説明

コレステリルエステル輸送タンパク質の阻害剤として有用なシクロヘキサンカルボキサミド誘導体

本発明は式(I)(式中、R、RおよびQは、明細書および特許請求の範囲に定義された通りである)で示される新規化合物、およびその薬学的に許容しうる塩、これらを調製するためのプロセス、これらを含む医薬及び医薬組成物としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)の阻害剤として有用な新規化合物、前記新規化合物を含む組成物、およびそれらの使用に関する。
【0002】
最初の態様では、本発明は、式I
【化1】


[式中
は、C−C10アルキルであり;
Rは、式II
【化2】


で示される基であるか、または、−SR(式中、Rは、水素またはC(O)C−C10アルキルである)であり;そして
Qは、式IIa、IIb、IIc、IIdまたはIIe
【化3】


(式中、X、X、X、X、XおよびXは、独立して水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、ハロ−C−Cアルキル、ハロ−C−Cシクロアルキル、ハロ−C−Cアルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アシルまたはアリールであり;
Aは、C−X又はNであり;
Dは、C−X又はNであり;
Eは、C−X又はNであり;
Gは、C−X又はNであり;
Jは、C−X又はNであり;
Lは、S、OまたはNHであり;
Mは、C−X又はNであり;
ここで式IIaにおいては、A、D、EおよびGのうち少なくとも1つは、Nである)
で示される基である]
で示される化合物およびその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0003】
−C10アルキルの例は、1〜10個の炭素原子の分岐鎖および直鎖の一価飽和脂肪族炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、異性体ペンチル、異性体ヘキシル、異性体ヘプチル、異性体オクチル、異性体ノニル、および異性体デシルを含む。
【0004】
ハロゲンの例は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0005】
ハロ−C−Cアルキルの例は、C−Cアルキル基の水素原子の少なくとも1つが、ハロゲン原子、例えばフルオロまたはクロロにより置換された、上記定義のようなC−Cアルキル基、例えばトリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、1,2,2,2−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチル−エチル、ペンタフルオロエチル、およびクロロジフルオロメチルを含む。
【0006】
ハロ−C−Cアルコキシの例は、アルコキシ基の水素原子の少なくとも1つが、ハロゲン原子、例えばフルオロまたはクロロにより置換された、式O−C−Cアルキルのアルコキシ基、例えばトリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、およびクロロジフルオロメトキシを含む。
【0007】
−Cシクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルのような、3個〜8個の炭素原子を含む飽和炭素環式基を含む。
【0008】
ハロ−C−Cシクロアルキルの例は、1−フルオロシクロブチルを含む。
【0009】
薬学的に許容しうる塩の例は、以下を含む:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸とともに形成された酸付加塩;もしくは、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−二スルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸とともに形成された酸付加塩;または(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンのいずれかにより置換される;または、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基が配位するときに形成される塩。
【0010】
1つの態様では、本発明は、Rが、C−Cアルキルである、式Iで示される化合物を提供する。別の態様では、本発明は、Rが、2−エチル−ブタ−1−イルである、式Iで示される化合物を提供する。
【0011】
1つの態様では、本発明は、Rが、式IIで示される基(式中、両方の基Qは同一である)である、式Iで示される化合物を提供する。
【0012】
1つの態様では、Qが、式IIaまたはIIbで示される基である、式Iで示される化合物を提供する。
【0013】
1つの態様では、本発明は、Rが、−SR(式中、Rは、水素またはC(O)C−C10アルキルである)である、式Iで示される化合物を提供する。
【0014】
一般的に、本願で使用される命名法は、IUPACの体系的命名法を作成するためにBeilstein Instituteによりコンピュータ化されたシステムであるAUTONOM(商標)v.4.0に基づく。
【0015】
実施例1:チオイソ酪酸S−(3−{[1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボニル]−アミノ}−ナフタレン−2−イル)エステルの調製:
【化4】

