説明

コラーゲン産生促進剤

【課題】安全性が極めて高く安心して可食することができ、且つ、安定性に優れたコラーゲン産生促進剤を提供すること。
【解決手段】アムラ(Phyllanthus emblica)の抽出物を含む、コラーゲン産生促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真皮線維芽細胞のコラーゲン産生促進作用を有するコラーゲン産生促進剤、および美容用飲食品などに関する。
【背景技術】
【0002】
老化皮膚に見られるしわ・たるみの発生は、外見上の加齢変化の主たるものであり、近年、多くの中高齢者にとって切実な悩みになっている。しわ・たるみの原因の一つは、皮膚組織が加齢に伴い薄くなることである。老化した皮膚においては、真皮の主要な細胞外マトリックスであるコラーゲンの減少が顕著であり、このことが皮膚の厚さが減少する主たる原因になっている。したがって、加齢に伴う真皮コラーゲン量の減少を予防することができれば、しわ・たるみの予防・改善に有効であると考えられている。
【0003】
コラーゲンの減少原因は、加齢などに伴いコラーゲンの産生能を有する線維芽細胞の数自体が減少することや、コラーゲンの産生能の低下によると考えられている。そこで、線維芽細胞におけるコラーゲン産生を促進する物質の探索が盛んに行われている。
【0004】
真皮線維芽細胞からのコラーゲンなどの細胞外マトリックスの産生を促進する物質としては、レチノイン酸やグリコール酸等のα−ヒドロキシ酸や種々の植物の抽出物が用いられる。例えば、
特開2006−257101号公報(特許文献1)には、ニクタンテス・アルボ−トリスティス(Nyctanthes albor−tristis)からの抽出物、
特開2006−232740号公報(特許文献2)には、シソ科タイム(Thymus(vulgaris))、スイカズラ科エルダー(Sambucus nigra)、カンラン科カンラン属エレミ(Canarium Iuzonicum)から得られる精油、
特開2006−206571号公報(特許文献3)には、柚子の種子の溶媒抽出物、
特開2006−176425号公報(特許文献4)には、ウメ(Prunus mume Siebold et Zuccarini)果実からの抽出物、
特開2006−169225号公報(特許文献5)には、グネモン(Guetum gnemon)の溶媒抽出物、
特開2006−160629号公報(特許文献6)には、柿(Diospyros KakiThunb.)の葉、サンザシ(Crataegus cuneata Sieb.et.Zucc)果実からの抽出物、
特開2006−137742号公報(特許文献7)には、ナデシコ属(Dianthus)植物からの抽出物、
【0005】
特開2005−263689号公報(特許文献8)には、加水分解したバレイショタンパク、
特開2005−206466号公報(特許文献9)には、ブドウ果皮、ブドウ葉、イタドリ根からの抽出物、
特開2005−60348号公報(特許文献10)には、タマゴケ属(Bartramia)植物、ウワバミゴケ属(Breutelia)植物からの抽出物、
特開2005−60347号公報(特許文献11)には、ハイヒモゴケ科植物(イトゴケ属植物、シノブイトゴケ属植物、ツヤタスキゴケ属植物、又はハイヒモゴケ属植物)からの抽出物、
特開2005−60346号公報(特許文献12)には、シラガゴケ科植物(シラガゴケ属(Leucobryum)植物、セハブタエゴケ属(Leucophanes))からの抽出物、
【0006】
特開2004−359640号公報(特許文献13)には、松樹皮からの抽出物、
特開2004−346019号公報(特許文献14)には、バーベリーの抽出物、
特開2004−345982号公報(特許文献15)には、Striga属に属する植物からの抽出物、
特開2004−331579号公報(特許文献16)には、α−D−グルコピラノシルグリセロール、
特開2004−331566号公報(特許文献17)には、アンジオジェニン、アンジオジェニンをペプシンやパンクレアチン等のタンパク質分解酵素で分解して得られるアンジオジェニン分解物、
特開2004−331565号公報(特許文献18)には、ラクトパーオキシダ−ゼ、ラクトパーオキシダ−ゼをペプシンやパンクレアチンなどのタンパク質分解酵素で分解して得られるラクトパーオキシダーゼ分解物、
特開2004−331564号公報(特許文献19)には、ラクトフェリン、ラクトフェリンをペプシンやパンクレアチン等のタンパク質分解酵素で分解して得られるラクトフェリン分解物、
