説明

コレステリック液晶表示素子用の光吸収シート

【課題】 反射率が均一で、各部材へ物理的損傷を与えることなくコレステリック液晶表示素子の一構成要素として光吸収層を組み込むことを可能とする光吸収シートを提供する。
【解決手段】 本発明の光吸収シート20は、コレステリック液晶表示素子に用いられ、遮光性の両面粘着層22と、基板21a及び当該基板21aの上面に形成された透明電極層21bからなる電極フィルム21とを備え、前記基板21aの下面が前記両面粘着層22の上面に貼着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリック液晶表示素子用の光吸収シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境改善対策として挙げられる省資源化の取り組みにおいて、紙の使用数量の制限や電子メール等の活用などがある。そのような状況の中で、薄くて軽く、データの記録ができ、紙のような柔軟性を有する電子ペーパーの開発が進められている。
【0003】
電子ペーパーは、一部実用化されており、その用途として電子書籍や棚札ラベル等がある。電子ペーパーの中で、カラー化を実現させるために現在採用されているものとしてコレステリック液晶を用いた表示素子がある。
【0004】
図1は、従来のコレステリック液晶表示素子の構成を模式的に示す断面図である。コレステリック液晶表示素子1は、下層から順に、光吸収層2、電極フィルム3、コレステリック液晶(R)層4、電極フィルム5、電極フィルム6、コレステリック液晶(G)層7、電極フィルム8、電極フィルム9、コレステリック液晶(B)層10、電極フィルム11が積層されている。コレステリック液晶(R)層4を挟むように設けられている電極フィルム3、5は、それぞれ基板3a、5aと透明電極層3b、5bとからなり、透明電極層3b、5bがコレステリック液晶(R)層4に接するように配置されている。コレステリック液晶(G)層7を挟むように設けられている電極フィルム6、8は、それぞれ基板6a、8aと透明電極層6b、8bとからなり、透明電極層6b、8bがコレステリック液晶(G)層7に接するように配置されている。コレステリック液晶(B)層10を挟むように設けられている電極フィルム9、11は、それぞれ基板9a、11aと透明電極層9b、11bとからなり、透明電極層9b、11bがコレステリック液晶(B)層10に接するように配置されている。
【0005】
コレステリック液晶は、特定波長付近の可視光のみを選択的に反射する性質を持っている。太陽光や蛍光灯の光が、コレステリック液晶に入ることで青色や緑色、赤色などの色光を選択的に反射する。太陽光や蛍光灯の光には様々な波長があるため、全ての色光を反射した場合白く見える状態であるが、各コレステリック液晶層4,7,10の上下に設置されている透明電極層に電圧をかけ、液晶分子の配向を変えることで反射するしないを切り替える。コレステリック液晶(R)層4は赤色光を選択的に反射するように制御しうる。コレステリック液晶(G)層7は緑色光を選択的に反射するように制御しうる。コレステリック液晶(B)層10は青色光を選択的に反射するように制御しうる。
【0006】
カラーのコレステリック液晶表示素子は、一般的に図1に示すように選択反射するコレステリック液晶層4,7,10を重ね、最下層に黒色の光吸収層2を備えた構成である。最上層より太陽光や蛍光灯の光が入射する。いずれのコレステリック液晶層4,7,10においても反射されない入射光は、液晶部位を通りこし、光吸収層2へ達するため光吸収層2の黒色が確認できる。黒色の光吸収層2は、記録表示においてコントラストを決定する重要な部位にあたる。光吸収層2において、液晶部位を通りこした入射光の反射率を十分に低減できないとコントラスト不足となり、表示の鮮明さに欠け、多色表示が得られない。
【0007】
従来技術の光吸収層は、例えば以下のように形成されている。
a)蒸着等で形成された透明電極層を有するポリエステルフィルム等からなる可撓性の基材またはガラス等の裏面側に黒色染料や顔料などの塗料をスピンコート法やシルク印刷法などで塗工したもの
b)ポリエステルフィルム等に黒色染料や顔料などの塗料をスピンコート法やシルク印刷法などで塗工したものの反塗工面側に蒸着等で透明電極を形成したもの
c)予め染料をポリエステルフィルム等に練りこんだフィルムシートに蒸着等で透明電極を形成したもの
d)予め染料をポリエステルフィルム等に練りこんだフィルムシートもしくはポリエス テルフィルム等に黒色染料や顔料などの塗料をスピンコート法やシルク印刷法などで塗工した光吸収シートと透明電極層が形成されたポリエステルフィルム等を透明接着剤等で接着したもの
特許文献1には、2枚の基板のそれぞれの片面に透明電極を形成して、基板間にコレステリック液晶を注入した後、下方の基板の裏面に光吸収層を形成することが記載されている。光吸収層の素材としては、染料や顔料を含む塗料や、金属や金属酸化膜などの蒸着膜を用いることができることが記載されている。すなわち、上記a)の方法により形成された光吸収層が記載されている。
