説明

コリナンテ種の樹皮からの抽出物、その使用、およびそれを含有する薬剤、ダイエット食品および医薬品

本発明は、コリナンテ種、とりわけコリナンテパチセラスの樹皮からの抽出物、下部尿路疾患、性的障害、脂質代謝障害、心臓血管疾患および急性および慢性疼痛状態の治療および予防のための抽出物の使用に関する。本発明はさらに、これらの抽出物を含有する薬剤、ダイエット食品および医薬品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリナンテ種の樹皮からの抽出物、とりわけコリナンテパチセラス、および、下部尿路疾患、性的障害、脂質代謝障害、心臓血管疾患および急性および慢性疼痛状態の治療および予防のための前記抽出物の使用に関する。さらに本発明は、前記抽出物を含有する薬剤、ダイエット食品および医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
良性前立腺過形成(BPH)およびそれに付随する下部尿路症状(LUTS)は、男性にとって群を抜いて重大な泌尿器疾患である。50歳を過ぎた男性の1/3が生涯においてLUTSを発症し、そのうちの25%に外科的介入が必要であると推測される。BPH/LUTSを患っている男性の割合は、90歳に成るまでに90%を超える。ドイツ連邦共和国では、年間約4百万人の患者がこれらの症状に対する治療を受けている。平均寿命の延長および健康に対する意識の高まりに鑑みて、今後、疾患頻度のさらなる増加を予期しなければならない(R.B.Moreland et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.2004,308,797)。
【0003】
BPH/LUTSが臨床的に非常に重要であるにも関わらず、この疾患の原因論および発症機序は、ほとんど解明されていない。加齢に加えて、アンドロゲンの体内生産は、BPHが発症するための重要な必須条件である。従って、BPHは、一般に、加齢に伴うホルモン再構成の結果として発症する老人の内分泌障害と考えられている。
【0004】
組織学的観点から見ると、BPHは、前立腺の上皮部および間質部の良性腫瘍である。膀胱の出口付近の尿道における前立腺の局在化のため、頻尿や夜間多尿といった症状および不完全遅延性排尿を伴う尿路閉塞が、前記臓器の肥大により発症する。進行期においては、尿停滞の結果として、腎不全および尿毒症が発症することがある。さらに、分泌物の停滞および尿閉のため、うんざりする不快感のみならず刺激性排尿異常の原因でもある無菌性前立腺炎、うっ血および再発性尿路感染症が発症する。
【0005】
平滑筋の緊張増加で説明されるBPH/LUTSには、前立腺の肥大およびそれが原因で起こる機械的排尿異常に因る静的要素に加えて、動的要素が関与していると思われる。両要素の関与の程度は、患者によって大きく異なり得る。これは、前立腺の大きさと症状の重症度との相関関係はほんのわずかであることを示している(C. G. Roehrborn and D. A. Schwinn, J. Urol. 2004, 171, 1029)。平滑筋の緊張の基本的に同様の変化は、男性のみならず女性の下部尿路の他の病気、例えば緊張性尿失禁、急迫性尿失禁および排尿障害にも関与している。
【0006】
BPHという言葉が前立腺肥大の組織学的または巨視的診断に使用されるのに対し、それに付随するLUTS、例えば尿意切迫感、頻尿および夜間多尿ならびに不完全遅延性排尿は、患者に対して使用される。BPHに対する治療手段は、静観する姿勢(「静観」)から外科的な前立腺切除までさまざまである。年間約33,500人のドイツの男性が受ける経尿道的前立腺切除は、その効果により、外科手技の王道と考えられている。しかしながら、侵襲的治療法により罹患または死亡するという高い危険性は、多くの患者、とりわけBPHの重症度の低い患者には受け入れられない。これにより、薬剤を用いた治療法の重要性が高まっていることの説明がつく。それほど深刻でない病期において使用されることが多い植物性医薬品に加えて、様々な薬剤としては、主にα−拮抗薬および5−α−還元酵素阻害剤(E. Koch, Planta Med. 67, 489 to 500 (2001))が挙げられる。
【0007】
α−拮抗薬の使用は、BPH/LUTSの動的要素は、交感神経ニューロンからのノルアドレナリンの放出の促進によって仲介される前立腺平滑筋の緊張増加によって生じるという見解に基づいている。今日、主にα1A−アドレナリン受容体およびα1D−アドレナリン受容体が前立腺で発現すると一般に認識されている。臨床研究の結果は、α−受容体遮断薬は、症状および最大尿流に臨床的に有意な改善をもたらすことを示している。α−受容体遮断薬の特別な利点とは、効果の発現が速いことである。しかしながら、現時点では、それらα−受容体遮断薬が前立腺のさらなる肥大を妨げるという説得力のある証拠は無い。α−受容体遮断薬の副作用としては、めまい、頭痛、脱力感、起立性調節障害、鼻炎および性機能障害(逆行性射精)が挙げられる。これらの副作用は、中枢神経系(CNS)および循環系におけるα−受容体遮断薬の作用によって一般に生じる。主にα1A−受容体およびα1D−受容体(例えばタムスロシン)を阻害するサブタイプ特異α−受容体遮断薬の開発は、副作用の発生頻度および重症度を低減させることを目的としている。しかしながら、非選択性α−拮抗薬アルフゾシンは、興味深いことに、ウロ選択性α−受容体遮断薬と一般に呼ばれているタムスロシンと同様の良好な副作用プロフィールを示す。薬理作用だけでなく、薬物速度論的特性もウロ選択性に大きく貢献していると思われる。従って、例えば、血圧に対する影響は、徐放性製剤によって妨げることができる。さらに、α1B−受容体だけでなく、α1A−受容体も、血圧のコントロールに関与している(R.B.Moreland et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.308,797,2004;C.G.Roehrborn and D.G.Schwinn,J.Urol.171,1029,2004).これにより、ウロ選択性α−受容体遮断薬が開発される可能性が制限されている。
