説明

コラーゲン産生促進剤、皮膚外用剤、浴用剤及び飲食物

【課題】 肌の弾力や張りに大きく影響するコラーゲンを皮膚線維芽細胞に産出させるコラーゲン産生促進剤、及び該コラーゲン産生促進剤を配合した肌の張り及びしわの改善効果を有する皮膚外用剤、浴用剤及び飲食物を提供する。
【解決手段】 クララエキス、イトヒメハギエキス、カキエキス、タンジンエキス、シャクヤクエキス、プーアルエキス、アルブチン及びアルギン酸オリゴ糖類から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤、及び該コラーゲン産生促進剤を配合した肌の張り及びしわの改善効果を有する皮膚外用剤、浴用剤及び飲食物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の弾力、張り、潤いに重要な役割を担うコラーゲンの産生促進剤に関する。更には、コラーゲン産生促進剤を含有する皮膚外用剤、浴用剤及び飲食物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会や女性の社会進出にともない、美容に対する意識が向上している。しかし、皮膚の機能は年齢と共に低下し、老化により弾力や張りを失い、しわが生じてくる。この原因として、皮膚中に存在するコラーゲンとヒアルロン酸の量の低下があげられる。
【0003】
皮膚は、皮下組織、真皮、表皮の三層から成っていて、皮膚の弾力など皮膚の機能に最も影響を与えているのが真皮であり、この真皮にはコラーゲンとヒアルロン酸が多く含まれている。これらコラーゲンとヒアルロン酸は、真皮中に存在する皮膚線維芽細胞が産生することが知られており、皮膚の弾力性の保持に重要な役割を担っている。
コラーゲンは人のタンパク質全体の約30%を占めており、そのうち真皮には約70%が存在する。コラーゲンは細胞をつなぎとめる働きをしているが、これが老化にともない減少していくことから、皮膚にしわやたるみが発生すると考えられている。
【0004】
さらに従来コラーゲンは、様々な結合組織に、力学的な強度を与えることに重要な役割を果たすことや、現在では、細胞の代謝、形態、増殖、分化、移動などの様々な活動に影響を与えることが知られており、線維芽細胞などの細胞におけるコラーゲン産生量を調節することによる、膠原病等の治療、ケロイドの予防、皮膚老化の予防への応用が期待されている。
【0005】
皮膚のしわの改善や皮膚の弾力を増進する化粧料として、特許文献1には、有効成分としてレチノールを含有する化粧料が開示されている。また、ケラチン物質(皮膚等)のケア等に使用する組成物として、特許文献2には、親油性活性剤を含むナノカプセルが開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1又は2に記載のレチノールや親油性活性剤は、皮膚刺激性が強く、また不安定な物質であるため特殊な製剤化技術を必要とする。さらに特許文献1及び2には、クララエキス等の特定の植物エキス、又はアルブチン等の特定の化合物が、コラーゲン産生を促進し、皮膚の老化を防止する点については何も開示していない。
【特許文献1】特開2003−81737公報
【特許文献2】特開2003−292420公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、肌の弾力や張りに大きく影響し、若々しい肌を保つ上で重要なコラーゲンを皮膚線維芽細胞に産出させるコラーゲン産生促進剤、及び該コラーゲン産生促進剤を配合した肌の張り及びしわの改善効果を有する組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の植物エキス、アルブチン及びアルギン酸オリゴ糖類がコラーゲンの産生を促進する作用を有することを見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、クララエキス、イトヒメハギエキス、カキエキス、タンジンエキス、シャクヤクエキス、プーアルエキス、アルブチン及びアルギン酸オリゴ糖類から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤を提供する。
更に、本発明は、前記コラーゲン産生促進剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤、浴用剤又は飲食物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクララエキス、イトヒメハギエキス、カキエキス、タンジンエキス、シャクヤクエキス、プーアルエキス、アルブチン及びアルギン酸オリゴ糖類から選ばれる1種又は2種以上を有効成分として含有するコラーゲン産生促進剤は、皮膚の線維芽細胞においてコラーゲン産生の促進効果を有する。これらのコラーゲン産生促進剤は、皮膚における線維芽細胞のコラーゲン量を多くすることができるので、結果として、肌のしわやたるみを改善することができ、抗老化化粧料、抗老化浴用剤及び抗老化飲食物の有効成分としての利用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、クララエキス、イトヒメハギエキス、カキエキス、タンジンエキス、シャクヤクエキス、プーアルエキス、アルブチン及びアルギン酸オリゴ糖類から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とするものである。
【0012】
前記植物エキス、アルブチン及びアルギン酸オリゴ糖類から選ばれる2種以上含有する本発明のコラーゲン産生促進剤としては、
クララエキスとアルギン酸オリゴ糖類、アルブチン、イトヒメハギエキス、カキエキス、シャクヤクエキス、タンジンエキス、又はプーアルエキスとの組み合わせ;