特開2004−224785号公報(特許文献20)には、ライチの種子からの抽出物、
特開2004−203777号公報(特許文献21)には、カバアナタケ、クルイベロミセス属の酵母、コリウス・スクテラリオイデスからの抽出物、
特開2004−182710号公報(特許文献22)には、ホウライシダ(Adiantum capillus−veneris L.)、カミメボウキ(Ocimum sanctum L.)、ムユウジュ(Saraca asoca De Wilde)からの抽出物、
特開2004−137217号公報(特許文献23)には、ゲンクワニン、
特開2004−75627号公報(特許文献24)には、ミカン科ワンピ属の黄皮の葉の抽出物、
特開2004−67552号公報(特許文献25)には、バラ花弁又はハイビスカスのガクから得られた赤色色素、
特開2004−67551号公報(特許文献26)には、フラボノールカルボン酸又はその誘導体、
特開2004−59478号公報(特許文献27)には、キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖、
特開2004−18471号公報(特許文献28)には、加水分解カゼイン、プレエキス、ブナの芽、エリスリナ、可溶性卵殻膜、カッコンおよび西洋キヅタからの抽出物、
【0007】
特開2003−342153号公報(特許文献29)には、ゼラニウム、ホウセンカ、サンザシからの抽出物、
特開2003−321376号公報(特許文献30)には、スギゴケ科(Polytrichaceae)ウマスギゴケ(Polytrichum commune Hedw.)もしくはオオスギゴケ(Polytrichum formosum Hedw.)からの抽出物、
特開2003−292417号公報(特許文献31)には、ウブラリアセア(Uvulariaceae)科ツバメオモト(Clintonia)属植物からの抽出物、
特開2003−277249号公報(特許文献32)には、コウカイシからの抽出物、
特開2003−226632号公報(特許文献33)には、イラクサ科霧水葛からの抽出物、
特開2003−212748号公報(特許文献34)には、里光、鋪地草、黄花倒水蓮、回心草及び蓮子草からの抽出物、
特開2003−183173号公報(特許文献35)には、ニクタンテス・アルボ−トリスティス(Nyctanthes albortristis)、パイパー・チャバ(Piper chaba)、アントセファランス・インディカス(Anthocephalus indicus)及びクロタラリア・サイチソイデス(Crotalaria cytisoides)からの抽出物、
特開2003−176235号公報(特許文献36)には、キク科アナファリス ブスア(Anaphalis busua)、トクサ科エクシセタム ディフーサム(Equisetum diffusum)からの抽出物、
特開2003−176230号公報(特許文献37)には、ショウガ科ジンギバーカッサムナー、クワ科フィカス ネリフォリアからの抽出物、
特開2003−171258号公報(特許文献38)には、ローヤルゼリー蛋白加水分解物、
特開2003−146837号公報(特許文献39)には、クスノハガシワからの抽出物、
特開2003−137807号公報(特許文献40)には、アミノ酸配列が、(Gly−Ala−Arg)、(Gly−Ala−Hyp)、(Gly−Ala−Lys)、(Gly−Pro−Ala)、(Gly−Pro−Arg)、(Gly−Pro−Hyp)および(Gly−Pro−Ser)の一般式で示されるトリペプチドの混合物、
特開2003−137801号公報(特許文献41)には、オニイチゴからの抽出物、
特開2003−137766号公報(特許文献42)には、黒砂糖色素、
特開2003−113068号公報(特許文献43)には、カエデ属、特にイロハモミジからの抽出物、
【0008】
特開2002−363087号公報(特許文献44)には、ムラサキ科チシャノキ属植物(チャングバット、マルバチチシャノキ、リュウキュウチシャノキ、チシャノキ)からの抽出物、
特開2002−255847号公報(特許文献45)には、アミノ酸配列がGly−X−Yのトリペプチドを10重量%以上含むコラーゲンペプチド、
特開2002−226323号公報(特許文献46)には、五斂子の葉からの抽出物、
特開2002−87974号公報(特許文献47)には、センネンケンからの抽出物、