【0008】
一般に、BPHは、生物学的に有効な男性ホルモンのみが存在する場合に発症する。BPHは、40歳になる前に去勢を受けなければならなかった男性、あるいは、脳下垂体の機能低下に因って生殖腺におけるアンドロゲンの形成が全く無いかまたは不十分である男性には事実上見つかっていない。同様に、前立腺の正常な発達およびBPHの発症は、遺伝的欠損の場合またはアンドロゲン受容体が存在しない場合(例えば、睾丸性女性化症)には起こらない。生物学的に最も重要なアンドロゲンは、5−α−還元酵素の影響下においてテストステロンから局所的に形成されるジヒドロテストステロン(DHT)である。DHTはBPHの上皮成分を主に刺激するので、5−α−還元酵素を抑制することによって腺成分の成長の停止または萎縮を実現することができる。しかしながら、BPHの間質成分は実質的に全く影響を受けない。例えば、5−α−還元酵素阻害剤フィナステライドの摂取が前立腺DHT濃度を最大85%まで下げるのに対し、前立腺の大きさの平均減少率はわずか約20%であり、最大で12ヶ月の期間をさらに必要とする。この効果は、実質的に、治療の開始時に前立腺の体積が40mlよりも大きい場合にのみ臨床的関連がある。
【0009】
アンドロゲンは、前立腺の正常な発達および機能ならびにBPHの発症において中心的な役割を担うが、男性ホルモンのみでは、前立腺細胞の成長を誘発するには不十分である。多数の実験的調査は、生体内のアンドロゲンの成長促進効果は、成長因子の局所合成によって仲介されること、および、前立腺の上皮および間質要素内の成長制御のパラクリンおよびオートクリン機構における機能不全は、PBHの発症に実質的に関与していることを示している。さまざまな成長因子(例えば、上皮成長因子[EGF]、形質転換成長因子−α[TGF−α]、TGF−β、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、ケラチノサイト成長因子[KGF]、神経成長因子[NGF]、インスリン様成長因子I[IGF−1]等)およびそれらの受容体が実際に前立腺において検出されている。BPHは、病因において重要な役割を果たすと思われる炎症反応を伴うことが非常に多いため、例えば線維芽細胞、血小板および白血球によって放出される血小板由来成長因子(PDGF)は、恐らく、前立腺細胞の増殖にとって特に重要であると思われる(C.J.Vlahos et al.,J.Cell.Biochem.52,404 to 413(1993))。
【0010】
成長因子は、それらの生物学的作用を、固有チロシンキナーゼ活性を有する、細胞の表面の特異受容体と結合することによって仲介する。リガンドを結合した後、チロシン残基のリン酸化反応が細胞内受容体ドメイン内で生じ、ひいては、これにより細胞内反応の連鎖が誘発される。タンパク質合成およびDNA合成の促進および細胞増殖の活性化がこれらの反応に含まれる。従って、受容体チロシンキナーゼの阻害剤は、細胞増殖の増加を伴う病気(例えば、癌、アテローム性動脈硬化症、乾癬)の治療用の新しい薬剤の開発のための有望な物質と考えられている(A.Levitzki and A.Gazit,Science 267,1782 to 1788(1995))。しかしながら、これまで、BPHの治療におけるこの作用形態にはほとんど関心が向けられていなかった。
【0011】
近年、BPH/LUTSと勃起障害(ED)の発症との間には密接な相関関係が存在することが、異なる疫学的調査において明らかにされた。例えば、MSAM−7調査において、50〜80歳のLUTSを患っていない男性のEPの罹患率は約25%であることが示されている。この割合は、症状の重い患者の場合には、80%を上回る。さらに、EDの発生頻度が、他の同時に存在する病気、例えば高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、狭心症および鬱病によって高くなる(M.Shabbir et al.,Curr.Med.Res.Opin.20,603,2004)。
【0012】
陰茎の弛緩は、ノルアドレナリンの、陰茎海綿体中のα1A−受容体およびα1B−受容体への結合によって主に維持される。従って、α−受容体遮断薬(例えば、ドキサゾシンおよびタムスロシン)による治療によって、ED患者の性機能に改善が見られたことは驚くことではない。その一方、勃起は、一酸化窒素(NO)の血管拡張効果によって主に仲介される。NOは一酸化窒素ニューロンから放出され、陰茎海綿体中の内皮細胞によってさらに合成される。グアニル酸シクラーゼを刺激することおよびcGMPの合成を増加させることによって、NOは、平滑筋細胞を弛緩させる。これにより、α−拮抗作用とα−拮抗作用の組み合わせは、α−受容体の阻害は、直接、筋肉の弛緩をもたらし、そしてシナプス前α−受容体の阻害は、一酸化窒素ニューロンからのNOの放出の促進を伴うので、EDの治療に特に好ましいと見なされる(http://www.bioportfolio.com/leaddiscovery/mdi002.htm)。
