説明

コルチコステロイドを含有するスティックタイプの局所製剤

【課題】コルチコステロイドを含有する固体スティック局所組成物の提供。
【解決手段】コルチコステロイド製剤であって、外部保護カバーを含む固体スティックは、25℃で固体となる量で存在する少なくとも1種類のロウ;5〜20重量%の量のプロピレングリコール;及び前記プロピレングリコール及びワセリンを乳化するための、前記組成物の総重量を基にして0.2〜2.0重量%の量で存在する乳化剤を含有する。該固体スティックは、保護カバーに収納されているため、塗布時にスティックを持つ手と接触しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、コルチコステロイドを含有するスティックタイプの局所製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景
超強力コルチコステロイドによる局所治療は、乾癬及び湿疹の最も魅力的な治療の一つとなっている。局所経路の投与は、これらのステロイドの全身投与が許容しがたい副作用をもたらすことを考えると経口経路よりも優れている。しかしながら、局所経路に問題がないわけではない。超強力コルチコステロイドは、症状が現れている皮膚の部分だけでなく健康な皮膚にも影響を及ぼす。従って、超強力ステロイドの塗布を患部に限局することは非常に重要である。
現在、製剤タイプの主流は軟膏又はクリームである。このタイプの製剤は皮膚に擦り込まなくてはならず、製剤が皮膚によって加熱されるため粘度が低下し、製剤が患部だけでなく健康な皮膚にも広がってしまう結果となっている。別の側面は、クリーム又は軟膏の患部への強制分配である。通常、これは手によってなされるので、結果的に塗布に使用した手も同様に処置されることになる。病変部以外への長期の塗布は、これらの部分における皮膚萎縮の危険性を増大させる。
【0003】
乾癬及び湿疹の局所治療に伴う別の問題は、塗布と作用開始との間の時間のずれである。時間のずれが長いと、治療効果だけでなく患者のコンプライアンス(薬剤適用遵守)にも影響を与える。
【0004】
前述した従来のステロイド局所塗布の望ましくない影響を解決しようと多くの試みがなされてきた。以下の文献はこれらの問題を解決しようとしているが、不十分である。
米国特許第4,299,828号には、コルチコステロイドを含有する局所用スティックが記載されている。該特許では、コルチコステロイドを以下の溶媒、すなわち、ヒマシ油、鉱油、イソステアリルアルコール、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジイソプロピル、及びそれらの混合物の一つ又は複数と定義される油性溶媒に溶解する。該特許は浸透速度を最大にするために飽和溶液の重要性を説いているが、浸透性又は効能に関する開示はない。該特許は特別の目的のための溶媒混合物の適切性については詳細な情報を示している。該特許に記載されている溶媒は本願には必要ない。さらに、該特許は本発明の意外な利点について開示していない。
【0005】
D0320616(現在権利消滅)は、低力価コルチコステロイド用の油性溶媒を含む化粧用スティック塊を教示している。該公報は包含されているステロイドの効果については全く言及せず、本発明の意外な利点に関する開示もない。
【0006】
WO98/18472には、ヘルペス感染治療用のアシクロビルを含有するスティック製剤が示されている。該公報は、ステロイドの浸透性やステロイドを包含するための条件について言及せず、本発明の意外な利点に関する開示もない。
【0007】
WO00/28958には、アセチルサリチル酸スティックの製造が示されている。該組成物は、アセチルサリチル酸の溶解度を最適化するように設計されているが、本発明の意外な利点に関する教示はない。
【0008】
WO00/44347には、一般的なスティック製剤が示されている。該製剤は、溶媒と水を合わせて最低85%含有せねばならない。該製剤はセルロースベースの増粘剤を用いて濃厚化されている。該出願は本発明の意外な利点に関して教示していない。
【0009】
