
【0036】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均分子量1200以下のコラーゲンペプチドを25%(w/v)以上含有してなり、室温における液粘度が10〜35mPa・sの範囲に、また4℃における液粘度が20〜50mPa・sの範囲に含まれるとともに、ヨーグルト、シュガー、ライチ、ピーチ、マンゴー、パイナップル、ラズベリー、ブルーベリー、クランベリー、ペアーのうちいずれかのフレーバーを少なくとも含有することを特徴とするコラーゲンペプチド含有飲料。
【請求項2】
更にプロリン、リジン、オルニチンのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1記載のコラーゲンペプチド含有飲料。
【請求項3】
更にαシクロデキストリンを含有することを特徴とする、請求項1または2記載のコラーゲンペプチド含有飲料。
【請求項4】
魚由来のコラーゲンペプチドを用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のコラーゲンペプチド含有飲料。

【公開番号】特開2011−103822(P2011−103822A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263320(P2009−263320)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】