イトヒメハギエキスとアルブチン、シャクヤクエキス、カキエキス、タンジンエキス、プーアルエキス、又はアルギン酸オリゴ糖類との組み合わせ;
クララエキス、イトヒメハギエキス、及びアルギン酸オリゴ糖類の組み合わせ;
イトヒメハギエキス、アルブチン、及びシャクヤクエキスの組み合わせ;
イトヒメハギエキス、アルブチン、及びカキエキスの組み合わせ;
から選ばれる組み合わせを含有するものが、肌のしわやたるみの改善作用に特に優れることから好ましい。
【0013】
本発明で使用するクララエキスとは、マメ科植物のクララの根を用いて抽出するが、地上部さらに同属植物を用いて抽出することができる。
【0014】
本発明で使用するイトヒメハギエキスとは、ヒトハギ科植物のイトヒメハギの根を用いて抽出するが、地上部さらに同属植物を用いて抽出することができる。
【0015】
本発明で使用するカキエキスとは、カキノキ科植物のカキの葉を用いて抽出するが、地上部さらに同属植物を用いて抽出することができる。
【0016】
本発明で使用するタンジンエキスとは、シソ科植物のタンジンの根を用いて抽出するが、地上部さらに同属植物を用いて抽出することができる。
【0017】
本発明で使用するシャクヤクエキスとは、ボタン科植物のシャクヤクの根の外皮を除去したものを用いて抽出するが、地上部さらに同属植物を用いて抽出することができる。
【0018】
本発明で使用するプーアルエキスとは、ツバキ科植物のチャの葉を黒麹菌などで後発酵させたもの、いわゆるプーアルの葉を用いて抽出する。
【0019】
本発明において、クララエキス、イトヒメハギエキス、カキエキス、タンジンエキス、シャクヤクエキス、プーアルエキスなどの植物エキスとしては、上記の各植物の各種部位を未乾燥のまま又は乾燥させた後そのままに、あるいは、破砕又は粉砕後に搾取して使用することができる。さらに、これらを溶媒で抽出して得られるエキスや、該エキスから抽出溶媒を蒸発又は凍結乾燥して得られる不揮発分を使用することができる。
【0020】
ここで用いられる抽出溶媒としては、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの低級アルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、トルエンなどの芳香族類等の各種の溶媒が挙げられ、単独又は2種以上の溶媒を任意に組み合わせて使用することができる。
【0021】
本発明で使用するアルブチンとは、コケモモ、ウワウルシ、ナシなどの植物に含まれる天然型(β−グルコシド型)の配糖体であり、化学名が4−ヒドロキシフェニル−β−D−グルコシピラノシドのものを用いることができる。
【0022】
本発明で使用するアルギン酸オリゴ糖類とは、高分子アルギン酸又は高分子アルギン酸塩(ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩など)を低分子化し、分子量を2000〜20000に調製したものを用いることが好ましい。そして、その分解方法については、酸又はアルカリ分解、酵素分解、熱分解などの方法で良く、その手法は問わず、また、高分子アルギン酸を低分子アルギン酸とした後、低分子アルギン酸塩にしたものでも良い。
【0023】
本発明で使用される植物エキスは、医薬又は民間薬、食品、化粧品の成分として一般的に用いられるものであり、その安全性が確認されているものである。
【0024】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、前記植物エキス、アルブチン及びアルギン酸オリゴ糖類から選ばれる1種又は2種以上を含有し、コラーゲン産生促進剤への総配合量はその剤型によっても異なるものであり、蒸発残分をそのまま使用しても構わないし、目的用途によって適宜、配合量を調整すればよく、また、本発明のコラーゲン産生促進剤の使用量にも特に制限はなく、用途や適用により適宜調整することができる。
【0025】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、外用又は内用素材への処理など様々な形態に適用できる。また、通常の外用又は内用素材への処理などで使用されている薬剤などとも組み合わせて使用することができ、併用薬剤により本発明の効果がより発現しやすくなる。
【0026】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、医薬品、医薬部外品、局所又は全身用の皮膚化粧品、頭皮・頭髪に適用する薬用又は化粧用の製剤類をはじめとする各種の皮膚外用剤、浴用剤及び飲食物などに配合することができる。
【0027】
本発明の皮膚外用剤、浴用剤及び飲食物は、前記コラーゲン産生促進剤の1種又は2種以上を含有する。そして前記コラーゲン産生促進剤の皮膚外用剤等への総配合量は、剤型により適宜異なるが、前記皮膚外用剤、浴用剤及び飲食物全体の質量に対し、一般的には、前記コラーゲン産生促進剤に含有される植物エキス、アルブチン及びアルギン酸オリゴ糖類の配合量に換算して、0.01質量%〜10質量%、好ましくは0.025質量%〜5質量%、さらに特定すると0.05質量%〜2.5質量%となるように含有することが望ましい。
【0028】
本発明の皮膚外用剤及び浴用剤には、前記コラーゲン産生促進剤の他に、通常の皮膚外用剤又は浴用剤において従来から使用されている公知の機能成分、例えば、保湿剤、エモリエント剤、血行促進剤、細胞賦活化剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤、美白剤、過酸化物抑制剤などを配合することができる。
【0029】