【特許文献1】特開2002−62540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記a)の方法では、塗料をコーティングすることにより光吸収層を形成する際に予め設けられている透明電極層にキズつけてしまう可能性がある。また、コーティングでは塗工ムラが発生しやすくその影響により反射率が不均一になる。上記b)の方法に関しても、上記a)とは逆に、透明電極層の形成工程中にコート剥れが発生しやすく、入射光の外部へのモレを発生させる可能性がある。上記c)やd)の方法についても染料を基材に練りこむ工程は、生産上コストがかかり、今後の普及を踏まえた低コスト化に反する。さらに、接着剤で光吸収シートを接着する場合、接着剤塗工後に接着剤の乾燥工程が必要となり、その際に光吸収シート及び透明電極層を形成したシートが熱により縮み、カールやひずみの原因となる。
【0009】
上記いずれかの方法により形成された従来の光吸収層は、十分な反射率の低減効果が得られない場合があり、この場合、コントラスト不足となり表示の鮮明さに欠けるとの課題がある。
【0010】
本発明は、均一な反射率を有する光吸収層を備え、各部材へ物理的損傷を与えることなくコレステリック液晶表示素子の一構成要素としてかかる光吸収層を組み込むことを可能とする光吸収シートを提供することを目的とする。さらには、前記光吸収層における反射率が十分に低減された光吸収シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の光吸収シートは、遮光性の両面粘着層と、基板及び当該基板の上面に形成された透明電極層からなる電極フィルムとを備え、前記基板の下面が前記両面粘着層の上面に貼着されているコレステリック液晶表示素子用の光吸収シートである。上記光吸収シートにおいて、前記透明電極層の上方にて測定したL*値(輝度)が0.01〜1.0であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光吸収シートによると、各部材へ物理的損傷を与えることなくコレステリック液晶表示素子の一構成要素として光吸収層を組み込むことができ、また、光吸収シート全体にわたって均一な反射率を実現できる。さらには、両面粘着層の電極フィルムが貼着されていない面を利用して、他の構成要素を簡便に組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
1.光吸収シート
図2は、本発明の実施の形態の光吸収シートの構成を模式的に示す断面図である。光吸収シート20は、遮光性の両面粘着層22と、両面粘着層22の上面に貼着されている電極フィルム21と、両面粘着層22の下面に貼着されている機能性フィルム層23とからなる。電極フィルム21は、基板21aと基板21aの上面に形成されている透明電極層21bとからなり、基板21aの下面が両面粘着層22の上面に貼着されている。本発明の光吸収シートは、透明電極層21bの上方から測定したL*値(輝度)が0.01〜1.0以下であることが好ましい。L*値(輝度)がこの範囲内の値であることにより、反射率が低いレベルに抑えられ、コレステリック液晶表示素子の構成要素とした場合に、コントラストがはっきりした表示を得ることができるからである。なお、L*値は輝度を表し、数値が少ないほど反射した光が少なく黒く見えるという指標になる。
【0014】
図3は、光吸収シート20を構成するために用いられる粘着シート24の構成を模式的に示す断面図である。粘着シート24は、遮光性の両面粘着層22とこれの両面を保護するように貼着されている2枚の剥離フィルム25a、25bとからなる。光吸収シート20は、粘着シート24の一方の剥離フィルム25aを剥がした上で露出した両面粘着層22の上面に基材21aを貼着させる。その後、もう一方の剥離フィルム25bを剥がし、露出した両面粘着層22の下面に機能性フィルム23を貼着させる。このようにして、光吸収シート20が構成される。なお、機能性フィルム23は必須ではなく、両面粘着層22の下面は、光吸収シートをコレステリック液晶表示素子に組み込んだ際に他の構成要素を貼着させるために用いてもよい。
2.粘着シート
(粘着剤)
両面粘着層を形成するための粘着剤として、アクリル系ポリマーと架橋剤とを含有してなるものが好ましく用いられる。アクリル系ポリマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択されるモノマーユニットを骨格の主成分とするポリマーが好ましく用いられ、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される。特に低温でも粘着力をもつ、ガラス転移点(Tg)の低いn−ブチルアクリレート(Tg=−55℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(Tg=−70℃)が好ましい。
【0015】
