説明

コレステリック液晶性混合物、フィルム、選択反射板、積層体および合わせガラス

【課題】液晶化合物の析出が抑制され、ヘイズが改善され、反射幅が広いフィルムを形成することができるコレステリック液晶性混合物及びこれを用いたフィルムの提供。
【解決手段】下記式(Ia)で表される化合物、下記式(Ib)で表される化合物、フッ素系水平配向剤および重合開始剤を含有するコレステリック液晶性混合物。
一般式(Ia)
1−Y1−A1−Y3−M1−Y4−A2−Y2−Z2
一般式(Ib)
3−Y5−A3−Y7−M2−P
(Z1、Z2およびZ3は重合性基を表し、A1〜A3は原子連結鎖長1〜30のスペーサー(但し、該スペーサーはアルキレン基、または、複数のアルキレン基が−O−、−CO−を介して結合した連結基を表す)を表し、M1、M2は(−T1−Y8n−T2−を表し、nは自然数を表し、nが2以上の場合は複数の(−T1−Y8)は互いに同一であっても異なっていてもよく、T1、T2は飽和もしくは不飽和の炭化水素環、または、飽和もしくは不飽和の複素環(但し、該炭化水素環および該複素環は、置換基を有していてもよい)を表し、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y7およびY8はそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−または−O−CO−O−を表し、Pは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリック液晶性混合物、フィルム、選択反射板、積層体および合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスや建材の窓ガラス用途として、2枚のガラス板中に遮熱フィルムを挿入した合わせガラスが用いられている。これらの用途に用いられる遮熱フィルムは、ムラやヘイズが少なく、視認性がよいことが求められている。
【0003】
遮熱フィルムとして、任意の支持体上にコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を設けた構成のものが知られている。このような液晶膜は、例えば重合性のコレステリック液晶化合物を含む塗布液を塗布・乾燥した後、重合し、コレステリック液晶層を固定して作製することができる。ここで、塗布型コレステリック液晶遮熱フィルムの作製時に、しばしば塗布乾燥時の液晶性化合物を含む固形物の析出の問題が生じることがあった。液晶性化合物を含む固形物の析出は、得られた遮熱フィルムの光学的ムラを引き起こすため、解決が求められていた。
【0004】
一方、単種類の液晶性化合物に加え、さらに第2の液晶性化合物として、重合して液晶性を示すモノマーまたは液晶をブレンドし、水平配向剤、重合開始剤、キラル剤などを添加した液晶性混合物が知られている(特許文献1および2参照)。これらの文献では、これらの文献中に記載の一般式(Ia)と一般式(Ib)をそれぞれ満たす液晶性化合物を混合して用いた液晶性混合物が開示されている。また、これらの文献にはこのような液晶性混合物を製造する方法として、例えば特許文献1の実施例では特定の化合物どうしを反応させて重合性基を2つ有する液晶化合物1種、重合性基を1つ有する液晶化合物2種および重合性基を有さない液晶化合物1種の合計4種の液晶性化合物の混合物を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2002−536529号公報
【特許文献2】特開2011−138147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が特許文献1および2に記載の液晶性混合物の特性を検討したところ、このように液晶性化合物を混合することにより、液晶性化合物を含む固形物の析出を抑制させられることがわかった。
しかしながら、これらの文献に記載の一般式(Ia)と一般式(Ib)を満たす液晶性化合物について本発明者が特性の検討を重ねた結果、特許文献1および2に記載の構成ではヘイズが上昇してしまって自動車のフロントガラスや建材の窓ガラスなどの低ヘイズ化が求められる遮熱フィルム用途には用いることができないことがわかった。
また、特許文献1および2には、コレステリック液晶層を固定してなる遮熱フィルムへの応用は検討されていなかった。そのため、これらの文献に記載の液晶性混合物を用いて遮熱フィルムを製造したときの、特性反射ピークの反射幅についても検討されていないのが実情であった。
また、近年では上記のような赤外線の特性反射を行うための遮熱フィルムの他、紫外線や可視光の特性反射を行うことも求められてきているが、コレステリック液晶層を固定してなる特性反射を有するフィルムについて、上記の問題や特性は検討されていなかった。
【0007】
本発明は上記の問題や未検討の特性を改善することを目的とするものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、液晶化合物の析出が抑制され、ヘイズが改善され、反射幅が広いフィルムを形成することができるコレステリック液晶性混合物及びこれを用いたフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することを目的に本発明者が鋭意検討した結果、特許文献1および2で用いられている配向剤をフッ素系の水平配向剤に変更することで、ヘイズを改善できることを見出すに至った。
さらに、特許文献1および2に記載の一般式(Ia)と一般式(Ib)を満たす液晶性化合物の混合物は確かに液晶性化合物を含む固形物の析出を抑制できるものの、これらの文献に記載の液晶性化合物(モノマーもしくは液晶)の種類によっては、いかなる理論に拘泥するものでもないが液晶の配向が乱れΔnが低下するなどの影響により、コレステリック液晶層を固定した膜を形成したときの特性反射幅が減少し、遮熱性能が低下してしまうことがあるとの問題も新たに見出すに至った。
以上の問題に対し、本発明者は特許文献1および2に記載の一般式(Ia)と一般式(Ib)よりも限定された特定の構造の液晶化合物を組み合わせて用い、かつ、フッ素系水平配向剤を混合することにより、コレステリック液晶層を固定した液晶膜を製造したときに液晶性化合物を含む固形物の析出性が良化し、特性反射幅が増加し、かつヘイズの少ない、コレステリック液晶性混合物が得られることを見出した。
【0009】
上記課題を解決するための手段である本発明は以下のとおりである。
[1] 下記一般式(Ia)で表される化合物、下記一般式(Ib)で表される化合物、フッ素系水平配向剤および重合開始剤を含有することを特徴とするコレステリック液晶性混合物。
一般式(Ia)
1−Y1−A1−Y3−M1−Y4−A2−Y2−Z2
一般式(Ib)
3−Y5−A3−Y7−M2−P
(一般式(Ia)および(Ib)中、Z1、Z2およびZ3はそれぞれ独立に重合性基を表し、A1、A2およびA3はそれぞれ独立に原子連結鎖長1〜30のスペーサー(但し、該スペーサーはアルキレン基、または、複数のアルキレン基が−O−、−CO−を介して結合した連結基を表す)を表し、M1およびM2はそれぞれ独立に(−T1−Y8n−T2−を表し、nは自然数を表し、nが2以上の場合は複数の(−T1−Y8)は互いに同一であっても異なっていてもよく、T1およびT2はそれぞれ独立に飽和もしくは不飽和の炭化水素環、または、飽和もしくは不飽和の複素環(但し、該炭化水素環および該複素環は、置換基を有していてもよい)を表し、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y7およびY8はそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−または−O−CO−O−を表し、Pは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基を表す。)
[2] [1]に記載のコレステリック液晶性混合物は、前記一般式(Ia)および(Ib)中、前記T1およびT2がそれぞれ独立に飽和もしくは不飽和の炭化水素環、または、飽和もしくは不飽和の複素環(但し、該炭化水素環および該複素環は、アルキル基またはアルコキシ基を置換基として有していてもよい)であることが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載のコレステリック液晶性混合物は、前記一般式(Ia)で表される化合物の含有量に対する、前記一般式(Ib)で表される化合物の含有量が5〜40質量%であることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載のコレステリック液晶性混合物は、前記一般式(Ia)で表される化合物が、前記T1およびT2の表す炭化水素環および該複素環のうち少なくとも1つの炭化水素環または該複素環がアルキル基またはアルコキシ基を有す化合物であり、前記一般式(Ib)で表される化合物が、前記T1およびT2の表す炭化水素環および該複素環がいずれも無置換の炭化水素環または該複素環である化合物であることが好ましい。
[5] 前記一般式(Ia)で表される化合物が、前記M1の表すnが2〜4であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のコレステリック液晶性混合物。
[6] 支持体と、該支持体上に、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のコレステリック液晶性混合物を重合して形成したコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜と、を含むことを特徴とするフィルム。
[7] [6]に記載のフィルムは、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を2層以上含むことが好ましい。
[8] [6]または[7]に記載のフィルムは、赤外線波長域に選択反射特性を示すことが好ましい。
[9] [6]または[7]に記載のフィルムは、紫外線または可視光波長域に選択反射特性を示すことが好ましい。
[10] [6]〜[9]のいずれか一項に記載のフィルムを含むことを特徴とする選択反射板。
[11] [10]に記載の選択反射板は、λ/2板を含むことが好ましい。
[12] [10]または[11]に記載の選択反射板は、最外層に易接着層を有することが好ましい。
[13] [10]〜[12]のいずれか一項に記載の選択反射板を用いて形成されてなり、少なくとも前記選択反射板の前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を有することを特徴とする積層体。
[14] [13]に記載の積層体と、少なくとも2枚のガラス板を有し、前記2枚のガラス中に前記積層体が挿入されたことを特徴とする合わせガラス。
[15] [14]に記載の合わせガラスを有することを特徴とする自動車用フロントガラス。
[16] [14]に記載の合わせガラスを有することを特徴とする建材用ガラス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液晶化合物の析出が抑制され、ヘイズが改善され、反射幅が広いフィルムを形成することができるコレステリック液晶性混合物及びこれを用いたフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の合わせガラスの一例の断面を表す概略図である。
【図2】図2は、本発明の合わせガラスの他の一例の断面を表す概略図である。
【図3】図3は、本発明の合わせガラスの他の一例の断面を表す概略図である。
【図4】図4は、本発明のフィルムに含まれるコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜の一例の断面を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
なお、本明細書中において、液晶性化合物を含む固形物は、液晶性化合物の結晶からなる場合もあるし、結晶でないアモルファス状の場合もある。また、重合開始剤やキラル剤など他の成分も含んでいる場合もある。また、これら全てもしくは一部が混合したものの場合もある。
【0013】
[コレステリック液晶性混合物]
本発明のコレステリック液晶性混合物は、下記一般式(Ia)で表される化合物、下記一般式(Ib)で表される化合物、フッ素系水平配向剤および重合開始剤を含有することを特徴とする。
一般式(Ia)
1−Y1−A1−Y3−M1−Y4−A2−Y2−Z2
一般式(Ib)
3−Y5−A3−Y7−M2−P
(一般式(Ia)および(Ib)中、Z1、Z2およびZ3はそれぞれ独立に重合性基を表し、A1、A2およびA3はそれぞれ独立に原子連結鎖長1〜30のスペーサー(但し、該スペーサーはアルキレン基、または、複数のアルキレン基が−O−、−CO−を介して結合した連結基を表す)を表し、M1およびM2はそれぞれ独立に(−T1−Y8n−T2−を表し、nは自然数を表し、nが2以上の場合は複数の(−T1−Y8)は互いに同一であっても異なっていてもよく、T1およびT2はそれぞれ独立に飽和もしくは不飽和の炭化水素環、または、飽和もしくは不飽和の複素環(但し、該炭化水素環および該複素環は、置換基を有していてもよい)を表し、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y7およびY8はそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−または−O−CO−O−を表し、Pは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基を表す。)
このような構成により、本発明のコレステリック液晶性混合物は、液晶化合物の析出が抑制され、ヘイズが改善され、反射幅が広いフィルムを形成することができる。以下、本発明のコレステリック液晶性混合物の各成分について説明する。
【0014】
<一般式(Ia)で表される化合物、一般式(Ib)で表される化合物>
本発明のコレステリック液晶性混合物は、前記一般式(Ia)で表される化合物および前記一般式(Ib)で表される化合物を含む。まず、これらの化合物について説明する。
【0015】
(Z1、Z2およびZ3
前記一般式(Ia)および(Ib)中、Z1、Z2およびZ3はそれぞれ独立に重合性基を表す。
重合可能な基Z1〜Z4としては、架橋成分Y1〜Y8と関連して、例えば
【0016】
【化1】

【0017】
〔式中、Yは、架橋成分Y1〜Y8の定義、すなわち、化学的単結合、酸素、硫黄、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−CO−NR−、−NR−CO−O−または−NR−CO−NR−を表し、かつRは、水素またはC1〜C4−アルキル、すなわちメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルであり、またY’は化学的単結合を表す(以下では、重合可能な基Z1〜Z4は架橋成分Y1〜Y8と関連して、重合可能な単位としてならびにZ−Yおよび/またはZ−Y’として表す)]が該当する。
【0018】
これらの重合可能な単位の中で、シアナートは自発的にシアヌラートに三量体化できる。マレインイミド基は、殊に、スチリル基を重合可能な基として有する式Iaおよび/またはIbの液晶性化合物とラジカル共重合のために適する。
【0019】
エポキシド基、オキセタン基、カルボキシル基、スルホン酸基、チイラン基、アジリジン基、イソシアナート基およびイソチオシアナート基を有する式Iaおよび/またはIbの化合物は、重合のために、相補的反応性単位を有する別の化合物を必要とする。すなわち例えば、適当なイソシアナートは、アルコールと一緒にウレタンに、またアミンと一緒では尿素誘導体に重合できる。同様なことは、相当するチイランおよびアジリジンにも該当する。
【0020】
相補的反応性単位は、液晶性物質混合物の成分A)の式Iaおよび/またはIbの類似の液晶性化合物から構成される液晶性化合物中に含まれることができる。しかし、基Z1−Y1−、Z2−Y2−、Z3−Y5−および/またはZ4−Y6−の代わりに、これらの化合物は、例えばヒドロキシル基、メルカプト基またはNHR基を含み、ここで最後者のRは水素または例えばC1〜C4−アルキルの意味を有する。さらに、相補的反応性単位は、液晶性物質混合物内に持ち込まれる補助化合物内に含まれることもできる。
【0021】
成分A)が1個または2個の重合可能な単位を有する式Ibの液晶性化合物を含むかどうかに従い、また場合によりこれらの化合物の割合に関連し、かつなかでも重合可能な単位を有する液晶性化合物と、相補的単位を有する液晶性化合物との量比率、ならびに重合可能な単位を有する液晶性化合物と、相補的単位を有する補助化合物との量比率に関連して、種々の程度に架橋し従ってそれぞれの要求に相応して適合したポリマー製品が得られる。
【0022】
(A1、A2およびA3
前記一般式(Ia)および(Ib)中、A1、A2およびA3はそれぞれ独立に原子連結鎖長1〜30のスペーサー(但し、該スペーサーはアルキレン基、または、複数のアルキレン基が−O−、−CO−を介して結合した連結基を表す)を表す。
1、A2およびA3はそれぞれ独立に原子連結鎖長1〜12のスペーサーであることが好ましい。A1、A2およびA3はそれぞれ独立に炭素原子1〜12のスペーサー(但し、該スペーサーは無置換のアルキレン基)であることがより好ましく、炭素原子2〜8のスペーサー(但し、該スペーサーは無置換のアルキレン基)であることが特に好ましい。
スペーサーA1およびA2は、通常、炭素原子1〜30、有利には1〜12個を有し、主として線状脂肪族基から成る。さらに炭素鎖は、1個またはそれ以上のメチル、フッ素、塩素または臭素で置換されるかおよび/またはエーテル官能基内の酸素、チオエーテル官能基内の硫黄によりまたは非隣接のイミノ基またはC1〜C4−アルキルイミノ基で中断されることができる。C1〜C4−アルキル基として、後者に対してメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルが該当する。
【0023】
代表的なスペーサーは、例えば
【0024】
【化2】