公知の機能成分としてより具体的には、グリセリン、ブチレングリコール、尿素、アミノ酸類などの保湿剤;スクワラン、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ホホバ油、シリコン油などのエモリエント剤;ビタミンE類、トウガラシチンキなどの血行促進剤;核酸などの細胞賦活化剤、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ジブチルヒドロキシアニソール(BHA)、酢酸トコフェロールなどの抗酸化剤;グリチルリチン、アラントインなどの抗炎症剤;ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン塩、パラヒドロキシ安息香酸エステルなどの抗菌剤;アスコルビン酸などの美白剤;スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)などの過酸化物抑制剤など、種々の機能成分を配合することができる。
また、オウゴンエキス、イチョウエキス、胎盤抽出物、乳酸菌培養抽出物などの植物・動物・微生物由来の各種抽出物なども制限なく添加して使用することができる。
【0030】
本発明の皮膚外用剤とは、外用可能な剤であって、その剤型には特に制限はなく、例えば、ペースト剤、クリーム、ジェル、軟膏、ローション、乳液、パック、パウダー、ハップ剤などが例示できる。
【0031】
本発明の浴用剤の剤型には特に制限はなく、例えば、粉末、顆粒状などの固形製剤、乳液、ペースト状などの液体製剤などが例示できる。
【0032】
本発明の飲食物には、前記コラーゲン産生促進剤の他に、通常食品に使用されている様々な材料を特に制限なく併用することができる。
【0033】
本発明の飲食物の剤型としては適用可能なあらゆる形態があり、例えば、ビスケット、クッキー、錠剤、カプセル剤、キャンディー、ガム、粉末などの固形製剤、飲料などの液体製剤、ゼリーなどの半固形製剤などが例示できる。
【0034】
また、本発明の皮膚外用剤、浴用剤及び飲食物には、その剤型化のために界面活性剤、油脂類などの基材成分や、必要に応じて増粘剤、防腐剤、等張化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、香料、着色料などの種々の添加物を併用できる。
【0035】
上記の界面活性剤として、特に限定されるものではないが、一般的な非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。例えば、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物、高級脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物、高級脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加物、多価アルコールの脂肪酸エステル、硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ステロール等のアルキレンオキサイド付加物などの非イオン界面活性剤;アルキル硫酸ナトリウム、アルキロイルメチルタウリンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどの陰イオン界面活性剤;塩化アルキルピリジニウム、塩化ジステアリルジメリルアンモニウムなどの陽イオン界面活性剤;アミノプロピオン酸ナトリウム、アルキルポリアミノエチルグリシンなどの両性界面活性剤が挙げられる。そして、これらの界面活性剤は1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0036】
本発明において使用可能な基材成分として、特に限定されるものではないが、例えば、オリーブ油、ツバキ油、アボカド油、マカデミアナッツ油、杏仁油、ホホバ油、スクワラン、スクワレン、馬油、パラフィン、シリコンなど、一般的に知られている油脂類が挙げられる。
【0037】
本発明において使用可能な増粘剤として、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、及びこれらの各種誘導体;ヒドロキシアルキルセルロースなどのセルロース類及びその誘導体;デキストラン、ゼラチン、アラビアガム、トラガントガムなどのガム類;カルボキシビニルポリマーなどの水溶性高分子などが挙げられる。
【0038】
本発明において使用可能な防腐剤として、特に限定されるものではないが、例えば、パラヒドロキシ安息香酸エステル、パラオキシ安息香酸塩とその誘導体、フェノキシエタノール、ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン塩などが挙げられる。
【0039】
本発明において使用可能な等張化剤として、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどの無機塩類が挙げられる。
【0040】
本発明において使用可能な紫外線吸収剤として、特に限定されるものではないが、例えば、パラアミノ安息香酸、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0041】
本発明において使用可能なキレート剤として、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸、フィチン酸、クエン酸及びこれらの水溶性塩などが挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を更に詳しく説明するために実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
(1)植物エキスの製造方法
植物エキスは、以下の表1に示す各植物の各部位を、50質量%エタノール水溶液の環流下で1時間かけて抽出後、ろ過し、得られた抽出液から水、エタノールを減圧留去して各植物エキスを得た。得られた植物エキスを以下に示す実施例に使用した。
【0043】
【表1】

