説明

コレクチン活性を有するhCL−K1ポリペプチド

【課題】 有用な免疫学的活性を奏する生理活性物質であるのみならず、生体防御に関わるヒトの免疫機能を解明する上で有用な手段として期待される、コレクチン活性を有する新規のポリペプチドを提供する。
【解決手段】 271個の連続するアミノ酸からなり、かつマルトースおよびN-アセチルガラクトサミンに結合しないhCL-K1ポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、さらに該ポリヌクレオチドが導入されたベクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コレクチン活性を有する精製および単離されたヒト由来のポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
生体防御において重要な役割を担っている補体系として、免疫グロブリンを認識分子とし、かつ補体第一成分であるC1を活性化する古典的経路と、補体第三成分であるC3を細菌等の異物に直接結合する第二経路が知られている。 近年、これらの補体活性化経路に加えて、血清レクチンであるマンノース結合タンパク質(以下、「MBP」と称する)が、異物表面の糖鎖を直接認識して結合することによって、補体系を活性化せしめるレクチン経路が明らかにされている[非特許文献1]。
【0003】
MBPは、カルシウム存在下、マンノースやN-アセチルグルコサミンなどに特異的に結合するC型レクチンであり、その構造は、少なくとも、(Gly-Xaa-Yaa)nのアミノ酸配列からなるコラーゲン様領域と糖鎖認識領域(CRD)を有する。 このようなコラーゲン様領域や糖鎖認識領域を有するレクチンは、コレクチンと総称されており[非特許文献2]、MBP以外にも、コレクチン-43(CL-43)、サーファクタントタンパク質A(SP-A)、サーファクタントタンパク質D(SP-D)およびウシコングルチニン(BKg)などがある。
【0004】
コレクチンは、オプソニン活性を有し、細菌、ウィルスを含めた様々な微生物に対する基礎免疫に関与していると考えられている[非特許文献3〜6]。
【0005】
図1を参照すると、これらコレクチンAは、糖鎖認識領域Bおよびコラーゲン様領域Cなどの特徴的な領域を含む基本構造から構成されていることが知られている[非特許文献7]。 そして、コラーゲン様領域Cにおいて、トリプルへリックスが形成されることによって、サブユニットが形成される。 そして、このサブユニットが、三量体、四量体、六量体等のオリゴマー構造をさらに形成している。
【0006】
最近になって、コレクチンによる非特異的な免疫応答への関与が示唆されており、例えば、母親の移行抗体や特異的防御システムが十分に発達していない乳幼児や子供において、コレクチンが、種々の微生物の中和作用や微生物の排除に重要な役割を果たしているとの報告がなされている[非特許文献8]。 さらに、宿主の生体防御におけるコレクチンの役割に関して、MBPの遺伝子上の変異に起因したMBPの血中濃度の低下によって、宿主が感染を受けやすくなるという研究結果も報告されている[非特許文献9]。 また、オプソニン化不全患者の血清中MBP含量は低値を示し[非特許文献10]、細菌感染を起こしやすいという報告もあることから[非特許文献11]、MBPは免疫機構において重要な役割を担っていると考えることができる。
【0007】
本発明者らは、以前にBKgおよびMBPが、H1およびH3タイプのインフルエンザA型ウィルスの感染や赤血球凝集活性を阻害することを見出した[非特許文献12〜13]。
【0008】
その後、ウシコングルチニンをコードするcDNAクローンが取得されて、ウシコングルチニンとサーファクタントタンパク質Dなどとの関連性も見出されている[非特許文献14]。
【非特許文献1】Sato, T. et al., Int. Immunol., 6, pp.665-669 (1994)
【非特許文献2】Malhotra, R. et al., Eur. J. Immunol., 22, pp.1437-1445(1992)
【非特許文献3】Kawasaki, N. et al., J. Biochem., 106, pp.483-489 (1989)
【非特許文献4】Ikeda, K. et al., J. Biol. Chem., 262, pp.7451-7454 (1987)
【非特許文献5】Ohta, M. et al., J. Biol. Chem., 265, pp.1980-1984 (1990)
【非特許文献6】Summerfield, J. A. et al., Lancet, 345, p.886 (1995)
【非特許文献7】Malhotra, R. l., Eur. J. Immunol., 22, pp.1437-1445 (1992)
【非特許文献8】Super, et al., Lancet, 2, pp.1236-1239 (1989)
【非特許文献9】Sumiya, et al., Lancet, 337, pp.1569-1570 (1991)
【非特許文献10】Madsen, H. O. et al., Immuno genetics, 40, pp.37-44 (1994)
【非特許文献11】Garred, P. et al., Lancet, 346, pp.941-943 (1995)
【非特許文献12】Wakamiya et al., Glycoconjugate J., 8, p.235 (1991)
【非特許文献13】Wakamiya et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., 187, pp.1270-1278 (1992)
【非特許文献14】Suzuki et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., 191, pp.335-342 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、コレクチンは、有用な免疫学的活性を奏する生理活性物質であるのみならず、生体防御に関わるヒトの免疫機能を解明する上での有用な手段として期待されている物質である。 特に、このコレクチンファミリーに属する新規分子種の発見は、感染症の治療のほかにも、種々の医療分野、そして生物学の分野の発展にも多大に寄与することが考えられる。
【0010】
従って、本願発明は、補体系を活性化するなどの、ヒトの基礎免疫作用に有機的に関与する免疫学的活性(以下、「コレクチン活性」と称する)を奏する新規のポリペプチドの実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者らは、上掲した従来技術で認識されていた技術課題に鑑みて、新規コレクチン、とりわけ、実用に供しえるコレクチン活性を奏するヒト由来のポリペプチドについて鋭意研究を行ったところ、本願発明を完成するに至ったのである。
【0012】
すなわち、本願発明の要旨とするところは:
(1) 配列番号:2に記載の271個の連続するアミノ酸からなり、かつマルトースおよびN−アセチルガラクトサミンに結合しない、精製および単離されたポリペプチド;
(2) 配列番号:5に記載の223個の連続するアミノ酸からなる精製および単離されたポリペプチド;
(3) 配列番号:8に記載の247個の連続するアミノ酸からなる精製および単離されたポリペプチド;および
(4) 配列番号:11に記載の247個の連続するアミノ酸からなる精製および単離されたポリペプチド、にある。
【0013】
本願発明の他の態様によれば、前出のポリペプチドの構成アミノ酸の一つ乃至数個が、欠失、置換または付加され、かつ前出のポリペプチドと実質的に同等のコレクチン活性を奏するポリペプチドも提供される。
【0014】
また、本願発明の他の態様によれば、本願発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0015】
本願発明のさらに他の態様によれば、前出のポリヌクレオチドまたはその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ本願発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供される。
【0016】
本願発明のさらに他の態様によれば、本願発明のポリヌクレオチドが導入されたベクターが提供される。
【0017】
本願発明のさらに他の態様によれば、本願発明のベクターを保持している宿主細胞が提供される。
【0018】
本願発明のさらに他の態様によれば、本願発明のベクターで宿主細胞、特に、動物細胞を形質転換し、当該宿主細胞を培養し、そして、培養した宿主細胞が産生したポリペプチドを回収する、工程を含むポリペプチドの製造方法も提供される。
【0019】
本願発明のさらに他の態様によれば、本願発明のポリペプチドに対して特異的な抗体、特にモノクローナル抗体が提供される。
【0020】
本願発明のさらに他の態様によれば、本願発明のポリペプチドが奏するコレクチン活性を刺激するアゴニスト、それに、本願発明のポリペプチドが奏するコレクチン活性を阻害するアンタゴニストが提供される。
【発明の効果】
【0021】
本願発明によると、所期の目的であった、ヒトの免疫機能や細菌感染症などの疾患の発症機構の解明のみならず、これら疾患の診断、予防および治療に用いる試薬や医薬を開発する上で有用な、コレクチン活性を有する新規のポリペプチドが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本願発明の構成を、以下に、詳細に説明する。
【0023】
本発明者らは、ヒト由来のコレクチンの発現をコードする遺伝子を鋭意研究した結果、新規の遺伝子(以下、「hCL-K1ポリヌクレオチド」と称する)をクローニングするに至った。 すなわち、hCL-K1ポリヌクレオチドの発現産物である配列番号:2に記載の271個の連続するアミノ酸からなるポリペプチド(以下、「hCL-K1ポリペプチド」と称する)のC末端側には、基礎免疫に関与すると考えられる糖鎖認識領域(配列番号:2の第113位〜第271位のアミノ酸)ならびに(Gly-Xaa-Yaa)nのアミノ酸配列からなるコラーゲン様領域(配列番号:2の第41位〜第112位のアミノ酸)を有していた。
【0024】
また、図3を参照すれば、hCL-K1ポリペプチドのN末端に位置する一連のアミノ酸(第1位〜第43位のアミノ酸)には、シグナル配列とコラーゲン構造(一巻分)のアミノ酸が含有されていた。
【0025】
hCL-K1ポリペプチドには、mRNAのオルターナティブスプライシングによって生じた3種の変異ポリペプチド、すなわち、hCL-K1v1、hCL-K1v2およびhCL-K1v3と命名された各ポリペプチドがある。
【0026】
hCL-K1v1ポリペプチドは、配列番号:5に記載の223個の連続するアミノ酸からなり、かつ配列番号:2の第44位〜第91位のアミノ酸(配列番号:1の第394位〜第537位のヌクレオチド)が欠失したものである。
【0027】
hCL-K1v2ポリペプチドは、配列番号:8に記載の247個の連続するアミノ酸からなり、かつ配列番号:2の第44位〜第67位のアミノ酸(配列番号:1の第394位〜第465位のヌクレオチド)が欠失したものである。
【0028】
hCL-K1v3ポリペプチドは、配列番号:11に記載の247個の連続するアミノ酸からなり、かつ配列番号:2の第68位〜第91位のアミノ酸(配列番号:1の第466位〜第537位のヌクレオチド)が欠失したものである。
【0029】
このように、これら3種の変異ポリペプチドは、すべてhCL-K1ポリペプチドのコラーゲン様領域内のスプライシングの差異により生じていた。
【0030】
配列番号:2に記載の271個の連続するアミノ酸とは、hCL-K1ポリペプチドの構成アミノ酸配列である。 この271個のアミノ酸をコードする813個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を、配列番号:3に記載した。 配列番号:2に記載のアミノ酸配列には、シグナル配列、コラーゲン様ドメイン、糖認識構造様領域ドメインなどのコレクチンに特徴的なアミノ酸配列が存在していた。 このhCL-K1ポリペプチドをコードする全長ヌクレオチド配列を、配列番号:1に示した。
【0031】
配列番号:5に記載の223個の連続するアミノ酸とは、hCL-K1v1ポリペプチドの構成アミノ酸配列である。 この223個のアミノ酸をコードする669個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を、配列番号:6に記載した。 配列番号:5に記載のアミノ酸配列には、シグナル配列、コラーゲン様ドメイン、糖認識構造様領域ドメインなどのコレクチンに特徴的なアミノ酸配列が存在していた。 このhCL-K1v1ポリペプチドをコードする全長ヌクレオチド配列を、配列番号:4に示した。
【0032】
配列番号:8に記載の247個の連続するアミノ酸とは、hCL-K1v2ポリペプチドの構成アミノ酸配列である。 この247個のアミノ酸をコードする741個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を、配列番号:9に記載した。 配列番号:8に記載のアミノ酸配列には、シグナル配列、コラーゲン様ドメイン、糖認識構造様領域ドメインなどのコレクチンに特徴的なアミノ酸配列が存在していた。 このhCL-K1v2ポリペプチドをコードする全長ヌクレオチド配列を、配列番号:7に示した。
【0033】
配列番号:11に記載の247個の連続するアミノ酸とは、hCL-K1v3タンパク質の構成アミノ酸配列である。 この247個のアミノ酸をコードする741個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を、配列番号:12に記載した。 配列番号:11に記載のアミノ酸配列には、シグナル配列、コラーゲン様ドメイン、糖認識構造様領域ドメインなどのコレクチンに特徴的なアミノ酸配列が存在していた。 このhCL-K1v3ポリペプチドをコードする全長ヌクレオチド配列を、配列番号:10に示した。
【0034】
また、本願発明は、hCL-K1ポリペプチドが保有するアミノ酸配列に類似する改変アミノ酸配列、およびこの改変アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列をも包含している。 改変アミノ酸配列とは、天然産物または人工産物の別に関係なく、配列番号:2、5、8、11に記載の連続するアミノ酸の一つ乃至数個が、欠失、置換または付加されてもなお、配列番号:2、5、8、11に記載の連続するアミノ酸からなるポリペプチドと同等のコレクチン活性、例えば、補体系を活性化するなどの、ヒトの基礎免疫作用に有機的に関与する免疫学的活性を奏するアミノ酸配列を指す。 ところで、一つ乃至数個のアミノ酸の欠失、置換または付加とは、本願発明のhCL-K1ポリペプチドの親水性、疎水性、酸性、塩基性、含有基などを劇的に変化せしめずに、カルシウムイオン(Ca2+)要求性の糖認識構造様領域およびコラーゲン様領域のそれぞれが呈するコレクチン活性に実質的な影響を与えない範囲内で、アミノ酸を欠失、置換および/または付加することを指す。
