説明

コルゲートチューブ装着治具

【課題】 電線にコルゲートチューブを的確、容易に装着することができ、構造が簡単で取り扱いが容易なほか、コストの安価なコルゲートチューブ装着治具を提供する。
【解決手段】 電線に長手方向にスリットを有するコルゲートチューブを装着するコルゲートチューブ装着治具10であって、装着治具本体12に、コルゲートチューブ内に挿入されてコルゲートチューブを拡径する第1、第2の拡径部材14、16がV型に、且つ、前記第1、第2の拡径部材14、16がコルゲートチューブ内に挿入されたとき、拡開された前記スリットの縮閉作用による締付力で開き角度が狭まるように設けられ、コルゲートチューブ内に挿入された両拡径部材14、16の外側部で拡開されたスリットの縁部が摺接しながら支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤーハーネスその他の電線(光ケーブルを含む)を保護するために、電線にコルゲートチューブを装着するコルゲートチューブ装着治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスその他の電線を車体、建造物の床、壁等に取り付ける際、電線を保護するために、電線に合成樹脂又は金属製のコルゲートチューブを被せて装着する場合がある。コルゲートチューブは蛇腹状の管体の長手方向にスリットを有するもので、そのスリットを拡開させ、電線に被せて装着する。従来、このような作業は作業者が手作業で行っていたが、作業能率が悪く、長時間作業を続けると、手を痛めたりする。
【0003】
このため、最近では、図12に示すように、コルゲートチューブ1のスリット1aを烏口状の装着治具2で拡開させ、装着治具2をコルゲートチューブ1に沿って移動させながら、装着治具2内に案内された電線Aを指でコルゲートチューブ1内に押し込めて、電線Aにコルゲートチューブ1を装着するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
また、図13に示すように、装着治具4として、コルゲートチューブ1の長手方向に相対的に移動する本体5に、コルゲートチューブ1の長手方向のスリット1aを拡開する烏口状ガイド板6と、前記ガイド板6との間に電線Aを挟み、該電線Aをコルゲートチューブ1内にガイドする電線誘導ローラ7と、コルゲートチューブ1の前記スリット1a内側に挿入され、前記スリット1aに沿って本体5をガイドするガイドリブ8とを備えたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−48657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の装着治具2(図12参照)は構造が非常に簡単であるが、装着治具2でコルゲートチューブ1のスリット1aを拡開させながらスリット1aに沿って移動させると、コルゲートチューブ1の拡開されたスリット1a部分が、コルゲートチューブ装着治具の中心軸線の回りを回動して、該チューブの周方向にずれ易くなる。従って、電線Aをコルゲートチューブ1内に押し込めることが容易でなく、電線Aにコルゲートチューブ1を正しく装着することができなくなったり、装着が困難になったりする不具合がある。後者の装着治具4(図13参照)はこのような不具合が改善されるが、構造が複雑でコストが高くなるという不具合がある。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するために生まれたもので、電線にコルゲートチューブを正しく、且つ、容易に装着することができ、構造が簡単で取り扱いが容易なほか、コストの安価なコルゲートチューブ装着治具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載されたコルゲートチューブ装着治具は、電線に長手方向にスリットを有するコルゲートチューブを装着するコルゲートチューブ装着治具であって、装着治具本体に、コルゲートチューブ内に挿入されてコルゲートチューブを拡径する第1、第2の拡径部材がV型に設けられ、コルゲートチューブ内に挿入された両拡径部材の外側部で、拡径されたコルゲートチューブの内側面又は拡開されたスリットの縁部が摺接しながら支持されることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2に記載されたコルゲートチューブ装着治具は、請求項1記載のものにおいて、前記第1、第2の拡径部材がコルゲートチューブ内に挿入されたとき、拡開された前記スリットの縮閉作用による締付力でV型の開き角度が狭まるように装着治具本体に設けられ、両拡径部材の外側部に前記スリットの縁部が摺接しながら支持される案内溝が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3に記載されたコルゲートチューブ装着治具は、請求項2記載のものにおいて、前記装着治具本体に、その装着治具本体を保持すると共に、電線を把持するグリップが、電線に装着されるコルゲートチューブ側に延出するように取り付けられていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項4に記載されたコルゲートチューブ装着治具は、請求項2又は3記載のものにおいて、前記第1、第2の拡径部材を拡開状態に保持する付勢部材を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項5に記載されたコルゲートチューブ装着治具は、請求項1記載のものにおいて、前記装着治具本体がコルゲートチューブのサイズに合わせて第1、第2の拡径部材の開き角度を調整可能な拡径部材角度調整機構で構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1記載のコルゲートチューブ装着治具によると、コルゲートチューブ内に挿入された両拡径部材の外側部で、拡径されたコルゲートチューブの内側面又は拡開されたスリットの縁部が摺接しながら支持されるので、装着治具本体をコルゲートチューブに沿って移動させ、第1、第2の拡径部材をコルゲートチューブ内に挿入してコルゲートチューブを拡径し、スリットを拡開した後、拡開されたスリット部分がコルゲートチューブ装着治具の中心軸線の回りを回動しなくなり、該チューブの周方向にずれにくくなる。従って、電線をコルゲートチューブ内に挿入することが容易になり、電線にコルゲートチューブを確実に装着することができる。また、構造が簡単でコストが安くなるほか、取り扱いが容易になり、コルゲートチューブの装着の作業性を向上させることができる。
【0014】
本発明の請求項2記載のコルゲートチューブによると、両拡径部材の外側部に前記スリットの縁部が摺接しながら支持される案内溝が形成されているので、拡開されたスリット部分がコルゲートチューブの周方向に一層ずれにくくなる。また、前記第1、第2の拡径部材がコルゲートチューブ内に挿入されたとき、拡開された前記スリットの縮閉作用による締付力でV型の開き角度が狭まるように装着治具本体に設けられているので、コルゲートチューブ内に挿入された電線が該チューブの中心近傍で第1、第2の拡径部材に挟まれて保持される。更に、電線の太さが異なっても、これを両拡径部材間で容易に挟むことができる。従って、電線にコルゲートチューブをより確実、容易に装着することができ、コルゲートチューブの装着の作業性をより向上させることができる。
【0015】
本発明の請求項3記載のコルゲートチューブ装着治具によると、前記装着治具本体に、その装着治具本体を保持すると共に、電線を把持するグリップが、電線に装着されるコルゲートチューブ側に延出するように取り付けられているので、装着治具本体をコルゲートチューブに沿って移動させ、第1、第2の拡径部材をコルゲートチューブ内に挿入してコルゲートチューブを拡径する際、電線を把持しながら行える。従って、電線をコルゲートチューブ内に一定の挿入角度で挿入することが可能になり、電線にコルゲートチューブを速やかに安定して装着することができる。
【0016】
本発明の請求項4記載のコルゲートチューブ装着治具によると、第1、第2の拡径部材が付勢部材により拡開状態に保持されるので、コルゲートチューブの装着作業を開始するにあたり、電線に第1、第2の拡径部材を速やかに挟むことが可能になり、コルゲートチューブの装着の作業性を更に向上させることができる。
【0017】
