コラーゲン材料、フィルムおよびその製造方法
本発明は、概して、コラーゲン組成物および薄膜、ならびにその製造方法および使用方法に関する。いくつかの実施例においては、本発明は、「織物パターン」、「バスケットパターン」コラーゲン組成物および薄膜、ならびに、その製造方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2006年12月5日に出願された米国仮出願番号60/872,773号、および、2007年1月17日に出願された60/880,703号の優先権を主張し、これら両方の出願の開示全ては、その全体を参照することによって本明細書に組み込む。
【0002】
一般的に、本発明は、コラーゲン材料、組成物およびフィルム、並びにその製造方法および利用方法に関する。いくつかの実施例においては、本発明は、「織物パターン」または「バスケットパターン」または「バスケットウィーブ(weave)」コラーゲン材料、組成物および薄膜、ならびに、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
異なる遺伝子、異なるアミノ酸配列、異なる構造および異なる組織学的位置によって特徴付けられるが、三重らせんドメインの高グリシンおよびプロリン含有物を有する三重らせん分子を含む共通する特徴も有するように、体内には、遺伝学的に異なる20以上のコラーゲンがある。コラーゲンI型(以後、「コラーゲンI」)は、大部分が冗長的なコラーゲンであり、腱、骨、肌、角膜およびその他の部位で大量にみつかる。コラーゲンI繊維は、67nmの波長、特異的な抗体に対する免疫反応、および、各種染料を用いた染色によって特定できる。コラーゲン小繊維(fibril)は、動物で使用されている顕著な骨格構造の1つとして機能し、個々のロープ状コラーゲン分子の強度は、構造的統合性および組織強度に直接関連する。コラーゲンI小繊維は、肌、腱、骨、靱帯、角膜の実質的成分であり、小繊維の基礎的な伸長特性は、精密に調節され、生物機械学、構造的および機械的トランスダクト(mechanotransductory)シグナル伝達を行う。これらの特性の多くは、小繊維内の構造組織に由来し、コラーゲン分子の組織およびトポロジーは、分子中のリジンに由来する共有結合的クロスリンクによって更に安定化される強固な分子間相互作用を確実にする。副小繊維(subfibrillar)組織の存在は、小繊維コラーゲンの問題のない機械的応答に必要とされる組織の構造レベルを示唆しており、さらに、バイオポリマ内の結晶性と無秩序との間の不可避的なバランスの一部であってもよい。
【0004】
組織化した細胞群によって分泌されるコラーゲンの液晶状構成の重要性は、現在のモデルを表しているものの、インビボで見つかっているものと似た構造に、コラーゲン小繊維を自己集成する法則は依然として謎のままである。
【0005】
コラーゲンIを小繊維に集成させることは、長い間、自然発生的な自己集成として考えられてきたが、小繊維寸法の限界は、可溶性プロコラーゲン分子と、成長不溶性小繊維との間の物理的平衡に帰することができる。小繊維形成コラーゲンは、前駆体プロコラーゲンとして合成され、N末端およびC末端の球状プロペプチド伸長は、可溶性を保持する。C−プロペプチドは、3つの構成成分であるα鎖からプロコラーゲン分子が細胞内で集成される間の、鎖を会合させる。細胞外マトリックスとして分泌及び堆積される間、球状プロペプチドは、図1に示されるように、特定のプロコラーゲンタンパク質分解酵素によって小繊維形態をとるように開裂され、これは、M.J.Buehler,Proc Natl Acad Sci US103,12285−12290,2006によって報告されている。
【0006】
コラーゲンIは、細胞の支持および骨格を提供し、肌、骨および腱に強度と弾性を付与するように進化した、動物界のユビキタスタンパク質である。当然、コラーゲンIは、肌の補強、縫合、人工皮膚、硬膜置換術およびその他の利用を含む多数の医療用途に対するバイオ材料として広く使用されている。しかしながら、バイオ材料に使用されるコラーゲンの再構成に関するサイエンスは、初期段階である。現在までの研究のほとんどは、異なる種類のコラーゲン調合剤を塗布することによって特徴付けられる。これらの実験は、コラーゲンIが、体内の多様な部位に移植(implant)可能であり、コラーゲンIは、重度の免疫反応を誘発しないことを示している。多くの動物の肌および腱、およびヒトの皮膚から大量のコラーゲンIを可溶化する技術や、ヒトに使用するために可溶化した材料を小繊維形態に再構成する技術が取得可能である。
【0007】
第二次世界大戦中にMITで研究していたF.O.シュミット教授とそのグループは、皮膚が剥離した部分を被覆するためのコラーゲン縫合およびコラーゲンシートの利用を開発した。優れた一連の研究において、このグループは、手術工程でコラーゲンシートおよびコラーゲン繊維を使用することは、実現可能で実用的であると結論づけた。彼らは、神経修復用のコラーゲンチューブに関する研究も開始した。それから、コラーゲン縫合は、組織反応が少なくガット(cutgut)より操作特性が優れており、十分に利用可能であることが示された。
【0008】
コラーゲンIは、キャスティング(casting)、凍結乾燥、エレクトロスピニング(electrospinning)および当分野の当業者に周知な他のプロセスを含む各種プロセスによって、溶液(solution)から堆積することができる。これらの工程の大半において、従来の繊維の標準的なμm範囲からnm範囲までサイズダウンした、直径および長さが大きく異なるコラーゲン繊維が形成され、これによって、細胞をアンカリングする適宜な基礎(foundation)を提供するための、割れ目(interstice)および孔を有する織り交ぜられた繊維マットを提供することができる。コラーゲンの直径が小さいことで、エレクトロンスピンした繊維は、非常に高い表面−面積比を有し、従来の自然発生的なものとは顕著に異なる形態学的特性および材料特性を示すことが考えられる。Belamie E.et al.J.Phys.Condens.Matter,2006,18,115−129。
【0009】
1888年に液晶が発見されたとき、結晶は、即時に、1つの機構に対する強力な候補となり、自然は、この機構によって、同種複数の化合物混合物から、生きている構造(living structure)を形成するとされている。なぜならば、液晶は、「表面にある層によって結晶層が成長するが、同時に実質的な体積全体に亘っても成長するときに、配向秩序が同種液体において、増大せずに自然に現れるように、自己組織化の顕著な形態」を示すからである。構造が組織化される量は、結晶の成長と同様に、材料の表面並置を介して生じる場合、低速であるが、一方、液晶は、全体積に亘って同時に組織化される。
【0010】
液晶は、結晶性固体とアモルファス性液体との中間体である物質状態である。液晶には、図2a−図2cに示されるように、スメクチック相、ネマチック相およびコレステリック相の3つの基本相がある。図2aは、1次元並進秩序(translational order)ならびに配向性秩序が存在しているスメクチック相を示す。図2bは、分子軸の配向性長距離秩序のみが存在するネマチック相を示す。さらに、コレステリック相は、ネマチック液体タイプであり、分子集合体は、図2c、図3および図4a−図4bに示されるように、各面において互いに平行して存在しているが、各面は、次の面から一定の角度で回転している。コレステリック相は、ネマチック相のキラル形態である。キラルは、分子の構造的特徴を描いており、この構造的特徴は、その分子の鏡像体に、その分子自体を重ねることができない。図3に示される「ねじれ合板(twisted plywood)モデル」は、コレステリック構造の分子配向性モデルである。このモデルは、セルセクションにおける分子組織のモデルである。このモデルは、どのように、セルおよび組織セクションで観察されるアーキングパターンの一般的なシリーズが、真正の(authentic)湾曲フィラメントに起因するのではなく、ねじれ合板配置でみられる連続的分子配向性に起因しているかを説明している。このモデルは、以下に示されるように構成される。分子の方向は、一連の矩形に関して平行および等距離直線によって示されており、上記線の配向性(orientation)は、1つの矩形から次の矩形まで、わずかな一定の角度で回転している。周期性は可視的であり、分子方向の180°回転の各々は、ハーフコレステリックピッチP/2に対応する。回転は、研究されている限りの全ての生物学的ねじれ材料でみられるように、左手系(left−handed)を選択する。コレステリック軸は、左手のルールによって規定され、左手の握り拳は、ねじれの連続的方向性を示しており、左手の伸長した親指は、コレステリック軸の正方向を向いている。一連の平行の入れ子状アーク(nested arc)を重ねているようにみえるものが、ピラミッドの斜辺で直接見える。アークの凹面は、モデルの両側で逆転する。生物学的システムにおいて、このような特異的幾何学形状は、ねじれ合板として説明されることが多い。
【0011】
主なねじれタイプの2つは、液晶およびその生物学的類似体でみられ、平行面(平面状ねじれ(planar twist))または共軸円柱(円柱状ねじれ)における小繊維エレメントの配置によって規定される(図4参照)。共軸円柱または円柱状ねじれは、らせん状にも示される。骨組織の第2次骨単位(osteon)のコラーゲンは、植物細胞壁のセルロースのように、らせん状パターンで観察される。
【0012】
さらなる技術が、コラーゲンベースフィルムの複合体を形成するのに必要である。最近報告された技術の1つは、極めて小さいインク液滴を射出することによって高解像度でプリント可能なインクジェットプリンタを使用している。研究者らは、確立されたプリント技術が、生物学的組織と同様の配置において、μmの解像度で生細胞を播種することができるのではないかと期待している。この方法は、Nakamura M.等によってTissue Engineering,11:1658−1666(2005)で記載されており、ここで、筆者らは、生体適合性のあるインクジェットヘッドを使用し、生細胞をマイクロ播種することの実現可能性を調査している。生細胞は熱で容易に損傷するので、従って、彼らは、大きな熱を出させずにインクを射出できる静電気駆動型インクジェットシステムを使用した。ウシ血管内皮細胞を調整し、細胞培地で懸濁し、細胞懸濁液を、「インク」として使用し、培養ディスクに射出した。顕微鏡観察によって、内皮細胞が、培地中の射出されたドットに位置し、各ドットの細胞数は、細胞懸濁液および選択した射出周波数の濃度に依存していることが示された。射出した細胞を数時間培養すると、細胞は、細胞ディスクに接着した。このような研究開発が行われてきたが、この技術には限界があり、幅広い用途は見つかっていない。この技術は、材料(例えば、細胞)を特定の領域に送るのに有用ではあるが、材料の配向性を維持し、保存することはできない。
【0013】
コラーゲンフィルムおよびマトリックスを形成するための現在に至るまでの全ての先行技術は、コラーゲンベース材料からコラーゲンベース材料を形成するときに制約を受ける。主な制約は、コラーゲン様材料の天然の液晶構造の維持および保存である。例えば、エレクトロスピニング法およびキャスティング法は、長距離配向性を保存できない。コラーゲンベースフィルムおよびマトリックスは、生きている生物学的システムにおいて、細胞外マトリックスの天然の半結晶構造を模倣することができない。その他の方法、例えば、ラングミュラ−ブロジェット法などは、配向性が限定され、再現性が得られにくい。従って、生きている生物学的システムにおける天然構造を模倣する新規なコラーゲンベース材料、ならびに、このような材料を作製するための信頼性があり強固な方法が、必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、概して、コラーゲン組成物および薄膜、ならびにその製造方法および使用方法に関する。いくつかの実施例においては、本発明は、「織物パターン」、「バスケットパターン」、「バスケットウィーブ」、または、「マルチドメイン」コラーゲン組成物および薄膜、ならびに、その製造方法に関する。
【0015】
いくつかの実施例においては、本発明は、コラーゲン相から構成される少なくとも1つの単一層を提供し、前記コラーゲン層の表面は、各ドメインにおいてロッド状繊維の優性方向性を有するマルチドメイン構造と、ドメイン配向性がドメイン同士で互いに継続的に変化するように、ドメイン境界でのピット状構造と、を具える。
【0016】
いくつかの実施例においては、本発明は、配向性の角度またはダイレクタ配向が、ドメイン内の0°〜360°の範囲において、および、1つのドメインから別のドメインまでにおいて、実質的に、継続的に変化するように、ロッド状繊維の配向を付与する。各種ダイレクタ配向が可能であり、例えば、1つのドメインが、25°〜210°の範囲において、ダイレクタ配向を有することができれば、別のドメインは、170°〜5°の範囲において、ダイレクタ配向を有することができる。
【0017】
別の態様において、コラーゲン開始材料は、ネマチックコラーゲン溶液を含むように提供され、ネマチックコラーゲンは、20mg/mlまたはそれ以上の濃度で存在する。本発明の実施例は、モノマ性のヒトまたはウシコラーゲンおよび、例えば、酢酸などの酸を含み、溶液の前記コラーゲン濃度が、20mg/mlまたはそれ以上である溶液を具えたコラーゲン材料を更に提供する。さらに、いくつかの実施例においては、溶液中のコラーゲンは、ネマチック状態で液晶として存在する。
【0018】
別の態様においては、コラーゲン開始材料は、例えば、1から10mg/ml範囲の濃度の低濃度コラーゲンを有するように提供され、透析、または、20mg/mlまたはそれ以上のネマチックコラーゲン溶液を形成するために、当分野の当業者に周知な他の手段などの手段によって、濃縮される。
【0019】
別の態様においては、コラーゲン開始材料は、ネマチックコラーゲンおよび銀ナノワイヤの溶液を具えるように提供され、ネマチックコラーゲンは、濃度20mg/mlまたはそれ以上で存在する。
【0020】
さらなる別の態様において、本発明の実施例は、コラーゲンベース材料を形成する方法を提供する。1つの例示的な実施例においては、少なくとも1つのコラーゲン層を形成する方法は、せん断レート(shear rate)が100s−1およびそれ以上で、コラーゲン溶液にせん断力を加えるステップを具える。いくつかの実施例においては、コラーゲン溶液中のコラーゲンは、液晶状態で存在する。別の実施例においては、溶液中のコラーゲンは、ネマチック液晶状態で存在する。
【0021】
さらなる態様において、3次元細胞培養に使用するための3次元コラーゲンマトリックスまたは薄膜は本発明によって提供され、前記マトリックスまたは薄膜は、2°以上にプレチルト角を制御しながら、異方性基体をせん断して乾燥させることで調製されるコラーゲン層を具える。さらに、本発明のコラーゲン材料の医療用途が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の上述した目的及びその他の目的は、以下の詳細な説明を、添付の図面と併せて検討することで明らかになり、図面においては、同様の符号は、図面に亘って同様の部分を意味する。
【0023】
【図1】図1は、コラーゲンの周知の階層設計を描いた図を示す。コラーゲンの構造的特徴は、アミノ酸配列、トロポ(tropo)コラーゲン分子およびコラーゲン小繊維からコラーゲン繊維までの範囲である。
【0024】
【図2】図2a−cは、それぞれ、スメクチック形態、ネマチック形態およびコレステリック形態における液晶構造を示す概略図であり、先行技術(A.C.Neville,BioEssays3:4−8(1985))で報告されている分子、マイクロ小繊維または小繊維など、ロッド状構造から構成されている。
【0025】
【図3】図3は、M.M.Giraud−Guille,Int.Rev.Cytol.166:59−101(1996)で報告されているねじれ合板モデルを示す図である。
【0026】
【図4】図4は、4a、4a’、4b、4b’は、M.M.Giraud−Guille,Int.Rev.Cytol.166:59−101(1996)で報告された構造を描いており、(a)平面ねじれにおいて、等距離直線は、水平面に描かれ、この直線の方向は、平面から平面まで規則的に回転している。(a’)平面ねじれに適用されたコレステリック幾何学形状の従来の表記において、直線は、描かれている面の長手方向の分子を示し、ドットは、その面に対して垂直な分子を示し;斜位にある分子は、ネイルによって示され、このネイルのポイントは、観察者に向かって方向付けられている。(b)円柱状のねじれにおいて、等距離らせんが、一連の共軸円柱に描かれており、らせん角度は、1つの円柱から次のまで規則的に回転している。(b’)円柱状のねじれに加えられるコレステリック幾何学形状の従来の図を示す。
【0027】
【図5】図5は、本発明の実施例による用語の定義とともに、コラーゲン材料の各種構造エレメントを示すコラーゲン層のAFM画像を示す。
【0028】
【図6】図6A−Cは、本発明の請求項4による基体上の3つのコラーゲンベースマトリックスのAFM画像である。
【0029】
【図7】図7は、本発明のいくつかの実施例によって作製されたガラスの上のコラーゲンフィルムのAFM画像を示す。
【0030】
【図8】図8A−Cは、本発明の実施例によるガラスの上にコーティングされたコラーゲン単一層のAFM画像である。
【0031】
【図9】図9は、本発明の所定の実施例に従って、5μ×5μの面積において、512×512ポイントのAFMスキャンを有する3次元コラーゲンマトリックスであり、ピット深度の平均は120nmである。