【0013】
EDの治療は、cGMPの分解を抑制するPDE5抑制剤であるシルデナフィルの開発によって激変した。しかしながら、シルデナフィルは、さまざまな副作用(例えば、頭痛、視覚障害、消化不良、血行力学的効果)を引き起こす。さらに、その効果は、治療期間が長引くにつれて減少するということが証明されている(M.Shabbir et al.,Curr.Med.Res.Opin.20,603,2004)。さらに、シルデナフィルは、病気の重症度および禁忌により、患者の30〜50%が使用することができない。現時点では、新しいPDE5抑制剤を使用した臨床経験はまだ少ない。また、PGEは、EDの治療用の活性物質であるが、尿道経由で注入または投与されなければならない。さらなる治療の選択肢として、中枢神経系においてドーパミン作動薬として作用するアポモルヒネが利用できる。アポモルヒネは、比較的軽度のED患者に適している。一般に低い副作用率(吐き気、心臓血管系作用)を有するが、肝臓の初回通過代謝を回避することが求められる舌下投与は、やや不都合であると見なされる(R.B.Moreland et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.2004,308,797)。従って、副作用の少ない、EDの治療に効果的な薬剤に対する需要はまだ大きい。
【0014】
1999年、専門家たちは、米国における性機能障害を持つ女性の割合(約43%)は、男性の割合(約31%)よりもはるかに高いことを示した出版物(E.O.Laumann et al.,JAMA 281,537,1999)に驚いた。一般に、女性の性機能障害は、4つのカテゴリー、すなわち、性的欲求の欠如または性的嫌悪、性的興奮の低下、痛みを伴う性交(膣痙、性交疼痛)およびオルガスム障害に分類される。これらの異なる障害の割合は、30%(性的欲求の欠如)、20%(性的興奮の低下)、10〜15%(痛みを伴う性交)および10〜15%(オルガスム障害)であり、これらの異なる種類の性機能障害の間には非常に密接な関係が存在する。
【0015】
男性および女性の正常な性機能は、反応サイクルによって制御される。前記反応サイクルは、精神的切望(性的欲求)、効果的な骨盤区域のうっ血(男性の場合は勃起、女性の場合は陰核の膨張および膣の潤滑)、オルガスム、そして最後に消散(resolution)から成る。この全体の流れは、副交感神経系と交感神経系の間のバランスのとれた均衡に依存する。これにより、生殖器のうっ血が重要となる。陰茎と陰核の間には解剖学的構造および海綿体の神経支配に関して類似性があるので、勃起障害の治療に効果的な薬理学的機構が、女性の性的障害、とりわけ性的興奮の低下の治療にも利用することができることが予想される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、α−アドレナリン受容体およびα−アドレナリン受容体を阻害することによって、および、上皮細胞および間質細胞の成長因子の媒介による増殖を阻害することによってBPHの動的要素と静的要素の両方に積極的に作用する薬剤を提供し、ひいては、BPH症候群、LUTS、EDおよび男性および女性の他の性機能障害ならびに高コレステロール血症、膀胱の機能障害、心臓血管疾患および疼痛状態の総合的治療を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、前記目的は、男性および女性の下部尿路疾患(例えば、良性前立腺過形成、LUTS、前立腺癌、排尿障害、尿閉、緊張性尿失禁および急迫性尿失禁)、男性および女性の性的障害(例えば、インポテンス、勃起障害、早漏、性欲障害、不感症および無オルガスム症)、脂質代謝障害(例えば、高コレステロール血症、脂質異常症および高トリグリセリド血症)、心臓血管疾患(例えば、内皮機能不全、筋緊張亢進、動脈硬化症、および血管拡張またはバイパス手術後の再狭窄)、および片頭痛、神経因性疼痛(例えば糖尿の場合)、幻肢痛、異痛症、組織損傷の後または炎症の場合の痛み(例えばヘルペス後神経痛)のごとき急性および慢性疼痛状態の治療および予防のための、コリナンテ種、好ましくはコリナンテパチセラスの樹皮からの抽出物の使用によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のさらなる対象は、有効成分の割合のバランスがとれているコリナンテ種の樹皮、好ましくはコリナンテパチセラスの樹皮からの抽出物、本発明による抽出物を含有する、下部尿路疾患、性的障害、脂質代謝障害、心臓血管疾患および急性および慢性疼痛状態の治療および予防のための薬剤および食品、および経口投与、非経口投与または局所投与型医薬品である。本願明細書において、「食品」という用語は、特にダイエット食品、栄養補助製品、および医療食品およびダイエット補助食品を指す。
【0019】
コリナンテパチセラス(アカネ科)は、西アフリカ(シエラレオネ共和国〜ザイール共和国)の常緑熱帯雨林に生える、高さが15〜20m、幹径が最大で60cmの木である。この木は、建築目的だけでなく、モルタルおよび櫛の製造にも広く利用されている。その幹の乾燥樹皮は伝統薬に広く用いられている。前記樹皮は、噛めば風邪に効き、ハンセン病、胃の病気、下痢または心臓および腎臓の病気の場合には煎じ薬として用いられる。前記樹皮は、マラリアの場合には解熱薬として、および、媚薬および覚醒剤として、お茶の形態で用いられる。
