説明

コルチコステロイドとヒアルロン酸断片を含んでなる抗炎症性の皮膚用組成物、およびその使用

局所投与を目的とする抗炎症性皮膚用組成物であって、コルチコステロイド0.005〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.05重量%、および平均分子量が20〜500kDa、好ましくは20〜375kDa、更に好ましくは20〜150kDaのヒアルロン酸断片0.1〜1重量%、好ましくは0.5〜1重量%を含んでなる、組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、コルチコステロイドとヒアルロン酸断片を含んでなる皮膚用組成物、並びにその使用に関する。
【0002】
ヒアルロン酸(HA)は、細胞外マトリックスの主成分であり、皮膚にかなりの量で見出される。HAは、D−グルクロン酸とN−アセチル−D−グルコサミンの反復単位からなる線状グリコサミノグリカン非硫酸塩である(Tammi R., Agren UM., Tuhkanen AL., Tammi M. 「皮膚におけるヒアルロナン代謝」. Prog. Histochem. & Cytochem. 29: 1-81, 1994)。
【0003】
正常な皮膚では、HAは、本質的に皮膚の繊維芽細胞と表皮のケラチノサイトによって合成される(Tammi R., Agren UM., Tuhkanen AL., Tammi M. 「皮膚におけるヒアルロナン代謝」. Prog. Histochem. & Cytochem. 29: 1-81, 1994)。陰電荷を有するその残基によって、HAは水ポンプの役割を果たしており、これによって皮膚の粘弾性を維持することができる。HAは、食糧、ホルモン、ビタミンおよび結合組織の無機塩の拡散の制御および炎症性反応を誘発する可能性がある代謝廃棄物のクリーニングに主要な役割を有している。年齢と共にHAの量およびその重合度は減少して、結合組織に保持される水の量が減少する。次いで、皮膚は老化過程を受けて、繊維症が増加しかつ弾性繊維含量が低下する。
【0004】
正常な皮膚では、HAは高分子量(600〜1,000kDa)のポリマーとして存在する。皮膚におけるHAの生理学的分解は、(i) CD44を介するケラチノサイトによるインターナリゼーション、および(ii) ヒアルロニダーゼによる一層小さなサイズの断片への細胞内断片化によって行われる。断片化HAはケラチノサイトによって放出され、基底膜を通過し、リンパ管に直接放出される(Tammi R., Agren UM., Tuhkanen AL., Tammi M. 「皮膚におけるヒアルロナン代謝」. Prog. Histochem. & Cytochem. 29: 1-81, 1994)。
【0005】
炎症性条件下では、低分子量形態のHAの蓄積が明らかにされている。炎症の際には、フィブリンのような血小板性走化性因子が繊維芽細胞の流入および活性化を刺激することによってヒアルロニダーゼが分泌されてHAを分解し、HAの小断片の組織濃度が高くなる。これらの小HA断片の生成は、顆粒球によって放出されたまたは紫外線照射された皮膚における酸素反応種による脱重合のような様々な他の機構または低分子量断片のデ・ノボ合成も伴う。幾つかの研究は、高および低分子量HAが、細胞および組織に様々な生物学的影響を与える可能性があることを示唆している(Mckee CM., Penno MB., Cowman M., Burdick MD., Strieter RM.I., Bao CI, Noble PW. 「ヒアルロナン(HA)断片は肺胞マクロファージにおけるケモカイン遺伝子発現を誘発する。HAサイズおよびCD44の役割」. J. clin Invest. 98:2403-2143, 1996; Termeer CC., Hennies I., Voith U., Ahrens T., Weiss JM., Prehm P., Simon JC., 「ヒアルロナンのオリゴ糖は樹状細胞の強力なアクチベーターである」. J. Immunol. 165:1863-1870, 2000; Fitzgerald KA., Bowie AG., Skeffington BS., O’Neill LA., 「Ras、プロテインキナーゼCζおよびIκBキナーゼ1および2はT-24癌細胞におけるヒアルロン酸断片によるNF-κBの活性化の際のCD44の下流エフェクターである」. J. Immunol 164: 2053-2063, 2000)。
【0006】
分子量が50〜750kDaの断片に加水分解された非硫酸化HAは、皮膚に生物学的活性、特に表皮CD44の発現および細胞外マトリックス沈着における表皮再生の増加を有し、これらの断片がレチノイドと結合しているときには増幅されることが明らかになっている(仏国特許第04 00826明細書)。