【0032】
【図10】図10は、本発明の所定の実施例に従って作製されたコラーゲンマトリックスで増殖するヒト繊維芽細胞の画像である。
【0033】
【図11】図11A−Dは、本発明の所定の実施例によるコラーゲン材料の各々で識別されるポア(pore)を有するコラーゲン層のAFM画像である。
【0034】
【図12】図12A−Cは、それぞれ、コラーゲン層、ヒストグラムおよび関連データのAFM画像を示しており、3つのコラーゲン材料は、そのトポグラフィ特性を示している。
【0035】
【図13】図13は、ポア寸法特性を示す、本発明の実施例によって形成されたコラーゲン層の影(shadow)AFM画像のである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
上述した概略的な説明および以下の詳細説明は、両方共、例示のみを目的としたものであり、本明細書に記載される組成物、フィルムおよび方法に限定するものではないと理解される。この用途においては、「1つ」の使用は、特段の指定が限り、複数を含む。さらに、「または」は、特段の指定がない限り、「および/または」を意味する。同様に「具える」、「具えている」、「含む」および「含んでいる」は、限定を意味するものではない。用語「層」、「フィルム」、「薄膜」または「マトリックス」は、説明に亘って、交換可能に使用できる。用語「織物パターン」、「バスケットパターン」、「バスケットウィーブ」、「織物コラーゲン」または「マルチドメイン」は、説明に亘って、交換可能に使用される。
【0037】
本発明の実施例は、概して、コラーゲン材料、組成物およびフィルム、ならびに、その製造方法および使用方法に関する。いくつかの実施例においては、本発明は、「織物パターン」または「バスケットパターン」コラーゲン組成物およびフィルム、ならびに、その製造方法を提供する。限定する意味ではないが、本明細書で使用される用語「織物」または「バスケット」パターンコラーゲンは、「皮膚様」、あるいは、ヒトまたは動物の皮膚でみられるコラーゲン構造と同様のものを表すコラーゲン材料またはフィルムを意味する。いくつかの実施例においては、表面の上の1又はそれ以上のコラーゲン層またはフィルムを生成する方法が提供され、コラーゲンは、基体の表面で所望の配向性を有しながら実質的な均一な状態で形成される。
【0038】
I.コラーゲン組成物、材料またはフィルム
本発明は、一態様において、コラーゲン材料から構成される単一層または複数層スタックを提供し、前記コラーゲン材料の少なくとも表面は、各々のドメイン中のロッド状繊維の優性配向性と、前記ドメインの境界でのピット状構造とを有する複数ドメイン構造を具え、ドメインのダイレクタ配向は、概して、1つのドメインから別のドメインまで最大で0°〜360°の間である角度範囲内で継続的に変化する。別の態様においては、本発明は、複数ドメイン構造から構成されるコラーゲン材料を提供し、前記ドメインの各々は、ロッド状繊維を具え、これらのロッド状繊維は、1又はそれ以上のダイレクタによって規定される各種配向性を示し、1又はそれ以上のダイレクタは、360°に亘って、ランダムかつ実質的に均一に分布される。ダイレクタは、概ね、繊維の長さまたはルートにそって繊維の配向性を特徴付けることができ、一方、優性配向性は、特定のドメイン内の平均的な配向性を意味する。これらのダイレクタは、連続的な一連のドメインを示してもよい。
【0039】
別の態様において、本発明は、渦様ドメインの存在およびコラーゲン繊維束によって形成されるポアによって特徴付けられる織物パターンを有するコラーゲン層または材料を提供する。
【0040】
限定するものではないが、図5、図6A−C、7および8Aは、本発明のコラーゲン材料の構造に関する各種実施例を示す。いくつかの実施例においては、コラーゲン材料または層100は、繊維束102を具える。ここで使用される「繊維束」は、ロッド状コラーゲン繊維103をブレンドして混合することによって形成される構造を意味する。
【0041】
いくつかの実施例においては、繊維束102は、1又はそれ以上の渦状ドメイン104およびポア106を形成する。コラーゲン材料は、複数ドメイン105と比べてみることができる。ここでの「ドメイン」105は、「ロッド状繊維」103の領域を意味する。ドメイン105は、ピット状構造、ポアまたは他の欠陥によって拘束または限定される同種領域としてみることもできる。いくつかの実施例においては、ロッド状繊維は、実質的に平行な状態で整列される。「ロッド状繊維」103は、「繊維束」102を形成するように互いにブレンドおよび混合される。ドメイン105内の繊維は、1又はそれ以上のダイレクタ108によってダイレクタ配向によってさらに特徴付けられる。「ダイレクタ」108はベクタであり、このベクタに関して、ロッド状繊維103は優先的に配向される。いくつかの実施例においては、1又はそれ以上のダイレクタ108は、360°に亘って、ランダムかつ実質的に均一に分布される。ここでは、「渦状ドメイン」104は、連続的な一連の複数ドメイン105によって形成される構造を意味する。コラーゲン層または材料は、ポア106および/またはピット状構造107を具えてもよい。これらのポア106またはピット状構造107は、連続的な一連のドメインによって囲まれていてもよい。ポア106の形状は限定されない。いくつかの実施例においては、ポア106は、円形または楕円形を示す。例えば、より詳細に以下で示し、図5に示されるように、ポア106は、原子間力顕微鏡(AFM)によって明らかになるダークエリアである。いくつかの実施例においては、渦状ドメイン104は、ポア106を囲む。ピット状構造107は、通常、繊維束102に近接しており、ポア106の深度よりも小さい深度を有する。いくつかの実施例においては、各渦状ドメイン104は、さらに、ダイレクタ108によって特徴付けることが可能な配向性を有し、ダイレクタ108は、コアの回りで編まれるときに、角度方向を変更する。ドメインの優性配向性109は、ドメイン内の繊維の平均的な配向性である。
【0042】
コラーゲン層100は、本発明のいくつかの実施例によるクロスリンク繊維110を具えてもよい。ここで「クロスリンク繊維」は、近接する繊維束と結合するように、繊維束から略または実質的に直交するように延びている繊維102を意味する。
【0043】
さらに、コラーゲン材料は、各ドメイン内で互いに略または実質的に平行に配向されるロッド状繊維を含んだ複数ドメイン構造から構成されるように提供される。ドメイン配向性は、ドメインが重なっている場合は除いて、1つのドメインから別のドメインまで連続的に変化する。コラーゲン材料は、1つのエリアを形成するポア(またはピット)を有する。これらのポアは、小繊維方向分野において、回位状または渦状欠陥を誘引する。
【0044】
コラーゲン材料または層は、ポアの次元(寸法)およびポア間の距離によって特徴付けられる。いくつかの実施例においては、ポアの最大長は、50nmから5μmの範囲であり、より一般的には、約100nmから1μmである。
【0045】
繊維束のダイレクタ方向性は、コラーゲンによって形成されるマトリックスに亘って0から360°でランダムな状態で変化してもよい。角度ダイレクタ配向変動の幅広い範囲は、マトリックスの「織物」外観の特徴である。
【0046】
いくつかの実施例においては、渦状ドメイン範囲のほぼ中心にある近接するポア間の中心間距離は、50nmから5μm、より一般的には、200nmから1μmの範囲にある。クロスリンク繊維間の中心間距離は、20nmから20μm、より一般的には、約50〜200nmの範囲にある。
【0047】
特定の利点に関して、本発明によって提供されるコラーゲン材料は、織物パターンコラーゲン材料から構成される膜、フィルム、単一層または複数層をさらに形成することができる。例えば、いくつかの実施例においては、コラーゲン材料は、単一層を具え、複数層スタックは、本明細書で開示されるように、少なくとも1つのコラーゲン層を具える。
【0048】
本発明の実施例によるコラーゲン材料から調製されたフィルムおよびマトリックスは、実用的および基礎研究的側面の両方から、最も興味深い材料のうちのいくつかである。本発明の一側面において、生物医学的デバイスは、本発明のコラーゲン材料、フィルムおよびマトリックスから形成される。さらに、本発明のコラーゲン材料の表面は、各種幅広い方法において研究され、特定の所望の用途に変形することができる。
【0049】
血液透析用コラーゲン膜は、アテロコラーゲンと、解離して洗浄したコラーゲン繊維との混合物の抽出によって調製されていた。
【0050】
全てのコラーゲンフィルムおよび膜は、乾燥させ保存させた場合、劣化する。乾燥させると、構造が破壊され、圧縮され、時間に亘ってクロスリンクが生じてしまう。コラーゲン材料または膜を冷蔵するか、暗所におくか、または、水和させることで、劣化は阻止されるか、速度が低下する。
【0051】
別の態様においては、本明細書で提供されるコラーゲンベース材料は、ナノロッド、ナノワイヤ(例えば、炭素ナノチューブまたは銀/金ナノワイヤ)、および、コラーゲン材料の光学的および電磁的特性を向上させるための他の添加物(例えば、スルホン酸型液晶)を具える。磁気ガイド型マイクロ製造システムは、R.Valluzzi et al.,Philosophical Magazine,84:3439−3447(2004)で近年紹介されており、本発明の分子からなるコラーゲン材料に、人工的な磁気粒子を付着させるのに使用することができる。
【0052】
別の態様において、ここで提供されるコラーゲンベースマトリックスは、インターフェースでコラーゲン集合体のプレチルト角を形成するように、基体に堆積可能である。これは、例えば、コーティング前に基体を化学的または物理的に処理することによって、行うことができる。このプロセスは、液晶ディスプレイ用途におけるプレチルト角の形成と同じものである。
【0053】
コラーゲンフィルムは、メタクリレートに、あるいは、ガラス、他のプラスチック、金属材料またはバイオ材料を具える他の表面に、コラーゲンをキャスティングすることによって行うことができる。この技術は、物理試験および生物試験の両方で、各種方法において、コラーゲンを調製するのに有用であるが、この種の研究は、バイオ材料としてコラーゲンを使用するための基礎をなしている。例えば、細胞接着、移動および生存をサポートするためのインビトロでのコラーゲン基体の能力は、インビボに移植したときのその活性を予測するのを支援することができる。
【0054】
いくつかの実施例においては、本発明のコラーゲン材料は、ヒドロゲル、ペプチドベースバイオ材料、限定するものではないが、組み込まれたリガンド、カプセル化されたDNA、増殖因子を含む生物活性材料を、コラーゲン材料マトリックスに組み込むことによって修正することができる。例えば、フィブロネクチンなどのタンパク質は、コラーゲンへの細胞接着を促進する。生物活性のあるアミノ酸配列を含む各種合成ペプチドは、所望の生物活性を有するように共有結合可能である。各種プロテオグリカンは、コラーゲンにしっかりと結合し、各種増殖因子と結合し、組織修復および再生など所望の生物活性を促進する。
【0055】
II.製造方法
特に、織物パターンコラーゲンマトリックスおよびフィルムに関するコラーゲンマトリックスの製造方法が提供される。特定の開発に関して、いくつかの実施例において、コラーゲン材料は、液晶フォームのコラーゲン開始材料を用いて生産することができる。例示的な実施例においては、コラーゲン開始材料は、限定するものではないが、例えば、酢酸溶液など酸性溶液中で、モノマー性ヒトまたはウシコラーゲン1を具えるように提供され、ネマチックコラーゲンは、20mg/mlまたはそれ以上の濃度で存在している。多くの生物学的システムにおけるコラーゲンマトリックスは、液晶構造を有する。これは、長距離配向性を付与するコラーゲンの自然な状態である。本発明の実施例は、所定の濃度および温度(例えば、20mg/mlおよび6℃)で酸性溶液において、モノマー性コラーゲンの自己集成によって、ヒトコラーゲンIのネマチック層およびコレステリック層を提供する。特定の利点のうち、本発明の方法および組成物は、コラーゲン様材料の天然の液晶構造を維持し保存することを促進する。
【0056】
いくつかの実施例においては、コラーゲンの液晶状態は、選択的に制御される。選択的制御は、限定するものではないが、染色または/および減速−促進(retardation enhancement)あり、または、なしでクロスされた極性間の前記材料における典型的なパターンを観察すること;染色または/および減速−促進あり、または、なしの極性化された顕微鏡;ミュラーマトリックス測定値、および、偏光測定(すなわち、Axometrics偏光測定器)、を含む各種方法によって行うことができる。生理学的緩衝液中の高濃度(5〜30mg/ml)プロコラーゲン分子が、100μm2ドメインに亘って伸長する長距離ネマチックおよびプレコレステリック液晶秩序化を発達させつつ、溶液中に保持されることが示された(R.Martin et al.,J.Mol.Biol.301:11−17(2000))。インビボのプロコラーゲン濃度は、分泌小胞で、1ミリリットルあたり数十ミリグラムで推定され、これらの分子は、ネマチック様秩序化で、整列されるのが頻繁に観察される。
【0057】
いくつかの実施例においては、このコラーゲンは、限定するものではないが、ろ過、回転式エバポレーション、および、透析膜を含む当分野で周知な各種方法によって濃縮される。
【0058】
別の実施例においては、コラーゲン材料は、超音波処理によって調製される。Brown E.M.et al.Journal of American Leather Chemists Association,101:274−283(2006)を参照することでその全体を本明細書に組み込む。
【0059】
コーティングされる面、コーティングされる面積および所望の均等性(homogeneity)に応じて、上述した堆積を行う方法がいくつかある。
【0060】
いくつかの実施例において、織物パターンのコラーゲン層は、せん断方向における均等性を付与することができるせん断の下、フラットな面の上に、キャピラリまたはニードルからコラーゲン溶液を抽出することによって生産される。なお、いくつかの実施例においては、せん断方向に亘ってコーティングの変化が大きく、織物様パターンのコラーゲンはわずかな面積しか作成されず、再現性も低く、適用面積と同様に、厚さやその他のパラメータの制御も低いので、この方法を好ましくない。
【0061】
本明細書で用いられるコラーゲン層は、スロットダイ技術によって生産することもできる。一実施例においては、スロットダイ技術は、Chang YR et al.,Journal of Colloid and Interface Science 308:222−230(2007)、Paukshto M.,et al.,Journal of the SID13:765−772(2005);Fenell,L.,et al.,Asian Display/IDW’01:601−603および米国特許第4,299,789号、第4,869,200号、第6,174,394号に記載されているように、用いることができ、これらの文献全体を本明細書に組み込む。
【0062】
特定の利点のうち、一実施例においては、コラーゲン層は、せん断力の適用によって生産される。本発明の方法によって、コラーゲン小繊維の特定の構成(arrangement)が可能となり、最終的なコラーゲンマトリックスおよびフィルムにおける選択的パターンの構造を促進する。本発明の方法は、コラーゲンベース材料の天然(native)相を維持、保存する。例示の実施例においては、少なくとも1つのコラーゲン層を形成する方法は、せん断速度が100mm/秒およびそれ以上で、コラーゲン溶液にせん断力を適用するステップを具える。いくつかの実施例においては、コラーゲン溶液は、液晶状態で存在する。別の実施例においては、コラーゲン溶液は、20mg/mlまたはそれ以上の濃度で、ネマチック液晶状態で存在する。
【0063】
せん断力は、適宜な手段によってコラーゲン溶液に適用することができる。非限定的な一実施例においては、せん断力は、スロットダイツールを使用して適用され、所定圧力下で操作される。ガラス、プラスチックまたは他の基体材料など、所望のクリーンな面の上に、所定の圧力下で、スロットダイを介して力を加える前に、コラーゲン溶液の濃度、pH、塩成分および他の因子を調整することができる。この適用プロセスは、コンピュータ制御して、コーティングの均等性、堆積の深度および他の所望のパラメータを保証することができる。
【0064】
別の非限定的な実施例においては、せん断力は、リキッドフィルムアプリケータアッセンブリを用いて適用でき、これは、2007年11月20日に、D.McMutry,M.PaukshotoおよびY.Bobrovによって出願された特許出願「リキッドフィルムアプリケータアッセンブリおよびこれを組み込んだ矩形せん断システム」に記載されており、この特許出願全体は、参照することで本明細書に組み込む。
【0065】
別の非限定的な実施例においては、せん断力は、ガラスなどの適宜な滑らかな材料からなる2つの実質的な平行なプレートを使用して適用される。コラーゲン材料は、第1のプレートに堆積される。第2のプレートは第1のプレートの上におかれ、「サンドイッチ」を形成する。適宜な力を加え、プレート間に小さなギャップを形成するように互いに2つのプレートを押し出す。第1のプレートが、第2のプレートに対して移動され、捕捉したコラーゲン材料の上にせん断力を形成する。これらのプレートは、フラットまたは平面状でよい。代替としては、これらのプレとは、湾曲していてもよく、非平面トポグラフィを有していてもよい。
