説明

コレステロールオゾン化生成物の検出

本発明は、アテローム硬化性プラーク物質によって生成されるコレステロールオゾン化生成物の検出ならびにコレステロールの蓄積および酸化に関する血管状態の検出方法に関する。本発明によれば、コレステロールオゾン分解生成物は、アテローム硬化性プラーク中に存在する。さらに、患者から採取した組織および体液中のコレステロールのオゾン化生成物の検出および定量は、アテローム硬化性病変が患者に実際に存在するかどうかの正確な指標である。したがって、本発明は、アテローム硬化性病変が患者中に存在するかどうかを簡潔かつ正確に検出する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年9月5日提出の米国特許仮出願番号60/500,593号および2003年11月6日提出の米国特許仮出願番号60/517,821号(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
(政府の権利に関する記述)
本明細書中に記載の発明を、国立衛生研究所によって授与された助成金番号PO1CA 27489の米国政府支援を使用して実施した。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、コレステロールオゾン化(ozonation)生成物がアテローム硬化性病変によって生成されるという発見に関する。本発明は、アテローム性動脈硬化症および/または心血管疾患などのコレステロール関連血管病態を有する患者を診断、検出、およびモニタリングする方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
全ての人が血清コレステロールレベルを慎重にモニタリングすることを忠告され続けており、且つ自由な食事および運動不足によって動脈プラーク中にコレステロールが蓄積し、アテローム性動脈硬化症および冠状動脈性心疾患のリスクが増大し得ることが常に指摘されている。それにも関わらず、高血清コレステロールレベルがこのようなリスクの指標である一方で、実際に構築された問題のアテローム硬化性プラークが存在するという証拠はない。
【0005】
血清コレステロールは、主に、低密度リポタンパク質(LDLコレステロール)、高密度リポタンパク質(HDLコレステロール)、および超低密度リポタンパク質(VLDLコレステロール)中のトリグリセリドと関連することが知られている。多数の長期臨床試験からの統計上の証拠は、HDLコレステロールの比率が高くてLDLコレステロールの比率が低い場合に相対危険度が低くなることを示す。HDLコレステロールは、そのレベルが過度に低くない(すなわち、30mg/dL未満)場合に有益である。VLDLコレステロールはいかなるリスクの決定要因に関与しないが、高トリグリセリド自体が深刻な問題であり得る。他方では、LDLコレステロールの比率が高く且つHDLコレステロールの比率が低いことは、アテローム性動脈硬化症および冠状動脈性心疾患のリスクがより高くなることの指標である。
【0006】
アテローム性動脈硬化症のリスクと高LDLコレステロールレベルとの間に強い相関関係が存在する場合でさえ、いくつかの研究では、血清LDLおよびHDLコレステロールレベルの測定が不十分にしか行われておらず、しばしば信頼できない結果が得られていることが示されている。Superko,H.R.et al.High−Density Lipoprotein Cholesterol Measurements−−A Help or Hinderance in Practical Clinical Medicine,JAMA 256:2714−2717(1986);Warnick,G.R.et al.HDL Cholesterol:Results of Interlaboratory Proficiency Test,Clin.Chem.26:169−170(1980);and Grundy,S.M.et al.The Place of HDL in Cholesterol Management.A Perspective from the National Cholesterol Education Program,Arch.Inter.Med.149:505−510(1989)を参照のこと。Grundy et al.の論文は、HDLコレステロールの測定値の研究室間変動係数が38%もの高さであることを報告している。2000の研究所による同一のHDLコレステロールサンプルの測定に関するCollege of American Pathologistsによる1987年の報告は、33%を超える測定の基準値が5%を超えて異なっていたことを示した。同一の方法を使用した群の間の研究室間変動係数は16.5%に改善されたが、このような分散度は、ほとんどの試験結果が不正確すぎて臨床目的でのいかなる予測値も得られないことを依然として示す。この理由のために、総コレステロール:HDLコレステロール比はもはやリスクアセスメントで使用されない。
【0007】
典型的な脂質プロフィール研究では、総コレステロールおよびトリグリセリドレベルを血清サンプルから直接測定する。次いで、サンプルを、LDLコレステロールおよびVLDLコレステロールを沈殿して取り出す薬剤で処理する。このようなサンプル処理後に上清中に残存したHDLコレステロールを測定する。VLDLコレステロールは、トリグリセリドの一定の比率(例えば、0.2)を取る。次いで、LDLコレステロールを、総コレステロールからHDLコレステロール値およびVLDLコレステロール値を引くことによって間接的に計算する。これら3つの独立した測定から生じるエラーの増加によってLDLコレステロールの測定値の全体的な精度および正確さが最も小さくなるにもかかわらず、心血管へのリスクの評価に最も有意であり得る。このような不正確さのため、経時的なLDLコレステロール低下療法により臨床的な進展があるかどうか意図的にモニタリングし証明することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、血清LDLコレステロールの測定値はしばしば不正確である。このような不正確さは、LDLコレステロールレベルが実際に問題のあるアテローム硬化性病変が存在することを証明しないという事実と併せて、問題のあるコレステロール負荷アテローム硬化性病変が患者に存在するかどうかを決定するための比較的簡潔であり、信頼でき、且つ再現性のある方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明によれば、コレステロールオゾン分解生成物は、アテローム硬化性プラーク中に存在する。さらに、患者から採取した組織および体液中のコレステロールのオゾン化生成物の検出および定量は、アテローム硬化性病変が患者に実際に存在するかどうかの正確な指標である。したがって、本発明は、アテローム硬化性病変が患者中に存在するかどうかを簡潔かつ正確に検出する方法を提供する。本発明の方法は、コレステロールのオゾン化生成物が患者から採取した試験サンプル中に存在するかどうかを検出する工程を含む。本発明はまた、哺乳動物中のアテローム硬化性プラーク形成の程度の診断およびモニタリングの基準としての生体サンプル中に存在するコレステロールオゾン化生成物の定量を意図する。
【0010】
本発明の1つの態様は、アテローム硬化性プラーク中で生成されたコレステロールの単離されたオゾン化生成物である。このようなコレステロールのオゾン化生成物は、例えば、式4a〜15a、3c、または7c:
【0011】
【化67】

【0012】
【化68】

【0013】
【化69】

【0014】
【化70】

【0015】
【化71】

のいずれか1つを有し得る。
【0016】
本発明の別の態様は、亜硫酸水素付加体、イミン、オキシム、ヒドラゾン、ダンシルヒドラゾン、セミカルバゾン、またはTollins試験の生成物を含むコレステロールオゾン化生成物の検出可能な誘導体であって、前記コレステロールのオゾン化生成物がアテローム硬化性プラーク内に生成される、コレステロールオゾン化生成物の検出可能な誘導体である。
【0017】
本発明の別の態様は、式4bまたは式4c:
【0018】
【化72】

を有するコレステロールオゾン化生成物のヒドラゾン誘導体を含む。
【0019】
本発明の別の態様は、式5b:
【0020】
【化73】

を有するコレステロールオゾン化生成物のヒドラゾン誘導体を含む。
【0021】
本発明の別の態様は、式6b〜15bまたは10c:
【0022】
【化74】

【0023】
【化75】

【0024】
【化76】

【0025】
【化77】

【0026】
【化78】

のいずれか1つを有するコレステロールオゾン化生成物のヒドラゾン誘導体である。
【0027】
本発明の別の態様は、式4d:
【0028】
【化79】

を有するコレステロールオゾン化生成物のダンシルヒドラゾン誘導体を含む。
【0029】
本発明の別の態様は、式5c:
【0030】
【化80】

を有するコレステロールオゾン化生成物のダンシルヒドラゾン誘導体を含む。
【0031】
本発明の別の態様は、式13a、13b、14a、14b、15a、15c、または3cを有するハプテンである。
【0032】
本発明の別の態様は、コレステロールのオゾン化生成物に結合し得る単離された抗体である。抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であり得る。抗体が結合し得るコレステロールのオゾン化生成物は、式4a〜15a、3c、4c、7cのいずれか1つを有する化合物であり得る。いくつかの実施形態では、コレステロールのオゾン化生成物のヒドラゾン誘導体(例えば、式4b〜15b、4c、または10cのいずれか1つを有する化合物)に結合し得る単離された抗体。本発明の抗体は、例えば、式13a、13b、14a、14b、15a、15c、または3cを有するハプテンに対して惹起し得る。
【0033】
本発明の別の態様は、ATCC受託番号PTA−5427またはPTA−5428を有するハイブリドーマKA1−11C5:6またはKA1−7A6:6に由来する単離された抗体である。
【0034】
本発明の別の態様は、ATCC受託番号PTA−5429およびPTA−5430を有するハイブリドーマKA2−8F6:4またはKA2−1E9:4に由来する単離された抗体である。
【0035】
本発明の別の態様は、コレステロールのオゾン化生成物が患者から得た試験サンプル中に存在するかどうかの検出による患者のアテローム性動脈硬化症の検出方法である。オゾン化生成物は、アテローム硬化性プラークによって生成され得る。試験サンプルは、例えば、血清、血漿、血液、アテローム硬化性プラーク物質、尿、または脈管組織であり得る。アテローム性動脈硬化症の検出方法はまた、試験サンプル中に存在するコレステロールオゾン化生成物の定量を含み得る。
【0036】
1つの実施形態では、アテローム性動脈硬化症の検出方法は、試験サンプルと、亜硫酸水素塩、アンモニア、シッフ塩基、芳香族または脂肪族ヒドラジン、ダンシルヒドラジン、ジェラード(Gerard)試薬、Tollins試験試薬とを反応させる工程と、このような反応によって形成されたコレステロールのオゾン化生成物の誘導体を検出する工程とを含み得る。
【0037】
別の実施形態では、アテローム性動脈硬化症の検出方法は、試験サンプルをヒドラジン化合物と反応させてコレステロールのオゾン化生成物のヒドラゾン誘導体を生成する工程を含み得る。例えば、ヒドラジン化合物は、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンであり得る。
【0038】
別の実施形態では、アテローム性動脈硬化症の検出方法は、試験サンプルをダンシルヒドラジンと反応させてコレステロールのオゾン化生成物のダンシルヒドラゾン誘導体を生成する工程を含み得る。例えば、ダンシルヒドラゾン誘導体は、式4dまたは5cを有し得る。
【0039】
別の実施形態では、アテローム性動脈硬化症の検出方法は、試験サンプルとコレステロールのオゾン化生成物に結合し得る抗体と接触させる工程を含み得る。本明細書中に記載の任意の抗体を、本方法で使用し得る。
【0040】
本発明の別の態様は、コレステロールのオゾン化生成物が患者から得た試験サンプル中に存在するかどうかを検出する工程と、前記オゾン化生成物が式5aを有する化合物であることとを含む、コレステロールのオゾン化生成物が患者のアテローム硬化性プラークによって放出されるかどうかを検出する方法を含む。コレステロールのオゾン化生成物がアテローム硬化性プラークによって放出されるかどうかを検出する方法はまた、試験サンプル中に存在するコレステロールオゾン化生成物を定量する工程を含み得る。
【0041】
本発明の別の態様は、患者由来の試験サンプルに2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを添加する工程と、コレステロールのオゾン化生成物のヒドラゾン誘導体が試験サンプル中に存在するかどうかを検出する工程を含む、患者のアテローム性動脈硬化症の検出方法を含む。ヒドラゾン誘導体が、式4b、4c、5b、6b、7b、8b、9b、10b、10c、11b、12b、13b、14b、または15bのいずれか1つを有する化合物であり得る。
【0042】
本発明の別の態様は、マクロファージを試験サンプルと接触させる工程と、前記マクロファージによる脂質取り込みが増加するかどうかを決定する工程とを含む、コレステロールオゾン分解生成物が試験サンプル中に存在するかどうかを検出する方法を含む。
【0043】
本発明の別の態様は、マクロファージを試験サンプルと接触させる工程と、前記マクロファージによる脂質取り込みが増加するかどうかを決定する工程とを含む、患者のアテローム性動脈硬化症の検出方法を含む。
【0044】
本発明の別の態様は、低密度リポタンパク質を試験サンプルと接触させる工程と、前記低密度リポタンパク質の二次構造が変化するかどうかを観察する工程とを含む、試験サンプル中のコレステロールオゾン分解生成物の検出方法を含む。
【0045】
本発明の別の態様は、低密度リポタンパク質を患者から得た試験サンプルと接触させる工程と、前記低密度リポタンパク質の二次構造が変化するかどうかを観察する工程とを含む、患者のアテローム性動脈硬化症の検出方法を含む。
【0046】
本発明の別の態様は、アポタンパク質B100を試験サンプルと接触させる工程と、前記アポタンパク質B100の二次構造が変化するかどうかを観察する工程とを含む、試験サンプル中のコレステロールオゾン分解生成物の検出方法を含む。
【0047】
本発明の別の態様は、アポタンパク質B100を患者から得た試験サンプルと接触させる工程と、前記アポタンパク質B100の二次構造が変化するかどうかを観察する工程とを含む、患者のアテローム性動脈硬化症の検出方法を含む。
【0048】
低密度リポタンパク質またはアポタンパク質B100の二次構造を円偏光二色性によって観察し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
(発明の詳細な説明)
本発明は、コレステロールのオゾン化生成物の検出方法を提供する。コレステロールのオゾン化生成物の検出のためのキットおよび試薬も提供する。これらの方法、キット、および試薬は、構築されたコレステロールに関連する血管状態の検出に有用である。例えば、方法、キット、および試薬は、アテローム性動脈硬化症などの炎症性動脈疾患の診断および予後のモニタリングに有用である。
【0050】
(コレステロールのオゾン化)
本発明によれば、コレステロールは、オゾンなどの活性酸素種によってアテローム硬化性動脈内で酸化する。この過程によって多数のコレステロールオゾン化生成物が生成され、アテローム性動脈硬化症患者から採取した組織または流動物サンプル中で検出し得る。コレステロールオゾン化生成物の検出により、アテローム性動脈硬化症などの炎症性動脈疾患が診断される。
【0051】
コレステロールは、以下の構造(3):
【0052】
【化81】