本発明の請求項5記載のコルゲートチューブ装着治具によると、前記装着治具本体がコルゲートチューブのサイズに合わせて第1、第2の拡径部材の開き角度を調整可能な拡径部材角度調整機構で構成されているので、コルゲートチューブのサイズが異なった場合には、そのサイズに合った第1、第2の拡径部材の開き角度に調整すればよく、使用に便利である。また、該装着治具を複数用意する必要がなく経済的である。更に、該装着治具の構造が簡単になり軽量小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るコルゲートチューブ装着治具の1実施形態を示す斜視図、図2は図1のX−X断面図、図3は図1のY−Y断面図、図4は本実施形態の装着治具を電線にセットして、コルゲートチューブの装着作業を開始する状態を示す斜視図、図5は本実施形態のコルゲートチューブ装着治具を用いて電線にコルゲートチューブを装着している状態を示す斜視図、図6は図5のZ−Z断面図である。なお、従来技術に記載されたものと同一構成のものには同一符号が付してある。
【0019】
本実施形態のコルゲートチューブ装着治具10は、図1乃至図3に示すように、電線Aに、蛇腹状の合成樹脂又は金属製管体の長手方向にスリット1aを有するコルゲートチューブ1(図6参照)を装着するために使用される。
【0020】
コルゲートチューブ装着治具10は、先端にコルゲートチューブ1のスリット1aに割り込んでスリット1aの拡開を補助するくさび状の割込み部12aが設けられた金属片からなる装着治具本体12の基部側に、コルゲートチューブ1内に挿入されてコルゲートチューブ1を案内しながら拡径し、スリット1aを拡開する、例えば、断面略矩形状の金属片からなる第1、第2の拡径部材14、16がV型に、且つ、コルゲートチューブ1内に挿入されたとき、拡開されたスリット1aの縮閉作用による締付力でV型の開き角度が狭まるように設けられている。そして、両拡径部材14、16がコルゲートチューブ1内に挿入されたとき、拡開された前記スリット1aの縮閉作用による締付力で開き角度が狭まり、例えば、ワイヤーハーネス用の複数本の電線Aを挟みながら摺動自在に保持するようになっている。なお、装着治具本体12の先端に割込み部12aが設けられていると、第1、第2の拡径部材14、16でコルゲートチューブ1を円滑に拡径し、スリット1aを拡開することができるので好ましい。
【0021】
更に詳細に述べると、第1の拡径部材14は、装着治具本体12の基部側が割込み部12aとは反対方向に延出されることにより、装着治具本体12と一体に設けられている。第2の拡径部材16の基部側は、装着治具本体12(第1の拡径部材14)の基部側に、ヒンジ継手18により枢着されている。これにより、第2の拡径部材16は、第1の拡径部材14に対して開き角度が可変する。第1、第2の拡径部材14、16の各先端は、コルゲートチューブ1内に挿入される電線Aを挟み易いように少し内側にわん曲するように形成されている。
【0022】
ヒンジ継手18は、図2に示すように、第1の拡径部材14の基部側に横向きに突設された1個の鍔14aと、第2の拡径部材16の基部側に前記鍔14aが嵌合されるように間隔をおいて突設された2個の鍔16a、16aと、鍔14aが嵌合された2個の鍔16a、16aに挿入され、第2の拡径部材16を装着治具本体12の基部側に回動自在に支持させるボルト(枢支軸)20a及びナット20bよりなる枢支部20とから構成されている。
【0023】
第1、第2の拡径部材14、16の各外側部には、両拡径部材14、16により拡開されたコルゲートチューブ1のスリット1aの縁部1b、1bが摺接しながら支持される略V型の案内溝22が、同じ大きさで左右反対向きに形成されている。両案内溝22は外側方に開口する略V型に形成され、その谷底が上下中央部よりも上方に偏位し、これより上方の傾斜面が下方の傾斜面よりも勾配が大きくなっている。
【0024】
また、装着治具本体12の基部側の下部には、図1に示すように、装着治具本体12を保持すると共に、電線Aを把持する棒状のグリップ24が、電線Aに装着されるコルゲートチューブ1側、即ち、割込み部12a側に延出するように、取付角度の調節可能な連結継手26で取り付けられている。グリップ24はその先端(割込み部12a側)に手の滑りを止めるタブ状の突起28が設けられている。
【0025】
連結継手26は、図3に示すように、グリップ24の基部側に隙間をおいて突設された2個の鍔24a、24aと、装着治具本体12の基部側の下部に、コルゲートチューブ1側、即ち、割込み部12a側に向けて突設され、グリップ24の鍔24a、24a間の隙間に嵌合される鍔12bと、鍔12bが嵌合された2個の鍔24a、24aに挿入され、グリップ24を装着治具本体12に所定の取付角度で締付け固定するボルト30a及びナット30bよりなる固定部30とから構成されている。
