説明

コレステリック液晶ディスプレイの製造方法

【課題】製造コスト及び製造効率に優れ、且つ軽量化及び薄型化が可能なコレステリック液晶ディスプレイの製造方法を提供する。
【解決手段】次の一般式(1)


で表される光反応性カイラル剤を含む液晶組成物を調製する工程であって、前記液晶組成物の選択反射波長が青色領域以下の波長となるように前記光反応性カイラル剤を液晶組成物に添加する工程と、前記液晶組成物を液晶セルに注入した後、フォトマスクを介して紫外線照射することによりサブピクセルを形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー電子ペーパーなどに使用されるコレステリック液晶ディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶は、一般的に、ネマチック液晶にカイラル剤を添加することにより誘起されるものであり、一定周期の螺旋構造を有する。螺旋軸が基板と垂直方向になっている(プレーナ状態)コレステリック液晶は、螺旋軸に平行に入射した光のうち螺旋の捩れ方向と一致する円偏光成分を反射し、他方の円偏光成分を透過する(選択反射)。ここで、選択反射特性を示す反射光の中心波長λ及び波長バンド幅Δλは、それぞれλ=n・P及びΔλ=Δn・Pで表される。式中、nは螺旋軸に直交する平面内の平均屈折率であり、Pは螺旋ピッチであり、Δnは屈折率の異方性である。
【0003】
一方、正の誘電率異方性を持つコレステリック液晶に電圧を印加することで、螺旋軸が基板に垂直なプレーナ状態、螺旋軸が基板と平行なフォカルコニック状態及び螺旋がほどけ液晶の長軸が電界方向に揃ったホメオトロピック状態の3つの状態に変化させることができる。プレーナ状態では選択反射が起こり、フォカルコニック状態では白濁し、ホメオトロピック状態では光が透過する。また、プレーナ状態及びフォカルコニック状態の2つの状態は電圧を切った後も、その状態を保つ双安定性(メモリー性)を示す。
【0004】
このようなコレステリック液晶の波長選択反射性及び双安定性を活かし、ディスプレイとして用いることが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。特に、コレステリック液晶の波長選択反射性は、偏光板やカラーフィルターを不要にし、また、コレステリック液晶の双安定性は、パッシブマトリックス駆動による大画面化を可能にすると共に低消費電力化などをもたらす。そのため、コレステリック液晶ディスプレイは、カラー電子ペーパー用ディスプレイとして最適である。
【0005】
しかしながら、従来の一般的なコレステリック液晶ディスプレイは、図3に示すように、青(B)の液晶パネル10、緑(G)の液晶パネル11、及び赤(R)の液晶パネル12を積層させた構造であり、薄型化、軽量化及びコスト面で問題があった。また、一般的なコレステリック液晶で用いられているカイラル材の螺旋誘起力はそれほど強くないため、可視光領域の選択反射を得るためにはカイラル材濃度を数十%程度にしなければならず、材料コストが高くなるという問題もあった。そのため、ディスプレイの厚さ、重さ及びコストを低減すること、具体的には、1枚のパネル中にサブピクセルを形成してマルチカラー化することにより、上記の問題を解決することが望まれている。
【0006】
そこで、非特許文献1では、スリット状の小セルを作製し、対応するスリットにRGBいずれかの液晶を注入した後、シール材で封止するという作業をRGBの各液晶に対し1回ずつ計3回行うことによってRGBストライブを作製する方法が提案されている。また、非特許文献2では、光反応性カイラル剤を含む液晶組成物をカプセル化し、バインダを添加してインクを作製した後、このインクを基板上に塗布し、照射量が異なる紫外線を照射することによってRGBサブピクセルをパターニングする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−268566号公報
【特許文献2】特開2009−122537号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】クアン・ティン・チェン(Kuan-Ting Chen)、外10名、「ハイカラー性能を持つフルカラーコレステリック液晶ディスプレイ(Full Color Cholesteric Liquid Crystal Display with High Color Performance)」、SID 10 ダイジェスト、第289−292頁