【0016】
A)3−アミノ−ナフタレン−2−チオールのピリジン溶液に、室温で2モル当量の1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボニルクロリドを添加する。添加の完了後、反応混合物を2時間60℃に加熱する。次いで、減圧下でピリジンを除去し、水を添加し、酢酸エチルで混合物を抽出する。合わせた抽出物を、飽和NaHCO3溶液、希塩酸、およびブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、そして濃縮して、粗1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボチオ酸S−(3−{[1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボニル]−アミノ}−ナフタレン−2−イル)−エステルを得る。
【0017】
B)メタノールおよびテトラヒドロフラン(1:1)の混合物に、工程A)で得られた粗生成物を溶解させる。次いで、室温で3.5モル当量の水酸化カリウムを添加し、1時間混合物を撹拌する。次いで、水を添加し、n−ヘキサンで混合物を洗浄する。次いで、KHSO4の添加により水層を酸性化し、そしてクロロホルムで抽出する。合わせた抽出物を水及びブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、そして濃縮して、1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸(3−メルカプト−ナフタレン−2−イル)−アミドを得る。
【0018】
C)工程B)で得られた生成物のクロロホルム溶液に、室温で1.05モル当量の塩化イソブチリル、および2.5モル当量のピリジンを添加する。1時間混合物を撹拌し、濃縮し、そして次いでn−ヘキサンを添加する。固体をろ過し、濾液を濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残りの残留物を精製して、望ましい表題化合物を得る。
【0019】
実施例2:1−メチル−シクロヘキサンカルボン酸(2−メルカプト−ナフタレン−1−イル)−アミドの調製:
【化5】