【0020】
コリナンテパチセラスの樹皮は、約6%のインドールアルカロイドを含有する。インドールアルカロイドは、コリナンテインアルカロイド(例えば、ジヒドロコリナンテイン、コリナンテイン、コリナンテイジン)またはヨヒンビンアルカロイド(例えば、コリナンチン、α−ヨヒンビン)の群に分類されている。前記特定のコリナンテアルカロイドの場合、そのα−アドレナリン受容体拮抗作用に着目する。さらに、哺乳類細胞の中程度の細胞毒性および熱帯熱マラリア原虫に対するリーシュマニア活性が報告されている(D. Staerk et al., Planta Med. 2000, 66, 531, 2000)。
【0021】
【化1】

【0022】
1971年の特許明細書は、コリナンテパチセラスの樹皮からの水性乾燥抽出物の降圧作用および鎮静作用を主張している(BE758049, Omnium Chimique SA, 1971)。
【0023】
驚くべきことに、コリナンテ種、とりわけコリナンテパチセラスの樹皮からのアルコールまたはケトン、好ましくはエタノール水性抽出物が、α−アドレナリン受容体拮抗作用およびα−アドレナリン受容体拮抗作用に加えて、さまざまなさらなる生物学的作用、例えば細胞増殖阻害作用、内皮依存性血管弛緩作用、コレステロール低下作用、鎮痛作用および抗酸化作用を示すことがこれまでに分かっている。これらの異なる作用は、さまざまな病状に対するこれらの抽出物の治療的使用を示唆している。前記病状には、BPH、LUTS、男性および女性の性機能障害、膀胱の機能障害、高コレステロール血症、動脈硬化症、内皮機能不全および疼痛状態が含まれる。これらの兆候に対する本発明による抽出物の効果は、下記薬理学的研究によって支持される。これらの研究において、本発明による抽出物の効果にとって、前記抽出物がアルカロイドに加えてポリフェノールを活性成分として含有していなければならないということが必要不可欠であることが分かった。これにより、「ポリフェノール」という用語は、モノマー、オリゴマーまたはポリマー形態で存在することができる少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物を指す。両方の化合物を含有する抽出物は、総体的な効果に関して、コリナンテパチセラスからの個々の成分よりも優れていることは明らかである。
【0024】
ポリフェノールとアルカロイドとを含有するコリナンテ種の樹皮からの本発明による抽出物は、下記方法、すなわち、
(a)コリナンテ種の乾燥させて粉末にした樹皮を、有機溶媒または水、または1種以上の有機溶媒および/または水の混合物で、10〜100℃の温度で抽出する工程、
(b)抽出された植物材料を、例えばろ過によって、抽出物溶液から分離する工程、
(c)任意に、前記抽出された植物材料を工程(a)に従って溶媒で再抽出し、工程(b)に従って分離する工程、
(d)工程(b)および(c)で得られた抽出物溶液を混ぜ合わせる工程、および
(e)工程(d)で混ぜ合わせた溶液を蒸発および乾燥させることによって、乾燥抽出物を得る工程、
に従って得られる。
【0025】
工程(a)における好ましい有機溶媒はアルコールまたはケトンであり、前記アルコールはエタノールであることが好ましい。エタノールと水との混合物が特に好ましい。工程(a)における抽出方法として、浸軟および浸透を好ましくは考慮に入れてもよい。原則として、工程(c)は一度だけ実施されるが、工程(c)をウェーブしたり、複数回実施することも可能である。工程(e)における乾燥は、室温または高温において、凍結乾燥や真空乾燥のごときそれ自体が周知である方法によって行うことができる。
【0026】
好ましいコリナンテ種として、コリナンテパチセラスが用いられる。
【0027】
コリナンテ種の樹皮からの本発明による抽出物は、ポリフェノールとアルカロイドの両方を、使用目的にとってバランスのとれた割合で含有する。これにより、ポリフェノールの含有率は、好ましくは少なくとも15%、特に好ましくは少なくとも24%であり、アルカロイドの含有率は、好ましくは少なくとも8%、特に好ましくは少なくとも12%である。化合物であるエピカテキン、プロシアニジンB2およびプロシアニジンC1を、代表的なポリフェノールとしてコリナンテパチセラスから単離した。しかしながら、コリナンテポリフェノールは、これら3種類の化合物に限定されるわけではない。
【0028】
【化2】

【0029】
ポリフェノールの含有量の測定は、Folin−Ciocalteuに従って、全フェノール含有量を測定することによって行った。更にあるいは代わりに、エピカテキン、プロシアニジンB2およびプロシアニジンC1の含有量も求めることができる。前記アルカロイド含有量は、個々のアルカロイド、すなわち、コリナンチン、α−ヨヒンビン、コリナンテイン、ジヒドロコリナンテインおよびコリナンテイジンの含有量の合計である。
【0030】
本発明による抽出物および抽出物画分は、液滴、粉末、顆粒、錠剤、コーティングされた錠剤(糖衣錠)、カプセルまたは注射液の形態で投与することができ、あるいは、クリーム、軟膏、坐薬、傷当てまたは同様の製剤の形態で局所適用することも可能である。
【0031】