【非特許文献2】バーム・ヤン・リー(Burm-Young Lee)、外4名、「単一基板上のフルカラーフレキシブルコレステリックディスプレイ(Full Color Flexible Cholesteric Display on Single Substrate)」、SID 10 ダイジェスト、第286−288頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1の方法では、ストライプ状のRGB配置にしか対応できないと共に、RGBそれぞれのコレステリック液晶を小セルに入れ分ける必要があるため、製造効率が十分でない。また、非特許文献2の方法では、光反応性カイラル剤の螺旋誘起力(HTP: Helical Twisting Power)が小さく、その結果、青色の選択反射波長を得るためには多量の光反応性カイラル剤を液晶組成物に添加しなければならないため、製造コストが上昇してしまう。加えて、紫外線照射によって選択反射波長を変化させる際に紫外線の照射量を多くする必要があるため、製造効率も十分ではない。
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、製造コスト及び製造効率に優れ、且つ軽量化及び薄型化が可能なコレステリック液晶ディスプレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、液晶組成物に添加する光反応性カイラル剤の螺旋誘起力が、コレステリック液晶ディスプレイの製造コスト及び製造効率に大きな影響を与えるという知見に基づき、螺旋誘起力が大きい所定の光反応性カイラル剤を選択して用いることで、液晶組成物への添加量や紫外線の照射量を低減し、上記問題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の一般式(1):
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Arは置換されていてもよい芳香族基であり、R1及びR2はC*が不斉炭素を形成するような置換基であり、R3は、−CONH−、−COO−又は−C=N−であり、R4は、X−B−A−であり、Aは置換されていてもよい芳香族基であり、Bは平面共役基であり、Xは置換されていてもよい芳香族基を含む残基である)で表される光反応性カイラル剤を含む液晶組成物を調製する工程であって、前記液晶組成物の選択反射波長が青色領域以下の波長となるように前記光反応性カイラル剤を液晶組成物に添加する工程と、
前記液晶組成物を液晶セルに注入した後、フォトマスクを介して紫外線照射することによりサブピクセルを形成する工程と
を含むことを特徴とするコレステリック液晶ディスプレイの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造コスト及び製造効率に優れ、且つ軽量化及び薄型化が可能なコレステリック液晶ディスプレイの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のコレステリック液晶ディスプレイの製造方法を説明するための図(断面図)である。
【図2】実施例で調製した液晶組成物における紫外線照射量と選択反射波長との関係を示すグラフである。
【図3】従来の一般的なコレステリック液晶ディスプレイの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のコレステリック液晶ディスプレイの製造方法は、特定の光反応性カイラル剤を含む液晶組成物を調製し、この液晶組成物を液晶セルに注入した後、フォトマスクを介して紫外線照射することによりサブピクセルを形成することを特徴とする。
以下、本発明のコレステリック液晶ディスプレイの製造方法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明のコレステリック液晶ディスプレイの製造方法を説明するための図(断面図)である。
本発明において用いられる光反応性カイラル剤は、次の一般式により表される。
【0018】
【化2】

【0019】
上記式中、Arは置換されていてもよい芳香族基であり、R1及びR2はC*が不斉炭素を形成するような置換基であり、R3は、−CONH−、−COO−又は−C=N−であり、R4は、X−B−A−であり、Aは置換されていてもよい芳香族基であり、Bは平面共役基であり、Xは置換されていてもよい芳香族基を含む残基である。
【0020】
Ar、A及びXにおける置換されていてもよい芳香族基としては、特に限定されないが、フェニル基などのベンゼン環;ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基などの縮合環;複素芳香環の残基;及びこれらの置換体が挙げられる。置換基としては、特に限定されないが、メチル基などが挙げられる。
【0021】
1及びR2は、C*が不斉炭素を形成するような置換基であれば特に限定されないが、R1及びR2は互いに異なるアルキル基又は水素原子であることが好ましい。また、R1及びR2は、F、Cl、Br、CF3、CCl3などのハロゲン含有基などであってもよい。アルキル基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられる。
【0022】
平面共役基であるBとしては、特に限定されないが、−COO−、−C=C−、−CONH−、−C=N−などが挙げられる。