米国特許第4,883,792号には、コルチコステロイドと抗真菌薬を組み合わせたスティック製剤が開示されている。該製剤は、溶媒系、すなわち水及びプロピレングリコール、乳化剤、ロウ、緩衝液などからなる。ロウの含有量は2〜5%である。該特許は本発明の意外な利点について教示していない。
【0010】
米国特許第5,110,809号は、低力価コルチコステロイドであるヒドロコルチゾンが、10%の水、80%のアルコール(エタノール20%及びプロピレングリコール60%)、及びセルロース増粘剤を含有する製剤中に配合されると、クリーム又は軟膏に製剤化する場合よりも皮膚に早く浸透することを教えている。本発明では、プロピレングリコールの量は80%よりもずっと低く保たれている。該特許は本発明の意外な利点について教示していない。
【0011】
米国特許第5,543,148号は、プロピレングリコールの形態の多量の溶媒(70〜80%)及び脂肪酸のアルカリ金属塩を基にしたゲル化系に基づくスティック組成物を開示している。本発明は70%よりずっと少量のプロピレングリコールを利用している。さらに該特許の製剤は少なくとも5%の水を含有する。本発明では水を意図的に含めることはない。該特許も本発明の意外な利点について教示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の問題を回避するステロイドの局所塗布が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要旨
本発明の目的は、手などの健康な皮膚への塗布を回避する局所用ステロイド組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、治療される皮膚へのステロイドの適切な浸透を提供する局所用ステロイド組成物を提供することである。
上記目的及びその他の目的が本発明によって達成される。本発明は、コルチコステロイドを含有する実質的に水を含まない固体スティック組成物を提供する。そこでは驚くべきことに、臨床試験での作用の開始が、ロウを含まない従来の半固体軟膏組成物の場合よりも早い。
【0014】
本発明は、製薬学的に有効な量で存在するコルチコステロイド、少なくとも1種類のワセリン、スティックが25℃で固体であるに足る量で存在する少なくとも1種類の合成ロウ、約5〜約20重量%の量のプロピレングリコール、及び前記プロピレングリコール及びワセリンを乳化する量で存在する乳化剤を含む固体スティック局所組成物を提供する。固体スティックは保護カバーに収納されているので、塗布中に固体スティックとスティックを持つ手が接触しない。
【0015】
本発明は、固体スティックの製造法も提供する。該方法は、少なくとも1種類のワセリン、少なくとも1種類のロウ、約5〜約20重量%の量のプロピレングリコール;及び前記プロピレングリコール及びワセリンを乳化する量で存在する乳化剤を合わせて局所組成物を形成するステップと、前記局所組成物を前記ロウが溶融するに足る温度に加熱するステップと、加熱された局所組成物を混合するステップと、加熱された局所組成物を固体スティックの形状の金型に注入し、前記局所組成物を冷却させて固体スティックを形成させ、前記固体スティックを外部保護カバーにパッキングするか、又は加熱された局所組成物を外部保護カバーに注入し、加熱された局所組成物を外部保護カバー内で冷却させて固体スティックを形成させるステップと(前記固体スティックは実質的に水を含まない)、そして製薬学的に有効な量の少なくとも1種類のコルチコステロイドを局所組成物に前記局所組成物を加熱するステップの前、中又は後に加えるステップとを含む。
【0016】
本発明はさらに、皮膚疾患を治療するためにコルチコステロイドを皮膚に塗布する方法も提供する。該方法は、外部保護カバーを開けて固体スティックを露出させるステップと、前記固体スティックを皮膚疾患のために治療される皮膚表面に擦り込むステップとを含み、その際、前記固体スティックは外部保護カバーを持つ手の皮膚と接触せず、前記固体スティックは局所組成物から形成され、前記局所組成物は、製薬学的に有効な量で存在する少なくとも1種類のコルチコステロイド、少なくとも1種類のワセリン、前記組成物が25℃で固体であるに足る量で存在する少なくとも1種類のロウ、約5〜約20重量%の量のプロピレングリコール、及び前記プロピレングリコール及びワセリンを乳化する量で存在する乳化剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例で実施された動的血管収縮試験の結果を示すグラフである。