【0025】
〔式中、pは1〜30の整数、有利には1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12、かつmは1〜14の整数、有利には1、2または3をとる〕である。
【0026】
(P)
前記一般式(Ib)中、Pは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基を表す。
PのためのC1〜C15−アルキルとして、有利には非分枝状アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシルまたはn−ペンタデシルが該当する。
【0027】
その中でも、Pは炭素数1〜15のアルキル基であることが好ましい。但し、これらのC1〜C15−アルキル基は、1個またはそれ以上、通常は3個までのメチル、フッ素、塩素または臭素で置換されていることができる。従って例えば、Pは、i−プロピル(「1−メチルエチル」)、sec−ブチル(「1−メチルプロピル」)、i−ブチル(「2−メチルプロピル」)、t−ブチル(「1,1−ジメチルエチル」)、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピルまたは一回、二回または三回メチル基で置換された基n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシルまたはn−ペンタデシルおよびこれらの異性体である。例示として記載した基内のメチル基のフッ素、塩素または臭素の形式的な置換により、相当するハロゲン置換C1〜C15−アルキル基が得られる。
【0028】
以上の中でも、本発明では、前記一般式(Ib)で表される化合物は、Pが炭素数1〜15の無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数2〜8の無置換のアルキル基であることがより好ましく、炭素数5〜8の無置換のアルキル基であることが特に好ましい。
【0029】
なお、特表2002−129162号公報や特開2011−138147号公報に記載の一般式で表される化合物とは異なり、本発明では前記一般式(Ib)で表される化合物は、PがC1〜C15−アルキルの非隣接CH2−基は、酸素、硫黄、−CO−、−O−CO−、−CO−O−または−O−CO−O−を介して中断されることはない。このようなPがC1〜C15−アルキルの非隣接CH2−基は、酸素、硫黄、−CO−、−O−CO−、−CO−O−または−O−CO−O−を介して中断される化合物を用いると、フィルム化したときに反射幅が小さくなってしまう。また、前記一般式(Ib)においてPとして硫黄原子を含む化合物は、耐光性も劣る傾向にある。
【0030】
(M1およびM2
前記一般式(Ia)および(Ib)中、M1およびM2はそれぞれ独立に(−T1−Y8n−T2−を表す。
nは自然数を表し、nが2以上の場合は複数の(−T1−Y8)は互いに同一であっても異なっていてもよい。
本発明のコレステリック液晶性混合物は、前記一般式(Ia)におけるM1の表すnは1〜5であることが好ましく、2〜5であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましく、2または3であることがより特に好ましく、2であることがよりさらに特に好ましい。
前記一般式(Ib)におけるM2の表すnは1〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2または3であることが特に好ましく、2であることがより特に好ましい。
【0031】
基T1およびT2は、可能な範囲内で置換基を有していてもよく、例えば、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルコキシカルボニル、C1〜C20−モノアルキルアミノカルボニル、C1〜C20−アルキルカルボニル、C1〜C20−アルキルアミノカルボニルオキシ、C1〜C20−アルキルカルボニルアミノ、ホルミル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシまたはニトロから成る群から選ばれる3個までの同じかまたは異なる置換を有することができる。該炭化水素環および該複素環は、アルキル基またはアルコキシ基を置換基として有していることが好ましい。しかし、置換基T1および/またはT2は、一回置換が有利である。
【0032】
殊には、基T1およびT2として、
【0033】
【化3】

【0034】
が該当する。
【0035】
殊に有利には、メソゲン基M1およびM2がそれぞれ独立に次式
【0036】
【化4】

【0037】
であり、ここでそれぞれの環Zは互いに独立に、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルコキシ、C1〜C20−アルコキシカルボニル、C1〜C20−モノアルキルアミノカルボニル、C1〜C20−アルキルカルボニル、C1〜C20−アルキルカルボニルオキシ、C1〜C20−アルキルカルボニルアミノ、ホルミル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシまたはニトロから成る群から選ばれる3個までの同じかまたは異なる置換基を有することができる。
【0038】
芳香族環Zのための有利な置換基は、フッ素、塩素、臭素、シアノ、ホルミル、ヒドロキシ、短鎖脂肪族基(炭素数1〜4であることが好ましく、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル)ならびにこれらのアルキル基を含むアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基およびモノアルキルアミノカルボニル基である。
【0039】
殊に有利なM1のベンゼン環Zおよび殊に有利なM2ベンゼン環Zは、有利には下記の置換パターンを有するか、
【0040】
【化5】

【0041】
またはClの代わりにF、Br、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくはCH3)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基、より好ましくはOCH3)、CHO、COCH3、OCOCH3またはCNを用いて同様に置換されており、その際置換基も混合して存在することができる。さらに構造
【0042】
【化6】

【0043】
も好ましく挙げられ、ここでsは2〜20の整数、有利には8、9、10、11、12、13、14または15をとる。
【0044】
より殊に有利なM1のベンゼン環ZおよびM2のベンゼン環の置換基は下記である。
【0045】
【化7】

【0046】
本発明のコレステリック液晶性混合物は、前記一般式(Ia)で表される化合物が、前記T1およびT2の表す炭化水素環および該複素環のうち少なくとも1つの炭化水素環または該複素環がアルキル基またはアルコキシ基を有す化合物であることが好ましい。
その中でも、前記一般式(Ia)で表される化合物が、前記T1およびT2の表す炭化水素環および該複素環のうち1つの炭化水素環または該複素環がアルキル基またはアルコキシ基を有す化合物であることが好ましく、1つの炭化水素環がアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくはCH3)またはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基、より好ましくはOCH3)を有す化合物であることがより好ましく、1つの炭化水素環または該複素環がアルキル基を有す化合物であることが特に好ましい。
また、前記一般式(Ia)で表される化合物がM1に含まれるnが2である場合、炭化水素環および該複素環のうち中央の1つの炭化水素環または該複素環がアルキル基またはアルコキシ基を有す化合物であることが好ましく、より好ましい範囲は上記と同様である。
【0047】
一方、本発明のコレステリック液晶性混合物は、前記一般式(Ib)で表される化合物が、前記T1およびT2の表す炭化水素環および該複素環がいずれも無置換の炭化水素環または該複素環である化合物であることが好ましい。
【0048】
(Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y7およびY8
前記一般式(Ia)および(Ib)中、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y7およびY8はそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−または−O−CO−O−を表す。
有利には、式(Ia)および(Ib)の化合物中で、Y1〜Y5、Y7、Y9およびY10ならびに場合によりY6およびY8は、たがいに独立して酸素、−O−CO−、−CO−O−または−O−CO−O−を表す。
【0049】
有利には、液晶性物質混合物およびその有利な実施態様形は、重合可能な単位Z1−Y1−、Z2−Y2−、Z3−Y5−および場合によりZ4−Y6−が、メタクリロイルオキシ、アクリロイルオキシおよびビニルオキシから成る群から選ばれる式(Ia)および/または(Ib)の化合物を含む。
【0050】
以下に、前記一般式(Ia)で表される化合物と前記一般式(Ib)で表される化合物の具体例を示す。ただし、本発明で採用することができる前記一般式(Ia)で表される化合物と前記一般式(Ib)で表される化合物で表される化合物は、下記の具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0051】
【化8】

【0052】
【化9】

【0053】
【化10】

【0054】
【化11】

【0055】
【化12】

【0056】
【化13】

【0057】
【化14】

【0058】
【化15】

【0059】
【化16】

【0060】
【化17】

【0061】
【化18】

【0062】
【化19】

【0063】
【化20】

【0064】
【化21】

【0065】
【化22】

【0066】
【化23】

【0067】
【化24】

【0068】
【化25】

【0069】
【化26】

【0070】
【化27】

【0071】
【化28】

【0072】
本発明のコレステリック液晶性混合物は、前記一般式(Ia)で表される化合物の含有量に対する、前記一般式(Ib)で表される化合物の含有量が5〜40質量%であることが好ましく、ヘイズ低減の観点から10〜30質量%であることがより好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。なお、一般式(Ia)と一般式(Ib)以外の他の液晶性化合物が含まれていることも可能である。
【0073】
<フッ素系水平配向剤>
本発明のコレステリック液晶性混合物は、安定的にまたは迅速に液晶相(例えば、コレステリック液晶相)となるのに寄与するフッ素系配向制御剤を添加することを特徴とする。
前記フッ素系配向制御剤の例には、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーが含まれる。フッ素系配向制御剤は2種以上を含有していてもよい。フッ素系配向制御剤は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなる。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、例えば、コレステリック液晶相とする場合は、その螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生し、ヘイズの増大や回折性を示したりするため好ましくない。
前記フッ素系配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
前記フッ素系配向制御剤として利用可能な円盤状コアとその末端に長鎖フッ化アルキル基を有する液晶配向促進剤の例は、特開2002−129162号公報等に記載がある。
【0074】
前記フッ素系配向制御剤として、下記一般式(1)で表される化合物も好ましい。
【0075】
【化29】

一般式(1)中、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Cyはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表し、Lはそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−S−、−NR−(Rは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−SO2−、−C=N−、−C=C−、−C≡C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基を表し、Hbはそれぞれ独立に炭素数が2〜30のフッ化アルキレン基を表し、n1はそれぞれ独立に1または2を表す。式中で複数回登場するHb、L、Cy、X、n1はそれぞれ独立に同じであっても異なっていてもよい。
下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0076】
【化30】

一般式(2)中、X’はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Cy’はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表し、L’はそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−S−、−NR’−(R’は水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−SO2−、−C=N−、−C=C−、−C≡C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基を表し、Hb’はそれぞれ独立に炭素数が2〜6のフッ化アルキレン基を表し、n’はそれぞれ独立に1または2を表す。式中で複数回登場するHb’、L’、Cy’、X’、n’はそれぞれ独立に同じであっても異なっていてもよい。
【0077】
前記一般式(2)におけるL’、Cy’、X’、n’およびR’の好ましい範囲は、後述する一般式(1)におけるL、Cy、X、n1およびRの好ましい範囲と同様である。また、前記一般式(2)におけるHb’の好ましい範囲も、炭素数2〜6の範囲内である以外は後述する一般式(1)におけるHbの好ましい範囲と同様である。
以下、前記一般式(1)で表される本発明のヘイズ低減剤の好ましい構造の詳細について説明する。
【0078】
一般式(1)中、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xがとりうる炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などを例示することができる。その中でも、Xは水素原子、メチル基、エチル基、n−ブチル基が好ましく、水素原子、メチル基またはエチル基がより好ましく、エチル基もしくは水素原子がさらに好ましい。一般式(1)中の複数のXは同一であることが好ましい。
【0079】
一般式(1)中、Cyはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表し、好ましくは置換基を有してもよい二価の芳香族炭化水素基(以下、芳香族基とも言う)または二価の複素環基であり、より好ましくは置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素である。二価の芳香族炭化水素基の炭素数は6〜22であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましく、フェニレン基であることがさらにより好ましい。フェニレン基である場合は、メタ位またはパラ位に結合手を有することが好ましく、パラ位に結合手を有することが特に好ましい。二価の複素環基は、5員、6員または7員の複素環を有することが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。最多二重結合を有する不飽和複素環がさらに好ましい。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。
Cyで表される環状構造(好ましくは二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基)は2つの結合手以外にも置換基を有していてもよい。置換基の置換位置としては、アジン結合と結合する位置のオルト位以外の位置が好ましい。n1=1の場合、より好ましい置換位置はアジン結合と結合する位置のメタ位である。
置換基の例として、炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはエステル基や、一般式(1)におけるHb−L−で表されるものと同じ構造の置換基を挙げることができる。
前記Cyの置換基としてのアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状もしくは分岐状が好ましい。アルキル基の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができる。前記Cyの置換基としてのアルコキシ基のアルキル基部分については、前記のCyの置換基としてのアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。具体的にはメトキシ基、エトキシ基を例示することができる。前記Cyの置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、中でも塩素原子、フッ素原子が好ましい。前記Cyの置換基としてのエステル基としては、R0COO−もしくは−COOR0で表される基を例示することができる。R0としては炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができる。R0がとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲については、前記Cyの置換基としてのアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。前記Cyの置換基としてのエステルの具体例として、CH3COO−、C25COO−、−COOCH3を挙げることができる。前記Cyの置換基としての一般式(1)におけるHb−L−で表されるものと同じ構造の置換基の好ましい範囲は、後述のLおよびHbの好ましい範囲の組合せと同様である。なお、このときCyはHb−L−の2置換体または3置換体となることが好ましく、その場合の各Hb−L−は同一であっても異なっていてもよい。また、n1が2の場合は、複数のCyが一般式(1)におけるHb−L−で表されるものと同じ構造の置換基をそれぞれ有していてもよい。
Cyで表される環状構造(好ましくは二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基)に対する置換基の具体例としてはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、一般式(1)におけるHb−L−などを挙げることができる。一般式(1)中の複数のCyは同一であることが好ましい。中でも好ましくはメトキシ基、エトキシ基、一般式(1)におけるHb−L−であり、特に好ましくは一般式(1)におけるHb−L−である。
一般式(1)におけるHb−L−を置換基として有する場合、好ましくは1つ目の一般式(1)におけるHb−L−のオルト位に置換することが好ましい。また、一般式(1)におけるHb−L−を2つ置換基として設ける場合は、両方とも1つ目の一般式(1)におけるHb−L−のオルト位に置換することが好ましい。
【0080】
一般式(1)において、Lはそれぞれ独立して単結合、−O−、−CO−、−S−、−NR−(Rは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−SO2−、−C=N−、−C=C−、−C≡C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基であり、−O−、−CO−、−C=C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基であることが好ましく、−O−、−CO−およびアルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基であることがより好ましい。
前記Lがとりうるアルキレン基およびフッ化アルキレン基の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜7であることがより好ましく、1〜4であることが特に好ましく、2または3であることがより特に好ましい。
前記Rがとりうるアルキル基は直鎖状であっても分枝状であってもよい。前記Rがとりうるアルキル基の炭素数は1〜3であることがより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基を例示することができる。
Lは上述の特定の基を組み合わせてなる基であってもよいが、L全体の原子連結鎖長は、1〜30原子であることが好ましく、1〜20原子であることがより好ましく、1〜10原子であることが特に好ましい。
【0081】
さらに前記Lは、*−L1−Sp−L2−#で表されることが好ましい(但し*がHbとの結合手を表し、#がCyとの連結手を表す)。前記L1およびL2はそれぞれ独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NR’’CO−、−CONR’’−(R’’は水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)を表すことが好ましく、より好ましくは−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−であり、特に好ましくは−O−、−CO−、−COO−、−OCO−である。その中でも前記L1としてより特に好ましくは−O−または−OCO−であり、一方、前記L2としてより特に好ましくは−COO−または−OCO−である。上記のR’’がとりうるアルキル基は、前記Rがとりうるアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0082】
前記Spは単結合、炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数1〜10のフッ化アルキレン基を表し、より好ましくは単結合、炭素数1〜7のアルキレン基または炭素数1〜7のフッ化アルキレン基であり、さらに好ましくは単結合、炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数1〜4のフッ化アルキレン基であり、より特に好ましくは単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、さらにより特に好ましくは単結合または炭素数2もしくは3のアルキレン基である。Spが表すアルキレン基またはフッ化アルキレン基には、分枝があっても無くてもよいが、好ましいのは分枝がない直鎖のアルキレン基または分枝があるフッ化アルキレン基であり、より好ましくは分枝がない直鎖のアルキレン基である。
【0083】
一般式(1)中、Hbは炭素数2〜30のフッ化アルキル基を表し、より好ましくは炭素数2〜20のフッ化アルキル基であり、さらに好ましくは2〜10のフッ化アルキル基であり、特に好ましくは2〜6のフッ化アルキル基である。ここで、フッ化アルキル基は、末端のトリフルオロメチル基のフッ素原子の多くとも2つや、フッ化アルキレン鎖の一方のフッ素原子が水素で置換されていても置換されていなくてもよい。フッ化アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分枝状であるものが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。フッ化アルキル基としては、末端を含めてパーフルオロアルキル基であるものまたは末端がCHF2であり、末端以外がパーフルオロアルキレン基であるものを好ましく例示することができる。すなわち、以下の一般式で表される基であることが好ましい。
F−(Cp2p)−
H−(Cp2p)−
上式において、pは2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜6であることがより特に好ましい。
【0084】
一般式(1)中、n1はそれぞれ独立に1または2を表す。また、n1が2であるとき、複数存在する括弧内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、n1が2であるとき、分子内に4つ存在する括弧内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。一般式(1)中のn1は1であることが、配向剤の相溶性が高いという点から好ましい。
【0085】
一般式(1)で表される化合物は、分子構造が対称性を有するものであってもよいし、対称性を有しないものであってもよいが、対称性を有するものであることが好ましく、点対称であることがより好ましい。なお、ここでいう対称性とは、点対称、線対称、回転対称のいずれかに該当するものを意味し、非対称とは点対称、線対称、回転対称のいずれにも該当しないものを意味する。ここで、一般式(1)中で複数回登場するHb、L、Cy、X、n1はそれぞれ独立に同じであっても異なっていてもよいが、一般式(1)で表されるヘイズ低下剤は上述のように点対称であることが好ましいため、−CR(X)=N−N=C(X)−で表されるコアの左右において各基が対称の構造であることが好ましい。すなわち、−CR(X)=N−N=C(X)−で表されるコアの左側のHb、L、Cy、X、n1の組合せが、該コアの右側のHb、L、Cy、X、n1の組合せと同じであることが好ましい。
【0086】
一般式(1)で表される化合物は、以上述べたフッ化アルキル基(Hb)、連結基(−L−Cy−および−Cy−L−)、置換基Xおよびコア部分の二価アジン骨格を組み合わせた化合物である。分子内に2つ存在するフッ化アルキル基(Hb)は互いに同一であることが好ましい。
分子内に存在する連結基−L−Cy−および−Cy−L−も互いに同一であることが好ましい。但し、n1が2の場合における各連結基−L−Cy−同士は異なることが好ましく、同様に−Cy−L−同士も異なることが好ましい。末端のHb−L−(好ましくはHb−L1−Sp−L2−)は、以下のいずれかの一般式で表される基であることが好ましい。
(Cp2p+1)−(Cq2q)−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−O
(Cp2p+1)−(Cq2q)−COO−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−O−(Cr2r)−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−O−(Cr2r)−O−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−COO−(Cr2r)−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−COO−(Cr2r)−COO−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−OCO−(Cr2r)−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−OCO−(Cr2r)−COO−
上式において、pは2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜6であることが特に好ましい。qは0〜20であることが好ましく、0〜10であることがより好ましく、0〜5であることがさらに好ましい。p+qは3〜30であることが好ましい。rは1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
【0087】
また、前記フッ素系配向制御剤として、下記一般式(I)で表される化合物も好ましい。
【0088】
【化31】