を有する。このような高レベルの血中コレステロールレベルは、アテローム硬化性プラークの形成尤度と相関する一方で、アテローム硬化性プラークが患者の動脈系に存在することを断定的に示さない。患者が実際にアテローム硬化性病変を有するかどうかを確認するために、迅速なCATスキャン、画像化手段を使用した色素注入、または浸潤性の内視鏡手順もしくはカテーテル留置手順などの高価な試験が現在使用されている。
【0053】
しかし、本発明によれば、実際のアテローム硬化性プラークの存在を、コレステロールのオゾン化生成物の検出によって検出し得る。コレステロールが動脈中に蓄積された場合、アテローム硬化性プラークが形成され得る。特定の機構に限定されることを望まないが、マクロファージ、好中球、および他の免疫細胞がアテローム硬化性病変内に陥り、オゾンなどの活性酸素種を放出するようである。生成された活性酸素種は病変中のコレステロールと反応し、コレステロールが患者中で検出し得る多数の生成物に酸化される。したがって、患者から採取したサンプル中でコレステロールオゾン化のための2つの事象が起こるようである。第1に、アテローム硬化性プラーク内でコレステロールが実質的に構築されなければならない。第2に、アテローム性動脈硬化症が、活性酸素種が生成される段階に進行しなければならない。これら2つの事象が並行して起こり、コレステロールオゾン化生成物が形成される。コレステロールの構築およびオゾン生成が実質的に他の状況で起こらないため、コレステロールオゾン化生成物の検出は、アテローム性動脈硬化症などの炎症性動脈病態が患者に存在するかどうかの正確な指標である。さらに、本発明によれば、アテローム性動脈硬化症患者から採取した生体サンプル(例えば、血清)内のコレステロールオゾン化生成物の存在量は、患者のアテローム性動脈硬化症の重症度の指標である。
【0054】
本発明によれば、多数のコレステロールオゾン化生成物が同定された。例えば、コレステロール3が酸化された場合、seco−ケトアルデヒド4aおよびそのアルドール付加体5aは、形成された主な生成物である。
【0055】
【化82】

さらに、化合物6a〜15aおよび7cのような構造を有するコレステロールオゾン化生成物も認められる。
【0056】
【化83】

【0057】
【化84】

【0058】
【化85】

本発明によれば、seco−ケトアルデヒド4a、そのアルドール付加体5a、および関連化合物6a〜15aおよび7cは、アテローム性動脈硬化症を罹患した患者のアテローム硬化性プラークおよび血流中に存在し得る。さらに、seco−ケトアルデヒド4a、そのアルドール付加体5a、および関連化合物6a〜15aおよび7cの量は、患者におけるアテローム硬化性プラーク形成の範囲および重症度に相関する。例えば、血管内膜切除術を必要とするのに十分に進行したアテローム性動脈硬化症の病態を有する8人のうちの6人で、70〜1690nMの範囲でアルドール5aが検出された(図5C)。しかし、一般的な診療所に通院している患者群から無作為に選択された患者由来の15の血漿サンプルのうちのたった1つで、検出可能な5aが存在した。
【0059】
したがって、本発明は、患者がアテローム硬化性病変を有するかどうかの決定および循環コレステロールがアテローム硬化性プラーク中に組み込まれるようになる範囲の決定のためのこれらのコレステロールオゾン化生成物の検出を意図する。
【0060】
(オゾンおよびコレステロール生成物の検出)
コレステロールオゾン化生成物を、当業者が利用可能な任意の手順によって検出または同定し得る。例えば、これらの生成物を、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、液体クロマトグラフィ質量分析(LCMS)、ガスクロマトグラフィ(GC)、ガスクロマトグラフィ質量分析(GCMS)、高速液体クロマトグラフィ質量分析(HPLC−MS)、蒸発光散乱検出(ELSD)、ガスクロマトグラフィ質量分析を使用したイオン検出(ID−GCMS)、可視、紫外線、または赤外線分光法、薄層クロマトグラフィ、電気泳動、液体クロマトグラフィ、核磁気共鳴、湿式化学アッセイ、免疫アッセイ(例えば、ELISA)、免疫組織化学、蛍光分光学、光分光学もしくは紫外線分光学、または当業者に利用可能な任意の他の手段によって検出または同定し得る。
【0061】
さらに、コレステロールオゾン化生成物の存在を、これらの生成物が低密度リポタンパク質(LDL)、アポタンパク質B100(アポB−100、LDLのタンパク質成分)、またはマクロファージに及ぼす影響を観察することによって検出することもできる。本明細書中に記載のように、コレステロールオゾン分解生成物4aおよび5aは、マクロファージからの泡沫細胞の形成を促進し得る。さらに、コレステロールオゾン分解生成物4aおよび5aは、LDLおよびアポB−100の二次構造を修飾する。したがって、試験サンプル中のコレステロールオゾン分解生成物の存在を、試験サンプルが泡沫細胞形成を促進するか、LDLまたはアポタンパク質B100の二次構造を変化させることができるかどうかの決定によって検出し得る。これらのアッセイを、以下により詳細に記載する。
【0062】
いくつかの実施形態では、試験サンプルを、コレステロールオゾン化生成物の検出および同定を容易にする試薬と反応させる。例えば、試験サンプルを、コレステロールオゾン化生成物と反応する任意の蛍光、リン光、または着色試薬と接触させることができ、反応生成物を、蛍光、可視光、または紫外線検出器を使用して検出し得る。他の実施形態では、このような試薬を使用せず、コレステロールオゾン化生成物を、その物理的性質または化学的性質によって同定する。このような方法を、以下にさらに詳細に記載する。
【0063】
アテローム硬化性プラーク物質中のオゾンの量は、形成されたアテローム硬化性プラークの量も示す。したがって、本発明は、アテローム硬化性プラークのサイズを評価するためのアテローム硬化性プラーク物質中のオゾンの検出および/または定量を意図する。オゾンを検出し得る任意の試薬の使用によって、アテローム硬化性プラーク物質中のオゾンを検出し得る。例えば、インディゴカルミン1は、オゾンとの反応の際にその青色が脱色する有色試薬である。プロセスでは、下に示すように、イサチンスルホン酸2が形成された。
【0064】
【化86】

したがって、オゾン検出方法を使用して、構築されたアテローム硬化性プラークの範囲を評価し得る。
【0065】
しかし、アテローム硬化性材料中にオゾンを検出し得る一方で、実質的なアテローム硬化性プラーク材料を有する患者の血流中のコレステロールオゾン化生成物を検出し得る。したがって、アテローム硬化性プラーク物質の単離を回避するために、当業者は、血液サンプルを単離するために選択し、その後コレステロールのオゾン化生成物が存在するかどうかを検出し得る。これにより、血管内膜切除術などの高価で煩わしい手順が回避され、患者にアテローム硬化性プラーク物質がどれくらい存在するかを評価するための信頼のおける手順が得られる。
【0066】
アテローム性動脈硬化症を診断するために、任意のコレステロールオゾン化生成物(例えば、seco−ケトアルデヒド4a)、そのアルドール付加体5a、および/または関連化合物6a〜15aおよび7cを検出し得る。しかし、今日まで行われている研究は、アルドール付加体5aが血清中で検出し得る主な生成物の1つであることを示す。
【0067】
いくつかの実施形態では、検出を容易にするために生体サンプルから得たコレステロールオゾン化生成物を化学修飾し得る。このような化学修飾に使用し得る試薬には、亜硫酸水素塩、アンモニア、シッフ塩基(アニリンなどの脂肪族または芳香族アミンを使用する)、芳香族または脂肪族ヒドラジン、ダンシルヒドラジン、ジェラード試薬(セミカルバジド)、Tollins試験試薬(ホルムアルデヒドおよび水酸化カルシウム)などが含まれる。本発明のコレステロールオゾン化生成物と反応した場合、これらの試薬により、当業者によって容易に検出し得る亜硫酸水素付加体(ナトリウム塩として容易に結晶化される)、イミン、オキシム、ヒドラゾン、セミカルバゾン、およびTollins試験生成物などの特徴的な生成物が得られる。
【0068】
例えば、seco−ケトアルデヒド4a、そのアルドール付加体5a、および関連化合物4c、6a〜15aおよび7cのヒドラゾン誘導体を容易に形成することができ、これらは患者がアテローム硬化性病変を有するかどうかの決定のための有用なマーカーである。これらのヒドロゾン(hydrozone)誘導体には、化合物4b〜15b、おそらく4cまたは10cのような構造を有する化合物が含まれる。
【0069】
【化87】

【0070】
【化88】

【0071】
【化89】

【0072】
【化90】

【0073】
【化91】

【0074】
【化92】

1nM〜10nMの低濃度のこれらのヒドロゾン誘導体を、HPLC質量分析を使用して検出した。ガスクロマトグラフィ質量分析を使用して、10fg/μLしかないコレステロールオゾン化生成物を検出し得る。
【0075】
2,4−ジニトロフェニルヒドラジンなどのヒドラジン化合物との反応によってコレステロールオゾン化生成物をヒドロゾン誘導体に変換し得る。いくつかの実施形態では、アセトニトリルまたはアルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)などの有機溶媒中で反応させる。酸性環境および非反応性大気を含む非酸素をしばしば使用する。
【0076】
例えば、患者から血漿を得て、EDTAに入れることができる。このサンプルをジクロロメタンで数回洗浄して、コレステロールオゾン化生成物を抽出し得る。ジクロロメタン画分を真空蒸発させ、コレステロールオゾン化生成物を含む残渣をアルコール(例えば、メタノール)に溶解し得る。次いで、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンおよび1NHClを含むエタノール溶液を添加し得る。溶液中に窒素を短時間(例えば、5分間)注入して(bubbled)遊離酸素を除去し得る。溶液を、コレステロールオゾン化生成物のそのヒドラゾン誘導体への変換に十分な時間(例えば、2時間)撹拌し得る。この手順で検出された主産物は、アルドール付加体5aのヒドラゾン誘導体であると考えられる。さらに、予備調査により、血漿から抽出し得る5aの量が1日あたり約5%減少することが明らかとなった。したがって、新鮮な血漿サンプルにより、サンプル中のアルドール付加体5aの実際の量がより正確に測定される。
【0077】
本発明の試薬および方法を使用して、アテローム性動脈硬化症をその進行の任意の段階で検出し得る。AHAによって採用され、本研究で使用した新規の分類によれば、アテローム性動脈硬化症の進行時に8つの病変型を区別し得る。
【0078】
脈管内膜中の小脂質沈着物(細胞内およびマクロファージ泡沫細胞)によってI型病変が形成され、動脈壁が最初期且つ最小に変化する。このような変化は、動脈壁を肥厚させない。
【0079】
II型病変は、ミリメートル未満で動脈内膜の厚さが増加する黄色の線条または斑である脂肪線条によって特徴づけられる。これらは、I型病変で認められる脂肪より蓄積された脂肪からなる。脂質含有率は、病変乾燥重量の約20〜25%である。ほとんどの脂質は、細胞内、主にマクロファージ泡沫細胞おおび平滑筋細胞に存在する。細胞外空間は、脂肪滴を含み得るが、これらは細胞内の脂肪滴および小胞粒子(smallvesicular particle)よりも小さい。化学的には、脂質は、コレステロールエステル(オレイン酸コレステリルおよびリノレン酸コレステリル)、コレステロール、およびリン脂質からなる。
【0080】
III型病変はまた、前アテローマ(preatheroma)病変としても記載される。III型病変では、動脈内膜は、II型病変よりもわずかに肥厚するだけである。III型病変は、動脈の血流を妨害しない。細胞外脂質および小胞粒子は、II型病変で見出された小胞粒子と同一であるが、大量に存在し(乾燥重量で約25〜35%)、小貯留(smallpool)中に蓄積され始める。
【0081】
IV型病変は、アテローマに関連する。これらは、三日月型であり、動脈の厚さを増大させる。この病変は、血漿コレステロールレベルが非常に高い患者以外は動脈内腔を非常に狭めることはないかもしれない(多くの人々において、病変を血管造影法によって視覚化することができない)。IV型病変は、内膜層中の細胞外脂質の広範な蓄積(乾燥重量で約60%)からなる。脂質コアは、無機質の小クランプを含み得る。これらの病変は、破裂および壁性血栓の形成の影響を受けやすい。
【0082】
V型病変は、フィブロアテローマ(fibroatheroma)に関連する。これらは、主にI型コラーゲンからなる1つまたは複数の線維性組織の層を有する。V型病変は壁厚が増大し、アテローム性動脈硬化症の進行につれて内腔の減少が進行する。これらの病変は、さらに細分される特徴を有する。Va病変では、新規の組織は脂質コア内の損傷の一部である。Vb病変では、脂質コアおよび病変の他の部分が石灰化する(VII型病変に進行する)。Vc型病変では、脂質コアは存在せず、脂質は一般的に最小である(VIII型病変に進行する)。一般に、破壊を受けた病変は、Va型病変である。これらは比較的柔らかく、遊離コレステロール一水和物血漿よりもコレステロールエステル濃度が高い。V型病変は破裂して壁在血栓を形成し得る。
【0083】
VI型病変は、IV型病変およびV型病変に加えて、亀裂、びらん、または潰瘍形成などの病変表面の破壊(VIa型)、血腫または出血(VIb型)、および血栓性沈着物(VIc型)を有する複雑性(complicated)病変である。VI型病変は、病変の厚さが増大し、内腔がしばしば完全に遮断されている。これらの病変は、V型病変に変換し得るが、これらはより巨大且つ閉塞性を示す。
【0084】
VII型病変は、より進行した病変の巨大な鉱化作用によって特徴づけられる石灰化病変である。鉱化作用は、死細胞の残遺物および細胞外脂質の蓄積の代わりにリン酸カルシウムおよびアパタイトの形態を取る。
【0085】
VIII型病変は、主にコラーゲン層からなり、脂質をほとんど含まない線維性病変である。VIII型は、コラーゲンに変換される血栓の脂質後退または脂質病変の結果であり得る。これらの病変は、中動脈の内腔を塞ぐ。
【0086】
本明細書中で使用されるように、コレステロールオゾン分解生成物4aおよび5aは、マクロファージからの泡沫細胞の形成を促進し、低密度リポタンパク質(LDL)およびアポタンパク質B100(LDLのタンパク質成分)の構造を修飾し得る。LDLを、非活性化マウスマクロファージの存在下で4aまたは5aとインキュベートした。4aまたは5aへの曝露後、これらのマクロファージは、脂質を負荷し始め、泡沫細胞が反応槽中に出現し始める(図7を参照のこと)。さらに、4aおよび5a(10μM)とのヒトLDL(100μg/mL)のインキュベーションにより、円偏光二色性によって検出したところ、アポB−100の構造が時間依存性に変化した(図8B、C)。図8Aに示すように、正常なLDLのタンパク質含有量は、αヘリックス構造が大部分を占め(約40±2%)、β構造(約13±3%)、βターン(約20±3%)、およびランダムコイル(27±2%)はより少ない。しかし、LDLを4aおよび5aとインキュベートした場合、二次構造が有意に喪失する。二次構造の喪失は、主に、αヘリックス構造の喪失である(4aは約23±5%;5aは約20±2%)。相応してより高い比率のランダムコイルが認められる(4aは約39±2%;5aは32±4%)。したがって、4aおよび5aのコレステロールオゾン分解生成物は、問題のあるアテローム性動脈硬化症に関連するいくつかの生理学的変化を直接導き得る。
【0087】
したがって、本発明は、問題のコレステロールオゾン分解生成物が試験サンプル中に存在するかどうかを診断する方法を提供する。いくつかの実施形態では、このような方法は、試験サンプルがマクロファージによる脂質取り込みを変化させることができるかどうかを決定する工程を含む。試験サンプルとマクロファージとのインキュベーション後に脂質取り込みの増加が認められた場合、試験サンプルはオゾン分解生成物を有し、試験サンプルが得られた患者は問題のアテローム性動脈硬化症を罹患している可能性が高い。別の実施形態では、本発明は、試験サンプルがLDLまたはアポタンパク質B100の二次構造を修飾し得るかどうかの決定によるコレステロールオゾン分解生成物の検出方法を提供する。LDLまたはアポタンパク質B100の二次構造を、当業者が利用可能な方法(例えば、円偏光二色性または熱量測定)を使用してモニタリングまたは観察し得る。
【0088】
生体サンプル中のコレステロールオゾン化生成物の定量的測定を使用して、生体サンプルを得た動物中にどのアテローム性動脈硬化症病期および/またはどんな病変型が存在するのかを診断し得る。アテローム性動脈硬化症の別の病変型または別の病期を有することが公知の患者集団由来の生体サンプルを試験し、これらのサンプル中のコレステロールオゾン化生成物の量を集計し得る。このような集計により、アテローム性動脈硬化症の病期(または病変型)と患者サンプル中のコレステロールオゾン化生成物量との間の統計分析し、相関させる。コレステロールオゾン化生成物量の平均値および範囲を、新規の患者サンプル中のコレステロールオゾン化生成物量の知識によって新規の患者中に存在するアテローム性動脈硬化症の病期を予想することが可能なように、各患者集団について計算し得る。同様に、生体サンプルがマクロファージによって脂質負荷させることができる程度または低密度リポタンパク質および/またはアポタンパク質B100の二次構造も定量し、アテローム性動脈硬化症の病期および/またはアテローム性動脈硬化症患者中に存在する病変型と相関させることができる。
【0089】
患者サンプル中のコレステロールオゾン化生成物量を、任意の利用可能な方法によって定量的に測定し得る。例えば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、液体クロマトグラフィ質量分析(LCMS)、可視分光法、紫外線分光法、または赤外線分光法、ガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、または当業者に利用可能な他の手段由来の読出しのピーク下面積の決定によって定量的に測定し得る。他の実施形態では、薄層クロマトグラフィスポットまたは電気泳動バンドのサイズまたは光学密度を使用して、サンプル中のコレステロールオゾン化生成物を定量し得る。湿式化学アッセイ混合物、有色反応、または免疫アッセイ(例えば、ELISA)の光学密度を使用して、サンプル中のコレステロールオゾン化生成物を定量することもできる。試験サンプルへの曝露の際に脂質負荷を示すマクロファージの比率または数を、試験サンプル中のコレステロールオゾン分解生成物量の定量的測定として使用することもできる。同様に、試験サンプルへの曝露の際にLDLまたはアポタンパク質B100の二次構造の変化の範囲または比率を、試験サンプル中のコレステロールオゾン分解生成物量の定量的測定として使用することもできる。
【0090】
別の実施形態では、このような生成物を、免疫アッセイによって検出し得る。本発明は、式3、4a〜15a、4b〜15b、3c、4c、7c、または10cの任意の化合物に結合し得る抗体および結合構成要素を提供する。本発明は、さらに、コレステロールオゾン化生成物およびこのようなオゾン化生成物のヒドラゾン誘導体に構造的に関連するハプテンに関する。例えば、本発明は、コレステロールのオゾン化生成物およびヒドラゾン生成物と反応し得る抗体を生成するために使用し得る式3c、13a、13b、14a、14b、15a、または15bを有するハプテンを提供する。
【0091】
【化93】

