説明

コラーゲン産生促進用組成物

【課題】コラーゲンの産生、特にヒトの皮膚真皮におけるコラーゲンの産生を促進できるコラーゲン産生促進用組成物およびコラーゲンの産生を促進する方法を提供する。
【解決手段】プリン系核酸関連物質を有効成分として含有するコラーゲン産生促進用組成物、並びに、プリン系核酸関連物質及びピリミジン系核酸関連物質を含有するコラーゲン産生促進用組成物、また、プリン系核酸関連物質、又はプリン系核酸関連物質及びピリミジン系核酸関連物質を皮膚に適用することによる、コラーゲンの産生促進方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン産生促進用組成物に関する。更に、本発明は、皮膚真皮におけるコラーゲンの産生を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、皮膚の真皮の約90%を占める成分であり、皮膚構造の支持、細胞の生存環境の提供、水分保持等の役割を担っている。コラーゲンは、紫外線暴露や乾燥等により皮膚が特定の外因的影響を受けることによって喪失されることが知られている。また、加齢やストレスによっても、コラーゲンが失われてしまうことも分かっている。また、外因的影響や加齢は、線維芽細胞のコラーゲンの産生量の減少をも引き起こすことも分かっている。
【0003】
コラーゲン量を適度保持し、かつ優れたコラーゲン産生能を備えていることは、皮膚を健康に保つ上で極めて重要である。従来より、コラーゲンの産生を促進する物質の検索が盛んに行われているが(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)、核酸及びその関連物質にコラーゲンの産生を促進する作用があることについては報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−316240号公報
【特許文献2】特開2003−278783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、コラーゲンの産生、特にヒトの皮膚真皮におけるコラーゲンの産生を促進できるコラーゲン産生促進用組成物を提供することを目的とするものである。また、本発明は、外用剤として使用される上記コラーゲン産生促進用組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、プリン系核酸関連物質、特にアデノシン5’−一リン酸又はその塩には、皮膚真皮におけるコラーゲンの産生を促進する作用があることを見出した。また、ピリミジン系核酸関連物質には、プリン系核酸関連物質のコラーゲン産生促進作用を増強する効果があることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて、更に検討を重ねて開発されたものである。
即ち、本発明は、下記に掲げるコラーゲン産生促進用組成物である:
項1.プリン系核酸関連物質を含有する、コラーゲン産生促進用組成物。
項2.更に、ピリミジン系核酸関連物質を含有する、項1に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項3.プリン系核酸関連物質が、アデニン、アデノシン、アデノシンのリン酸エステル、アデノシンのリン酸エステルの代謝産物、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項4.プリン系核酸関連物質が、アデノシン一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項5.プリン系核酸関連物質が、アデノシン5’−一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項6.ピリミジン系核酸関連物質が、ウラシル、ウリジン、ウリジンのリン酸エステル、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項2に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項7.ピリミジン系核酸関連物質が、ウリジン一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項2に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項8.ピリミジン系核酸関連物質が、ウリジン5’−一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項2に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項9.プリン系核酸関連物質が、アデニン、アデノシン、アデノシンのリン酸エステル、アデノシンのリン酸エステルの代謝産物、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種であり、ピリミジン系核酸関連物質が、ウラシル、ウリジン、ウリジンのリン酸エステル、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項2に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項10.プリン系核酸関連物質がアデノシン一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種であり、ピリミジン系核酸関連物質がウリジン一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項2に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項11.プリン系核酸関連物質がアデノシン5’−一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種であり、ピリミジン系核酸関連物質がウリジン5’−一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項2に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項12.