【0066】
コラーゲン配向性に影響を与える主な方法のパラメータは、せん断力速度、コーティングギャップ、せん断プレートの滑らかさ、せん断プレート面のエネルギ、コラーゲン濃度および添加物、相対湿度および温度、乾燥速度、表面前処理である。一般的なものであって、限定するものではないが、せん断速度は通常、1000mm/秒、より具体的には、約20〜100mm/秒である。せん断力が特定の速度で適用されるとき、コラーゲン材料は、コーティングギャップを介して、せん断ゾーンの長さに亘ってコーティングされるように基体の上に流れる(flow)。一般的なものであって限定するものではないが、コーティングギャップは、1〜50μm、より具体的には5〜30μmの範囲である。せん断ゾーンは、好適には比較的に長く、例えば、せん断ゾーンは、30mmまでの長さがあってもよい。当分野の当業者であれば、その他のプロセスパラメータを、ルーチン実験に適用することによって本発明の教示に基づいて選択できることを理解されたい。例えば、図6Aおよび6Bに示されるコラーゲン構造は、コーティングギャップが5μmで、2つの異なるコーティング速度(それぞれ、20mm/秒および60mm/秒)でなされる。
【0067】
本明細書に記載されている方法によって、比較的に安価なせん断方法によって、各種配向性パターンができるようになり(例えば、図6A〜図6C参照)、材料の消費が極端に低く抑えられ、このことは、貴重なバイオ材料を使用する場合、重要になる。さらなる方法は、高速のせん断速度(最大1000mm/秒)、せん断ゾーンの長さ(最大30mm)、および、1〜50μmの範囲内に精密に制御されたギャップによって生産される高配向性構造を生じさせる。さらに、コーティングプロセス中の整列(alignment)および乾燥を制御することが可能である。
【0068】
いくつかの実施例においては、本明細書に記載されるコラーゲン層は、異方性軸を有する異方性層の上に形成される。図6Cの構造は、コーティング方向に平行な異方性軸を有する異方性層の上に形成されている。
【0069】
最終的なコラーゲン配向性の試験によって明らかになったことは、全てのドメイン内で互いに平行に配向されたロッド状繊維を有する複数ドメイン構造を常にみることができることである。さらに、ドメイン配向性は、1つのドメインから別のドメインまで最大で0°〜360°ある角度範囲内で継続的に変化する。これらの構造は、黒色を付した1つのエリアとして示されるポア(またはピット)を有する。これらのポアは、小繊維のディレクションフィールドにおいて、回位状または渦状欠陥を誘発する。
【0070】
いくつかの実施例においては、本明細書に記載されている方法は、シークエンス式コーティングによって複数層構造の組立に使用できる。このような複数層構造は、コラーゲン層を含む異なる機能層を有することができる。基体上の第1層の特性は、全体構造の層間剥離(delamination)が容易になるように選択される。
【0071】
さらなる実施例においては、織物パターンコラーゲン材料および層は、本発明による非接触スロットダイタイプの方法によって形成される。この実施例においては、これらの方法は、(1)高速のせん断力速度;(2)ダイキャビティを埋めてコラーゲン溶液を送出するための、開始コラーゲン溶液の高流体材料消費(high fluid material consumption);(3)制御されたギャップ距離;(4)長いせん断ゾーンの長さ;および/または、(5)インサイチュウでの整列および乾燥の制御、のうちの1又はそれ以上によって特徴付けられる。
【0072】
いくつかの実施例においては、限定するものではないが、せん断は、10〜100mm/秒、より一般的には、20〜60mm/秒の範囲、また、最大で1000mm/秒の速度である。流体材料消費は、0.5ccから2リットル、より一般的には、0.5〜2ccの範囲である。ギャップ距離は、概ね、1〜50μm、より一般的には5〜30μmの範囲である。せん断ゾーンは、概ね最大30mmまでの範囲、より一般的には、1〜10mmの範囲の長さを有する。
【0073】
いくつかの実施例においては、コーティングプロセス中の整列および乾燥は、4℃〜37℃、より一般的には6℃〜25℃の範囲の温度で窒素を用いて、表面摩擦およびエアナイフによって制御される。
【0074】
次いで、サンプルをAFMによって測定し、その結果は、図6a〜図6cに示す。同様の測定値が、一ヶ月後に再現され、同様の結果が観察された。
【0075】
特定の利点のうち、本発明のコーティング方法は、フレキシブルな基体の上でバイオ材料を複数層でロールからロールまでコーティングする機会を提供する。これによって、以前までは不可能であったが、この方法の実施例が、非接触コーティング方法であることに部分的に起因して、所定の規模で、バイオ材料を大量生産する機会が提供され、これにより、リオトロピックな液晶に対して高アライメントを付与し、流体材料の消費は極めて少なく、高レベルの均一性が実現される。
【0076】
この方法によって、各種コラーゲン配向パターンを得ることができ、例えば、図6aから6c、および図7〜9を参照されたい。通常のブロードテイル(broadtail)(caracultcha)様パターンは、図7に示される。これは、ゼロ平均値偏差254Aとともに極めて一般的な非対称性ヒストグラムを有する。
【0077】
コーティングされたコラーゲンサンプルの断面(profile)が、代表的なエリア内で測定される場合(例えば、10μm×10μm)、次いで、この断面の平均レベルを、常にイコールゼロであるように規定することができる。ここで、高さ分布関数、J.M.BennettおよびL.Mattson、Introduction to Surface Roughness and Scattering、OSA、Washington、D.C.,1999、130pを取得することができる(振幅密度(amplitude density)関数とも呼ばれる)。
【0078】
本発明の方法によってコーティングされたコラーゲンベースサンプルは、表面断面の非対称性高さ分布関数を有する。この種の分布を、正規分布と比較した。正規分布は、同様の平均値(ゼロ)および同様の平方根の値を有する(例えば、J.M.BennettおよびL.Mattson、Introduction to Surface Roughness and Scattering、OSA、Washington、D.C.,1999、130p参照)。
【0079】
いくつかの実施例においては、本明細書に記載されるコラーゲン層は、スロットダイと、ジェットプリンティングおよびパターニングとを組み合わせるなど、異なる堆積方法を組み合わせることによって生産可能である。
【0080】
III.用途
可溶度を高め、精製され、再構築された配向性コラーゲン材料および本発明の小繊維は、多くの用途に使用できる。
【0081】
A.細胞培養
【0082】
一側面において、本発明は、織物パターンコラーゲン材料、および、細胞培養で使用できるフィルムを提供する。
【0083】
フィルムとして、または、他の材料のコーティングとして、コラーゲンは培養条件が面倒な組織培養に使用されている。タンパク質表面および小繊維の配向は、インビトロおよびおそらくインビボでも細胞増殖を促進するようにみえる。
【0084】
本明細書での「細胞培養」または「培養」は、人工的な環境、例えば、インビトロで細胞を維持することを意味する。なお、用語「細胞培養」は、遺伝学的用語であり、個々の原核生物(例えば、細菌)または真核生物(例えば、動物、植物および真菌)細胞の培養だけなく、組織、器官、臓器系または全臓器の培養を意味し、場合によっては、用語「組織培養」、「器官培養」、「臓器系培養」または「臓器培養」を、「細胞培養」の代わりに使用することができる。
【0085】
ここで「培養」は、増殖、分化、組み替えおよび天然両方の特異的なタンパク質の生成、活性状態または静止状態における継続的な生存能力に適した条件下の人工的な環境で細胞を維持することを意味する。従って、「培養」は、「細胞培養」または上述した状態で交換可能である。
【0086】
一般的に、細胞培養は、細胞培養培地の存在下で、培養容器中において細胞を増殖させることによって行われる。本明細書での「培養容器」は、ガラス、プラスチックまたは金属の容器、および、細胞を培養するための無菌環境を提供できる同様のものを意味する。培養容器は、限定するものではないが、ペトリ皿および96穴プレートを含む。
【0087】
いくつかの実施例においては、織物コラーゲン層を細胞培養容器の表面をコーティングするのに使用できる。
【0088】
コーティング剤としての各種生物学的マクロ分子の使用は、医療デバイスをコーティングするのに使用されるように、組織培養に幅広く採用されている。このような生物学的マクロ分子は、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、フィブリン、ヘパリンおよびその他の因子を具える。コーティングとして使用される場合、これらの因子は、より優れた生体適合性を補足し、組織培養の場合は、ディッシュに加えられた細胞の接着、生存、増殖、移動および分化を促進することを含む。本発明のコンセプトが提示するのは、このようなコーティングが、細胞の表面にあるレセプタに結合し、ついで、接着増殖および細胞の挙動をサポートするということである。本発明の方法を用いて調製されたこのような表面は、コーティングの完全性に基づいていた同種性(homogenoeous)は必須ではない。例えば、ディッシュについたコラーゲンは、天然の組織におけるコラーゲン構成に全く対応していなく、大半はランダムである。
【0089】
細胞表面での細胞の増殖は、細胞の行動を制御するのに重要な役割を果たす。Spardling A.,et al.,Nature;414:98−104(2001);Streuli C.Curr Opin Cell Biol;11(5):634−40(1999)。表面粗さ、疎水性、および、細胞表面との特異的相互作用などの特性は全て、細胞活性に影響を与える。Saltzman WM.Cell Interactions with Polymers.In:Lanza RP,Langer RS,Vacanti J,and editors.Principles of Tissue Engineering.2nd ed.San Diego:Academic Press;221−35(2000)。基体相互作用を介した細胞活性の調製は、バイオ材料ベース治療に関して重大な効果を有することができる。組織工学コンストラクト、エキシビボ細胞増殖および細胞カプセル化は全て、ある種の細胞間の相互作用を必要とし、増殖、機能および/または送達に関して、材料をサポートする。Lanza RP,Langer RS,Vacanti J.Principles of Tissue Engineering.2nd ed.San Diego:Academic Press;2000。材料の大まかな設計を介した生物活性の調節は、幅広く調査されている。Hubbell JA.,Curr Opin Biotechnol 1999;10(2):123−9。一例は、テザーした(tethered)接着リガンドの組み込みを介して細胞増殖を促進することができるハイドロゲルを具える。Lutolf MP.,et al.,Nat Biotechnol 21:513−8(2003)。細胞機能に関する材料ベースの制御は、幹細胞を制御するための潜在的に強力なツールであり、幹細胞は、多く種類の組織に分化する能力を有している。例えば、神経前駆細胞を神経に分化するように特異的に指令することができる自己集成ペプチドベースのバイオ材料が、近年報告された。Silva GA.,et al.,Science 303:1352−5(2004)。多くの研究が、近年、リガンドの組み込み、DNAのカプセル化および増殖因子を介した生物活性材料の開発に注がれている。Chen RP and Mooney DJ.Pharmaceutical Research 20:1103−12(2003);Sakiyama−Elbert SE および Hubbell JA.Ann Rev Mater Res;31:183−201(2001)。
【0090】
いくつかの実施例においては、細胞は細胞培養培地に接触する。「細胞培養培地(medium)」、「培養培地(medium)」(各場合において、複数の培地(media))および「培地製剤」は、本明細書において、細胞の培養および/または増殖を支持する栄養溶液を意味し、これらの層は、相互に交換可能に使用できる。
【0091】
本明細書において、「接触」は、培養する細胞を培養容器に、細胞が培養される培地とともに配置することを意味する。用語「接触」は、とりわけ、培地と細胞の混合、培地中への細胞の播種(perfusing)、培養容器中の細胞の上に培地をピペッティングすること、培養培地中に細胞を浸漬することを包含する。
【0092】
例えば、DMEM培地(H.J.Morton、インビトロ、6、89/1970)、F12培地(R.G.Ham,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,53,288/1965)およびRPMI1640培地(J.W.Goding、J.Immunol.Methods、39、285/1980;JAMA199,519/1957)など、細胞生存納をサポートするために使用可能な、多くの修正された種類の細胞培養培地がある。このような培地(「基本培地」とよく呼ばれる)は、しかしながら通常、ほとんどの動物細胞に必要な栄養成分が重度に欠損している。しばしば、血清が、これらの欠損を克服するために、基本培地に添加されなければならない。一般的に、ウシ胎児血清(FBS)、ウマ血清またはヒト血清が、十分な濃度で使用される。
【0093】
FBSの使用が望まれる一方で、よくあることは、FBSが適切な細胞増殖に関していくつかの欠点があることである。FBSは、比較的にコストが高く、FBSの使用は、細胞培養のコストを大幅に上昇させる。加えて、成長特性と一致する血清を得るのは困難である。さらに、FBSの生化学的複雑性は、対象となるタンパク質の下流プロセスを複雑化させる可能性があり、従って、生成物のコストが上昇する。
【0094】
血清フリーの培地は、細胞培養用の標準的な血清含有培地に代替としては完璧である。血清フリーの培地にはいくつかの利点があり、その中には、組成物のより良い定義、コンタミの低減およびコストの削減が含まれる。従来の血清含有培地のものに匹敵する血清フリー培地の培養能力が、長い間、探求されてきた。
【0095】
血清フリー培地を開発するための1つの戦略は、適宜な栄養素を有する基本培地を補助し、細胞増殖および/またはタンパク質生成を犠牲にすることなく、FBSの添加を避けることである。このような成分の例は、ウシ血清アルブミン(BSA)またはヒト血清アルブミン(HSA);上皮成長因子(EGF)または繊維芽細胞成長因子(FGF)を含む、天然(動物)または組み替え供給源由来の所定の成長因子;脂肪酸、ステロールおよびリン脂質などの脂質;ホスホエタノールアミン、エタノールアミンおよびリポタンパク質など脂質誘導体および複合体;インスリン、ヒドロコルチゾンおよびプロゲステロンなどのタンパク質およびステロイドホルモン;所定の微量元素を含む。参照することでその全体を本明細書に組み込む、Cell Culture Methods for Molecular and Cell Biology,Vol.1、Barnes,D.W.,et al.,eds.,New York:Alan R.Liss,Inc.,(1984)参照。
【0096】
B.配向性コラーゲンを有する骨組み。
【0097】
別の態様においては、本発明は、織物パターンコラーゲン材料を有する骨組みなど、配向されたコラーゲンを有する骨組みを提供する。
【0098】
いくつかの実施例においては、本発明の織物パターンコラーゲン層は、細胞培養で使用され、細胞を増殖するためのプラットフォームまたは誘導(guidance)を提供し、任意選択で、その増殖速度を上昇することができる。配向されたコラーゲン層が、細胞を成長させるために誘導(guidance)し、増殖速度を上昇させるという強力な証拠がある。Yoshizato K.et al.,Growth and Differ.,23(2)、175−184(1981)の論文において、コラーゲン繊維が整列しているコラーゲンフィルムは、走査型電子顕微鏡で調製され、特徴付けられる。このフィルム上の細胞配向は、ヒト繊維芽細胞およびニワトリ胎児筋原細胞を使用してインビトロで研究された。導入された繊維芽細胞の94%は、コラーゲン繊維の方向に沿って整列した。筋原細胞は、コラーゲン繊維の方向に沿って同様に整列した。筋原細胞の融合は、ランダムに配向されたフィルムと比べて、整列された膜の上で加速され、このことは、筋肉細胞分化における一定の誘導(guidance)の役割を果たすことを示唆している。
【0099】
さらに、本発明は、幹細胞の増殖に関して、骨組みまたはレイヤ(layer)の上に形成された織物パターンコラーゲンを設ける。図10は、本発明によって形成される、コーティングされたコラーゲン層の上での幹細胞の増殖を示す。幹細胞の高い増殖速度が、示された。
【0100】