【図2】本発明によるスティックを示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 底蓋、2 ネジ付属器、3 体部、4 ネジ、5キャップ、6 ネジ筋、7 ネジ山、8 水平部、9 スティック、10ガイド、11 溝、12 溝。
【0019】
本組成物は、プロピレングリコール、ワセリン、ロウ、乳化剤、及びコルチコステロイドの形態の活性成分を含む。
製剤中のプロピレングリコールの量は、溶解度だけでなく薬物の皮膚への浸透速度にも影響を与えることになる。一般に、プロピレングリコールの量が多いほど溶解度は高く、浸透速度も速い。適切な浸透速度は、プロピレングリコールを約5〜約20重量%、好ましくは約10〜約20重量%の量で使用することによって見出されている。本明細書中に開示されている全ての量は特に明記しない限り組成物の総重量を基にした重量パーセントである。特定のコルチコステロイド、すなわちプロピオン酸クロベタゾールの場合、プロピレングリコールの量は、好ましくは約10〜約13%、最も好適な範囲は12〜13%であることが見出されている。プロピレングリコールの量はコルチコステロイドが異なればわずかに変動しうる。
製剤中の主たる賦形剤はワセリン(petrolatum、通称 petroleum jelly)であることが分かっている。ワセリンは通常、軽質及び揮発性の成分が留出した後の石油から半固体残渣として得られる。製薬用賦形剤ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)、米国製薬協会(American Pharmaceutical Association)、ワシントン(Ainley Wade及びPaul J Weller編)、第2版、1994年、では、ワセリンを石油から得られる一般式C(n)H(2n+2)を有する半固体飽和炭化水素の精製混合物と定義している。炭化水素は主に分枝及び非分枝鎖を含むが、パラフィン側鎖と共にいくらかの環状アルカン及び芳香族分子が存在することもある。ワセリンという用語は石油ベースの半固体炭化水素のその他の混合物も含む。それらは、皮膚への塗布に適切な“petrolatum”又は“petroleum jelly”として当該技術分野で一般に呼ばれている又は市販されている。よく知られているワセリンはVaselineという商品名で販売されている。
【0020】
いかなる特定の操作理論にも拘束されないが、ワセリンは軟膏塊として組成物中で有効であると考えられ、皮膚では皮膚軟化薬として作用する。また、ワセリンは皮膚修復開始剤としても機能すると考えられている。ワセリンは約80重量%まで、好ましくは約50〜約80%、さらに好ましくは約60〜約80重量%の範囲の量で包含されうる。ワセリンの一部は他の脂質又は脂質の組合せで置換してもよい。従って、軟膏塊という用語は、純ワセリン、又は溶解度、親油性及び融点に関して類似の性質を有する脂質の混合物を含む。本明細書中に開示されている実施例では、ドイツWitco社の白色ワセリンを利用している。他の製造業者のワセリンを本発明の製剤に使用する場合、本明細書中に開示されている量は製剤の所望の性質を達成するためにわずかに変更しなければならないこともあろうが、そうしたことは十分当業者の技能の範囲内である。その他の市販ワセリンの例は、UltraChemical社、Carolina Medical Products社及びAmco Chemical社の製品などであるが、これらに限定されない。
【0021】
使用されるロウの量は、ロウ又はロウ混合物の選択によって異なる。ロウは、固体スティックがその構造を25℃、好ましくは35℃で実質的に保持するように選択され、またそのような量で存在しなければならない。適切なロウは、合成ロウ、並びに平均炭素鎖長18〜36の脂肪酸のグリセロール又はグリコールエステルを含む。ロウは通常、所望の性質を有する固体スティックを提供するために約10〜約20重量%の量で提供される。商品名Syncrowaxというロウを本明細書中に開示の実施例では使用した。類似の性質を有する他の製造業者のロウも当然ながら利用可能である。パラフィンロウは性質が異なることもあるが、我々の知識では任意の品質のものが使用できる。もっとも、品質によっては組成に多少の変更をもたらすことがあるかもしれないが、当業者であれば必要以上の実験をしなくても達成可能であろう。