【0026】
グリップ24が連結継手26により装着治具本体12に取り付けられていると、グリップ24の取付角度をコルゲートチューブ1の内外径、肉厚等のサイズや材質に応じて調節することが可能になる。例えば、コルゲートチューブ1のサイズが大きく、剛性が高くなるような場合には、固定部30を締め付け直して、グリップ24の装着治具本体12の長手方向軸線に対する取付角度を大きく設定する。このようにすると、電線Aをコルゲートチューブ1内に挿入して、電線Aに該チューブ1を装着し易くなるので好ましい。
【0027】
32は第1、第2の拡径部材14、16の基部側に両端が固定され、両拡径部材14、16を所定の開き角度で拡開状態に保持する付勢部材である圧縮コイルばねである。
【0028】
本実施形態のコルゲートチューブ装着治具10は以上のような構成になっている。次に、この装着治具10を用いて電線Aにコルゲートチューブ1を装着する方法を説明する。
【0029】
先ず、図4に示すように、コルゲートチューブ装着治具10の第1、第2の拡径部材14、16を電線Aの長手方向に沿わせ、両拡径部材14、16で電線Aを挟むようにして、コルゲートチューブ装着治具10を電線Aにセットする。
【0030】
次に、図5に示すように、その装着治具10のグリップ24を左手で握って装着治具10を保持すると共に、その手で電線Aを把持し、右手でコルゲートチューブ1の外周面を押さえて保持した状態で、装着治具本体12をコルゲートチューブ1に沿って同図の矢印P方向に移動させる。そして、割込み部12aをコルゲートチューブ1のスリット1aに割り込ませながら、コルゲートチューブ1内に第1、第2の拡径部材14、16を挿入し、コルゲートチューブ1を拡径し、これによりスリット1aを割込み部12aの拡開作用と相俟って拡開する。
【0031】
そして、コルゲートチューブ1を、その拡開されたスリット1aの縁部1b、1bを第1、第2の拡径部材14、16の外側部に形成された案内溝22で案内しながら支持して、装着治具本体12に対するスリット1aの位置ずれを押えながら、電線Aを拡開されたスリット1aからコルゲートチューブ1内に挿入し、電線Aを、図6に示すように、拡開された前記スリット1aの縮閉作用による締付力で縮閉作動する両拡径部材14、16間に挟んで保持する。このようにして、前記装着治具10を矢印P方向に移動させながら、電線Aを第1、第2の拡径部材14、16により、コルゲートチューブ1内のほぼ中央に案内しながら挿入し、電線Aにコルゲートチューブ1を全長又は所定長さ区間にわたり被せて装着する。
【0032】
図7は第1、第2の拡径部材14、16の各外側部に形成される案内溝の変形例を示すもので、(a)は上外縁部を外側方に突出させた逆L型の案内溝34からなるもの、(b)は外側方に開口するコ字状の案内溝36からなるものである。
【0033】
図8はグリップ24の変形例を示すもので、(a)のグリップ38は、その先端に手の滑りを止めるタブ状の突起28に代えて、コ字状の突起40を設けたもの、(b)のグリップ42はその略全長にわたりコ字状の突起44を設けたものである。
【0034】
また、第1、第2の拡径部材を拡開状態に保持する付勢部材としては圧縮コイルばね32の代わりに、例えば、図示省略するが、ヒンジ継手18における枢支部20のボルト20aの外周にねじりコイルばねを巻装し、その一端を第2の拡径部材16の基部側に固定し、他端を第1の拡径部材14の基部側又は装着治具本体12の基部側に固定し、両拡径部材14、16を所定の開き角度で拡開状態に保持させるようにしてもよい。
【0035】
本実施形態のコルゲートチューブ装着治具10によると、コルゲートチューブ1内に挿入された両拡径部材14、16の外側部で、拡径されたコルゲートチューブ1のスリット1aの縁部1bが摺接しながら支持されることにより、装着治具本体12をコルゲートチューブ1に沿って移動させ、第1、第2の拡径部材14、16をコルゲートチューブ1内に挿入してコルゲートチューブ1を拡径し、スリット1aを拡開した後、拡開されたスリット1a部分がコルゲートチューブ装着治具10の中心軸線の回りを回動しなくなり、該チューブ1の周方向にずれにくくなる。従って、電線Aをコルゲートチューブ1内に挿入することが容易になり、電線Aにコルゲートチューブ1を確実に装着することができる。また、構造が簡単でコストが安くなるほか、取り扱いが容易になり、コルゲートチューブ1の装着の作業性を向上させることができる。