いくつかの実施例においては、配向されたコラーゲンが、創傷の治癒プロセスに使用される。創傷の治癒プロセス中、配向されたコラーゲンは、細胞増殖および移動を調節するように作用し、創傷収縮プロセスにおいて重要な役割を果たす。Cuttle L.,Wound Repair and Regeneration、13:198−204(2005)。胎児と大人の創傷の治癒において、コラーゲン堆積パターンは、大きく異なる。胎児の皮膚は、完璧な組織構造に近い、整った状態で十分に組織されたパターンでコラーゲン繊維を再生するが、出生後および大人の皮膚は、厚くて組織されてないパターンで構成され、傷が残った状態でコラーゲンで治癒される。Colwell AS et al.,Front Biosci;8:s1240−8(2003)。胎児皮膚の創傷のない治癒特性は、妊娠期間後期の多くの動物モデルで失われる。創傷のない治癒に関するコラーゲン構造うの重要な証拠は、Goffin AJ.,et al.,Oriented Collagen Films for Wound−Healing Applications,2006,Annual Meeting,Society for Biological Engineeringに示される。
【0101】
いくつかの実施例においては、本明細書で提供される配向性コラーゲンは、組織工学で使用される。コラーゲンの異なる形態は、最も重要な組織工学の材料である。これらは、火傷の治癒、人工的な神経構築、損傷した心臓組織の再生などに幅広く使用される。ヒトの身体の細胞外マトリックスは、年齢およびヒトの状態とともに変化する、十分に配向された構造を有するので、G.Avtandilov et al.,Journal of Applied Crystallography,33:511−514(2000);P.Lazarev et al.,Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology−Proceedings;2000;v.4,p.3230−3233;Cuttle,L et al.,Wound Repair and Regeneration,13:198−204(2005)、研究者は、構造を模倣するように挑戦してきた。実質的な努力は、機械的な単一軸ストレッチによって、微小溝(microgroove)およびその他の微小構造化基体の使用によって、あるいは、せん断フロー配向性の使用によってなど、コラーゲン小繊維の所望の配向性を得るために費やされてきた。
【0102】
C.コラーゲンの治療用途
【0103】
一態様において、本発明は、本発明の織物パターンコラーゲン材料を使用して治療用途を提供する。
【0104】
バイオ材料としての使用するためのコラーゲンの調製は、2つの主なアプローチに広義にクラス分けすることができる。1つのアプローチは、生物学的構造を、ナノコラーゲン材料を除去して残ったコラーゲンを強化するために、いくつかの方法で処理する。存在している構造と、おそらく分子間クロスリンクの多くが、保持される。第2のアプローチにおいては、コラーゲンを、まず、溶解して精製し、次いで、適宜な形状に前記材料をリフォームおよび再クロスリンクするように試作がなされる。第1のアプローチには、バイオ材料中の通常の生物学的3次元構造を活用する利点があるが、かなり固定された所定の構造を有する欠点がある。第2のアプローチには、適宜な強度を有するコラーゲン材料を再構成する問題があるが、可能性のある用途において、非常に大きな潜在力を提供する。
【0105】
コラーゲンの異種間グラフトの成功は、他のものの間において、医療上重要な抗原性が一般的に問題とならないことを示唆している。最も完全に研究された構造の1つは、Johnson and Johnsonによって作成されたウシ由来のコラーゲン動脈グラフトである。
【0106】
再構築されたコラーゲンは、バイオ材料用により大きな潜在力があるように考えられる。再構築されたコラーゲンは、精製することが可能であり、その構造を決定し、側鎖を変更し、あらゆる種のバイオ医療用デバイスを設計できる。今日の医療上の主な用途は、コラーゲン繊維、コラーゲン膜、コラーゲンゲルおよびコラーゲンスポンジを押し出し成型させる。
【0107】
いくつかの実施例においては、本明細書に記載されるようにコラーゲンフィルムは、腱の損傷後の接着を阻止するため、挙筋まぶた筋の眼手術を延長するため、横断神経の修復のために使用される。Aparray&Tannerは、角膜火傷を治療する際にコラーゲンフィルムを使用することに成功したことを報告している。Prudden&Wolarskyは、創傷の治癒を促進するために、酵素処理したウシ軟骨から調製されたコラーゲンを使用した。彼らは、この調製が、創傷の治癒を阻害することを誘導したステロイドをもとにもどしたことを発見した。
【0108】
本明細書に記載されたコラーゲンフィルムは、火傷のための外科用医療材料(dressing)および創傷の治癒にさらに使用される。いくつかの実施例においては、コラーゲンは、重度にクロスリンクしていないことが好ましい。フィルムが重度にクロスリンクしている場合は、フィルムは、組織に組み込まれず、むしろ、フィルム下で、顆粒化および再上皮化がおこる。ここで、フィルムは、活性のないドレッシングとして作用する。一方、コラーゲンフェルトまたはスポンジは、本物の人工皮膚として機能することができる。骨欠損および創傷の治癒も、コラーゲンによって促進される。
【0109】
本明細書に記載される実験例および実施例は、例示のみを目的するものであり、実験例および実施例の各種変形および変更は、当分野の当業者が思いつき、また、それらが、本願の意図および範囲、ならびに、添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。本明細書に引用される出版物、特許、および、特許出願は、参照することで、組み込まれるものとする。
【0110】
実験例
以下の実験例は、例示のみを目的とするものであって、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0111】
コラーゲンの織物パターンは、ポアの寸法およびポア間の距離によって、定量的に特徴付けることができる。図11A−図11Dに示される4枚の写真は、オートCADの特徴測定を用いることで特徴付けられる。これらの結果は、以下の表に示される。本発明のコラーゲン材料を特徴付ける他の技術を使用することができ、以下のデータや結果は、例示のみを目的するものであって、決して本発明の範囲を限定する意図ではない。
【0112】
図11Aでは、測定値は、コラーゲンフィルムに亘って各々の位置の11ポイントで得た。これらの楕円の長軸または短軸を記した。表1は、楕円ポア形状の寸法に指示された図11Aの測定結果を示す。
表1.楕円ポア形状の寸法
【0113】
次いで、典型的なポア−ポア分離を判定するために、1つのポアを囲む楕円の中心から隣接するポアを囲む楕円の中心までの距離を測定した。
表2.典型的なC−Cポア寸法
【0114】
いくつかのクロスリンク繊維の典型的なスペースを測定し、その結果を以下の表3に示す。
表3.クロスリンク繊維スペース
【0115】
表4乃至6は、図11Aに関して記載されているのと同様の方法を用い、図11Bの測定結果を示す。
表4.楕円ポア形状の寸法
表5.C−C(中心間)ポア寸法
表6.クロスリンク繊維スペース
【0116】
表7乃至9は、図11Aに関して記載されているのと同様の方法を用い、図11Cの測定結果を示す。
表7.楕円ポア形状の寸法
表8.C−C(中心間)ポア寸法
表9.クロスリンク繊維スペース
【0117】
表10乃至12は、図11Aに関して記載されているのと同様の方法を用い、図11Dの測定値を示す。
表10.円形ポア形状の寸法
表11.C−C(中心間)ポア寸法
表12.クロスリンク繊維スペース
【0118】
表13は、図11A−Dの測定結果をまとめている。
表13.データ一覧
【0119】
図12a−12cでは、本発明によって形成されるコラーゲン材料のトポグラフィは、さらに、特徴付けられる。特に、コラーゲンフィルムトポグラフィの高分布は、コラーゲン表面構造を一般的に特徴付ける。平均化されたコラーゲンポア寸法は、表面の統計学的パラメータSa(平均あらさ)またはSq(RMSあらさ)に比例する。このトポグラフィは、2*Saまたは2*Sqとして評価できる。図12a−12cは、トポグラフィ特性を示す本発明の3つのコラーゲン材料に関して、コラーゲン層、ヒストグラムおよび関連データのAFMイメージを示す。
【0120】
ポア寸法は、図13に関連して示されるように、特徴付けられた。ポア寸法および束幅を特徴付けるために、AFMトポグラフィイメージは、図13に示されるように使用される。トポグラフィを推定するために、断面のマスクを形成する。トポグラフィ断面のレベルを最大トポグラフィ高さから50%のところで選択した。イメージ中の全てのポアを連続的に平均化しながら、最大軸および最短軸に沿った平均寸法として、ポア寸法を測定した。この束寸法を、測定した全ての値を連続的に平均化しながら、2つの最も近接したポアの最も近接した端部間距離として測定した。
【0121】
本発明の特定の実施例に関する上述の説明は、例示および説明を目的として示した。これらは、網羅的であること、または、開示された詳細な形状に対して本発明を限定するものではなく、多数の修正および変形が、上述した教示から可能であることは明らかである。これらの実施例は、本発明の原理およびその実際の用途を最も良く説明するために選択され、記載されているので、従って、当業者であれば、熟慮した特定用途に適するように、本発明、および、各種変形を有する各種実施例を利用することができる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される。
【0122】
全ての特許、特許出願、出版物、および、参考文献は、個々の出版物または特許出願の各々が参照することで組み込まれるように、参照することでその全範囲を本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2006年12月5日に出願された米国仮出願番号60/872,773号、および、2007年1月17日に出願された60/880,703号の優先権を主張し、これら両方の出願の開示全ては、その全体を参照することによって本明細書に組み込む。
【0002】
一般的に、本発明は、コラーゲン材料、組成物およびフィルム、並びにその製造方法および利用方法に関する。いくつかの実施例においては、本発明は、「織物パターン」または「バスケットパターン」または「バスケットウィーブ(weave)」コラーゲン材料、組成物および薄膜、ならびに、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
異なる遺伝子、異なるアミノ酸配列、異なる構造および異なる組織学的位置によって特徴付けられるが、三重らせんドメインの高グリシンおよびプロリン含有物を有する三重らせん分子を含む共通する特徴も有するように、体内には、遺伝学的に異なる20以上のコラーゲンがある。コラーゲンI型(以後、「コラーゲンI」)は、大部分が冗長的なコラーゲンであり、腱、骨、肌、角膜およびその他の部位で大量にみつかる。コラーゲンI繊維は、67nmの波長、特異的な抗体に対する免疫反応、および、各種染料を用いた染色によって特定できる。コラーゲン小繊維(fibril)は、動物で使用されている顕著な骨格構造の1つとして機能し、個々のロープ状コラーゲン分子の強度は、構造的統合性および組織強度に直接関連する。コラーゲンI小繊維は、肌、腱、骨、靱帯、角膜の実質的成分であり、小繊維の基礎的な伸長特性は、精密に調節され、生物機械学、構造的および機械的トランスダクト(mechanotransductory)シグナル伝達を行う。これらの特性の多くは、小繊維内の構造組織に由来し、コラーゲン分子の組織およびトポロジーは、分子中のリジンに由来する共有結合的クロスリンクによって更に安定化される強固な分子間相互作用を確実にする。副小繊維(subfibrillar)組織の存在は、小繊維コラーゲンの問題のない機械的応答に必要とされる組織の構造レベルを示唆しており、さらに、バイオポリマ内の結晶性と無秩序との間の不可避的なバランスの一部であってもよい。
【0004】
組織化した細胞群によって分泌されるコラーゲンの液晶状構成の重要性は、現在のモデルを表しているものの、インビボで見つかっているものと似た構造に、コラーゲン小繊維を自己集成する法則は依然として謎のままである。
【0005】
コラーゲンIを小繊維に集成させることは、長い間、自然発生的な自己集成として考えられてきたが、小繊維寸法の限界は、可溶性プロコラーゲン分子と、成長不溶性小繊維との間の物理的平衡に帰することができる。小繊維形成コラーゲンは、前駆体プロコラーゲンとして合成され、N末端およびC末端の球状プロペプチド伸長は、可溶性を保持する。C−プロペプチドは、3つの構成成分であるα鎖からプロコラーゲン分子が細胞内で集成される間の、鎖を会合させる。細胞外マトリックスとして分泌及び堆積される間、球状プロペプチドは、図1に示されるように、特定のプロコラーゲンタンパク質分解酵素によって小繊維形態をとるように開裂され、これは、M.J.Buehler,Proc Natl Acad Sci US103,12285−12290,2006によって報告されている。
【0006】
コラーゲンIは、細胞の支持および骨格を提供し、肌、骨および腱に強度と弾性を付与するように進化した、動物界のユビキタスタンパク質である。当然、コラーゲンIは、肌の補強、縫合、人工皮膚、硬膜置換術およびその他の利用を含む多数の医療用途に対するバイオ材料として広く使用されている。しかしながら、バイオ材料に使用されるコラーゲンの再構成に関するサイエンスは、初期段階である。現在までの研究のほとんどは、異なる種類のコラーゲン調合剤を塗布することによって特徴付けられる。これらの実験は、コラーゲンIが、体内の多様な部位に移植(implant)可能であり、コラーゲンIは、重度の免疫反応を誘発しないことを示している。多くの動物の肌および腱、およびヒトの皮膚から大量のコラーゲンIを可溶化する技術や、ヒトに使用するために可溶化した材料を小繊維形態に再構成する技術が取得可能である。
【0007】
第二次世界大戦中にMITで研究していたF.O.シュミット教授とそのグループは、皮膚が剥離した部分を被覆するためのコラーゲン縫合およびコラーゲンシートの利用を開発した。優れた一連の研究において、このグループは、手術工程でコラーゲンシートおよびコラーゲン繊維を使用することは、実現可能で実用的であると結論づけた。彼らは、神経修復用のコラーゲンチューブに関する研究も開始した。それから、コラーゲン縫合は、組織反応が少なくガット(cutgut)より操作特性が優れており、十分に利用可能であることが示された。
【0008】
コラーゲンIは、キャスティング(casting)、凍結乾燥、エレクトロスピニング(electrospinning)および当分野の当業者に周知な他のプロセスを含む各種プロセスによって、溶液(solution)から堆積することができる。これらの工程の大半において、従来の繊維の標準的なμm範囲からnm範囲までサイズダウンした、直径および長さが大きく異なるコラーゲン繊維が形成され、これによって、細胞をアンカリングする適宜な基礎(foundation)を提供するための、割れ目(interstice)および孔を有する織り交ぜられた繊維マットを提供することができる。コラーゲンの直径が小さいことで、エレクトロンスピンした繊維は、非常に高い表面−面積比を有し、従来の自然発生的なものとは顕著に異なる形態学的特性および材料特性を示すことが考えられる。Belamie E.et al.J.Phys.Condens.Matter,2006,18,115−129。
【0009】
1888年に液晶が発見されたとき、結晶は、即時に、1つの機構に対する強力な候補となり、自然は、この機構によって、同種複数の化合物混合物から、生きている構造(living structure)を形成するとされている。なぜならば、液晶は、「表面にある層によって結晶層が成長するが、同時に実質的な体積全体に亘っても成長するときに、配向秩序が同種液体において、増大せずに自然に現れるように、自己組織化の顕著な形態」を示すからである。構造が組織化される量は、結晶の成長と同様に、材料の表面並置を介して生じる場合、低速であるが、一方、液晶は、全体積に亘って同時に組織化される。
【0010】
液晶は、結晶性固体とアモルファス性液体との中間体である物質状態である。液晶には、図2a−図2cに示されるように、スメクチック相、ネマチック相およびコレステリック相の3つの基本相がある。図2aは、1次元並進秩序(translational order)ならびに配向性秩序が存在しているスメクチック相を示す。図2bは、分子軸の配向性長距離秩序のみが存在するネマチック相を示す。さらに、コレステリック相は、ネマチック液体タイプであり、分子集合体は、図2c、図3および図4a−図4bに示されるように、各面において互いに平行して存在しているが、各面は、次の面から一定の角度で回転している。コレステリック相は、ネマチック相のキラル形態である。キラルは、分子の構造的特徴を描いており、この構造的特徴は、その分子の鏡像体に、その分子自体を重ねることができない。図3に示される「ねじれ合板(twisted plywood)モデル」は、コレステリック構造の分子配向性モデルである。このモデルは、セルセクションにおける分子組織のモデルである。このモデルは、どのように、セルおよび組織セクションで観察されるアーキングパターンの一般的なシリーズが、真正の(authentic)湾曲フィラメントに起因するのではなく、ねじれ合板配置でみられる連続的分子配向性に起因しているかを説明している。このモデルは、以下に示されるように構成される。分子の方向は、一連の矩形に関して平行および等距離直線によって示されており、上記線の配向性(orientation)は、1つの矩形から次の矩形まで、わずかな一定の角度で回転している。周期性は可視的であり、分子方向の180°回転の各々は、ハーフコレステリックピッチP/2に対応する。回転は、研究されている限りの全ての生物学的ねじれ材料でみられるように、左手系(left−handed)を選択する。コレステリック軸は、左手のルールによって規定され、左手の握り拳は、ねじれの連続的方向性を示しており、左手の伸長した親指は、コレステリック軸の正方向を向いている。一連の平行の入れ子状アーク(nested arc)を重ねているようにみえるものが、ピラミッドの斜辺で直接見える。アークの凹面は、モデルの両側で逆転する。生物学的システムにおいて、このような特異的幾何学形状は、ねじれ合板として説明されることが多い。