【0022】
乳化剤を製剤に含めるのは、ワセリン中のプロピレングリコールの溶解度が最大添加量よりも通常低いためである。乳化剤は、プロピレングリコールとワセリンを適切に乳化する量で添加されるべきである。好ましくは、乳化剤は、添加しなかった場合よりも低温で組成物をより半透明に維持する量で存在する。このことはパッキング過程で重要である。従って、使用される乳化剤の量は含まれるプロピレングリコールの量による。好ましくは、プロピレングリコールと乳化剤間の比率は、液体の場合v/vで、固体乳化剤の場合はv/wで、約8:1〜12:1である。好適な乳化剤はセスキオレイン酸ソルビタンであるが、プロピレングリコールとワセリンを乳化するのに適切なその他の乳化剤も、所望であれば使用できる。
【0023】
“実質的に水を含まない”という用語は、成分及び製造工程に伴って組成物に通常導入される極めて少量の水、例えば全組成物の重量を基にして2%未満、好ましくは1重量%未満の水を意味する。プロピレングリコールは、USP25に従って0.2%の水を含有することが許されているので、プロピレングリコールに伴って少量の水が組成物に通常導入されることになる。水は、製造の冷却段階時の沈殿によっても組成物に導入されうる。特に2%以上の水の存在は、基剤中のプロピレングリコールの溶解度に影響を及ぼすことになるので、製品の安定性に負の影響を与える。従って、水の量は2%未満、好ましくは1%未満に維持すべきである。最も好ましくは、組成物に意図的に水を加えないことである。
【0024】
美容性の増強を意図したその他の薬剤、例えばオレイルアルコール、並びに従来の添加剤も、限られた量、例えば約10重量%まで加えてもよい。
局所塗布用に使用される任意のコルチコステロイドが本組成物に使用できる。好適なコルチコステロイドの例は、超強力コルチコステロイド、及び強力〜中程度コルチコステロイドと一般に呼ばれているものである。適切な超強力コルチコステロイドの例は、プロピオン酸クロベタゾール(Clobetasol propionate)、ハルシノニド(Halcinonide)及び吉草酸ジフルコルトロン(Diflucortolone valerate)などであるが、これらに限定されない。適切な強力〜中程度コルチコステロイドの例は、トリアムシノロンアセトニド(Triamcinolone acetonide)、吉草酸ベタメタゾン(Betamethasone valerate)、吉草酸フルチカゾン(Fluticasone valerate)、ジプロピロオン酸ベタメタゾン(betamethasone dipropionate)、フランカルボン酸モメタゾン(Mometasone furoate)、ヒドロコルチゾン−17−ブチレート(Hydrocortisone-17-butyrate)、ジプロピオン酸ベクロメタゾン(Beclomethasone dipropionate)及びフルオシノロンアセトニド(Fluocinolone acetonide)などであるが、これらに限定されない。好適なコルチコステロイドはプロピオン酸クロベタゾールである。
【0025】
コルチコステロイドは製薬学的に有効な量で存在しうる。好適なコルチコステロイド、プロピオン酸クロベタゾールの適切な量の例は、約0.01〜約1重量%である。その他の種類のコルチコステロイドも異なる量で使用してよく、本明細書中に提供されている開示内容に基づいて、製剤分野の専門家であれば、本発明によるスティック組成物に使用することになる適切な量は容易に決定できるであろう。
【0026】
図2に示されているように、スティックは、塗布時に手と活性組成物間の接触を防止する保護的外部構造2に収納された製剤1を含む。任意の適切な材料が使用できるが、好適な材料はポリエチレン及びポリプロピレンである。
【0027】