プリン系核酸関連物質1重量部に対して、ピリミジン系核酸関連物質を0.001〜100重量部の割合で含有する、項2に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項13.プリン系核酸関連物質が、コラーゲン産生促進用組成物の総量に対して、0.01〜10重量%の割合で含まれる、項1に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項14.ピリミジン系核酸関連物質が、コラーゲン産生促進用組成物の総量に対して、0.0001〜10重量%の割合で含まれる、項1に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項15.化粧料、外用医薬品又は外用医薬部外品である、項1に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
項16.化粧料である、項1に記載のコラーゲン産生促進用組成物。
また、本発明は、下記に掲げるコラーゲンの産生促進方法である:
項17.プリン系核酸関連物質を皮膚に適用することを特徴とする、コラーゲンの産生促進方法。
項18.プリン系核酸関連物質と共に、ピリミジン系核酸関連物質を皮膚に適用することを特徴とする、項17に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項19.プリン系核酸関連物質を含有する外用組成物を皮膚に適用する、項17に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項20.プリン系核酸関連物質及びピリミジン系核酸関連物質含有する外用組成物を皮膚に適用する、項18に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項21.プリン系核酸関連物質が、アデニン、アデノシン、アデノシンのリン酸エステル、アデノシンのリン酸エステルの代謝産物、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項17に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項22.プリン系核酸関連物質が、アデノシン一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項17に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項23.プリン系核酸関連物質が、アデノシン5’−一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項17に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項24.ピリミジン系核酸関連物質が、ウラシル、ウリジン、ウリジンのリン酸エステル、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項18に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項25.ピリミジン系核酸関連物質が、ウリジン一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項18に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項26.ピリミジン系核酸関連物質が、ウリジン5’−一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項18に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項27.プリン系核酸関連物質が、アデニン、アデノシン、アデノシンのリン酸エステル、アデノシンのリン酸エステルの代謝産物、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種であり、ピリミジン系核酸関連物質が、ウラシル、ウリジン、ウリジンのリン酸エステル、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項18に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項28.プリン系核酸関連物質がアデノシン一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種であり、ピリミジン系核酸関連物質がウリジン一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項18に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項29.プリン系核酸関連物質がアデノシン5’−一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種であり、ピリミジン系核酸関連物質がウリジン5’−一リン酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項18に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項30.プリン系核酸関連物質1重量部に対して、ピリミジン系核酸関連物質を0.001〜100重量部の割合で含有する、項18に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項31.プリン系核酸関連物質が、外用組成物の総量に対して、0.01〜10重量%の割合で含まれる、項19に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項32.ピリミジン系核酸関連物質が、組成物の総量に対して、0.0001〜10重量%の割合で含まれる、項20に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項33.外用組成物が、化粧料、外用医薬品又は外用医薬部外品である、項19に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項34.外用組成物が化粧料である、項19に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項35. 項1に記載のコラーゲン産生促進用組成物を皮膚に適用する、項17に記載のコラーゲンの産生促進方法。