特開2002−53427号公報(特許文献48)には、イカリソウ(Epimedium grandifloum Morr.)などのイカリソウ属植物の葉や茎からの抽出物、
特開2002−29980号公報(特許文献49)には、スイレン科ハス属のハス(Nelumbo nucifera Gaertn.)の種子中にある胚(胚芽)からの抽出物、
特開2002−29923号公報(特許文献50)には、セイロンマツリ(Plumbago zeylanicum L.)、ハマスゲ(Cyperus rotundus L.)からの抽出物、
【0009】
特開2001−348338号公報(特許文献51)には、カッコン(Puerariae Radix)の抽出物及び分画物、
特開2001−316275号公報(特許文献52)には、月桃の葉、茎からの抽出物、
特開2001−316240号公報(特許文献53)には、Saussurea属に属する植物、特に、Saussurea involucrate(Kar.etKir.) Sch. Blp.からの抽出物、
特開2001−278783号公報(特許文献54)には、レチノールのようなレチノイドと、ブナ科ブナ属植物の木の芽からの抽出物、
特開2000−191498号公報(特許文献55)には、甘草葉の抽出物、
【0010】
特開平11−335293号公報(特許文献56)には、クロレラ成分、
特開平11−315007号公報(特許文献57)には、エンドウの種子からの抽出物、
特開平11−35455号公報(特許文献58)には、ゲラニオール(Geraniol,(E)−3,7−Dimethyl−2,6−octadien−1−ol又は2,6−Dimethyl−2,6−octadien−8−ol)、
特開平10−226653号公報(特許文献59)には、セリシン及びその加水分解物、
特開平10−203952号公報(特許文献60)には、ブナ科ブナ属植物の木の芽、特に幼芽からの抽出物、
特開平10−29928号公報(特許文献61)には、ウォロ(Borassus flabellifer)からの抽出物、
特開平7−285846号公報(特許文献62)には、クロセチン
が記載されている。
【0011】
しかしながら、前記のような成分または抽出物は、皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生促進作用を有しているが、安全性に優れたものばかりではなく、また、充分な効果は得られておらず、コラーゲン産生促進剤として、より効果があり安全性であるものが望まれている。
【0012】
特開2006−62989号公報(特許文献63)には、アムラの抽出物を配合することを特徴とするエラスターゼ活性阻害剤およびメイラード反応抑制剤が記載されている。この文献には、アムラの抽出物が、エラスチンを分解するエラスターゼ酵素を阻害する効果、および真皮細胞外マトリックスを構成するタンパク質と糖との化学結合による異常な架橋反応(メイラード反応)を抑制する効果を有することが記載されている。しかし、特許文献63には、コラーゲン産生促進作用、その作用機構、そして用途および効果は、開示も示唆もされていない。
【0013】
特公2003−81749号公報(特許文献64)および特開2003−63925号公報(特許文献65)には、アンマロク(アムラ)の抽出物を有効成分とした皮膚外用剤が記載されている。
特許文献64にはマンマロクの抽出物が、活性酸素消去、ヒアルロニターゼ阻害、コラゲナーゼ阻害およびチロシナーゼ阻害作用を有することが記載されている。
また、特許文献65にはアンマロク由来成分が高いメラニン生成抑制作用を有することが記載されている。
しかし、特許文献64および65には、コラーゲン産生促進作用、その作用機構、そして用途および効果は、開示も示唆もされていない。
【特許文献1】特開2006−257101号公報
【特許文献2】特開2006−232740号公報
【特許文献3】特開2006−206571号公報
【特許文献4】特開2006−176425号公報
【特許文献5】特開2006−169225号公報
【特許文献6】特開2006−160629号公報
【特許文献7】特開2006−137742号公報
【特許文献8】特開2005−263689号公報
【特許文献9】特開2005−206466号公報
【特許文献10】特開2005−60348号公報
【特許文献11】特開2005−60347号公報
【特許文献12】特開2005−60346号公報
【特許文献13】特開2004−359640号公報
【特許文献14】特開2004−346019号公報