【0011】
主なねじれタイプの2つは、液晶およびその生物学的類似体でみられ、平行面(平面状ねじれ(planar twist))または共軸円柱(円柱状ねじれ)における小繊維エレメントの配置によって規定される(図4参照)。共軸円柱または円柱状ねじれは、らせん状にも示される。骨組織の第2次骨単位(osteon)のコラーゲンは、植物細胞壁のセルロースのように、らせん状パターンで観察される。
【0012】
さらなる技術が、コラーゲンベースフィルムの複合体を形成するのに必要である。最近報告された技術の1つは、極めて小さいインク液滴を射出することによって高解像度でプリント可能なインクジェットプリンタを使用している。研究者らは、確立されたプリント技術が、生物学的組織と同様の配置において、μmの解像度で生細胞を播種することができるのではないかと期待している。この方法は、Nakamura M.等によってTissue Engineering,11:1658−1666(2005)で記載されており、ここで、筆者らは、生体適合性のあるインクジェットヘッドを使用し、生細胞をマイクロ播種することの実現可能性を調査している。生細胞は熱で容易に損傷するので、従って、彼らは、大きな熱を出させずにインクを射出できる静電気駆動型インクジェットシステムを使用した。ウシ血管内皮細胞を調整し、細胞培地で懸濁し、細胞懸濁液を、「インク」として使用し、培養ディスクに射出した。顕微鏡観察によって、内皮細胞が、培地中の射出されたドットに位置し、各ドットの細胞数は、細胞懸濁液および選択した射出周波数の濃度に依存していることが示された。射出した細胞を数時間培養すると、細胞は、細胞ディスクに接着した。このような研究開発が行われてきたが、この技術には限界があり、幅広い用途は見つかっていない。この技術は、材料(例えば、細胞)を特定の領域に送るのに有用ではあるが、材料の配向性を維持し、保存することはできない。
【0013】
コラーゲンフィルムおよびマトリックスを形成するための現在に至るまでの全ての先行技術は、コラーゲンベース材料からコラーゲンベース材料を形成するときに制約を受ける。主な制約は、コラーゲン様材料の天然の液晶構造の維持および保存である。例えば、エレクトロスピニング法およびキャスティング法は、長距離配向性を保存できない。コラーゲンベースフィルムおよびマトリックスは、生きている生物学的システムにおいて、細胞外マトリックスの天然の半結晶構造を模倣することができない。その他の方法、例えば、ラングミュラ−ブロジェット法などは、配向性が限定され、再現性が得られにくい。従って、生きている生物学的システムにおける天然構造を模倣する新規なコラーゲンベース材料、ならびに、このような材料を作製するための信頼性があり強固な方法が、必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、概して、コラーゲン組成物および薄膜、ならびにその製造方法および使用方法に関する。いくつかの実施例においては、本発明は、「織物パターン」、「バスケットパターン」、「バスケットウィーブ」、または、「マルチドメイン」コラーゲン組成物および薄膜、ならびに、その製造方法に関する。
【0015】
いくつかの実施例においては、本発明は、コラーゲン相から構成される少なくとも1つの単一層を提供し、前記コラーゲン層の表面は、各ドメインにおいてロッド状繊維の優性方向性を有するマルチドメイン構造と、ドメイン配向性がドメイン同士で互いに継続的に変化するように、ドメイン境界でのピット状構造と、を具える。
【0016】
いくつかの実施例においては、本発明は、配向性の角度またはダイレクタ配向が、ドメイン内の0°〜360°の範囲において、および、1つのドメインから別のドメインまでにおいて、実質的に、継続的に変化するように、ロッド状繊維の配向を付与する。各種ダイレクタ配向が可能であり、例えば、1つのドメインが、25°〜210°の範囲において、ダイレクタ配向を有することができれば、別のドメインは、170°〜5°の範囲において、ダイレクタ配向を有することができる。
【0017】
別の態様において、コラーゲン開始材料は、ネマチックコラーゲン溶液を含むように提供され、ネマチックコラーゲンは、20mg/mlまたはそれ以上の濃度で存在する。本発明の実施例は、モノマ性のヒトまたはウシコラーゲンおよび、例えば、酢酸などの酸を含み、溶液の前記コラーゲン濃度が、20mg/mlまたはそれ以上である溶液を具えたコラーゲン材料を更に提供する。さらに、いくつかの実施例においては、溶液中のコラーゲンは、ネマチック状態で液晶として存在する。
【0018】
別の態様においては、コラーゲン開始材料は、例えば、1から10mg/ml範囲の濃度の低濃度コラーゲンを有するように提供され、透析、または、20mg/mlまたはそれ以上のネマチックコラーゲン溶液を形成するために、当分野の当業者に周知な他の手段などの手段によって、濃縮される。
【0019】
別の態様においては、コラーゲン開始材料は、ネマチックコラーゲンおよび銀ナノワイヤの溶液を具えるように提供され、ネマチックコラーゲンは、濃度20mg/mlまたはそれ以上で存在する。
【0020】
さらなる別の態様において、本発明の実施例は、コラーゲンベース材料を形成する方法を提供する。1つの例示的な実施例においては、少なくとも1つのコラーゲン層を形成する方法は、せん断レート(shear rate)が100s−1およびそれ以上で、コラーゲン溶液にせん断力を加えるステップを具える。いくつかの実施例においては、コラーゲン溶液中のコラーゲンは、液晶状態で存在する。別の実施例においては、溶液中のコラーゲンは、ネマチック液晶状態で存在する。
【0021】
さらなる態様において、3次元細胞培養に使用するための3次元コラーゲンマトリックスまたは薄膜は本発明によって提供され、前記マトリックスまたは薄膜は、2°以上にプレチルト角を制御しながら、異方性基体をせん断して乾燥させることで調製されるコラーゲン層を具える。さらに、本発明のコラーゲン材料の医療用途が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の上述した目的及びその他の目的は、以下の詳細な説明を、添付の図面と併せて検討することで明らかになり、図面においては、同様の符号は、図面に亘って同様の部分を意味する。
【0023】
【図1】図1は、コラーゲンの周知の階層設計を描いた図を示す。コラーゲンの構造的特徴は、アミノ酸配列、トロポ(tropo)コラーゲン分子およびコラーゲン小繊維からコラーゲン繊維までの範囲である。
【0024】
【図2】図2a−cは、それぞれ、スメクチック形態、ネマチック形態およびコレステリック形態における液晶構造を示す概略図であり、先行技術(A.C.Neville,BioEssays3:4−8(1985))で報告されている分子、マイクロ小繊維または小繊維など、ロッド状構造から構成されている。
【0025】
【図3】図3は、M.M.Giraud−Guille,Int.Rev.Cytol.166:59−101(1996)で報告されているねじれ合板モデルを示す図である。
【0026】
【図4】図4は、4a、4a’、4b、4b’は、M.M.Giraud−Guille,Int.Rev.Cytol.166:59−101(1996)で報告された構造を描いており、(a)平面ねじれにおいて、等距離直線は、水平面に描かれ、この直線の方向は、平面から平面まで規則的に回転している。(a’)平面ねじれに適用されたコレステリック幾何学形状の従来の表記において、直線は、描かれている面の長手方向の分子を示し、ドットは、その面に対して垂直な分子を示し;斜位にある分子は、ネイルによって示され、このネイルのポイントは、観察者に向かって方向付けられている。(b)円柱状のねじれにおいて、等距離らせんが、一連の共軸円柱に描かれており、らせん角度は、1つの円柱から次のまで規則的に回転している。(b’)円柱状のねじれに加えられるコレステリック幾何学形状の従来の図を示す。
【0027】
【図5】図5は、本発明の実施例による用語の定義とともに、コラーゲン材料の各種構造エレメントを示すコラーゲン層のAFM画像を示す。
【0028】
【図6】図6A−Cは、本発明の請求項4による基体上の3つのコラーゲンベースマトリックスのAFM画像である。
【0029】
【図7】図7は、本発明のいくつかの実施例によって作製されたガラスの上のコラーゲンフィルムのAFM画像を示す。
【0030】
【図8】図8A−Cは、本発明の実施例によるガラスの上にコーティングされたコラーゲン単一層のAFM画像である。
【0031】
【図9】図9は、本発明の所定の実施例に従って、5μ×5μの面積において、512×512ポイントのAFMスキャンを有する3次元コラーゲンマトリックスであり、ピット深度の平均は120nmである。
【0032】
【図10】図10は、本発明の所定の実施例に従って作製されたコラーゲンマトリックスで増殖するヒト繊維芽細胞の画像である。
【0033】
【図11】図11A−Dは、本発明の所定の実施例によるコラーゲン材料の各々で識別されるポア(pore)を有するコラーゲン層のAFM画像である。
【0034】
【図12】図12A−Cは、それぞれ、コラーゲン層、ヒストグラムおよび関連データのAFM画像を示しており、3つのコラーゲン材料は、そのトポグラフィ特性を示している。
【0035】
【図13】図13は、ポア寸法特性を示す、本発明の実施例によって形成されたコラーゲン層の影(shadow)AFM画像のである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
上述した概略的な説明および以下の詳細説明は、両方共、例示のみを目的としたものであり、本明細書に記載される組成物、フィルムおよび方法に限定するものではないと理解される。この用途においては、「1つ」の使用は、特段の指定が限り、複数を含む。さらに、「または」は、特段の指定がない限り、「および/または」を意味する。同様に「具える」、「具えている」、「含む」および「含んでいる」は、限定を意味するものではない。用語「層」、「フィルム」、「薄膜」または「マトリックス」は、説明に亘って、交換可能に使用できる。用語「織物パターン」、「バスケットパターン」、「バスケットウィーブ」、「織物コラーゲン」または「マルチドメイン」は、説明に亘って、交換可能に使用される。
【0037】
本発明の実施例は、概して、コラーゲン材料、組成物およびフィルム、ならびに、その製造方法および使用方法に関する。いくつかの実施例においては、本発明は、「織物パターン」または「バスケットパターン」コラーゲン組成物およびフィルム、ならびに、その製造方法を提供する。限定する意味ではないが、本明細書で使用される用語「織物」または「バスケット」パターンコラーゲンは、「皮膚様」、あるいは、ヒトまたは動物の皮膚でみられるコラーゲン構造と同様のものを表すコラーゲン材料またはフィルムを意味する。いくつかの実施例においては、表面の上の1又はそれ以上のコラーゲン層またはフィルムを生成する方法が提供され、コラーゲンは、基体の表面で所望の配向性を有しながら実質的な均一な状態で形成される。
【0038】
I.コラーゲン組成物、材料またはフィルム
本発明は、一態様において、コラーゲン材料から構成される単一層または複数層スタックを提供し、前記コラーゲン材料の少なくとも表面は、各々のドメイン中のロッド状繊維の優性配向性と、前記ドメインの境界でのピット状構造とを有する複数ドメイン構造を具え、ドメインのダイレクタ配向は、概して、1つのドメインから別のドメインまで最大で0°〜360°の間である角度範囲内で継続的に変化する。別の態様においては、本発明は、複数ドメイン構造から構成されるコラーゲン材料を提供し、前記ドメインの各々は、ロッド状繊維を具え、これらのロッド状繊維は、1又はそれ以上のダイレクタによって規定される各種配向性を示し、1又はそれ以上のダイレクタは、360°に亘って、ランダムかつ実質的に均一に分布される。ダイレクタは、概ね、繊維の長さまたはルートにそって繊維の配向性を特徴付けることができ、一方、優性配向性は、特定のドメイン内の平均的な配向性を意味する。これらのダイレクタは、連続的な一連のドメインを示してもよい。
【0039】
別の態様において、本発明は、渦様ドメインの存在およびコラーゲン繊維束によって形成されるポアによって特徴付けられる織物パターンを有するコラーゲン層または材料を提供する。
【0040】
限定するものではないが、図5、図6A−C、7および8Aは、本発明のコラーゲン材料の構造に関する各種実施例を示す。いくつかの実施例においては、コラーゲン材料または層100は、繊維束102を具える。ここで使用される「繊維束」は、ロッド状コラーゲン繊維103をブレンドして混合することによって形成される構造を意味する。
【0041】
いくつかの実施例においては、繊維束102は、1又はそれ以上の渦状ドメイン104およびポア106を形成する。コラーゲン材料は、複数ドメイン105と比べてみることができる。ここでの「ドメイン」105は、「ロッド状繊維」103の領域を意味する。ドメイン105は、ピット状構造、ポアまたは他の欠陥によって拘束または限定される同種領域としてみることもできる。いくつかの実施例においては、ロッド状繊維は、実質的に平行な状態で整列される。「ロッド状繊維」103は、「繊維束」102を形成するように互いにブレンドおよび混合される。ドメイン105内の繊維は、1又はそれ以上のダイレクタ108によってダイレクタ配向によってさらに特徴付けられる。「ダイレクタ」108はベクタであり、このベクタに関して、ロッド状繊維103は優先的に配向される。いくつかの実施例においては、1又はそれ以上のダイレクタ108は、360°に亘って、ランダムかつ実質的に均一に分布される。ここでは、「渦状ドメイン」104は、連続的な一連の複数ドメイン105によって形成される構造を意味する。コラーゲン層または材料は、ポア106および/またはピット状構造107を具えてもよい。これらのポア106またはピット状構造107は、連続的な一連のドメインによって囲まれていてもよい。ポア106の形状は限定されない。いくつかの実施例においては、ポア106は、円形または楕円形を示す。例えば、より詳細に以下で示し、図5に示されるように、ポア106は、原子間力顕微鏡(AFM)によって明らかになるダークエリアである。いくつかの実施例においては、渦状ドメイン104は、ポア106を囲む。ピット状構造107は、通常、繊維束102に近接しており、ポア106の深度よりも小さい深度を有する。いくつかの実施例においては、各渦状ドメイン104は、さらに、ダイレクタ108によって特徴付けることが可能な配向性を有し、ダイレクタ108は、コアの回りで編まれるときに、角度方向を変更する。ドメインの優性配向性109は、ドメイン内の繊維の平均的な配向性である。
【0042】
コラーゲン層100は、本発明のいくつかの実施例によるクロスリンク繊維110を具えてもよい。ここで「クロスリンク繊維」は、近接する繊維束と結合するように、繊維束から略または実質的に直交するように延びている繊維102を意味する。
【0043】
さらに、コラーゲン材料は、各ドメイン内で互いに略または実質的に平行に配向されるロッド状繊維を含んだ複数ドメイン構造から構成されるように提供される。ドメイン配向性は、ドメインが重なっている場合は除いて、1つのドメインから別のドメインまで連続的に変化する。コラーゲン材料は、1つのエリアを形成するポア(またはピット)を有する。これらのポアは、小繊維方向分野において、回位状または渦状欠陥を誘引する。
【0044】
コラーゲン材料または層は、ポアの次元(寸法)およびポア間の距離によって特徴付けられる。いくつかの実施例においては、ポアの最大長は、50nmから5μmの範囲であり、より一般的には、約100nmから1μmである。
【0045】
繊維束のダイレクタ方向性は、コラーゲンによって形成されるマトリックスに亘って0から360°でランダムな状態で変化してもよい。角度ダイレクタ配向変動の幅広い範囲は、マトリックスの「織物」外観の特徴である。
【0046】
いくつかの実施例においては、渦状ドメイン範囲のほぼ中心にある近接するポア間の中心間距離は、50nmから5μm、より一般的には、200nmから1μmの範囲にある。クロスリンク繊維間の中心間距離は、20nmから20μm、より一般的には、約50〜200nmの範囲にある。
【0047】
特定の利点に関して、本発明によって提供されるコラーゲン材料は、織物パターンコラーゲン材料から構成される膜、フィルム、単一層または複数層をさらに形成することができる。例えば、いくつかの実施例においては、コラーゲン材料は、単一層を具え、複数層スタックは、本明細書で開示されるように、少なくとも1つのコラーゲン層を具える。
【0048】
本発明の実施例によるコラーゲン材料から調製されたフィルムおよびマトリックスは、実用的および基礎研究的側面の両方から、最も興味深い材料のうちのいくつかである。本発明の一側面において、生物医学的デバイスは、本発明のコラーゲン材料、フィルムおよびマトリックスから形成される。さらに、本発明のコラーゲン材料の表面は、各種幅広い方法において研究され、特定の所望の用途に変形することができる。