【0089】
一般式(I)において、L11、L13、L13、L14、L15、L15はおのおの独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−(一般式(I)中におけるRは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基を表す)を表し、−NRCO−、−CONR−は溶解性を減ずる効果があり、膜作成時にヘイズ値が上昇する傾向があることからより好ましくは−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−であり、化合物の安定性の観点からさらに好ましくは−O−、−CO−、−COO−、−OCO−である。上記のRがとりうるアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。炭素数は1〜3であることがより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基を例示することができる。
【0090】
Sp11、Sp12、Sp13、Sp14はそれぞれ独立して単結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表し、より好ましくは単結合または炭素数1〜7のアルキレン基であり、さらに好ましくは単結合または炭素数1〜4のアルキレン基である。但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。アルキレン基には、分枝があっても無くてもよいが、好ましいのは分枝がない直鎖のアルキレン基である。合成上の観点からは、Sp11とSp14が同一であり、かつ、Sp12とSp13が同一であることが好ましい。
【0091】
11、A12は3価または4価の芳香族炭化水素である。3価または4価の芳香族炭化水素基の炭素数は6〜22であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましく、6であることがさらにより好ましい。A11、A12で表される3価または4価の芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。そのような置換基の例として、炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはエステル基を挙げることができる。これらの基の説明と好ましい範囲については、下記のTの対応する記載を参照することができる。A11、A12で表される3価または4価の芳香族炭化水素基に対する置換基としては、例えばメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、臭素原子、塩素原子、シアノ基などを挙げることができる。パーフルオロアルキル部分を分子内に多く有する分子は、少ない添加量で液晶を配向させることができ、ヘイズ低下につながることから、分子内にパーフルオロアルキル基を多く有するようにA11、A12は4価であることが好ましい。合成上の観点からは、A11とA12は同一であることが好ましい。
【0092】
11
【化32】

で表される二価の基または二価の芳香族複素環基を表す(上記T11中に含まれるXは炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはエステル基を表し、Ya、Yb、Yc、Ydはおのおの独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)であり、より好ましくは
【化33】

であり、さらに好ましくは
【化34】

であり、よりさらに好ましくは、
【化35】

である。
上記T11中に含まれるXがとりうるアルキル基の炭素数は1〜8であり、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分枝状であることが好ましい。好ましいアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができ、その中でもメチル基が好ましい。上記T11中に含まれるXがとりうるアルコキシ基のアルキル部分については、上記T11中に含まれるXがとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。上記T11中に含まれるXがとりうるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子が好ましい。上記T11中に含まれるXがとりうるエステル基としては、R’COO−で表される基を例示することができる。R’としては炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができる。R’がとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲については、上記T11中に含まれるXがとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。エステルの具体例として、CH3COO−、C25COO−を挙げることができる。Ya、Yb、Yc、Ydがとりうる炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができる。
前記二価の芳香族複素環基は、5員、6員または7員の複素環を有することが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。最多二重結合を有する不飽和複素環がさらに好ましい。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。二価の複素環基は置換基を有していてもよい。そのような置換基の例の説明と好ましい範囲については、上記のA1とA2の3価または4価の芳香族炭化水素が取り得る置換基に関する説明と記載を参照することができる。
【0093】
Hb11は炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基を表し、より好ましくは炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは3〜10のパーフルオロアルキル基である。パーフルオロアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分枝状であるものが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0094】
m11、n11はそれぞれ独立に0から3であり、かつm11+n11≧1である。このとき複数存在する括弧内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。一般式(I)のm11、n11は、前記のA11、A212の価数によって定まり、好ましい範囲もA11、A212の価数の好ましい範囲によって定まる。
11中に含まれるoおよびpはそれぞれ独立に0以上の整数であり、oおよびpが2以上であるとき複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。T11中に含まれるoは1または2であることが好ましい。T11中に含まれるpは1〜4のいずれかの整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
【0095】
一般式(I)で表される化合物は、分子構造が対称性を有するものであってもよいし、対称性を有しないものであってもよい。なお、ここでいう対称性とは、点対称、線対称、回転対称のいずれかに該当するものを意味し、非対称とは点対称、線対称、回転対称のいずれにも該当しないものを意味する。
【0096】
一般式(I)で表される化合物は、以上述べたパーフルオロアルキル基(Hb11)、連結基−(−Sp11−L11−Sp12−L12m11−A11−L13−および−L14−A12−(L15−Sp13−L16−Sp14−)n11−、ならびに好ましくは排除体積効果を持つ2価の基であるTを組み合わせた化合物である。分子内に2つ存在するパーフルオロアルキル基(Hb11)は互いに同一であることが好ましく、分子内に存在する連結基−(−Sp11−L11−Sp12−L12m11−A11−L13−および−L14−A12−(L15−Sp13−L16−Sp14−)n11−も互いに同一であることが好ましい。末端のHb11−Sp11−L11−Sp12−および−Sp13−L16−Sp14−Hb11は、以下のいずれかの一般式で表される基であることが好ましい。
(Ca2a+1)−(Cb2b)−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−O−(Cr2r)−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−COO−(Cr2r)−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−OCO−(Cr2r)−
上式において、aは2〜30であることが好ましく、3〜20であることがより好ましく、3〜10であることがさらに好ましい。bは0〜20であることが好ましく、0〜10であることがより好ましく、0〜5であることがさらに好ましい。a+bは3〜30である。rは1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
また、一般式(I)の末端のHb11−Sp11−L11−Sp12−L12−および−L14−Sp13−L16−Sp14−Hb11は、以下のいずれかの一般式で表される基であることが好ましい。
(Ca2a+1)−(Cb2b)−O
(Ca2a+1)−(Cb2b)−COO−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−O−(Cr2r)−O−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−COO−(Cr2r)−COO−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−OCO−(Cr2r)−COO−
上式におけるa、bおよびrの定義は直上の定義と同じである。
【0097】
本発明の積層体に用いられる前記液晶膜を構成する各光反射層は、前記フッ素系水平配向剤の添加量が、前記重合性液晶化合物に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%であることが特に好ましく、0.01〜0.09質量%であることがより特に好ましく、0.01〜0.06質量%であることがよりさらに特に好ましい。
【0098】
また、本発明の積層体に用いられる前記液晶膜を構成する各光反射層は、前記フッ素系水平配向剤の添加量を上記範囲に抑える観点から、前記フッ素系水平配向剤がパーフルオロアルキル基を含むことがより好ましく、炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基を含むことが特に好ましい。
【0099】
(3)重合開始剤
本発明の組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。例えば、紫外線照射により硬化反応を進行させて硬化膜を形成する態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、組成物(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0100】
(4)その他の成分
本発明の液晶性混合物は、前記一般式(Ia)および(Ib)で表される化合物、フッ素系水平配向制御剤および重合開始剤に加えて、必要に応じて溶媒、不斉炭素原子を含む光学活性化合物(キラル剤)や他の添加剤(例えば、セルロースエステル)を含むことができる。
【0101】
溶媒:
本発明の液晶性混合物の溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0102】
光学活性化合物(キラル剤):
本発明の液晶性混合物は、コレステリック液晶相を示すものであることが好ましく、そのためには、光学活性化合物を含有しているのが好ましい。但し、上記棒状液晶化合物が不正炭素原子を有する分子である場合には、光学活性化合物を添加しなくても、コレステリック液晶相を安定的に形成可能である場合もある。前記光学活性化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第一42委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性光学活性化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0103】
本発明の液晶性混合物中の光学活性化合物は、併用される液晶化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0104】
[フィルム]
本発明のフィルムは、支持体と、該支持体上に、本発明のコレステリック液晶性混合物を重合して形成したコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜と、を含むことを特徴とする。
本発明の液晶性混合物を塗布等の方法により製膜することによりフィルムを形成することができる。本発明の液晶性混合物を配向膜の上に塗布し、液晶層を形成することにより光学異方性素子を作製することもできる。本発明のフィルムは、光学異方性を示すことが好ましい。
本発明の液晶性混合物の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法)により実施できる。液晶性分子は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性分子に導入した重合性基の重合反応により実施することが好ましい。
重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。液晶層の厚さは、0.1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがさらに好ましく、2〜20μmであることが最も好ましい。液晶層中の前記一般式(1)で表されるヘイズ低下剤の塗布量は、0.1〜500mg/m2であることが好ましく、0.5〜450mg/m2であることがより好ましく、0.75〜400mg/m2であることがさらに好ましく、1.0〜350mg/m2であることが最も好ましい。
【0105】
製造方法の一例は、
(A)透明可塑性樹脂フィルム等の支持体の表面に、配向制御剤と重合性(硬化性の)液晶化合物を含む組成物を塗布して、コレステリック液晶相の状態にすること、
(B)本発明の液晶性混合物に紫外線を照射して硬化反応を進行させ、コレステリック液晶相を固定して光反射層を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
(A)及び(B)の工程を支持体の一方の表面上で4回繰り返すことで、図4に示した構成のコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜(図4では支持体は不図示)を支持体上に製造することができ、さらに繰り返すことでさらに積層数を増やしたコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜(光反射層)を形成することができる。
【0106】
前記下塗り層は、塗布により透明可塑性樹脂フィルム等の支持体の表面上に形成されることが好ましい。このときの塗布方法については特に限定はなく、公知の方法をもちいることができる。
前記配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには、電場の付与、磁場の付与、或いは光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。配向層は、ポリマーの膜の表面に、ラビング処理により形成するのが好ましい。配向膜は、後述する支持体と共に剥離することが好ましい。
【0107】
(A)工程
前記(A)工程では、まず、支持体又は下層の光反射層の表面に、本発明の液晶性混合物を塗布する。本発明の液晶性混合物は、溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製されるのが好ましい。前記塗布液の塗布は、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、本発明の液晶性混合物をノズルから吐出して、塗膜を形成することもできる。
【0108】
次に、表面に塗布され、塗膜となった本発明の液晶性混合物を、コレステリック液晶相の状態にすることが好ましい。本発明の液晶性混合物が、溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗膜を乾燥し、溶媒を除去することで、コレステリック液晶相の状態にすることができる場合がある。また、コレステリック液晶相への転移温度とするために、所望により、前記塗膜を加熱してもよい。例えば、一旦等方性相の温度まで加熱し、その後、コレステリック液晶相転移温度まで冷却する等によって、安定的にコレステリック液晶相の状態にすることができる。本発明の液晶性混合物の液晶相転移温度は、製造適性等の面から10〜250℃の範囲内であることが好ましく、10〜150℃の範囲内であることがより好ましい。10℃未満であると液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるために冷却工程等が必要となることがある。また200℃を超えると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にするために高温を要し、熱エネルギーの浪費、基板の変形、変質等からも不利になる。
【0109】
(B)工程
次に、(B)の工程では、コレステリック液晶相の状態となった塗膜に、紫外線を照射して、硬化反応を進行させる。紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、本発明の液晶性混合物の硬化反応が進行し、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。
紫外線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、前記塗膜に紫外線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
【0110】
硬化反応を促進するため、加熱条件下で紫外線照射を実施してもよい。また、紫外線照射時の温度は、コレステリック液晶相が乱れないように、コレステリック液晶相を呈する温度範囲に維持するのが好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達せず、膜強度が不十分の場合には、窒素置換等の方法により、雰囲気中の酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。紫外線照射によって進行される硬化反応(例えば重合反応)の反応率は、層の機械的強度の保持等や未反応物が層から流出するのを抑える等の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがよりさらに好ましい。反応率を向上させるためには照射する紫外線の照射量を増大する方法や窒素雰囲気下あるいは加熱条件下での重合が効果的である。また、一旦重合させた後に、重合温度よりも高温状態で保持して熱重合反応によって反応をさらに推し進める方法や、再度紫外線を照射する(ただし、本発明の条件を満足する条件で照射する)方法を用いることもできる。反応率の測定は反応性基(例えば重合性基)の赤外振動スペクトルの吸収強度を、反応進行の前後で比較することによって行うことができる。
【0111】
上記工程では、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、紫外線照射によって進行する硬化反応により、コレステリック液晶相の配向状態を固定する。
なお、本発明においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に光反射層中の液晶性混合物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶性混合物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0112】
なお、後述する本発明の積層体や、後述する本発明の合わせガラスを選択反射板として用いる場合、その他の重要な性能は、可視光の透過率とヘイズである。材料の選択及び製造条件等を調整して、用途に応じて、好ましい可視光の透過率及びヘイズを示す選択反射板を提供できる。例えば可視光の透過率が高い用途に用いられる態様では、可視光の透過率が90%以上であり、且つ光の反射率が上記反応を満足する選択反射板とすることができる。
【0113】
(フィルムのその他の構成層)
また、本発明のフィルムは、上記構成のほかに有機材料及び/又は無機材料を含む非光反射性の層を有していてもよい。本発明に利用可能な前記非光反射性の層の一例には、他の部材(例えば、ガラス板)と密着するのを容易とするための易接着層や粘着材層、あるいは、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜の上に形成される保護層が含まれる。
また、本発明に利用可能な前記非光反射性の層の他の例には、コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を形成する際に設けられてもよい下塗り層、及びコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を形成する際に利用される、液晶化合物の配向方向をより精密に規定する配向層が含まれる場合がある。
【0114】
粘着材層:
上述のとおり本発明のフィルムは、粘着材層を含んでいてもよい。
前記粘着材は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系など一般的な粘着材を用いることができる。本発明では、その中でもポリエステル系やアクリル系を用いることが好ましく、アクリル系を用いることがより好ましい。
前記粘着材は商業的に入手してもよく、本発明に好ましく用いられる粘着材の一例としては、サンリッツ(株)社製のPET−Wやパナック工業(株)社製のPD−S1などを挙げることができる。
粘着材層の厚みは、例えば、0.1〜5.0μmとすることができる。
【0115】
易接着層:
易接着層は、例えば、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜と前記粘着材層との接着性を改善する機能を有する。易接着層の形成に利用可能な材料としては、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂が挙げられる。ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)とブチルアルデヒドを酸触媒で反応させて生成するポリビニルアセタールの一種であり、下記構造の繰り返し単位を有する樹脂である。
【0116】
【化36】