【特許文献15】特開2004−345982号公報
【特許文献16】特開2004−331579号公報
【特許文献17】特開2004−331566号公報
【特許文献18】特開2004−331565号公報
【特許文献19】特開2004−331564号公報
【特許文献20】特開2004−224785号公報
【特許文献21】特開2004−203777号公報
【特許文献22】特開2004−182710号公報
【特許文献23】特開2004−137217号公報
【特許文献24】特開2004−75627号公報
【特許文献25】特開2004−67552号公報
【特許文献26】特開2004−67551号公報
【特許文献27】特開2004−59478号公報
【特許文献28】特開2004−18471号公報
【特許文献29】特開2003−342153号公報
【特許文献30】特開2003−321376号公報
【特許文献31】特開2003−292417号公報
【特許文献32】特開2003−277249号公報
【特許文献33】特開2003−226632号公報
【特許文献34】特開2003−212748号公報
【特許文献35】特開2003−183173号公報
【特許文献36】特開2003−176235号公報
【特許文献37】特開2003−176230号公報
【特許文献38】特開2003−171258号公報
【特許文献39】特開2003−146837号公報
【特許文献40】特開2003−137807号公報
【特許文献41】特開2003−137801号公報
【特許文献42】特開2003−137766号公報
【特許文献43】特開2003−113068号公報
【特許文献44】特開2002−363087号公報
【特許文献45】特開2002−255847号公報
【特許文献46】特開2002−226323号公報
【特許文献47】特開2002−87974号公報
【特許文献48】特開2002−53427号公報
【特許文献49】特開2002−29980号公報
【特許文献50】特開2002−29923号公報
【特許文献51】特開2001−348338号公報
【特許文献52】特開2001−316275号公報
【特許文献53】特開2001−316240号公報
【特許文献54】特開2001−278783号公報
【特許文献55】特開2000−191498号公報
【特許文献56】特開平11−335293号公報
【特許文献57】特開平11−315007号公報
【特許文献58】特開平11−35455号公報
【特許文献59】特開平10−226653号公報
【特許文献60】特開平10−203952号公報
【特許文献61】特開平10−29928号公報
【特許文献62】特開平7−285846号公報
【特許文献63】特開2006−62989号公報
【特許文献64】特公2003−81749号公報
【特許文献65】特開2003−63925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
当該分野では、コラーゲン産生促進剤の提供が望まれているが、特許文献1〜62に記載の成分および抽出物は、コラーゲン産生促進作用を有するが、信頼できる充分な安全性情報は少なく、安心して長期間使用する場合には注意が必要な場合や、有効な効果を得るにために、高濃度で使用する成分や抽出物は、更に充分な調査が必要であるだけでなく、用途が限られ、安定性に問題を生じることがある。また、美容用飲食品として使用する場合には、食用でない部位の成分又は抽出物を日常的に長期間摂取することは適当ではない場合もある。
【0015】
従って、本発明は、コラーゲン産生促進剤を提供し、上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。より特定すれば、本発明は安全性が極めて高く安心して可食することができ、且つ、安定性に優れたコラーゲン産生促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するため、使用歴、食経験、公的機関が公開している安全性情報、種々の文献を調査し、安全性が極めて高く安心して使用できる植物を選択し、鋭意研究を重ねた結果、それらの抽出物がコラーゲン産生促進作用を有することをはじめて見出し、特に、アムラ(Phyllanthus emblica)の抽出物が優れたコラーゲン産生促進作用を有すること、そして、それらを有効成分とすることにより、皮膚機能の維持又は改善に有効な美容用飲食品が得られることをはじめて見出し、本発明に至った。