【0092】
【化94】

(抗体および結合構成要素)
本発明は、コレステロールオゾン化生成物の検出および同定に有用なコレステロールオゾン化生成物、ハプテン、および関連コレステロール様分子に指向する抗体調製物および結合構成要素を提供する。例えば、本発明の抗体または結合構成要素は、式3、4a〜15a、4b〜15b、3c、4c、7c、または10cの任意の1つを有する化合物を結合し得る。本明細書中で使用される、用語「結合構成要素」には、コレステロールオゾン化生成物に結合し得る抗体および他のポリペプチドが含まれる。
【0093】
1つの実施形態では、抗体または結合構成要素は、式3、4a〜15a、4b〜15b、3c、4c、7c、または10cの任意の1つを有する化合物に選択的に結合し得る。別の実施形態では、抗体または結合構成要素は、式3、4a〜15a、4b〜15b、3c、4c、7c、または10cを有する1つを超える化合物に結合し得る。抗体調製物の特定の例を、式13a、14a、13b、14b、または15aを有する抗体に対して惹起した。特に、ハイブリドーマKA1−11C5およびKA1−7A6は、式15aを有する化合物に対して惹起された抗体調製物を提供する。ハイブリドーマKA2−8F6およびKA2−1E9は、式14aを有する化合物に対して惹起された抗体調製物を提供する。
【0094】
式15aを有する化合物から惹起されたハイブリドーマKA1−11C5およびKA1−7A6は、ブダペスト条約にしたがって、2003年8月29日にAmerican Type Culture Collection(10801 University Blvd.,Manassas,Va.,20110−2209 USA(ATCC))にATCC受託番号PTA−5427およびPTA−5428として受託された。式14aを有する化合物から惹起されたハイブリドーマKA2−8F6およびKA2−lE9も、ブダペスト条約にしたがって、2003年8月29日にATCCにATCC受託番号PTA−5429およびPTA−5430として受託された。
【0095】
本発明はまた、利用可能な手順によって作製されたコレステロールのオゾン化生成物に結合し得る抗体を提供する。このような抗体の結合ドメイン(例えば、これらの抗体のCDR領域)を、任意の従来の結合構成要素の骨格に導入するかこれと共に使用し得る。
【0096】
免疫グロブリンと呼ばれる血漿タンパク質ファミリーに属する抗体分子、その基本的構成単位、折り畳まれた免疫グロブリン、またはドメインは、免疫系および他の生体認識系の多数の分子において種々の形態で使用される。標準的な抗体は、2つの同一の免疫グロブリン重鎖および2つの同一の軽鎖からなり、分子量が約150,000ダルトンの四量体構造である。
【0097】
抗体の重鎖および軽鎖は、異なるドメインからなる。各軽鎖は、1つの可変ドメイン(VL)および1つの定常ドメイン(CL)を有し、各重鎖は1つの可変ドメイン(VH)および3つまたは4つの定常ドメイン(CH)を有する。例えば、Alzari,P.N.,Lascombe,M.−B.& Poljak,R.J.(1988)Three−dimensional structure of antibodies.Annu.Rev.Immunol.6,555−580を参照のこと。約110個のアミノ酸残基からなる各ドメインは、互いに対してパッケージングされた2つのβシートから形成された特徴的なβ−サンドイッチ構造に折り畳まれる(免疫グロブリン折り畳み)。VHドメインおよびVLドメインはそれぞれループまたはターンであり、ドメインの片端でβ鎖が連結した3つの相補性決定基(CDR1−3)を有する。両軽鎖および重鎖の可変領域は、一般に、抗原特異性に寄与するにもかかわらず、各鎖の特異性への寄与は、常に等しいというわけではない。抗体分子は、6つの無作為化ループ(CDR)によって多数の分子と結合するように進化している。
【0098】
免疫グロブリンを、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して異なるクラスに割り当てることができる。少なくとも以下の5つの主な免疫グロブリンクラスが存在する:IgA、IgD、IgE、IgG、IgM。これらのいくつかを、サブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3、およびIgG−4;IgA−1、IgA−2)にさらに分類し得る。免疫グロブリンのIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMクラスに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれアルファ(α)、ベータ(β)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、およびミュー(μ)と呼ぶ。抗体の軽鎖を、その定常ドメインのアミノ鎖配列に基づいて2つの明確に異なる型(カッパ(κ)およびラムダ(λ))の1つに割り当てることができる。異なる免疫グロブリンクラスのサブユニット構造および三次元高次構造は周知である。
【0099】
抗体の可変ドメインの文脈における、用語「可変」は、可変ドメインの一定の部分が抗体によって広範に異なるという事実をいう。可変ドメインは結合のために存在し、各特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を決定する。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均等に分布していない。代わりに、可変性は、両軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメイン中の超可変領域としても公知の相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つのセグメント中に集中している。
【0100】
可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)領域と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFR領域を含み、大部分はβシート楮構造を取り、3つのCDRによって連結され、ループ連結を形成し、いくつかの場合、βシート構造の一部を形成する。各鎖中のCDRは、FR領域によって極めて近接して別の鎖由来のCDRと互いに保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害性における抗体の関与などの種々のエフェクター機能を示す。
【0101】
したがって、本発明での使用が意図される抗体は、任意の種々の形態(全免疫グロブリン、抗体フラグメント(Fv、Fabなど)、類似のフラグメント、可変ドメイン相補性決定領域(CDR)を含む単鎖抗体などの形態が含まれる)であってよく、本明細書中でその全てが広範に用語「抗体」に含まれる。本発明は、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)の任意の特異性の使用を意図し、特定のコレステロールオゾン化生成物またはその誘導体を認識して免疫反応する抗体に限定されない。
【0102】
さらに、抗体の結合領域(CDR)を、任意の従来の結合構成要素であるポリペプチドの骨格内に配置し得る。好ましい実施形態では、本明細書中に記載の文脈で、式3〜15の任意の化合物ならびにそのハプテンおよび誘導体(ヒドラゾン誘導体が含まれる)に免疫特異性を示す抗体(結合構成要素またはそのフラグメント)を使用する。
【0103】
用語「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部、一般に、抗原結合領域または可変領域をいう。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvフラグメントが含まれる。抗体のパパイン消化により、それぞれ1つの抗原結合部位および残りのFcフラグメントを有する、Fabフラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントが産生される。したがって、Fabフラグメントは、インタクトな軽鎖および1つの重鎖の一部を有する。ペプシン処理により、抗原に架橋し得る2つの抗原結合フラグメントを有するF(ab’)フラグメントおよびpFc’フラグメントと呼ばれる残りのフラグメントが得られる。Fab’フラグメントはペプチド消化抗体の還元後に得られ、インタクトな軽鎖および重鎖の一部からなる。抗体分子あたり2つのFab’フラグメントが得られる。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端への数個の残基の付加により、Fabフラグメントと異なる。
【0104】
Fvは、完全な抗原認識部位および結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、強固に非共有結合した1つの重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの二量体(V−V二量体)からなる。この高次構造では、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してV−V二量体の表面上に抗原結合部位が形成される。集合的に、6つのCDRにより抗体に抗原結合特異性が付与される。しかし、1つの可変ドメイン(すなわち、抗原に特異的なたった3つのCDRしか含まないFvの半分)でさえも抗原を認識して結合する能力を有するが、全結合部位よりも親和性は低い。抗体に関して本明細書中で使用される、「機能的フラグメント」は、Fv、F(ab)、およびF(ab’)フラグメントをいう。
【0105】
さらなるフラグメントには、抗体フラグメントから形成された直鎖抗体、単鎖抗体分子、および多重特異性抗体が含まれ得る。単鎖抗体は、遺伝的に融合した単鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含む遺伝子操作分子である。このような単鎖抗体を、「単鎖Fv」抗体フラグメントまたは「sFv」抗体フラグメントともいう。一般に、Fv集団は、VHドメインとVLドメインとの間にsFvが抗原結合のための望ましい構造を形成し得るポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer−Verlag,N.Y.,pp.269−315(1994)を参照のこと。
【0106】
用語「二重特異性抗体」は、2つの抗原結合部位を有し、前記フラグメントが同一のポリペプチド鎖中で軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)小抗体フラグメントをいう。短すぎて同一鎖上で2つのドメインの間で対合できないリンカーの使用によって、ドメインは、別の鎖の相補性ドメインと強制的に対合させられて2つの抗原結合部位を作製する。二重特異性抗体は、例えば、欧州特許第404,097号;WO93/11161、およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad Sci.USA 90:6444−6448(1993)により完全に記載されている。
【0107】
したがって、本発明で意図する抗体フラグメントは、全長抗体ではない。しかし、このような抗体フラグメントは、全長抗体と比較して類似しているか改善された免疫学的特性を有し得る。このような抗体フラグメントは、約4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、9アミノ酸、約12アミノ酸、約15アミノ酸、約17アミノ酸、約18アミノ酸、約20アミノ酸、約25アミノ酸、約30アミノ酸、またはそれ以上ほどの小ささであり得る。
【0108】
一般に、本発明の抗体フラグメントは、コレステロールのオゾン化生成物に特異的に結合する抗体と比較して類似しているか改善された免疫原性を有する限り、任意の上限サイズを有し得る。例えば、より小さな結合構成要素および軽鎖抗体フラグメントは、抗体フラグメントが軽鎖抗体サブユニットに関連する場合、約200アミノ酸未満、約175アミノ酸未満、約150アミノ酸未満、または約120アミノ酸未満であり得る。さらに、より大きな結合構成要素および重鎖抗体フラグメントは、抗体フラグメントが重鎖抗体サブユニットに関連する場合、約425アミノ酸未満、約400アミノ酸未満、約375アミノ酸未満、約350アミノ酸未満、約325アミノ酸未満、または約300アミノ酸未満であり得る。
【0109】
本発明のコレステロールオゾン化生成物に指向する抗体を、任意の利用可能な手順によって作製し得る。ポリクローナル抗体の調製方法は、当業者に利用可能である。例えば、Green,et al.,Production of Polyclonal Antisera,in:Immunochemical Protocols(Manson,ed.),pages 1−5(Humana Press);Coligan,et al.,Production of Polyclonal Antisera in Rabbits,Rats Mice and Hamsters,in:Current Protocols in Immunology,section 2.4.1(1992)(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0110】
モノクローナル抗体を本発明で使用することもできる。本明細書中で使用される、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体集団から得た抗体をいう。言い換えれば、集団を含む各抗体は、いくつかの抗体で少し存在し得る偶発的な天然に存在する変異以外は同一である。モノクローナル抗体は、特異性が高く、1つの抗原部位に指向する。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)に指向する異なる抗体が含まれるポリクローナル抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の1つの決定基に指向する。その特異性に加えて、他の免疫グロブリンによって汚染されないハイブリドーマ培養によって合成されるという点でモノクローナル抗体は有利である。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の特徴が抗体の実質的に均質の集団から得られた抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生が必要であると解釈されない。
【0111】
本明細書中に記載のモノクローナル抗体には、特に、重鎖および/軽鎖の一部が特定の種由来の抗体中の対応する配列と同一または相補的であるか特定の抗体のクラスまたはサブクラスに属し、残りの鎖が別の種由来の抗体中の配列と同一または相補的であるか別の抗体のクラスまたはサブクラスに属する「キメラ」抗体が含まれる。所望の生物活性を示す限り、このような抗体のフラグメントを使用することもできる。米国特許第4,816,567号;Morrison et al.Proc.Natl.Acad Sci.81,6851−55(1984)を参照のこと。
【0112】
モノクローナル抗体の調製は同様に従来のものである。例えば、Kohler & Milstein,Nature,256:495(1975);Coligan,et al.,sections 2.5.1−2.6.7;およびHarlow,et al.,in:Antibodies:A Laboratory Manual,page 726(Cold Spring Harbor Pub.(1988))(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。種々の十分に確立された技術によってモノクローナル抗体をハイブリドーマ培養物から単離および精製し得る。このような単離技術には、プロテインASepharoseを使用したアフィニティクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、およびイオン交換クロマトグラフィが含まれる。例えば、Coligan,et al.,sections 2.7.1−2.7.12 and sections 2.9.1−2.9.3;Barnes,et al.,Purification of Immunoglobulin G(IgG),in:Methods in Molecular Biology,Vol.10,pages 79−104(Humana Press(1992)を参照のこと。
【0113】
当業者は、抗体のインビトロおよびインビボ操作方法を利用可能である。例えば、本発明で使用されるべきモノクローナル抗体を、上記のハイブリドーマ法によって作製するか、例えば、米国特許第4,816,567号に記載の組換え法によって作製し得る。本発明で使用するためのモノクローナル抗体を、Clackson et al.Nature 352:624−628(1991)およびMarks et al.,J.Mol Biol.222:581−597(1991)に記載の技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0114】
抗体フラグメントの作製方法はまた、当該分野で公知である(例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,(1988)(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。本発明の抗体フラグメントを、抗体のタンパク質分解性加水分解または適切な宿主中での抗体フラグメントをコードする核酸の発現によって調製し得る。従来の全抗体のペプシンまたはパパイン消化方法によって抗体フラグメントを得ることができる。例えば、抗体フラグメントを、F(ab’)と記載される5Sフラグメントが得られるペプシンでの抗体の酵素的切断によって産生し得る。このフラグメントを、チオール還元剤および任意選択的にジスルフィド結合の切断に起因するスルフヒドリル基のための保護基を使用してさらに切断して3.5SFab’1価フラグメントを産生し得る。あるいは、ペプシンを使用した酵素切断により、2つの1価のFab’フラグメントおよびFcフラグメントが直接産生される。これらの方法は、例えば、米国特許第4,036,945号および同第4,331,647号ならびにこれらの含まれる参考文献に記載されている。これらの特許は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0115】
フラグメントがインタクトな抗体によって認識される抗原に結合する限り、1価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成するための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、または他の酵素的、化学的、もしくは遺伝的技術などの他の抗体切断方法を使用することもできる。例えば、Fvフラグメントは、V鎖とV鎖との会合を含む。この会合は、非共有結合であり得るか、可変鎖を分子間ジスルフィド結合によって連結するか、グルタルアルデヒドなどの化学物質によって架橋し得る。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによって連結したV鎖およびV鎖を含む。これらの単鎖抗体結合タンパク質(sFv)を、オリゴヌクレオチドによって連結されたVドメインおよびVドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子の構築によって調製する。構造遺伝子を発現ベクターに挿入し、その後大腸菌などの宿主細胞に移入する。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチド内に1つのポリペプチド鎖を合成する。sFvの産生方法は、例えば、Whitlow,et al.,Methods:a Companion to Methods in Enzymology,Vol.2,page 97(1991);Bird,et al.,Science 242:423−426(1988);Ladner,et al,US Patent No.4,946,778;and Pack,et al.,Bio/Technology 11:1271−77(1993)に記載されている。
【0116】
抗体フラグメントの別の形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、しばしば、抗原認識および結合に関与する。CDRペプチドを、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子のクローニングまたは構築によって得ることができる。このような遺伝子を、例えば、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためのポリメラーゼ連鎖反応の使用によって調製する。例えば、Larrick,et al.,Methods:a Companion to Methods in Enzvmology,Vol.2,page 106(1991)を参照のこと。
【0117】
本発明は、ヒト形態および非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態を意図する。このようなヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、または抗体の他の抗原結合サブシーケンスなど)である。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0118】
いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を、対応する非ヒト残基に沈関する。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体や移入されたCDR中に見出されない残基またはフレームワーク配列を含み得る。抗体の製法をさらに洗練および至適化するためにこれらの修飾を行う。一般に、ヒト化抗体は、実質的に全ての少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインを含み、全てまたは実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、且つ、全てまたは実質的に全てのFR領域が非と免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体は、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321,522−525(1986);Reichmann et al.,Nature 332,323−329(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.2,593−596(1992);Holmes,et al.,J.Immunol.,158:2192−2201(1997)and Vaswani,et al.,Annals Allergy,Asthma & Immunol.,81:105−115(1998)を参照のこと。
【0119】
抗体を生成するために標準化された手順を利用可能であるが、抗体のサイズ、抗体の多鎖構造、および抗体中に存在する6つの結合ループの複雑さは、抗体の改良および大量製造の障害となっている。したがって、本発明は、さらに、コレステロールのオゾン化生成物を認識して結合し得るポリペプチドを含む結合構成要素の使用を意図する。
【0120】
多数のタンパク質は、コレステロールオゾン化生成物の結合ドメインが結合して適切な結合構成要素を形成し得るタンパク質足場として役立ち得る。結合ドメインは、本発明のコレステロールオゾン化生成物と結合するか相互作用する一方で、タンパク質足場は結合ドメインが結合し得るように結合ドメインを保持して安定化するのみである。多数のタンパク質足場を使用し得る。例えば、ファージキャプシドタンパク質を使用し得る。Clackson & Wells,Trends Biotechnol.12:173−184(1994)の概説を参照のこと。ファージキャプシドタンパク質は、無作為なペプチド配列(ウシ膵臓トリプシンインヒビター(Roberts et al.,PNAS 89:2429−2433(1992))、ヒト成長ホルモン(Lowman et al.,Biochemistry 30:10832−10838(1991)),Venturini et al.,Protein Peptide Letters 1:70−75(1994))、およびストレプトコッカスのIgG結合ドメイン(O’Neil et al.,Techniques in Protein Chemistry V(Crabb,L,.ed.)pp.517−524,Academic Press,San Diego(1994))が含まれる)の表示のための足場として使用されている。これらの足場は、コレステロールオゾン化生成物の結合ドメインを含むように修飾し得る単一の無作為化ループまたは領域を表示した。
【0121】
研究者らは、線状ファージM13上の提示足場として小さな74アミノ酸のα−アミラーゼインヒビターであるTendamistatも使用している。McConnell,S.J.,& Hoess,R.H.,J.Mol.Biol.250:460−470(1995)。Tendamistatは、ストレプトマイセス・テンダエ(Streptomycestendae)由来のβシートタンパク質である。これは、結合ペプチドの魅力的な足場となる多数の特徴(そのサイズ、安定性、高分解能NMR、およびX線結晶データが含まれる)を有する。Tendamistatの全トポロジーは、一連のループによって連結された2つのβシートを有する免疫グロブリンドメインの全トポロジーと類似する。免疫グロブリンドメインと対照的に、Tendamistatのβシートは1つよりもむしろ2つのジスルフィド結合とともに保持され、これによりタンパク質の相当な安定性が説明される。Tendamistatのループは、免疫グロブリンで見出されたCDRループに類似の機能を付与し、インビトロ変異誘発によって容易に無作為化し得る。Tendamistatは、ストレプトマイセス・テンダエに由来し、ヒトで抗原性を示し得る。したがって、Tendamistatを使用する結合構成要素を、インビトロで使用することが好ましい。