【0049】
血液透析用コラーゲン膜は、アテロコラーゲンと、解離して洗浄したコラーゲン繊維との混合物の抽出によって調製されていた。
【0050】
全てのコラーゲンフィルムおよび膜は、乾燥させ保存させた場合、劣化する。乾燥させると、構造が破壊され、圧縮され、時間に亘ってクロスリンクが生じてしまう。コラーゲン材料または膜を冷蔵するか、暗所におくか、または、水和させることで、劣化は阻止されるか、速度が低下する。
【0051】
別の態様においては、本明細書で提供されるコラーゲンベース材料は、ナノロッド、ナノワイヤ(例えば、炭素ナノチューブまたは銀/金ナノワイヤ)、および、コラーゲン材料の光学的および電磁的特性を向上させるための他の添加物(例えば、スルホン酸型液晶)を具える。磁気ガイド型マイクロ製造システムは、R.Valluzzi et al.,Philosophical Magazine,84:3439−3447(2004)で近年紹介されており、本発明の分子からなるコラーゲン材料に、人工的な磁気粒子を付着させるのに使用することができる。
【0052】
別の態様において、ここで提供されるコラーゲンベースマトリックスは、インターフェースでコラーゲン集合体のプレチルト角を形成するように、基体に堆積可能である。これは、例えば、コーティング前に基体を化学的または物理的に処理することによって、行うことができる。このプロセスは、液晶ディスプレイ用途におけるプレチルト角の形成と同じものである。
【0053】
コラーゲンフィルムは、メタクリレートに、あるいは、ガラス、他のプラスチック、金属材料またはバイオ材料を具える他の表面に、コラーゲンをキャスティングすることによって行うことができる。この技術は、物理試験および生物試験の両方で、各種方法において、コラーゲンを調製するのに有用であるが、この種の研究は、バイオ材料としてコラーゲンを使用するための基礎をなしている。例えば、細胞接着、移動および生存をサポートするためのインビトロでのコラーゲン基体の能力は、インビボに移植したときのその活性を予測するのを支援することができる。
【0054】
いくつかの実施例においては、本発明のコラーゲン材料は、ヒドロゲル、ペプチドベースバイオ材料、限定するものではないが、組み込まれたリガンド、カプセル化されたDNA、増殖因子を含む生物活性材料を、コラーゲン材料マトリックスに組み込むことによって修正することができる。例えば、フィブロネクチンなどのタンパク質は、コラーゲンへの細胞接着を促進する。生物活性のあるアミノ酸配列を含む各種合成ペプチドは、所望の生物活性を有するように共有結合可能である。各種プロテオグリカンは、コラーゲンにしっかりと結合し、各種増殖因子と結合し、組織修復および再生など所望の生物活性を促進する。
【0055】
II.製造方法
特に、織物パターンコラーゲンマトリックスおよびフィルムに関するコラーゲンマトリックスの製造方法が提供される。特定の開発に関して、いくつかの実施例において、コラーゲン材料は、液晶フォームのコラーゲン開始材料を用いて生産することができる。例示的な実施例においては、コラーゲン開始材料は、限定するものではないが、例えば、酢酸溶液など酸性溶液中で、モノマー性ヒトまたはウシコラーゲン1を具えるように提供され、ネマチックコラーゲンは、20mg/mlまたはそれ以上の濃度で存在している。多くの生物学的システムにおけるコラーゲンマトリックスは、液晶構造を有する。これは、長距離配向性を付与するコラーゲンの自然な状態である。本発明の実施例は、所定の濃度および温度(例えば、20mg/mlおよび6℃)で酸性溶液において、モノマー性コラーゲンの自己集成によって、ヒトコラーゲンIのネマチック層およびコレステリック層を提供する。特定の利点のうち、本発明の方法および組成物は、コラーゲン様材料の天然の液晶構造を維持し保存することを促進する。
【0056】
いくつかの実施例においては、コラーゲンの液晶状態は、選択的に制御される。選択的制御は、限定するものではないが、染色または/および減速−促進(retardation enhancement)あり、または、なしでクロスされた極性間の前記材料における典型的なパターンを観察すること;染色または/および減速−促進あり、または、なしの極性化された顕微鏡;ミュラーマトリックス測定値、および、偏光測定(すなわち、Axometrics偏光測定器)、を含む各種方法によって行うことができる。生理学的緩衝液中の高濃度(5〜30mg/ml)プロコラーゲン分子が、100μm2ドメインに亘って伸長する長距離ネマチックおよびプレコレステリック液晶秩序化を発達させつつ、溶液中に保持されることが示された(R.Martin et al.,J.Mol.Biol.301:11−17(2000))。インビボのプロコラーゲン濃度は、分泌小胞で、1ミリリットルあたり数十ミリグラムで推定され、これらの分子は、ネマチック様秩序化で、整列されるのが頻繁に観察される。
【0057】
いくつかの実施例においては、このコラーゲンは、限定するものではないが、ろ過、回転式エバポレーション、および、透析膜を含む当分野で周知な各種方法によって濃縮される。
【0058】
別の実施例においては、コラーゲン材料は、超音波処理によって調製される。Brown E.M.et al.Journal of American Leather Chemists Association,101:274−283(2006)を参照することでその全体を本明細書に組み込む。
【0059】
コーティングされる面、コーティングされる面積および所望の均等性(homogeneity)に応じて、上述した堆積を行う方法がいくつかある。
【0060】
いくつかの実施例において、織物パターンのコラーゲン層は、せん断方向における均等性を付与することができるせん断の下、フラットな面の上に、キャピラリまたはニードルからコラーゲン溶液を抽出することによって生産される。なお、いくつかの実施例においては、せん断方向に亘ってコーティングの変化が大きく、織物様パターンのコラーゲンはわずかな面積しか作成されず、再現性も低く、適用面積と同様に、厚さやその他のパラメータの制御も低いので、この方法を好ましくない。
【0061】
本明細書で用いられるコラーゲン層は、スロットダイ技術によって生産することもできる。一実施例においては、スロットダイ技術は、Chang YR et al.,Journal of Colloid and Interface Science 308:222−230(2007)、Paukshto M.,et al.,Journal of the SID13:765−772(2005);Fenell,L.,et al.,Asian Display/IDW’01:601−603および米国特許第4,299,789号、第4,869,200号、第6,174,394号に記載されているように、用いることができ、これらの文献全体を本明細書に組み込む。
【0062】
特定の利点のうち、一実施例においては、コラーゲン層は、せん断力の適用によって生産される。本発明の方法によって、コラーゲン小繊維の特定の構成(arrangement)が可能となり、最終的なコラーゲンマトリックスおよびフィルムにおける選択的パターンの構造を促進する。本発明の方法は、コラーゲンベース材料の天然(native)相を維持、保存する。例示の実施例においては、少なくとも1つのコラーゲン層を形成する方法は、せん断速度が100mm/秒およびそれ以上で、コラーゲン溶液にせん断力を適用するステップを具える。いくつかの実施例においては、コラーゲン溶液は、液晶状態で存在する。別の実施例においては、コラーゲン溶液は、20mg/mlまたはそれ以上の濃度で、ネマチック液晶状態で存在する。
【0063】
せん断力は、適宜な手段によってコラーゲン溶液に適用することができる。非限定的な一実施例においては、せん断力は、スロットダイツールを使用して適用され、所定圧力下で操作される。ガラス、プラスチックまたは他の基体材料など、所望のクリーンな面の上に、所定の圧力下で、スロットダイを介して力を加える前に、コラーゲン溶液の濃度、pH、塩成分および他の因子を調整することができる。この適用プロセスは、コンピュータ制御して、コーティングの均等性、堆積の深度および他の所望のパラメータを保証することができる。
【0064】
別の非限定的な実施例においては、せん断力は、リキッドフィルムアプリケータアッセンブリを用いて適用でき、これは、2007年11月20日に、D.McMutry,M.PaukshotoおよびY.Bobrovによって出願された特許出願「リキッドフィルムアプリケータアッセンブリおよびこれを組み込んだ矩形せん断システム」に記載されており、この特許出願全体は、参照することで本明細書に組み込む。
【0065】
別の非限定的な実施例においては、せん断力は、ガラスなどの適宜な滑らかな材料からなる2つの実質的な平行なプレートを使用して適用される。コラーゲン材料は、第1のプレートに堆積される。第2のプレートは第1のプレートの上におかれ、「サンドイッチ」を形成する。適宜な力を加え、プレート間に小さなギャップを形成するように互いに2つのプレートを押し出す。第1のプレートが、第2のプレートに対して移動され、捕捉したコラーゲン材料の上にせん断力を形成する。これらのプレートは、フラットまたは平面状でよい。代替としては、これらのプレとは、湾曲していてもよく、非平面トポグラフィを有していてもよい。
【0066】
コラーゲン配向性に影響を与える主な方法のパラメータは、せん断力速度、コーティングギャップ、せん断プレートの滑らかさ、せん断プレート面のエネルギ、コラーゲン濃度および添加物、相対湿度および温度、乾燥速度、表面前処理である。一般的なものであって、限定するものではないが、せん断速度は通常、1000mm/秒、より具体的には、約20〜100mm/秒である。せん断力が特定の速度で適用されるとき、コラーゲン材料は、コーティングギャップを介して、せん断ゾーンの長さに亘ってコーティングされるように基体の上に流れる(flow)。一般的なものであって限定するものではないが、コーティングギャップは、1〜50μm、より具体的には5〜30μmの範囲である。せん断ゾーンは、好適には比較的に長く、例えば、せん断ゾーンは、30mmまでの長さがあってもよい。当分野の当業者であれば、その他のプロセスパラメータを、ルーチン実験に適用することによって本発明の教示に基づいて選択できることを理解されたい。例えば、図6Aおよび6Bに示されるコラーゲン構造は、コーティングギャップが5μmで、2つの異なるコーティング速度(それぞれ、20mm/秒および60mm/秒)でなされる。
【0067】
本明細書に記載されている方法によって、比較的に安価なせん断方法によって、各種配向性パターンができるようになり(例えば、図6A〜図6C参照)、材料の消費が極端に低く抑えられ、このことは、貴重なバイオ材料を使用する場合、重要になる。さらなる方法は、高速のせん断速度(最大1000mm/秒)、せん断ゾーンの長さ(最大30mm)、および、1〜50μmの範囲内に精密に制御されたギャップによって生産される高配向性構造を生じさせる。さらに、コーティングプロセス中の整列(alignment)および乾燥を制御することが可能である。
【0068】
いくつかの実施例においては、本明細書に記載されるコラーゲン層は、異方性軸を有する異方性層の上に形成される。図6Cの構造は、コーティング方向に平行な異方性軸を有する異方性層の上に形成されている。
【0069】
最終的なコラーゲン配向性の試験によって明らかになったことは、全てのドメイン内で互いに平行に配向されたロッド状繊維を有する複数ドメイン構造を常にみることができることである。さらに、ドメイン配向性は、1つのドメインから別のドメインまで最大で0°〜360°ある角度範囲内で継続的に変化する。これらの構造は、黒色を付した1つのエリアとして示されるポア(またはピット)を有する。これらのポアは、小繊維のディレクションフィールドにおいて、回位状または渦状欠陥を誘発する。
【0070】
いくつかの実施例においては、本明細書に記載されている方法は、シークエンス式コーティングによって複数層構造の組立に使用できる。このような複数層構造は、コラーゲン層を含む異なる機能層を有することができる。基体上の第1層の特性は、全体構造の層間剥離(delamination)が容易になるように選択される。
【0071】
さらなる実施例においては、織物パターンコラーゲン材料および層は、本発明による非接触スロットダイタイプの方法によって形成される。この実施例においては、これらの方法は、(1)高速のせん断力速度;(2)ダイキャビティを埋めてコラーゲン溶液を送出するための、開始コラーゲン溶液の高流体材料消費(high fluid material consumption);(3)制御されたギャップ距離;(4)長いせん断ゾーンの長さ;および/または、(5)インサイチュウでの整列および乾燥の制御、のうちの1又はそれ以上によって特徴付けられる。
【0072】
いくつかの実施例においては、限定するものではないが、せん断は、10〜100mm/秒、より一般的には、20〜60mm/秒の範囲、また、最大で1000mm/秒の速度である。流体材料消費は、0.5ccから2リットル、より一般的には、0.5〜2ccの範囲である。ギャップ距離は、概ね、1〜50μm、より一般的には5〜30μmの範囲である。せん断ゾーンは、概ね最大30mmまでの範囲、より一般的には、1〜10mmの範囲の長さを有する。
【0073】
いくつかの実施例においては、コーティングプロセス中の整列および乾燥は、4℃〜37℃、より一般的には6℃〜25℃の範囲の温度で窒素を用いて、表面摩擦およびエアナイフによって制御される。
【0074】
次いで、サンプルをAFMによって測定し、その結果は、図6a〜図6cに示す。同様の測定値が、一ヶ月後に再現され、同様の結果が観察された。
【0075】
特定の利点のうち、本発明のコーティング方法は、フレキシブルな基体の上でバイオ材料を複数層でロールからロールまでコーティングする機会を提供する。これによって、以前までは不可能であったが、この方法の実施例が、非接触コーティング方法であることに部分的に起因して、所定の規模で、バイオ材料を大量生産する機会が提供され、これにより、リオトロピックな液晶に対して高アライメントを付与し、流体材料の消費は極めて少なく、高レベルの均一性が実現される。
【0076】
この方法によって、各種コラーゲン配向パターンを得ることができ、例えば、図6aから6c、および図7〜9を参照されたい。通常のブロードテイル(broadtail)(caracultcha)様パターンは、図7に示される。これは、ゼロ平均値偏差254Aとともに極めて一般的な非対称性ヒストグラムを有する。
【0077】
コーティングされたコラーゲンサンプルの断面(profile)が、代表的なエリア内で測定される場合(例えば、10μm×10μm)、次いで、この断面の平均レベルを、常にイコールゼロであるように規定することができる。ここで、高さ分布関数、J.M.BennettおよびL.Mattson、Introduction to Surface Roughness and Scattering、OSA、Washington、D.C.,1999、130pを取得することができる(振幅密度(amplitude density)関数とも呼ばれる)。
【0078】
本発明の方法によってコーティングされたコラーゲンベースサンプルは、表面断面の非対称性高さ分布関数を有する。この種の分布を、正規分布と比較した。正規分布は、同様の平均値(ゼロ)および同様の平方根の値を有する(例えば、J.M.BennettおよびL.Mattson、Introduction to Surface Roughness and Scattering、OSA、Washington、D.C.,1999、130p参照)。
【0079】
いくつかの実施例においては、本明細書に記載されるコラーゲン層は、スロットダイと、ジェットプリンティングおよびパターニングとを組み合わせるなど、異なる堆積方法を組み合わせることによって生産可能である。
【0080】
III.用途
可溶度を高め、精製され、再構築された配向性コラーゲン材料および本発明の小繊維は、多くの用途に使用できる。
【0081】
A.細胞培養
【0082】
一側面において、本発明は、織物パターンコラーゲン材料、および、細胞培養で使用できるフィルムを提供する。
【0083】
フィルムとして、または、他の材料のコーティングとして、コラーゲンは培養条件が面倒な組織培養に使用されている。タンパク質表面および小繊維の配向は、インビトロおよびおそらくインビボでも細胞増殖を促進するようにみえる。
【0084】
本明細書での「細胞培養」または「培養」は、人工的な環境、例えば、インビトロで細胞を維持することを意味する。なお、用語「細胞培養」は、遺伝学的用語であり、個々の原核生物(例えば、細菌)または真核生物(例えば、動物、植物および真菌)細胞の培養だけなく、組織、器官、臓器系または全臓器の培養を意味し、場合によっては、用語「組織培養」、「器官培養」、「臓器系培養」または「臓器培養」を、「細胞培養」の代わりに使用することができる。
【0085】
ここで「培養」は、増殖、分化、組み替えおよび天然両方の特異的なタンパク質の生成、活性状態または静止状態における継続的な生存能力に適した条件下の人工的な環境で細胞を維持することを意味する。従って、「培養」は、「細胞培養」または上述した状態で交換可能である。
【0086】
一般的に、細胞培養は、細胞培養培地の存在下で、培養容器中において細胞を増殖させることによって行われる。本明細書での「培養容器」は、ガラス、プラスチックまたは金属の容器、および、細胞を培養するための無菌環境を提供できる同様のものを意味する。培養容器は、限定するものではないが、ペトリ皿および96穴プレートを含む。