【0044】
(2)アルギン酸オリゴ糖類の製造方法
市販のアルギン酸ナトリウムであるSKAT−ULV(キミカ社製)1.5g、リン酸アンモニウム0.05g、酵母エキス0.01g、塩化ナトリウム2gをイオン交換水100g中に溶解させ、オートクレーブで2.1atm、121℃、20分間の滅菌操作を行った。滅菌処理後のアルギン酸溶液に対し、アルギン酸分解菌であるPseudo alteromonas haloplanctic(ITM 222)を一白金耳埴菌し、室温下で8時間前培養を行った。
【0045】
次に、得られた前培溶液1mLを、アルギン酸ナトリウム分解用培地(リン酸アンモニウム0.15g、酵母エキス0.01g、アルギン酸ナトリウム(キミカ社製)9.0g、塩化ナトリウム6.0gをイオン交換水300gに溶解させ、オートクレーブで2.1atm、121℃、20分間の滅菌操作を行ったものを使用)に添加後、室温条件下で48時間振とう培養を行った。
【0046】
振とう培養後のアルギン酸ナトリウム分解液から、菌体除去のために遠心分離操作(10000rpm×10分間)を行い、上澄み液を得た。得られた上澄み液に液量と同量のメタノールを加え、分解後のアルギン酸ナトリウム溶液から高分子量(数万)のアルギン酸ナトリウムを沈降させて濾別し、低分子量のアルギン酸オリゴ糖ナトリウムを含有している濾液を得た。
【0047】
アルギン酸オリゴ糖ナトリウムを含有している濾液の中から塩化ナトリウムなどの不純物を除去し、精製を行うために、ゲル濾過操作(Sephadex LH−20、Pharmacia Fine Chemicals)を行った。ゲル濾過操作後、得られた液を濃縮して、凍結乾燥機で乾燥を行い、目的とするアルギン酸オリゴ糖ナトリウム(平均分子量約2000)を5.4g(収率60%)得た。
【0048】
また、振とう培養時間を48時間から8時間に換えた以外は上記と同様に操作して、重量平均分子量約2万のアルギン酸オリゴ糖ナトリウムを得た。
更には、得られた重量平均分子量約2000のアルギン酸オリゴ糖ナトリウムをイオン交換樹脂(アンバーライト1006F H、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製)と共に操作して、重量平均分子量約2000のアルギン酸オリゴ糖を得た。
【0049】
なお、重量平均分子量の測定は、水系ゲルパーミッションクロマトグラフィー装置GPC−8020(東ソー(株)製)を用いて測定した。測定条件は、カラムにG3000(東ソー(株)製)とG5000(東ソー(株)製)を直結して用い 、カラム温度40℃、カラム流量1.0mL/min、溶出液0.1M NaCl水溶液、RI検出であり、重量平均分子量はPEG(ポリエチレングリコール)を標品として換算した値である。
【0050】
得られたアルギン酸オリゴ糖ナトリウム及びアルギン酸オリゴ糖を以下に示す実施例に使用した。
【0051】
(3)アルブチン
和光純薬工業(株)製のアルブチンを以下に示す実施例に使用した。
(I)コラーゲン産生促進剤
[実施例1]
アルブチンを10mg/mLとなるよう調製し、その後、クリーンベンチ内で0.2μmのシリンジフィルターを用いて滅菌した。そして、滅菌精製水を加えて2mg/mLとなるよう調整して、培地に添加するアルブチンの希釈液を作製した。