アクリル系ポリマーは、上述の骨格の主成分であるモノマーと、架橋剤と反応しうる官能基を有するモノマーとの共重合体であることが好ましい。官能基を有するモノマーとしては、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、不飽和脂肪族カルボン酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましく、例えばアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルである2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、および4−ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルである2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、および4−ヒドロキシブチルメタクリレート、不飽和脂肪族カルボン酸であるアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される。特に2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸のうち1種以上使用することが前記n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートとの重合による凝集効果が高く、好ましい。
【0016】
アクリル系ポリマーが共重合体である場合、共重合体のモノマー単位として、骨格の主成分にあたるモノマーが90〜99.5重量%、架橋剤と反応しうる官能基を有するモノマーが0.5〜10重量%であることが好ましい。同モノマーが計0.5重量%未満では粘着剤の凝集性が低く、10重量%を超えると凝集性が強く粘着層の形成が困難になるからである。アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくは300,000〜2,000,000、特に好ましくは800,000〜1,300,000である。本明細書において、重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)により測定した、ポリスチレン換算の値とする。
【0017】
上記粘着剤を使用することにより、耐熱性、耐湿性に優れ、かつL*調製成分を添加した際の凝集性の著しい上昇による粘着力の低下、および例えば電子ペーパーを構成し、使用上折り曲げたり歪ませた際の反射率の変化を抑制することができる。
【0018】
(架橋剤)
粘着剤溶液に架橋剤を添加することが好ましい。粘着剤溶液に添加する架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート系化合物;ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン等のアミン系化合物;アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル等の多価金属がアセチルアセトンやアセト酢酸エチルに配位した金属キレート化合物;N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサイド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド等のアジリジン系化合物のうち、1種類あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
【0019】
架橋剤により、アクリル系ポリマーを主成分とする粘着剤ポリマーを分子間架橋することで所定の粘着性能を得ることができる。架橋剤溶液への添加量は粘着剤100重量部に対して、固形分換算で0.05〜15重量部が好ましい。0.05重量部未満では粘着層が軟らかく、電子ディスプレイ内部での熱による粘着剤のはみ出しが発生しやすく、また粘着層が軟らかいことによる影響で、例えば電子ペーパーを構成した際に、これを曲げたり歪ませたりすることにより反射率等が変わり、コントラストに大きく影響する。15重量部を超えると粘着力不足により機能性フィルムの積層が困難となる。
【0020】
(L*値調整成分)
粘着剤溶液にL*調整成分として着色剤を添加し、粘着層に遮光性を付与する。着色剤としては、酸化鉄ブラック、カーボンブラック等を用いることができる。着色剤の添加量は、固形分換算で、粘着剤100重量部に対して15〜25重量部が好ましく、さらに好ましくは17〜20重量部である。粘着剤としてアクリル系ポリマーを用い、これに着色剤として酸化鉄ブラック及びカーボンブラック等をペースト状にしたマスターバッチを添加して粘着剤溶液を調整する場合も同じく、アクリル系ポリマー100重量部に対して、着色剤の添加量は固形分換算で15〜25重部が好ましく、17〜20重量部であることがより好ましい。添加量が15重量部未満では、十分な遮光性能が得られず、また30重量部より多く添加すると粘着力やタック力、保持力といった粘着性能が低下するためである。
【0021】
上記L*値調製成分のペースト状マスターバッチ作製において、粘着剤の主成分であるアクリル酸エステル樹脂を使用すると粘着剤との相溶性もよく、より好ましい。
【0022】
(粘着剤添加剤)