【0036】
また、両拡径部材14、16の外側部に前記スリット1aの縁部1bが摺接しながら支持される案内溝22、34、36が形成されることにより、拡開されたスリット1a部分がコルゲートチューブ1の周方向に一層ずれにくくなる。また、前記第1、第2の拡径部材14、16がコルゲートチューブ1内に挿入されたとき、拡開された前記スリット1aの縮閉作用による締付力でV型の開き角度が狭まるように装着治具本体12に設けられていることにより、コルゲートチューブ1内に挿入された電線Aが該チューブ1の中心近傍で第1、第2の拡径部材14、16に挟まれて保持される。更に、電線Aの太さが異なっても、これを両拡径部材14、16間で容易に挟むことができる。従って、電線Aにコルゲートチューブ1をより確実、容易に装着することができ、コルゲートチューブ1の装着の作業性をより向上させることができる。
【0037】
また、前記装着治具本体12に、その装着治具本体12を保持すると共に、電線Aを把持するグリップ24、38、42が、電線Aに装着されるコルゲートチューブ1側に延出するように取り付けられていることにより、装着治具本体12をコルゲートチューブ1に沿って移動させ、第1、第2の拡径部材14、16をコルゲートチューブ1内に挿入してコルゲートチューブ1を拡径する際、電線Aを把持しながら行える。従って、電線Aをコルゲートチューブ1内に一定の挿入角度で挿入することが可能になり、電線Aにコルゲートチューブ1を速やかに安定して装着することができる。
【0038】
更に、第1、第2の拡径部材14、16が、例えば、圧縮コイルばね32からなる付勢部材により拡開状態に保持されることにより、コルゲートチューブ1の装着作業を開始するにあたり、電線Aに第1、第2の拡径部材14、16を速やかに挟むことが可能になり、コルゲートチューブ1の装着の作業性を更に向上させることができる。
【0039】
図9は本発明に係るコルゲートチューブ装着治具45の変形例を示すもので、(a)は大サイズのコルゲートチューブ1を電線Aに装着する場合に斜視図、(b)は小サイズのコルゲートチューブ1を電線Aに装着する場合の斜視図、図10は該装着治具の拡径部材角度調整機構の概要を示す斜視図、図11は該装着治具を電線にセットして、コルゲートチューブの装着作業を開始する状態を示す斜視図である。
【0040】
本実施形態のコルゲートチューブ装着治具45は、図9(a)(b)に示すように、装着治具本体46に、コルゲートチューブ1内に挿入されてコルゲートチューブ1を拡径する第1、第2の拡径部材48、50がV型に設けられ、コルゲートチューブ1内に挿入された両拡径部材48、50の外側部で拡径されたコルゲートチューブ1の内側面が摺接しながら支持される構成になっている。また、本実施形態のコルゲートチューブ装着治具は、図9、10に示すように、装着治具本体46が、コルゲートチューブ1のサイズ(内外径)に合わせて第1、第2の拡径部材48、50の開き角度を調整可能な拡径部材角度調整機構52で構成されている。
【0041】
第1、第2の拡径部材48、50は断面略矩形状の金属片からなり、後部側(コルゲートチューブ1内に挿入される側から遠い側)の外側部が拡径されたコルゲートチューブ1の内側面に当接してその内側面を支持するために外側に凸状にわん曲した支持面48a、50aに形成されている。V型に設けられた第1、第2の拡径部材48、50が接近する谷部に相当する先端がコルゲートチューブ1内に挿入されて、コルゲートチューブ1を拡径し、スリット1aを拡開する。
【0042】
装着治具本体46を構成する拡径部材角度調整機構52は第1、第2の拡径部材48、50の後部側に配設されている。拡径部材角度調整機構52は、図10に示すように、外側(第1、第2の拡径部材48、50の後部側に相当する)に凸状にわん曲する長形弧状の第1のアーム54と、その内側(第1、第2の拡径部材48、50の先端側に相当する)に重合するように設けられた、外側に凸状にわん曲する短形弧状の第2のアーム56と、第1のアーム54と第2のアーム56とを重合状態で固定するアーム固定部材58とからなっている。
【0043】
第1のアーム54は基部側(図9(a)の右側)が第1の拡径部材48に先端が後部より上方に位置するように傾斜して片持状に支持されている。また、第2のアーム56は基部側(図9(a)の左側)が第2の拡径部材50に先端が後部より上方に位置するように傾斜して片持状に支持されている。