【0035】
これまでに報告されているコレクチンファミリーのタンパク質でのアミノ酸配列とそのタンパク質構造に基づき、例えば、カルシウムイオン要求性の糖認識構造様領域で、約1個〜約10個、コラーゲン様領域で、約1個〜約50個、好ましくは、約1個〜約15個のアミノ酸を、欠失、置換および/または付加することが可能であると考えられる。
【0036】
さらに、本願発明は、配列番号:1、4、7または10に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドまたはその相補鎖と、ストリンジェントな条件下で、ハイブリダイズするポリヌクレオチドをも包含している。 本明細書で使用する「ストリンジェント」な条件とは、例えば、5×SSC、5%デンハート溶液(0.1% BSA、0.1% Ficol 1400、0.1% PVP)、0.5% SDSおよび20μg/ml変性サケ精子DNAを含有する溶液中で、37℃で、一夜インキュベートし、次いで、室温で、0.1% SDS含有2×SSCで洗浄する条件を指す。 SSCの代わりに、適宜SSPEを使用してもよい。 このようにして得られたポリヌクレオチドは、配列番号:1、4、7または10に記載のヌクレオチド配列に対して、少なくとも50%以上の相同性(ホモロジー)を有すると考えられる。 配列番号:1、4、7または10に記載からなるポリヌクレオチドまたはその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの多くは、hCL-K1ポリペプチドと同等のコレクチン活性を奏するものと考えられる。 従って、かようなコレクチン活性を奏するポリペプチドも、本願発明の範疇に包含される。
【0037】
本願発明は、天然産物または人工産物の別に関係なく、hCL-K1ポリペプチドの相同体、変異体、修飾体および多形性変種などの誘導体、およびこれら誘導体の断片をも包含している。
【0038】
本明細書で使用する「相同体」の用語は、特に断りのない限り、高い相同性(ホモロジー)を示すヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を指すものであり、ホモロジーが少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上のものを指す。 その配列内にヌクレオチドまたはアミノ酸の欠失や挿入が存在する場合には、ギャップ結合を許容する相同性検索を行うことが望ましい。 例えば、マルチプル・アライメント(商品名:SODHO、富士通)の手法を用いて相同性を検索することもできる。 また、相同性検索のアルゴリズムとして、最も厳密であるSmith-Watermanアルゴリズムを用いることができる。 その他に、FASTAやBLASTなどを、インターネットを通じて利用することができる。
【0039】
本明細書で使用する「変異体」の用語は、特に断りのない限り、例えば、対立遺伝子(アレル)、単一ヌクレオチド多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)などを挙げることができる。 また、コドンの縮重の範囲内での変化に起因して変異を遂げたヌクレオチド配列も、本願発明に包含される。 ヌクレオチド配列のコドンの一部改変は、常法に従い、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用した部位特異的変異導入法(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 81, p.5662 (1984))などに従って実施することができる。 こうして得られた人工的遺伝子変異体も、本願発明のヌクレオチド配列に包含される。 また、コドンの縮重の範囲を超えていても、変異したコドンによって翻訳された変異アミノ酸が、正常アミノ酸と同様の作用を奏するものであることが好ましい。 例えば、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンなどの脂肪族アミノ酸の間での変異;グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、トリプトファン、アスパラギンおよびグルタミンなどの中性アミノ酸の間での変異;アスパラギン酸およびグルタミン酸などの酸性アミノ酸の間での変異;アルギニン、リジンおよびヒスチジンなどの塩基性アミノ酸の間での変異;セリンおよびトレオニンなどの水酸基含有アミノ酸の間での変異;フェニルアラニンおよびチロシンなどの芳香環含有アミノ酸の間での変異など、アミノ酸の性質、機能、特性等が互いに類似のものとすることが望ましい。 これら人工的または天然に変異したポリペプチドも、本発明のポリペプチドに包含される。 PCR法を用いて人工的に部位特異的変異を起こすことができ、あるいは、その他公知の方法を用いて任意の部位に変異をもたらすこともできる。
【0040】
本明細書で使用する「修飾体」の用語は、特に断りのない限り、例えば、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、ミリストイル化、グリコシル化、水酸化、リン酸化、硫酸化、ホルミル化、メチル化、ポリエチレングリコール化、脂質結合、ヌクレオチド結合、金属結合(カルシウム付加体など)、多くのタンパク質(アルブミンなど)との融合体、それに、二量体などの改変を、当該技術分野で周知の技術を用いて実施することができる。 例えば、宿主が大腸菌の場合にはグリコシル化は起こらないため、グリコシル化を企図する場合には、真核細胞において発現するのが望ましい。 哺乳細胞と同様に、昆虫細胞も、翻訳後にグリコシル化を行うために使用することができる。
【0041】
本明細書で使用する「多型性変種」の用語は、特に断りのない限り、例えば、染色体DNAの構造や形態の差異により生じる多型性や、ある遺伝子が対立遺伝子に変化したために生じる多型性などを指す。 一般的に、真核生物の遺伝子は多形現象を示すことが多く、この現象によって、一個またはそれ以上のアミノ酸が置換される場合もあり、また、その場合であってもタンパク質の活性が保持される場合もある。 それゆえに、配列番号:2、5、8または11に記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子を、人工的に置換、欠失、付加および/または挿入などの改変を経て得た遺伝子は、それがコードする改変ポリペプチドが、コレクチン活性を発現している限りは、本願発明に包含される。 また、配列番号:2、5、8または11に記載のアミノ酸配列を人工的に改変したポリペプチドも、コレクチン活性を発現している限りは、本願発明に包含される。
【0042】
本明細書で使用する「断片」の用語は、特に断りのない限り、hCL-K1ポリペプチドを構成するアミノ酸配列の任意の断片を意味しており、例えば、細胞外ドメイン、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、コラーゲン様ドメイン、糖認識構造様領域ドメイン、コレクチン様ドメイン、疎水性ドメイン(膜貫通ドメインなど)、親水性ドメイン(疎水性ドメイン以外)などの他に、これら断片を融合させて得た融合体も挙げることができる。 その具体例として、以下の断片を挙げることができる。
【0043】
hCL-K1ポリペプチドに関しては、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、糖認識構造様領域ドメインを形成する第113位〜第271位のアミノ酸を含む断片、糖認識構造様領域ドメインおよびコラーゲン様ドメインを形成する第41位〜第271位のアミノ酸を含む断片、コラーゲン様ドメインを形成する第41位〜第112位のアミノ酸を含む断片がある。
【0044】
hCL-K1v1ポリペプチドに関しては、配列番号:5に記載のアミノ酸配列において、糖認識構造様領域ドメインおよびコラーゲン様ドメインを形成する第41位〜第223位のアミノ酸を含む断片、コラーゲン様ドメインを形成する第41位〜第64位のアミノ酸を含む断片がある。
【0045】
hCL-K1v2ポリペプチドに関しては、配列番号:8に記載のアミノ酸配列において、糖認識構造様領域ドメインおよびコラーゲン様ドメインを形成する第41位〜第247位のアミノ酸を含む断片、コラーゲン様ドメインを形成する第41位〜第88位のアミノ酸を含む断片がある。
【0046】
hCL-K1v3ポリペプチドに関しては、配列番号:11に記載のアミノ酸配列において、糖認識構造様領域ドメインおよびコラーゲン様ドメインを形成する第41位〜第247位のアミノ酸を含む断片、コラーゲン様ドメインを形成する第41位〜第88位のアミノ酸を含む断片がある。
【0047】
hCL-K1ポリヌクレオチドの取得方法
本願発明のhCL-K1ポリヌクレオチドは、いかなる方法で取得されたものであってもよい。 例えば、本願発明のhCL-K1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、hCL-K1ポリペプチドを発現している細胞からmRNAを調製し、次いで、常法に従って二本鎖DNAに変換して取得することができる。 グアニジンイソチオシアネート・塩化カルシウム法(Chirwin, et al., Biochemistry, 18, p.5294 (1979))などを用いて、mRNAを調製することができる。 オリゴ(dT)を結合した担体、例えば、セファロースまたはラテックス粒子などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどを用いて、全RNAからポリ(A)+RNAを調製することができる。 こうして得られたRNAを鋳型にして、3'-末端に存在するポリ(A)鎖に相補的なオリゴ(dT)またはランダムプライマー、あるいはhCL-K1ポリペプチドを構成するアミノ酸配列の一部に相当する合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、逆転写酵素で処理する(Mol. Cell Biol., 2, p.161 (1982);Mol. Cell Biol., 3, p.280 (1983); Gene, 25, p263 (1983))。 得られたcDNA鎖を、例えば、E.coli RNaseH、E.coli DNA polymerase 1、E.coli DNA ligaseで処理して、DNA鎖に変換することで、二本鎖cDNAを得ることができる。 このcDNAをプラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクターに組み込んで大腸菌を形質転換するか、あるいは、インビトロパッケージングを施した後に、大腸菌にトランスフェクトすることによって、cDNAライブラリーを調製することができる。
【0048】
宿主内で複製保持されるものであれば、いずれのプラスミドベクターでも利用でき、また、宿主内で増殖できるものであれば、いずれのファージベクターでも利用できる。 クローニング用ベクターとしては、例えば、pBR322、pUC19、λgt10、λgt11などが利用可能である。 また、免疫学的スクリーニングに供する場合には、宿主内でhCL-K1ポリヌクレオチドを発現させることができるプロモーターを含有しているベクターを使用することが好ましい。
【0049】
Maniatisらの方法(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, second edition)などは、プラスミドにcDNAを組み込む方法として参考にすることができる。 また、ファージベクターにcDNAを組み込む方法として、Hyunhらの方法(DNA cloning, a practical approach, 1, 49, 1985)などが参考にすることができる。
【0050】
上記した発現ベクターを宿主細胞に導入する方法として、例えば、リポポリアミン法、DEAE-デキストラン法、ハナハン法、リポフェクチン法、リン酸カルシウム法によるトランスフェクション、マイクロインジェクションおよびエレクトロポーレーションなどの方法(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, second edition)がある。 また、インビトロパッケージングは、市販のキット(Stratagene社製、Amersham社製)を用いることによって簡便に行うことができる。
【0051】
このようにして調製されたcDNAライブラリーから、hCL-K1ポリペプチドをコードするcDNAを単離するために、一般的なcDNAスクリーニング方法を組み合わせて利用することができる。 例えば、32Pで標識したプローブを調製し、コロニーハイブリダイゼーション法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 72, 3961, 1975)、プラークハイブリダイゼーション法(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, second edition、Cold Spring Harbor Laboratory, 2, 108, 1989)によって、目的のcDNAを含有するクローンをスクリーニングすることができる。 また、PCR法を利用してクローンを選択することもできる。 さらに、cDNAを発現しうるベクターを用いてcDNAライブラリーを調製した場合には、hCL-K1ポリペプチドを認識する抗体を用いることによって、目的とするクローンを選択することができる。
【0052】
また、hCL-K1ポリヌクレオチドを発現する細胞から、hCL-K1ポリヌクレオチドを単離する場合には、例えば、遺伝子を発現する細胞をSDSまたはプロテナーゼKを用いて溶解し、フェノール処理を行う。 不要のRNAを、リボヌクレアーゼで消化する。 こうして得られるDNAを制限酵素で消化して得たDNA断片を、ファージまたはコスミドで増幅してライブラリーを調製する。 その後、目的のクローンを選択することで、hCL-K1ポリヌクレオチドを取得することができる。
【0053】
こうして得られたDNAのヌクレオチド配列は、マキサム・ギルバート法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, p.560 (1977))またはサンガー法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, p.5463, (1977))によって決定することができる。 hCL-K1ポリヌクレオチドは、取得されたクローンから、制限酵素などで切り出すこともできる。
【0054】
hCL-K1ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列をもとに合成したプライマーを用いて、hCL-K1ポリヌクレオチドを発現する細胞のポリ(A)+RNAを鋳型にして、RT-PCR法によって、クローニングすることも可能である。 また、PCRに依存せずに、hCL-K1ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列をもとにして、プローブを調製または合成し、直接にcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、目的とするcDNAを得ることもできる。 これら方法によって得られた無数の遺伝子の中から、本願発明のhCL-K1ポリヌクレオチドを、その遺伝子のヌクレオチド配列を確認することによって、選択することができる。 本願発明の遺伝子は、例えば、ホスホイミダイト法(Mattencci, M. D. et al., J. Am. Chem. Soc., 130, p.3185 (1981))などのヌクレオチド化学合成を用いて、当該技術分野で周知の方法に従って製造することもできる。