【0122】
フィブロネクチンIII型を、結合構成要素が結合し得るタンパク質足場としても使用されている。フィブロネクチンIII型は、免疫グロブリンスーパーファミリーの巨大なサブファミリーの一部(Fn3ファミリーまたはs型Igファミリー)である。タンパク質足場または結合構成要素(例えば、CDRペプチド)としてのこのようなフィブロネクチンIII型ドメインの使用のための配列、ベクター、およびクローニング法は、例えば、米国特許公開公報20020019517に記載されている。Bork,P.& Doolittle,R.F.(1992)Proposed acquisition of an animal protein domain by bacteria.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,8990−8994;Jones,E.Y.(1993)The immunoglobulin superfamily Curr.Opinion Struct.Biol.3,846−852;Bork,P.,Hom,L.& Sander,C.(1994)The immunoglobulin fold.Structural classification,sequence patterns and common core.J.Mol.Biol.242,309−320;Campbell,1.D.& Spitzfaden,C.(1994)Building proteins with fibronectin type III modules Structure 2,233−337;Harpez,Y.& Chothia,C.(1994)も参照のこと。
【0123】
免疫系では、特異的抗体を、巨大ライブラリー(親和性成熟)から選択および増幅する。免疫細胞で使用される組み合わせ技術を、変異誘発および結合構成要素の組み合わせライブラリーの生成によって模倣し得る。したがって、変異結合構成要素、抗体フラグメント、および抗体を、ディスプレイ型技術によって生成することもできる。このようなディスプレイ型テクノロジーには、例えば、ファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、および他の技術が含まれる。当該分野で利用可能な技術を、結合構成要素ライブラリーの生成、これらのライブラリーのスクリーニングに使用することができ、選択された結合構成要素を、親和性成熟などのさらなる成熟に供し得る。Wright and Harris,supra.,Hanes and Plucthau PNAS USA 94:4937−4942(1997)(リボソームディスプレイ),Parmley and Smith Gene 73:305−318(1988)(ファージディスプレイ),Scott TIBS 17:241−245(1992),Cwirla et al.PNAS USA 87:6378−6382(1990),Russel et al.Nucl.Acids Research 21:1081−1085(1993),Hoganboom et al.Immunol.Reviews 130:43−68(1992),Chiswell and McCafferty TIBTECH 10:80−84(1992)、および米国特許第5,733,743号。
【0124】
したがって、本発明は、親和性、選択性、結合強度、および/または他の所望の性質を最適にするための抗体、CDR、または結合ドメインの変異方法も提供する。変異結合ドメインは、選択された結合ドメイン(例えば、CDR)のアミノ酸配列変異型をいう。一般に、変異結合ドメイン中の1つまたは複数のアミノ酸残基は、基準結合ドメイン中に存在するアミノ酸残基と異なる。このような変異抗体は、必然的に基準アミノ酸配列と100%未満配列が同一であるか類似している。一般に、変異結合ドメインは、基準結合ドメインのアミノ酸配列と少なくとも75%のアミノ酸配列が同一であるか類似している。好ましくは、変異結合ドメインは、基準結合ドメインのアミノ酸配列と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列が同一であるか類似している。
【0125】
例えば、ファージディスプレイを使用した親和性成熟を、変異結合ドメインの1つの生成方法として利用し得る。ファージディスプレイを使用した親和性成熟は、Lowman et al.,Biochemistry 30(45):10832−10838(1991)に記載の過程をいう。Hawkins et al.,J.Mol Biol.254:889−896(1992)も参照のこと。以下の記述に完全に制限されないが、この過程を、各部位で全ての可能なアミノ酸置換を行う目的で、多数の異なる部位でのいくつかの結合ドメインまたは抗体超可変領域の変異を含むと簡単に説明し得る。このようにして生成された結合ドメイン変異体を、1価様式で融合タンパク質として線状ファージ粒子から表示する。一般に、M13の遺伝子III産物に融合する。種々の変異体を発現するファージを、目的の特性(例えば、結合親和性または選択性)のためのいくつかの選択ラウンドによって循環させることができる。目的の変異体を単離し、配列決定する。このような方法は、米国特許第5,750,373号、米国特許第6,290,957号、およびCunningham,B.C.et al.,EMBO J.13(11),2508−2515(1994)にさらに詳述されている。
【0126】
したがって、1つの実施形態では、本発明は、コレステロールオゾン化生成物を認識する改良された結合特性を有する結合構成要素、抗体、および抗体フラグメントを生成するための結合構成要素もしくは抗体ポリペプチドまたはこれらをコードする核酸の操作方法を提供する。
【0127】
このような既存の結合構成要素または抗体の一部の変異方法は、コレステロールオゾン化生成物の結合ドメインをコードするポリペプチドをコードする核酸をファージの外殻タンパク質をコードする核酸に融合して融合タンパク質をコードする組換え核酸を生成する工程と、融合タンパク質をコードする組換え核酸を変異して変異融合タンパク質をコードする変異核酸を生成する工程と、ファージ表面上で組換え融合タンパク質を発現する工程と、コレステロールのオゾン化生成物に結合するファージを選択する工程とを含む。
【0128】
したがって、本発明は、コレステロールオゾン化生成物、ハプテン、またはコレステロール誘導体を認識して結合し得る抗体、抗体フラグメント、および結合構成要素ポリペプチドを提供する。本発明は、さらに、結合特性または他の望ましい特性(例えば、安定性、サイズ、使用しやすさ)を最適にするための抗体、抗体フラグメント、および結合構成要素ポリペプチドの製造方法を提供する。
【0129】
このような抗体、抗体フラグメント、および結合構成要素ポリペプチドを、抗体の存在の検出に有用な標識またはレポーター分子を含むように修飾し得る。本明細書中で使用される、標識またはレポーター分子は、抗体に直接または間接的に会合することができ、且つそれにより測定可能且つ検出可能なシグナルが直接または間接的に得られる任意の分子である。当業者に利用可能な多数のこのような標識を、抗体または結合構成要素に組み込むかカップリングし得る。本発明の抗体および結合構成要素との使用に適切な標識の例には、放射性同位体、蛍光分子、リン光分子、酵素、二次抗体、およびリガンドが含まれる。
【0130】
適切な蛍光標識の例には、フルオレセイン(FITC)、5,6−カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル(NBD)、クマリン、ダンシルクロライド、ローダミン、4’−6−ジアミジノ−2−フェニリノドール(DAPI)、およびシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、およびCy7が含まれる。いくつかの実施形態では、蛍光標識は、フルオレセイン(5−カルボキシフルオレセイン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)またはローダミン(5,6−テトラメチルローダミン)である。いくつかの実施形態で使用した組み合わせ多色体(multicolor)には、FITCならびにシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、およびCy7が含まれる。これらの蛍光色素の吸収極大および発光極大は、それぞれ、FITC(490nm;520nm)、Cy3(554nm;568nm)、Cy3.5(581nm;588nm)、Cy5(652nm:672nm)、Cy5.5(682nm;703nm)、およびCy7(755nm;778nm)であるため、同時検出が可能である。このような蛍光標識を、種々の販売者(Molecular Probes,Eugene.ORおよびResearch Organics,Cleveland,Ohio)から得ることができる。
【0131】
その後、抗体またはビオチンなどの結合構成要素に組み込まれる検出標識を、当該分野で利用可能な感度の高い方法を使用して検出し得る。例えば、ビオチンを、ビオチンに結合するストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ抱合体(Tropix.,Inc.)を使用して検出することができ、その後、適切な基質(例えば、化学発光基質CSPD:3−(4−メトキシスピロ−[1,2,−ジオキシエタン−3−2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.1.sup.3,7]デカン]−4−イル)フェニルリン酸二ナトリウム;Tropix,Inc.))の化学発光によって検出し得る。
【0132】
2つまたはそれ以上のこれらのレポーター分子または検出標識と組み合わせた分子を、本発明で使用することもできる。任意の公知の検出標識を、開示の抗体、抗体フラグメント、結合構成要素、および方法と共に使用し得る。検出標識によって得られたシグナルの検出および測定方法はまた、当業者に利用可能である。例えば、シンチレーションカウンティングまたは直接視覚化によって放射性同位体を検出することができ、蛍光分光光度計を使用して蛍光分子を検出することができ、スキャナまたは分光計を使用してリン高分子を検出するか、カメラで直接視覚化することができ、酵素によって触媒された反応生成物の視覚化によって酵素を検出し得る。このような方法を、開示のコレステロールのオゾン化生成物の検出方法で直接使用し得る。
【0133】
(コレステロールオゾン化生成物のアッセイ)
当業者に利用可能な任意のアッセイを、コレステロールオゾン化生成物の検出のために使用することができ、このアッセイには、コレステロールオゾン化を示すコレステロールハプテンまたはコレステロール誘導体の検出アッセイが含まれる。例えば、アッセイは、質量分析、ガスもしくは液体クロマトグラフィ、核磁気共鳴、赤外分光法、紫外分光法、可視分光法、または高速液体クロマトグラフィを使用し得る。いくつかの実施形態では、任意の化合物3、4a〜15a、3c、4c、7c、10c、または4b〜15bの検出のために免疫アッセイを使用し得る。
【0134】
アッセイを使用して、種々の供給源(血清、血漿、血液、リンパ、組織(例えば、プラークサンプル)、唾液、尿、便、および哺乳動物由来の他の生体サンプルが含まれる)から得た試験サンプル中のコレステロールのオゾン化生成物を検出し得る。いくつかの実施形態では、試験サンプルは組織サンプルである。しかし、他の実施形態では、試験サンプルは、尿、血液、または血漿などの体液である。哺乳動物被験体由来のこのようなサンプルの評価により、非浸襲性の血管疾患の診断が可能である。例えば、哺乳動物の体液を被験体から採取し、サンプル流動物中の放出因子または細胞上の膜結合因子のいずれかとしてコレステロールオゾン化生成物についてアッセイし得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、免疫アッセイを使用する。このような免疫アッセイは、当業者が利用可能な任意のアッセイ方法を含み得る。免疫アッセイの例には、放射性アッセイ、競合結合アッセイ、サンドイッチアッセイ、および免疫沈降アッセイが含まれる。本発明の結合構成要素を組み合わせ、本明細書中に記載の検出可能な標識に結合し得る。使用する標識の選択は適用によって変化し、当業者が選択し得る。
【0136】
本発明の実施では、検出可能な標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素、常磁性イオン、常磁性イオンのキレート、ビオチン、フルオロフォア、発色団、重金属、重金属のキレート、X線を通さない化合物もしくは元素、放射性同位体、または放射性同位体のキレートであり得る。
【0137】
検出可能な標識として有用な放射性同位体には、ヨウ素−123、ヨウ素−125、ヨウ素−128、ヨウ素−131、またはクロム−51、コバルト−57、ガリウム−67、インジウム−111、インジウム−113m、水銀−197、セレン−75、タリウム−201、テクネチウム−99m、鉛−203、ストロンチウム−85、ストロンチウム−87、ガリウム−68、サマリウム−153、ユーロピウム−157、イットリウム−169、亜鉛−62、もしくはレニウム−188のキレート化金属などの同位体が含まれる。
【0138】
検出可能な標識として有用な常磁性イオンには、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジウム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)またはイッテルビウム(III)などのイオンが含まれる。
【0139】
放射性免疫アッセイは、典型的には、結合構成要素(例えば、抗体)とコレステロールオゾン化生成物との間の複合体の測定における放射能を使用する。このような方法では、結合構成要素を放射性標識する。結合構成要素を、非標識コレステロールオゾン化生成物と反応させる。次いで、放射性標識複合体を、例えば、沈殿およびその後の遠心分離によって非結合物質から分離する。一旦放射性標識結合構成要素とコレステロールオゾン化生成物との間の複合体が非結合物質から分離されと、複合体を、放射線の直接的測定またはデフェニルオキサゾール(DPO)などの蛍光分子に対する放射性標識の効果の観察のいずれかによって定量する。後者のアプローチは、放射能があまり必要なく、より感度が高い。シンチレーションと呼ばれるこのアプローチは、Hまたは32Pなどの放射性標識によって励起された色素溶液の蛍光透過を測定する。結合範囲を、蛍光粒子から放出された蛍光強度の測定によって決定する。シンチレーション近接アッセイ(SPA)と呼ばれるこの方法は、非結合放射性結合構成要素を洗浄することなくinsituで形成された結合構成要素複合体に結合し得るという利点を有する。
【0140】
競合結合アッセイは、標識標準が試験サンプル分析物と一定限度の量の結合構成要素との結合について競合する能力に依存する。標識標準は、コレステロールのオゾン化生成物またはその免疫学的反応性ハプテンもしくは誘導体であり得る。試験サンプルの量は、結合構成要素に結合するようになる標準の量に反比例する。結合するようになる標準の量の決定を容易にするために、一般に、使用される結合構成要素を、競合前または競合後のいずれかで不溶性にする。結合構成要素に結合した標準および分析物を、結合しないままである標準および分析物から都合良く分離し得るようにこれを行う。
【0141】
サンドイッチアッセイは、それぞれ検出すべき生成物の異なる免疫学的部分(すなわち、エピトープ)に結合し得る2つの結合構成要素の使用を含む。サンドイッチアッセイでは、試験サンプル分析物を、固体支持体上に固定された第1の結合構成要素によって結合し、その後第2の結合構成要素が分析物に結合し、それにより不溶性の3つの部分を有する複合体が形成される(David& Greene、米国特許第4,376,110号)。検出可能な部分を使用して第2の結合構成要素自体を標識するか(直接サンドイッチアッセイ)、第2の結合構成要素に結合する第3の結合構成要素を使用して測定することができ、検出可能な部分で標識する(間接的サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1つの型は、ELISAアッセイであり、この場合、検出可能な部分は酵素である。
【0142】
典型的には、サンドイッチアッセイには、固定化結合構成要素とコレステロールオゾン化生成物との間の二成分(binary)固相複合体の形成によってサンプルからコレステロールオゾン化生成物を抽出するために固相に結合した結合構成要素を最初に試験されるサンプルと染色させる「順方向(forward)」アッセイが含まれる。適切なインキュベーション期間後、固体支持体を洗浄して非結合流動物サンプル(存在する場合、未反応のコレステロールオゾン化生成物)を除去する。次いで、固体支持体を、未知の量の標識した結合構成要素(標識またはレポーター分子として機能する)を含む溶液と接触させる。標識結合構成要素が固定化した結合構成要素とコレステロールオゾン化生成物との複合体と反応させるための第2のインキュベーション期間後、固体支持体を2回洗浄して未反応の標識結合構成要素を除去する。この順方向サンドイッチアッセイ型は、コレステロールオゾン化生成物が試験サンプル中に存在するかどうかを決定するための簡潔な「イエス/ノー」アッセイであり得る。
【0143】
使用し得る他のサンドイッチアッセイ型には、いわゆる「同時」および「逆」アッセイが含まれる。同時アッセイは、標識および非標識結合構成要素の両方が同時に試験されるサンプルに曝露される単一のインキュベーション工程を含む。非標識結合構成要素が固体支持体上に固定される一方で、標識結合構成要素は試験サンプルを含む溶液中で遊離する。インキュベーションの完了後、固体支持体を洗浄して、未反応サンプルおよび非複合体化標識結合構成要素を除去する。次いで、固体支持体に会合した標識結合構成要素の存在を、従来の「順方向」サンドイッチアッセイで行われるように決定する。
【0144】
「逆」アッセイでは、段階的添加を使用し、最初に標識結合構成要素の溶液を試験サンプルに添加し、その後に固体支持体に結合した非標識結合構成要素の溶液を添加する。第2のインキュベーション後、固相を従来の様式で洗浄して固相から試験されるサンプルの残渣および未反応の標識結合構成要素溶液を遊離する。「同時」および「順方向」アッセイと同様に、固体支持体に会合した標識結合構成要素を決定する。
【0145】
その診断的有用性に加えて、本発明の結合構成要素は、組織、細胞、または血清サンプル中のコレステロールオゾン化生成物レベルの長期間の試験による被験体の血管疾患の進行のモニタリングに有用である。長期間にわたるコレステロールオゾン化生成物レベルの変化は、被験体の血管疾患または心疾患のさらなる進行を示し得る。
【0146】
(血管疾患)
本発明によって診断される血管疾患は、哺乳動物の血管疾患である。用語「哺乳動物」は、任意の哺乳動物を意味する。哺乳動物のいくつかの例には、ブタ、ウシ、ヒツジ、およびヤギなどの家畜;マウスおよびラットなどの実験動物;サル、類人猿、およびチンパンジーなどの霊長類;ならびにヒトが含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の方法によってヒトを診断することが好ましい。
【0147】
本発明は、血管の病態、コレステロールの沈着を含む循環の病態、およびコレステロールのオゾン化を検出または診断する方法に関する。このような病態は、解剖学的部位または系内の血管の喪失、損傷、または破壊に関連する。用語「血管の病態」または「血管疾患」は、血流に障害があるか、障害があるようになり得る脈管組織の状態をいう。
【0148】
多数の病的状態により、コレステロール沈着に関連する血管疾患を引き起こし得る。本発明の組成物および方法を使用して検出または診断し得る血管病態の例には、アテローム性動脈硬化症(動脈硬化)、子癇前症、末梢血管疾患、心疾患、および脳卒中が含まれる。したがって、本発明は、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、急性冠動脈症候群(不安定狭心症、血栓症、および心筋梗塞が含まれる)、プラークの破裂、冠動脈もしくは末梢動脈の原発性および続発性(ステント内)再狭窄、移植誘導性硬化症、末梢四肢疾患、間欠性跛行症、および糖尿病性合併症(虚血性心疾患、末梢動脈疾患、鬱血性心疾患、網膜症、神経障害、および腎症が含まれる)、または血栓症などの疾患の治療方法に関する。
【0149】
(キット)
試験サンプル中のコレステロールオゾン化生成物の検出のためのキットも本発明に含まれる。1つの実施形態では、キットは、コレステロールのオゾン化生成物に特異的に結合する結合構成要素または抗体を含むコンテナを含む。結合構成要素または抗体は、直接結合するか間接的に会合する検出標識またはレポーター分子を有し得る。任意の従来の免疫アッセイ手順で使用するために必要に応じて、結合構成要素または抗体を液体形態で提供することもできるか、固相に結合し得る。
【0150】
本発明のキットは、例えば、コレステロールのオゾン化生成物のアッセイにおけるコントロールまたは標準として使用し得るコレステロールのオゾン化生成物を含む別のコンテナも含み得る。
【0151】
本発明のキットは、コレステロールと反応して任意の結合構成要素または本発明の抗体によって容易に検出し得る生成物を生成し得る試薬を含む別のコンテナをさらに含み得る。
【0152】
本発明のキットはまた、結合構成要素、抗体、または結合構成要素/抗体とコレステロールのオゾン化生成物との複合体の検出のための検出標識またはレポーター分子を含む第3のコンテナを含み得る。
【0153】
これらのキットはまた、試験サンプル(血液、血漿、血清、尿、唾液、および便など)の回収に有用なツールを含むコンテナを含み得る。このようなツールには、血液を採取および安定化するための乱切刀、チューブ、および吸湿紙または吸湿布;唾液を採取および安定化するための綿棒;尿または便サンプルの採取および安定化するためのカップが含まれる。チューブ、紙、布、綿棒、およびカップなどの採取用材料を、任意選択的に、サンプルの変性または不可逆的吸収を回避するように処理し得る。これらの採取用材料を、試料の完全性の維持を補助するために防腐剤、安定剤、または抗菌薬で処理するかこれらを含むこともできる。
【0154】
本発明は、さらに、以下の非限定的な実施例によって例示する。
【実施例】
【0155】
(実施例1:材料および方法)
本実施例は、本明細書中に記載のいくつかの実験のための材料と方法を提供する。
【0156】
(アテローム硬化性動脈試料の手術による単離および取扱い。)組織サンプルを、頸動脈内膜摘除術によって得た。サンプルはアテローム硬化性プラークおよびいくつかの接着性動脈内膜および中膜を含んでいた。プラーク分析プロトコールは、Scripps Clinic Human Subjects Committeeによって承認されており、手術前に患者の承諾を得ていた。新鮮な頸動脈内膜摘除組織を、外科切除の30分以内に分析した。プラークサンプルは保存も貯蔵も行わなかったことに留意のこと。全ての分析操作を、外科切除から2時間以内に完了した。試料に固定液を添加しなかった。
【0157】
(ヒトアテローム硬化性動脈によるインディゴカルミン1の酸化。)上記のように単離した血管内膜切除試料(n=15)を、ほぼ同湿重量(±5%)の2つの切片に分割した。各試料を、インディゴカルミン1(200μM、Aldrich)およびウシカタラーゼ(100μg)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS(pH7.4)、1.8mL)に入れた。オゾンの化学的トラップ(chemicaltrap)として作用させるためにインディゴカルミン1を添加した。Takeuchi et al.,Anal.Chim.Acta 230,183(1990);Takeuchi et al.,Anal.Chem.61,619(1989)。プロテインキナーゼCのアクチベーターとしてミリスチン酸ホルボール(PMA、40μgを含む0.2mLDMSO)またはDMSO(0.2mL)を添加した。各サンプルを、組織ホモジナイザーを使用して10分間ホモジナイズし、遠心分離した(10,000rpmで10分間)。上清をデキャントし、フィルター(0.2μm)を通過させ、濾過物を、定量的HPLCを使用してスルホン酸イサチン2の存在について分析した。
【0158】
図1Bに示すように、インディゴカルミン1の可視吸光度は漂白され、反応によって新規の化学種が得られ、これを定量的HPLC(表1)を使用して検出し、スルホン酸イサチン2として同定した(図1Aも参照のこと)。
【0159】
(スルホン酸イサチン2の定量のためのHPLCアッセイ。)L−7200オートサンプラー、L−7100ポンプ、およびL−7400紫外線検出器(254nm)を具備するHitachiD−7000装置にてHPLC分析を行った。Dell GX150 PCコンピュータでHitachi−HSMソフトウェアを使用して、L−7100を制御した。LC条件は、SpherisorbRP−C18カラムおよび1.2mL/分でのアセトニトリル:水(0.1%TFA)(80:20)移動相であった。スルホン酸イサチン2の保持時間(R)は約9.4分であった。Macintosh用のGraphPadv3.0ソフトウェアを使用して、標準サンプルの濃度に対するピーク領域と検量線に対するピーク領域との比較によって定量した。(表1)
(表1)
(活性化アテローム硬化性動脈材料によって形成されたスルホン酸イサチン2(ISA))
【0160】
【表1】