【0044】
アーム固定部材58は、第1のアーム54にその長手方向に沿って形成された横長穴60と、第1のアーム54の裏面(第2のアーム56側)に幅方向に所定間隔をおいて形成された複数の係止溝62と、第2のアーム56に形成された挿通穴64と、第2のアーム56に第1のアーム54の係止溝62に係合するように突出された係止ピン66と、第1のアーム54の横長穴60と第2のアーム56の挿通穴64に挿通され、第1のアーム54と第2のアーム56とを長手方向における所定位置で固定する固定ボルト(固定ピン)64と固定ナット66とからなっている。
【0045】
そして、コルゲートチューブ1のサイズに合わせて、第1、第2の拡径部材48、50のV型の開き角度を拡径部材角度調整機構52で広狭調整する場合には以下説明するようにして行う。即ち、内外径の大きな大サイズのコルゲートチューブ1を電線Aに装着する場合には、第1、第2の拡径部材48、50の開き角度を広げる。反対に、内外径の小さな小サイズのコルゲートチューブ1を電線Aに装着する場合には、第1、第2の拡径部材48、50の開き角度を狭める。
【0046】
第1、第2の拡径部材48、50の開き角度を広げる場合には、拡径部材角度調整機構52の固定ボルト64と固定ナット70を緩めて、第2のアーム56を第1のアーム54に対して、図9(a)、図10の左側の所定位置まで移動させ、係止ピン66を左側寄りの係止溝62に係合し、固定ボルト64と固定ナット70を締め付け固定することにより行う。反対に、第1、第2の拡径部材48、50の開き角度を狭める場合には、拡径部材角度調整機構52の固定ボルト64と固定ナット70を緩めて、第2のアーム56を第1のアーム54に対して、図9(a)、図10の右側の所定位置まで移動させ、係止ピン66を右側寄りの係止溝62に係合し、固定ボルト64と固定ナット70を締め付け固定することにより行う。
【0047】
本実施形態のコルゲートチューブ装着治具45を用いて所定サイズのコルゲートチューブ1を電線Aに装着する場合には、図11に示すように、コルゲートチューブ1のサイズに合わせて第1、第2の拡径部材48、50の開き角度を拡径部材角度調整機構52により調整する。次に、装着治具本体46、即ち、拡径部材角度調整機構52の上に電線Aをセット(載置)する。次に、左手で第1、第2の拡径部材48、50の後部側及び電線Aを把持し、右手でコルゲートチューブ1の外周面を把持して、コルゲートチューブ1を図11の矢印Q方向に移動させ、第1、第2の拡径部材48、50の先端に押し込むことにより、コルゲートチューブ1内に両拡径部材48、50を挿入する。これにより、コルゲートチューブ1を拡径し、スリット1a(図示せず)を拡開して、両拡径部材48、50の外側部の支持面48a、50aで、拡径されたコルゲートチューブ1の内側面を支持させ、拡開されたスリット1aからコルゲートチューブ1内に挿入する。このようにして、前記コルゲートチューブ1を矢印Q方向に移動させながら、該チューブ1内に電線Aを挿入し、電線Aにコルゲートチューブ1を全長又は所定長さ区間にわたり被せて装着する。
【0048】
本実施形態のコルゲートチューブ装着治具45によると、コルゲートチューブ1内に挿入された両拡径部材14、16の外側部で、拡径されたコルゲートチューブ1の内側面が摺接しながら支持されることにより、装着治具本体12をコルゲートチューブ1に沿って移動させ、第1、第2の拡径部材14、16をコルゲートチューブ1内に挿入してコルゲートチューブ1を拡径し、スリット1aを拡開した後、拡開されたスリット1a部分がコルゲートチューブ装着治具10の中心軸線の回りを回動しなくなり、該チューブ1の周方向にずれにくくなる。従って、電線Aをコルゲートチューブ1内に挿入することが容易になり、電線Aにコルゲートチューブ1を確実に装着することができる。また、構造が簡単でコストが安くなるほか、取り扱いが容易になり、コルゲートチューブ1の装着の作業性を向上させることができる。
【0049】
更に、前記装着治具本体46がコルゲートチューブ1のサイズに合わせて第1、第2の拡径部材48、50の開き角度を調整可能な拡径部材角度調整機構52で構成されていることにより、コルゲートチューブ1のサイズが異なった場合には、そのサイズに合った第1、第2の拡径部材48、50の開き角度に調整すればよく、使用に便利である。また、該装着治具45を複数用意する必要がなく経済的である。更に、該装着治具45の構造が簡単になり軽量小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】図1のY−Y断面図である。