さらに、粘着剤溶液には遮光性、反射性、粘着特性等を損なわない限りにおいて、必要に応じて架橋促進剤、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、及び光安定剤等の各種添加剤を適宜添加し、遮光性粘着剤溶液とすることができる。
【0023】
(粘着層)
上記粘着剤溶液を塗工することにより得られる粘着シート24の粘着層22は、粘着層に1gの荷重をかけた際の粘着層の伸びが1mm以下であり、また破断するまで粘着層を伸長させた際の粘着層の伸びが0.8mm〜200mmであることが好ましい。この範囲の値とすることにより、本発明の光吸収シートを用いて電子ペーパー用のコレステリック液晶表示素子を構成した場合に、使用時に湾曲させても、ひずみによる粘着層の偏りによるL*値への影響を抑えることができる。
【0024】
(剥離フィルム)
ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、又はこれらのラミネート体等からなる適当な薄葉体を用いることができる。表面には、粘着層22からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理が施されていているものが好ましい。さらに、剥離剤を塗布してもよい。剥離剤は、剥離する際に泣き別れないよう適宜剥離力を調整したものが好ましい。剥離フィルムは、粘着層を保護するために粘着層の両面に用いられることが好ましい。
【0025】
(塗工方法・条件)
粘着層22の形成方法は特に限定されることはなく、粘着剤溶液を、例えばグラビア印刷法、スプレー法、ディッピング法、ロールコーター法、ダイコーター法等の公知の方法により前述の剥離フィルムに塗工し乾燥して粘着層22を形成することができる。粘着層22の厚みは特に限定されないが、粘着剤としてアクリル系ポリマーを用い、アクリル系ポリマー100重量部に対して、L*値調整成分として酸化鉄ブラックを固形分換算で15〜25重部添加した粘着剤溶液を用いて粘着層22を形成する場合、粘着層22の厚みは20〜30μmとすることが好ましい。20μm未満の場合目的とする遮光性が得られにくく、また粘着力不足によるハガレが発生しやすくなり、30μmを超えると粘着シート加工時に粘着剤のはみ出しが発生しやすくなる。
3.電極フィルム
(基板)
電極フィルム21の基板21aとしては、ガラスや、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、又はポリエーテルスルフォン等の樹脂等からなる誘電体を用いる。なお、基板21aは透明のものが好ましい。透明の基板21aからなる電極フィルムは、コレステリック液晶表示素子の最下層以外にも用いられるため、汎用性が高いものであり、低コスト化に寄与するからである。
【0026】
(透明電極層)
透明電極層21bは、ITO(インジウム錫酸化物)、SnO、又はZnO:Al等の透光性を有する導電性酸化物によって形成する。これらの材料を、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって基板21a上に成膜し透明電極層21bを形成する。
【0027】
なお、電極フィルム21としては、コレステリック液晶表示素子に用いられている公知の電極フィルムを使用することができる。
4.用途
本発明の光吸収シート20は、コレステリック液晶表示素子の構成要素として用いられる。図4は、本実施形態におけるカラーのコレステリック液晶表示素子の構成を模式的に示す断面図である。
【0028】
コレステリック液晶表示素子26は、下層から順に、光吸収シート20、コレステリック液晶(R)層34、電極フィルム35、電極フィルム36、コレステリック液晶(G)層37、電極フィルム38、電極フィルム39、コレステリック液晶(B)層40、電極フィルム41が積層されている。光吸収シート20の最上面には透明電極層21bが設けられ、コレステリック液晶(R)層34の下面に接する。コレステリック液晶(R)層34の上面に設けられている電極フィルム35は、基板35aと透明電極層35bとからなり、透明電極層35bがコレステリック液晶(R)層34の上面に接するように配置されている。コレステリック液晶(G)層37を挟むように設けられている電極フィルム36、38は、それぞれ基板36a、38aと透明電極層36b、38bとからなり、透明電極層36b、38bがコレステリック液晶(G)層37に接するように配置されている。コレステリック液晶(B)層40を挟むように設けられている電極フィルム39、41は、それぞれ基板39a、41aと透明電極層39b、41bとからなり、透明電極層39b、41bがコレステリック液晶(B)層40に接するように配置されている。
【0029】
光吸収シート20は、コレステリック液晶表示素子26の最下層に設けられ、光の入射面から最も離れた位置に積層されるコレステリック液晶層34を制御する電極としての機能を有するとともに、すべての液晶層40,37,34を通過した光を吸収する光吸収機能を有する。
【0030】