(H18Oにおけるヒトアテローム硬化性動脈試料によるインディゴカルミン1の酸化。)以下の例外以外は上記のインディゴカルミン1アッセイにおいて本実験を行った。第1に、各プラーク試料(n=2)を、95%を超えるH18Oを含むリン酸緩衝液(10mM(pH7.4))に添加した。第2に、濾過物を、PD10カラムで脱塩し、Finneganエレクトロスプレー質量分析計による陰イオンエレクトロスプレー質量分析によって分析した。イオン存在率の生データを、プレゼンテーションのためにGraphpadPrismv3.0フォーマットに抽出した。
【0161】
これらの実験は、プラーク物質およびH18O(95%超の18O)の存在下で、18O同位体がスルホン酸イサチン2のラクタムカルボニルに組み込まれたことを示す。オゾンのみがインディゴカルミン1の二重結合を酸化的に切断してH18O由来のスルホン酸イサチン2のラクタムカルボニルへの同位体組み込みを促進し得るため、オゾンはインディゴカルミン1を酸化する活性酸素種である可能性が高かった。したがって、アテローム硬化性病変内にオゾンが生成される。P.Wentworth Jr.et al.,Science 298,2195(2002);B.M.Babior,C.Takeuchi,J.Ruedi,A.Guitierrez,P.Wentworth Jr.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,3920(2003);P.Wentworth Jr.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,1490(2003)も参照のこと。
【0162】
(アテローム硬化性動脈試料からのアルデヒドの抽出および誘導体化手順。)上記のように単離した血管内膜切除試料を、ほぼ同湿重量(±5%)の2つの切片に分割した。各試料を、ウシカタラーゼ(100μg)およびミリスチン酸ホルボール(40μgを含む0.2mLDMSO)またはDMSO(0.2mL)のいずれかを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS(pH7.4)、1.8mL)に入れた。各サンプルを、組織ホモジナイザーを使用して10分間ホモジナイズした。次いで、上記のように単離したホモジナイズした血管内膜切除サンプルを、ジクロロメタン(DCM、3×5mL)で洗浄した。合わせた有機画分を、真空蒸発させた。残渣を、エタノール(0.9mL)に溶解し、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(100μL、2mM、および1NHCl)のエタノール溶液を添加した。溶液に窒素を5分間吹き込み、その後溶液を2時間撹拌した。得られた懸濁液を、0.22μmのフィルターで濾過し、濾過物を、HPLCアッセイ(以下を参照のこと)によって分析した。コレステロール3(1〜20μM)をこれらの条件下で処理した場合、4aや5aは形成されなかった。PMA添加の前後でのアテローム性動脈抽出物中の4bの検出量を、動脈抽出物中の4aレベルに対するPMA添加の有意性(p<0.05を有意であると見なした)を決定するために両側スチューデントt検定分析に供し、Macintosh用のGraphPadv3.0ソフトウェアを使用して決定した。
【0163】
これらの条件下での誘導体化中に、4aの濃度範囲にわたって(5〜100μM)約20%の4aが5bに変換された。これらのデータは、5aの測定量が、同一のプラークサンプル中に存在する4aの20%を超えて、3のオゾン分解およびその後のアルドール化から得られたことを示す。使用した誘導体化条件下での4aの6bへの変換範囲は、一貫して、4aの濃度範囲にわたって2%未満(5〜100μM)であった。これらの所見は、ケトアルデヒド4a量の2%を超えるプラーク抽出物内に存在する6aの量が誘導体化前に存在し、水のβ脱離によってオゾン分解生成物から得られたことを示す。
【0164】
3つの主なヒドラゾン生成物4b〜6bに加えて、7aのヒドラゾン誘導体(7bと呼ばれる)は、いくつかのプラーク抽出物中にて微量で(5pmol/mg未満)検出された(R約26分、[M−H]579、SOM図2および4)。化合物7aは、5aのA環脱水生成物である。誘導体化プラーク抽出物中の7bの量は、使用したHPLCアッセイの検出限界付近であったため、全プラークサンプル中のこの化合物の完全な分析による調査を行わなかった。化合物7aおよび7bの高次構造の割り当ては、合成材料7bのH−HROESY実験に基づいていた。
【0165】
【化95】