【0020】
A)1−アミノ−ナフタレン−2−チオールのピリジン溶液に、室温で2モル当量の1−メチル−シクロヘキサンカルボニルクロリドを添加する。添加の完了後、反応混合物を2時間60℃に加熱する。次いで、減圧下でピリジンを除去し、水を添加し、そして酢酸エチルで混合物を抽出する。合わせた抽出物を、飽和NaHCO3溶液、希塩酸、およびブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、そして濃縮して、粗1−メチル−シクロヘキサンカルボチオ酸S−{1−[1−メチル−シクロヘキサンカルボニル)−アミノ]−ナフタレン−2−イル}−エステルを得る。
【0021】
B)メタノールおよびテトラヒドロフラン(1:1)の混合物に、工程A)で得られた粗生成物を溶解させる。次いで、室温で3.5モル当量の水酸化カリウムを添加し、1時間混合物を撹拌する。次いで、水を添加し、n−ヘキサンで混合物を洗浄する。次いで、KHSO4の添加により水層を酸性化し、そしてクロロホルムで抽出する。合わせた抽出物を水及びブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、そして濃縮して、望ましい表題化合物を得る。
【0022】
式Iで示される化合物は、コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤である。
【0023】
アテローム性動脈硬化およびその関連する冠状動脈性心疾患は、先進工業国の主要な死因である。冠状動脈性心疾患の発生リスクは、ある血漿脂質濃度と強く相関することが示されている。脂質は、リポタンパク質により血液に輸送される。リポタンパク質の一般構造は、中性脂肪(トリグリセリドおよびコレステロールエステル)のコアおよび極性脂質(リン脂質および非エステル型コレステロール)のエンベロープである。コア脂質含量が異なる、3つの異なるクラスの血漿リポタンパク質が存在する:コレステリルエステル(CE)を多く含む低密度リポタンパク質(LDL);コレステリルエステル(CE)を多く含む高密度リポタンパク質(HDL);およびトリグリセリド(TG)を多く含む超低密度リポタンパク質(VLDL)。異なるリポタンパク質は、それらの異なる浮遊密度または大きさに基づいて分離することができる。
【0024】
高HDLコレステロール(HDL−C)は、心血管疾患が発生するリスクと負の相関が認められるが、一方、高LDLコレステロール(LDL−C)およびトリグルセリドは正の相関が認められる。
【0025】
血漿リポタンパク質代謝は、肝臓と他の組織との間のコレステロールの流れとして説明することができる。LDL経路は、LDLによって組織にコレステロールを送達するための、肝臓からのVLDLの分泌に相当する。LDL異化作用の任意の変化は、血管壁におけるコレステロールの過剰取込みを導き、泡沫細胞およびアテローム性動脈硬化を形成する。反対の経路は、コレステロールを肝臓に送達して最終的に胆汁とともに排泄するための、HDLによる末梢組織からの遊離コレステロールの動員である。ヒトでは、コレステリルエステル(CE)のかなりの部分は、HDLからVLDL、LDL経路に移される。この移動は、70,000ダルトンの血漿糖タンパク質である、コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)によって介在される。
【0026】
CETP欠損に関連するCETP遺伝子の突然変異は、高HDLコレステロール(>60mg/dL)および心血管系リスクの低下を特徴とする。このような知見は、有効な治療アプローチとしてCETP阻害を強く支持する主張をしている、ウサギにおける薬理学的に介在されたCETPの阻害についての研究結果と一致している[Le Goff et al., Pharmacology & Therapeutics 101:17-38 (2004); Okamoto et al., Nature 406:203-207 2000)]。
【0027】
完全に満足のいくHDLを増加させる治療は存在しない。ナイアシンは、著しくHDLを増加させることができるが、コンプライアンスを低下させる重大な耐容性の問題を有する。フィブラートおよびHMG CoA還元酵素阻害剤は、HDL−コレステロールをわずかに(−10−12%)しか増加させない。その結果、血漿HDL濃度を著しく高めることができる耐容性良好な薬剤に対する、重要な医学的必要性が満たされていない。CETP活性の最終結果は、HDL−Cの低下およびLDL−Cの増加である。リポタンパク質プロファイルに対するこの効果は、特にその脂質プロファイルが高い冠状動脈性心疾患リスクを構成している被験体において、アテローム発生促進的であると考えられる。したがって、CETP活性を阻害することによって、リスクを低下させる方向にこの関係を逆行させ、最終的には、冠状動脈性心疾患および関連する死亡を防ぐことができる可能性がある。
【0028】
したがって、CETP阻害剤は、アテローム性動脈硬化、末梢血管疾患、脂質異常症、高βリポタンパク血症、低αリポタンパク血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管疾患、狭心症、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、再潅流傷害、血管形成再狭窄、高血圧症、および糖尿病、肥満または内毒素血症の血管合併症の治療および/または予防のための医薬として有用である。
【0029】
さらに、CETP阻害剤は別の化合物と組み合わせて使用してもよく、前記化合物は、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)/ApoB分泌阻害剤、PPAR活性化剤、胆汁酸再取込み阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、コレステロール合成阻害剤、フィブラート、ナイアシン、イオン交換樹脂、酸化防止剤、ACAT阻害剤、または胆汁酸捕捉剤である。
【0030】
上記のように、本発明の式Iで示される化合物は、CETPによって介在される疾患を治療および/または予防するための医薬として使用することができる。このような疾患の例は、アテローム性動脈硬化、末梢血管疾患、脂質異常症、高βリポタンパク血症、低αリポタンパク血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管疾患、狭心症、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、再潅流傷害、血管形成再狭窄、高血圧症、および糖尿病、肥満または内毒素血症の血管合併症である。脂質異常症を治療および/または予防するための医薬としての使用が好ましい。
【0031】
したがって、本発明は、また、上に定義したような化合物と、薬学的に許容しうる担体および/または補助剤とを含む医薬組成物に関する。
【0032】