錠剤を調製する場合、抽出物を、ラクトース、セルロース、二酸化ケイ素、クロスカルメロースおよびステアリン酸マグネシウムのごとき好適な薬学的に許容可能なアジュバントと混ぜ合わせ、プレスして錠剤にする。得られた錠剤に、任意に、例えばヒドロキシメチルプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、着色剤(例えば、二酸化チタン、酸化鉄)および滑石を原料とする好適なコーティングを施してもよい。
【0032】
本発明による抽出物はカプセルに充填してもよく、その場合、任意に、安定剤、充填剤などのごときアジュバントを添加してもよい。
投与量としては、1日当たり、5〜2,000mg、好ましくは10〜1,000mg、特に好ましくは50〜500mgの抽出物を投与する。
【実施例】
【0033】
コリナンテ種の樹皮からの本発明による抽出物の効果は、下記実験によって支持される。
【0034】
薬理学的研究
α−アドレナリン受容体結合特性
コリナンテ抽出物およびコリナンテ抽出物の画分のα−アドレナリン受容体との作用の試験を、ラットの脳細胞膜を用いた受容体結合分析によって行った。細胞膜を調製するために、オスのSD(Sprague−Dawley)ラット(150〜250g)を炭酸ガスナルコーシスで安楽死させ、脳(小脳以外)を取り出す。付着している血液および髄膜を取り除いた後、直ちに前記脳を、その体積の10倍のよく冷えた均質化緩衝液(50mM Tris−HCl、pH 7.4)に入れ、よく冷えたガラス製ホモジナイザーを用いて均質化した。細胞ホモジネートを、50,000g(4℃)で10分間、遠心分離機にかけ、ペレットをよく冷えた均質化緩衝液に再分散させた。さらなる遠心分離(4℃で10分間、50,000g)後、細胞膜を、その体積の10倍の結合緩衝液(50mM Tris−HCl、0.5mM Na−EDTA、0.01%アスコルビン酸、10μMパージリン、pH 7.4)に入れ、複数に分けて(1ml)80℃で保存した。
【0035】
本発明による抽出物またはアルカロイド画分またはポリフェノール画分を、DMSOを用いて150μlの結合緩衝液に溶かし、50μlの脳細胞膜(2.5mg/mlのタンパク質)と50μlの放射性リガンドと共に、室温で45分間、結合緩衝液中で培養した。H−プラゾシン(300pM、比放射能 80Ci/mmol)を、α−アドレナリン受容体との相互作用に関する分析のための放射性リガンドとして用いた。2μMフェントラミンの存在下において、非特異的結合を測定した。α−アドレナリン受容体結合の測定のための放射性リガンドとして、H−クロニジン(1μM、比放射能 55.5Ci/mmol)を用いた。α−アドレナリン受容体への非特異的結合の分析を、10μMヨヒンビンの存在下において行った。その後、反応混合物を、ポリエチレンイミン(蒸留水中の0.2%)で一晩前処理したガラス繊維フィルター(種類:GF/B)でろ過した。前記フィルターを3mlのよく冷えた結合緩衝液を用いて2度洗浄した後、前記フィルターを60℃で24時間乾燥させた。前記フィルターをベータカウンター内の4mlのシンチレーション液(フィルターに安全な、Zinsser−Analytik)に移した後、結合放射能の測定を行った。H−プラゾシンのα−アドレナリン受容体への特異的結合またはH−クロニジンのα−アドレナリン受容体への特異的結合の阻害率を、同時に調査した溶媒対照と比較して計算した。半値阻害濃度(IC50値)の測定を、非線形回帰計算によって行った。
【0036】
調査の結果を表1にまとめた。コリナンテの樹皮からの本発明による抽出物は、H−プラゾシンのα−アドレナリン受容体への結合とH−クロニジンのα−アドレナリン受容体への結合の両方を阻害することが分かる。この作用は、基本的に、アルカロイドの存在に基づくものである。
【0037】
【表1】

【0038】
成長因子の媒介による細胞増殖の阻害の分析
成長因子によって誘発される細胞増殖に対する総体的な抽出物または抽出物画分の影響を、マウスのNIH−3T3線維芽細胞について分析した。前記細胞を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMグルタミンおよび抗生物質/抗真菌溶液が添加されたダルベッコの改質イーグル培地(DMEM)で培養した。培地は、週に2回、定期的に交換した。最後の継代培養から4日後、トリプシン/EDTAを用いて、細胞培養瓶の底から接着細胞を引き離し、0.5%FCSを添加したDMEM中に、1ml当たり50,000個の細胞の密度で再分散させた。その後、前記細胞を、1ウェル当たり200μlの量で、マイクロタイタープレート(F型)に移し、37℃でさらに96時間培養した。培地をFCSを含有していないDMEMで交換した後、10ng/mlの組み換えヒト血小板誘導成長因子BB(PDGF−BB)を60分後に添加した。その後、前記細胞を、培養器において、37℃で24時間、再度培養した。前記細胞を集菌する6時間前に、1ウェル当たり、0.5μCiメチル−H−チミジンを添加した。培養時間の終了後、前記マイクロタイタープレートを400gで5分間遠心分離し、細胞上清を慎重にピペットで採取した。細胞をトリプシン/EDTAを用いて底から底から引き離した後、細胞収穫器(Inotech)を用いてガラス繊維フィルター(タイプG−10、ICH−201)で収穫した。新しく合成されたDNAへのH−チミジンの取り込みの測定は、線形分析装置(LB2842、Berthold)を用いて行った。抽出物および抽出物画分の存在下における細胞増殖の阻害の測定は、個々の場合の同時に分析した溶媒対照と比較して行った。
【0039】
その結果を表2にまとめた。本発明による抽出物の細胞増殖阻害効果は、主にポリフェノール画分に因るものであることがこれらの結果から分かる。