項36. 項2に記載のコラーゲン産生促進用組成物を皮膚に適用する、項18に記載のコラーゲンの産生促進方法。
更に、本発明は、下記態様の使用である:
項37. プリン系核酸関連物質の、コラーゲン産生促進用組成物の製造のための使用。
項38. プリン系拡散関連物質及びピリミジン系核酸関連物質の、コラーゲン産生促進用組成物の製造のための使用。
項39. プリン系核酸関連物質の、コラーゲンを産生するための使用。
項40. プリン系拡散関連物質及びピリミジン系核酸関連物質の、コラーゲンを産生するための使用。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】試験例1において、各種濃度のAMP2Na含有培地でヒト皮膚線維芽細胞を培養した際に、産生されたPICPの濃度を示す図である。
【図2】試験例2において、各種濃度のAMP2Na及びUMP2Na含有培地でヒト皮膚線維芽細胞を培養した際に、産生されたPICPの濃度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(I)コラーゲン産生促進用組成物
本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、有効成分として、プリン系核酸関連物質を含有することを特徴とするものである。ここで、プリン系核酸関連物質とは、プリン又はプリン核を骨格とする各種の誘導体及びそれらの塩である。
【0009】
本発明に用いられるプリン系核酸関連物質としては、化粧料や外用の医薬品又は医薬部外品中に配合できるものであれば、特に制限されない。好ましくは水溶性若しくは親水性のものである。プリン系核酸関連物質としては、一般にアデニン、アデノシン、アデノシンのリン酸エステル〔例えばアデノシン2’−リン酸、アデノシン3’−リン酸、アデノシン5’−リン酸、アデノシン5’−二リン酸、アデノシン5’−三リン酸、アデノシン環状リン酸、アデニロコハク酸、ニコチンアミドアデニンモノジヌクレオチド(NMN)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)等〕、これらの代謝産物〔例えばヒポキサンチン、イノシン、イノシン酸等〕、及びこれらの塩などのアデニン系核酸関連物質;グアニン、グアノシン、グアノシンのリン酸エステル〔グアノシン3’−リン酸、グアノシン5’−リン酸、グアノシン5’−二リン酸、グアノシン5’−三リン酸等〕、これらの代謝産物〔例えば、キサンチル酸、キサンチン等〕、及びこれらの塩などのグアニン系核酸関連物質を挙げることができる。
【0010】
中でも好ましいプリン系核酸関連物質としては、上記に掲げるアデニン系核酸関連物質を例示できる。より好ましくは、アデノシンのリン酸エステル、その代謝物及びこれらの塩であり、更に好ましくはアデノシンのリン酸エステル及びその塩である。ここでアデノシンのリン酸エステルの内、好適に使用されるものとして、アデノシン2’−リン酸、アデノシン3’−リン酸、アデノシン5’−リン酸等のアデノシン一リン酸、特にアデノシン5’−リン酸(AMP)を挙げることができる。
【0011】
なお、上記の塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩およびバリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルギニンやリジン等の塩基性アミノ酸塩;アンモニウム塩やトリシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩及びトリイソプロパノールアミンなどの各種のアルカノールアミン塩等を挙げることができる。好ましくはナトリウム塩などのアルカリ金属塩である。かかるアルカリ金属塩として、具体的にはアデノシン一リン酸一ナトリウム、及びアデノシン一リン酸二ナトリウムを例示することができる。
【0012】
なお、これらのプリン系核酸関連物質は、本発明のコラーゲン産生促進用組成物の有効成分として1種単独で使用してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0013】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物に配合されるプリン系核酸関連物質の割合としては、プリン系核酸関連物質の種類、後述するピリミジン系核酸関連物質の有無や種類、該組成物の用途や形態等によっても異なるが、該組成物の総重量に対して、通常0.01〜10重量%の範囲から適宜選択して調整することができる。好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは3〜6重量%が例示される。
【0014】
また、本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、上記プリン系核酸関連物質に加えて、ピリミジン系核酸関連物質を含有していることが望ましく、これによって、プリン系核酸関連物質のコラーゲン産生促進作用を一層高めることができる。ここで、ピリミジン系核酸関連物質とは、ピリミジン又はピリミジン核を骨格とする各種の誘導体及びそれらの塩である。