次に、倉敷紡績(株)製の正常ヒト皮膚線維芽細胞を規定の調製法に基づき、分化、培養を行った。培地には、低血清増殖添加剤(LSGS)を添加した正常ヒト皮膚線維芽細胞増殖用低血清培地(Medium106S)を用いた。
培地に正常ヒト成人線維芽細胞(500000cell/mL)の溶液を播種し、37℃、5%−CO2、加湿のインキュベーターに入れ、1日おきに培地を交換し、6日間培養した。
6日後、シャーレから細胞をはがし、細胞浮遊液を作成した(15000cell/mL)。細胞浮遊液を24well plateに1mLずつ播種し、2日間培養した。培地交換の際、前記アルブチンの希釈液を10μL(最終濃度が20μg/mLとなる)添加し、さらに2日間培養した。2日おきに培地交換等を行い、細胞播種8日目に培地を回収した。回収した培地をTaKaRa社のProcollagen type I C−peptide(PIP)EIA Kitを使用し、その使用法に準じて、培養6日目から8日目までの48時間培養後の上清中に存在するコラーゲン前駆体タンパク質であるI型プロコラーゲンC末端プロペプチド(以下、PIPと略す)の量を測定した。このPIPはコラーゲンの量を反映するものである。
この時のPIPの量は比較例1に比べ、すなわち、コラーゲン産生促進成分(アルブチン)の希釈液の代わりに滅菌精製水を添加して、その他は同様の操作をした比較例1のPIPの量と比べると、コラーゲン産生促進能が175%であった。
【0052】
[実施例2〜37]
コラーゲン産生促進成分及び添加した最終濃度を、表2のように換えた以外は実施例1と同様の操作をして、得られたPIPの量と比較例1のPIPの量とを、同様に比較した結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表2の実施例1〜37の結果が示すように、コラーゲン産生促進成分として各種植物エキス、アルブチン及びアルギン酸オリゴ糖類及びその組成物を用いたものは、正常ヒト皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン産生に対し、有意にコラーゲン産生促進効果を示していることがわかる。
【0055】
(II)皮膚外用剤の処方例
表3〜17に示す組成でコラーゲン産生促進剤を配合した皮膚外用剤(化粧水、乳液、クリーム、リップスティック、ボディクリーム)の処方を調製した。調製方法は下記の通りである。なお、配合量の単位はgで、表中の精製水の「残量」とは全量を100gとする量である。また、リップスティックの表中のヒマシ油の「残量」も全量を100gとする量である。
【0056】
化粧水(実施例38〜53、比較例2)
表3〜5のA成分、B成分のそれぞれを80℃で加温して溶解し、B成分をA成分に撹拌しながら徐々に加えて乳化した。その後、撹拌しながら冷却し、40℃でC成分を加えた後、35℃で調製を終了した。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
乳液(実施例54〜69、比較例3)
表6〜8のD成分、E成分のそれぞれを80℃に加温して溶解し、D成分をE成分に撹拌しながら加え、均一とした後、ホモミキサーで乳化した。その後、ハンドルミキサーで撹拌しながら冷却し、40℃以下でF成分を加えて、調製を終了した。
【0061】
【表6】