化合物6b、7a、7b、8a、および9aの合成調製物を、図4においてR約26分ピーク[M−H]579を有する化合物の同定のために使用した。
【0166】
(ヒドラゾンのHPLC−MS分析。)L−7200オートサンプラー(標準注入体積10μL)、L−7100ポンプ、L−7400紫外線検出器(360nm)またはL−7455ダイオードアレイ検出器(200〜400nm)のいずれかおよびインラインM−8000イオントラップ質量分析器(陰イオンモード)を具備するHitachiD−7000装置にてHPLC−MS分析を行った。Dell GX150 PCコンピュータでHitachi−HSMソフトウェアを使用して、L−7100およびM−8000を制御した。VydecC18逆相カラムを使用してHPLCを行った。0.5mL/分で定組成移動相(75%アセトニトリル、20%メタノール、および5%水)を使用した。HitachiD7000クロマトグラフィステーションソフトウェアを使用してピークの高さおよび面積を決定し、標準物質の検量線との比較によって濃度に変換した。これらの条件下で、ヒドラゾン4b〜6bの検出限界は1〜10nMであった。このHPLCシステムを使用して、シスおよびトランスヒドラゾン異性体は解析されなかった。
【0167】
抽出および誘導体化されたアテローム硬化性物質の代表的HPLC−MSを図4に示す。重要なヒドラゾン生成物のいくつかの標準サンプルの保持時間および質量比を表2に示す。
(表2 標準ヒドラゾンのLCMS分析)
【0168】
【表2】

上記の誘導体化手順によって標準アルデヒド8aのヒドラゾンを調製し、アルデヒド8aは適切に合成および精製されなかった。上記の誘導体化手順によって市販のケトン9aのヒドラゾンを調製し、適切に合成および精製されなかった。上記の誘導体化手順によって標準アルデヒド10aのヒドラゾンを調製し、適切に合成および精製されなかった。紫外線スペクトルに基づいて8bと9bとを区別した(HitachiL−7455ダイオードアレイ検出器(200〜400nm)によって測定)。α、β不飽和ヒドラゾン8bのλmaxは435nmであり、ヒドラゾン9bのλmaxは416nmであった。
【0169】
(アルデヒド4aおよび5aについての血漿サンプルの分析。)血漿サンプルを、24時間以内に頸動脈内膜摘除術を計画している患者(n=8)から得た。全てのこのような血漿サンプルを、サンプル採取から3日後に4aおよび5aの存在について分析した。コントロール血漿サンプルを、一般的な診療所に通院している無作為な患者(n=15)から得て、採取から7日後に分析した。典型的な手順では、EDTA(1mL)中の血漿を、ジクロロメタン(DCM、3×1mL)で洗浄した。合わせた有機画分を真空蒸発させた。残渣を、メタノール(0.9mL)に溶解し、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(100μL、0.01M、Lancaster)および1NHClを含むエタノール溶液を添加した。溶液に窒素を5分間吹き込み、溶液を2時間撹拌した。得られた溶液を、0.22μmのフィルターで濾過し、濾過物を、HPLCアッセイ(以下を参照のこと)によって分析した。予備調査により、血漿から抽出し得る5aの量が1日あたり約5%減少することが明らかとなった。
【0170】
(標準サンプル4a、4b、5a、5b、6a、6b、7a、7b、8a、および8bの調製。)
(一般的方法。)他で記載しない限り、全ての反応を、不活性雰囲気下で、乾燥試薬、溶媒、および火炎乾燥(flame−dried)ガラス製品を使用して行った。全ての出発材料を、Aldrich、Sigma、Fisher、またはLancasterから購入し、入手したままの状態で使用した。ケトン9aを、Aldrichから得た。シリカゲル60(230〜400メッシュ)を使用して、全てのフラッシュカラムクロマトグラフィを行った。Merck(0.25、0.5、または1mm)コーティングシリカゲルKieselgel60F254プレートを使用して、分離薄層クロマトグラフィ(TLC)を行った。Bruker AMX−600(600 MHz)、AMX−500(500 MHz)、AMX−400(400 MHz)、またはAC−250(250 MHz)分光計にてH NMRスペクトルを記録した。Bruker AMX−500(125.7 MHz)またはAMX−400(100.6 MHz)分光計にて13C NMRスペクトルを記録した。化学シフトを、内部標準からδスケールにてパーツ・パー・ミリオン(ppm)で報告する。VG ZAB−VSEにて高分解能質量スペクトルを記録した。
【0171】
(3β−ヒドロキシ−5−オキソ−5,6−セココレスタン−6−アール(4a))。この化合物を、一般的に、K.Wang,E.Bermudez,W.A.Pryor,Steroids 58,225(1993)に記載のように合成した。コレステロール3(1g、2.6mmol)を含むクロロホルム−メタノール(9:1)溶液(100mL)を、ドライアイス温度で10分間オゾン化した。反応混合物を、蒸発させ、Zn粉末(650mg、10mmol)を含む水−酢酸(1:9、50mL)と共に室温で3時間撹拌した。還元混合物を、ジクロロメタン(100mL)で希釈し、水(3×50mL)で洗浄した。合わせた有機画分を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で蒸発乾燥させた。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−ヘキサン(25:75))を使用して精製して、白色固体として表題化合物4a(820mg、76%)を得た:
【0172】
【化96】