【0015】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物に配合されるピリミジン系核酸関連物質は、化粧料や外用の医薬品又は医薬部外品に使用できるものであれば、特に制限されない。好ましいピリミジン系核酸関連物質としては、水溶性若しくは親水性のものが挙げられる。かかるピリミジン系核酸関連物質としては、具体的にはウラシル、ウリジン、ウリジンのリン酸エステル〔ウリジン一リン酸(ウリジン5’−リン酸、ウリジン3’−リン酸、ウリジン2’−リン酸)、ウリジン二リン酸、ウリジン三リン酸、ウリジン環状リン酸等〕、デオキシウリジン、デオキシウリジンのリン酸エステル〔5’−デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、5’−デオキシウリジル酸(dUMP)等〕及びこれらの塩等のウラシル系核酸関連物質;シトシン、シチジン、シチジンのリン酸エステル(CMP)〔シチジン一リン酸(シチジン5’−リン酸、シチジン3’−リン酸、シチジン2’−リン酸)、シチジン三リン酸(CTP)、シチジン二リン酸(CDP)〕、デオキシシチジン、デオキシシチジンのリン酸エステル(5’−デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、5’−デオキシシチジン二リン酸(dCDP)、5’−デオキシシチジル酸(dCMP)等)及びこれらの塩等のシトシン系核酸関連物質;チミン、チミジン、チミジンのリン酸エステル〔チミジル酸(dTMP)、チミジン二リン酸(dTDP)、チミジン三リン酸(dTTP)等〕、オロト酸、5’−オロトチジル酸、及びこれらの塩等のチミン系核酸関連物質を例示することができる。
【0016】
なお、ここでピリミジン系核酸関連物質として、上記の各成分を含有するものであれば特に、その精製度(純度)を問うものではない。当該ピリミジン系核酸関連物質として、例えばアブラナ科植物(特に種子)又はマメ科植物の抽出液等の上記成分を含有する植物抽出物を用いることもできる。
【0017】
特に、上記に掲げるウラシル系核酸関連物質は、プリン系核酸関連物質のコラーゲン産生作用をより一層効果的に増強できるので、好適に使用されるピリミジン系核酸関連物質である。中でも、好ましくは、ウリジン、ウリジンのリン酸エステルまたはそれらの塩であり、より好ましくはウリジンのリン酸エステルまたはそれらの塩である。ここでウリジンのリン酸エステルの内、好適なものとしてウリジン一リン酸、特にウリジン5’−リン酸(UMP)を挙げることができる。
【0018】
また上記の塩としては、いずれもナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩及びバリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルギニンやリジン等の塩基性アミノ酸塩;アンモニウム塩やトリシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩及びトリイソプロパノールアミンなどの各種のアルカノールアミン塩等を挙げることができる。
【0019】
これらの中で、好ましくはナトリウム塩などのアルカリ金属塩である。かかるアルカリ金属塩として、具体的にはウリジン一リン酸一ナトリウム、及びウリジン一リン酸二ナトリウムが例示される。
【0020】
なお、これらのピリミジン系核酸関連物質は、本発明のコラーゲン産生促進用組成物に1種単独で配合してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて配合してもよい。
【0021】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物に配合されるピリミジン系核酸関連物質の割合は、上記コラーゲン産生促進増強効果を奏する範囲であれば特に制限されず、例えば、プリン系核酸関連物質1重量部に対してピリミジン系核酸関連物質が0.001〜100重量部の割合となるような範囲から適宜選択することができる。好ましくは、プリン系核酸関連物質1重量部に対してピリミジン系核酸関連物質が0.01〜100重量部、更に好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜1重量部である。また、コラーゲン産生促進用組成物の総重量に対するピリミジン系核酸関連物質の割合としては、例えば、ピリミジン系核酸関連物質が総量で0.0001〜10重量%、好ましくは0.0001〜1重量%、更に好ましくは0.0001〜0.1重量%を挙げることができる。
【0022】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、上記成分の他に、薬学的又は香粧的に許容される基剤や担体を組み合わせて各種の形態に調製される。薬学的又は香粧的に許容される基剤や担体については、従来公知のものを用いることができる。また、本発明のコラーゲン産生促進用組成物には、必要に応じて化粧料や外用の医薬品・医薬部外品等の皮膚や粘膜に適用される外用組成物に配合される公知の各種成分を配合することができる。このような成分として、例えば、界面活性剤、色素(染料、顔料)、香料、防腐剤、殺菌剤(抗菌剤)、増粘剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、清涼化剤、防臭剤、保湿剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、植物エキス、皮膚収斂剤、抗炎症剤(消炎剤)、美白剤、細胞賦活剤、血管拡張剤、血行促進剤、及び皮膚機能亢進剤等を挙げることができる。
【0023】
上記成分の内、界面活性剤の具体例としては、高級脂肪酸石けん、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩、アシルN−メチルタウリン塩等のアニオン界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどのカチオン界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤;ポリオキシエチレン型、多価アルコールエステル型、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体などの非イオン界面活性剤等を挙げることができる。また特に制限されることなく、高分子界面活性剤や天然界面活性剤に属する界面活性剤も使用することができる。
【0024】
また防腐剤の具体例として、パラオキシ安息香酸エチル、サリチル酸、及びソルビン酸等を例示することができる。増粘剤の具体例として、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー等を例示することができる。金属封鎖剤の具体例として、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩、リン酸、クエン酸等を例示することができる。