【0055】
発現ベクターの調製方法
本願発明はまた、hCL-K1ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むベクターも提供する。 ベクターは、hCL-K1ポリペプチドを発現できるものであればよく、例えば、プラスミドベクター、RNAベクター、DNAベクター、ウィルスベクター、ファージベクターなどを用いることができる。 具体的には、Invitrogen社製のpBAD/His、pRSETA、pcDNA2.1、pTrcHis2A、pYES2、pBlueBac4.5、pcDNA3.1、pSecTag2、Novagen社製のpET、pBAC、Promega社製のpGEM、Stratagene社製のpBluescriptII、pBS、Phagescript、pSG、pSV2CAT、もしくはFarmacia社製のpGEX、pUC18/19、pBPV、pSVK3、pSVLなどが利用可能である。
【0056】
発現ベクターにライゲーションしたhCL-K1ポリヌクレオチドは、プロモーターに機能的に連結させる。 プロモーターとして、例えば、ファージλPLプロモーター、E.coli lac、trp、tacプロモーター、SV40初期プロモーターおよびSV40後期プロモーター、T7プロモーターおよびT3プロモーター、レトロウィルスLTRプロモーターなどが利用可能である。 特に、真核細胞に使用するプロモーターとしては、CMVプロモーター、HSVプロモーター、SV40初期プロモーターおよびSV40後期プロモーター、レトロウィルスLTRプロモーター、RSVプロモーター、メタロチオネインプロモーターなどがある。 また、発現ベクターは、形質転換した宿主を選択可能にすべきマーカーおよびエンハンサーを含有してもよい。 マーカーとして、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子などが利用可能である。 エンハンサーとして、SV40エンハンサー、サイトメガロウィルス初期エンハンサープロモーター、アデノウィルスエンハンサーなどが利用可能である。
【0057】
形質転換細胞の調製方法
本願発明は、上記したベクターを利用して、ベクターに組み込まれた本願発明のポリヌクレオチドを発現可能に保持する形質転換細胞を提供する。 本願発明の形質転換細胞に用いる宿主細胞としては、本願発明の発現ベクターに組み込まれたhCL-K1ポリヌクレオチドを発現することが可能なすべての細胞(微生物を含む)が利用可能であるが、その内でも、動物細胞および昆虫細胞が好ましい。
【0058】
好適な動物細胞または昆虫細胞としては、ヒト、ハムスター、ラットなどの哺乳動物の細胞、ハエもしくはカイコなどの昆虫の細胞などがある。 例えば、CHO細胞、COS細胞、BHK細胞、Vero細胞、ミエローマ細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、Jurkat細胞、マウスL細胞、マウスC127細胞、マウスFM3A細胞、マウス繊維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、S2、Sf9、Sf21、High Five(登録商標)細胞などが利用可能である。 また、好適な微生物としては、大腸菌や酵母などがある。 これら宿主細胞へのベクターの導入は、上記した方法を用いて実施できる。
【0059】
hCL-K1ポリペプチドを発現する細胞は、感染症、免疫などに関わるコレクチン経路を解析するために用いることができる。 また、この発現細胞は、hCL-K1ポリペプチドまたは糖鎖を伴うhCL-K1ポリペプチドを製造するために利用することができる。 さらに、この発現細胞は、hCL-K1ポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニストの取得のためのスクリーニングにも利用できる。
【0060】
hCL-K1ポリペプチドの取得方法
本願発明は、前出の形質転換細胞を培養し、形質転換細胞が産生したhCL-K1ポリペプチドを回収する工程を含むhCL-K1ポリペプチドの製造方法をも提供する。 細胞の培養、ポリペプチドの分離・精製も、当該技術分野で公知の方法によって行うことができる。
【0061】
本願発明のhCL-K1ポリペプチドは、それ自体が、単離・精製・認識しやすくなるように、組換え融合タンパク質として発現させることができる。 組換え融合タンパク質とは、目的タンパク質をコードするヌクレオチド配列によって発現されたタンパク質のN末端側または/およびC末端側に、適当なペプチド鎖を付加して発現させたタンパク質である。 発現したタンパク質の精製を容易にする目的で、細胞外分泌シグナルを有する融合タンパク質として発現させてもよい。 また、タンパク質は、各種原料、例えば、培養細胞、培養組織、形質転換細胞などのタンパク質産生原料から、当該技術分野で周知の方法、例えば、硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー法、疎水性クロマトグラフィー法、色素ゲルクロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外濾過法、アフィニティークロマトグラフィー法および高速液体クロマトグラフィー法などの精製方法を用いて回収することができる。
【0062】
hCL-K1ポリヌクレオチドの利用方法
配列番号:3、6、9または12に記載のヌクレオチド配列に基づいて、hCL-K1ポリヌクレオチドを検出するためのプローブを設計することができる。 あるいは、これらヌクレオチド配列を含むDNAやRNAを増幅するためのプライマーを設計することもできる。
【0063】
与えられたヌクレオチド配列をもとにして、プローブやプライマーを設計することは、当業者が日常的に行っている。 設計されたヌクレオチド配列を保有するオリゴヌクレオチドを、化学合成によって得ることができる。 適当な標識を付加されたオリゴヌクレオチドは、様々な形式のハイブリダイゼーションアッセイに利用することができる。 あるいはPCRのような、ヌクレオチドの合成反応に利用することもできる。 プライマーに利用するオリゴヌクレオチドとしては、少なくとも約10個、好ましくは約15個〜約50個のヌクレオチドを連ねたものが望ましく、プローブに利用するオリゴヌクレオチドとしては、約100個〜全長のヌクレオチドを連ねたものが望ましい。 また、これらプライマーやプローブは、hCL-K1ポリペプチドをコードする遺伝子の変異の検出およびSNPの検出などにも利用可能であるため、hCL-K1ポリヌクレオチドの変異によって生ずる疾患の診断に用いることができる。 例えば、細菌感染症などの疾患の診断用途への利用が期待される。 また、hCL-K1ポリヌクレオチドを生体内に導入して発現させれば、遺伝子治療の用途にも有用である。
【0064】
さらに、本願発明のhCL-K1ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に基づいて、ゲノム内に存在するhCL-K1ポリヌクレオチドのプロモーター領域、エンハンサー領域を取得することも可能である。 具体的には、日本国特開平6−181767号公報、J. Immunol., 155, p.2477 (1995)、Proc. Natl. Acad. Sci, USA., 92, p.3561 (1995) に記載の方法と同様の手法で、これら制御領域の取得が可能となる。 本明細書で使用する「プロモーター領域」の用語は、特に断りのない限り、転写開始部位の上流に存在する遺伝子の発現を制御するDNA領域を、また、「エンハンサー領域」の用語は、イントロン、5'-非翻訳領域または3'-非翻訳領域に存在する遺伝子の発現を増強するDNA領域を指す。
【0065】
hCL-K1ポリペプチドの利用方法
本願発明のhCL-K1ポリペプチドは、ヒトの免疫機能や細菌感染症などの疾患の発症機構の解明のみならず、これら疾患の診断、予防および治療に用いる試薬や医薬の開発のために利用できる。
【0066】
また、hCL-K1ポリペプチドに対する抗体を調製する際の抗原としても利用できる。
【0067】
さらに、hCL-K1ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングための手段としても利用できる。
【0068】
アゴニストおよびアンタゴニスト
本願発明は、hCL-K1ポリペプチドのコレクチン活性を刺激するアゴニスト、ならびに、hCL-K1ポリペプチドのコレクチン活性を阻害するアンタゴニストを提供する。
【0069】
アンタゴニストのスクリーニング方法として、例えば、hCL-K1ポリペプチドを発現させた細胞に、候補阻害剤とマンノースまたは抗体を作用させる競合的実験系を用いることができ、マンノースとの結合割合から候補阻害剤をスクリーニングすることができる。
アンタゴニストのスクリーニング方法として、当該技術分野で周知の方法も利用することができる。 また、本願発明のアンタゴニストとして、hCL-K1ポリヌクレオチドの発現を阻害するアンチセンスヌクレオチドがある。 その他のスクリーニング方法として、受容体の活性化によって生じる細胞外pHの変化を測定する方法(Science, 246, pp.181-296 (1989))などがある。
【0070】
トランスジェニック非ヒト動物
本願発明は、hCL-K1ポリヌクレオチドの発現レベルを変化させたトランスジェニック非ヒト動物を提供する。 hCL-K1ポリヌクレオチドの形態とて、hCL-K1ポリペプチドをコードするDNA、すなわち、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAのいずれでも利用可能である。 また、hCL-K1ポリヌクレオチドの発現には、転写と翻訳の両工程も含まれる。 本願発明のトランスジェニック非ヒト動物は、hCL-K1ポリペプチドの機能または発現調節の研究、hCL-K1ポリヌクレオチドが関与すると予想される疾患のメカニズム解明、医薬品のスクリーニングや安全性試験に用いる疾患モデル動物の開発の用途で有用である。
【0071】
hCL-K1ポリヌクレオチドの発現を正常に調節しているいくつかの重要な部位(エンハンサー、プロモーター、イントロンなど)の一部のヌクレオチドを、欠失、置換、付加および/または挿入などして変異を起こさせることで、遺伝子発現レベルを、通常の発現レベルから上昇または下降させるべく人工的に修飾することができる。 この変異の導入は、当該技術分野で周知の方法により実施でき、これにより、トランスジェニック動物を得ることができる。
【0072】
トランスジェニック動物とは、狭義には遺伝子組換えにより、外来遺伝子が生殖細胞に人為的に導入された動物のことをいい、広義には個体発生の初期に外来遺伝子が安定して染色体に導入され、その子孫に遺伝形質として伝達され得る動物のことをいい、アンチセンスRNAを用いて特定の遺伝子の機能を抑えたアンチセンス・トランスジェニック動物や、胚性幹細胞(ES細胞)を用いて特定の遺伝子をノックアウトした動物、それに、点突然変異DNAを導入した動物までをも含む。
【0073】
本明細書で使用する「トランスジェニック動物」の用語は、特に断りのない限り、ヒト以外のすべての脊椎動物を指す。 本願発明のトランスジェニック動物は、hCL-K1ポリペプチドの機能あるいは発現調節の研究、hCL-K1ポリペプチドを発現しているヒト細胞に関連する疾患のメカニズムの解明、医薬品のスクリーニング・安全性試験に用いる疾患モデル動物の開発の用途で有用である。
【0074】
トランスジェニック動物の調製方法は、位相差顕微鏡下で前核期卵子の核に、微小ピペットで遺伝子を直接導入する方法(マイクロインジェクション法、米国特許第4,873,191号)、胚性幹細胞(ES細胞)を使用する方法などがある。 その他に、レトロウィルスベクターまたはアデノウイルスベクターに遺伝子を挿入し、卵子に感染させる方法、また、精子を介して遺伝子を卵子に導入する精子ベクター法などが開発されている。
【0075】
精子ベクター法とは、精子に外来遺伝子を付着またはエレクトロポレーションなどの方法で精子細胞内に取り込ませた後に、卵子に受精させることにより、外来遺伝子を導入する遺伝子組換え法である(M. Lavitranoet et al., Cell, 57, 717, 1989)。 あるいは、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼ系やサッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)のFLPリコンビナーゼ系などによるin vivoにおける部位特異的遺伝子組換えを用いることもできる。 また、レトロウィルスを使用して、非ヒト動物へ目的タンパク質のトランスジーンを導入する方法も報告されている。
【0076】
マイクロインジェクション法によるトランスジェニック動物の調製方法は、例えば、以下に示すようにして行われる。
【0077】
まず、発現制御に関わるプロモーター、特定のポリペプチドをコードする遺伝子、ポリAシグナルから基本的に構成されるトランスジーンが必要である。 プロモーター活性によって特定分子の発現様式や発現量が左右され、また、導入トランスジーンのコピー数や染色体上の導入部位により調製されたトランスジェニック動物が系統間で異なるため、各系統間で発現様式・発現量を確認する。 非翻訳領域やスプライシングにより発現量が変化することが判明しているため、予めポリAシグナルの前にスプライシングされるイントロン配列を導入してもよい。 受精卵に導入する遺伝子は、できるだけ純度の高いものを使用することが重要である。 使用する動物としては、受精卵採取用マウス(5〜6週齢)、交配用雄マウス、偽妊娠雌マウス、輸精管結紮雄マウスなどが用いられる。
【0078】
効率よく受精卵を得るために、ゴナドトロピンなどにより排卵を誘発してもよい。 受精卵を回収し、マイクロインジェクション法にて卵子の雄性前核にインジェクションピペット中の遺伝子を注入する。 注入した卵子を輸卵管に戻すための動物(偽妊娠雌マウスなど)を用意し、一匹に対して約10個〜約15個の卵子を移植する。 その後、誕生したマウスにトランスジーンが導入されているか否かを、尾の先端部からゲノムDNAを抽出し、サザン法あるいはPCR法によりトランスジーンを検出するか、あるいは相同組み換えが起こったときのみに活性化するマーカー遺伝子を挿入したポジティブクローニング法により確認することができる。 さらに、トランスジーンの発現を確認するために、ノザン法もしくはRT-PCR法によりトランスジーン由来転写産物を検出する。 または、ポリペプチドまたはその断片に対する特異的抗体によって、ウェスタンブロッティングを行ってもよい。
【0079】
ノックアウトマウス