【0173】
(3β−ヒドロキシ−5−オキソ−5,6−セココレスタン−6−アールの2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン(4b))。この化合物を、一般的に、K.Wang,E.Bermudez,W.A.Pryor,Steroids 58,225(1993)に記載のように合成した。2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(52mg、0.26mmol)およびp−トルエンスルホン酸(1mg、0.0052mmol)を、ケトアルデヒド4a(100mg、0.24mmol)のアセトニトリル溶液(10mL)に添加した。反応混合物を室温で4時間撹拌し、真空下で蒸発乾燥させた。残渣を酢酸エチル(10mL)に溶解し、水(3×20mL)で洗浄した。合わせた有機物を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で蒸発乾燥させた。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−ヘキサン(1:4))によって精製して、黄色固体(100mg、70%)であり、且つシス異性体とトランス異性体との混合物(1:4)として表題化合物4bを得た。ヘキサン−塩化メチレンからの結晶化により、黄色ニードル(30mg、21%)としてトランス4bを得た:
【0174】
【化97】


【0175】
(3β−ヒドロキシ−5β−ヒドロキシ−B−ノルコレスタン−6β−カルボキシアルデヒド(5a))。この化合物を、一般的に、T.Miyamoto,K.Kodama,Y.Aramaki,R.Higuchi,R.W.M.Van Soest,Tetrahedron Letter 42,6349(2001)に記載のように合成した。ケトアルデヒド4a(800mg、1.9mmol)のアセトニトリル−水(20:1、100mL)溶液に、L−プロリン(220mg、1.9mmol)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、真空下で蒸発乾燥させた。残渣を、酢酸エチル(50mL)に溶解し、水(3×50mL)で洗浄した。合わせた有機画分を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空蒸発させた。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−ヘキサン(1:4))によって精製して、白色固体(580mg、73%)として表題化合物5aを得た:
【0176】
【化98】


【0177】
(3β−ヒドロキシ−5β−ヒドロキシ−B−ノルコレスタン−6β−カルボキシアルデヒドの2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン(5b))。この化合物を、一般的に、K.Wang,E.Bermudez,W.A.Pryor,Steroids 58,225(1993)に記載のように合成した。2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(52mg、0.26mmol)および塩酸(12M、2滴)を、アルデヒド5a(100mg、0.24mmol)のアセトニトリル溶液(10mL)に添加した。反応混合物を室温で4時間撹拌し、真空下で蒸発乾燥させた。残渣を酢酸エチル(10mL)に溶解し、水(3×20mL)で洗浄した。合わせた有機物を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で蒸発乾燥させた。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−ヘキサン(1:4))によって精製して、黄色固体(90mg、62%)且つトランス5bフェニルヒドラゾンとして表題化合物5bを得た:
【0178】
【化99】


【0179】
(5−オキソ−5,6−セココレスト−3−エン−6−アール(6a))。この化合物を、一般的に、P.Yates,S.Stiveer,Can.J.Chem.66,1209(1988)に記載のように合成した。メタンスルホニルクロリド(400μL、2.87mmol)を、氷浴温度のケトアルデヒド4a(300mg、0.72mmol)およびトリエチルアミン(65μL、0.84mmol)を含むCHCl(15mL)の撹拌溶液に滴下した。得られた溶液を、0℃のアルゴン下で30分間撹拌し、トリエチルアミン(400μL、2.87mmol)を添加し、溶液を室温に加温した。2時間後、反応混合物を、真空下で蒸発乾燥させた。残渣を塩化メチレン(15mL)に溶解し、水(3×20mL)で洗浄した。合わせた有機物を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で蒸発乾燥させた。粗残渣を、シリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−ヘキサン(1:9))によって精製した。画分を蒸発させて、無色のオイルとしてアルデヒド6a(153mg、53%)を得た:
【0180】
【化100】


【0181】
(5−オキソ−5,6−セココレスト−3−エン−6−アールの2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン(6b))。2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(45mg、0.23mmol)を、ケトアルデヒド6a(80mg、0.2mmol)およびp−トルエンスルホン酸(1mg、0.0052mmol)のアセトニトリル(10mL)溶液に添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、真空下で蒸発乾燥させた。残渣を、塩化メチレン(10mL)に溶解し、水(3×20mL)で洗浄した。合わせた有機物を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で蒸発乾燥させた。粗残渣を、シリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−ヘキサン(15:85))によって精製して、黄色固体(70mg、60%)として表題化合物6bを得た:
【0182】
【化101】


【0183】
(5β−ヒドロキシ−B−ノルコレスト−3−エン−6β−カルボキシアルデヒド(7a))。この化合物を、一般的に、P.Yates,S.Stiveer,Can.J.Chem.66,1209(1988)に記載のように合成した。ナトリウムメトキシドを含むメタノール(0.5M、0.16mmol)を、室温のアルゴン雰囲気下でケトアルデヒド4a(50mg、0.125mmol)の無水メタノール(10mL)溶液に滴下した。30分後、メタノールを真空下で除去し、残渣をジクロロメタン(20mL)に溶解し、水(3×20mL)で洗浄した。合わせた有機画分を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空蒸発させた。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−ヘキサン(1:9))によって精製して、無色のオイルとしてアルデヒド7a(16mg、32%)を得た:
【0184】
【化102】


【0185】
5β−ヒドロキシ−B−ノルコレスト−3−エン−6β−カルボキシアルデヒド(7b)の2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン:2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(8mg、0.041mmol)およびp−トルエンスルホン酸(1mg、5.2μmol)を、アルデヒド7a(15mg、0.037mmol)のアセトニトリル(5mL)溶液に添加した。反応混合物を、室温で2時間撹拌し、真空蒸発させ、塩化メチレン(10mL)で希釈した。有機相を水(3×20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾燥させた。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−ヘキサン(1:9))によって精製して、黄色固体としてヒドラゾン7b(9mg、41%)を得た:
【0186】
【化103】


【0187】
(3β−ヒドロキシ−B−ノルコレスト−5−エン−6−カルボキシアルデヒド(8a))。アルデヒド5a(50mg、0.12mmol)およびリン酸(85%、5mL)のアセトニトリル−塩化メチレン(1:1、4mL)溶液を、30分間加熱還流した。反応混合物を真空蒸発させ、塩化メチレン(50mL)で希釈し、水(3×20mL)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空蒸発させた。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−ヘキサン(1:4))によって精製して、α,β不飽和アルデヒド8aの表題アルデヒド12mg(25%)を得た:
【0188】
【化104】


【0189】
白色固体としてのB−ノルコレスト−3,5−ジエン−6−カルボキシアルデヒド12a(27mg、60%)を、この反応の副生成物として得た:
【0190】
【化105】

【0191】
【化105A】


【0192】
(アミノ酸でのケトアルデヒド4aのアルドール化)。典型的な手順では、NMRチューブ中で、ケトアルデヒド4a(2mg、4.8μmol)を、DMSO−d(800μL)およびDO(80μL)に溶解した。この溶液に、1当量の以下のいずれかを添加した:a)L−プロリン、b)グリシン、c)L−塩酸リジン、またはd)L−リジンエチルエステルジヒドロクロリド。各時点で、サンプルを、H NMRによって分析した。反応後、日常的に多数のH NMR(DMSO−d)の共鳴の変化をモニタリングした。H NMR 5aは、以下を示す:
【0193】
【化106】