【0117】
また、前記易接着層は、いわゆるアンダーコート層といわれる、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等からなる層であってもよい。これらの材料からなる易接着層も塗布により形成することができる。なお、市販されているポリマーフィルムの中には、アンダーコート層が付与されているものもあるので、それらの市販品を基板として利用することもできる。さらに、前記易接着層には紫外線吸収剤や帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
なお、易接着層の厚みは、0.1〜5.0μmが好ましい。
【0118】
下塗り層:
本発明のフィルムは、コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜側に下塗り層を有していてもよい。コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜は、通常、支持体上に設けられることが好ましいが、このとき、支持体によっては、下塗り層を設けた上にコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を設けることが好ましい場合があるためである。
下塗り層の形成に利用可能な材料の例には、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性ポリエステル等が含まれる。また、下塗り層の表面を中間膜と接着する態様では、下塗り層と中間膜との接着性が良好であるのが好ましく、その観点では、下塗り層は、ポリビニルブチラール樹脂も、前記材料とともに含有しているのが好ましい。また、下塗り層は、上記したように密着力を適度に調節する必要があるので、グルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類またはホウ酸等の硬膜剤を適宜用いて硬膜させることが好ましい。硬膜剤の添加量は、下塗り層の乾燥質量の0.2〜3.0質量%が好ましい。
下塗り層の厚みは、0.05〜0.5μmが好ましい。
【0119】
配向層:
本発明のフィルムは、液晶膜と前記中間膜との間に配向層を有していてもよいが、本発明の積層体の製造方法では、支持体を剥離する場合はその際に一緒に剥離することもできる。
配向層は、コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を製膜する際には、該液晶膜と隣接する必要があるので、コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜と基板又は下塗り層との間に設けるのが好ましい。但し、下塗り層が配向層の機能を有していてもよい。また、コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜の間に配向層を有していてもよい。
【0120】
保護層:
前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜の表面の傷つき防止性(ハードコート性)や紫外線による劣化防止性等を付与するために、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜上に保護層を形成してもよい。前記保護層の構成としては特に限定は無いが、少なくとも1種のバインダーの中に紫外線吸収剤等を均一に分散させたものが好ましい。
【0121】
《バインダー[ハードコート性の付与]》
前記保護層にハードコート性を持たせるために、バインダーとしてTgの高いポリマーもしくは、少なくとも1種類の二官能以上の重合性モノマーおよび/または重合性ポリマーを含む層を光照射または熱により重合した層を用いることが好ましい。また、バインダーとしてTgの高いポリマーに加えて、少なくとも1種類の二官能以上の重合性モノマー(および必要に応じて重合性ポリマー)を併用した層を、光照射または熱により重合した層を用いることも好ましい。
【0122】
前記Tgの高いポリマーとして、そのTgは50℃以上が好ましく、80℃以上であればより好ましく、100℃以上であればさらに好ましい。高Tgポリマーを商業的に入手する場合は、例えば、MH−101−5(藤倉化成(株)製)などが挙げられる。また、ポリマーのTgを上げるために、水酸基、カルボン酸基、アミノ基といった極性基を導入するとよい。高Tgポリマーの一例として、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートの反応物;アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物;アルキル(メタ)アクリレートと、水酸基含有(メタ)アクリレートと無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物との反応物であるハーフエステルの共重合体等が挙げられる。
【0123】
前記二官能以上の重合性モノマーは、1分子中に反応性基を2以上有する化合物である。前記反応性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。前記二官能以上の重合性モノマーとしては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなど好ましく用いることができる。前記二官能以上の重合性モノマーを商業的に入手する場合は、例えば、KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0124】
前記重合性ポリマーの一例として、メチル(メタ)クリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール1,3−ジ(メタ)アクリレート等の重合性基含有アクリレートの反応物、(メタ)アクリル酸との共重合体、および他のモノマーとの多元共重合体が挙げられる。
【0125】
《重合開始剤》
また、前記バインダーが前記少なくとも1種類の二官能以上の重合性モノマーおよび/または前記重合性ポリマーを含む場合、前記少なくとも1種類の二官能以上の重合性モノマーおよび/または重合性ポリマーを含む層の中に光または熱重合開始剤も含んでいることが好ましく、光重合開始剤を含んでいることがより好ましい。前記重合開始剤を商業的に入手する場合は、例えば、IRGACURE819(BASF製)などが挙げられる。また、本明細書中の[0099]記載の前記重合開始剤を用いることが好ましい。
【0126】
《紫外線吸収剤[紫外線による劣化防止性の付与]》
紫外線による劣化を防止するために、紫外線吸収剤を用いることが好ましい。例えば、大勝靖一監修「高分子添加剤の開発と環境対策」(シーエムシー出版、2003年)第2章、東レリサーチセンター調査研究部門編集「高分子用機能性添加剤の新展開」(東レリサーチセンター、1999年)2.3.1、などに記載されている紫外線吸収剤が挙げられる。より具体的には、紫外線吸収剤の構造として知られているトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、メロシアニン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、アクリレート系、安息香酸エステル系シュウ酸ジアミド系などの化合物が挙げられる。例えば、ファインケミカル、2004年5月号、28〜38ページ、東レリサーチセンター調査研究部門発行「高分子用機能性添加剤の新展開」(東レリサーチセンター、1999年)96〜140ページ、大勝靖一監修「高分子添加剤の開発と環境対策」(シーエムシー出版、2003年)54〜64ページなどに記載されている。
【0127】
本発明において前記保護層に用いられる紫外線吸収剤としては、好ましくは、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、アクリレート系、トリアジン系の化合物である。より好ましくはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系の化合物である。特に好ましくはベンゾトリアゾール系、トリアジン系の化合物である。
【0128】
また、紫外線吸収剤としての吸収能を上げるためには添加量は多ければ多いほどよいが、多すぎるとブリードアウトしてしまう問題もあるため、前記紫外線吸収剤の添加量は、前記保護層の質量に対して25質量%以下が好ましい。
【0129】
前記ベンゾトリアゾール系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜380nmで、下記一般式(IIa)、(IIb)または(IIc)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0130】
【化37】

【0131】
[前記一般式(IIa)中、R11は、水素原子、1〜24個の炭素原子を有するアルキル、アルキル部分に1〜4個の炭素原子を有するフェニルアルキル、5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、または下記一般式:
【0132】
【化38】

(式中、R14及びR15は、互いに独立して1〜5個の炭素原子を有するアルキルを表す。R14は、−Cv2v+1-w−基と一緒になって、5〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル基を形成してもよい。wは1又は2を表す。vは2〜20の整数を表す。Mは、−COOR16(ここで、R16は、水素原子、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、アルキル部分及びアルコキシ部分に1〜20個の炭素原子を有するアルコキシアルキル、またはアルキル部分に1〜4個の炭素原子を有するフェニルアルキルである。)を表す。)
で表される基であり、
【0133】
13は、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、及びアルキル部分に1〜4個の炭素原子を有するフェニルアルキルである。
【0134】
12は、水素原子、塩素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルコキシ、または−COOR16(ここで、R16は先に規定される通りである。)である。但し、R11及びR12のうちの少なくとも1つは、水素原子以外である。]
【0135】
[前記一般式(IIb)中、
20は、水素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキルであり、T21は、水素原子、塩素原子、または1〜4個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルコキシであり、jは1又は2であり、jが1のときT22は、塩素原子、−OT23、または式:
【0136】
【化39】

であり、また、jが2のときT22は、式:
【0137】
【化40】

、又は−O−T29−O−の基である。
【0138】
(ここで、T23は、水素原子、1〜18個の炭素原子を有しそして非置換であるか、または1〜3個のヒドロキシル基によってもしくは−OCOT26によって置換されるアルキル、3〜18個の炭素原子を有し、−O−または−NT26−によって連続的炭素−炭素結合が1回または数回中断され、そして非置換であるか、またはヒドロキシルもしくは−OCOT26によって置換されるアルキル、5〜12個の炭素原子を有しそして非置換であるか、またはヒドロキシル及び/又は1〜4個の炭素原子を有するアルキルによって置換されるシクロアルキル、2〜18個の炭素原子を有しそして非置換であるか、またはヒドロキシルによって置換されるアルケニル、アルキル部分に1〜4個の炭素原子を有するフェニルアルキル、または、−CH2CH(OH)−T27もしくは
【0139】
【化41】

であり、
【0140】
24及びT25は、互いに独立して、水素原子、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、3〜18個の炭素原子を有しそして−O−または−NT26−によって連続的炭素−炭素結合が1回または数回中断されるアルキル、5〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル、フェニル、1〜4個の炭素原子を有するアルキルによって置換されるフェニル、3〜8個の炭素原子を有するアルケニル、アルキル部分に1〜4個の炭素原子を有するフェニルアルキル、または2〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルであり、
【0141】
26は、水素原子、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、5〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル、3〜8個の炭素原子を有するアルケニル、フェニル、1〜4個の炭素原子を有するアルキルによって置換されるフェニル、アルキル部分に1〜4個の炭素原子を有するフェニルアルキルであり、
【0142】
27は、水素原子、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、非置換であるか、またはヒドロキシルによって置換されるフェニル、アルキル部分に1〜4個の炭素原子を有するフェニルアルキル、または−CH2OT28であり、T28は、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、3〜8個の炭素原子を有するアルケニル、5〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル、フェニル、1〜4個の炭素原子を有するアルキルによって置換されるフェニル、または、アルキル部分に1〜4個の炭素原子を有するフェニルアルキルであり、
【0143】
29は、2〜8個の炭素原子を有するアルキレン、4〜8個の炭素原子を有するアルケニレン、4個の炭素原子を有するアルキニレン、シクロヘキシレン、2〜8個の炭素原子を有しそして−O−によって連続的炭素−炭素結合が1回または数回中断されるアルキレン、または−CH2CH(OH)CH2O−T31−OCH2CH(OH)CH2−、もしくは−CH2−C(CH2OH)2−CH2−であり、
【0144】
30は、2〜20個の炭素原子を有しそして−O−によって連続的炭素−炭素結合が1回もしくは数回中断されることができるアルキレン、またはシクロヘキシレンであり、
【0145】
31は、2〜8個の炭素原子を有するアルキレン、2〜18個の炭素原子を有しそして−O−によって連続的炭素−炭素結合が1回もしくは数回中断されるアルキレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−フェニレン、もしくは1,4−フェニレンであり、または、T30、及びT26は、2個の窒素原子と一緒になって、ピペラジン環になる。)]
【0146】
[前記一般式(IIc)中、R2’は、C1〜C12アルキルであり、そしてkは1〜4の数である。]
【0147】
前記一般式(IIa)〜(IIc)のいずれかで表される化合物の代表例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)−5’−メチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−sec−ブチル−5’−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)−カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−ドデシル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾール−2−イルフェノール]、2−[3’−t−ブチル−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)−2’−ヒドロキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールとポリエチレングリコール300とのエステル交換生成物;
【0148】
【化42】

(式中、R=3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシ−5’−2H−ベンゾトリアゾール−2−イルフェニル)、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(α,α−ジメチルベンジル)−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル]ベンゾトリアゾール;2−[2’−ヒドロキシ−3’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−5’−(α,α−ジメチルベンジル)−フェニル]ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0149】
前記トリアジン系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜380nmで、下記一般式(III)で表される化合物が好ましい。
【0150】
【化43】