本願発明のノックアウトマウスは、hCL-K1ポリヌクレオチドの機能が失われるように処理されたものである。 ノックアウトマウスとは、相同組換え技術により任意の遺伝子を破壊し、機能を欠損させたトランスジェニックマウスをいう。 ES細胞を用いて相同組換えを行い、一方の対立遺伝子を改変・破壊した胚性幹細胞を選別し、ノックアウトマウスを調製することができる。 例えば、受精卵の胚盤胞や桑実胚期に遺伝子を操作した胚性幹細胞を注入して、胚性幹細胞由来の細胞と胚由来の細胞が混ざったキメラマウス(キメラとは、2個以上の受精卵に基づいた体細胞で形成される単一個体をいう)を得る。 このキメラマウスと正常マウスを交配すると、一方の対立遺伝子の全てが改変・破壊されたヘテロ接合体マウスを調製することができる。 さらに、ヘテロ接合体マウス同士を交配することで、ホモ接合体マウスが調製できる。
【0080】
相同組換えとは、遺伝子組換え機構で塩基配列が同じ、または非常に類似している2つの遺伝子間で起こる組換えのことをいう。 相同組換えを起こした細胞の選別には、PCRを使用することができる。 挿入遺伝子の一部と挿入が期待される領域の一部をプライマーとして用いるPCRを行い、増幅産物ができた細胞で相同組換えを起こしていることが判明できる。 また、胚幹細胞で発現している遺伝子に相同組み換えを起こさせる場合には、導入遺伝子にネオマイシン耐性遺伝子を結合させておき、導入後に細胞をネオマイシン耐性にさせることにより選択できるなど、公知の方法およびそれらの変法を用いて容易に選択することができる。
【0081】
抗体の調製方法
本願発明は、hCL-K1ポリペプチドまたはその断片を認識する抗体も提供する。
【0082】
本願発明の抗体には、例えば、配列番号:2、5、8または11に記載の連続するアミノ酸からなるポリペプチドまたはその断片に対する抗体が含まれる。 hCL-K1ポリペプチドまたはその断片に対する抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ペプチド抗体)または抗血清は、本願発明のhCL-K1ポリペプチドまたはその断片などを抗原として用い、当該技術分野で周知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。 特に、hCL-K1ポリペプチドの機能を制御できる抗体(例えば、糖認識構造様領域やコラーゲン様ドメインなどを認識する抗体)は、抗体含有医薬品の用途において有用である。
【0083】
本願発明のhCL-K1ポリペプチドまたはその断片は、投与により抗体産生が可能な部位に、それ単独で、または希釈剤や担体と共に温血動物に対して投与される。 投与に際して抗体産生を高めるために、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。 投与は、通常、1〜6週毎に、1回づつ、計2回〜10回程度行われる。 温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどが利用可能であるが、この内でも、マウスおよびラットが好ましい。 ラットとしては、WistarおよびSD系ラットが、また、マウスとしては、BALB/c、C57BL/6およびICR系マウスなどが好適に利用できる。
【0084】
モノクローナル抗体産生細胞の調製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えば、抗体価の認められるマウスを選択し、最終免疫処置の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。 抗血清中の抗体価は、例えば、後述する標識化hCL-K1ポリヌクレオチドと抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性に基づいて測定される。 融合操作は、既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法(Nature, 256, p.495 (1975))やその変法(J. Immunol. Method, 39, p.285 (1980);Eur. J. Biochem., 118, p.437 (1981);Nature, 285, p.446 (1980))に従って実施できる。 融合促進剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが利用可能であるが、PEGが好適に利用できる。 融合効率をさらに改善するために、レクチン、ポリ-L-リジン、またはDMSOを任意に添加できる。
【0085】
骨髄腫細胞としては、例えば、X-63Ag8、NS-1、P3U1、SP2/0、AP-1などが利用可能であるが、この内でも、SP2/0が好適に利用できる。 使用する抗体産生細胞(脾臓細胞)の数と骨髄腫細胞の数との好ましい比率は、約1:約20〜約20:約1である。 PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)を約10%〜約80%の濃度で細胞に添加し、約20℃〜約40℃、好ましくは、約30℃〜約37℃で、約1分間〜約10分間、インキュベーションすることによって、効率よく細胞融合を実施できる。 hCL-K1ポリペプチドに対する抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング法として、種々の方法がある。 例えば、hCL-K1ポリペプチド(抗原)を、それ単独で直接に、または担体と共に吸着させた固相(例えば、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次いで、放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加えて、固相に結合した(hCL-K1ポリペプチドに対する)抗体を検出する方法などが利用できる。 あるいは、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したhCL-K1ポリペプチドを加えて、固相に結合したhCL-K1ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を検出する方法も利用することができる。
【0086】
hCL-K1ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の選別およびクローニングは、当該技術分野で周知の方法またはそれに準じる方法に従って行うことができる。 通常は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)を添加した動物細胞用培地にて、選別およびクローニングが行われる。 選別、クローニングおよび育種のための培地としては、ハイブリドーマの生育を許容する培地であればいずれでも利用可能である。 例えば、約1%〜約20%、好ましくは、約10%〜約20%のウシ胎児血清を含むRPMI培地、約1%〜約10%のウシ胎児血清を含むGIT培地、またはハイブリドーマ培養用無血清培地などを用いることができる。 培養温度は、好ましくは、約37℃である。 培養時間は、通常は、5日〜3週間、好ましくは、1週間〜2週間である。 培養は、通常は、5%炭酸ガス下で行われる。 ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、前述した抗血清での抗体価の測定と同様にして測定できる。 すなわち、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、酵素免疫測定(ELISA)法、FIA(蛍光イムノアッセイ)法、プラーク測定法、凝集反応法などの測定方法を用いることができるが、この内でも、酵素免疫測定法が好適に利用できる。
【0087】
酵素免疫測定法によるスクリーニングは、以下の方法に準じて実施できる。 免疫抗原と同様の手順で調製したポリペプチドを、ELISAプレートの各ウェルの表面に固定化する。 次に、非特異的吸着を防止する目的で、BSA、MSA、OVA、KLH、ゼラチンまたはスキムミルクなどを、各ウェルに固定化する。 この各ウェルに、ハイブリドーマ培養上清液を添加し、一定時間放置し免疫反応を行わせる。 洗浄液としてPBSなどを用いて、各ウェルを洗浄する。 界面活性剤を、洗浄液に添加することが好ましい。 酵素標識二次抗体を添加して、一定時間放置する。 標識酵素としては、β-ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼなどを用いることができる。 同じ洗浄液で各ウェルを洗浄した後に、使用した標識酵素の基質溶液を添加して、酵素反応を進行せしめる。
【0088】
添加したハイブリドーマ培養上清液に、目的とする抗体が含まれている場合には、酵素反応が進行して、基質溶液の色が変化する。
【0089】
クローニングは、通常は、半固体アガー法や限界希釈法などの当該技術分野で周知の方法で行うことができ、具体的には、前出の方法で目的とする抗体を産生するウェルを確認した後に、クローニングを行って、シングルクローンを得る。 クローニング法としては、ハイブリドーマ細胞を希釈および培養して、培養プレートの1ウェル当たりに1個のコロニーを形成せしめる限界希釈法などが好適に利用できる。 限界希釈法によるクローニングにおいて、コロニー形成能を高めるために支持細胞を使用したり、あるいはインターロイキン-6などの細胞増殖因子を添加してもよい。 その他に、FACSやシングルセルマニプレーション法を用いてクローニングすることもできる。 クローン化されたハイブリドーマを、好ましくは、無血清培地中で培養し、至適量の抗体をその上清に加える。 このようにして得られた単一のハイブリドーマは、フラスコや細胞培養装置を用いて大量培養するか、あるいは動物の腹腔内で培養する(J. Immunol. Meth., 53, 313, 1982)ことによって、モノクローナル抗体を得ることができる。 フラスコ内で培養を行う場合は、0%〜約20%のFCSを含む細胞培養用培地(IMDM、DMEM、RPMI1640およびMEMなど)を用いて、培養することができる。 動物の腹腔内で培養する場合は、細胞融合に使用した骨髄腫細胞の由来となった動物と同種・同系統の動物や、あるいは胸腺欠損ヌードマウスなどを使用することが好ましく、予めプリスタンなどの鉱物油を投与してからハイブリドーマの移植を行う。 1〜2週間後に、腹腔内に骨髄腫細胞が増殖し、モノクローナル抗体を含む腹水を得ることができる。
【0090】
hCL-K1ポリペプチドに特異的なエピトープを認識する抗体を選択して得た本願発明のモノクローナル抗体は、他のポリペプチドに対して交差性を示さない。 一般的に、対象となるポリペプチドを構成するアミノ酸配列内の連続する少なくとも5個以上のアミノ酸残基、好ましくは、7個〜20個のアミノ酸残基からなるエピトープは、そのポリペプチドに固有のエピトープを示すと言われている。 従って、例えば、配列番号:2、5、8または11に記載の連続するアミノ酸からなるポリペプチドまたはその断片内の連続する少なくとも5個のアミノ酸残基から構成されたエピトープを認識するモノクローナル抗体は、本願発明のhCL-K1ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体であるといえる。 配列番号:2、5、8または11に連続するアミノ酸にて保存された特定のアミノ酸配列を選択することで、hCL-K1ポリペプチドに共通のエピトープを得ることができる。 あるいは、各アミノ酸配列に特異的な特定のアミノ酸配列を含む領域を選択することで、各ポリペプチドを識別できるモノクローナル抗体を得ることができる。
【0091】
hCL-K1ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の分離精製は、ポリクローナル抗体の通常の分離精製と同様にして、免疫グロブリンの分離精製法に従って実施することができる。 公知の精製法として、例えば、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、硫安沈殿法、イオン交換体(例えば、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲル濾過法、抗原結合固相またはプロテインAまたはプロテインGなどの活性吸着剤によって抗体のみを採取し、余分な結合を解離させて抗体を取得する特異的精製法のような手法を使うことができる。 精製過程での凝集物の形成や抗体価の低下を防止する目的で、例えば、ヒト血清アルブミンを、約0.05%〜約2%の濃度で添加する。 その他に、グリシン、α-アラニンなどのアミノ酸類、特に、リジン、アルギニンおよびヒスチジンなどの塩基性アミノ酸、グルコースやマンニトールなどの糖類、あるいは塩化ナトリウムなどの塩類を添加することもできる。 IgM抗体は、特に凝集しやすいことが知られているため、β-プロピオニラクトンや無水酢酸で処理してもよい。
【0092】
本願発明のポリクローナル抗体は、当該技術分野で周知の方法またはそれに準じる方法に従って製造することができる。 例えば、免疫抗原(ポリペプチド抗原)単独で、あるいは免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体を調製して、前述したモノクローナル抗体の製造法と同様にして温血動物の免疫処置を行い、免疫処置した動物からhCL-K1ポリペプチドまたはその断片に対する抗体含有物を採取し、次いで、抗体の分離精製を行うことによって、本願発明のポリクローナル抗体を製造することができる。 温血動物を免役処置するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関して、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免役処置したハプテンに対して抗体が効率よく調製できれば、どの様なものを、いかなる比率で架橋させてもよい。 例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、ヘモシアニンなどを、重量比で、ハプテン1に対し、約0.1〜約20、好ましくは、約1〜約5の割合でカップリングさせる。 また、ハプテンとキャリアーとのカップリングには、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオピリジル基を含有する活性エステル試薬など、種々の縮合剤を用いることができる。 温血動物での抗体産生が可能な部位に、縮合生成物をそれ単独で、あるいは担体、希釈剤と共に投与される。 投与に際して抗体産生能を高めるために、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。 投与は、通常は、2週間〜6週間毎に、1回ずつ、計約3回〜約10回程度行われる。 ポリクローナル抗体は、上述の方法で免役処置された温血動物の血液、腹水など、好ましくは、血液から採取することができる。
【0093】
抗血清中のポリクローナル抗体価は、前述した血清中の抗体価の測定と同様にして測定することができる。 ポリクローナル抗体の分離精製は、前述したモノクローナル抗体の分離精製と同様に、免疫グロブリンの分離精製法に従って実施できる。
【0094】
抗体の利用方法