【0023】
また、Xにおける芳香族基を含む残基としては、その芳香族基のBとの結合部位に対してパラ位がさらに芳香族を含む残基に結合されているものであってもよい。例えば、Ar〜Bの部位を含む2量体構造を有していてもよい。
【0024】
上記のような構造を有する光反応性カイラル剤は、当該技術分野において公知の方法に準じて容易に合成することができる。
【0025】
本発明において使用するのに好ましい光反応性カイラル剤の例としては、R−(+)−4−オクチルオキシ−安息香酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル、R−(+)−4−オクチル−安息香酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル、R−(+)−4’−オクチルオキシ−ビフェニル−4−カルボン酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル、R−(+)−4−ドデシルオキシ−安息香酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル、R−(+)−ビフェニル−4−カルボン酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル、R−(+)−4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−安息香酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル、R−(+)−テレフタル酸ビス−{4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニル}エステル、R−(+)−ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ビス−{4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニル}エステルなどが挙げられる。また、光反応性カイラル基は、上記の例に限定されず、さらに異性体であるS−(−)−体を用いることも可能である。
【0026】
上記の各種光反応性カイラル剤の中でも、製造コスト及び製造効率の観点から、最も大きな螺旋誘起力を有するR−(+)−テレフタル酸ビス−{4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニル}エステルが好ましい。この化合物は、次の式によって表される。
【0027】
【化3】

【0028】
光反応性カイラル剤の螺旋誘起力は、好ましくは60/μm以上、より好ましくは80/μm以上、最も好ましくは100/μm以上である。ここで、「螺旋誘起力」は、液晶として4’−ヘキシルオキシ−4−シアノビフェニルを含む測定系における1/pc(p=ピッチ(μm)、c=光反応性カイラル剤のモル分率)で表されるねじれ力に相当する。
【0029】
光反応性カイラル剤の添加量は、液晶組成物の選択反射波長が青色領域以下の波長、好ましくは470nm未満の波長となるような量であれば特に限定されない。ここで、上記の「青色領域」とは、450〜495nmの波長領域のことを意味する。
本発明で用いられる光反応性カイラル剤は、螺旋誘起力が大きいため、液晶組成物に対する添加量を低減することができる。液晶組成物における光反応性カイラル剤の具体的な添加量は、好ましくは0.1質量%以上8質量%未満であり、より好ましくは1〜5質量%である。
【0030】
液晶組成物における液晶成分はネマチック液晶である。ネマチック液晶としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。ネマチック液晶の例としては、ビフェニル系、フェニルシクロヘキシル系、ターフェニル系、トラン系、ピリミジン系、スチルベン系などの公知のものを用いることができる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ネマチック液晶は、光反応性カイラル剤と非反応性であることが好ましく、また、実用性の観点から、室温(25℃)において液晶性を示すことが好ましい。
【0031】
本発明で用いられる液晶組成物は、選択反射波長が赤色領域に到達するまで光反応性のないカイラル剤を光反応性カイラル剤と共に添加してもよい。ここで、上記の「赤色領域」とは、630〜750nmの波長領域のことを意味する。選択反射波長が赤色領域に到達するまで光反応性のないカイラル剤としては特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。このようなカイラル剤の例としては、メルク社製MLC−6247などが挙げられる。
一方、光反応性のないカイラル剤の添加量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されない。
【0032】