【0017】
本発明は、アムラ(Phyllanthus emblica)の抽出物を含む、コラーゲン産生促進剤を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
【0018】
上記アムラの抽出物は、アムラの果肉および果皮から選択される少なくとも1種の抽出物であるのが好ましい。
【0019】
また、上記アムラの抽出物が、抽出溶媒として極性溶媒を用いて抽出される抽出物であるのが好ましい。
【0020】
また、上記アムラの抽出物が、超臨界流体を用いた超臨界抽出方法によって抽出される抽出物であるのも好ましい。
【0021】
本発明は、また、上記アムラの抽出物を有効成分として含有する、美容用飲食品も提供する。
【0022】
さらに、本発明は、アムラの抽出物を適用する工程を包含する、コラーゲン産生促進方法を提供する。
【0023】
本発明のコラーゲン産生促進方法は、好ましくは、アムラの果肉または果皮からアムラの抽出物を得る工程を包含する。
【0024】
また、本発明のコラーゲン産生促進方法は、好ましくは、抽出溶媒として極性溶媒を用いてアムラの抽出物を抽出する工程を包含する。
【0025】
さらに、本発明のコラーゲン産生促進方法は、好ましくは、超臨界流体を用いた超臨界抽出方法によってアムラの抽出物を抽出する工程を包含する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、アムラの抽出物を含有する。このアムラの抽出物は、経口投与に対する安全性が高く、そして優れたコラーゲン産生促進作用を有している。本発明のコラーゲン産生促進剤を摂取することによって、コラーゲンの産生を高めることができる。そしてこれにより、皮膚の機能維持を図ること、および皮膚のかさつき、肌荒れ、しわ、たるみ等といった皮膚の表面性状または物理的性状の衰えを防ぐ、遅延させる、または改善することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、アムラの抽出物を含む。アムラは、学名をフィランサス エンブリカ(Phyllanthus emblica)、別名をエンブリカ オフィシナリス(Emblica officinalis)、英名をエンブリック ミロバラン(Emblic myrobalan)、インディアン グ−スベリ−(Indian gooseberry)、そして和名をコミカソウ、ユカンまたはアンマロク等と呼ばれている、トウダイグサ科エンブリカ属の落葉中低木亜高木である。
【0028】
このアムラは、インドなどにおいて料理の味付け、ターメリック漬け、シロップ煮、オイル漬け、トウガラシ漬け、塩漬け乾燥品、砂糖漬け乾燥品、チャツネ、ジュース、キャンディ、ピクルス、ジャム、茶などの日常食品や薬剤として用いられている。アムラは、その果実が滋養強壮に用いられており、また、便秘、排尿障害、頭痛、不安、嘔吐、灼熱症等にも良いとされ、さらに、記憶力や知性を向上させるとも言われている。このアムラの果実についてはまた、血清コレステロ−ル低下作用、抗ウイルス作用、染色体異常防護作用、肝庇護作用、血糖低下作用、免疫調節作用、抗酸化作用(活性酸素消去作用)、抗菌作用、抗炎症作用、ヒアルロニターゼ阻害作用、コラゲナーゼ阻害作用、チロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用、エラスターゼ阻害作用、メイラード反応抑制作用などを有することも知られている。しかしながら、アムラの抽出物がコラーゲン産生促進作用を有し、そしてコラーゲン産生促進剤として有用であることについては、これまで全く知られておらず、そしてこれらのことは本願発明者らの鋭意研究に基づく新知見である。
【0029】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、アムラの抽出物を有効成分として含有する。このアムラの抽出物は、アムラの果肉および果皮から選択される少なくとも1種の抽出物であるのが好ましい。このような抽出物は、インドで古くから経口投与にて用いられており、可食に対する安全性に特に優れているからである。
【0030】
アムラの果肉および果皮から選択される少なくとも1種の抽出物としては、例えば、アムラの果実から種子を除いた果肉および/または果皮を抽出原料として得られる抽出物、この抽出物の希釈液若しくは濃縮液、この抽出物の粗精製物若しくは精製物、そしてこの抽出物を乾燥して得られる乾燥物などといった形態のいずれもが含まれる。