hCL-K1ポリペプチドまたはその断片に対するモノクローナル抗体ならびにポリクローナル抗体は、hCL-K1ポリペプチドを発現している細胞が関与している疾病の診断や治療に利用することができる。 これらの抗体と、hCL-K1ポリペプチドまたはその断片との免疫学的な結合に基づいて、hCL-K1ポリペプチドまたはその断片を測定することができる。 これらの抗体を用いてhCL-K1ポリペプチドまたはその断片を測定する具体的な方法としては、例えば、不溶性担体に結合させた抗体と標識化抗体とによって、hCL-K1ポリペプチドまたはその断片を反応させて生成したサンドイッチ錯体を検出するサンドイッチ法がある。 あるいは、標識化hCL-K1ポリペプチドと検体中のhCL-K1ポリペプチドまたはその断片を、抗体と競合的に反応させて、抗体と反応した標識抗原量から検体中のhCL-K1ポリペプチドまたはその断片を測定する競合法を利用して、検体中のhCL-K1ポリペプチドまたはその断片を測定する方法がある。
【0095】
サンドイッチ法によるhCL-K1ポリペプチドまたはその断片の測定にあっては、まず、固定化抗体とhCL-K1ポリペプチドまたはその断片とを反応させた後、未反応物を洗浄して完全に除去し、次いで、標識化抗体を添加して、固定化抗体−標識化hCL-K1ポリペプチドを形成させる二段階法、あるいは固定化抗体、標識化抗体およびhCL-K1ポリペプチドまたはその断片を同時に混合する一段階法などを用いることができる。
【0096】
測定に用いる不溶性担体として、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ナイロン、ポリアセタール、フッ素樹脂などの合成樹脂、セルロース、アガロースなどの多糖類、ガラス、金属などがある。 不溶性担体の形状としては、例えば、盆状、球状、繊維状、棒状、盤状、容器状、房状、管状などの種々の形状がある。 抗体を吸着した担体は、適宜、アジ化ナトリウムなどの防腐剤の存在下で、冷所に保存する。
【0097】
抗体を固層化するために、当該技術分野で周知の化学的結合法または物理的吸着法を用いることができる。 化学的結合法としては、例えば、グルタルアルデヒドを用いる方法、N-スクシニイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートおよびN-スクシニイミジル-2-マレイミドアセテートなどを用いるマレイミド法、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸などを用いるカルボジイミド法などがある。 その他に、マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシサクシニミドエステル法、N-サクシミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸法、ビスジアゾ化ベンジジン法、ジパルミチルリジン法などもある。 あるいは、被検出物質とエピトープの異なる二種類の抗体を予め反応させて形成させた複合体を、抗体に対する第三の抗体を前述した方法に従って固層化させておいて捕捉することも可能である。
【0098】
標識物質としては、免疫学的測定法に使用できるものであればいずれでも利用可能であるが、好ましくは、次のような、酵素、蛍光物質、発光物質、放射性物質および金属キレートなどを使用する。
【0099】
酵素としては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、α-グリセロールホスフェートデヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼなどがあるが、これらに限定されない。
【0100】
蛍光物質としては、例えば、フルオレセインイソチアネート、フィコビリプロテイン、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、オルトフタルアルデヒドなどがあるが、これらに限定されない。
【0101】
発光物質としては、イソルミノール、ルシゲニン、ルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびその修飾エステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、エクオリンなどがあるが、これらに限定されない。
【0102】
放射性物質としては、125I、127I、131I、14C、3H、32P、35Sなどがあるが、これらに限定されない。 さらに、ビオチン、ジニトロフェニル、ピリドキサールまたはフルオレサミンのような低分子ハプテンを、抗体に結合させてもよい。 好ましくは、西洋ワサビペルオキシダーゼを標識化酵素として用いる。 この酵素は多くの基質と反応することができ、過ヨウ素酸法によって、容易に抗体に結合させることができる。
【0103】
標識化剤が酵素である場合には、その活性を測定するために、基質、そして、必要に応じて発色剤を用いる。 酵素として、ペルオキシダーゼを用いる場合には、基質溶液として過酸化水素(H22)を、また、発色剤として、2,2'-アジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸]アンモニウム塩(ABTS)、5-アミノサリチル酸、オルトフェニレンジアミン、4-アミノアンチピリン、3,3’,5,5'-テトラメチルベンジジンなどを使用することができる。 酵素として、アルカリフォスファターゼを用いる場合は、基質として、オルトニトロフェニルフォスフェート、パラニトロフェニルリン酸などを使用することができる。 また、酵素として、β-D-ガラクトシダーゼを用いる場合は、基質としてフルオレセイン-ジ-(β-D-ガラクトピラノシド)、4-メチルウンベリフェニル-β-D-ガラクトピラノシドなどを使用することができる。 本願発明は、前述したモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体および試薬類を具備したキットも企図している。
【0104】
架橋剤として、N,N'-オルトフェニレンジマレイミド、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン酸・N-スクシンイミドエステル、6-マレイミドヘキサン酸・N-スクシンイミドエステル、4,4'-ジチオピリジン、その他の当該技術分野で周知の架橋剤が利用可能である。 これらの架橋剤と酵素および抗体との反応は、それぞれの架橋剤の性質に応じて、当該技術分野で周知の方法に従って行う。 また、抗体としては、必要に応じて、その断片、例えば、Fab'、Fab、F(ab')2を用いる。 また、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の別にかかわらず、同様の処理を行うことで、酵素標識体を得ることができる。 前述した架橋剤を用いて得られる酵素標識体を、アフィニティークロマトグラフィーなどの当該技術分野で周知の方法で精製すれば、さらに感度の良好な免疫測定系が実現する。 精製した酵素標識化抗体に、安定剤としてのチメロサールまたはグリセリンなどを加えて、あるいは凍結乾燥して冷暗所に保存する。
【0105】
測定対象は、hCL-K1ポリペプチドを含む試料であればいずれでもよく、例えば、血漿、血清、血液、尿、組織液、脳脊髄液などの体液、各種細胞、組織などがある。
【0106】
ヒト型化抗体の調製方法
ヒトに任意の抗原を免疫して抗体を製造することは、倫理上不可能である。 また、マウスモノクローナル抗体は、ヒトにとっては異種タンパク質であるので、それをヒトの体内に投与すると、種々の副作用が起こる危険性がある。 そこで、ヒトに抗体を投与する場合には、ヒトに対する抗原性を低減せしめた抗体を利用することが好ましい。
【0107】
ヒト型化モノクローナル抗体の調製方法として、細胞融合法以外にも、エプスタイン・バール(Epstein-Barr)ウィルス(EBV)で形質転換する方法、さらには、その形質転換した細胞を親細胞と融合させる方法、遺伝子工学を利用しキメラ抗体、ヒト型化抗体を調製する方法などがある。 キメラ抗体とは、異種の動物の免疫グロブリン遺伝子断片をつなげて調製された抗体である。 また、ヒト型化抗体とは、ヒトにとって異種タンパク質であるマウス抗体を改変し、すなわち、H鎖とL鎖の相補性決定領域(Complementary determining reagion (CDR))以外の一次構造を、ヒトの抗体の対応する一次構造に置換して得た抗体をいう。
【0108】
キメラ抗体は、免疫処置したマウスからマウスモノクローナル抗体を取得し、その遺伝子内にある抗原と結合する抗体可変部(V領域)を切り出し、ヒト骨髄腫由来の抗体定常部(C領域)遺伝子と結合せしめてキメラ遺伝子を調製する。 このキメラ遺伝子を宿主細胞で発現させれば、ヒト・マウス・モノクローナル抗体が産生できる。 キメラ抗体は、ヒトに対する抗原性が少ないため、ヒト体内に投与する治療用または画像診断用モノクローナル抗体などとして利用できる。 日本国特開平5−304989号、日本国特開平4−330295号、WO 9106649、日本国特開昭63−36786号、日本国特公平6−98021号などに、従来のキメラ抗体に関連する技術が開示されている。
【0109】
また、最近キメラ抗体よりも有用であるといわれるヒト型化抗体が開発された。 ヒト型化抗体とは、抗体分子の抗原結合部位(相補性決定領域)の遺伝子配列のみをヒト抗体遺伝子に移植(CDRグラフティング)し、抗体分子の相補性決定領域を除いた全分子をヒト型化した抗体である。 この抗体は、ヒト・マウス・キメラ抗体よりも、マウスの抗体部分が少ないため、抗原性が少なく、安全性が高いと言われている。 ヒトモノクローナル抗体調製用の親細胞として、ヒト/マウスのヘテロミエローマであるSHM-D 33株(ATCC CRL 1668)やRF-S1株を用いることで、マウスの親細胞と同等の高い融合効率が実現される。 これらの親細胞を用いて得られたハイブリドーマは、フィーダー細胞無しでクローニングすることが可能であり、IgGタイプの抗体を、比較的安定に、しかも大量に産生することができる。 親細胞の培養には、15%FCSを加えたERDF培地を用い、また、その他の実施手順はマウスの場合と同様である。 また、IgGタイプのヒトモノクローナル抗体を調製する上で、抗原で充分に感作されたヒトリンパ球を末梢血から採取して利用するのが好ましい。 抗原で充分に感作されたリンパ球の取得が困難な場合には、in vitroで抗原感作を行うこともできる。 我が国では、現在、成人性TT胞白血病に対するヒト型化抗体の臨床試験が行われている。 米国Genentech社の特許出願(WO9222653、WO9845332、WO9404679、WO9837200、WO9404679、)、それに、英国Celltech社の特許出願(WO9429451、WO9429351、WO9413805、WO9306231、WO9201059、WO9116927、WO9116928、WO9109967、WO8901974、WO8901783)に、ヒト型化抗体の製造方法およびその関連技術が開示されている。
【0110】
上記した方法を利用することで、本願発明の抗体をヒト型化することができる。
【0111】
組成物
hCL-K1ポリヌクレオチドまたはhCL-K1ポリペプチドは、細菌感染症などの疾患の診断、予防および治療のみならず、そのための試薬や医薬の開発に利用できる。
【0112】
本願発明の医薬組成物には、hCL-K1ポリヌクレオチドまたはhCL-K1ポリペプチド、hCL-K1ポリペプチドの機能を刺激または阻害する物質、hCL-K1ポリペプチドに対する抗体など(関連物質)が含まれる。
【0113】
これら関連物質は、それ単独で、あるいは水に希釈するなどの各種処理を施してから、医薬品、医薬部外品などの成分として配合することができる。 この場合、これら関連物質の配合量は、最終製品の仕様に応じて適宜選択されるが、全身投与製剤の場合には、通常、約0.001重量%〜約50重量%、好ましくは、約0.01重量%〜約10重量%に調整する。
【0114】
すなわち、約0.001重量%に満たないと、満足する涙液分泌促進作用が認められない可能性があり、一方で、約50重量%を超えてしまうと、製品そのものの安定性や香味などが損なわれる可能性がある。
【0115】
本願発明の医薬組成物の投与経路は、前述した経口投与や静脈内投与以外に、経粘膜投与、経皮投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸内投与なども適宜利用できる。
【0116】
また、これら関連物質は、塩として製剤内に取り込まれていてもよい。
【0117】
薬学的に許容される塩としては、例えば、無機塩基、有機塩基などの塩基とその塩、無機酸、有機酸、塩基性または酸性アミノ酸などの酸付加塩などがある。
【0118】
無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、それに、アルミニウム、アンモニウムなどが利用可能である。
【0119】
有機塩基としては、例えば、エタノールアミンなどの第一級アミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミンなどの第二級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、トリエタノールアミンなどの第三級アミンなどが利用可能である。
【0120】
無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などが利用可能である。
【0121】
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、トリフルオロ酢酸、フマール酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、安息香酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などが利用可能である。
【0122】
塩基性アミノ酸としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチンなどが挙げられる。酸性アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などが利用可能である。
【0123】
経口投与用の剤型としては、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤およびシロップ剤などが利用可能である。 また、これら製剤に対して、徐放化、安定化、易崩壊化、難崩壊化、腸溶性化、易吸収化などの修飾を施すこともできる。
【0124】
また、口腔内局所投与を行う場合の剤型としては、咀嚼剤、舌下剤、バッカル剤、トローチ剤、軟膏剤、貼布剤、液剤などが利用可能である。 また、これら製剤に対して、徐放化、安定化、易崩壊化、難崩壊化、腸溶性化、易吸収化などの修飾を施すこともできる。
【0125】
前掲の剤型において、当該技術分野で周知のドラッグデリバリーシステム(DDS)の技術を適用することができる。 本明細書で使用する「DDS製剤」の用語は、特に断りのない限り、徐法化製剤、局所適用製剤(トローチ、バッカル錠、舌下錠など)、薬物放出制御製剤、腸溶性製剤および胃溶性製剤など、投与経路、バイオアベイラビリティー、副作用などを勘案した上で、最適の製剤形態に加工した製剤を指す。