【0040】
【表2】

【0041】
血管弛緩特性の分析
血管弛緩作用を分析するために、オスのSprague−Dawleyラット(Janvier,Le Genest,France)の単離した大動脈の収縮に対する本発明による抽出物および抽出物画分の影響を調べた。除去した直後、前記組織を、タイロード溶液(NaCl 118.2mM、NaHCO: 24.8mM、KCl: 4.6mM、CaCl: 2.5mM、MgSO 1.2mM、KHPO 1.2mM、グルコース 10mM)に移し、付着している結合組織を取り除いた。その後、厚さが約4mmの血管輪を作製した。一部の実験では、内皮を取り除いた。このために、前記大動脈輪をスチールカニューレに取り付け、前記スチールカニューレに軽く押し付けた後、回すと同時に長手方向に動かすことによって最内血管層と取り除いた。前記大動脈輪を、タイロード溶液で満たした組織浴(20ml; Hugo Sachs,Hugstetten)に、メタルフックを用いて固定した。培地(37℃)にカーボゲン(carbogen)ガス(pH 7.4)を恒久的に供給した。フェニレフリン(PE)を用いた前記組織の前収縮後の血管弛緩の測定についての実験の場合、下記物質、すなわち、プロパノロール−HCl(6μM、RBI)、コルチコステロン−HCl(6μL、Sigma)およびデシプラミン(0.6μM、Sigma)をタイロード溶液に添加した。U−46619を用いた刺激後の弛緩についての試験において、インドメタシン(2.8μM、Sigma)を添加した。前記組織の張力を、1.0gの予備負荷をかけた状態で力変換器(Statham UC2、Hugo Sachs)を用いて等尺的に測定し、4チャンネルライタ(Linearcorder、Graphtec)を用いて記録した。30分間の平衡相の後、4回の収縮をPE(0.15μg/ml、EK 0.74μM)によって15分の間隔で誘発することによって、再現性のある組織収縮を得た。4回目のPE添加の後、検体が最大収縮に達した後(蓄積量効果)、濃度を高めた。実験の最後に、血管弛緩の内皮依存性を、アセチルコリン(0.25μg/ml、EK 1.38μM)を与えることによって試験した。
【0042】
基本的に同様の試験手順を、内皮の無い大動脈輪に対する弛緩作用を試験する際にも実施した。30分間の平衡の後、3回の収縮をPE(0.15μg/l、EK 0.74μM)によって15分の間隔で誘発した。3回目のPEの添加をして最大収縮に達した後、アセチルコリン(0.25μg/ml、EK 1.38μM)を与えることによって、内皮を完全に除去した。アセチルコリンを洗い流した後、25分後にPE収縮(0.15μg/ml、EK 0.74μM)を誘発し、その後、検体の濃度を高めた。
【0043】
PEに関して前述したように、U−46619(0.022μg/ml、EK 0.063μM)またはKCl(3mg/ml、EK 40mM)で収縮を誘発した後の弛緩作用の分析を同様の方法で行った。作動薬に対する抽出物の弛緩作用をパーセンテージとして測定した。Prism 3.0ソフトウェア(GraphPad Software Inc.)を用いた濃度効果曲線の非線形回帰分析によって、IC50値を求めた。
【0044】
実験の結果を下記表に示す。PEによる刺激の後の本発明による抽出物の血管弛緩作用は、アルカロイド含有画分とアルカロイド非含有画分の両方によって仲介されることはデータから明らかである。アルカロイド非含有画分の弛緩作用は、無傷内皮の存在に完全に依存する。アルカロイド非含有画分の内皮依存性血管弛緩作用は、U−46619またはKCl脱分極による血管輪の前収縮後にも観察され、NOの内皮放出の増加に基づいていることは明らかである。その一方、アルカロイド画分の効果は、α−アドレナリン受容体遮断特性を有する成分の存在に主に基づいており、そのため、内皮を取り除いた後でも求めることが可能である。
【0045】
【表3】

【0046】
高コレステロール血症抑制作用の分析
血漿コレステロール値に対する本発明による抽出物の影響を、Triton WE1339誘発高コレステロール血症をもつオスのNMRIマウス(Janvier、Le Genest、France)で調べた。前記マウスを、標準環境条件(21℃、60%の相対湿度、明所、暗所をそれぞれ12時間)下に置き、飲料水およびペレット化した餌(Altromin 1324)を自由に摂取させた。Triton−WR1339(400mg/kg、Sigma)を生理食塩水に溶かし、尾静脈より前記動物に注入した(10ml/kg)。前記実験動物の経口治療については、抽出物を0.2%寒天懸濁液に混ぜ、Triton−WR1339を注入する24時間前および1時間前ならびにTriton−WR1339を注入してから6時間後に強制経口投与によって前記動物に投与した(10ml/kg中、450mg/kg)。対照群の動物は、キャリア(0.2%寒天、10ml/kg)のみで治療した。Triton−WR1339を注入する1時間前およびTriton−WR1339を注入してから6時間後、24時間後および48時間後に、ヘパリン化毛細血管を用いて前記動物の尾静脈から血液サンプル(32μl)を採取し、その直後にコレステロール濃度を測定した(Reflotron、Boehringer Mannheim)。
【0047】