液晶組成物の調製方法としては、特に限定されず、公知の方法に準じて行えばよい。例えば、光反応性カイラル剤(及び任意に赤色領域以下の波長の光に対して光反応性のないカイラル剤)をネマチック液晶に添加した後、公知の混合装置を用いて混合することによって液晶組成物を調製することができる。
【0033】
本発明のコレステリック液晶ディスプレイの製造方法では、まず、上記のようにして調製された液晶組成物3を、図1(A)に示すように、2つの基板1と隔壁2とから構成される液晶セルに注入する。この液晶セルの内部は、壁状の隔壁2によって隔てられており、隔壁2と基板1とによって囲まれた幾つかのセル空間中に液晶組成物3が導入される。このような液晶セルの構成は、当該技術分野において知られており、公知の構成を採用することができる。また、液晶組成物3を液晶セルに注入する方法としては、特に限定されず、液晶滴下注入法(ODF)や真空注入法を用いることができる。
【0034】
次に、液晶セルに注入した液晶組成物3に、図1(B)に示すように、フォトマスク4を介して紫外線照射を行う。液晶組成物3に紫外線を照射すると、その照射量に応じて、液晶組成物3中に含有される光反応性カイラル剤が感応し、コレステリック液晶の螺旋構造を変化させる。そして、この構造変化によって液晶組成物3が様々な選択反射波長を有するようになる。従って、所望の領域ごとに照射量を変化させるようにフォトマスク4を介して紫外線照射すれば、複数の選択反射波長を有するサブピクセルを形成することが可能になる。特に、ハーフトーンフォトマスクを用いれば、一回の照射で複数の選択反射波長を有するサブピクセルを形成することも可能になる。例えば、図1(C)に示すように、紫外線の照射が完全に妨げられていれば、初期の液晶組成物の青色の選択反射波長が保持されたB領域5、紫外線の照射が半分程度妨げられていれば緑色の選択反射波長を与えるG領域6、紫外線の照射が妨げられていなければ赤色の選択反射波長を与えるR領域7を有するサブピクセルを形成することができる。
【0035】
紫外線照射に用いる光源としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。当該光源として、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Hg−Xeランプなどを用いることができる。
また、照射する紫外線は、特に限定されないが、実用性などの観点から250〜300nmにピーク波長を有することを好ましい。
【0036】
本発明では、螺旋誘起力が大きい光反応性カイラル剤を用いているため、一般的な光カイラル材に比べて少ない紫外線照射量で所望の選択反射波長を得ることができる。その結果、コレステリック液晶ディスプレイの生産性を向上させることが可能になる。
紫外線の照射強度は、紫外線のピーク波長などに応じて適宜調整する必要があるが、一般に1〜200mW/cm2である。紫外線の照射量もまた、目標とする選択反射波長や紫外線のピーク波長などに応じて適宜調整する必要があるが、一般に1〜1000mJ/cm2である。
【0037】
上記のようにして行われる本発明のコレステリック液晶ディスプレイの製造方法は、既存の露光プロセスを転用することができるため、RGBのサブピクセルを高精度且つ安価に形成できる。また、この製造方法では、螺旋誘起力が大きい光反応性カイラル剤を用いているため、光反応性カイラル剤の添加量や紫外線の照射量も少なくすることができ、製造コストを低減することができる。さらに、この製造方法で得られるコレステリック液晶ディスプレイは、従来のRGBの積層構造とは異なり、RGBのサブピクセルからなる単層構造を有するため、ディスプレイの薄型化及び軽量化も可能になる。
なお、この方法は、湯本眞敏、外1名、「液晶ディスプレー用カラーフィルターのためのコレステリック液晶用光反応性キラル剤の開発」、富士フィルム研究報告、富士写真フィルム株式会社、平成17年3月22日、第50号、第60−63頁に記載されているような露光法によるカラーフィルター作製に応用することも可能である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<光反応性カイラル剤:R−(+)−テレフタル酸ビス−{4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニル}エステルの合成>
テレフタル酸10.0mmol及び4−ヒドロキシベンズアルデヒド20mmolをクロロホルム80mLに溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDCI)(東京化成製)11.0mmol及び触媒量のN,N’−ジメチルアミノピリジンを添加した。室温で一晩、攪拌した後、エタノールを添加したところ固体が析出した。析出した固体をエタノールから再結晶し、中間体であるエステル化合物を得た。