【0007】
HAの主受容体であるCD44は、スプライシングと翻訳後修飾を交互に行うことによって生成する幾つかのアイソフォームを有する多形性膜貫通糖タンパクである。ネズミの皮膚におけるCD44の2つの主要機能は、(i) 細胞外刺激に応答するケラチノサイト増殖の調節および(ii) HAの局所ホメオスタシスの維持であることが明らかにされた(Kaya G., Rodriguez L., Jorcano JL., Vassalli P., Stamenkovic I. 「組織特異的プロモーターによって動かされるアンチセンスCD44トランスジーンを有するマウスのケラチノサイトにおけるCD44の選択的抑制は、皮膚のヒアルロン酸代謝を中断させ、ケラチノサイト増殖を損なう」. Genes, Dev. 11:996-1007, 1997)。硬化性萎縮苔癬(sclero-atrophic lichen)の患者における表皮CD44の発現の減少も観察されている。この減少は、潜在的にこの疾患におけるHAの皮膚沈着および表皮萎縮の原因である(Kaya G., Augsburger E., Stamenkovic L., Saurat JH., 「硬化性萎縮性苔癬における表皮の異常ヒアルロン酸蓄積の潜在的機構としての表皮CD44の減少」. J. Invest. Dermatol. 115:1054-1058, 2000)。(i) 中間サイズのHA断片によって誘発されるケラチノサイトのイン・ビトロおよびイン・ビボ増殖応答はCD44依存性経路を経て進み、かつヘパリン結合性表皮増殖因子(HB−EGF)、erbBIおよびマトリックスメタロプロテイナーゼの存在を必要とし、(ii) 中間サイズのHA断片はヒト皮膚萎縮の新規治療法の開発の基礎を形成できることが、最近明らかになった(Kaya G., Tran C., Sorg O., Hotz R., Grand D., Carraux P., Didierjean L., Stamenkovic L., Saurat J.-H. 「ヒアルロン酸断片はCD44依存性機構によって皮膚萎縮を逆転させる」. PloS Med. 3 (12): e493, 2006)。
【0008】
更に、小サイズ(1〜50kDa)または大サイズ(400〜1,000kDa)の断片とは異なり、中間サイズのHA断片はかなりの表皮過形成およびケラチノサイト増殖、表皮および皮膚のCD44およびHAの発現増加、並びに皮膚構造の変化およびヘアレスSKH1およびDBA/1マウスの細胞充実性の増加を誘発することが、最近明らかになった。最後に、レチンアルデヒドは、ヘアレスSKH1マウスにおけるコルチコステロイドであるプロピオン酸クロベタゾールによって誘発される表皮萎縮を防止することも明らかになっている(Kaya G., Tran C., Sorg O., Grand D., Hotz R., Carraux P., Didierjean L., Saurat J.-H. 「マウスにおけるコルチコステロイドによって誘発される皮膚萎縮のレチンアルデヒドによる防止」. JEADV 19: 124, 2005)。
【0009】
中間サイズのHA断片は、老化による既に形成されかつ全身経路で長期間用いたコルチコステロイドの使用によって悪化した萎縮を修復できることが早期に観察されていた(Kaya G., Tran C., Sorg O., Hotz R., Grand D., Carraux P., Didierjean L., Stamenkovic L., Saurat J.-H. 「ヒアルロン酸断片はCD44依存性機構による皮膚萎縮を逆転する」. PloS Med 3 (12): e493, 2006 and patent FR 04 00826)。
【発明の開示】
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、コルチコステロイドと分子量が20〜500kDaのHA断片を同時に使用することによって皮膚萎縮の発生を防止することが可能であることを見出した。
【0011】
コルチコステロイドの萎縮効果を抑制するということは、これらのHA断片は、主要な探索した治療効果、すなわち抗炎症効果などのコルチコステロイドの他の作用をも阻害するはずである。
【0012】
本発明者らは、驚くべきことに、一方コルチコステロイドとこれらのHA断片を同時使用してもコルチコステロイドの抗炎症作用を取り消すことにはならないことを見出した。
【0013】
従って、本発明は、治療効果を局所性コルチコステロイドの主要な二次的効果から幾分引き離して考えることができる。従って、本発明は、HA断片とコルチコステロイドの結合からなる単一局所製剤を用いることができる。