【0087】
いくつかの実施例においては、織物コラーゲン層を細胞培養容器の表面をコーティングするのに使用できる。
【0088】
コーティング剤としての各種生物学的マクロ分子の使用は、医療デバイスをコーティングするのに使用されるように、組織培養に幅広く採用されている。このような生物学的マクロ分子は、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、フィブリン、ヘパリンおよびその他の因子を具える。コーティングとして使用される場合、これらの因子は、より優れた生体適合性を補足し、組織培養の場合は、ディッシュに加えられた細胞の接着、生存、増殖、移動および分化を促進することを含む。本発明のコンセプトが提示するのは、このようなコーティングが、細胞の表面にあるレセプタに結合し、ついで、接着増殖および細胞の挙動をサポートするということである。本発明の方法を用いて調製されたこのような表面は、コーティングの完全性に基づいていた同種性(homogenoeous)は必須ではない。例えば、ディッシュについたコラーゲンは、天然の組織におけるコラーゲン構成に全く対応していなく、大半はランダムである。
【0089】
細胞表面での細胞の増殖は、細胞の行動を制御するのに重要な役割を果たす。Spardling A.,et al.,Nature;414:98−104(2001);Streuli C.Curr Opin Cell Biol;11(5):634−40(1999)。表面粗さ、疎水性、および、細胞表面との特異的相互作用などの特性は全て、細胞活性に影響を与える。Saltzman WM.Cell Interactions with Polymers.In:Lanza RP,Langer RS,Vacanti J,and editors.Principles of Tissue Engineering.2nd ed.San Diego:Academic Press;221−35(2000)。基体相互作用を介した細胞活性の調製は、バイオ材料ベース治療に関して重大な効果を有することができる。組織工学コンストラクト、エキシビボ細胞増殖および細胞カプセル化は全て、ある種の細胞間の相互作用を必要とし、増殖、機能および/または送達に関して、材料をサポートする。Lanza RP,Langer RS,Vacanti J.Principles of Tissue Engineering.2nd ed.San Diego:Academic Press;2000。材料の大まかな設計を介した生物活性の調節は、幅広く調査されている。Hubbell JA.,Curr Opin Biotechnol 1999;10(2):123−9。一例は、テザーした(tethered)接着リガンドの組み込みを介して細胞増殖を促進することができるハイドロゲルを具える。Lutolf MP.,et al.,Nat Biotechnol 21:513−8(2003)。細胞機能に関する材料ベースの制御は、幹細胞を制御するための潜在的に強力なツールであり、幹細胞は、多く種類の組織に分化する能力を有している。例えば、神経前駆細胞を神経に分化するように特異的に指令することができる自己集成ペプチドベースのバイオ材料が、近年報告された。Silva GA.,et al.,Science 303:1352−5(2004)。多くの研究が、近年、リガンドの組み込み、DNAのカプセル化および増殖因子を介した生物活性材料の開発に注がれている。Chen RP and Mooney DJ.Pharmaceutical Research 20:1103−12(2003);Sakiyama−Elbert SE および Hubbell JA.Ann Rev Mater Res;31:183−201(2001)。
【0090】
いくつかの実施例においては、細胞は細胞培養培地に接触する。「細胞培養培地(medium)」、「培養培地(medium)」(各場合において、複数の培地(media))および「培地製剤」は、本明細書において、細胞の培養および/または増殖を支持する栄養溶液を意味し、これらの層は、相互に交換可能に使用できる。
【0091】
本明細書において、「接触」は、培養する細胞を培養容器に、細胞が培養される培地とともに配置することを意味する。用語「接触」は、とりわけ、培地と細胞の混合、培地中への細胞の播種(perfusing)、培養容器中の細胞の上に培地をピペッティングすること、培養培地中に細胞を浸漬することを包含する。
【0092】
例えば、DMEM培地(H.J.Morton、インビトロ、6、89/1970)、F12培地(R.G.Ham,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,53,288/1965)およびRPMI1640培地(J.W.Goding、J.Immunol.Methods、39、285/1980;JAMA199,519/1957)など、細胞生存納をサポートするために使用可能な、多くの修正された種類の細胞培養培地がある。このような培地(「基本培地」とよく呼ばれる)は、しかしながら通常、ほとんどの動物細胞に必要な栄養成分が重度に欠損している。しばしば、血清が、これらの欠損を克服するために、基本培地に添加されなければならない。一般的に、ウシ胎児血清(FBS)、ウマ血清またはヒト血清が、十分な濃度で使用される。
【0093】
FBSの使用が望まれる一方で、よくあることは、FBSが適切な細胞増殖に関していくつかの欠点があることである。FBSは、比較的にコストが高く、FBSの使用は、細胞培養のコストを大幅に上昇させる。加えて、成長特性と一致する血清を得るのは困難である。さらに、FBSの生化学的複雑性は、対象となるタンパク質の下流プロセスを複雑化させる可能性があり、従って、生成物のコストが上昇する。
【0094】
血清フリーの培地は、細胞培養用の標準的な血清含有培地に代替としては完璧である。血清フリーの培地にはいくつかの利点があり、その中には、組成物のより良い定義、コンタミの低減およびコストの削減が含まれる。従来の血清含有培地のものに匹敵する血清フリー培地の培養能力が、長い間、探求されてきた。
【0095】
血清フリー培地を開発するための1つの戦略は、適宜な栄養素を有する基本培地を補助し、細胞増殖および/またはタンパク質生成を犠牲にすることなく、FBSの添加を避けることである。このような成分の例は、ウシ血清アルブミン(BSA)またはヒト血清アルブミン(HSA);上皮成長因子(EGF)または繊維芽細胞成長因子(FGF)を含む、天然(動物)または組み替え供給源由来の所定の成長因子;脂肪酸、ステロールおよびリン脂質などの脂質;ホスホエタノールアミン、エタノールアミンおよびリポタンパク質など脂質誘導体および複合体;インスリン、ヒドロコルチゾンおよびプロゲステロンなどのタンパク質およびステロイドホルモン;所定の微量元素を含む。参照することでその全体を本明細書に組み込む、Cell Culture Methods for Molecular and Cell Biology,Vol.1、Barnes,D.W.,et al.,eds.,New York:Alan R.Liss,Inc.,(1984)参照。
【0096】
B.配向性コラーゲンを有する骨組み。
【0097】
別の態様においては、本発明は、織物パターンコラーゲン材料を有する骨組みなど、配向されたコラーゲンを有する骨組みを提供する。
【0098】
いくつかの実施例においては、本発明の織物パターンコラーゲン層は、細胞培養で使用され、細胞を増殖するためのプラットフォームまたは誘導(guidance)を提供し、任意選択で、その増殖速度を上昇することができる。配向されたコラーゲン層が、細胞を成長させるために誘導(guidance)し、増殖速度を上昇させるという強力な証拠がある。Yoshizato K.et al.,Growth and Differ.,23(2)、175−184(1981)の論文において、コラーゲン繊維が整列しているコラーゲンフィルムは、走査型電子顕微鏡で調製され、特徴付けられる。このフィルム上の細胞配向は、ヒト繊維芽細胞およびニワトリ胎児筋原細胞を使用してインビトロで研究された。導入された繊維芽細胞の94%は、コラーゲン繊維の方向に沿って整列した。筋原細胞は、コラーゲン繊維の方向に沿って同様に整列した。筋原細胞の融合は、ランダムに配向されたフィルムと比べて、整列された膜の上で加速され、このことは、筋肉細胞分化における一定の誘導(guidance)の役割を果たすことを示唆している。
【0099】
さらに、本発明は、幹細胞の増殖に関して、骨組みまたはレイヤ(layer)の上に形成された織物パターンコラーゲンを設ける。図10は、本発明によって形成される、コーティングされたコラーゲン層の上での幹細胞の増殖を示す。幹細胞の高い増殖速度が、示された。
【0100】
いくつかの実施例においては、配向されたコラーゲンが、創傷の治癒プロセスに使用される。創傷の治癒プロセス中、配向されたコラーゲンは、細胞増殖および移動を調節するように作用し、創傷収縮プロセスにおいて重要な役割を果たす。Cuttle L.,Wound Repair and Regeneration、13:198−204(2005)。胎児と大人の創傷の治癒において、コラーゲン堆積パターンは、大きく異なる。胎児の皮膚は、完璧な組織構造に近い、整った状態で十分に組織されたパターンでコラーゲン繊維を再生するが、出生後および大人の皮膚は、厚くて組織されてないパターンで構成され、傷が残った状態でコラーゲンで治癒される。Colwell AS et al.,Front Biosci;8:s1240−8(2003)。胎児皮膚の創傷のない治癒特性は、妊娠期間後期の多くの動物モデルで失われる。創傷のない治癒に関するコラーゲン構造うの重要な証拠は、Goffin AJ.,et al.,Oriented Collagen Films for Wound−Healing Applications,2006,Annual Meeting,Society for Biological Engineeringに示される。
【0101】
いくつかの実施例においては、本明細書で提供される配向性コラーゲンは、組織工学で使用される。コラーゲンの異なる形態は、最も重要な組織工学の材料である。これらは、火傷の治癒、人工的な神経構築、損傷した心臓組織の再生などに幅広く使用される。ヒトの身体の細胞外マトリックスは、年齢およびヒトの状態とともに変化する、十分に配向された構造を有するので、G.Avtandilov et al.,Journal of Applied Crystallography,33:511−514(2000);P.Lazarev et al.,Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology−Proceedings;2000;v.4,p.3230−3233;Cuttle,L et al.,Wound Repair and Regeneration,13:198−204(2005)、研究者は、構造を模倣するように挑戦してきた。実質的な努力は、機械的な単一軸ストレッチによって、微小溝(microgroove)およびその他の微小構造化基体の使用によって、あるいは、せん断フロー配向性の使用によってなど、コラーゲン小繊維の所望の配向性を得るために費やされてきた。
【0102】
C.コラーゲンの治療用途
【0103】
一態様において、本発明は、本発明の織物パターンコラーゲン材料を使用して治療用途を提供する。
【0104】
バイオ材料としての使用するためのコラーゲンの調製は、2つの主なアプローチに広義にクラス分けすることができる。1つのアプローチは、生物学的構造を、ナノコラーゲン材料を除去して残ったコラーゲンを強化するために、いくつかの方法で処理する。存在している構造と、おそらく分子間クロスリンクの多くが、保持される。第2のアプローチにおいては、コラーゲンを、まず、溶解して精製し、次いで、適宜な形状に前記材料をリフォームおよび再クロスリンクするように試作がなされる。第1のアプローチには、バイオ材料中の通常の生物学的3次元構造を活用する利点があるが、かなり固定された所定の構造を有する欠点がある。第2のアプローチには、適宜な強度を有するコラーゲン材料を再構成する問題があるが、可能性のある用途において、非常に大きな潜在力を提供する。
【0105】
コラーゲンの異種間グラフトの成功は、他のものの間において、医療上重要な抗原性が一般的に問題とならないことを示唆している。最も完全に研究された構造の1つは、Johnson and Johnsonによって作成されたウシ由来のコラーゲン動脈グラフトである。
【0106】
再構築されたコラーゲンは、バイオ材料用により大きな潜在力があるように考えられる。再構築されたコラーゲンは、精製することが可能であり、その構造を決定し、側鎖を変更し、あらゆる種のバイオ医療用デバイスを設計できる。今日の医療上の主な用途は、コラーゲン繊維、コラーゲン膜、コラーゲンゲルおよびコラーゲンスポンジを押し出し成型させる。
【0107】
いくつかの実施例においては、本明細書に記載されるようにコラーゲンフィルムは、腱の損傷後の接着を阻止するため、挙筋まぶた筋の眼手術を延長するため、横断神経の修復のために使用される。Aparray&Tannerは、角膜火傷を治療する際にコラーゲンフィルムを使用することに成功したことを報告している。Prudden&Wolarskyは、創傷の治癒を促進するために、酵素処理したウシ軟骨から調製されたコラーゲンを使用した。彼らは、この調製が、創傷の治癒を阻害することを誘導したステロイドをもとにもどしたことを発見した。
【0108】
本明細書に記載されたコラーゲンフィルムは、火傷のための外科用医療材料(dressing)および創傷の治癒にさらに使用される。いくつかの実施例においては、コラーゲンは、重度にクロスリンクしていないことが好ましい。フィルムが重度にクロスリンクしている場合は、フィルムは、組織に組み込まれず、むしろ、フィルム下で、顆粒化および再上皮化がおこる。ここで、フィルムは、活性のないドレッシングとして作用する。一方、コラーゲンフェルトまたはスポンジは、本物の人工皮膚として機能することができる。骨欠損および創傷の治癒も、コラーゲンによって促進される。
【0109】
本明細書に記載される実験例および実施例は、例示のみを目的するものであり、実験例および実施例の各種変形および変更は、当分野の当業者が思いつき、また、それらが、本願の意図および範囲、ならびに、添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。本明細書に引用される出版物、特許、および、特許出願は、参照することで、組み込まれるものとする。
【0110】
実験例
以下の実験例は、例示のみを目的とするものであって、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0111】
コラーゲンの織物パターンは、ポアの寸法およびポア間の距離によって、定量的に特徴付けることができる。図11A−図11Dに示される4枚の写真は、オートCADの特徴測定を用いることで特徴付けられる。これらの結果は、以下の表に示される。本発明のコラーゲン材料を特徴付ける他の技術を使用することができ、以下のデータや結果は、例示のみを目的するものであって、決して本発明の範囲を限定する意図ではない。
【0112】
図11Aでは、測定値は、コラーゲンフィルムに亘って各々の位置の11ポイントで得た。これらの楕円の長軸または短軸を記した。表1は、楕円ポア形状の寸法に指示された図11Aの測定結果を示す。
表1.楕円ポア形状の寸法
【0113】
次いで、典型的なポア−ポア分離を判定するために、1つのポアを囲む楕円の中心から隣接するポアを囲む楕円の中心までの距離を測定した。
表2.典型的なC−Cポア寸法
【0114】
いくつかのクロスリンク繊維の典型的なスペースを測定し、その結果を以下の表3に示す。
表3.クロスリンク繊維スペース
【0115】
表4乃至6は、図11Aに関して記載されているのと同様の方法を用い、図11Bの測定結果を示す。
表4.楕円ポア形状の寸法
表5.C−C(中心間)ポア寸法
表6.クロスリンク繊維スペース
【0116】
表7乃至9は、図11Aに関して記載されているのと同様の方法を用い、図11Cの測定結果を示す。
表7.楕円ポア形状の寸法
表8.C−C(中心間)ポア寸法
表9.クロスリンク繊維スペース
【0117】
表10乃至12は、図11Aに関して記載されているのと同様の方法を用い、図11Dの測定値を示す。
表10.円形ポア形状の寸法
表11.C−C(中心間)ポア寸法
表12.クロスリンク繊維スペース
【0118】
表13は、図11A−Dの測定結果をまとめている。
表13.データ一覧
【0119】
図12a−12cでは、本発明によって形成されるコラーゲン材料のトポグラフィは、さらに、特徴付けられる。特に、コラーゲンフィルムトポグラフィの高分布は、コラーゲン表面構造を一般的に特徴付ける。平均化されたコラーゲンポア寸法は、表面の統計学的パラメータSa(平均あらさ)またはSq(RMSあらさ)に比例する。このトポグラフィは、2*Saまたは2*Sqとして評価できる。図12a−12cは、トポグラフィ特性を示す本発明の3つのコラーゲン材料に関して、コラーゲン層、ヒストグラムおよび関連データのAFMイメージを示す。
【0120】
ポア寸法は、図13に関連して示されるように、特徴付けられた。ポア寸法および束幅を特徴付けるために、AFMトポグラフィイメージは、図13に示されるように使用される。トポグラフィを推定するために、断面のマスクを形成する。トポグラフィ断面のレベルを最大トポグラフィ高さから50%のところで選択した。イメージ中の全てのポアを連続的に平均化しながら、最大軸および最短軸に沿った平均寸法として、ポア寸法を測定した。この束寸法を、測定した全ての値を連続的に平均化しながら、2つの最も近接したポアの最も近接した端部間距離として測定した。