【0025】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、皮膚に塗布又は噴霧される外用組成物として使用される。具体的には、本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、化粧料、外用医薬品又は外用医薬部外品等の外用剤(外皮用剤)として使用される。これらの内、曰常的に皮膚のコラーゲン産生を促進できるという観点から化粧料が好ましい。なお、かかる外用剤には、養毛剤や育毛剤、または養毛や育毛に効果のあるシャンプー、リンス、ヘアローション(トニック、リキッドを含む)等の各種のヘア化粧料が含まれる。
【0026】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物の形態については、皮膚や粘膜に適用可能なものであれば特に制限されず、例えば、ペースト状、ムース状、ジェル状、液状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、シート状、エアゾール状、スプレー状、リニメント剤を例示することができる。特に化粧料とする場合であれば、ローション;エモリエント乳液、ミルキーローション、ナリシング乳液、クレンジング乳液等の乳液;エモリエントクリーム、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、メイクアップクリーム等のクリーム等を例示することができる。また、特に養毛剤や育毛剤等のヘア製品とする場合であれば、トニック、ヘアクリーム、ヘアローション、エアゾール(噴霧剤)、ムース、シャンプー、リンス、リキッド等を例示することができる。
【0027】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、化粧料、外用医薬品又は外用医薬部外品として、皮膚や粘膜に直接塗布、噴霧又は貼付して使用することができる。その使用割合は、使用者(ヒト)の年齢、性別、用途、患部の症状の程度等に応じて、コラーゲン産生を促進する有効量を、1回/日から5又は6回/日の回数で皮膚に経皮的に投与される。
【0028】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、コラーゲンの産生を促進することにより、抗老化、保湿、抗アクネ、抗シワ、抗たるみ、抗くすみ、育毛、抗フケ、美爪、創傷治療等の効果を奏する。故に、本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、抗老化、保湿、抗アクネ、抗シワ、抗たるみ、抗くすみ、育毛、抗フケ、美爪、創傷治療等を目的とする化粧料、外用医薬品又は外用医薬部外品として用いることができる。中でも、本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、抗老化、保湿、抗アクネ、抗シワ、抗たるみ、抗くすみ、育毛、美爪、創傷治療を目的とする各種外用剤として有用である。特に、本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、抗シワ作用を効果的に発揮できるので、抗シワを目的とする各種外用剤として有用である。
【0029】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、皮膚に適用されることによって、優れたコラーゲン産生促進効果を奏する。従って、更に、本発明は、プリン系核酸関連物質の、コラーゲン産生促進用組成物の製造のための使用;及びプリン系核酸関連物質及びピリミジン系核酸関連物質の、コラーゲン産生促進用組成物の製造のための使用を提供する。
【0030】
(II)コラーゲンの産生促進方法
また本発明は、コラーゲンの産生促進方法を提供する。当該方法は、プリン系核酸関連物質を皮膚に適用することによって実施される。
【0031】
また、本発明の方法において、プリン系核酸関連物質と共に、ピリミジン系核酸関連物質を皮膚に適用することによって、一層顕著にコラーゲン産生促進効果が奏される。
【0032】
本発明の方法において、上記物質の皮膚への適用は、簡便には、上記(I)のコラーゲン産生促進用組成物を皮膚に塗布、噴霧又は貼付することにより行うことができる。
本発明の方法において、プリン系核酸関連物質又は、プリン系核酸関連物質とピリミジン系核酸関連物質を皮膚に適用する頻度及び量については、特に制限されない。例えば、対象者の年齢、性別、期待される効果、皮膚症状の程度等に応じて、1回/日から5又は6回/日の回数で、適当量を皮膚に経皮的に適用される。具体的には、上記(I)のコラーゲン産生促進用組成物を使用して本発明の方法を実施する場合であれば、例えば適用される皮膚の面積に対する該組成物の適用割合が0.5〜10mg/cmの範囲となるような量を1回適用量の目安とすることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の試験例において、w/v%とは、100ml中に含まれる重量(g)を意味するものである。
【0034】
[実施例1] 化粧水 (pH6.5)
アデノシン一リン酸二ナトリウム 3.0(重量%)
ウリジン一リン酸二ナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン(E.O.60)硬化ヒマシ油 0.7
エタノール 5.0
グリセリン 2.0
防腐剤 0.2
香料 適量
pH調整剤 適量
精製水 残余
合 計 100.0重量%
常法にしたがって、上記処方の化粧水を調製した。
【0035】
[実施例2] 乳液 (pH6.5)
アアノシン一リン酸二ナトリウム 1.5(重量%)
ウリジン一リン酸二ナトリウム 0.01
カルボキシビニルポリマー 0.3
モノミリスチン酸デカグリセリン 2.0
スクワラン 5.0
エタノール 1.0
グリセリン 6.0
防腐剤 0.2
pH調整剤 適量
精製水 残余
合 計 100.0重量%
常法にしたがって、上記処方の乳液を調製した。
【0036】
[実施例3] 養毛剤
アデノシン一リン酸二ナトリウム 10.0(重量%)