【0014】
従って、「治療効果と二次的効果の結合」とは、コルチコステロイドの抗炎症作用を保存しながらその萎縮特性を減少させまたは抑制するという事実を意味する。
【0015】
更に、一層驚くべきことには、抗炎症性治療効果の可能性さえ観察された。
【0016】
従って、本発明は、更に具体的には局所投与を目的とする抗炎症性皮膚用組成物であって、コルチコステロイド0.005〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.05重量%、および平均分子量が20〜500kDa、好ましくは20〜375kDa、更に好ましくは20〜150kDaのヒアルロン酸断片0.1〜1重量%、好ましくは0.5〜1重量%を含んでなる組成物に関する。
【0017】
本発明においては、皮膚における多数の病因によって誘発されかつ局所用コルチコステロイドの塗布によって弱められる赤み、浮腫、小疱、疼痛および痒みなどの標準的徴候を局所経路によって抑制することを「抗炎症性」として記載する。
【0018】
本発明においては、同量の局所用コルチコステロイド単独で得られるより良好な抗炎症作用またはより少量のコルチコステロイドで得られるものと同じ抗炎症作用を得ながら、皮膚萎縮のような局所用コルチコステロイドの主要な二次的効果を回避することを「可能にする」として記載する。
【0019】
本発明のヒアルロン酸断片は、高分子量のヒアルロン酸ナトリウムの繊維を100℃を上回る温度での熱処理によって得ることができる。
【0020】
ヒアルロン酸の断片は、高分子量のヒアルロン酸ナトリウムの繊維を400Wおよび4℃にて10〜90分間、好ましくは45分間超音波処理した後、ゲル、好ましくはSephacryl S-400ゲル上で濾過することによって得ることもできる。
【0021】
本発明による組成物は、好ましくはコルチコステロイド0.05重量%およびヒアルロン酸断片0.5重量%を含んでなる。
【0022】
本発明による組成物は、好ましくはコルチコステロイド0.01重量%およびヒアルロン酸断片1重量%を含んでなる。
【0023】
コルチコステロイドは、好ましくはジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルランドレノロン、酢酸フルプレドニデン、フルオコルトロン、フルコルチンブチル、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルクロロロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、塩酸フュージリン(feudiline)、フルメトロン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、並びにそれらの混合物から選択することができる。
【0024】
コルチコステロイドは、好ましくはプロピオン酸クロベタゾールである。
【0025】
本発明の目的は、上記組成物と1種類以上の薬学上許容可能な賦形剤とを含んでなる医薬組成物でもある。
【0026】
本発明による医薬組成物は、好ましくは薬学上許容可能な皮膚軟化基剤を含んでなる。
【0027】
「皮膚軟化基剤」とは、本発明の意味において、組織の解放、炎症の鎮静化、皮膚の軟化に寄与する任意の化粧生成物を意味する。
【0028】
本発明による医薬組成物は、また好ましくはクリーム、香油、ゲル、スプレー、軟膏、ローション、フィルム形成溶液、経皮系、例えばパッチ、フォーム、シャンプーとして提供するための他の皮膚科学上許容可能な賦形剤を含んでなる。
【0029】
本発明の目的は、好ましくは局所用コルチコステロイドの適応症として普通に挙げられる炎症性皮膚病の治療を目的とした、薬剤としての上記組成物であり、更に詳細には、顔のような脆弱な部分、すなわち局所用コルチコステロイドの二次的効果が特に顕著である部分に配置される組成物でもある。実際に、一方では局所用コルチコステロイドの治療効果と主要な二次的効果との結合によって、他方では抗炎症効果の可能性によって、これらの脆弱な部分は余り危険なしに治療することができる。
【0030】
本発明の目的は、炎症性皮膚病の治療に同時または適時塗布する異なる皮膚科用途のための、クリームとしてのコルチコステロイドと、クリームとしての平均分子量が200〜500kDa、好ましくは20〜375kDa、更に好ましくは20〜150kDaのヒアルロン酸断片とを含んでなる組み合わせ物でもある。
【0031】
ヒアルロン酸断片は、上記の方法の1つによって得ることができる。
【0032】
本発明を、下記の実施例によって非制限的に説明することにする。
【実施例】
【0033】
材料および方法
皮膚萎縮プロトコル