【0151】
[前記一般式(III)中、iは1又は2であり、そしてhは1〜3の整数であり、置換基Y101は、互いに独立して、水素原子、ヒドロキシル、フェニルもしくはハロゲン、ハロゲノメチル、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、1〜18個の炭素原子を有するアルコキシ、−COO−(C1〜C18アルキル)によって置換される1〜18個の炭素原子を有するアルコキシである。
【0152】
iが1のときY102は、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、非置換であるか、またはヒドロキシル、ハロゲン、1〜18個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルコキシによって置換されるフェニル;
1〜12個の炭素原子を有しそして−COOH、−COOY108、−CONH2、−CONHY109、−CONY109110、−NH2、−NHY109、−NY109110、−NHCOY111、−CN、及び/又は−OCOY111によって置換されるアルキル;
4〜20個の炭素原子を有し、1個以上の酸素原子によって連続的炭素−炭素結合が中断されそして非置換であるか、またはヒドロキシルもしくは1〜12個の炭素原子を有するアルコキシによって置換されるアルキル、3〜6個の炭素原子を有するアルケニル、グリシジル、非置換であるか、またはヒドロキシル、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び/又は−OCOY111によって置換されるシクロヘキシル、アルキル部分に1〜5個の炭素原子を有しそして非置換であるか、またはヒドロキシル、塩素及び/又はメチルによって置換されるフェニルアルキル、−COY112もしくは−SO2113である。
【0153】
また、uが2のときY2は、2〜16個の炭素原子を有するアルキレン、4〜12個の炭素原子を有するアルケニレン、キシリレン、3〜20個の炭素原子を有し、1個以上の−O−原子によって連続的炭素−炭素結合が中断され、及び/又はヒドロキシルによって置換されるアルキレン、−CH2CH(OH)CH2−O−Y115−OCH2CH(OH)CH2、−CO−Y116−CO−、−CO−NH−Y117−NH−CO−、または−(CH2m21−CO2−Y118−OCO−(CH2m21である。
【0154】
(ここで、m21は、1、2または3であり、Y108は、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、3〜18個の炭素原子を有するアルケニル、3〜20個の炭素原子を有し、1個以上の酸素もしくは硫黄原子または−NT26−によって連続的炭素−炭素結合が中断され、及び/又はヒドロキシルによって置換されるアルキル、1〜4個の炭素原子を有しそして−P(O)(OY114)2、−NY109110、もしくは−OCOY111及び/又はヒドロキシルによって置換されるアルキル、3〜18個の炭素原子を有するアルケニル、グリシジル、またはアルキル部分に1〜5個の炭素原子を有するフェニルアルキルであり、Y109及びY110は、互いに独立して、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、3〜12個の炭素原子を有するアルコキシアルキル、4〜16個の炭素原子を有するジアルキルアミノアルキル、もしくは5〜12個の炭素原子を有するシクロヘキシルであり、または、Y109及びY110は、一緒になって3〜9個の炭素原子を有するアルキレン、オキサアルキレンまたはアザアルキレンであってもよく、Y111は、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、2〜18個の炭素原子を有するアルケニル、またはフェニルであり、Y112は、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、2〜18個の炭素原子を有するアルケニル、フェニル、1〜12個の炭素原子を有するアルコキシ、フェノキシ、1〜12個の炭素原子を有するアルキルアミノ、またはフェニルアミノであり、Y113は、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、またはアルキル基に1〜8個の炭素原子を有するアルキルフェニルであり、Y114は、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、またはフェニルであり、Y115は、2〜10個の炭素原子を有するアルキレン、フェニレン、または−フェニレン−M−フェニレン−(ここで、Mは、−O−、−S−、−SO2−、−CH2−または−C(CH32−である。)であり、Y116は、2〜10個の炭素原子を有するアルキレン、オキサアルキレンまたはチアアルキレン、フェニレン、または2〜6個の炭素原子を有するアルケニレンであり、Y117は、2〜10個の炭素原子を有するアルキレン、フェニレン、またはアルキル部分に1〜11個の炭素原子を有するアルキルフェニレンであり、そしてY118は、2〜10個の炭素原子を有するアルキレン、または4〜20個の炭素原子を有しそして酸素によって連続的炭素−炭素結合が1回もしくは数回中断されるアルキレンである。)]
【0155】
前記一般式(III)で表される化合物の代表例としては、2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジ(4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジ(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−6−(4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−トリデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ブチルオキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−(ドデシルオキシ/トリデシルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ)フェニル−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−(3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2−{2−ヒドロキシ−4−[3−(2−エチルヘキシル−1−オキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ]フェニル}−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)オキシ)フェニル−4,6−ジ(4−フェニル)フェニル−1,3,5−トリアジン等を挙げることができる。
【0156】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜380nmである化合物が好ましく、その代表例としては2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−デシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ジエチルアミノ−2’−ヘキシルオキシカルボニルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、1,4−ビス(4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン等を挙げることができる。
【0157】
前記サリチル酸系化合物としては、その有効吸収波長が約290〜330nmである化合物が好ましく、その代表例としてはフェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、4−オクチルフェニルサリシレート、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4−t−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシサリシレート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシサリシレートなどを挙げることができる。
【0158】
前記アクリレート系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜350nmである化合物が好ましく、その代表例としては2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、イソオクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、ヘキサデシル 2−シアノ−3−(4−メチルフェニル)アクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(4−メトキシフェニル)シンナメート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(4−メトキシフェニル)シンナメート、メチル−2−カルボメトキシ−3−(4−メトキシフェニル)シンナメート2−シアノ−3−(4−メチルフェニル)アクリル酸塩、1,3−ビス(2’−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ)−2,2−ビス(((2’−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ)メチル)プロパン、N−(2−カルボメトキシ−2−シアノビニル)−2−メチルインドリン等を挙げることができる。
【0159】
前記シュウ酸ジアミド系化合物としては、その有効吸収波長が約250〜350nmであるものが好ましく、その代表例としては4,4’−ジオクチルオキシオキサニリド、2,2’−ジオクチルオキシ−5,5’−ジ−t−ブチルオキサニリド、2,2’−ジドデシルオキシ−5,5’−ジ−t−ブチルオキサニリド、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサミド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサニリド、2−エトキシ−2’−エチル−5,4’−ジ−t−ブチルオキサニリド等を挙げることができる。
【0160】
前記紫外線吸収剤を商業的に入手する場合は、例えば、TINUVIN326(BASF製)などが挙げられる。
【0161】
前記保護層の形成に利用可能なその他の材料の例には、界面活性剤などを挙げることができる。前記界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。前記界面活性剤を商業的に入手する場合は、例えば、メガファックF−780F(DIC製)などが挙げられる。また、本明細書中の[0073]〜[0097]に記載の前記フッ素系水平配向剤を用いることもできる。
【0162】
前記保護層を塗布により形成する場合は、前記バインダーなどの保護層の形成に利用可能な材料を任意の溶媒に分散または溶解させて塗布液を調製してもよい。本明細書中の[0101]記載の前記溶媒を用いることが好ましい。
その後、塗布液を公知の方法で前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜上に塗布し、乾燥させて前述のバインダーとしてTgの高いポリマーもしくは、少なくとも1種類の二官能以上の重合性モノマーおよび/または重合性ポリマーを含む層を形成することが好ましい。得られた層を光照射または熱により重合した層とすることが好ましい。
【0163】
前記保護層の厚みは、0.1〜20μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。
【0164】
(コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜)
上述のとおり、本発明のフィルムはコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜(以下、液晶膜と省略することがある)を有する。
本発明では、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜が、4層以上の積層体であることが好ましい。すなわち、前記液晶膜は、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜が4層以上積層されていることが好ましい。図4は、コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜の積層構成の一例を示したものであって、1は前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を、15a、15b、16a及び16bは、各光反射層をそれぞれ示している。
光反射層15a、15b、16a及び16bは、コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜であることが好ましく、当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチに基づいて、特定の波長の光を反射する光選択反射性を示すことが好ましい。本発明の1つの実施形態では、隣接する光反射層15aと15bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに、その反射中心波長λ15が同一である。また、同様に、隣接する光反射層16aと16bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに、その反射中心波長λ16が同一である。本実施形態では、λ15≠λ16を満足するので、光反射層15aと15bによって所定の波長λ15の左円偏光及右円偏光を選択反射するとともに、光反射層16aと16bによって、波長λ15とは異なる波長λ16の左円偏光及び右円偏光を選択反射しており、全体として、反射特性の広帯域化が図れている。
【0165】
図4では、光反射層15aと15bによる選択反射の中心波長λ15が、例えば1010〜1070nmの範囲にあり、光反射層16aと16bによる選択反射の中心波長λ16が、例えば1190〜1290nmの範囲にあるなど、異なっていてもよい。選択反射波長がそれぞれ前記範囲である2組の赤外線反射層を利用することで、赤外線の反射効率を改善できる。太陽光エネルギー強度のスペクトル分布は、短波長であるほど高エネルギーであるという一般的傾向を示すが、赤外光波長域のスペクトル分布には、波長950〜1130nm、及び波長1130〜1350nmに、2つのエネルギー強度のピークが存在する。選択反射の中心波長が、1010〜1070nm(より好ましくは1020〜1060nm)の範囲にある少なくとも一組の赤外線反射層と、選択反射の中心波長が、1190〜1290nm(より好ましくは1200〜1280nm)の範囲にある少なくとも一組の赤外線反射層とを利用することにより、該2つのピークに相当する光をより効率的に反射することができ、その結果、遮熱性をより改善することができる。
【0166】
上記赤外領域に反射中心波長を示すコレステリック液晶相の螺旋ピッチは、一般的には、波長λ15が上記の1010〜1070nmの範囲にある場合で650〜690nm程度、波長λ16が上記の1190〜1290nmの範囲にある場合で760nm〜840nm程度である。
【0167】
一方、本発明のフィルムが紫外線波長域に選択反射特性を示す場合、選択反射の中心波長が10〜400nm、より好ましくは315〜400nm(UVA領域)、さらに好ましくは370〜400nmの紫外領域の範囲にある少なくとも一組の光反射層を利用することが好ましい。一般に、紫外線カット部材として紫外線吸収剤が用いられるが、400nmの紫外線を効率的に吸収する紫外線吸収剤の多くは黄色味を呈するため、黄色味があるか、もしくは400nmの紫外線を透過する紫外線吸収剤が主に流通している。このため370〜400nmの紫外線波長域を選択反射することで、400nmの紫外線の遮蔽性と黄色味抑制を両立することができる。また、一般のUV吸収剤(TINUVIN326(BASF製)等)含む層と併用することで全UVA領域を遮蔽することもできる。
また、本発明のフィルムが可視光波長域に選択反射特性を示す場合、選択反射の中心波長が380〜780nmの可視光領域の範囲にある少なくとも一組の光反射層を利用することが好ましい。
【0168】
また、各光反射層の厚みは、1μm〜8μm程度(好ましくは3〜7μm程度)である。但し、これらの範囲に限定されるものではない。層の形成に用いる材料(主には重合性液晶化合物及びキラル剤)の種類及びその濃度等を調整することで、所望の螺旋ピッチの光反射層を形成することができる。また層の厚みは、塗布量を調整することで所望の範囲とすることができる。
【0169】
上記した通り、隣接する光反射層15aと15bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であり、同様に、隣接する光反射層16aと16bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であることが好ましい。このように、逆向きのコレステリック液晶相からなり、選択反射の中心波長が同一の光反射層を近くに配置することで、同波長の左円偏光及び右円偏光の双方を反射することができる。
例えば、光反射層16bを通過した光(波長λ16の右円偏光が反射され、左円偏光のみが透過した光)が、次に通過するのが16bではなく15aや15bのように、選択反射の中心波長がλ16ではない場合、波長λ16の左円偏光成分は螺旋ピッチのサイズが異なるコレステリック液晶層を通過することになる。この場合、波長λ16の左円偏光成分は、他の光反射層中のコレステッリツク液晶相の旋光性の影響を僅かではあるが受けることになり、左円偏光成分の波長がシフトするなどの変化が生じる。当然のことながら、この現象は、「波長λ16の左円偏光成分」に限って起こるわけではなく、ある波長のある円偏光が、異なる螺旋ピッチのコレステリック液晶相を通過する場合に生じる変化である。本発明者が種々検討した結果、経験則的なデータではあるが、所定の螺旋ピッチのコレステリック液晶層によって反射されなかった一方の円偏光成分が、反射されないまま、螺旋ピッチが異なる他のコレステリック液晶層を通過する場合、通過する当該層の数が3以上になると、通過する円偏光成分への悪影響が顕著になり、その後に、当該円偏光を反射可能なコレステリック液晶層に到達しても、当該層による反射率が顕著に低下することがわかった。本発明では、選択反射の中心波長が互いに同一であり、且つ螺旋方向が互いに異なる一組の光反射層は、隣接させて配置しなくても、本発明の効果が得られるが、当該一組の光反射層の間に配置される、他の光反射層(螺旋ピッチが異なるコレステリック液晶相を固定して形成された、選択反射の中心波長が異なる光反射層)は、2以下であるのが好ましい。勿論、当該一組の光反射層が隣接しているのが好ましい。
【0170】
本発明のλ/2膜が入る構成では、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜が2層以上の積層体であることが好ましい。この構成では、コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜 / λ/2膜 / コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜となり、全体としては、コレステリック液晶が4層以上積層された積層体となる。
【0171】
コレステリック液晶層の態様は、上記態様に限定されるものではない。基板の一方の表面上に、5層以上光反射層を積層した構成であってもよいし、また、基板の双方の表面上に、1組以上ずつ(合計で5層以上)光反射層を積層した構成であってもよい。また、同一の反射中心波長を示す2組以上の光反射層を有する態様であってもよい。
前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を構成する各光反射層の厚さは、それぞれ、1〜10μmであることが好ましく、2〜7μmであることがより好ましい。前記液晶膜全体の厚さは、10〜50μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。
【0172】
(フィルムの特性)
後述する本発明の合わせガラスの製造方法において、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜の後述する前記ガラス板に挟持された本発明の積層体を加熱しながら圧着する工程の前後における熱収縮率は、そのときの加熱温度の範囲において0.1〜5%であることが好ましく、0.1〜3%であることがより好ましく、0.5〜2%であることが特に好ましい。
【0173】
前記フィルムの厚みは、前記光反射層の積層数により異なるが、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましく、20〜40μmであることが特に好ましい。
【0174】
本発明では、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜として脆性があるものを用いることができる。脆性のある液晶膜としては、例えば前記コレステリック液晶層の光反射層を挙げることができる。
【0175】
(支持体)
本発明の製造方法における前記ガラス板に挟持された積層体を製造する工程内では、前記樹脂フィルムが透明可塑性樹脂フィルム等の支持体を含むことが、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜である光反射層を安定して製膜する観点から好ましい。但し、後述する本発明の積層体や本発明の合わせガラス中には前記支持体が残らない構成であっても、残る構成であってもよい。
その中でも、後述する本発明の積層体や本発明の合わせガラスにおいて、本発明のフィルム中に支持体が残らないことが好ましい。すなわち、後述する本発明の積層体や本発明の合わせガラスは、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜が後述する第一の中間膜と接しており、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜が後述する第二の中間膜とも接していることが好ましい。但し、後述する本発明の積層体や本発明の合わせガラスは、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜と、前記第二の中間膜の間に支持体やその他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよく、その場合も十分に本発明の効果を得ることができる。
【0176】
前記支持体は、自己支持性があり、前記光反射層を支持するものであれば、なんら限定はない。特に複数の光反射膜を積層して光反射層を形成する場合は、支持体として下層の光反射層を含めて支持体として、下層の光反射層の上に順次光反射膜を積層していくことができる。
本発明の製造方法では、前記支持体はロール トゥ ロールで製造する観点から可塑性であることが好ましい。
また、前記支持体は、透明であっても透明でなくてもよい。その中でも、前記支持体は透明可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。但し、本発明の製造方法において支持体を剥離する工程を含む場合は、透明であることは必要ない。前記支持体のヘイズは、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下である。所定の光学特性を満足するように、生産工程を管理して製造される、λ/2板等の特殊の位相差板であってもよいし、また、面内レターデーションのバラツキが大きく、具体的には、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)のバラツキで表現すれば、Re(1000)のバラツキが20nm以上、また100nm以上であり、所定の位相差板としては使用不可能なポリマーフィルム等であってもよい。また前記支持体の面内レターデーションについても特に制限はなく、例えば、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)が、800〜13000nmである位相差板等を用いることができる。
【0177】
本発明で用いる前記支持体は、ポリビニルブチラール樹脂フィルムなどの前記第一および第二の中間膜との圧着や、前記樹脂フィルム中に支持体が残る場合には合わせガラス時にポリビリルブチラール樹脂の伸縮に耐えうる剛性を有していることが好ましく、ヤング率はポリビニルブチラール樹脂の100倍〜1000倍程度が好ましい。このような構成とすることにより、前記樹脂フィルムの周辺部も含めて膜ワレやシワを抑制でき、得られる合わせガラスの反射ムラをより効果的に抑制することができる。
【0178】
可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記透明可塑性樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリイミド、トリアセチルセルロース(TAC)、などを主成分とするフィルムが例示される。この中でも、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはトリアセチルセルロースを主成分とするフィルムが好ましい。
【0179】
支持体を形成する材料は、光学等方性支持体とするか、光学異方性支持体とするかに応じて決定する。光学等方性支持体の場合は、一般にガラスまたはセルロースエステルが用いられる。光学異方性支持体の場合は、一般に合成ポリマー(例、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂)が用いられる。ただし、欧州特許0911656A2号明細書に記載されている(1)レターデーション上昇剤の使用、(2)セルロースアセテートの酢化度の低下、あるいは(3)冷却溶解法によるフィルムの製造により、光学異方性の(レターデーションが高い)セルロースエステルフィルムを製造することもできる。ポリマーフィルムからなる支持体は、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。