ウリジン一リン酸二ナトリウム 1.0
サリチル酸 0.1
エタノール 20.0
グリセリン 2.0
防腐剤 0.2
香料 適量
精製水 残余
合 計 100.0重量%
常法にしたがって、上記処方の養毛剤を調製した。
【0037】
[実施例4] 乳液 (pH6.5)
アデノシン一リン酸二ナトリウム 4.0(重量%)
ウリジン一リン酸二ナトリウム 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.3
モノミリスチン酸デカグリセリン 2.0
スクワラン 5.0
エタノール 1.0
グリセリン 6.0
防腐剤 0.2
pH調整剤 適量
精製水 残余
合 計 100.0重量%
常法にしたがって、上記処方の乳液を調製した。
【0038】
試験例1 アデノシン一リン酸二ナトリウムの培養ヒト皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生促進効果の評価
初代培養ヒト皮膚線維芽細胞(クラボウ社製)を10cmシャーレに培養し、サブコンフルエント状態において回収し凍結保存した。この細胞を用いて、アデノシン一リン酸二ナトリウム(以下AMP2Naという)のコラーゲン産生促進効果について評価を行った。なお、以下、AMP2Naについては、AMPの濃度に換算して記載した。
<評価方法>
1)凍結保存した細胞をLSGS(Low Serum Growth Supplement)含有Medium106S液体培地(クラボウ社製)に溶解して、30000cells/100μlとなるように細胞濃度及び培地量を調整した、当該細胞含有液を試験プレートのウェルに、1ウェルあたり100μlずつの割合で注入した。
2)滅菌リン酸緩衝液を用いて各種濃度のAMP2Na溶液を調製し、フィルターろ過により滅菌した。これをMedium106S液体培地(クラボウ社製)に加えて、各種濃度(0〜1×10−5w/v%)のAMP2Na含有培地を調製した。
3)プレートの各ウェルへの細胞注入から24時間後、細胞のウェル上への接着を確認し、各ウェルから培地を除去した。次いで、各ウェルに上記2)で調製した各種濃度のAMP2Na含有培地(200μl)を添加した。これを37℃、5%COの条件下で2日間培養した。
4)各ウェル中の培養上清を回収し、当該培養上清中のコラーゲン量の指標として、Procollagen type I C−peptide (PICP)量を、Procol1agen type I C−peptide(PIP)EIA Kit(TaKaRa社製)を用いて測定した。
<結果>
得られた結果を図1に示す。図1から分かるように、AMP2Naの濃度が1×10−8〜10−5w/v%の培地で培養した細胞は、AMP無添加の培地で培養した細胞に比して、PICP量が増加していた。特に、AMP2Naの濃度が1×10−5w/v%のものでは、AMP無添加に比して約1.4倍量のPICPが産生されていることが確認された。
【0039】
試験例2 アデノシン一リン酸二ナトリウムとウリジン一リン酸二ナトリウムの併用による培養ヒト皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生促進効果の評価
AMP2Naとウリジン一リン酸二ナトリウム(以下、UMP2Naという)を併用することによって奏されるコラーゲン産生促進効果を評価した。具体的には、下表1に示す割合でAMP2Na及びUMP2Naを含有する培地(試験培地1〜4)を調製し、これらを使用すること以外は、上記試験例1と同様の方法で培養ヒト皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生促進効果の評価を行った。なお、表1中、AMP2Na及びUMP2Naについては、それぞれAMP及びUMPの濃度に換算して記載した。
【0040】
【表1】

【0041】
得られた結果を図2に示す。図2から、AMP2Naにはコラーゲン産生促進作用があること、並びに、UMP2Na自体にはコラーゲン産生促進作用がないが、AMP2Naのコラーゲン産生促進作用を飛躍的に増強することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のコラーゲン産生促進用組成物の有効成分であるプリン系核酸関連物質には、優れたコラーゲン産生促進作用がある。特に、当該プリン系核酸関連物質のコラーゲン産生促進作用は、ピリミジン系核酸関連物質の存在によって、顕著に増強される。従って、本発明のコラーゲン産生促進用組成物は、コラーゲン産生促進剤として使用され、コラーゲンの産生、特に皮膚真皮のコラーゲンの産生を効果的に促進することができる。
【0043】
また、本発明によれば、優れたコラーゲン産生促進作用を有し、抗老化、保湿、抗アクネ、抗シワ、抗たるみ、抗くすみ、育毛、抗フケ、美爪、創傷治療等に有用な外用剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノシン5’-一リン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種のプリン系核酸関連物質を含有する、コラーゲン産生促進用組成物。
【請求項2】
プリン系核酸関連物質が、コラーゲン産生促進用組成物の総量に対して、0.01〜10重量%の割合で含まれる、請求項1に記載のコラーゲン産生促進組成物。
【請求項3】
アデノシン5’-一リン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の、コラーゲン産生促進用組成物の製造のための使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−215648(P2010−215648A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124971(P2010−124971)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【分割の表示】特願2005−514663(P2005−514663)の分割
【原出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】