ヘアレスSKHマウスの背部に、(分子量が20〜500kDaでありかつ上記のような超音波および濾過による処理段階を含む方法によって得られる)HA断片を含むまたは含まないステロイド(0.05%プロピオン酸クロベタゾールまたは0.1%デソニド)を用いて局所治療を行った。これらの断片は、下記の実施例ではHAFと呼ばれる。皮膚および表皮の萎縮および皮膚ヒアルロン酸の濃度は、光学顕微鏡法で皮膚−表皮厚みの測定およびELISAによってそれぞれ測定した。
【0034】
マウスの耳におけるTPAによって誘発される炎症
皮膚炎症は、0.005%TPA(12−o−テトラデカノイルフォルボール−13−アセテート)/アセトンをC57B1/6マウスの耳に局所投与することによって誘発し、対照動物には同容積のアセトンを投与した。プロピオン酸クロベタゾール(0.05%)およびHAF(1%)をキャリヤー100μlに溶解し、TPAと共に4日間投与し、対照動物には同容積のキャリヤーを投与した。炎症は、クリップで耳の厚みおよび光学顕微鏡法での皮膚−表皮厚みを測定することによって、およびミエロペルオキシダーゼ活性を評価することによって決定した。動物は、最後の投与の24時間後に屠殺した。6mm生験を採取し、液体窒素で冷凍した後、分析の日まで−70℃で保管した。組織の残りは、ホルモールで固定し、免疫組織学によって分析した。
【0035】
ミエロペルオキシダーゼ活性は、耳生験のホモジェネートの上清で測定した。臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HTAB)0.5%を含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0(1.5ml)に浸漬した生験材料を、Polytron PT 1200ホモジナイザー中で0℃にて45秒間摩砕した。ミエロペルオキシダーゼの酵素活性を光度法によるプレートリーダーを用いるように修正したBradley et al.の方法に準じて測定した。下記の試薬を96穴プレートのウェルに加えた:上清50μl、リン酸緩衝液+HTAB50μl、0.68mg/mlのo−ジアニシジン水溶液50μl。反応は、即席で調製した0.003%過酸化水素を加えることによって開始した。光学濃度は、450nmで測定した。酵素活性は、TPAのみで処理した耳の生験材料のものと比較した。CD44、CD44v3およびプロ−HB−EGFの発現を、上記の方法に準じて免疫組織化学およびウェスタンブロット法によって分析した(PLoS Med 3 (12): e493, 2006)。
【0036】
結果
表皮および皮膚の厚み(顆粒層と汗腺との距離)は、接眼マイクロメーター測定した。結果は、下表1にまとめている。予防指数は、プロピオン酸クロベタゾール(PC)のみで処理した対照とPC+HAF組成物との間の比である。
【0037】
【表1】

【0038】
図1は、ヘマトキシリン−エオシンで染色したマウスの皮膚および表皮の組織切片を示す。
【0039】
これらの結果は、HAFがプロピオン酸クロベタゾール(PC)によって誘発される皮膚萎縮を防止することを明らかにしている。
【0040】
表皮厚みを、様々なデソニド濃度で処理した後に接眼マイクロメーターで測定した。マウス当たり、10回の測定を行った。結果は、表2にまとめている。予防指数は、所定のコルチコステロイド濃度でのコルチコステロイドのみおよびコルチコステロイド組成物+HAFで処理した対照の間の比である。
【0041】
【表2】

【0042】
従って、これらの結果は、HAFが用量依存的にデソニドによって誘発される表皮萎縮を防止することを明らかにしている。
【0043】
表皮の厚みは、様々なコルチコステロイドで処理した後に接眼マイクロメーターで測定した。マウス当たり10回の測定を行った。結果は、表3にまとめている。予防指数は、コルチコステロイドのみおよびHAFを含んでなる対応する組成物で処理した対照の間の比である。
【0044】
【表3】

【0045】
従って、これらの結果は、HAFは、様々な局所用コルチコステロイド(CS)によって誘発される表皮萎縮を防止することを明らかにしている。
【0046】
未処理ヒアルロン酸、ヒアルロニダーゼの作用によって得られる断片、並びにHAFを、それらの予防効果について比較した。表皮の厚みは、接眼マイクロメーターで測定した。マウス当たり10回の測定を行った。結果は、表4にまとめている。予防指数は、コルチコステロイドのみおよびそれぞれのコルチコステロイド組成物+HAFで処理した対照の間の比である。
【0047】
【表4】

【0048】
HAFとは異なり、ヒアルロニダーゼの作用によって調製した断片、並びに未処理ヒアルロン酸は、プロピオン酸クロベタゾールまたはデソニドによって誘発される表皮の萎縮を防止しない。
【0049】