【0031】
これらの抽出に用いるアムラ果実は、まず種子を取り除き、果肉および果皮の状態にする。用いられるアムラの果実は、生(生果)であっても乾燥品(乾果)であってもよい。このアムラの果肉および果皮は、何れかを単独で用いてもよく、また両方を併せて用いてもよい。こうして得られたアムラの果肉および果皮は、抽出する前に破砕処理または裁断処理などを行うことによって抽出効率をより高めることができるため、このような処理を行うのが好ましい。
【0032】
抽出方法は特に限定されず、例えば溶媒抽出方法または超臨界抽出方法などが挙げられる。溶媒抽出方法については、特に限定されるものではなく、例えば、アムラの果肉そして果皮の何れかまたは両方を、各種溶媒を用いて抽出することができる。抽出の際、抽出に用いる溶媒中にこれらのアムラの部分を浸漬し、その後に抽出処理を行ってもよい。この浸漬は、室温で行ってもよく、また、必要に応じて加熱あるいは冷却を行ってもよい。また、この浸漬中に撹拌を行ってもよい。
【0033】
抽出に用いる抽出溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)などが挙げられる。好ましくは、水、低級アルコ−ル等の極性溶媒であり、特に好ましくは、水、エタノールである。これらの抽出溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0034】
抽出溶媒として水を用いる場合は、上記浸漬中に酵素を加えてもよい。酵素を加えることによって、果肉および/または果皮の細胞組織を崩壊させることができ、そしてこれにより抽出効率をより高めることができる。加えることができる酵素として、細胞組織崩壊酵素を用いるのが好ましい。このような酵素として、例えば、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、α−アミラーゼ、フィターゼなどが挙げられる。これらの酵素は1種類のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
本発明に好ましく用いられるアムラの抽出方法の一例として、抽出対象となるアムラの部分を、上記抽出溶媒中に、0〜95℃で3分〜24時間浸漬および撹拌し、その後、ろ過または遠心分離する方法が挙げられる。ろ過または遠心分離により得られた沈殿物を用いて、再度抽出操作を行ってもよい。
【0036】
超臨界抽出方法は特に限定されず、圧力変化による分離方法(定温下で超臨界流体を減圧、膨張させ、溶媒ガスの密度を下げて分離する方法)、温度変化による分離方法(定圧下で昇温或いは降温して超臨界流体と溶質を分離する方法)、吸着分離法(分離槽中に抽出された溶質を吸着するような吸着剤を充填することにより分離する方法)などを用いることができる。これらの操作は、単独で行ってもよく、また複数の操作を組み合わせて行ってもよい。
【0037】
超臨界抽出方法で用いられる流体として、超臨界流体または亜臨界流体を用いることができる。このような流体としては、二酸化炭素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、アンモニア、窒素、酸化窒素などが挙げられる。中でも、比較的常温付近で超臨界流体となり、無味、無臭、爆発性がなく、工程上安全で経済的である二酸化炭素が最も好ましい。
【0038】
超臨界抽出方法において、抽出を補助するための溶媒(エントレーナー)を用いてもよい。このような溶媒として、上記溶媒抽出に用いることができる溶媒が挙げられる。
【0039】
超臨界抽出方法は、例えば、抽出対象となるアムラの部分の粗粉砕物を超臨界抽出容器に入れ、容器を二酸化炭素などの超臨界流体の臨界温度および臨界圧力以上に加温および加圧することにより行うことができる。ここでの抽出圧力は10〜100MPaであることが好ましく、25〜40MPaであるのがより好ましい。また、抽出温度は20〜200℃であるのが好ましく、30〜100℃であるのがより好ましい。
【0040】
また、上記抽出方法に代えて、水蒸気蒸留などの蒸留方法により抽出物を得ることもできる。
【0041】