【0062】
【表7】

【0063】
【表8】

【0064】
クリーム(実施例70〜85、比較例4)
表9のG成分、H成分をそれぞれ75℃に加温して溶解し、G成分をパドルミキサーで撹拌しながらH成分を少量ずつ加えた。その後、撹拌しながら冷却し、40℃でI成分を加えた後、約35℃で調製を終了した。
【0065】
【表9】

【0066】
【表10】

【0067】
【表11】

【0068】
リップスティック(実施例86〜101、比較例5)
表12〜14のJ成分を85℃に加温して溶解し、K成分を撹拌しながらJ成分を少量ずつ加えて均一に混合した。その後、撹拌しながら冷却し、60℃付近でL成分を加えた後、更に冷却した。その後容器に充填し、調製を終了した。
【0069】
【表12】

【0070】
【表13】

【0071】
【表14】

【0072】
ボディクリーム(実施例102〜117、比較例6)
表15〜17のM成分、N成分をそれぞれ75℃に加温して、M成分をパドルミキサーで撹拌しながらN成分を少量ずつ加えた。その後、撹拌しながら冷却し、45℃以下でO成分を加えて、調製を終了した。
【0073】
【表15】

【0074】
【表16】

【0075】
【表17】

【0076】
評 価
前記実施例38〜117、比較例2〜6の皮膚外用剤について、肌のしわや張り、弾力の低下の悩みを有する30〜40代の女性を対象としたモニター試験を行い、その評価を行った。
皮膚外用剤のそれぞれについて、女性3名ずつの(17群×5処方)計255名に対して、化粧水、乳液、クリームについては1日2回(朝、夕)顔面への塗布、リップスティックについては1日3回(朝、昼、夕)口唇への塗布、ボディクリームについては1日2回(朝、夕)ボディへの塗布をすること以外は通常の生活をするモニター試験を1ヶ月間続けた。1ヶ月後、その使用感を下記の基準で評価した結果を表18に示す。なお、使用期間中に皮膚の異常を訴えたものはいなかった。
有 効 :使用前に比べて肌の張りや弾力を感じる
やや有効:使用前に比べて肌の張りや弾力をやや感じる
効果無し:使用前と変化なし
【0077】
【表18】

【表19】

【0078】
本発明のコラーゲン産生促進剤を配合した実施例38〜117の皮膚外用剤では、各部位に張りや弾力を感じたといった人が多かった一方で、本発明のコラーゲン産生促進剤を配合していない比較例2〜6の皮膚外用剤では変化なしとの評価であったことから、本発明のコラーゲン産生促進剤を配合した皮膚外用剤は、肌あるいは口唇の張りや弾力の向上に対していずれも有意であった。
【0079】
(III)浴用剤の処方
次に、表19〜21に示す組成でコラーゲン産生促進剤を配合した抗老化浴用剤(入浴剤)の処方を調製した。調製法は下記の通りである。なお、配合量の単位はgで、表中の精製水の「残量」とは全量を100gとする量である。
【0080】
入浴剤(実施例118〜133、比較例7)
表19〜21のP成分とQ成分をそれぞれ均一になるまで混合した後、P成分とQ成分とを混合し、均一になるまで充分混合して、調製を終了した。
【0081】
【表20】

【0082】
【表21】

【0083】
【表22】

【0084】
評 価
前記実施例118〜133、比較例7の入浴剤について、肌のしわや張り、弾力の低下の悩みを有する30〜40代の女性を対象としたモニター試験を行い、その評価を行った。
入浴剤のそれぞれについて、女性3名ずつの(17群)計51名に対して、毎日の入浴時にお湯180Lに対して入浴剤30mLを溶かして入浴すること以外は通常の生活をするモニター試験を1ヶ月間続けた。1ヶ月後、その使用感を下記の基準で評価した結果を表22に示す。なお、使用期間中に皮膚の異常を訴えたものはいなかった。
有 効 :使用前に比べて肌の張りや弾力を感じる
やや有効:使用前に比べて肌の張りや弾力をやや感じる
効果無し:使用前と変化なし
【0085】
【表23】

【0086】
本発明のコラーゲン産生促進剤を配合した実施例118〜133の入浴剤では、肌に張りや弾力を感じたといった人が多かった一方で、本発明のコラーゲン産生促進剤を配合していない比較例7の入浴剤では変化なしとの評価であったことから、本発明のコラーゲン産生促進剤を配合した入浴剤は、肌の張りや弾力の向上に対しいずれも有意であった。
【0087】
(IV)飲食物の処方
次に、表23〜30に示す組成でコラーゲン産生促進剤を配合した抗老化飲食物(パン、ゼリー、ソーセージ、サプリメント(錠剤))の処方を調製した。調製法は下記の通りである。なお、配合量の単位はgで、表中の精製水の「残量」とは全量を100gとする量である。
【0088】
パン(実施例134〜141、比較例8)
表23及び24のR成分全部を混ぜ合わせたものに、40℃に加温したS成分とT成分を混ぜ合わせたもの加えて、均一になった時点でよくこねた。35℃で40分間一次発酵させ、空気を抜くように再度こねた。40℃で40分間二次発酵後、180℃で25分間焼いた。
【0089】
【表24】