図1は、Triton WR1339誘発高コレステロール血症をもつマウスのコレステロール値に対する、本発明による抽出物(450mg/kg)による経口治療の影響を示す(#は、対照(t−test)と比較してP<0.05であることを意味する)。実験の結果は、実施例1で得られた本発明による抽出物による治療によって、増加したコレステロール値が著しく減少することを示している。
【0048】
鎮痛効果の分析
鎮痛効果を分析するために、ホルマリン試験をマウスに使用した。マウスの後足にホルマリンを局所注射することによって、2つの時間的に離れた相で生じる痛みに対する感受性が高まる。第1の相は、物質P、ブラジキニンおよび興奮性アミノ酸(例えば、グルタミン)の放出に因る疼痛受容体の直接刺激によって仲介される。続く第2の相では、中枢神経系における局所炎症反応および機能変化をもたらす組織内でのヒスタミン、セロトニンおよびプロスタグランジンの蓄積が生じる。実験において、体重が約22〜26gのオスのNMRIマウス(Janvier,Le Genest,France)を使用した。前記マウスに、本発明による抽出物または抽出物画分を経口投与した。1時間後、20μlの3.5%ホルマリン溶液を左足の裏に注射した。その後、前記マウスを個別にワイヤーケージに入れ、疼痛反応(足を舐める)の数を45分間にわたって記録した。疼痛抑制作用を、同時に試験した対照群と比較して測定した。この群のマウスは、キャリア媒体(0.2%寒天懸濁液、10ml/kg)のみで治療した。
【0049】
表4に示す結果は、コリナンテ抽出物に含有されるアルカロイドによって実質的に仲介されるコリナンテ抽出物の強い鎮痛効果を示している。
【0050】
【表4】

【0051】
抗酸化性の分析
脂質の自動酸化は、発光に関連する。この極めて弱い化学発光の測定は、過酸化物の定量化および酸化防止剤の効力の評価に利用することができる。本調査において、脂質の豊富な組織としてオスのマウス(NMRI;20〜30g;Centre d’Elevage Janvier,Le Genest−Saint Isle,France)の脳組織を用いた。脳を取り出した後、よく冷えたリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH 7.4)で洗浄し、髄膜および残った血液を取り除いた。前記組織サンプルを、その4倍の量(v/w)のPBS中で均質化し、1,000gおよび4℃で10分間遠心分離した。上澄みを、同じ緩衝液で直ぐに3倍の量に希釈し、氷の上で保存した。250μlの希釈した上澄みを試験管に移し、6チャンネル照度計(Multi−Biolumat LB 9505 C,Berthold,Bad Wildbad)において37℃で10分間培養した。2.5%DMSOを含有するPBS中の化合物IIを25μl添加した後、さらに10分間、培養を続けた。その後、化学発光(CL)の強度を60分間測定した。自動酸化の抑制率を、同時に試験した溶媒対照(2.5%DMSOを含有するPBS)と比較して計算した。表5にまとめた結果から分かるように、本発明による抽出物は、主にポリフェノール画分によって仲介される強い抗酸化性を示す。
【0052】
【表5】

【0053】
Folin−Ciocalteu法によるフェノールの総含有量の測定
なめし剤(DAB)のための薬局方法と同様にしてモリブデン−ウォルフラム試薬と反応させた後、フェノールの総含有量の測定を光度測定によって行う。このために、抽出物を水性エタノールに溶かし、炭酸ナトリウム溶液でアルカリ化し、そしてモリブデン−ウォルフラム試薬を添加する。遠心分離後、上澄み液の吸光度を水に対して720nmで測定する。計算はエピカテキンに基づく。
【0054】
実施例1 コリナンテパチセラスの樹皮からの本発明による乾燥抽出物
500gのコリナンテパチセラスの粉末樹皮を、3.5kgの60重量%エタノールを用いて、60℃で1時間、2回撹拌した。Seitz Supra 1500でろ過した後、混ぜ合わせた抽出物溶液を、約50℃および減圧下において蒸発させ、50℃で真空乾燥させた。183.8g(36.8%)。
得られた抽出物は、14.62%のアルカロイド(4.75%のコリナンチン、0.81%のα−ヨヒンビン、3.86%のコリナンテイン、1.91%のジヒドロコリナンテインおよび3.29%のコリナンテイジン)を含有し、(2.66%のエピカテキン、3.05%のプロシアニジンB2および1.25%のプロシアニジンC1を含む)26.8%の全フェノール含量を有していた。
【0055】
比較例1 ポリフェノール画分(アルカロイド無し)
4kgのエタノール(50容量%)中の実施例1による445gの乾燥抽出物の溶液を、3.4Lの強酸性イオン交換体(Merck I)を備えたカラムに設置し、エタノール(50容量%)で溶出した。9Lの溶出液を回収し、50℃および減圧下において蒸発させ、乾燥キャビネット内で50℃および12mbarで乾燥させた。352.4g(79.2%)。
得られた抽出物は、アルカロイドを全く含有せず(コリナンチン、α−ヨヒンビン、コリナンテイン、ジヒドロコリナンテインおよびコリナンテイジンは検出できなかった)、(2.57%のエピカテキン、2.24%のプロシアニジンB2および0.76%のプロシアニジンC1を含む)28.4%の全フェノール含量を示した。
【0056】
比較例2 アルカロイド画分
比較例1のイオン交換体カラムを、50容量%のエタノールと(25%の濃度を有する)5%のNH溶液との混合物を用いてさらに溶出した。16Lの溶出液を回収し、実施例2と同様にして蒸発および乾燥させた。46.8g(10.5%)。