このようにして得られる抽出物は、未精製のまま用いることができ、さらに必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、脱色、脱臭、乾燥(凍結乾燥を含む)などの処理を行うこともできる。これらの処理は常法により行うことができる。さらに、こうして得られる抽出物を分画・精製処理を行ってもよい。分画・精製処理として、例えば、順相および/または逆相クロマトグラフィーによる精製などが挙げられる。更には、抽出物に必要に応じて適当な賦形剤を使用し、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行ってもよい。
【0042】
こうして得られるアムラの抽出物は、コラーゲン産生促進剤としてそのまま適用および/または利用することができる。アムラの抽出物をコラーゲン産生促進剤として適用する場合、その形状および性状は特に制限されず、例えば、固形状、半固形状、ゲル状、液体状、粉末状、そして可溶系、乳化系、粉末分散系、液体分散系などが挙げられ、さらにアンプル剤、錠剤、カプセル剤、液剤、粉末剤、顆粒剤などの形状で用いることもできる。
【0043】
本発明のコラーゲン産生促進剤の適用対象としては、特に限定されないが、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、ウサギなど)などが挙げられる。
【0044】
本発明は、さらに、上記のアムラの抽出物を有効成分として含有する美容用飲食品も提供することができる。これらの美容用飲食品の形態は特に制限されるものではなく、例えば、各種の和菓子、洋菓子、氷菓、清涼飲料水、乳製品、大豆加工品、ペースト類、魚介類製品、燻製品、レトルト食品、調味料、油脂加工品、冷凍食品などの一般的な飲食品が挙げられる。
【0045】
これらの美容用飲食品へのアムラの抽出物の配合量は、特に制限されるものではなく、配合される飲食品(製品)の種類、品質、そして期待する効果の程度に応じて、種々の配合量をとることができる。好ましい配合量としては、例えば、飲食品の乾燥固形分に換算して0.1〜90.0重量%、更に好ましくは1.0〜10.0重量%が挙げられる。
【0046】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、必須成分のアムラの抽出物に加え、必要に応じて、医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品等の製剤に使用する際に一般的に使用され得る成分および/または添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で併用して製造することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
【0048】
実施例1
アムラ生果から種子を除去して果肉および果皮の状態とし、これを破砕して抽出原料とした。抽出原料25gに水を100mL加え、80℃にて2時間攪拌後、ガラスフィルター(G1)を用いて吸引ろ過し、液状の抽出物を得た。更に、残渣に水を100mL加え、同様に操作して液状の抽出物を得て、先の抽出物と混合して50℃で減圧下にて濃縮し、更に、凍結乾燥機で乾燥してアムラ果肉および果皮抽出物1.5gを得た。
【0049】
実施例2
アムラ乾果から種子を除去して果肉および果皮の状態とし、これを破砕して抽出原料とした。抽出原料6gに50質量%エタノールを30mL加え、20〜25℃で20分間攪拌後、遠心分離(3,000rpm、5分)し、上清を分離することにより、液状の抽出物を得た。更に、沈澱に50質量%エタノールを30mL加え、同様に操作して液状の抽出物を得て、先の抽出物と混合して50℃で減圧下にて濃縮し、更に、凍結乾燥機で乾燥してアムラ果肉および果皮抽出物2.2gを得た。
【0050】
実施例3
実施例2と同様に調製した抽出原料6gに50質量%エタノールを30mL加え、20〜25℃で20分間攪拌後、遠心分離(3,000rpm、5分)し、上清を分離することにより、液状の抽出物を得た。更に、沈澱に70質量%アセトンを30mL加え、同様に操作して液状の抽出物を得て、先の抽出物と混合して50℃で減圧下にて濃縮し、更に、凍結乾燥機で乾燥してアムラ果肉および果皮抽出物2.0gを得た。
【0051】
実施例4
実施例2と同様に調製した抽出原料5gに水40mLを加え、ペクチナーゼ(スミチームSPC 新日本化学工業製)を0.05重量%、セルラーゼ(スミチームAC 新日本化学工業製)を0.5重量%添加し、55〜60℃で3時間攪拌後、ガラスフィルター(G1)を用いて吸引ろ過し、液状の抽出物を得た。この抽出物を50℃で減圧下にて濃縮し、更に、凍結乾燥機で乾燥してアムラ果肉および果皮抽出物2.5gを得た。