以上のように、本発明の光吸収シート20において、光吸収機能を有する層が両面粘着層22からなることにより、予め電極層21bが形成されている基板21aの下面を両面粘着層22に貼着させるだけで製造することができ、製造工程において電極層21bに物理的損傷を与えることを防ぐことができる。さらに、両面粘着層22において、基板21aが貼着されていない側の面に、機能性フィルム23を貼着させることができ、例えばキズ防止のためのハードコート剤を塗布したフィルムや、駆動回路や制御回路から発する熱を拡散、放熱する金属箔フィルムを貼着させることができる。
【0031】
本発明の光吸収シート20においては、光吸収機能を有する層が粘着剤溶液で形成される粘着層22からなるので、製造工程において粘着剤溶液を均一に攪拌することで、全体にわたって均一な反射率を有する光吸収シートとすることができる。また、上述のように両面粘着層22を形成する粘着剤溶液に添加するL*値調整成分の種類、添加量等を調整することにより、所望のL*値を有する光吸収シートを構成することが可能となる。したがって、透明電極層の上方から測定したL*値が0.01〜1.0であって、反射率が低減された光吸収シートを提供することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例1〜9、及び比較例1の粘着シート及び光吸収シートを作製し、さらに比較例2の光吸収シートを用意し、各評価を行った。
【0033】
(実施例1)
実施例1の粘着シートの作製を以下の通りに行った。重量平均分子量(Mw)が1,000,000のアクリル系ポリマー(n−ブチルアクリレート74.5重量%、メチルアクリレート20重量%、アクリル酸5.0重量%、および2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5重量%による共重合体)30重量部を溶媒70重量部(トルエン30重量部と酢酸エチル40重量部を混合した溶媒)へ溶解させ、固形分30重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマー溶液の固形分を100重量部とすると、この溶液に架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートを固形分換算で0.15重量部、および1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを固形分換算で0.1重量部加えたものを粘着剤溶液とした。
【0034】
粘着剤溶液にアクリル系ポリマー溶液の固形分を100重量部として、L*値調整成分として、OT6414(レジノカラー工業製)を17重量部添加し、攪拌を行い、剥離フィルム上にアプリケーターにより粘着剤溶液を塗工し粘着層を形成した。このとき、乾燥後の粘着層の厚さが25μmとなるように粘着剤溶液を塗工した。そして、粘着層の露出している面に剥離フィルムの撥水処理面を貼り合わせ、実施例1の粘着シートを作製した。
【0035】
粘着シートの一方の剥離フィルムを剥離し、露出した面と、片面に透明電極層をITOの真空蒸着により形成させたポリエステルシートの透明電極層が形成されている面とは反対側の面とを貼り合わせ、さらに粘着シートに貼着されている他方の剥離フィルムを剥離し、透明のポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製、A4100)を貼りつけた後、オートクレーブで5気圧、50℃の条件下で15分処理し、実施例1の光吸収シートを作製した。
【0036】
(実施例2)
粘着層の厚さを25μmに代えて20μmとした点以外は、実施例1の粘着シート及び光吸収シートと同様の方法で実施例2の粘着シート及び光吸収シートを作製した。
【0037】
(実施例3)
粘着層の厚さを25μmに代えて30μmとした点以外は、実施例1の粘着シート及び光吸収シートと同様の方法で実施例2の粘着シート及び光吸収シートを作製した。
【0038】
(実施例4)
粘着剤溶液に添加するL*値調整成分であるOT6414(レジノカラー工業製)を17重量部に代えて15重量部とした点、及び粘着層の厚さを25μmに代えて20μmとした点以外は、実施例1の粘着シート及び光吸収シートと同様の方法で実施例4の粘着シート及び光吸収シートを作製した。
【0039】
(実施例5)
粘着剤溶液に添加するL*値調整成分であるOT6414(レジノカラー工業製)を17重量部に代えて15重量部とした点以外は、実施例1の粘着シート及び光吸収シートと同様の方法で実施例5の粘着シート及び光吸収シートを作製した。
【0040】
(実施例6)
粘着剤溶液に添加するL*値調整成分であるOT6414(レジノカラー工業製)を17重量部に代えて15重量部とした点、及び粘着層の厚さを25μmに代えて30μmとした点以外は、実施例1の粘着シート及び光吸収シートと同様の方法で実施例6の粘着シート及び光吸収シートを作製した。
【0041】
(実施例7)
粘着剤溶液に添加するL*値調整成分であるOT6414(レジノカラー工業製)を17重量部に代えて25重量部とした点、及び粘着層の厚さを25μmに代えて20μmとした点以外は、実施例1の粘着シート及び光吸収シートと同様の方法で実施例7の粘着シート及び光吸収シートを作製した。
【0042】
(実施例8)