得られた抽出物は、69.28%のアルカロイド(24.01%のコリナンチン、2.25%のα−ヨヒンビン、19.05%のコリナンテイン、9.56%のジヒドロコリナンテインおよび14.41%のコリナンテイジン)を含有し、13.0%の全フェノール含量を有していた(エピカテキン、プロシアニジンB2およびプロシアニジンC1は検出できなかった)。
【0057】
実施例2 錠剤
コリナンテパチセラスの樹皮からの乾燥抽出物(実施例1で得られた本発明による抽出物)をアジュバントと混ぜ合わせ、プレスして錠剤にした(錠核 = 品目1〜6)。前記錠剤に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを原料とするコーティングを施した(品目7〜10)。
【0058】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】Triton WR1339誘発高コレステロール血症をもつマウスのコレステロール値に対する、本発明による抽出物による経口治療の影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノールとアルカロイドとを含有するコリナンテ種の樹皮からの抽出物であって、下記製造方法、すなわち、
(a)コリナンテ種の乾燥させて粉末にした樹皮を、有機溶媒または水、または1種以上の有機溶媒および/または水の混合物で、10〜100℃の温度で抽出する工程、
(b)抽出された植物材料を、例えばろ過によって、抽出物溶液から分離する工程、
(c)任意に、前記抽出された植物材料を工程(a)に従って溶媒で再抽出し、工程(b)に従って分離する工程、
(d)工程(b)および(c)で得られた抽出物溶液を混ぜ合わせる工程、および
(e)工程(d)で混ぜ合わせた溶液を蒸発および乾燥させることによって、乾燥抽出物を得る工程、
によって得られ得る抽出物。
【請求項2】
前記有機溶媒がアルコールまたはケトンである、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
前記アルコールがエタノールである、請求項2に記載の抽出物。
【請求項4】
前記抽出溶媒が、エタノールと水との混合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の抽出物。
【請求項5】
前記コリナンテ種として、コリナンテパチセラス(corynanthe pachyceras)が用いられる、請求項1〜4のいずれかに記載の抽出物。
【請求項6】
ポリフェノールの含有量が少なくとも15%であり、アルカロイドの含有量が少なくとも8%である、請求項1〜5のいずれかに記載の抽出物。
【請求項7】
ポリフェノールの含有量が少なくとも24%である、請求項6に記載の抽出物。
【請求項8】
アルカロイドの含有量が少なくとも12%である、請求項6または7のいずれかに記載の抽出物。
【請求項9】
下部尿路疾患、性的障害、脂質代謝障害、心臓血管疾患および急性および慢性疼痛状態の治療および/または予防のための、請求項1〜8のいずれかに記載の抽出物の使用。
【請求項10】
前記下部尿路疾患は、良性前立腺過形成、LUTS、前立腺癌、排尿障害、尿閉、緊張性尿失禁および急迫性尿失禁から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記性的障害は、インポテンス、勃起障害、早漏、性欲障害、不感症および無オルガスム症から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記脂質代謝障害は、高コレステロール血症、脂質異常症および高トリグリセリド血症から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項13】
前記急性および慢性疼痛状態は、片頭痛、神経因性疼痛、幻肢痛、異痛症、組織損傷の後および炎症の場合の痛みから選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項14】
前記心臓血管疾患は、内皮機能不全、筋緊張亢進、動脈硬化症、および血管拡張またはバイパス手術後の再狭窄から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに記載の抽出物を含有する、下部尿路疾患、性的障害、脂質代謝障害、心臓血管疾患および急性および慢性疼痛状態の治療および/または予防のための薬剤または食品。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれかに記載の抽出物と好適なアジュバントとから成る、経口投与、非経口投与または局所投与型医薬品。

【図1】
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【公表番号】特表2009−514916(P2009−514916A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539325(P2008−539325)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010663
【国際公開番号】WO2007/054269
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(500287282)ドクター.ヴィルマー シュワーベ ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー (7)
【Fターム(参考)】