次に、このエステル化合物11.0mmol及びR−(+)−1−(1−ナフチル)エチルアミン20.0mmolを、クロロホルム100mL及びエタノール50mLの混合溶媒中に溶解し、60℃で5時間還流した。室温に冷却した後、エタノール80mLを添加したところ固体が析出した。析出した固体をエタノールから再結晶して目的化合物を得た。得られた目的化合物の螺旋誘起力は141/μmであった。
【0039】
<液晶組成物の調製>
ネマチック液晶として、MLC−2140及びMLC−2148の混合液晶(質量比51.3:48.7、メルク株式会社製)を用い、この混合液晶に上記の光反応性カイラル剤を添加して混合することによって液晶組成物を調製した。ここで、液晶組成物における光反応性カイラル剤の添加量は4.36質量%とした。
【0040】
上記で得られた液晶組成物に紫外線(ピーク波長254nm)を各種照射量で照射した後、液晶組成物の選択反射波長を調べた。ここで、選択反射波長は、日本分光(株)製円二色性分散計J−720型によって測定した。その結果を図2に示す。
図2の結果からわかるように、液晶組成物は、紫外線の照射量によって選択反射波長が直線的に変化することがわかった。
【0041】
次に、大塚電子製のLCD−5200を用い、青、緑及び赤各色の色度及び反射率(x、y、R)を測定した。その結果、それぞれ、青(0.161、0.083、4.6%)、緑(0.284、0.528、29.4%)、赤(0.538、0.375、22.3%)であった。なお、この測定は基板の垂直方向から30°の方向より光を入射し、0°方向で受光する形で行われた。各色の反射率は標準白色板に対する反射率である。
【0042】
<コレステリック液晶ディスプレイの作製>
基板と隔壁とから構成される液晶セルを作製した後、上記で調製した液晶組成物を液晶セルに注入した。次に、図2の紫外線照射量と液晶組成物の選択反射波長との関係に基づき、ハーフトーンフォトマスクを介して紫外線(ピーク波長254nm)を所定の照射量となるように照射したところ、RGBのサブピクセルを有するコレステリック液晶ディスプレイを製造することができた。
【0043】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、製造コスト及び製造効率に優れ、且つ軽量化及び薄型化が可能なコレステリック液晶ディスプレイの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 基板、2 隔壁、3 液晶組成物、4 フォトマスク、5 B領域、6 G領域、7 R領域、10 青(B)の液晶パネル、11 緑(G)の液晶パネル、12 赤(R)の液晶パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1):
【化1】

(式中、Arは置換されていてもよい芳香族基であり、R1及びR2はC*が不斉炭素を形成するような置換基であり、R3は、−CONH−、−COO−又は−C=N−であり、R4は、X−B−A−であり、Aは置換されていてもよい芳香族基であり、Bは平面共役基であり、Xは置換されていてもよい芳香族基を含む残基である)で表される光反応性カイラル剤を含む液晶組成物を調製する工程であって、前記液晶組成物の選択反射波長が青色領域以下の波長となるように前記光反応性カイラル剤を液晶組成物に添加する工程と、
前記液晶組成物を液晶セルに注入した後、フォトマスクを介して紫外線照射することによりサブピクセルを形成する工程と
を含むことを特徴とするコレステリック液晶ディスプレイの製造方法。
【請求項2】
前記光反応性カイラル剤が、次の式:
【化2】

により表されることを特徴とする請求項1に記載のコレステリック液晶ディスプレイの製造方法。
【請求項3】
前記フォトマスクが、ハーフトーンフォトマスクであることを特徴とする請求項1に記載のコレステリック液晶ディスプレイの製造方法。
【請求項4】
前記紫外線照射は、250〜300nmにピーク波長を有する紫外線を照射することにより行われることを特徴とする請求項1に記載のコレステリック液晶ディスプレイの製造方法。
【請求項5】
前記液晶組成物は、選択反射波長が赤色領域に到達するまで光反応性のないカイラル剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のコレステリック液晶ディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−3304(P2013−3304A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133339(P2011−133339)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(501426046)エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド (732)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】