適切な保護カバーを図1に示す。この保護カバーはポリエチレンMD(中密度)から形成されており、膜は持たない。保護カバーは5つの部品、すなわち、底蓋1、ネジ付属器2、体部3、ネジ4、及びキャップ5を含む。底蓋1及びネジ付属器2を除く全ての材料は二酸化チタン及び炭酸カルシウムを用いて白色に着色されている。底蓋1とネジ付属器2は、ピグメントブルー(C.I.Pigment Blue)15:3及びピグメントグリーン7を加えて青色に着色されている。底蓋1は、パッキング時、溶融材料を中空のネジ付属器2及びネジ4を通して分配する際には取り外されている。円筒形のネジ付属器2は内表面にネジ筋6を有し、他方、ネジ4は、外縁がネジ山7で覆われている。ネジ4の上部は水平部8を有し、そこにスティック9が取り付けられる。ネジ付属器2を回転させることにより、スティック9は上方に運ばれる。体部3はガイド10を備えており、対応するネジ4上のキー11がスティック9の回転を防止している。ネジ4は、2個のキー12を含有し、スティック9に取付面を与えている。スティックは現在のところ2種類のサイズを想定している。1)50mlサイズで高さ約120mm×直径42mm、及び2)20mlサイズで高さ約111mm×直径約32mm。しかしながら、スティックは所望の用途に適切な任意のサイズに形成できる。
製造
スティック製剤は、成分を合わせて局所組成物を形成し、該局所組成物をロウが溶融する温度、例えば約70℃〜約80℃に加熱し、撹拌して溶解し、そして該局所組成物を外部保護カバーにパッキングすることによって製造できる。パッキングは低温、例えば約50℃〜約60℃で実施できる。50〜55℃が好適である。温かいパッケージは周囲温度に徐冷させることができる。それにより局所組成物は硬化し、固体スティックが形成される。あるいは、加熱された局所組成物を金型に注入し、冷却させて固体スティックを形成してもよい。次にその固体スティックを外部保護カバーにパッキングする。所望であれば、コルチコステロイドは、加熱ステップの前、中又は後に残りの成分と合わせることができる。コルチコステロイドが、局所組成物が加熱される温度で感熱性であれば、そのコルチコステロイドは冷却ステップ中に局所組成物に添加することができる。
【実施例】
【0028】
実施例1
本発明の製剤の2種類の製剤を前述の製造法に従って製造した。
【0029】
【表1】

【0030】
製剤は、注意深く混合し、75℃に加熱することによって製造した。混合の完了後、温度を60℃に冷却し、溶融したスティック塊を予熱したスティック保護カバーにパッキングした。保護カバーは充填後徐々に冷却させた。
【0031】
スティックをいくつかの物理及び化学的パラメータに関する安定性について試験した。ASTM1321/DIN51579に従って針入度計試験を実施し、スティックの硬度を測定した。スティックは室温(25℃)並びに35℃で固体であった。このことは、スティックが皮膚の上で広がったり流れたりせず、結果として塗布した領域内にとどまることを意味する。
実施例1のスティック組成物1及び2と従来の局所用コルチコステロイドとの比較
局所用コルチコステロイドの血管収縮作用は、血管収縮が臨床効果の良好な指標とみなされていることから、開発作業中の臨床効果の評価によく使用されている。本実験では、Stauton及びMcKenzieによる動的血管収縮法を用いた。参加した健常志願者の数は20人であった。製剤は45分間塗布し、その後製剤を除去して、血管収縮、すなわち蒼白化を色度計で6時間測定した。試験した組成物は、組成物1、組成物2及び市販軟膏のテモベート(Temovate)であった。低力価の比較薬、吉草酸ベタメタゾンUSP軟膏も含めた。テモベートの主組成を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
図1及び表3に動的血管収縮試験の結果を示す。
【0034】
【表3】

【0035】
AUCも測定し、結果を表4に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
データによれば、皮膚に浸透したコルチコステロイドの量は、本発明による2種類のスティック製剤のほうが対応する従来の軟膏製剤よりも著しく高かったことが示されている。このことは、局所用ビヒクルの粘度の増加は含まれている薬物の皮膚浸透速度に通常悪影響を及ぼすことがよく知られているため、思いがけない効果である。