さらに、本発明は、治療活性物質として、特にCETPによって介在される疾患を治療および/または予防する治療活性物質として使用するための、上に定義したような化合物に関する。このような疾患の例は、アテローム性動脈硬化、末梢血管疾患、脂質異常症、高βリポタンパク血症、低αリポタンパク血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管疾患、狭心症、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、再潅流傷害、血管形成再狭窄、高血圧症、および糖尿病、肥満または内毒素血症の血管合併症である。
【0033】
別の態様では、本発明は、CETPによって介在される疾患を治療および/または予防するための方法に関する。このような疾患の例は、アテローム性動脈硬化、末梢血管疾患、脂質異常症、高βリポタンパク血症、低αリポタンパク血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管疾患、狭心症、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、再潅流傷害、血管形成再狭窄、高血圧症、および糖尿病、肥満または内毒素血症の血管合併症である。脂質異常症を治療および/または予防するための方法が好ましい。
【0034】
本発明は、さらに、CETPによって介在される疾患を治療および/または予防するための、上に定義したような式Iで示される化合物の使用に関する。このような疾患の例は、アテローム性動脈硬化、末梢血管疾患、脂質異常症、高βリポタンパク血症、低αリポタンパク血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管疾患、狭心症、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、再潅流傷害、血管形成再狭窄、高血圧症、および糖尿病、肥満または内毒素血症の血管合併症である。脂質異常症を治療および/または予防するための、上に定義したような式Iで示される化合物の使用が好ましい。
【0035】
さらに、本発明は、CETPによって介在される疾患を治療および/または予防する医薬を調製するための、上に定義したような式Iで示される化合物の使用に関する。このような疾患の例は、アテローム性動脈硬化、末梢血管疾患、脂質異常症、高βリポタンパク血症、低αリポタンパク血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管疾患、狭心症、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、再潅流傷害、血管形成再狭窄、高血圧症、および糖尿病、肥満または内毒素血症の血管合併症である。脂質異常症を治療および/または予防す医薬を調製するための、上に定義したような式Iで示される化合物の使用が好ましい。
【0036】
さらに、CETP阻害剤は別の化合物と組み合わせて有用であり、前記化合物は、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)/ApoB分泌阻害剤、PPAR活性化剤、胆汁酸再取込み阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、コレステロール合成阻害剤、フィブラート、ナイアシン、イオン交換樹脂、酸化防止剤、ACAT阻害剤、または胆汁酸捕捉剤である。
【0037】
したがって、本発明は、また、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)/ApoB分泌阻害剤、PPAR活性化剤、胆汁酸再取込み阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、コレステロール合成阻害剤、フィブラート、ナイアシン、イオン交換樹脂、酸化防止剤、ACAT阻害剤、または胆汁酸捕捉剤と組み合わせられた、上に定義したような式Iで示される化合物に加えて、薬学的に許容しうる担体および/または佐剤を含む医薬組成物にも関する。
【0038】
本発明は、さらに、アテローム性動脈硬化、末梢血管疾患、脂質異常症、高β−リポタンパク血症、低αリポタンパク血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、心臓血管疾患、狭心症、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、再潅流傷害、血管形成再狭窄、高血圧症、および糖尿病、肥満または内毒素血症の血管合併症などの疾患を治療および/または予防するための、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)/ApoB分泌阻害剤、PPAR活性化剤、胆汁酸再取込み阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、コレステロール合成阻害剤、フィブラート、ナイアシン、イオン交換樹脂、酸化防止剤、ACAT阻害剤、または胆汁酸捕捉剤と組み合わせられた上に定義したような式Iで示される化合物の使用に加えて、対応する医薬を調製するためのこのような組み合わせの使用に関する。
【0039】
式Iで示される化合物およびそれらの薬学的に許容しうる塩は、有益な薬理学的特性を有する。具体的には、本発明の化合物は、コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)の阻害剤であることが見出されている。
【0040】
以下の試験は、式Iで示される化合物の活性を決定するために行なうことができる。
【0041】
CETP阻害剤の活性は、バッファアッセイ系を使用して決定される。部分的に精製されたCETPは、HDLドナー粒子からビオチン標識LDLアクセプター粒子に放射性標識コレステリルエステルを輸送する。この反応を、ストレプトアビジン結合シンチレーション近接アッセイ(SPA)ビーズの添加によって停止させる。これらのビーズは、ビオチン化されたアクセプター粒子を捕捉し、輸送された放射活性を測定する。アッセイ系は、購入し、製造業者(Amersham Biosciences)の推奨に従って行うことができる。化合物の阻害活性は、ドナーおよびアクセプター粒子と共にCETPを含有している陽性対照の活性の百分率として決定することができる。IC50値を決定するために、化合物の階段希釈を行う。
【0042】
次いで、CETPの起源がヒトリポタンパク質を含まない血清(LPDS)であったという点を除いて、上記と同じアッセイを使用して、血漿の存在下で化合物の活性を測定する。化合物の阻害活性は、化合物以外のアッセイ成分をすべて含有している陽性対照の活性の百分率として決定される。IC50値を決定するために、化合物の階段希釈を行う。
【0043】
以下のプロトコールを使用して、式Iで示される化合物のインビボ活性をハムスターで決定する:
標準的な固形飼料を与えているオスのゴールデンハムスター(6週齢、100〜130g)に、適切な溶剤を使用して経口強制飼養により午前中に化合物を投与し、イソフルラン麻酔下で眼窩後方採血によって2時間後に血液を採取し、7時間後に屠殺された動物から採取した。低速遠心分離を使用して、血液から血漿を分離し、希釈血漿をLPDSに置き換えたことを除いて、上記放射活性CETP活性アッセイを用いて、血漿中のCETP活性を測定する。プラセボ処理した動物の血漿CETP活性と比較した、処理動物の血漿中に残存するCETP活性として、インビボにおけるCETP阻害を表す。
【0044】
血漿脂質濃度の調節における化合物の有効性は、化合物を7日間毎日投与した後のハムスターにおいて決定することができる。オスのハムスターを、1日当たり10gの固形飼料および10gの水で作製されたペーストとして食餌を与えることに3〜4日間順化させる。次いで、このペースト内に化合物を混合し、適切な量の化合物を含有している一部を毎朝7日間与える。または、適切な溶剤を使用して、経口強制飼養により化合物を与えてもよい。屠殺された動物から、眼窩後方採血によって、化合物処理前及び処理の最後に血液を採取する。低速遠心分離によって血液から血漿を分離し、選択された器官を摘出する(例えば、肝臓、脂肪、脳など)。血漿脂質濃度に対する化合物の効果は、比色定量酵素アッセイ(Roche Diagnostic GmbH, Mannheim, Germany)を使用して、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロールおよびトリグリセリドを測定することにより決定される。例えば、SMART(商標)系(Pharmacia)を使用して、重ね合わせた6個のカラム上でサイズ排除クロマトグラフィーを使用してHDL−C、LDL−CおよびVLDL−Cを定量する。各ピークがガウス分布であると仮定して、非線形最小2乗曲線適合手順を用いて曲線下面積を計算することにより、リポタンパク質分布を計算する。上記CETP活性を定量するために血漿サンプルも使用される。また、血漿、ならびに肝臓、脂肪、心臓、筋肉および脳から選択される組織における化合物濃度も決定する。
【0045】
また、血漿脂質濃度の調節における化合物の有効性を、コレステロール/脂肪摂取ハムスターにおいて決定する。10%(w/w)の飽和脂肪および0.05%(w/w)のコレステロールを富化した固形飼料を動物に与えることを除いて、プロトコールは上記と同一である。動物は、化合物投与開始前2週間この高脂肪食を摂取し、研究期間全体にわたってこの食餌を継続する。2週間の前処理は、血漿コレステロールおよびトリグルセリド濃度の上昇を誘導するため、LDL−Cおよびトリグリセリドの低下をより正確に評価することができる。
【0046】
急性的にHDL−Cを増加させる能力についての化合物の有効性は、カニクイザルにおいて評価することができる。動物に、標準的な霊長類用維持食を与える。化合物を適切な溶剤とともに調剤し、経口強制飼養によって動物に投与する。化合物投与前及び投与後のいくつかの時点(通常、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、7時間後、および24時間後)に血液を採取する。低速遠心分離によって血液から血漿を分離し、CETP活性および血漿中脂質を定量する。化合物の効力および有効性は、この単回投与後のHDL−C増加を測定することにより評価することができる。このような薬物動力学モデルでは、薬理効果の動態とともに程度を評価することができる。
【0047】
式Iで示される化合物、ならびにこれらの薬学的に許容しうる塩およびエステルは、例えば、腸内、非経口、または局所性投与のための医薬製剤の形態で、医薬として使用することができる。それらは、例えば、経口的に、例えば錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質および軟質ゼラチンカプセル、液剤、乳剤もしくは懸濁剤の形態で、直腸内に、例えば坐剤の形態で、非経口的に、例えば注射液もしくは輸液の形態で、または局所的に、例えば軟膏剤、クリーム剤もしくは油の形態で投与することができる。
【0048】
医薬製剤の産生は、適切で、無毒で、不活性で、治療上適合する固体または液体の担体材料、および望ましい場合、通常の薬学的補助剤とともに、記載された式Iで示される化合物およびそれらの薬学的に許容しうる、をガレヌス製剤(galenical)投与形態にすることにより、当業者によく知られる方法で行うことができる。
【0049】
無機担体材料だけでなく有機担体材料も適切な担体材料である。したがって、例えばラクトース、トウモロコシデンプン、またはこれらの誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩を、担体材料として、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、および硬質ゼラチンカプセルに使用することができる。軟質ゼラチンカプセルに適切な担体材料は、例えば植物油、ろう、脂肪、ならびに半固形および液体のポリオール(しかし、活性成分の性質によって、軟質ゼラチンカプセルの場合担体を必要としない)である。液剤およびシロップ剤の生成に適切な担体材料は、例えば水、ポリオール、スクロース、転化糖などである。注射液に適切な担体材料は、例えば水、アルコール、ポリオール、グリセロール、および植物油である。坐剤に適切な担体材料は、例えば天然または硬化油、ろう、脂肪、および半液体または液体のポリオールである。局所用調製品に適切な担体材料は、グリセリド、半合成および合成のグリセリド、硬化油、液体ろう、流動パラフィン、液体脂肪族アルコール、ステロール、ポリエチレングリコールおよびセルロース誘導体である。
【0050】
通常の安定剤、保存剤、湿潤および乳化剤、粘稠度改良剤、風味改良剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝物質、可溶化剤、着色剤およびマスキング剤、ならびに酸化防止剤は、薬学的補助剤として検討される。
【0051】
式Iで示される化合物の投薬量は、コントロールされる疾患、患者の年齢および個々の状態、ならびに投与方法に依存して広い範囲内で変化してもよく、無論、各特定の場合における個々の要件に適合する。成人患者では、約1mg〜約1000mg、特に約1mg〜約100mgの1日投薬量が検討される。投薬量によって、いくつかの投薬量単位で1日投薬量を投与することが便利である。
【0052】
医薬製剤は、便利なように、式Iで示される化合物を約0.1〜500mg、例えば0.5〜100mg含有する。
【0053】
以下の実施例は、本発明をより詳細に例証する役割を有する。しかし、それらは、いかなる方法でも本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0054】
実施例A:フィルムコーティング錠剤
【表1】