粘着剤溶液に添加するL*値調整成分であるOT6414(レジノカラー工業製)を17重量部に代えて25重量部とした点以外は、実施例1の粘着シート及び光吸収シートと同様の方法で実施例8の粘着シート及び光吸収シートを作製した。
【0043】
(実施例9)
粘着剤溶液に添加するL*値調整成分であるOT6414(レジノカラー工業製)を17重量部に代えて25重量部とした点、及び粘着層の厚さを25μmに代えて30μmとした点以外は、実施例1の粘着シート及び光吸収シートと同様の方法で実施例9の粘着シート及び光吸収シートを作製した。
【0044】
(比較例1)
粘着剤溶液にL*値調整成分を添加せず透明粘着層とした点以外同様の方法で比較例1の粘着シートを作製した。また、光吸収シートにおいて、粘着層の一方の面に貼着されるポリエステルフィルムについて、粘着層に貼着される面とは逆側の面にシルク印刷法で黒色塗料を塗工し、光透過率を1.0%以下とした遮光性ポリエステルフィルムを用いた点以外は実施例1と同様の方法で比較例1の光吸収シートを作製した。
【0045】
(比較例2)
比較例1記載の遮光性ポリエステルシートを比較例2のL*値の評価対象とした。
【0046】
(評価方法及び評価)
1.L*値評価
実施例1〜9及び比較例1,2の光吸収シートについて、日本電飾株式会社製Spectro Photometer「SD5000」を用いて、C光源、視野角2°にて透明電極層の上方にて反射光のL*値の測定を行った。表1に結果を示す。
2.粘着力の評価
実施例1〜9及び比較例1,2の粘着シートについて、一方の剥離フィルムを剥離し露出した面をポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製、A4100)の易接着処理面に転写し、他方の剥離フィルムを剥離しソーダライムガラスに貼り合わせ30分経過した後、島津製作所株式会社製オートグラフ「AGS−500NG」を用いて、引っ張り角度180°、引っ張り速度300mm/minにてポリエステルフィルムを引っ張り上げた際の力の値を25mm幅の値に換算した値を粘着力とした。表1に結果を示す。
【0047】
【表1】

表1より、実施例1〜9の光吸収シートはL*値が1.0以下であり、低い反射率を実現できることがわかる。比較例1,2の光吸収シートでは、1.0以下のL*値が実現されなかった。さらに、実施例1〜9の粘着シートでは、適度な対ガラス粘着力が得られることがわかった。上記方法により測定する対ガラス粘着力は、好ましくは1N/25mm以上であり、いずれの実施例もかかる範囲の値であった。1N/25mm未満であると、意図しない剥離、ハガレが発生しやすいからである。
【0048】
また、実施例1〜9の光吸収シートは電極フィルムを粘着シートに貼着するだけで作製することができ、電極フィルムに設けられている透明電極層を損傷させることはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の光吸収シートを用いたコレステリック液晶表示素子は、外光の反射を利用してコントラストのはっきりした明るい表示ができるので、電子新聞や電子書籍などの電子ペーパー用の表示素子として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の多色コレステリック液晶表示素子の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本実施形態の光吸収シートの構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本実施形態の粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
【図4】本実施形態の多色コレステリック液晶表示素子の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1,26 コレステリック液晶表示素子
4,34 コレステリック液晶(R)層
7,37 コレステリック液晶(G)層
10,40 コレステリック液晶(B)層
20 光吸収シート
21 電極シート
21a 基板
21b 透明電極層
22 両面粘着層
24 粘着シート
25a,25b 剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光性の両面粘着層と、基板及び当該基板の上面に形成された透明電極層からなる電極フィルムとを備え、
前記基板の下面が前記両面粘着層の上面に貼着されているコレステリック液晶表示素子用の光吸収シート。
【請求項2】
前記透明電極層の上方にて測定したL*値(輝度)が0.01〜1.0である請求項1記載の光吸収シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−36991(P2009−36991A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201155(P2007−201155)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】