【0038】
クレームされた発明を、詳細に、そしてその特定の態様に関して説明してきたが、当業者であれば、クレームされた発明に対して、その精神及び範囲に反することなく多様な変形及び変更が可能であることは分かるであろう。
発明の態様
[1]
固体スティックの形態の局所組成物と外部保護カバーとを含む固体スティックであって、
前記局所組成物は、
製薬学的に有効な量で存在する少なくとも1種類のコルチコステロイド;
少なくとも1種類のワセリン;
前記組成物が25℃で固体であるに足る量で存在する少なくとも1種類のロウ;
約5〜約20重量%の量のプロピレングリコール;及び
前記プロピレングリコール及びワセリンを乳化する量で存在する乳化剤
を含み;
前記外部保護カバーは、前記固体スティックを収納し、前記外部保護カバーを持つ手と前記固体スティック間の接触を防止するように構築及び配置され、
前記局所組成物は実質的に水を含まない固体スティック。
[2]
前記ロウが前記組成物の総重量を基にして約10〜約20重量%の量で存在する、1に記載の固体スティック。
[3]
前記ロウが、炭素原子数18〜36の酸のグリセロールエステル又はグリコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む、1に記載の固体スティック。
[4]
前記ロウが、前記スティックが35℃で固体であるに足る量で存在する、1に記載の固体スティック。
[5]
前記ロウが、前記スティックが25℃で固体であり実質的にその形状を保持するような量で存在する、1に記載の固体スティック。
[6]
前記ロウが軟質白色パラフィンを含む、1に記載の固体スティック。
[7]
プロピレングリコールが前記組成物の総重量を基にして約10〜約20重量%の量で存在する、1に記載の固体スティック。
[8]
プロピレングリコールが前記組成物の総重量を基にして約10〜約13重量%の量で存在する、1に記載の固体スティック。
[9]
プロピレングリコールが前記組成物の総重量を基にして約12〜約13重量%の量で存在する、1に記載の固体スティック。
[10]
前記ワセリンが前記組成物の総重量を基にして約50〜約80重量%の量で存在する、1に記載の固体スティック。
[11]
前記ワセリンが前記組成物の総重量を基にして約60〜約80重量%の量で存在する、1に記載の固体スティック。
[12]
脂質をさらに含む、1に記載の固体スティック。
[13]
前記乳化剤がセスキオレイン酸ソルビタンを含む、1に記載の固体スティック。
[14]
前記乳化剤が前記組成物の総重量を基にして約0.2〜約2.0重量%の量で存在する、1に記載の固体スティック。
[15]
プロピレングリコール:乳化剤間の比率が、液体の場合v/vで、固体乳化剤の場合v/wで、約8:1〜約12:1である、1に記載の固体スティック。
[16]
前記コルチコステロイドが前記組成物の総重量を基にして約0.01〜約1重量%の量で存在する、1に記載の固体スティック。
[17]
前記コルチコステロイドがプロピオン酸クロベタゾールを含む、1に記載の固体スティック。
[18]
前記コルチコステロイドが、プロピオン酸クロベタゾール、ハルシノニド、吉草酸ジフルコルトロン、トリアムシノロンアセトニド、吉草酸ベタメタゾン、吉草酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、ヒドロコルチゾン−17−ブチレート、ジプロピオン酸ベクロメタゾン及びフルオシノロンアセトニドからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む、1に記載の固体スティック。
[19]
前記局所組成物が2重量%未満の水を含有する、1に記載の固体スティック。
[20]
前記局所組成物が1重量%未満の水を含有する、1に記載の固体スティック。
[21]
前記外部保護カバーが、体部と、前記固体スティックを前記体部から下降及び上昇させる機構とを含む、1に記載のスティック。
[22]