【0180】
光学異方性支持体を得るためには、ポリマーフィルムに延伸処理を実施することが好ましい。光学的一軸性支持体を製造する場合は、通常の一軸延伸処理または二軸延伸処理を実施すればよい。光学的二軸性支持体を製造する場合は、アンバランス二軸延伸処理を実施することが好ましい。アンバランス二軸延伸では、ポリマーフィルムをある方向に一定倍率(例えば3〜100%、好ましくは5〜30%)延伸し、それと垂直な方向にそれ以上の倍率(例えば6〜200%、好ましくは10〜90%)延伸する。二方向の延伸処理は、同時に実施してもよい。延伸方向(アンバランス二軸延伸では延伸倍率の高い方向)と延伸後のフィルムの面内の遅相軸とは、実質的に同じ方向になることが好ましい。延伸方向と遅相軸との角度は、10°未満であることが好ましく、5°未満であることがさらに好ましく、3°未満であることが最も好ましい。
光学異方性支持体は、所望の位相差をもたせて、λ/2板として使用することもできる。この際、位相差としては、350nm〜700nmが好ましく、400〜650nmがより好ましい。
【0181】
前記支持体の厚さが、30μm〜200μmであることが好ましく、100〜200μmであることがより好ましい。このような厚さとすることにより、前記赤外光反射層を安定的に製造することができ、また、前記ガラス板に挟持された積層体が前記支持体を含む場合にも、前記樹脂フィルムの周辺部も含めて膜ワレやシワを抑制でき、得られる合わせガラスの反射ムラをより効果的に抑制することができる。
【0182】
支持体とその上に設けられる層(接着層、配向膜あるいは光学異方性層)との接着を改善するため、支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。支持体に紫外線吸収剤を添加してもよい。支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。接着層については、特開平7−333433号公報に記載がある。接着層の厚さは、0.1〜2μmであることが好ましく、0.2〜1μmであることがさらに好ましい。
【0183】
(本発明のフィルムの用途)
本発明のフィルムの一態様は、本発明の重合性組成物の、液晶相の配向(例えば、水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向等)を固定したフィルムであって、光学異方性を示すフィルムである。当該フィルムは、反射フィルムや液晶表示装置等の光学補償フィルム等として利用される。
本発明のフィルムの一態様は、本発明の重合性組成物のコレステリック液晶相を固定したフィルムであって、所定の波長域の光に対して選択反射特性を示すフィルムである。
赤外線波長域(波長800〜1300nm)に選択反射特性を示す当該フィルムは、例えば建物または車両の窓ガラスに貼付され、もしくは合わせガラスに組み込まれて、遮熱部材として利用される。
本発明のフィルムの別の一態様は、紫外線波長域に選択反射特性を示すフィルムである。紫外線波長域に選択反射特性を示すフィルムは、例えば建物または車両の窓ガラスに貼付され、もしくは合わせガラスに組み込まれて、紫外線カット部材等として利用される。
本発明のフィルムの別の一態様は、可視光波長域に選択反射特性を示すフィルムである。可視光波長域に選択反射特性を示すフィルムは、例えば、カラーフィルタ等として利用される。
また、本発明のフィルムは、光学素子の構成要素である、偏光素子、選択反射膜、反射防止膜、視野角補償膜、ホログラフィー、配向膜等、種々の用途に利用することができる。
【0184】
[選択反射板]
本発明の選択反射板は、本発明のフィルムを含むことを特徴とする。
本発明の選択反射板は、λ/2板を含むことが好ましい。前記λ/2板としては特に制限はなく、必要に応じて適宜変更して好ましいものを用いることができる。
【0185】
1/2波長板は、例えば、透明樹脂からなるフィルムを延伸して得られるものである。
透明樹脂としては、0.1mm厚で全光線透過率が80%以上のものであれば特に制限されないが、トリアセチルセルロースの如きアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂、脂環式構造を有する重合体樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、等が挙げられる。なかでも、ポリカーボネート系樹脂又は脂環式構造を有する重合体樹脂が好ましい。脂環式構造含有重合体樹脂は、具体的には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。
【0186】
前記樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤や熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を添加することができる。
【0187】
また、1/2波長板として、液晶化合物を透明樹脂上に塗布・配向・固定化したものや、水晶やサファイアなどの無機結晶、微細な凹凸を樹脂やガラス基板上に設けた構造性複屈折板を用いることもできる。
【0188】
選択反射板を合わせはさむガラスのかわりに、ガラス代替樹脂形成体、もしくはガラス代替樹脂形成体とガラスの組み合わせたものを用いることができる。ガラス代替樹脂の例としては、ポリカーボネート樹脂やアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂などがあげられる。こうしたガラス代替樹脂上にハードコート層をコーティングしたものを用いることもできる。ハードコート層の例としては、アクリル系ハードコート材、シリコーン系ハードコート材、メラミン系ハードコート材や、これらのハードコート材の中にシリカやチタニア、アルミナ、ジルコニアなどの無機微粒子を分散させたものがあげられる。
【0189】
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の選択反射板を用いて形成されてなり、少なくとも前記選択反射板の前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を有することを特徴とする。本発明の積層体は、中間膜を少なくとも一方の最外層に含むことが、合わせガラス化の容易化の観点から好ましい。
【0190】
(中間膜)
本発明の積層体は、中間膜を含み、さらに第二の中間膜を含むことが好ましい。通常の合わせガラスでは液晶膜の両側の前記第一および第二の中間膜の膜厚は同じであるが、本発明はそのような態様の合わせガラス用の積層体の製造方法に限定されず、前記第一および第二の中間膜の厚さが異なる態様に積層体を製造することもできる。また、前記第一および第二の中間膜の組成についても、同じであっても異なっていてもよい。
【0191】
前記第一および第二の中間膜の後述する前記積層体を加熱しながら圧着する工程の前後における熱収縮率は、そのときの加熱温度の範囲において1〜20%であることが好ましく、2〜15%であることがより好ましく、2〜10%であることが特に好ましい。
前記第一および第二の中間膜の厚みは、100〜1000μmであることが好ましく、200〜800μmであることがより好ましく、300〜500μmであることが特に好ましい。また、前記第一および第二の中間膜は複数のシートを重ねることによって厚膜化してもよい。
また、前記第一および第二の前記中間膜の脆性の基準としては、引張り試験による破断伸びが100〜800%であることが好ましく、100〜600%であることがより好ましく、200〜500%であることが特に好ましい。
【0192】
樹脂:
前記第一および第二の中間膜は、樹脂中間膜であることが好ましい。前記樹脂中間膜は、主成分がポリビニルアセタール系の樹脂フィルムであることが好ましい。前記ポリビニルアセタール系の樹脂フィルムとしては特に制限はなく、例えば特開平6−000926号公報や特開2007−008797号公報などに記載のものを好ましく用いることができる。前記ポリビニルアセタール系の樹脂フィルムの中でも、本発明ではポリビニルブチラール樹脂フィルムを用いることが好ましい。前記ポリビニルブチラール樹脂フィルムは、それぞれ、ポリビニルブチラールを主成分とする樹脂フィルムであれば、特に定めるものは無く、広く公知の合わせガラス用中間膜としてのポリビニルブチラール樹脂フィルムを採用できる。その中でも、本発明では、前記中間膜は、ポリビニルブチラールまたはエチレンビニルアセテートが好ましい。なお、主成分である樹脂とは、前記樹脂中間膜の50質量%以上の割合を占める樹脂のことをいう。
【0193】
添加剤:
前記第一および第二の中間膜は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、添加剤を含んでいてもよい。
前記添加剤としては、例えば、熱線遮蔽用の微粒子および遮音用の微粒子、可塑剤を挙げることができる。前記熱線遮蔽用の微粒子および遮音用の微粒子としては、例えば、無機微粒子、金属微粒子を挙げることができる。このような微粒子を前記第一または第二の中間膜などの弾性体内に分散混在せしめることにより、遮熱の効果を得られる。同時に、このような構成により、音波の伝搬を阻害し、振動減衰効果を得ることが好ましい。また前記微粒子の構造は球状が望ましいが、真球でなくともよい。またその形状を変えることはしてもよい。また、前記微粒子は中間膜(好ましくはPVB)内で分散していることが望ましく、適当なカプセルに入れることや分散剤とともに添加することもよい。この場合の添加量は、特に制限はないが、樹脂成分の0.1〜10質量%であることも好ましい。
【0194】
前記無機微粒子としては、炭酸カルシウム、アルミナ、カオリンクレー、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、タルク、長石粉、マイカ、バライト、炭酸バリウム、酸化チタン、シリカ、ガラスビ−ズ等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、混合して用いられてもよい。
【0195】
また、熱線遮蔽微粒子としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛、6ホウ化ランタン、6ホウ化セリウム、金微粉、銀微粉、白金微粉、アルミニウム微粉、鉄、ニッケル、銅、ステンレス、スズ、コバルト及びこれらを含む合金粉末等が挙げられる。遮光剤としては、カーボンブラック、赤色酸化鉄等が挙げられる。顔料としては、黒色顔料カーボンブラックと赤色顔料(C.I.Pigment red)と青色顔料(C.I.Pigment blue)と黄色顔料(C.I.Pigment yellow)の4種を混合してなる暗赤褐色の混合顔料等が挙げられる。
【0196】
上記可塑剤としては、特に限定されず、この種の中間膜用の可塑剤として一般的に用いられている公知の可塑剤を用いることができる。例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7)、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(4G7)、オリゴエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(NGO)などが好適に用いられる。これらの可塑剤は、一般に、前記樹脂中間膜の主成分である樹脂(好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂)100質量部に対して25〜70質量部の範囲で用いられる。
【0197】
<中間膜と本発明のフィルムの液晶膜を熱接着する工程>
本発明の積層体の製造方法は、前記支持体/液晶膜/中間膜の順に積層後に前記中間膜と前記液晶膜付き支持体の液晶膜を熱接着する工程を含むことが好ましい。本発明の積層体の製造方法は、前記熱接着を後述する支持体の剥離工程の前に行うことにより、支持体を剥離する際に位置ずれの発生を抑止することができる。
前記熱接着の方法としては特に制限はなく、加熱体を押し当てる熱圧着や、レーザー照射による加熱での熱融着などを採用することができる。その中でも本発明の積層体の製造方法は、前記中間膜に対して前記液晶膜を熱接着する工程が、熱圧着であることが好ましい。
前記熱圧着の方法としては特に制限はないが、例えば80〜140℃の加熱体を押し当てる方法が好ましい。前記加熱体としては、平面でも曲面でもよく、ローラーでもよい。前記熱圧着には、複数の加熱ローラーや、加熱可能な平面の挟圧面などを用いることができ、これらの組み合わせて用いてもよい。また、熱圧着は前記支持体/液晶膜/中間膜の積層体の一方の面に対して行っても、片面のみに行なってもよく、その場合は、熱圧着に用いるローラーの一方が加熱していないローラーや挟圧面であってもよい。これらの中でも本発明の積層体の製造方法は、前記熱圧着工程で加熱ローラーを用いることが好ましく、加熱ローラーと非加熱ローラーを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0198】
本発明の積層体の製造方法は、前記熱接着工程で、少なくとも前記支持体の剥離工程の開始位置を熱接着する工程を含むことが好ましい。ここで、前記支持体の剥離工程の開始位置は、具体的には、前記支持体の端部から10mm以内であることが好ましく、5mm以内であることがより好ましく、1.5mm以内であることが特に好ましい。
支持体/液晶膜/中間膜の順に積層した積層体を任意の位置においてスポットでラミネートすることによって、支持体剥離時の位置ずれを抑制することが可能であるが、本発明では剥離のきっかけとなる支持体の端部の特定の位置をラミネートすることにより、支持体剥離をより容易に行うことができる。
【0199】
(中間膜と液晶膜付き支持体の液晶膜を熱接着する方法の詳細)
これらの中間膜と液晶膜付き支持体の液晶膜は、熱圧着ローラーによって熱圧着されることが好ましい。
また、このときの温度は、通常は、室温である。熱圧着ローラーの温度は、例えば、液晶膜1と第一の中間膜3が隣接する場合、60〜120℃とすることができる。
【0200】
通常、中間膜は貼着の際に空気が逃げ易いように表面がエンボス加工などにより粗面状態にされている。貼り合わせた面は被着面に倣って平滑になり、光学性能が良くなるが、もう一方の面はガラス板等に貼り合わせる為に粗面状態を保持する必要がある。従って、前記熱圧着ローラーのうち中間膜に接する側のローラーの表面は粗面状態にして、中間膜の粗面状態を保つようにすることが好ましい。すなわち、前記中間膜の少なくとも一方の表面がエンボス加工されてあり、前記中間膜のエンボス加工された表面が本発明のフィルムの液晶膜と接するように積層することが好ましい。また、熱圧着後に中間膜の液晶膜と接していない面を積極的にエンボス加工してもよい。
【0201】
<支持体を液晶膜から剥離する工程>
本発明の積層体の製造方法は、熱接着後に前記支持体を前記液晶膜から剥離する工程を含むことも好ましい。
本発明の積層体の製造方法は、前記支持体の剥離を、前記支持体の少なくとも1つの角部から開始することが好ましい。また、前記支持体の剥離を、剥離ローラーを用いて連続的に行う場合は、前記支持体の1辺全体から剥離を開始することがより好ましい。
【0202】
<第2の中間膜を積層する工程>
本発明の積層体の製造方法は、前記支持体の剥離工程の後に、前記液晶膜の前記支持体が剥離された側の面に第2の中間膜を積層する工程を含むことが好ましい。すなわち、本発明の積層体は、さらに、第二の中間膜を有することが好ましい。
液晶膜1と第二の中間膜3’は隣接していてもよいし、それらの間に他の構成層を含んでいてもよいが、液晶膜1と第二の中間膜3’は隣接していることが好ましい。この場合の他の構成層としては、粘着材層が挙げられる。粘着材層は、通常、第二の中間膜側に設けられている。
これらの積層体は、熱圧着ローラーによって熱圧着されることが好ましい。
また、このときの温度は、通常は、室温である。熱圧着ローラーの温度は、例えば、液晶膜1と第二の中間膜が隣接する場合、60〜120℃とすることができる。
【0203】
前記液晶膜と前記中間膜を含む積層体は、加工に際し、刃物を用いて切断したり、レーザー、ウオータージェットや熱によって切断したりしてもよい。
【0204】
[合わせガラス]
本発明の合わせガラスの用途は、特に制限はないが、住宅や自動車等の窓ガラス用であることが好ましい。
本発明の合わせガラスは、以上により得られた本発明の積層体と、少なくとも2枚のガラス板を有し、前記2枚のガラス中に前記積層体が挿入されたことを特徴とする。前記ガラス板は第一のガラスおよび第二のガラスの2枚であることが好ましい。このときの好ましい態様について、以下説明する。
本発明の合わせガラスは任意のサイズに好ましく裁断することができ、その場合も本発明の合わせガラスは周辺部も含めて液晶膜のワレが抑制されているため、任意のサイズに裁断しても合わせガラス全面にシワやワレが広がりにくい。
【0205】
前記液晶膜と前記中間膜を含む本発明の積層体を、前記第一のガラスまたは第二のガラスと積層する方法は、特に制限はなく、公知の方法により2枚のガラス板の間に挿入して積層することができる。
【0206】
前記ガラス板に挟持された積層体は、ガラス板/中間膜/コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜/中間膜/ガラス板の順に積層された構成となる。
【0207】
図1〜図3は、本発明の製造方法で得られる、ガラス板に挟持された積層体7を含む合わせガラスの構造の一例を示す概略図である。図1〜図3中、1はコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を、3は中間膜を、3’は第二の中間膜を、4は第一のガラス板を、4’は第二のガラス板をそれぞれ示す。図2は、前記ガラス板に挟持された積層体7は、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜の端部が、前記ガラス板4および4’の端部および前記第一の中間膜3および第二の中間膜3’の端部よりも内側にある態様である。前記ガラス板4および4’の端部と、前記第一の中間膜3および第二の中間膜3’の端部は、同じ位置であっても、いずれかが突出していてもよい。
前記ガラス板に挟持された積層体7は、図1に示すように前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜の端部が、前記ガラス板の端部および前記中間膜の端部と同じ位置にあってもよい。例えば、前記ガラス板に挟持された積層体7が4辺を有する形状の場合、図2に示すように前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜1の端部は4辺全てにおいて、前記ガラス板4および4’の端部および前記第一の中間膜3および第二の中間膜3’の端部と同じ位置の構成である。
一方、図3に示すように、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜1の端部は4辺全てにおいて、前記ガラス板4および4’の端部および前記第一の中間膜3および第二の中間膜3’の端部よりも突出した構成であってもよい。
【0208】
ガラス板に挟持された積層体は、コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜1と第一の中間膜3、およびコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜1と第二の中間膜3’は、それぞれ隣接していてもよいし、他の構成層を有していてもよい。前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜1が後述する光反射層を含む場合、本発明の積層体の製造方法では前記支持体を剥離する工程を採用することにより、積層体のさらなる薄膜化を達成することができる。このような透明可塑性支持体を含まない積層体は、膜の脆性に劣るため、製造がしにくいことが想定されていたが、本発明の製造方法によって、この問題は解決することができる。
【0209】
ガラス板に挟持された積層体は、ガラス板/中間膜/コレステリック液晶を固定してなる液晶膜/λ/2膜/コレステリック液晶を固定してなる液晶膜/中間膜/ガラス板の順に積層された構成でも良い。この際、λ/2膜の両側のコレステリック液晶を固定してなる液晶膜の螺旋方向は、反射中心波長が同じものは同一方向であることが望ましい。
【0210】
(ガラス板)
本発明の合わせガラスの製造方法では、前記ガラス板が曲率を有さないガラスであっても、曲面ガラスであることが好ましい。前記ガラス板が曲率を有さないガラスである場合は、特に合わせガラスのサイズが大きいときに合わせガラスの周辺部にシワやワレが発生しやすく、本発明の合わせガラスの製造方法を好ましく適用することができる。
一方、前記ガラス板が曲面ガラスである場合、曲率を有さないガラスに比べて前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜にシワやワレがより発生し易くなる。本発明の合わせガラスの製造方法は、特に前記ガラス板が曲面である場合(湾曲したガラス板)においてもシワやワレの発生を抑制することができる。
また、前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を挟持する2枚のガラス板は厚みが異なっていてもよく、着色されていてもよい。特に、遮熱性を目的として自動車のフロントガラス等に用いる場合は、合わせガラス状態の可視光線透過率がJIS−R3211で定められている70%を下回らない程度にガラス中に金属などの着色成分を混入させてもよく、一般的にはグリーンガラスを用いることで効果的に遮熱性を向上させることができる。グリーンガラスの色濃度については、添加する金属成分の量を調整したり、厚みを調整したりすることで目的に合った濃度に調節することが好ましい。
【0211】
湾曲したガラス板は、フロート法によるソーダライムガラスを軟化点以上の温度に加熱し、曲げ加工されて得られ、3次元的に湾曲したガラス板の使用が簡便である。
3次元的に湾曲したガラス板の形状としては、球面、楕円球面、あるいは、自動車の前面ガラスなどのような曲率半径が場所によって異なるガラス板である。
湾曲したガラス板の曲率半径は、特に制限はないが、0.9m〜3mであることが望ましい。曲率半径が0.9mより小さいと、一般に合わせ加工において、前記樹脂フィルムのシワが生じやすいが、本発明の製造方法では曲率半径は0.9m未満であっても前記樹脂フィルムのシワの発生を抑制することができる。また、曲率半径が大きくなると、平面に近い形状となり、一般に前記樹脂フィルムのシワが生じにくくなるが、前記樹脂フィルムの周辺部にワレは生じることがある。そのため、本発明の製造方法では、湾曲したガラスの曲率半径が3m以上であっても本発明の効果が現れるが、ワレの発生に加えてシワの発生も抑制する観点からは、湾曲したガラスの曲率半径が3mである場合に特に好ましく用いることができる。
また、本発明の合わせガラスの製造方法で得られる合わせガラスは、前記ガラス板を少なくとも2枚含むが、各ガラス板の曲率が異なる場合であっても本発明の合わせガラスの製造方法を用いることができる。
【0212】
<前記ガラス板に挟持された積層体を加熱しながら圧着する工程>
本発明の合わせガラスの製造方法は、前記ガラス板に挟持された本発明の積層体を加熱しながら圧着する工程を含むことが好ましい。
前記ガラス板に挟持された本発明の積層体とガラス板との貼りあわせは、例えば、真空バッグなどで減圧下において、温度80〜120℃、時間30〜60分で予備圧着した後、オートクレーブ中、1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度で貼り合せ、2枚のガラスに積層体が挟まれた合わせガラスとすることができる。また、粘着材等を用いて貼り合わせてもよい。
このとき、1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度での加熱圧着の時間は、20〜90分であることが好ましい。
加熱圧着終了後、放冷の仕方については特に制限はなく、適宜圧力を開放しながら放冷して、合わせガラス体を得てもよい。本発明では、加熱圧着終了後、圧力を保持した状態で降温を行うことが、得られる合わせガラス体のシワや割れをさらに改善する観点から好ましい。ここで、圧力を保持した状態で降温するとは、加熱圧着時(好ましくは130℃)の装置内部圧力から、40℃のときの装置内部圧力が加熱圧着時の75%〜100%となるように降温することを意味する。圧力を保持した状態で降温する方法としては、40℃まで降温したときの圧力が上記範囲内であれば特に制限はないが、圧力装置内部圧力が温度減少に伴って自然と低下していくように装置内部から圧力を漏らさずに降温する態様や、装置内部圧力が温度減少に伴って減少しないように外部からさらに加圧しながら降温する態様が好ましい。圧力を保持した状態で降温する場合、120〜150℃で加熱圧着した後、40℃まで1〜5時間かけて放冷することが好ましい。
本発明では、圧力を保持した状態で降温を行った後、次いで圧力を開放する工程を含むことが好ましい。具体的には、圧力を保持した状態で降温を行った後、オートクレーブ内の温度が40℃以下になった後に圧力を開放して降温することが好ましい。
以上より、本発明の合わせガラスは、本発明の積層体を、少なくとも2枚のガラス板で挟持する工程と、その後1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度で加熱圧着する工程と、圧力を保持した状態で降温を行う工程と、圧力を開放する工程を含むことが好ましい。
【0213】
前記ガラス板と本発明の積層体とを熱圧着させる範囲は、前記ガラス板の全面積にわたる範囲でもよいが、前記ガラス板の周縁部のみでもよく、周縁部の熱圧着はシワの発生をより抑制することもできる。
【実施例】
【0214】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0215】
[実施例1、2および比較例1〜8]
<コレステリック液晶性混合物(R1)の調製>
下記化合物A,化合物B、フッ素系水平配向剤、キラル剤、重合開始剤、溶媒メチルエチルケトンを混合し、下記組成の塗布液を調製した。得られた塗布液を、各実施例および比較例のコレステリック液晶性混合物(R1)とした。
・下記表1に記載の化合物A 80質量部
・下記表1に記載の化合物B 20質量部
・下記フッ素系水平配向剤 0.04質量部
・下記のキラル剤(A) 5.0質量部
・重合開始剤IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
・溶媒(メチルエチルケトン) 溶質濃度が25質量%となる量
【0216】
【化44】