【0126】
ドラッグデリバリーシステムは、基本的に、薬物成分、薬物放出モジュール、被覆成分および治療プログラムから構成されている。 そして、薬物成分は、その成分放出を停止させた時に速やかに血中濃度が低下する半減期の短いものが好ましい。 また、被覆成分は、投与部位の生体組織と反応しないものが好ましい。 さらに、治療プログラムは、設定された期間において最良の薬物濃度を維持するプログラムが好ましい。 そして、薬物放出モジュールは、一般的に、薬物貯蔵庫、放出制御部、エネルギー源および放出孔または放出表面を具備しているものであるが、これら全構成要素をいつも取り揃える必要はなく、構成要素を、必要に応じて、追加または削除することができる。
【0127】
ドラッグデリバリーシステムに使用できる材料としては、高分子、シクロデキストリン誘導体、レシチンなどがある。
【0128】
高分子として、不溶性高分子(シリコーン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチルセルロース、セルロースアセテートなど)、水溶性高分子およびヒドロキシルゲル形成高分子(ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメタクリレート架橋体、ポリアクリル架橋体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、水溶性セルロース誘導体、架橋ポロキサマー、キチン、キトサンなど)、徐溶解性高分子(エチルセルロース、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体の部分エステルなど)、胃溶性高分子(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、マクロゴール、ポリビニルピロリドン、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・メタアクリル酸メチルコポリマーなど)、腸溶性高分子(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸フタルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、アクリル酸系ポリマーなど)、生分解性高分子(熱凝固または架橋アルブミン、架橋ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ポリシアノアクリレート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリβヒドロキシ酢酸、ポリカプロラクトンなど)などが利用可能であり、剤型によって適宜選択することができる。
【0129】
上掲の高分子の内、シリコーン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体の部分エステルは、薬物の放出制御に使用できる。 また、セルロースアセテートは、浸透圧ポンプの材料として使用できる。 さらに、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースは、徐放性製剤の膜素材として使用できる。 そして、ポリアクリル架橋体は、粘膜付着剤として使用できる。
【0130】
また、経口投与剤、注射剤、座剤などの剤形に応じて、製剤中に、溶剤、賦形剤、コーティング剤、基剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、粘稠剤、乳化剤、安定剤、緩衝剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、矯味剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を、DDS製剤の構成成分として加えることができる。
【0131】
前掲の添加剤の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0132】
[溶 剤] 精製水、注射用水、生理食塩水、ラッカセイ油、エタノール、グリセリン。
【0133】
[賦形剤] デンプン類、乳糖、ブドウ糖、白糖、結晶セルロース、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、トレハロース、キシリトール。
【0134】
[コーティング剤] 白糖、ゼラチン、酢酸フタル酸セルロースおよび上掲の高分子。
【0135】
[基 剤] ワセリン、植物油、マクロゴール、水中油型乳剤性基剤、油中水型乳剤性基剤。
【0136】
[結合剤] デンプンおよびその誘導体、セルロースおよびその誘導体、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、トラガント、アラビアゴムなどの天然高分子化合物、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子化合物、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ。
【0137】
[滑沢剤] ステアリン酸およびその塩類、タルク、ワックス類、コムギデンプン、マクロゴール、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、
[崩壊剤] デンプンおよびその誘導体、寒天、ゼラチン末、炭酸水素ナトリウム、セルロースおよびその誘導体、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースおよびその塩類ならびにその架橋体、低置換型ヒドロキシプロピルセルロース。
【0138】
[溶解補助剤] シクロデキストリン、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール。
【0139】
[懸濁化剤] アラビアゴム、トラガント、アルギン酸ナトリウム、モノステアリン酸アルミニウム、クエン酸、各種界面活性剤。
【0140】
[粘稠剤] カルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ホドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、トラガント、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム。
【0141】
[乳化剤] アラビアゴム、コレステロール、トラガント、メチルセルロース、各種界面活性剤、レシチン。
【0142】
[安定剤] 亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、トコフェロール、キレート剤、不活性ガス、還元性物質。
【0143】
[緩衝剤] リン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸。
【0144】
[等張化剤] 塩化ナトリウム、ブドウ糖。
【0145】
[無痛化剤] 塩酸プロカイン、リドカイン、ベンジルアルコール、
[保存剤] 安息香酸およびその塩類、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、逆性石けん、ベンジルアルコール、フェノール、チロメサール。
【0146】
[矯味剤] 白糖、サッカリン、カンゾウエキス、ソルビトール、キシリトール、グリセリン。
【0147】
[芳香剤] トウヒチンキ、ローズ油。
【0148】
[着色剤] 水溶性食用色素、レーキ色素。
【0149】
以下に、本願発明をその実施例に沿って説明するが、この実施例の開示に基づいて本願発明が限定的に解釈されるべきでないことは勿論である。
【実施例1】
【0150】
ESTデータベースの検索
図1に例示した公知のコレクチン(ヒトMBP、ヒトSP-AおよびヒトSP-D)と、本願発明者らが単離したヒト肝臓由来コレクチンCL-L1(日本国特開平11−206377号参照)のアミノ酸残基の相同性を、図2に示した。 図2において、相同と認められるアミノ酸残基部分に囲みを付した。
【0151】
CL-L1のレクチン活性を担う糖鎖認識領域の159個の連続するアミノ酸からなるアミノ酸配列(配列番号:13)を用いて、EST(Expressed Sequence Tags)データベースの検索を行った。 その結果、相同性の高いアミノ酸配列を含むデータがいくつか得られた。
【0152】
GenBank/ESTデータベースで検索を行って、得られたアミノ酸配列が、公知のものであるか否かを確認したところ、相同性は高いが、未知のヌクレオチド配列を含む一つのデータ(H30455:胸部由来)が検索された。 得られたESTクローンのヌクレオチド配列を用い、再度ESTデータベースを検索した結果、同一の塩基配列を含む9種のデータ(登録番号:AA558494:生殖細胞由来、AA582499:腎臓由来、AI420986:前立腺由来、AA742449:生殖細胞由来、AA954657:腎臓由来、AA908360:卵巣由来、AI264145:腎臓由来、AA089855:心臓由来、AA456055:メラノサイト、妊娠子宮、胎児心臓由来)が得られた。
【0153】
これらはすべて、同一のコレクチンの塩基配列の一部を示すクローンであった。
【実施例2】
【0154】
ヒト肝臓由来cDNAライブラリーのスクリーニングおよびヌクレオチド配列の決定
実施例1で取得された10種類のクローンのヌクレオチド配列に基づいて、コンセンサスヌクレオチド配列(配列番号:14)を調製した。 そして、目的とするヒトコレクチンのcDNAの上流領域(5'方向)をクローニングするために、このコンセンサス配列を基にして、上流方向に対応する2種類のプライマーCAP1(5'-agattttattgtatagcttgg-3'(配列番号:15))、CAP2(5'-ctgggtaataattacataatg-3'(配列番号:16))を、392A DNA/RNAシンセサイザー(PE Applied Biosystems社製)によって合成した。 同様にして、ヒト肝臓由来cDNAライブラリーのベクター領域の一部に対応するプライマーλTriplEx-F1(5'-aagctccgagatctggacgag-3'(配列番号:17))とプライマーλTriplEx-F2(5'-ctcgggaagcgcgccattgtg-3'(配列番号:18))を合成した。
【0155】
そして、以下の手順に従って、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によるスクリーニングを行った(図3)。
【0156】
テンプレートとして、ヒト肝臓由来cDNAライブラリー(クローンテック社製)を用いて、第一回目のPCRを行った。 反応混液は、総液量50μlにて、LA PCR Buffer II(マグネシウムイオン不含)、2.5mM 塩化マグネシウム、各200μMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP(いずれも宝酒造社製)を1μl、ヒト肝臓由来cDNAライブラリー(クローンテック社製)、0.5μM λTriplEx-F1プライマー、ならびに0.5μM CAP1プライマーを含んでいた。
【0157】
PCRは、95℃にて20秒間の熱変性、60℃にて20秒間のアニーリング、72℃にて90秒間の伸長反応かなる工程を35サイクル、そして、反復反応に移行する前に、95℃にて5分間の熱変性、そして、72℃にて5分間の伸長反応を最後に実施するプログラムで行った。
【0158】
第1回目のPCR終了後に、第2回目のPCRを行った。
【0159】
第1回目のPCRで得た産物1μlを鋳型として、λTriplEx-F2プライマーとCAP2プライマーを用いて、第1回目のPCRと同様の反応組成、プログラム(ただし、サイクル数は25サイクル)で、第2回目のPCRを行った。 第2回目のPCRは、GeneAmp PCR System9700(PE Applied Biosystems社製)によって行った。 得られたPCR産物を、アガロースゲル電気泳動に適用した後に、バンドをゲルより切り出して、−80℃で、10分間凍結した。 凍結試料を、15,000rpmで、10分間遠心分離した後に、上清をエタノール沈澱せしめて精製を行った。
【0160】
精製したDNA断片を、pT7Blue Vector(Novagen社製)に組み込み、このベクタ−をコンピテントセル XL1-Blue 細胞に形質転換した。 形質転換体を、LB培地(100μg/mlアンピシリン)で培養し、アルカリSDS法によりプラスミドを抽出し、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction kit (PE Applied Biosystems社製) およびABI PRISM 377シーケンサ (PE Applied Biosystems社製) で塩基配列の決定を行った。 プライマーは、M13 Universalプライマー(5'-cgacgttgtaaaacgacggccagt-3'(配列番号:19))およびM13 Reverseプライマー(5'-caggaaacagctatgac-3'(配列番号:20))を用いた。 これらプライマーは、いずれも、CAP1プライマーと同様の手順に従って合成した。
【0161】
得られたヌクレオチド配列は、実施例1で得られたESTのコンセンサス配列の5'末端領域のヌクレオチド配列とは若干相違していたが、CAP2プライマーの3'末端側からN末端側に575塩基だけ長い配列(図3に示すhCL-K1 ORFの第68位〜第271位のアミノ酸に相当する領域)であることが明らかとなった。
【実施例3】
【0162】
hCL-K1ポリペプチドのヒト腎臓由来キャップサイトcDNAライブラリーのスクリーニングおよびヌクレオチド配列の決定
実施例2で得られた塩基配列と転写開始点を含む5'末端領域のクローニングを行うために、実施例2で得られた塩基配列の上流側に対応する2種類のプライマーCAP3(5'-ggtcctatgtcaccggaatc-3'(配列番号:21))、CAP4(5'-ttccatgacgacccacactgc-3'(配列番号:22))を、392A DNA/RNAシンセサイザー(PE Applied Biosystems社製)によって合成した。
【0163】
そして、以下の手順に従って、キャップサイトcDNAを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によるスクリーニングを行った(図3)。
【0164】