【0052】
実施例5
実施例2と同様に調製した抽出原料5gを用いて、二酸化炭素を用いた超臨界流体抽出(ISCO社 SFX1220 超臨界流体抽出システム 抽出圧力40MPa 抽出温度90℃)を行い、アムラ果肉および果皮抽出物1.2gを得た。
【0053】
上記実施例により得られたアムラの抽出物について、皮膚真皮正常線維芽細胞のコラーゲン産生促進作用を評価した。
【0054】
コラーゲン産生量の測定
0.5容量%FBS(牛胎児血清)含有MEM培地を用い、ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB、RIKEN Cell Bankより購入)を1×10cells/wellの密度で96穴マイクロプレ−トに分注し、24時間5%CO、37℃の条件で培養後、各濃度の試験試料(実施例1〜5)を溶解させた0.5容量%FBS含有MEM培地を添加した。48時間培養後、上清中に含まれるコラーゲン量を、市販の定量用キット(Sircol collagen assay kit)を用いて定量した。その際、試料を添加しないで培養を続けた系を対照とした。結果は、コラーゲン産生量の増加率(%)(対照におけるコラーゲン産生量=100)として表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
上記表から明らかであるように、本発明のアムラの抽出物はコラーゲン産生促進作用を有していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、アムラの抽出物が有するコラーゲン産生促進作用を通じて、皮膚における真皮線維芽細胞のコラーゲン産生を促進することができる。この結果、コラーゲンが増加し、皮膚の機能維持およびかさつき、肌荒れ、しわ、たるみ等の老化現象の遅延、又は改善をすることができる。ただし、本発明のコラーゲン産生促進剤はこれらの用途以外にも、コラーゲン産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0058】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、コラーゲン産生を促進し、皮膚の機能性維持や老化現象の防止、遅延又は改善に有用であり、また、美容用飲食品としても効果が期待できる。さらに、本発明は、アムラの抽出物を用いたコラーゲン産生促進方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アムラ(Phyllanthus emblica)の抽出物を含む、コラーゲン産生促進剤。
【請求項2】
前記アムラの抽出物が、アムラの果肉および果皮から選択される少なくとも1種の抽出物である、請求項1記載のコラーゲン産生促進剤。
【請求項3】
前記アムラの抽出物が、抽出溶媒として極性溶媒を用いて抽出される抽出物である、請求項1または2記載のコラーゲン産生促進剤。
【請求項4】
前記アムラの抽出物が、超臨界流体を用いた超臨界抽出方法によって抽出される抽出物である、請求項1または2記載のコラーゲン産生促進剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載されるアムラの抽出物を有効成分として含有する、美容用飲食品。
【請求項6】
アムラ(Phyllanthus emblica)の抽出物を適用する工程を包含する、コラーゲン産生促進方法。
【請求項7】
アムラの果肉または果皮からアムラの抽出物を得る工程を包含する、請求項6記載のコラーゲン産生促進方法。
【請求項8】
抽出溶媒として極性溶媒を用いてアムラの抽出物を抽出する工程を包含する、請求項6または7記載のコラーゲン産生促進方法。
【請求項9】
超臨界流体を用いた超臨界抽出方法によってアムラの抽出物を抽出する工程を包含する、請求項6または7記載のコラーゲン産生促進方法。

【公開番号】特開2012−176977(P2012−176977A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127640(P2012−127640)
【出願日】平成24年6月5日(2012.6.5)
【分割の表示】特願2006−347224(P2006−347224)の分割
【原出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(592004998)三基商事株式会社 (12)
【Fターム(参考)】