【0217】
【化45】

【0218】
【化46】

【0219】
【化47】

【0220】
<フィルムの製造>
(下塗り層用塗布液の調製)
下記に示す組成の下塗り層用塗布液(S1)を調製した。
下塗り層用塗布液(S1)の組成:
アクリルエステル樹脂ジュリマーET−410
(東亞合成(株)製、固形分濃度30%) 50質量部
メタノール 50質量部
【0221】
(配向層用塗布液の調製)
下記に示す組成の配向層用塗布液(H1)を調製した。
配向層用塗布液(H1)の組成:
変性ポリビニルアルコールPVA203(クラレ社製) 10質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
【0222】
(塗布、乾燥およびフィルムの形成)
PETフィルム(下塗り層無し、富士フイルム(株)製、厚み:50μm、大きさ320mm×400mm)の表面上に、下塗り層用塗布液(S1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が0.25μmになるように塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、下塗り層を形成した。
次いで、形成した下塗り層の上に、配向層用塗布液(H1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗布した。その後、100℃で2分間加熱し、乾燥、固化し、配向層を形成した。配向層に対し、ラビング処理(レーヨン布、圧力:0.1kgf、回転数:1000rpm、搬送速度:10m/min、回数:1往復)を施した。
【0223】
次いで、調製した重合性液晶を含む塗布液(R1)を用い、下記の手順にてコレステリック液晶相を固定し、赤外線反射層であるコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を製造した。
(1)塗布液(R1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜の厚みが6μmになるように、前記PETフィルム上に、室温にて塗布した。
(2)室温にて30秒間乾燥させて溶剤を除去した後、125℃の雰囲気で2分間加熱し、その後95℃でコレステリック液晶相とした。次いで、フージョンUVシステムズ(株)製無電極ランプ「Dバルブ」(90mW/cm)にて、出力60%で6〜12秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜(赤外線反射層)を作製した。
(3)室温まで冷却し、コレステリック液晶相の液晶膜がPET上に形成された、各実施例および比較例のフィルムを作製した。
【0224】
(表面処理)
得られた各実施例および比較例のフィルムの液晶膜の表面を、下記の手順にて洗浄した。
2−ブタノンの入った容器に、上記で製膜した積層体を浸漬させ、40℃で10分間、洗浄処理をした。
【0225】
<積層体(積層中間膜)の製造>
前記PET上に製膜した液晶膜を含む各実施例および比較例のフィルムの端面が鉛直方向になるように周囲を切り落とした。一方、別途中間膜として両表面がエンボス加工されているPVBフィルムを端面が鉛直方向になるように周囲を切り落とした。各実施例および比較例のフィルムの液晶膜上に中間膜であるPVBを重ね合わせて積層体を得た。得られた積層体の表面側と裏面側に配置された2つのラミネート用加熱ローラーで全周(4辺)の液晶膜付き支持体の端部から1mm以下の位置を挟圧し、液晶膜と中間膜を熱圧着して貼り合わせた。このとき、ラミネート用加熱ローラーは中間膜の裏面のエンボスをつぶさないように中間膜側のラミネートローラーは25℃とし、逆に中間膜の液晶膜側表面のエンボスを十分につぶして中間膜3と液晶膜1の接着性を高めるように支持体(PET)側のラミネート用加熱ローラーを120℃とした。
その後、第二の中間膜であるPVBを積層した。
【0226】
<合わせガラス化>
でき上がった積層体を、ガラス/中間膜/コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜/第二の中間膜/ガラスとなるように、重ね合わせてガラス板に挟持された積層体を製造した。ここで、前記ガラス板の端部と前記中間膜の端部は同じ位置であった。
また、前記ガラス板は厚さが2mmのものを用いた。湾曲したガラス板の曲率半径は、0.9m〜3.0mの間にあった。
得られたガラス板に挟持された積層体を真空下、95℃で30分予備圧着をおこなった。予備圧着後、ガラス板に挟持された積層体をオートクレーブ内で1.3MPa、120℃の条件で加熱しながら圧着処理し、合わせガラスを作製した。このようにして、塗布液(R1)のみを塗布して製造した1層のコレステリック液晶相の赤外線反射層(液晶膜1)の上下を2枚の中間膜3および3’で挟み込んだ積層体を挿入した各実施例および比較例の合わせガラスを得た。
【0227】
[実施例3]
実施例1、2および比較例1〜8のコレステリック液晶性混合物(R1)の調製に対して、下記表1に記載の化合物A 65質量部、下記表1に記載の化合物B 35質量部と変えた以外は実施例1、2および比較例1〜8と同様にして、実施例3のフィルムおよび合わせガラスを作製した。
【0228】
[実施例4]
実施例1、2および比較例1〜8のコレステリック液晶性混合物(R1)の調製に対して、下記表1に記載の化合物A 90質量部、下記表1に記載の化合物B 10質量部と変えた以外は実施例1、2および比較例1〜8と同様にして、実施例4のフィルムおよび合わせガラスを作製した。
【0229】
[実施例5]
実施例1、2および比較例1〜8のコレステリック液晶性混合物(R1)の調製に対して、下記表1に記載の化合物A 70質量部、下記表1に記載の化合物B 30質量部と変えた以外は実施例1、2および比較例1〜8と同様にして、実施例5のフィルムおよび合わせガラスを作製した。
【0230】
[実施例6および7]
実施例1、2および比較例1〜8のコレステリック液晶性混合物(R1)の調製に対して、フッ素系水平配向剤(特開2005−99248号公報記載の化合物)を、0.05質量部の下記水平配向剤1および2にそれぞれ変えた以外は実施例1、2および比較例1〜8と同様にして、実施例6および7のフィルムおよび合わせガラスを作製した。
【化48】

【化49】

【0231】
[実施例8]
実施例7のコレステリック液晶性混合物(R1)の調製に対して、下記表1に記載のフッ素系水平配向剤(特開2005−99248号公報記載の化合物)を、0.005質量部の水平配向剤2と0.1質量部の水平配向剤3の組み合わせに変え、75℃の雰囲気で2分間加熱してコレステリック液晶相とした以外は実施例7と同様にして、実施例8のフィルムおよび合わせガラスを作製した。
【化50】

【0232】
<評価>
製造した各実施例および比較例のフィルムの液晶性化合物を含む固形物の析出、ヘイズ、コレステリック反射幅および耐光性、並びに製造した各実施例および比較例の合わせガラスの耐光性を評価した。得られた評価結果を下記表1に記載した。
【0233】
(フィルムの液晶性化合物を含む固形物の析出)
塗布液(R1)のみを塗布して製造した各実施例および比較例のフィルムの液晶性化合物を含む固形物の析出は、以下の基準にしたがって評価した。
塗布機で連続して塗布し、各実施例および比較例に記載の塗布条件で
○ 90分連続して塗布したところ、塗布機に液晶化合物を含む固形物の結晶が析出したことに起因するすじが目視にて確認できなかった。
△ 45分連続して塗布したところ、塗布機に液晶化合物を含む固形物の結晶が析出したことに起因するすじが目視にて確認できなかった。90分連続して塗布したところ、塗布機に固形物が析出したことに起因するすじが目視にて確認できた。
× 45分連続して塗布したところ、塗布機に液晶化合物を含む固形物の結晶が析出したことに起因するすじが目視にて確認できた。
【0234】
(フィルムのヘイズ)
塗布液(R1)のみを塗布して製造した各実施例および比較例のフィルムのヘイズは、日本電飾社製ヘイズメータNDH2000を用いて測定した。測定した結果を以下の基準にしたがって評価した。
○ 0.4%未満
× 0.4%以上
【0235】
(フィルムの反射幅)
塗布液(R1)のみを塗布して製造した各実施例および比較例のフィルムの反射幅を以下の方法で測定した。
分光光度計で、フィルムの透過スペクトルを測定し、コレステリック反射ピークの透過率70%となる両端の波長間隔を、反射幅とした。
測定した反射幅を、透過率70%となる両端の波長の平均で割り、1000nmをかけることにより、1000nm当たりの反射幅に換算した。
【0236】
(フィルムの耐光性)
塗布液(R1)のみを塗布して製造した各実施例および比較例のフィルムの波長420nmの光の透過率を測定し、試験前の透過率とした。
UV光試験機(スガ試験機社製、ガラス用紫外線照射装置 H75)を用いて、45℃、100時間でUV光を照射した。
UV試験後の各実施例および比較例のフィルムの波長420nmの光の透過率を測定し、UV光試験機15分後の透過率とした。
【0237】
(合わせガラスの耐光性)
上記にて製造した合わせガラスのUV試験前後の透過率を、UV試験機によってUV照射する時間を100時間に変更した以外はフィルムの耐光性評価と同様にして、測定した。その結果を下記表1に記載した。
【0238】
【表1】