【0055】
活性成分を篩にかけ、微晶質セルロースと混合し、そして混合物をポリビニルピロリドンの水溶液と共に造粒する。顆粒をデンプングリコール酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムと混合し、圧縮して、それぞれ120又は350mgの核を得る。上記のフィルムコートの水性溶液/懸濁液を核に塗布する。
【0056】
実施例B:カプセル剤
【表2】

【0057】
成分を篩にかけ、混合し、そしてサイズ2のカプセルに充填する。
【0058】
実施例C:注射液
【表3】

【0059】
実施例D:軟ゼラチンカプセル剤
【表4】

【0060】
活性成分を、他の成分の加温溶融物に溶解し、そして混合物を適切な大きさの軟ゼラチンカプセルに充填する。充填された軟ゼラチンカプセル剤を、当該技術で使用される通常の手順に従って処理する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化6】


[式中
は、C−C10アルキルであり;
Rは、式II
【化7】


で示される基であるか、または、−SR(式中、Rは、水素またはC(O)C−C10アルキルである)であり;そして
Qは、式IIa、IIb、IIc、IIdまたはIIe
【化8】

(式中、X、X、X、X、XおよびXは、独立して水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、ハロ−C−Cアルキル、ハロ−C−Cシクロアルキル、ハロ−C−Cアルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アシルまたはアリールであり;
Aは、C−X又はNであり、
Dは、C−X又はNであり;
Eは、C−X又はNであり;
Gは、C−X又はNであり;
Jは、C−X又はNであり;
Lは、S、OまたはNHであり;
Mは、C−X又はNであり;
ここで式IIaにおいて、A、D、EおよびGのうち少なくとも1つは、Nである)
で示される基である]
で示される化合物およびその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
Qが、式IIaまたはIIb:
【化9】


で示される基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、C−Cアルキル、好ましくは2−エチル−ブタ−1−イルである、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
Rが、式IIで示される基であり、そして式中、両方の基Qが同一である、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
Rが、−SRであり、そして式中、Rは水素またはC(O)C−C10アルキルである、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物に加えて、薬学的に許容しうる担体および/または補助剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
CETPによって介在される疾患を治療および/または予防するための請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
治療活性物質として使用するための請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
CETPによって介在される疾患を治療および/または予防するための治療活性物質として使用するための請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
ヒトまたは動物に請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物を投与することを含む、CETPによって介在される疾患を治療および/または予防するための方法。
【請求項11】
CETPによって介在される疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項12】
実質的に本明細書に記載の新規化合物、方法、およびそのような化合物の使用。

【公表番号】特表2012−512827(P2012−512827A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541350(P2011−541350)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066863
【国際公開番号】WO2010/069859
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】