図2は、抗−CD44によるマウス切片の免疫組織化学分析である。これは、HAFが、プロピオン酸クロベタゾールで処理したマウスの皮膚におけるCD44の発現を回復および増加することを示している。
【0050】
図3は、マウス皮膚のタンパク質抽出物の抗−CD44v3抗体によるウェスタンブロット分析である。これは、HAF断片が、デソニドで処理したマウスの皮膚におけるCD44v3の発現を回復および増加すること、従って、HAFの潜在的効果を示している。
【0051】
図4は、マウス皮膚のタンパク質抽出物の25kDa抗プロ−HB−EGF抗体によるウェスタンブロット分析である。Aはキャリヤーであり、Bはプロピオン酸クロベタゾールであり、Cはプロピオン酸クロベタゾール+HAFを表す。これは、HAFが、プロピオン酸クロベタゾールで処理したマウス皮膚におけるプロ−HB−EGFの発現を回復および増加することを示している。
【0052】
ホルボールTPAエステルの投与によって誘発された表皮の炎症を、TPA投与後、および次にプロピオン酸クロベタゾールでの処理後、およびプロピオン酸クロベタゾールおよびHAFを含んでなる組成物での処理後に測定した。マウス当たり10回の測定を行った。結果は、下表5にまとめている。抗炎症指数は、TPA、および組成物TPA+PCまたはTPA+PC+HAFで処理した対照の間の比である。
【0053】
【表5】

【0054】
ホルボールTPAエステルを投与することによって誘発された皮膚の炎症を、TPAの投与後、次いでプロピオン酸クロベタゾールで処理後、およびプロピオン酸クロベタゾールとHAFを含んでなる組成物で処理後に測定した。マウス当たり10回の測定を行い、結果は下表6にまとめている。抗炎症指数は、TPA、およびTPA+PCまたはTPA+PC+HAFの結合で処理した対照の間の比である。
【0055】
【表6】

【0056】
ホルボールTPAエステルを投与することによって誘発された細胞充実性を、TPAの投与後、次いでプロピオン酸クロベタゾールで処理後、およびプロピオン酸クロベタゾールとHAFを含んでなる組成物で処理後に測定した。マウス当たり10回の測定を行った。結果を表7にまとめている。抗炎症指数は、TPA、およびTPA+PCまたはTPA+PC+HAFの結合で処理した対照の間の比である。
【0057】
【表7】

【0058】
ホルボールTPAエステルを投与することによって誘発された皮膚ミエロペルオキシダーゼ活性を、TPAの投与後、次いでプロピオン酸クロベタゾールで処理後、およびプロピオン酸クロベタゾールおよびHAFを含んでなる組成物で処理後に測定した。マウス当たり10回の測定を行った。結果は、表8にまとめている。抗炎症指数は、TPA、およびTPA+PCまたはTPA+PC+HAFの結合で処理した対照の間の比である。
【0059】
【表8】

【0060】
HAFはプロピオン酸クロベタゾールの抗炎症効果を阻害せず、逆に抗炎症効果を強化する。
【0061】
図5および図6は、Van GiesonエラスチンおよびSiriusレッドによって染色した組織切片を示す。HAFは、弾性ネットワークと皮膚コラーゲンをプロピオン酸クロベタゾールによる破壊から保護することを明らかにすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ヘマトキシリン−エオシンで染色したマウスの皮膚および表皮の組織切片。
【図2】抗−CD44によるマウス切片の免疫組織化学分析。これは、HAFが、プロピオン酸クロベタゾールで処理したマウスの皮膚におけるCD44の発現を回復および増加することを示している。
【図3】マウス皮膚のタンパク質抽出物の抗−CD44v3抗体によるウェスタンブロット分析。これは、HAF断片が、デソニドで処理したマウスの皮膚におけるCD44v3の発現を回復および増加すること、従って、HAFの潜在的効果を示している。
【図4】マウス皮膚のタンパク質抽出物の25kDa抗プロ−HB−EGF抗体によるウェスタンブロット分析。Aはキャリヤーであり、Bはプロピオン酸クロベタゾールであり、Cはプロピオン酸クロベタゾール+HAFを表す。これは、HAFが、プロピオン酸クロベタゾールで処理したマウス皮膚におけるプロ−HB−EGFの発現を回復および増加することを示している。
【図5】Van GiesonエラスチンおよびSiriusレッドによって染色した組織切片。HAFは、弾性ネットワークと皮膚コラーゲンをプロピオン酸クロベタゾールによる破壊から保護することを明らかにすることができた。
【図6】Van GiesonエラスチンおよびSiriusレッドによって染色した組織切片。HAFは、弾性ネットワークと皮膚コラーゲンをプロピオン酸クロベタゾールによる破壊から保護することを明らかにすることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所投与を目的とする抗炎症性皮膚用組成物であって、