Cap Site cDNA、Human Kidney(NIPPON GENE 社製)を準備して、そこに添付されている1RC2プライマー(5'-caaggtacgccacagcgtatg-3'(配列番号:23))およびCAP3プライマーを用いて、第1回目のPCRを行った。 反応混液は、総液量50μlにて、LA PCR Buffer II (マグネシウムイオン不含)、2.5mM 塩化マグネシウム、各200μMのdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP(いずれも宝酒造社製)を1μl、Cap Site cDNA Human Kidney、0.5μM 1RC2プライマー(NIPPON GENE 社製)、ならびに0.5μM CAP3プライマーを含んでいた。 PCRは、95℃にて20秒間の熱変性、60℃にて20秒間のアニーリング、72℃にて60秒間の伸長反応かなる工程を35サイクル、そして、反復反応に移行する前に、95℃にて5分間の熱変性、そして、72℃にて10分間の伸長反応を最後に実施するプログラムで行った。
【0165】
第1回目のPCR終了後に、第2回目のPCRを行った。
【0166】
第1回目のPCRで得た産物1μlを鋳型として、添付の2RC2プライマー(5'-gtacgccacagcgtatgatgc-3'(配列番号:24))とCAP4プライマーを用いて、第1回目のPCRと同様の反応組成、プログラム(ただし、サイクル数は25サイクル)で、第2回目のPCRを行った。
【0167】
第2回目のPCRは、GeneAmp PCR System9700(PE Applied Biosystems社製)によって行った。 得られたPCR産物を、アガロースゲル電気泳動に適用した後に、バンドをゲルより切り出して、−80℃で、10分間凍結した。 凍結試料を、15,000rpmで、10分間遠心分離した後に、上清をエタノール沈澱せしめて精製を行った。
【0168】
精製したDNA断片を、pT7Blue Vector(Novagen社製)に組み込み、このベクタ−をコンピテントセル XL1-Blue 細胞に形質転換した。 形質転換体を、LB培地(100μg/mlアンピシリン)で培養し、アルカリSDS法によりプラスミドを抽出し、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction kit (PE Applied Biosystems社製) およびABI PRISM 377シーケンサ (PE Applied Biosystems社製) で塩基配列の決定を行った。 プライマーとして、前出のM13 UniversalプライマーとM13 Reverseプライマーを用いた。
【0169】
こうして得られた塩基配列は、実施例2で得られた塩基配列のN末端側に、さらに492個のヌクレオチドが連なったヌクレオチド配列であることが明らかとなった。 つまり、本実施例で得られたhCL-K1ポリペプチドは、配列番号:1に記載の813個の連続するヌクレオチドから構成される転写解読枠(ORF)を有しており、配列番号:2に記載の連続する271個のアミノ酸をコードしていた。
【実施例4】
【0170】
相同性検索
GenBankデータベースでDNAおよびアミノ酸についての相同性の検索を行った。
【0171】
その結果、配列番号:2に記載のアミノ酸配列は、公知のコレクチンが保有するいずれにのアミノ酸配列にも該当せず、全く新規のアミノ酸配列であることが明らかとなった。
【0172】
図1に例示した公知のコレクチン(ヒトMBP、ヒトSP-AおよびヒトSP-D)と、本願発明者らが単離したヒト肝臓由来コレクチンCL-L1(日本国特開平11−206377号参照)のアミノ酸残基、それに、本願発明のhCL-K1ポリペプチドのアミノ酸配列を比較した。 その結果を、図4に示した。 相同性の認められるアミノ酸残基部分に、囲みを付した。 このアラインメントにより、本願発明のhCL-K1ポリペプチドが、公知のコレクチンに対して相同性を有しており、コレクチンファミリーに属していることが明らかになった。
【実施例5】
【0173】
hCL-K1ポリペプチドのヒト組織での発現分布解析
種々のヒト組織でのhCL-K1ポリペプチド(配列番号:2)の発現を、逆転写(RT)-PCR法を利用した解析によって調査した。
【0174】
RT-PCRで利用する、次のプライマーを準備した。 すなわち、hCL-K1ポリペプチドのcDNA配列のネック領域から糖鎖認識領域を増幅するためのプライマーRTF1(5'-agattccggtgacataggacc-3'(配列番号:25))およびプライマーRTR1(5'-tggtctgggctctgtccctgc-3'(配列番号:26))を準備した。 そして、ヒト組織でのhCL-K1ポリペプチドの発現量の比較参照用のβ-アクチン遺伝子の一部分を増幅するために、ヒトβ-アクチン・センスプライマー(5'-caagagatggccacggctgct-3'(配列番号:27))およびヒトβ-アクチン・アンチセンスプライマー(5'-tccttctgcatcctgtcggca-3'(配列番号:28))も準備した。 なお、これらのプライマーはすべて、CAP1プライマーと同様にして合成した。
【0175】
ヒト組織、すなわち、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、気管、骨髄、結腸、小腸、脾臓、胃、胸腺、乳腺、前立腺、骨格筋、精巣、子宮、小脳、胎児脳、胎児肝臓、脊髄、胎盤、副腎、膵臓、唾液腺および甲状腺に由来するRNAをテンプレートとした。 そして、RNA LA PCR KIT(AMV)VER1.1(宝酒造社製)を用いて、RT-PCRを実施した。
【0176】
まず、以下の反応組成で、逆転写反応を行った。
【0177】
5mM 塩化マグネシウム、1×RNA PCR Buffer、1mM dNTP Mixture、1U/μl RNaseインヒビター、RNA 2μgを、全量が40μlになるようにRNase不含の蒸留水で体積調整した。 同時に逆転写酵素を含まない反応組成も調製して、これを、ネガテイブコントロールとした。 これら反応液を0.2mlチューブに入れ、GeneAmp PCR System9700 (PE Applied Biosystems社製)で、42℃で30分間、99℃で5分間、5℃で5分間を1サイクルとして、逆転写反応を行った。 得られた逆転写反応産物の10μLを用いて、以下の反応組成で、LA-PCRを、それぞれ28サイクルと35サイクルで行った。 2.5mM 塩化マグネシウム、1×LA-PCR Buffer(マグネシウムイオン不含)、2U TaKaRa LA Taq、0.2μM RTF1プライマー、0.2μM RTR1プライマーを、全量が50μLになるように滅菌蒸留水で体積調整した。 PCRは、95℃にて20秒間の熱変性、60℃にて20秒間のアニーリング、72℃にて60秒間の伸長反応からなる工程を28サイクルおよび35サイクル、そして、反復反応に移行する前に、95℃にて5分間の熱変性、そして、72℃にて10分間の伸長反応を最後に実施するプログラムで行った。
【0178】
反応生成物を、1.5%アガロースゲル電気永動によって分離し、エチジウムブロマイド溶液(0.1μg/ml)で染色を行い、トランスイルミネーターで泳動パターンを確認し、そして、発現組織を同定した。 各組織での発現量を比較するために、各組織でのβ-アクチン遺伝子の一部分を増幅させるRT-PCRも行って、RNAの補正を行った。 β-アクチン遺伝子に関しても、上記したようにして、逆転写反応、PCRおよび判定の手順を踏む方法に従った。
【0179】
試験結果を、図5に示す。 なお、図5での各レーンでの組織名(レーン番号)は、次の通りである。 脳(1)、心臓(2)、腎臓(3)、肝臓(4)、肺(5)、気管(6)、骨髄(7)、結腸(8)、小腸(9)、脾臓(10)、胃(11)、胸腺(12)、乳腺(13)、前立腺(14)、骨格筋(15)、精巣(16)、子宮(17)、小脳(18)、胎児脳(19)、胎児肝臓(20)、脊髄(21)、胎盤(22)、副腎(23)、膵臓(24)、唾液腺(25)および甲状腺(26)。
【0180】
hCL-K1ポリペプチドは、28サイクルのPCRでは腎臓(3)での発現が顕著で、しかも、肝臓(4)、小腸(9)、胸腺(12)、胎児肝臓(20)、脊髄(21)、副腎(23)、膵臓(24)でも発現が確認できた。 また、35サイクルのPCRでは、hCL-K1ポリペプチドの発現には若干の強弱は認められるものの、対象としたすべての組織試料においてユビキタスな発現が確認できた。
【実施例6】
【0181】
hCL-K1ポリペプチドの遺伝学的解析
公知のコレクチンとの比較によって、hCL-K1ポリペプチドの遺伝的位置付けを明らかにするためにすべく、解析を行って、遺伝的系統樹を作製した。 解析の対象としたコレクチンを、図6に示す。 図6において、CL-L1とCL-P1のポリペプチドは、本発明者らが単離したポリペプチドである(前出)。
【0182】
GenBankデータベースから各アミノ酸配列を検索して得られたデータを基にして、レクチンドメインを含む領域を用いて、clustalw法でマルチプル・アライメントを作成した。
【0183】
これらアライメントを基にして、N-J法(neighbor-joining法)を用いて、Phylip version 3.57c packageプログラムによって、遺伝的系統樹を作成した。 その結果、SP-D、ウシCL-43、およびウシコングルチニンで一つのクラスターを形成し、一方で、MBPおよびSP-Aでそれぞれ別々にクラスターを形成していた。 これに対して、hCL-K1ポリペプチドは、これらのクラスターには属せず、CL-L1と同様のクラスターに属しており、CL-L1のホモログであると推測された。
【実施例7】
【0184】
hCL-K1ポリヌクレオチドのヒトの組織における発現分布解析
hCL-K1ポリヌクレオチド(配列番号:1)の種々のヒトの組織での発現を調べるため、RT-PCR法によって解析を行った。
【0185】
hCL-K1ポリヌクレオチドの全翻訳領域を増幅できるプライマー(RTF2(5'-atgagggggaatctggccctggtg-3'(配列番号:29))、RTR2(5'-catgttctccttgtcaaactcac-3'(配列番号:30))を準備した。 また、発現量の比較参照用のβ-アクチン遺伝子の一部分を増幅するための、実施例5で使用した2種類のヒトβ-アクチンプライマーも準備した。
【0186】
なお、全てのプライマーは、CAP1プライマーと同様にして合成した。
【0187】
そして、実施例5に記載の方法と同様の手順でRT-PCRを行った。
【0188】
その結果を、図7に示す。 なお、図7での各レーンでの組織名(レーン番号)は、次の通りである。 脳(1)、心臓(2)、腎臓(3)、肝臓(4)、肺(5)、気管(6)、骨髄(7)、結腸(8)、小腸(9)、脾臓(10)、胃(11)、胸腺(12)、乳腺(13)、前立腺(14)、骨格筋(15)、精巣(16)、子宮(17)、小脳(18)、胎児脳(19)、胎児肝臓(20)、脊髄(21)、胎盤(22)、副腎(23)、膵臓(24)、唾液腺(25)および甲状腺(26)。
【0189】
本発明のhCL-K1ポリヌクレオチド(配列番号:1)は、28サイクルのPCRでは、腎臓(3)、肝臓(4)、小腸(9)、胸腺(12)、胎児肝臓(20)、脊髄(21)、副腎(23)、膵臓(24)での発現が強かった。 また、35サイクルのPCRを行ったところ、hCL-K1ポリヌクレオチド(配列番号:1)の発現には若干の強弱は認められるものの、対象としたすべての組織試料においてユビキタスな発現が確認できた。
【0190】
また、図7から明らかなように、hCL-K1ポリヌクレオチドのRT-PCR産物に数本の増幅断片が確認された。 これらのバンドをゲルより切り出し、実施例2と同様の方法、すなわち、−80℃で、10分間凍結し、15,000rpmで、10分間、遠心分離した後、上清をエタノール沈澱して、DNA断片を精製した。 精製したDNA断片を、pT7Blue Vector(Novagen 社製)に組み込んで、このベクターを、コンピテントセル XL1-Blue 細胞に形質転換した。 形質転換体を、LB培地(100μg/ml アンピシリン)で培養し、アルカリSDS法によりプラスミドを抽出し、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction kit (PE Applied Biosystems社製)およびABI PRISM 377シーケンサ (PE Applied Biosystems社製)で塩基配列の決定を行った。 プライマーとして、M13 Universalプライマー(5'-cgacgttgtaaaacgacggccagt-3'(配列番号:19))およびM13 Reverseプライマー(5'-caggaaacagctatgac-3'(配列番号:20))を用いた。
【0191】
hCL-K1ポリペプチド(配列番号:2)には、mRNAのオルターナティブスプライシングに起因する、hCL-K1v1(配列番号:5)、hCL-K1v2(配列番号:8)およびhCL-K1v3(配列番号:11)の3種の変異ポリペプチドが存在していた。
【0192】
hCL-K1v1ポリペプチドは、配列番号:2の第44位〜第91位のアミノ酸(配列番号:1の第394位〜第537位のヌクレオチド)が欠失したものであり、そのアミノ酸配列は配列番号:6に記載のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0193】
hCL-K1v2ポリペプチドは、配列番号:2の第44位〜第67位のアミノ酸(配列番号:1の第394位〜第465位のヌクレオチド)が欠失したものであり、そのアミノ酸配列は配列番号:9に記載のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0194】
hCL-K1v3ポリペプチドは、配列番号:2の第68位〜第91位のアミノ酸(配列番号:1の第466位〜第537位のヌクレオチド)が欠失したものであり、そのアミノ酸配列は配列番号:12に記載のヌクレオチド配列によってコードされる。
【実施例8】
【0195】
hCL-K1ポリヌクレオチドが組み込まれた発現ベクターの構築
hCL-K1ポリヌクレオチド(配列番号:1)の翻訳領域を、CL-L2-1Fプライマー(5'-gggaagcttcgatcaggatgagggggaatctggccctggtg-3'(配列番号:31))とCL-L2-1Rプライマー(5'-gggctcgagcatgttctccttgtcaaactcac-3'(配列番号:32))を用いて、ヒト腎臓由来cDNAライブラリーを鋳型として、PCR(タカラ社製:Takara Thermal Cycler MP)により増幅させた。 得られたhCL-K1ポリヌクレオチドを、pT7Blue T-Vector(Novagen社製)にライゲーションし、大腸菌XLI-Blueにトランスフォメーションを行った。
【0196】
得られたクローンからhCL-K1ポリヌクレオチドを含むプラスミドを精製し、シークエンサーにより塩基配列を確認後、誤りのないプラスミドを制限酵素Hind IIIとXho Iで消化して、同様の酵素で消化し精製したpcDNA3.1/Myc-His(+)Aベクター(インビトロジェン社製)にライゲーションを行った。 ライゲーションしたプラスミドは、大腸菌XLI-Blueにトランスフォメーション後、得られたクローンを培養し、プラスミドを精製して、発現ベクターpcDNA3.1/Myc-His(+)A-CL-L2-1とした。
【0197】
なお、この際に、hCL-K1ポリペプチドの変異体、すなわち、hCL-K1v1ポリペプチド、hCL-K1v2ポリペプチドおよびhCL-K1v3ポリペプチドについても同様に発現ベクターを作製した。