【0239】
上記表1に示すように、実施例1および2より、本発明のコレステリック液晶性混合物を用いた本発明のフィルムは、液晶化合物の析出が抑制され、ヘイズが改善され、反射幅が広いことがわかった。
一方、液晶化合物として1種類の化合物1のみを用い、本発明の一般式(Ib)を満たす化合物を添加せず、フッ素系配向制御剤も添加していない比較例1のコレステリック液晶性混合物は、フィルム化したときに液晶化合物の析出が見られ、ヘイズも悪いことが分かった。比較例2および3より、フッ素系配向制御剤を添加していないコレステリック液晶性混合物は、フィルム化したときにヘイズが悪いことが分かった。一方、第2の液晶化合物として本発明の一般式(Ib)を満たさない化合物4および5を用い、フッ素系配向制御剤も添加していない比較例4および5のコレステリック液晶性混合物は、フィルム化したときにヘイズが悪いことが分かった。比較例6より、液晶化合物として1種類の化合物1のみを用いたコレステリック液晶性混合物は、フィルム化したときに液晶化合物の析出が見られ、反射幅も小さいことが分かった。比較例7および8より、本発明の一般式(Ib)を満たさない化合物4および5を用いたコレステリック液晶性混合物は、フィルム化したときに反射幅が小さいことが分かった。
なお、特に比較例8は前記一般式(Ib)においてPとして硫黄原子を含む化合物5を使用するものであり、この場合、耐光性も悪いことがわかった。
【0240】
[実施例11]
<4層積層されたコレステリック液晶相の液晶膜を用いた合わせガラスの製造>
(塗布液の調製)
実施例1〜8において、製造した重合性液晶を含む塗布液(R1)のキラル剤(A)をLC−756(BASF社製) 3.0質量部に変更しただけで他は同様にして塗布液(L1)を調製した。
また、重合性液晶を含む塗布液(R1)のキラル剤(A)の処方量を4.0質量部に変更しただけで他は同様にして塗布液(R2)を調製した。
また、重合性液晶を含む塗布液(L1)のキラル剤LC−756の処方量を2.4質量部に変更しただけで他は同様にして塗布液(L2)を調製した。
【0241】
(4層積層サンプルの作成)
実施例1〜7のフィルムを室温まで冷却した後、PETフィルム上に形成された液晶膜の上に上記実施例1〜7に記載の液晶膜を形成する工程(1)および(2)を繰り返して、4層積層されたコレステリック液晶相の液晶膜がPET上に形成された合わせガラスの製造用の4層積層サンプルを製造した。
なお、塗布液は、(R2)、(L1)、(L2)の順番に塗布を行なった。
その後、得られた4層積層サンプルの液晶膜の表面を、実施例1〜8と同様の手順にて洗浄した。
【0242】
<積層体(積層中間膜)の製造>
前記PET上に製膜した液晶膜を含む4層積層サンプルの端面が鉛直方向になるように周囲を切り落とした。一方、別途中間膜として両表面がエンボス加工されているPVBフィルムを端面が鉛直方向になるように周囲を切り落とした。4層積層サンプルの液晶膜上に中間膜であるPVBを重ね合わせ、その他は実施例1〜8と同様にして液晶膜と第一の中間膜を熱圧着し、その後実施例1と同様にして第二の中間膜であるPVBを積層した。
【0243】
<合わせガラス化>
でき上がった積層体を、用いた以外は実施例1〜8と同様にして、4層積層されたコレステリック液晶相の赤外線反射層(液晶膜1)の上下を2枚の中間膜3および3’で挟み込んだ積層体を挿入した実施例11の合わせガラスをそれぞれ得た。
【0244】
<評価>
実施例11において作成した各合わせガラスの性能を評価したところ、顕著な欠陥やスジのない良好な遮熱ガラスとして働くことを確認した。
【0245】
[実施例12]
実施例1および2のフィルムの製造において、塗布液(R1)と(R2)のみを塗布し、合わせガラス製造時に、ガラス/中間膜/コレステリック液晶を固定してなる液晶膜/ λ/2板(日本ゼオン社製、ゼオノアフィルムZF14−100)/第2のコレステリック液晶を固定してなる液晶膜/第2の中間膜/ガラスとなるように重ね合わせてガラス板に挟持した積層体とした、ところのみを変えた試料を作製した。
作成した合わせガラスの性能を評価したところ、顕著な欠陥やスジのない良好な遮熱ガラスとして働くことを確認した。
【0246】
[実施例14]
実施例7のコレステリック液晶性混合物(R1)の調製に対して、キラル剤 8.0質量部に変えた以外は実施例7と同様にして、実施例14のフィルムおよび合わせガラスを作製した。反射スペクトルを測定した結果、反射中心波長は546nm(目視で緑色)であり、コレステリック液晶性混合物の析出やフィルムおよび合わせガラスのヘイズも良好であった。
【0247】
[実施例15]
実施例7のコレステリック液晶性混合物(R1)の調製に対して、キラル剤 11.4質量部に変えた以外は実施例7と同様にして、実施例15のフィルムおよび合わせガラスを作製した。反射スペクトルを測定した結果、反射中心波長は386nmであり、コレステリック液晶性混合物の析出やフィルムおよび合わせガラスのヘイズも良好であった。
【0248】
[実施例16]
<6層積層フィルムおよび合わせガラスの製造>
実施例8において、コレステリック液晶性混合物(R1)のキラル剤(A)をLC−756(BASF社製) 3.0質量部、2.5質量部、2.3質量部に変更しただけで他は同様のコレステリック液晶性混合物(L1)、コレステリック液晶性混合物(L2)、コレステリック液晶性混合物(L3)を調製した。また、コレステリック液晶性混合物(R1)のキラル剤(A)の処方量を4.2質量部、3.8質量部に変更しただけで他は同様のコレステリック液晶性混合物(R2)、コレステリック液晶性混合物(R3)を調製した。
次に、実施例8と同様の方法でPETフィルム上に前記コレステリック液晶性混合物(L1)を用いた選択反射層を形成し、フィルムを室温まで冷却した後、実施例8と同様の方法で前記選択反射層上に前記コレステリック液晶性混合物(L2)を用いた選択反射層を積層形成した。このようにして、コレステリック液晶性混合物(L3)、コレステリック液晶性混合物(R1)、コレステリック液晶性混合物(R2)、コレステリック液晶性混合物(R3)の順番で順次積層させて、実施例16の6層積層フィルムを製造した。その後、実施例8と同様の方法で合わせガラスを得た。作成したフィルムおよび合わせガラスは顕著な欠陥やスジがなく良好で、遮熱ガラスとして働くことを確認した。
【0249】
[実施例17]
実施例16のコレステリック液晶性混合物(L1)、コレステリック液晶性混合物(L2)、コレステリック液晶性混合物(L3)のLC−756(BASF社製)の処方量を6.0質量部、4.8質量部、4.2質量部に、コレステリック液晶性混合物(R1)、コレステリック液晶性混合物(R2)、コレステリック液晶性混合物(R3)のキラル剤(A)の処方量を 10.0質量部、8.0質量部、7.0質量部に変更しただけで他は同様の方法で、実施例17の6層積層フィルムを製造した。その後、実施例8と同様の方法で合わせガラスを得た。作成したフィルムおよび合わせガラスは顕著な欠陥やスジがなく良好で、反射色が銀色であることを確認した。
【0250】
<2層積層フィルムおよび合わせガラスの製造>
[実施例18]
実施例15のコレステリック液晶性混合物(R1)の代わりに、実施例16のコレステリック液晶性混合物(L1)のLC−756(BASF社製)の処方量を6.9質量部に変更したものを用いて選択反射層を形成し、フィルムを室温まで冷却した後、実施例8と同様の方法で前記選択反射層上に実施例15のコレステリック液晶性混合物(R1)を用いた選択反射層を積層形成させて、実施例18の2層積層フィルムを製造した。
【0251】
[実施例19]
実施例18のコレステリック液晶性混合物(L1)およびコレステリック液晶性混合物(R1)を実施例16のコレステリック液晶性混合物(L1)およびコレステリック液晶性混合物(R1)に変更した以外は実施例18と同様の方法で実施例19の2層積層フィルムを製造した。その後、実施例8と同様の方法で合わせガラスを得た。作成したフィルムは顕著な欠陥やスジがなく良好で、反射スペクトルを測定した結果、反射中心波長は439nmであり、反射色は青色であった。
【0252】
[実施例20]
実施例18のコレステリック液晶性混合物(L1)およびコレステリック液晶性混合物(R1)を実施例16のコレステリック液晶性混合物(L2)およびコレステリック液晶性混合物(R2)に変更した以外は実施例18と同様の方法で実施例20の2層積層フィルムを製造した。その後、実施例8と同様の方法で合わせガラスを得た。作成したフィルムは顕著な欠陥やスジがなく良好で、反射中心波長は548nmであり、反射色は緑色であった。
【0253】
[実施例21]
実施例18のコレステリック液晶性混合物(L1)およびコレステリック液晶性混合物(R1)を実施例16のコレステリック液晶性混合物(L3)およびコレステリック液晶性混合物(R3)に変更した以外は実施例18と同様の方法で実施例21の2層積層フィルムを製造した。その後、実施例8と同様の方法で合わせガラスを得た。作成したフィルムは顕著な欠陥やスジがなく良好で、反射中心波長は628nmであり、反射色は赤色であった。
【0254】
<3層積層フィルムおよび合わせガラスの製造>
[実施例22]
実施例16のコレステリック液晶性混合物(L1)、コレステリック液晶性混合物(L2)、コレステリック液晶性混合物(L3)を用いて、実施例8と同様の方法でPETフィルム上に前記コレステリック液晶性混合物(L1)を用いた選択反射層を形成した。次に、フィルムを室温まで冷却した後、実施例8と同様の方法で前記選択反射層上に前記コレステリック液晶性混合物(L2)を用いた選択反射層を積層形成した。さらに、フィルムを室温まで冷却した後、前記コレステリック液晶性混合物(L3)を用いた選択反射層を積層形成し、実施例22の2層積層フィルムを製造した。その後、実施例8と同様の方法で合わせガラスを得た。作成したフィルムおよび合わせガラスは顕著な欠陥やスジがなく良好で、反射色が銀色であることを確認した。
【0255】
[実施例23]
実施例16のコレステリック液晶性混合物(R1)、コレステリック液晶性混合物(R2)、コレステリック液晶性混合物(R3)を用いて、実施例8と同様の方法でPETフィルム上に前記コレステリック液晶性混合物(R1)を用いた選択反射層を形成した。次に、フィルムを室温まで冷却した後、実施例8と同様の方法で前記選択反射層上に前記コレステリック液晶性混合物(R2)を用いた選択反射層を積層形成した。さらに、フィルムを室温まで冷却した後、前記コレステリック液晶性混合物(R3)を用いた選択反射層を積層形成し、実施例23の2層積層フィルムを製造した。その後、実施例8と同様の方法で合わせガラスを得た。作成したフィルムおよび合わせガラスは顕著な欠陥やスジがなく良好で、反射色が銀色であることを確認した。
【0256】
[実施例24]
<保護層用塗布液(OC1)の調液>
下記化合物、下記組成の保護層用塗布液(OC1)を調製した。
・IRGACURE819(BASF製、光重合開始剤) 1.6質量部
・KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製、6官能重合性モノマー、
ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート混合物) 40.5質量部
・MH−101−5(藤倉化成(株)製、ポリマー、
ポリメチルメタクリレート樹脂) 77.7質量部
・TINUVIN326(BASF製、紫外線吸収剤) 30.0質量部
・メガファックF−780F(DIC(株)製、界面活性剤) 0.6質量部
・メチルエチルケトン 849.7質量部
【0257】
<保護層の形成>
保護層用塗布液(OC1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜の厚みが6μmになるように、実施例18の2層積層フィルム上に、室温にて塗布した。室温にて30秒間乾燥させて溶剤を除去した後、125℃の雰囲気で2分間加熱し、次いで、フージョンUVシステムズ(株)製無電極ランプ「Dバルブ」(90mW/cm)にて、出力60%で60秒間UV照射し、実施例24の保護層付2層積層選択反射フィルムを形成した。その後、実施例8と同様の方法で合わせガラスを得た。反射スペクトルを測定した結果、反射中心波長は386nmであり、波長386nmの透過率は1%未満であった。
【符号の説明】
【0258】
1 コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜(支持体を含んでいてもよい)
3 中間膜
3’ 第二の中間膜
4、4’ ガラス板
6 合わせガラス
15a コレステリック液晶相を固定してなる光反射層
15b コレステリック液晶相を固定してなる光反射層
16a コレステリック液晶相を固定してなる光反射層
16b コレステリック液晶相を固定してなる光反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(Ia)で表される化合物、下記一般式(Ib)で表される化合物、フッ素系水平配向剤および重合開始剤を含有することを特徴とするコレステリック液晶性混合物。
一般式(Ia)
1−Y1−A1−Y3−M1−Y4−A2−Y2−Z2
一般式(Ib)
3−Y5−A3−Y7−M2−P
(一般式(Ia)および(Ib)中、Z1、Z2およびZ3はそれぞれ独立に重合性基を表し、
1、A2およびA3はそれぞれ独立に原子連結鎖長1〜30のスペーサー(但し、該スペーサーはアルキレン基、または、複数のアルキレン基が−O−、−CO−を介して結合した連結基を表す)を表し、
1およびM2はそれぞれ独立に(−T1−Y8n−T2−を表し、
nは自然数を表し、nが2以上の場合は複数の(−T1−Y8)は互いに同一であっても異なっていてもよく、
1およびT2はそれぞれ独立に飽和もしくは不飽和の炭化水素環、または、飽和もしくは不飽和の複素環(但し、該炭化水素環および該複素環は、置換基を有していてもよい)を表し、
1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y7およびY8はそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−または−O−CO−O−を表し、
Pは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(Ia)および(Ib)中、前記T1およびT2がそれぞれ独立に飽和もしくは不飽和の炭化水素環、または、飽和もしくは不飽和の複素環(但し、該炭化水素環および該複素環は、アルキル基またはアルコキシ基を置換基として有していてもよい)であることを特徴とする請求項1に記載のコレステリック液晶性混合物。
【請求項3】
前記一般式(Ia)で表される化合物の含有量に対する、前記一般式(Ib)で表される化合物の含有量が5〜40質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のコレステリック液晶性混合物。
【請求項4】
前記一般式(Ia)で表される化合物が、前記T1およびT2の表す炭化水素環および該複素環のうち少なくとも1つの炭化水素環または該複素環がアルキル基またはアルコキシ基を有す化合物であり、
前記一般式(Ib)で表される化合物が、前記T1およびT2の表す炭化水素環および該複素環がいずれも無置換の炭化水素環または該複素環である化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコレステリック液晶性混合物。
【請求項5】
前記一般式(Ia)で表される化合物が、前記M1の表すnが2〜4であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコレステリック液晶性混合物。
【請求項6】
支持体と、
該支持体上に、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコレステリック液晶性混合物を重合して形成したコレステリック液晶相を固定してなる液晶膜と、を含むことを特徴とするフィルム。
【請求項7】
前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を2層以上含むことを特徴とする請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
赤外線波長域に選択反射特性を示すことを特徴とする請求項6または7に記載のフィルム。
【請求項9】
紫外線または可視光波長域に選択反射特性を示すことを特徴とする請求項6または7に記載のフィルム。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載のフィルムを含むことを特徴とする選択反射板。
【請求項11】
λ/2板を含むことを特徴とする請求項10に記載の選択反射板。
【請求項12】
最外層に易接着層を有することを特徴とする請求項10または11に記載の選択反射板。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の選択反射板を用いて形成されてなり、少なくとも前記選択反射板の前記コレステリック液晶相を固定してなる液晶膜を有することを特徴とする積層体。
【請求項14】
請求項13に記載の積層体と、少なくとも2枚のガラス板を有し、前記2枚のガラス中に前記積層体が挿入されたことを特徴とする合わせガラス。
【請求項15】
請求項14に記載の合わせガラスを有することを特徴とする自動車用フロントガラス。
【請求項16】
請求項14に記載の合わせガラスを有することを特徴とする建材用ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−76052(P2013−76052A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84520(P2012−84520)
【出願日】平成24年4月3日(2012.4.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】