コルチコステロイド0.005〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.05重量%、および平均分子量が20〜500kDa、好ましくは20〜375kDa、更に好ましくは20〜150kDaのヒアルロン酸断片0.1〜1重量%、好ましくは0.5〜1重量%を含んでなり、
前記ヒアルロン酸断片が、高分子量のヒアルロン酸ナトリウムの繊維を100℃を上回る温度で熱処理するか、または高分子量のヒアルロン酸ナトリウムの繊維を400Wおよび4℃で10〜90分間、好ましくは45分間超音波によって処理した後、ゲル上で濾過することによって得ることができるものである、組成物。
【請求項2】
コルチコステロイド0.05重量%およびヒアルロン酸断片0.5重量%を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
コルチコステロイド0.01重量%およびヒアルロン酸断片1重量%を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
コルチコステロイドが、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルランドレノロン、酢酸フルプレドニデン、フルオコルトロン、フルコルチンブチル、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルクロロロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、塩酸フュージリン、フルメトロン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、およびそれらの混合物から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
コルチコステロイドがプロピオン酸クロベタゾールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物および1種類以上の薬学上許容可能な賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項7】
薬学上許容可能な皮膚軟化基剤を含んでなる、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
クリーム、香油、ゲル、スプレー、軟膏、ローション、フィルム形成溶液、経皮系、フォーム、シャンプーとして提供するための他の皮膚科学上許容可能な賦形剤を含んでなる、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
薬剤としての、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
炎症性皮膚病の治療を目的とする薬剤としての、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
別々の、同時の皮膚科での使用または炎症性皮膚病の治療において適宜塗布される、クリームとしての1種類のコルチコステロイドと、これもまたクリームとしての、平均分子量が20〜50kDa、好ましくは20〜375kDa、更に好ましくは20〜150kDaのヒアルロン酸断片とを含んでなる組み合わせ物であって、
前記ヒアルロン酸断片が、高分子量のヒアルロン酸ナトリウムの繊維を100℃を上回る温度で熱処理するか、または高分子量のヒアルロン酸ナトリウムの繊維を400Wおよび4℃で10〜90分間、好ましくは45分間超音波によって処理した後、ゲル上で濾過することによって得ることができるものである、組み合わせ物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−533673(P2010−533673A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516471(P2010−516471)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059021
【国際公開番号】WO2009/010448
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(500166231)ピエール、ファブレ、デルモ‐コスメティーク (30)
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE DERMO−COSMETIQUE
【Fターム(参考)】