【実施例9】
【0198】
hCL-K1ポリペプチドの安定発現細胞株の作成
実施例8で得た発現ベクターpcDNA3.1/Myc-His(+)A-CL-L2-1と、pEGFP-Fベクター(クローンテック社製)を、LIPOFECTAMINE 2000(LF2000)Reagent(GIBCOBRL社製)を用いて、CHO細胞にコトランスフェクトし、一過性発現をさせた。
【0199】
まず、LF2000 Reagent溶液0.5ml(LF2000 Reagent 30μl、Nutrient Mixture F-12 Ham(Ham's F-12培地)(シグマ社製)を準備し、5分間室温でインキュベーションした後、ベクター溶液0.5ml(pcDNA3.1/Myc-His(+)A-CL-L2-1:7.5μg、pEGFP-Fベクター2.5μg、Ham's F-12培地)と混和し、20分間インキュベーションした。 その後、25cm2フラスコ内で、5ml Ham's F-12培地(5%FCS含む)で高密度にまで培養したCHO細胞に添加した。 4時間、37℃で、5%CO2下で培養を行った後に、新しい培地と交換し、さらに続けて20時間、37℃で、5%CO2下で培養を行った。 次に、培地をHam's F-12培地(5%FCS、0.4mg/ml Geneticin(GIBCOBRL社製)含む)に交換し、さらに、10日間培養を行った。 途中で、一度、培地交換を行った。
【0200】
この10日間の薬剤選抜の期間内で、形質転換細胞のみが生存および増殖したが、形質転換されなかった細胞は死滅した。 得られた形質転換細胞から高発現な細胞を得るために、GFPの蛍光をマーカーにして、セルソーター(Becton Dickinson 社製)によりソーティングを行った。 25cm2フラスコ内の形質転換細胞を、5ml PBS(-)で2回洗浄した後に、EDTA solution 0.02%(ナカライテスク社製)0.3mlで細胞を剥がし、10ml PBS(-)に懸濁した後、200×g、7分間、4℃で遠心した。 遠心して生じた上清を除去し、0.5mlの2% FCS/PBS(-)に懸濁し、ソーティングサンプルとした。
【0201】
サンプルを、セルストレーナーキャップを装備した5mlチューブ(Becton Dickinson 社製)に通した後に、セルソーターにかけた。 同様にして処理した非形質転換CHO細胞をコントロールとして、蛍光強度が10倍以上強いものを選抜した。 これらの細胞は、予め100μlの(5%FCS、0.4mg/ml Geneticin含む)Ham's F-12培地を入れておいた96穴細胞培養用プレートに、1穴あたり1細胞ずつ分取した。 37℃で、5%CO2下で培養を行い、1週間培養した後に、さらに、100μlずつ培養液を加えて、さらに1週間培養を行った。 Geneticinによる薬剤選抜によって増殖してきたクローンを2分割して、12穴および24穴細胞培養用プレート継代した。 このとき、1穴に2細胞以上から増殖してきているようなクローンは除外し、12穴および24穴細胞培養用プレートには、9:1の細胞比で細胞を播いた。
【0202】
37℃で、5%CO2下で培養を行い、12穴のプレートの細胞が高密度にまで達した時、その培養上清の200μlをImmobilon-Pメンブレン(ミリポア社製)に、Bio-Dot Microfiltration Apparatus(BIO-RAD社製)を用いてドットブロットした。
【0203】
次いで、抗myc抗体(Invitorogen社製)を、0.05%Tween 20/TBS buffer(宝酒造社製)で5000倍希釈した溶液に、室温で、1時間インキュベーションした後、100mlの0.05%Tween 20/TBS bufferで、メンブレンを室温で20分間×3回洗浄した。 さらに、抗マウスIgG-HRP(ケミコン社製)を、0.05%Tween 20/TBS bufferで5000倍希釈した溶液に、室温で、1時間インキュベーションした後、100mlの0.05%Tween 20/TBS bufferでメンブレンを室温で20分間×3回洗浄した。 TMB Membrane Peroxidase substrate system(フナコシ社製)を用いて検出した。 発色の強かったクローンを確認した後、それぞれ対応する24穴のプレートの細胞を安定発現細胞株(CHO/CL-K1)とした。
【実施例10】
【0204】
hCL-K1ポリペプチドの糖結合特性の解析
実施例9で調製した安定発現細胞株(CHO/CL-K1)の培養上清1Lを、VIVAPORE10(フナコシ社製)を用いて50mlに濃縮した後、Ni-NTAアガロース(キアゲン社製)を200μl加え、一晩、4℃で浸透しながらインキュベーションすることによって、hCL-K1ポリペプチドをマンナンアガロースに結合させた。 このマンナンアガロースを、Poly-Prep Chromatography Columns(バイオラッド社製)に充填し、5mlの50mM NaH2PO4、300mM NaCl、20mMイミダゾール、0.05%Tween20 (pH8.0)で3回洗浄した後、200μlの50mM NaH2PO4、300mM NaCl、250mMイミダゾール、0.05%Tween20(pH8.0)で5回溶出することにより精製した。 精製したhCL-K1ポリペプチドを定量し、糖特異性の解析に使用した。
【0205】
すなわち、本実施例では、マンナンアガロースで精製したhCL-K1ポリペプチドおよびMBLに関して、種々の糖アガロース(マンナン、マンノース、フコース、N-アセチルグルコサミン、マルトース、N-アセチルガラクトサミン)に対する結合性を検討した。 4μg/mlのhCL-K1ポリペプチドおよびMBLの1mlに対して、200μlの50%糖アガロース/TBSC(Tris buffer、5mM 塩化カルシウム)を添加し、4℃で、12時間、穏やかに撹拌しながらインキュベーションを行った。 3000rpmで、10分遠心分離して、上精を回収し、TBSCでアガロースの洗浄を行った。 1mlのTBSE(Tris buffer、10mM EDTA)で溶出を行った後、ウエスタンブロッティングにて確認を行った。
【0206】
その結果を、図8に示した。 なお、図8の各レーンで用いた糖アガロース(レーン番号)は、マンナン(1)、マンノース(2)、フコース(3)、N-アセチルグルコサミン(4)、マルトース(5)、N-アセチルグルコサミン(6)である。 また、図8の各レーンに適用した試料の処理形態は、アガロース未精製(Pre)、アガロース未結合画分(P)およびTBSE緩衝液での溶出画分(E)である。
【0207】
図8に示した結果から明らかなように、hCL-K1ポリペプチドは、マンナン、フコース、N-アセチルグルコサミンには結合した。 しかしながら、hCL-K1ポリペプチドは、マルトースやN-アセチルガラクトサミンには結合しなかった。 このことから、hCL-K1ポリペプチドとMBLは、いずれもマンノース結合型のレクチンドメインを有するが、糖への結合特異性は異なることが明らかとなった。
【実施例11】
【0208】
血清からのhCL-K1ポリペプチドの分離
実施例10で実証されたhCL-K1ポリペプチドの特異的な糖結合性を利用して、血清から、hCL-K1ポリペプチドを精製した。
【0209】
すなわち、血清にフコースアガロースを添加し、4℃で、12時間、穏やかに撹拌しながらインキュベーションを行った後、TBSCでアガロースを洗浄した。 TBSE(Tris buffer、10mM EDTA)で溶出を行った後、塩化カルシウムを、その終濃度を20mMになるように、マルトースアガロースに添加した。 穏やかに撹拌しながらインキュベーションを行った後、TBSCでアガロースを洗浄した。 そして、TBSE(Tris buffer, 10 mM EDTA)で溶出を行い、ウエスタンブロッティングを行った。
【0210】
その結果を、図9に示す。 なお、図9の各レーンで用いた試料(レーン番号)とは、血清をフコースアガロースに添加し、かつTBSEで溶出した画分(1)、マルトースアガロース未結合画分(2)およびマルトースアガロースからTBSEで溶出された画分(3)である。
【0211】
フコースアガロースからの溶出画分では、hCL-K1ポリペプチドとMBLの双方が溶出されたが、マルトースアガロースにはhCL-K1ポリペプチドは結合せず、MBLのみが結合され、かつ溶出された。
【0212】
ポリペプチド構造を考慮すれば、両者の糖に対する結合特異性はほぼ同様であろうと予測されていたが、互いに異質の糖結合性を示していた。 hCL-K1ポリペプチドでのこのような独特の糖結合性は、そのアミノ酸配列(構造)からは容易に予測することはできず、本願発明者らの研究によって初めて立証されたのである。 この糖結合性に基づいて、hCL-K1ポリペプチドを、他のレクチンとを分離する手段として利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明のhCL−K1ポリペプチドは、ヒトの基礎免疫機能が関係する細菌感染症などの各種疾患等の発症機構の解明や、それら疾患の診断、予防および治療のための試薬や医薬の開発において有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1】コレクチンとその類縁タンパク質の関係を示す概略図である。
【図2】公知のコレクチンの構成アミノ酸配列のアラインメントを示す図である。
【図3】hCL-K1ポリペプチドの構造を示す概略図である。
【図4】公知のコレクチンとhCL-K1ポリペプチドの構成アミノ酸配列のアラインメントを示す図である。
【図5】ヒト組織でのhCL-K1ポリペプチドの発現状態を示す図である。
【図6】コレクチンの遺伝的系統樹を示す図である。
【図7】ヒト組織でのhCL-K1ポリヌクレオチドの発現状態を示す図である。
【図8】hCL-K1ポリペプチドの糖結合活性を示す図である。
【図9】血清から精製されたhCL-K1ポリペプチドを示す図である。
【符号の説明】
【0215】
A コレクチン
B 糖鎖認識領域
C コラーゲン様領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2に記載の271個の連続するアミノ酸からなり、かつマルトースおよびN−アセチルガラクトサミンに結合しない、ことを特徴とする精製および単離されたポリペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸の一つ乃至数個が、欠失、置換または付加されている請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号:3に記載の813個の連続するヌクレオチドからなる、ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項3に記載のポリヌクレオチドまたはその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ請求項1に記載のポリペプチドをコードする、ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号:5に記載の223個の連続するアミノ酸からなる、ことを特徴とする精製および単離されたポリペプチド。
【請求項6】
前記アミノ酸の一つ乃至数個が、欠失、置換または付加されている請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
配列番号:6に記載の669個の連続するヌクレオチドからなる、ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリヌクレオチドまたはその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ請求項5に記載のポリペプチドをコードする、ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項9】
配列番号:8に記載の247個の連続するアミノ酸からなる、ことを特徴とする精製および単離されたポリペプチド。
【請求項10】
前記アミノ酸の一つ乃至数個が、欠失、置換または付加されている請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
配列番号:9に記載の741個の連続するヌクレオチドからなる、ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドまたはその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ請求項9に記載のポリペプチドをコードする、ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項13】
配列番号:11に記載の247個の連続するアミノ酸からなる、ことを特徴とする精製および単離されたポリペプチド。
【請求項14】
前記アミノ酸の一つ乃至数個が、欠失、置換または付加されている請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列番号:12に記載の741個の連続するヌクレオチドからなる、ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチドまたはその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ請求項13に記載のポリペプチドをコードする、ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項3、7、11または15に記載のポリヌクレオチドが導入されたベクター。
【請求項18】
発現ベクターpcDNA3.1/Myc-His(+)A-CL-L2-1。
【請求項19】
請求項17または18に記載のベクターを保持している宿主細胞。
【請求項20】
請求項17または18に記載のベクターで宿主細胞を形質転換し、当該宿主細胞を培養し、および当該宿主細胞が産生したポリペプチドを回収する工程を含む、ことを特徴とするポリペプチドの製造方法。
【請求項21】
前記宿主細胞が、動物細胞である請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
請求項1、5、9または13に記載のポリペプチドに対して特異的な抗体。
【請求項23】
モノクローナル抗体である請求項22に記載の抗体。
【請求項24】
請求項1、5、9または13に記載のポリペプチドが奏するコレクチン活性を刺激するアゴニスト。
【請求項25】
請求項1、5、9または13に記載のポリペプチドが奏するコレクチン活性を阻害するアンタゴニスト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−274956(P2007−274956A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104667(P2006−104667)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000238201)扶桑薬品工業株式会社 (42)
【出願人】(505210115)国立大学法人旭川医科大学 (17)
【Fターム(参考)】