【図4】図1の実施形態の装着治具を電線にセットして、コルゲートチューブの装着作業を開始する状態を示す斜視図である。
【図5】図1の実施形態の装着治具を用いて、電線にコルゲートチューブを装着している状態を示す斜視図である。
【図6】図5のZ−Z断面図である。
【図7】図1における第1、第2の拡径部材に形成される案内溝の変形例を示すもので、(a)は逆L型の案内溝からなるもの、(b)はコ字状の案内溝からなるものの断面図である。
【図8】図1におけるグリップの変形例を示すもので、(a)はグリップの先端にコ字状の突起を設けたもの、(b)はグリップの略全長にわたりコ字状の突起を設けたものの概要図である。
【図9】本発明に係るコルゲートチューブ装着治具の変形例を示すもので、(a)は大サイズのコルゲートチューブ1を電線に装着する場合の斜視図、(b)は小サイズのコルゲートチューブ1を電線に装着する場合の斜視図である。
【図10】図9のコルゲートチューブ装着治具における拡径部材角度調整機構の概要を示す斜視図である。
【図11】図9のコルゲートチューブ装着治具を電線にセットして、コルゲートチューブの装着作業を開始する状態を示す斜視図である。
【図12】従来の装着治具を用いてコルゲートチューブを装着する状態を示す斜視図である。
【図13】従来の他の装着治具を用いてコルゲートチューブを装着する状態を示す縦段断面図である。
【符号の説明】
【0051】
A 電線
1 コルゲートチューブ
1a スリット
1b 縁部
10、45 コルゲートチューブ装着治具
12、46 装着治具本体
12a 割込み部
12b、14a、16a、24a 鍔
14、48 第1の拡径部材
16、50 第2の拡径部材
18 ヒンジ継手
20 枢支部
20a、30a ボルト
20b、30b ナット
22、34、36 案内溝
24、38、42 グリップ
26 連結継手
28、40、44 突起
30 固定部
32 圧縮コイルばね
48a 支持面
50a 支持面
52 拡径部材角度調整機構
54 第1のアーム
56 第2のアーム
58 アーム固定部材
60 横長穴
62 係止溝
64 挿通穴
66 係止ピン
68 固定ボルト
70 固定ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に長手方向にスリットを有するコルゲートチューブを装着するコルゲートチューブ装着治具であって、装着治具本体に、コルゲートチューブ内に挿入されてコルゲートチューブを拡径する第1、第2の拡径部材がV型に設けられ、コルゲートチューブ内に挿入された両拡径部材の外側部で拡径されたコルゲートチューブの内側面又は拡開されたスリットの縁部が摺接しながら支持されることを特徴とするコルゲートチューブ装着治具。
【請求項2】
前記第1、第2の拡径部材がコルゲートチューブ内に挿入されたとき、拡開された前記スリットの縮閉作用による締付力で開き角度が狭まるように装着治具本体に設けられ、両拡径部材の外側部に前記スリットの縁部が摺接しながら支持される案内溝が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコルゲートチューブ装着治具。
【請求項3】
前記装着治具本体に、その装着治具本体を保持すると共に、電線を把持するグリップが、電線に装着されるコルゲートチューブ側に延出するように取り付けられていることを特徴とする請求項2記載のコルゲートチューブ装着治具。
【請求項4】
前記第1、第2の拡径部材を拡開状態に保持する付勢部材を備えていることを特徴とする請求項2又は3記載のコルゲートチューブ装着治具。
【請求項5】
前記装着治具本体がコルゲートチューブのサイズに合わせて第1、第2の拡径部材の開き角度を調整可能な拡径部材角度調整機構で構成されていることを特徴とする請求項1記載のコルゲートチューブ装着治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−28766(P2007−28766A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205904(P2005−205904)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)