【0121】
本発明の特定の実施例に関する上述の説明は、例示および説明を目的として示した。これらは、網羅的であること、または、開示された詳細な形状に対して本発明を限定するものではなく、多数の修正および変形が、上述した教示から可能であることは明らかである。これらの実施例は、本発明の原理およびその実際の用途を最も良く説明するために選択され、記載されているので、従って、当業者であれば、熟慮した特定用途に適するように、本発明、および、各種変形を有する各種実施例を利用することができる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される。
【0122】
全ての特許、特許出願、出版物、および、参考文献は、個々の出版物または特許出願の各々が参照することで組み込まれるように、参照することでその全範囲を本明細書に組み込む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン層を具える単層または複数層スタックにおいて、
前記コラーゲン層の表面は、
ドメインの各々において、ロッド状繊維の優性配向を有する複数のドメインと、
前記ドメインの境界で、複数のピット状構造と、を具え、
前記ドメインの配向が、1つのドメインから別のドメインへと実質的に連続的に変化することを特徴とする単層または複数のスタック。
【請求項2】
前記コラーゲン層が、100s−1またはそれ以上のせん断速度で、コラーゲン溶液にせん断力を加えることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項3】
前記コラーゲン層が、1000s−1またはそれ以上のせん断速度で、液相からスロットダイタイプシステムによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項4】
前記コラーゲン層が、液状フィルムアプリケータによって作成され、
(i)基体と同一面に生じるベースを有する平行なウェッジ状レールの形態の少なくとも2つの長手方向サイドメンバと、
(ii)前記サイドメンバ間にブリッジ形態を有するクロスオーバメンバであって、このクロスオーバメンバが、少なくとも1つの平面を有し、少なくとも1つのポイントでそれぞれの前記レールに接触する、クロスオーバメンバと、
(iii)前記レールの予め設定されたあらゆる位置で、確実にブリッジを強固に固定するクランプシステムであって、前記ブリッジが、両方の前記レールに沿って移動可能であり、前記ブリッジの前記平面が、前記基体の面とともに0乃至10分角内で所定の二面角を形成し、前記平面と前記基体面との間のギャップが、0乃至50μm幅である、クランプシステムと、
を具えることを特徴とする請求項1に記載の単一または複数層スタック。
【請求項5】
前記コラーゲン層が、
第1のプレートと第2のプレートとを提供するステップであって、前記第2のプレートは、0乃至50μmのギャップ幅で、前記第1のプレートと実質的に平行に保持され、コラーゲン溶液は、前記第1および第2のプレートの間で捉えられる、ステップと、
前記コラーゲン溶液に適宜なせん断力を生成し前記コラーゲン層を形成するように、前記第1のプレートに対して平行に前記第2のプレートを移動するステップと、
からなるステップによって作成され、
前記第1のプレートは、前記移動するステップ中に静止するように保持されることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項6】
少なくとも1つの機能層を更に具えることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項7】
前記機能層が、液状膜、凝固薬、生体組織細胞層、接着促進層、キャリア層、保護層、剥離促進層、および、これらの組み合わせの1又はそれ以上から選択されることを特徴とする請求項6に記載の単層または複数層スタック。
【請求項8】
前記ピット状構造は、前記スタック内の前記コラーゲン層間の相互作用に関するチャネルを提供するように、前記コラーゲン層の面に垂直に配向された回位状または渦状ポアであることを特徴とする請求項1に記載の複数層スタック。
【請求項9】
前記ピット状構造は、ハイドロゲル、ペプチドベースバイオ材料、生体組織細胞、ならびに、組み込みリガンド、カプセル化DNAおよび成長因子もしくはこれらの組み合わせなどのその他のバイオ材料:の1又はそれ以上で構成されることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項10】
各層のせん断方向が、必ずしも互いに平行でなくてもよい請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項11】
金属ナノワイヤまたはカーボンナノチューブを更に具えることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項12】
1つの繊維束を隣接する繊維束に接続させる複数のクロスリンク繊維を更に具えることを特徴とする請求項11に記載の単層または複数層スタック。
【請求項13】
前記繊維束のダイレクタ配向が、前記層に亘って0乃至360度でランダムに変化することを特徴とする請求項11に記載の単層または複数層スタック。
【請求項14】
前記コラーゲン層が、複数の渦状ドメインを更に具えることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項15】
前記コラーゲン層が、前記渦状ドメインのほぼ中心にある複数のポアを具え、隣接するポア間の中心間距離が、500nmから20μmの範囲であることを特徴とする請求項14に記載の単層または複数層スタック。
【請求項16】
前記ポアの最大長が、100nmから20μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項17】
前記クロスリンク繊維同士の間の中心間距離が、50nmから5μmの範囲にあることを特徴とする請求項12に記載の単層または複数層スタック。
【請求項18】
前記ポアの深さが少なくとも50nmであることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項19】
コラーゲン層を有する単層または複数層スタックを作成する方法において、前記方法が、100s−1またはそれ以上のせん断速度で、コラーゲン溶液にせん断力を加えるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記せん断力を加えるステップが、1000s−1またはそれ以上のせん断速度で、スロット−ダイ型システムを介して、液相中のコラーゲン溶液に伝達するステップを具えることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記せん断力を加えるステップが、
第1のプレートと第2のプレートとを提供するステップであって、前記第2のプレートが、0乃至50μmのギャップ幅で、前記第1のプレートと実質的に平行に保持され、コラーゲン溶液は、前記第1および第2のプレート間で捉えられる、ステップと、
前記コラーゲン溶液に適宜なせん断力を生成し、前記コラーゲン層を形成するように、前記第1のプレートに対して平行に前記第2のプレートを移動するステップと、
を更に具えることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
3次元細胞培養に使用するための3次元マトリックスにおいて、
前記マトリックスがコラーゲン層を具え、
前記コラーゲン層が、
各ドメインにおいてロッド状繊維の優性配向を有する複数のドメインと、
前記ドメインの境界で複数のピット状構造と、を含み、
前記ドメインの配向が、1つドメインから別のドメインへと実質的に連続的に変化することを特徴とする3次元マトリックス。
【請求項23】
前記コラーゲン層が、2度以上の制御されたプレチルト角で、異方性基体において、せん断し乾燥させることで調製されることを特徴とする請求項22に記載の3次元マトリックス。
【請求項24】
前記基体が、異方性液晶材料によってコーティングされることを特徴とする請求項22に記載の3次元マトリックス。
【請求項25】
前記基体が、さらなるパターニングおよびラッビングを用いて、ポリアミド様材料によってコーティングされることを特徴とする請求項22に記載の3次元マトリックス。
【請求項1】
コラーゲン層を具える単層または複数層スタックにおいて、
前記コラーゲン層の表面は、
ドメインの各々において、ロッド状繊維の優性配向を有する複数のドメインと、
前記ドメインの境界で、複数のピット状構造と、を具え、
前記ドメインの配向が、1つのドメインから別のドメインへと実質的に連続的に変化することを特徴とする単層または複数のスタック。
【請求項2】
前記コラーゲン層が、100s−1またはそれ以上のせん断速度で、コラーゲン溶液にせん断力を加えることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項3】
前記コラーゲン層が、1000s−1またはそれ以上のせん断速度で、液相からスロットダイタイプシステムによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項4】
前記コラーゲン層が、液状フィルムアプリケータによって作成され、
(i)基体と同一面に生じるベースを有する平行なウェッジ状レールの形態の少なくとも2つの長手方向サイドメンバと、
(ii)前記サイドメンバ間にブリッジ形態を有するクロスオーバメンバであって、このクロスオーバメンバが、少なくとも1つの平面を有し、少なくとも1つのポイントでそれぞれの前記レールに接触する、クロスオーバメンバと、
(iii)前記レールの予め設定されたあらゆる位置で、確実にブリッジを強固に固定するクランプシステムであって、前記ブリッジが、両方の前記レールに沿って移動可能であり、前記ブリッジの前記平面が、前記基体の面とともに0乃至10分角内で所定の二面角を形成し、前記平面と前記基体面との間のギャップが、0乃至50μm幅である、クランプシステムと、
を具えることを特徴とする請求項1に記載の単一または複数層スタック。
【請求項5】
前記コラーゲン層が、
第1のプレートと第2のプレートとを提供するステップであって、前記第2のプレートは、0乃至50μmのギャップ幅で、前記第1のプレートと実質的に平行に保持され、コラーゲン溶液は、前記第1および第2のプレートの間で捉えられる、ステップと、
前記コラーゲン溶液に適宜なせん断力を生成し前記コラーゲン層を形成するように、前記第1のプレートに対して平行に前記第2のプレートを移動するステップと、
からなるステップによって作成され、
前記第1のプレートは、前記移動するステップ中に静止するように保持されることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項6】
少なくとも1つの機能層を更に具えることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項7】
前記機能層が、液状膜、凝固薬、生体組織細胞層、接着促進層、キャリア層、保護層、剥離促進層、および、これらの組み合わせの1又はそれ以上から選択されることを特徴とする請求項6に記載の単層または複数層スタック。
【請求項8】
前記ピット状構造は、前記スタック内の前記コラーゲン層間の相互作用に関するチャネルを提供するように、前記コラーゲン層の面に垂直に配向された回位状または渦状ポアであることを特徴とする請求項1に記載の複数層スタック。
【請求項9】
前記ピット状構造は、ハイドロゲル、ペプチドベースバイオ材料、生体組織細胞、ならびに、組み込みリガンド、カプセル化DNAおよび成長因子もしくはこれらの組み合わせなどのその他のバイオ材料:の1又はそれ以上で構成されることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項10】
各層のせん断方向が、必ずしも互いに平行でなくてもよい請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項11】
金属ナノワイヤまたはカーボンナノチューブを更に具えることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項12】
1つの繊維束を隣接する繊維束に接続させる複数のクロスリンク繊維を更に具えることを特徴とする請求項11に記載の単層または複数層スタック。
【請求項13】
前記繊維束のダイレクタ配向が、前記層に亘って0乃至360度でランダムに変化することを特徴とする請求項11に記載の単層または複数層スタック。
【請求項14】
前記コラーゲン層が、複数の渦状ドメインを更に具えることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項15】
前記コラーゲン層が、前記渦状ドメインのほぼ中心にある複数のポアを具え、隣接するポア間の中心間距離が、500nmから20μmの範囲であることを特徴とする請求項14に記載の単層または複数層スタック。
【請求項16】
前記ポアの最大長が、100nmから20μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項17】
前記クロスリンク繊維同士の間の中心間距離が、50nmから5μmの範囲にあることを特徴とする請求項12に記載の単層または複数層スタック。
【請求項18】
前記ポアの深さが少なくとも50nmであることを特徴とする請求項1に記載の単層または複数層スタック。
【請求項19】
コラーゲン層を有する単層または複数層スタックを作成する方法において、前記方法が、100s−1またはそれ以上のせん断速度で、コラーゲン溶液にせん断力を加えるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記せん断力を加えるステップが、1000s−1またはそれ以上のせん断速度で、スロット−ダイ型システムを介して、液相中のコラーゲン溶液に伝達するステップを具えることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記せん断力を加えるステップが、
第1のプレートと第2のプレートとを提供するステップであって、前記第2のプレートが、0乃至50μmのギャップ幅で、前記第1のプレートと実質的に平行に保持され、コラーゲン溶液は、前記第1および第2のプレート間で捉えられる、ステップと、
前記コラーゲン溶液に適宜なせん断力を生成し、前記コラーゲン層を形成するように、前記第1のプレートに対して平行に前記第2のプレートを移動するステップと、
を更に具えることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
3次元細胞培養に使用するための3次元マトリックスにおいて、
前記マトリックスがコラーゲン層を具え、
前記コラーゲン層が、
各ドメインにおいてロッド状繊維の優性配向を有する複数のドメインと、
前記ドメインの境界で複数のピット状構造と、を含み、
前記ドメインの配向が、1つドメインから別のドメインへと実質的に連続的に変化することを特徴とする3次元マトリックス。
【請求項23】
前記コラーゲン層が、2度以上の制御されたプレチルト角で、異方性基体において、せん断し乾燥させることで調製されることを特徴とする請求項22に記載の3次元マトリックス。
【請求項24】
前記基体が、異方性液晶材料によってコーティングされることを特徴とする請求項22に記載の3次元マトリックス。
【請求項25】
前記基体が、さらなるパターニングおよびラッビングを用いて、ポリアミド様材料によってコーティングされることを特徴とする請求項22に記載の3次元マトリックス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−527637(P2010−527637A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540306(P2009−540306)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/025037
【国際公開番号】WO2008/070166
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509155771)コルエンジン,インク. (1)
【出願人】(503115205)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リランド スタンフォード ジュニア ユニヴァーシティ (69)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/025037
【国際公開番号】WO2008/070166
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509155771)コルエンジン,インク. (1)
【出願人】(503115205)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リランド スタンフォード ジュニア ユニヴァーシティ (69)
【Fターム(参考)】
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