前記外部保護カバーがさらにネジ付属器を含み、ネジは、前記ネジを前記ネジ付属器に対して回転した場合、前記ネジが体部に対して上昇又は下降するように構築及び配置され、前記ネジはスティック保持用の水平部を含む、21に記載のスティック。
[23]
固体スティック形成用の局所組成物であって、
製薬学的に有効な量で存在する少なくとも1種類のコルチコステロイド;
少なくとも1種類のワセリン;
前記組成物が25℃で固体であるに足る量で存在する少なくとも1種類のロウ;
約5〜約20重量%の量のプロピレングリコール;及び
前記プロピレングリコール及びワセリンを乳化する量で存在する乳化剤
を含み、前記局所組成物は実質的に水を含まない局所組成物。
[24]
固体スティックの製造法であって、
少なくとも1種類のワセリン、少なくとも1種類のロウ;約5〜約20重量%の量のプロピレングリコール;及び、前記プロピレングリコール及びワセリンを乳化する量で存在する乳化剤を合わせて局所組成物を形成するステップと;
前記局所組成物を前記ロウが溶融するに足る温度に加熱するステップと;
前記加熱された局所組成物を混合するステップと;
前記加熱された局所組成物を固体スティックの形状の金型に注入し、前記局所組成物を冷却させて固体スティックを形成させ、前記固体スティックを外部保護カバーにパッキングするか、又は前記加熱された局所組成物を外部保護カバーに注入し、前記加熱された局所組成物を外部保護カバー内で冷却させて固体スティックを形成させるステップと(前記固体スティックは実質的に水を含まない);そして
製薬学的に有効な量の少なくとも1種類のコルチコステロイドを局所組成物に前記局所組成物を加熱するステップの前、中又は後に加えるステップと
を含む製造法。
[25]
皮膚疾患を治療するためにコルチコステロイドを皮膚に塗布する方法であって、
外部保護カバーを開けて固体スティックを露出させるステップと;そして
前記固体スティックを皮膚疾患のために治療される皮膚表面に擦り込むステップと
を含み、その際、前記固体スティックが外部保護カバーを持つ手の皮膚と接触せず、前記固体スティックは局所組成物から形成され、前記局所組成物は、製薬学的に有効な量で存在する少なくとも1種類のコルチコステロイドと、少なくとも1種類のワセリンと、前記組成物が25℃で固体であるに足る量で存在する少なくとも1種類のロウと、約5〜約20重量%の量のプロピレングリコールと、そして前記プロピレングリコール及びワセリンを乳化する量で存在する乳化剤とを含む方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体スティックの形態の局所組成物と外部保護カバーとを含む固体スティックであって、
前記局所組成物は、
非油性溶媒中に製薬学的に有効な量で存在する少なくとも1種類のコルチコステロイド;
少なくとも1種類のワセリン;
前記組成物が25℃で固体であるに足る量で存在する少なくとも1種類のロウ;
5〜20重量%の量のプロピレングリコール;及び
前記プロピレングリコール及びワセリンを乳化するための、前記組成物の総重量を基にして0.2〜2.0重量%の量で存在する乳化剤
を含み;
前記外部保護カバーは、前記固体スティックを収納し、前記外部保護カバーを持つ手と前記固体スティック間の接触を防止するように構築及び配置され、
前記局所組成物は水を含まないかまたは意図的に加えない2重量%未満の水を含む固体スティック。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−241211(P2011−241211A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−107278(P2011−107278)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【分割の表示】特願2004−551114(P2004−551114)の分割
【原出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【出願人】(304048241)ヤーゴテック アクチェンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】JAGOTEC AG
【Fターム(参考)】