【0090】
【表25】

【0091】
ゼリー(実施例142〜149、比較例9)
表25及び26のW成分にV成分を溶解した80℃のお湯にU成分を溶かし、よく混ぜ合わせた。型に10gずつ流し入れた後、冷蔵庫で固めて、調製を終了した。
【0092】
【表26】

【0093】
【表27】

【0094】
ソーセージ(実施例150〜157、比較例10)
表27及び28のX成分とY成分とを良く混ぜ合わせ、冷蔵庫で冷やした後、塩抜きした羊の腸に詰めた。腸詰めしたものを60〜70℃で1時間燻製し、更に1時間かけて乾燥させた。乾燥させたものを約70℃のお湯で30分程度ゆでて殺菌処理した。そして再度乾燥させて、調製を終了した。
【0095】
【表28】

【0096】
【表29】

【0097】
サプリメント(錠剤)(実施例158〜165、比較例11)
表29及び30のAA成分とAB成分を良く混ぜ合わせたものを、打錠機を用いてタブレット状に押し固め、錠剤(0.3g)を形成した。
【0098】
【表30】

【0099】
【表31】

【0100】
評 価
前記実施例134〜165、比較例7〜11の飲食物について、肌のしわや張り、弾力の低下の悩みを有する30〜40代の女性を対象としたモニター試験を行い、その評価を行った。
飲食物のそれぞれについて、女性3名ずつの(9群×4処方)計108名に対して、パンについては、毎日の朝食時に前記実施例又は比較例のパンを主食として90g食べること、ゼリーについては、毎日の夕食後に前記実施例又は比較例のゼリーを50g摂取すること、ソーセージについては、毎日の夕食時に前記実施例又は比較例のソーセージを副食として約60g食べること、サプリメント(錠剤)については、毎日3回の食事後に前記実施例又は比較例のサプリメント(錠剤)を5錠(1.5g)摂取すること以外は通常の生活をするモニター試験を1ヶ月間続けた。1ヶ月後、その使用感を下記の基準で評価した結果を表31に示す。なお、使用期間中に皮膚の異常を訴えたものはいなかった。
有 効 :使用前に比べて肌の張りや弾力を感じる
やや有効:使用前に比べて肌の張りや弾力をやや感じる
効果無し:使用前と変化なし
【0101】
【表32】

【0102】
本発明のコラーゲン産生促進剤を配合した実施例134〜165の飲食物では、肌に張りや弾力を感じたといった人が多かった一方で、本発明のコラーゲン産生促進剤を配合していない比較例8〜11の飲食物では変化なしとの評価であったことから、本発明のコラーゲン産生促進剤を配合した飲食物は、肌の張りや弾力の向上に対しいずれも有意であった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
クララエキス、イトヒメハギエキス、カキエキス、タンジンエキス、シャクヤクエキス、プーアルエキス、アルブチン又はアルギン酸オリゴ糖類及びこれらの混合物は、コラーゲン産生を促進させる作用があり、コラーゲン産生促進剤として有用である。本発明のコラーゲン産生促進剤は、線維芽細胞において産生されるコラーゲンの量を増大させるので、その結果として、しわ、たるみの予防、緩和、改善がなされて、老化現象の防止、改善を目的とした化粧品をはじめとする各種の皮膚外用剤、浴用剤及び飲食物などへの利用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クララエキス、イトヒメハギエキス、カキエキス、タンジンエキス、シャクヤクエキス、プーアルエキス、アルブチン及びアルギン酸オリゴ糖類から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載のコラーゲン産生促進剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項3】
請求項1に記載のコラーゲン産生促進剤を含有することを特徴とする浴用剤。
【請求項4】
請求項1に記載のコラーゲン産生促進剤を含有することを特徴とする飲食物。

【公開番号】特開2008−105984(P2008−105984A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289308(P2006−289308)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】