これらの条件下では、DMSO−d(800μL)およびDO(80μL)中で4aのアルドール化は起こらない。
【0194】
(アテローム硬化性動脈および血液画分でのセコケトアルデヒド4aのアルドール化。)典型的な手順では、ケトアルデヒド4a(5mg、0.0012mmol)を、DMSO−d(800μL)およびDO(80μL)に溶解した。この溶液に、a)組織ホモジナイザーにてPBS(1mL)中にホモジナイズし、その後凍結乾燥させたアテローム硬化性動脈(2.1mg)、b)凍結乾燥ヒト血液(1mL)、c)凍結乾燥ヒト血漿(1mL)、またはd)凍結乾燥PBS(1mL)のいずれかを添加した。各時点で、サンプルを取り出し、HNMRによって分析した(上を参照のこと)。これらの条件下では、凍結乾燥PBSの存在下で4aのアルドール化は起こらなかった。
【0195】
(4aおよび5aを使用した生物学的調査。)インビボでのコレステロールの酸化によって生成されたいくつかのオキシステロールが記載されている。E.Lund,1.Bjorkhem,Acc.Chem.Res.28,241(1995)。さらに、細胞傷害性の天然産物の一般的スクリーニングの一部としてコレスタン側鎖の構造のみが異なる5aのアナログを、海綿ステレッタ・ヒワサエンシス(Stellettahiwasaensis)から単離した。T.Miyamoto,K.Kodama,Y.Aramaki,R.Higuchi,R.W.M.Van Soest,Tetrahedron Lett.42,6349(2001);B.Liu,Z.Weishan,Tetrahedron Lett.43,4187(2002)。しかし、ステロール4aおよび5aのようなステロイド核が破壊された誘導体は、ヒトでは以前に報告されていなかった。
【0196】
(細胞傷害性アッセイ。)WI−L2ヒトBリンパ球株、HAAE−1ヒト腹部大動脈内皮株、MH−Sマウス肺胞マクロファージ株、およびJ774A.1マウス組織マクロファージ株を、ATCCから得た。ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)およびヒト血管平滑筋細胞(VSMS)を、CambrexBio Scienceから得た。Jurkat E6−1T−リンパ球は、Dr.J.Kaye(The Scripps Research Institute)から快く提供を受けた。細胞を、10%ウシ胎児血清を含むATCC推奨培地中で培養した。細胞を、5または7%COを使用した制御された雰囲気下にて37℃でインキュベートした。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイのために、0.05%トリプシン/EDTAまたは掻き取りのいずれかによって接着細胞を回収した。得られた細胞を、96ウェルマイクロタイタープレートに播種し(25,000細胞/ウェル)、24〜48時間後に回収した。細胞を穏やかに洗浄し、培地を、5%ウシ胎児血清を含む新鮮な培地と交換した。2連またはそれ以上の数の細胞サンプルを、3、4a、または5a(0〜100μM)のいずれかで18時間処理した。次いで、培養物中の細胞からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出の測定によって、細胞傷害性を決定した。簡単に述べれば、ケトアルデヒド4a、アルドール5a、またはコレステロール3のいずれかでの処理後の96ウェルプレート中で培養された細胞のCytoTox96非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,USA)を使用して、細胞上清中のLDH活性を測定した。100%細胞傷害性を、トリパンブルー排除で示された死細胞によるLDHの最大放出量または0.9%TritonX−100による細胞溶解時に検出された最も高いLDH量と定義した。Macintosh用のGraphPad v3.0ソフトウェアを使用した細胞傷害性(%)に対する濃度についての2連の生データと非線形回帰分析(Hillプロット)との比較によってIC50値を決定した。
【0197】
(脂質負荷アッセイ(泡沫細胞形成)。)J774.1マクロファージを、8ウェルチャンバースライドにおける10%ウシ胎児血清を含むATCC推奨培地中で5または7%COを使用した制御された雰囲気下にて37℃でインキュベートした。次いで、細胞を、抗酸化剤である2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールトルエン(100μM)、ジエチルトリアミン五酢酸(100μM)、ならびにLDL(100μg/mL)、LDL(100μg/mL)および4a(20μM)、またはLDL(100μg/mL)および5a(20μM)のいずれかを含む同一の培地中で72時間インキュベートした。終了時に、細胞をPBS(pH7.4)で2回洗浄した。次いで、細胞を、6%(v/v)パラホルムアルデヒドを含むPBSで30分間固定し、プロピレングリコールで2分間リンスし、脂質を5mg/mLOil Red Oで8分間染色した。細胞を、Harrishematoxylinで45秒間対比染色し、6%パラホルムアルデヒドおよびその後のPBSでの1回の洗浄および水道水での1回の洗浄によってバックグラウンド染色を除去した。グリセロールを使用してカバーガラスをスライドガラスの上に置き、スライド調製物を光学顕微鏡で試験した。各スライドの1視野中で計数された全部で少なくとも100個の細胞から脂質負荷細胞数をスコアリングし、総細胞数に対する比率として示した。100倍で写真を撮影した。
【0198】
(円偏光二色性。)サーモスタットで制御した(±0.1℃)0.1cmの石英キュベットにおけるLDL(100μg/mL)、LDL(100μg/mL)および4a(10μM)、ならびにLDL(100μg/mL)および5a(10μM)を含むPBS((pH7.4)、1%イソプロパノールを含む)の円偏光二色性(CD)スペクトルを、Aviv分光偏光計にて37℃で記録した。ペプチド範囲(200〜260nm)でスペクトルを記録した。シグナル:ノイズ比を増加させるために、各測定の多スペクトル(3色)を平均した。DellPCでのCDProソフトウェアスイート(Narashima Sreerama from Colorado State University)を使用して、各測定についてのモル楕円率の解析を行った。
【0199】
(実施例2:アテローム硬化性プラークは、オゾンおよびコレステロールオゾン分解生成物を生成する)
上記方法を使用して、本実施例は、頸動脈内膜摘除術によって15人の患者(n=15)から得たアテローム硬化性組織がインディゴカルミン1との反応によって検出可能なオゾンを生成し得ることを示す。
【0200】
(アテローム硬化性プラークによって生成されたオゾンによるインディゴカルミンの漂白)
本発明者らは、以前に、抗体コーティング白血球をプロテインキナーゼCアクチベーターである4−β−ホルボール 12−ミリステート13−アセテート(PMA)を含むインディゴカルミン1(オゾンの化学的トラップ)溶液で処理した場合、インディゴカルミン1の可視吸収が漂白され、インディゴカルミン1がスルホン酸イサチン2に変換されることを示した。例えば、P.Wentworth Jr.et al.,Science 298,2195(2002);B.M.Babior,C.Takeuchi,J.Ruedi,A.Guitierrez,P.Wentworth Jr.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,3920(2003);P.Wentworth Jr.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,1490(2003)を参照のこと。スルホン酸イサチン2の構造を、図1Aに示す。これらの実験をH18O(95%超の18O)で行う場合、スルホン酸イサチン2のラクタムカルボニルへの同位体組み込みが認められた。同上。炎症に関連すると考えられる酸化剤のうちで、オゾンのみがインディゴカルミン1の二重結合を切断してスルホン酸イサチン2のラクタムカルボニルに同位体組み込む(H18O由来)ため、この手順によって、オゾンとインディゴカルミン1も酸化し得る他の酸化剤由来のとが区別された。(同上および図1A参照)
実施例1に記載するように、頸動脈内膜摘除術によって問題のあるアテローム性動脈硬化症を有すると考えられる15人の患者からプラーク物質を得た。各プラークを、2つの等しい部分(1mL PBS中に懸濁した湿重量約50mg)に分けた。各プラーク物質部分を、インディゴカルミン1(200μM)およびウシカタラーゼ(50μg/mL)のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS(pH7.4)、10mMリン酸緩衝液、150mM NaCl)(1mL)溶液に添加した。懸濁したプラーク物質の一方または他方のアリコートへんDMSO(10μL)またはミリスチン酸ホルボール(PMA、10μL、20μg/mL)の添加によって分析を開始した。
【0201】
PMA添加時に15個のプラークサンプルのうちの14個で1の可視吸収の漂白が認められた(図1B)。逆相HPLC分析によって測定したところ、この漂白は、スルホン酸イサチン2の形成を伴っていた(図1AおよびC)。スルホン酸イサチンの形成量は、試験したプラーク単離物に依存して、1.0〜262.1nmol/mgに変化した。異なる単離物によって生成されたスルホン酸イサチン2の平均量は、72.62±21.69nmol/mgであった。
【0202】
懸濁されたプラーク物質のPMA活性化を、インディゴカルミン1(200μM)を含むH18O含有PBS(95%超の18O)(n=2)中で行う場合、単離された切断生成物であるスルホン酸イサチン2の質量スペクトルにおける[M−H]228および230質量フラグメントピークの相対強度によって示すように(図1D)、インディゴカルミン1の約40%のラクタムカルボニル酸素が18Oを組み込んだ。
【0203】
インディゴカルミン1を使用したこれらの研究は、活性化されたアテローム硬化性プラーク物質によってオゾンが生成されたことを示す。
【0204】
(コレステロールのオゾン分解生成物。)アテローム硬化性プラーク中に存在する主な脂質の1つは、コレステロール3である。D.M.Small,Arteriosclerosis 8,103(1988)。化学モデル研究では、研究者らは、、・O、O2−、ヒドロキシルラジカル、O、および・O、およびOなどの酸化剤のパネルのうち、オゾンのみがコレステロール3のΔ5,6二重結合を切断して5,6−セコステロール4aを生成することを示した(図2A)。この所見は、5,6−セコステロール4aがコレステロール3オゾン分解の主な生成物であることも示す他の化学分野の報告と一致する。Gumulka et al.J.Am.Chem.Soc.105,1972(1983);Jaworski et al.,J.Org.Chem 53,545(1988);Paryzek et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.l,1222(1990);Cornforth et al.,Biochem.J.54,590(1953)。
【0205】
したがって、さらなる実験は、5,6−セコステロール4aまたはコレステロールの他のオゾン分解生成物がアテローム硬化性プラーク中に存在するかどうかの検出および同定に関する。したがって、14人(n=14)のヒトアテローム硬化性プラークを、PMAでの活性化前後の5,6−セコステロール4aの存在について調査した。
【0206】
Pryor and colleaguesによって開発された分析手順の修正形態を、これらの研究で使用した。K.Wang,E.Bermudez,W.A.Pryor,Steroids 58,225(1993)を参照のこと。この修正された過程は、ホモジナイズしたプラーク物質(湿重量約50mg)のPBS(1mL、pH7)の懸濁液の有機溶媒(塩化メチレン、3×5mL)での抽出およびその後の有機画分の2,4−ジニトロフェニルヒドラジンヒドロクロリド(DNPHHCl)(2mMを含むエタノール(pH6.5))のエタノール溶液での室温で2時間の処理を含んでいた。この反応混合物を、4b(オゾン分解生成物4aの2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体)の存在についてのHPLC(直接注入、360nmでの紫外線検出)およびインライン陰イオンエレクトロスプレー質量分析によって分析した(図3)。ヒドラゾン4bは、14個の非活性化プラーク抽出物(6.8pmol/mgと61.3pmol/mgとの間)のうちの11個および全ての活性化プラーク抽出物(1.4pmol/mgと200.6pmol/mgとの間)で検出された。さらに、4bの平均量で判断したところ、プラーク物質中の4aの量は、PMAでの活性化時に有意に増加した。特に、PMAを使用しなかった場合、4bの平均量は、18.7±5.7pmol/mgであった。対照的に、PMAを添加した場合、4bの平均量は、42.5±13.6pmol/mg(n=14、p<0.05)であった(図3A〜B)。
【0207】
4bに加えて、プラーク抽出物のHPLC分析時に2つの他の主なヒドラゾンピークが認められた。第1のピークは、R約20.5分および[M−H]=597であり、第2のピークは、R約18.0分および[M−H]597であった(図3A、B)。ヒドラゾン4bの保持時間は約13.8分であるため(R約13.8分、[M−H]597)、これらのピークと容易に区別可能であった(図3A、B)。標準サンプルとの比較によって、R約20.8分のピークは、アルドール縮合生成物5aのヒドラゾン誘導体5bであると判断した(図2および3E)。化学モデル研究では、Pryorは、4aのヒドラジン誘導体の主な副生成物がアルドール縮合生成物5aのヒドラゾン誘導体5bであり、その相対量が酸濃度および反応時間の両方の関数であることを以前に示していた。K.Wang,E.Bermdez,W.A.Pryor,Steroids 58,225(1993)。
【0208】
使用した誘導化条件下での4aの5bへの変換範囲は、試験した4a濃度範囲(5〜100μM)にわたり約20%であった。しかし、20%を超える変換もしばしば認められた。同一のプラークサンプル中に存在する4aが20%を超えた5aの測定量は、3のオゾン分解の後のアルドール化からに起因する可能性が高かった。
【0209】
アミノ基またはカルボキシル基を含む多数の生化学構成要素は、アルドール化反応を触媒し得る。このような成分は、プラークおよび血液中に存在し、4aの5aへの変換を容易にし得る。さらなる実験により、以下のアミノ酸および材料が4aの5aへの変換を容易にすることが示された:L−Pro(2時間、完全な変換)、Gly(24時間、完全な変換)、L−Lys・HCl(24時間、完全な変換)、L−Lys(OEt)/2HCl(100時間、62%変換)、ならびにアテローム性動脈(22時間、完全な変換)、全血(15時間、完全な変換)、血漿(15時間、完全な変換)、および血清(15時間、完全な変換)由来の抽出物。バックグラウンド反応と比較して、このような薬剤は全て4aの5aへの変換を促進した。
【0210】
上記のように、プラーク内のケトアルデヒド4a量は、PMA活性化時に増加した。しかし、5aの形成におけるPMAの効果はあまり明確ではなかった。いくつかの場合、5aレベルは、PMA活性化後に増加する一方で(図5B、患者FおよびH)、他の場合、5aレベルはPMA活性化後に減少した(図5B、患者C、G、およびN)。
【0211】
質量スペクトル(図2B)における2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体のピーク[M−H]が579であった多数のカルボニル含有ステロイド誘導体6a〜9aを合成し、18分での579のピーク[M−H]579の同定を補助するために分析した(図3A、B)。HPLC同時注入、標準サンプルの陰イオンエレクトロスプレー質量分析、および紫外線スペクトルとの比較により、約18分のピークは、6b、6aのヒドラゾン誘導体、および4aのA環脱水生成物であると判断された(図3D)。誘導体化のために選択した標準的条件下で4aの6bへの変換範囲を調査した。この変換範囲は、試験した4a濃度範囲(5〜100μM)にわたり2%未満であることが見出された。これらのデータは、抽出物内のケトアルデヒド4a量の2%を超えるプラーク抽出物内の6aの存在量が誘導体化前に存在し、水のβ脱離によるオゾン分解生成物4aに起因することを示す。
【0212】
3つの主なヒドラゾン生成物4b〜6bに加えて、別の生成物7bを検出し、7aのヒドラゾン誘導体および5aのA環脱水生成物であると判断した。この生成物(7b)は、いくつかのプラーク抽出物中にて微量で(5pmol/mg未満)存在し、保持時間は、約26分であった([M−H]579、図4)。しかし、プラーク抽出物中の7bの量は、使用したHPLCアッセイの検出限界付近であったため、全プラークサンプル中のこの化合物の有無に関する完全な分析による調査を依然として行わなかった。
【0213】
活性化プラーク物質がオゾンの化学的サイン(chemicalsignature)を伴ってインディゴカルミン1の二重結合を酸化的に切断し、公知の化学的性質にしたがってオゾンに固有の経路によってコレステロール3のΔ5,6二重結合が切断されるという実験的証拠により、アテローム硬化性プラークがオゾンを生成し得るという有力な証拠が得られる。さらに、プラーク活性化前にコレステロールのこれらの固有の酸化生成物も存在するため、アテローム硬化性プラークの発生時にもオゾンが生成される可能性が高い。
【0214】
外因的に投与したオゾンが、インターロイキン(IL)−1α、IL−8、インターフェロン(IFN)−γ、血小板凝集因子(PAF)、成長関連癌遺伝子(Gro)−α、核因子(NF)−κB、および腫瘍壊死因子(TNF)−αの活性化によってインビボで炎症性を示すことが十分に確立されている。これらの一般に公知の炎症におけるオゾンの効果に加えて、この部位で生成された場合に疾患の開始および永久化についての内因的に生成されたオゾンの病理学的役割が増大し得るアテローム硬化性プラークに固有の環境が存在する。任意の生成されたオゾンを捕捉し得る他の反応性物質の非存在下で必須の高濃度のオゾンおよびコレステロールがプラーク部位のみで生じるため、コレステロールのオゾン分解はプラークに固有であり得る。
【0215】
アテローム硬化性動脈が抗体および生成系の両方を含む範囲で、活性化マクロファージおよびミエロペルオキシダーゼの形態で、アテローム硬化性病変が抗体触媒水酸化経路を介してOを生成し得る可能性が高い。実際、3のΔ5,6二重結合が切断されて4aが得られるという所見は、炎症における抗体触媒によるオゾン生成のさらなる証拠である。多数のオキシステロールが、インビボでのコレステロールの酸化によって生成されることが知られており、細胞傷害性の天然産物の一般的スクリーニングの一部としてコレスタン側鎖の構造のみが異なる5aのアナログを、海綿ステレッタ・ヒワサエンシスから単離した。T.Miyamoto,K.Kodama,Y.Aramaki,R.Higuchi,R.W.M.Van Soest,Tetrahedron Letter 42,6349(2001);B.Liu,Z.Weishan,Tetrahedron Lett.43,4187(2002)。しかし、ステロール4aから6aのようなステロイド核が破壊された誘導体は、本発明者らの知る限り、ヒトでは以前に全く報告されていなかった。したがって、他のこのようなステロイドおよびその誘導体の検索を促し、その生物学的機能を調査することが重要である。
【0216】
(実施例3:コレステロールオゾン分解生成物は、アテローム性動脈硬化症患者の血流中に存在する)
本発明者らは、以前に、抗体触媒水酸化経路でオゾンが生成され、オゾンが強い酸化剤として炎症で役割を果たし得ることを示している。P.Wentworth Jr.et al.,Science 298,2195(2002);B.M.Babior,C.Takeuchi,J.Ruedi,A.Guitierrez,P.Wentworth Jr.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,3920(2003);P.Wentworth Jr.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100,1490(2003)
炎症は、アテローム性動脈硬化症の病原因子と考えられる。R.Ross,New Engl.J.Med.340,115(1999);G.K.Hansson,P.Libby,U.Schonbeck,Z.−Q.Yan,Circ.Res.91,281(2002)。しかし、本発明の前に、炎症性動脈疾患と他の炎症性過程とを区別し得る特異的な非浸襲性の方法は利用できなかった。アテローム硬化性プラークの固有の組成物およびアテローム硬化性プラーク物質によって血流に放出された生成物は、このような方法を提供し得る。特に、アテローム硬化性病変は、高濃度のコレステロールを含む。本明細書中に示すように、オゾンはアテローム硬化性病変によって生成され、4aなどのコレステロールオゾン分解生成物および/またはそのアルドール化生成物5aもアテローム硬化性病変によって生成される。したがって、このようなコレステロールオゾン分解生成物がアテローム性動脈硬化症などの炎症性動脈疾患のマーカーであり得るかどうかを確認するためにさらなる実験を行った。
【0217】
患者の2つのコホート由来の血漿サンプルを、4aまたは5aのいずれかの存在について分析した。コホートAは、血管内膜切除術を必要とするのに十分に進行したアテローム性動脈硬化症の病態を有する患者(n=8)から構成された。コホートB患者は、一般的な診療所に通院している無作為に選択された患者であった。コホートAの8人の患者のうちの6人で、70〜1690nM(約1〜10nMがアッセイの検出限界である)の範囲の量でアルドール5aが検出された(図5A〜C)。コホートB由来の15の血漿サンプルのうちのたった1つで、検出可能な5aが存在した。ケトアルデヒド4aは、いかなる患者の血液サンプル中でも検出されなかった(約1〜10nMがアッセイの検出限界である)。これらのデータは、4aが血液中に含まれる触媒によって5aに変換されるか、血漿内の成分が4aおよび5aに対して異なる親和性を有することを示す。
【0218】
以前は、「オキシステロール」の血清分析は、コレステロールの自己酸化の問題によって困難に満ちていた。H.Hietter,P.Bischoff,J.P.Beck,G.Ourisson,B.Luu,Cancer Biochem.Biophys.9,75(1986)。しかし、本明細書中に記載のように、コレステロール3の生物学的に関連する酸化によって生成されたコレステロールの全ての酸化生成物のうち、ステロイド誘導体4aおよび5aはオゾンに固有である。これらの研究は、どのDNPヒドラゾン誘導体5bとして検出された血漿中のアルドール化生成物5aの存在がアテローム性動脈硬化症のマーカーであり得ることを示す。したがって、オゾンの抗体触媒生成は、アテローム性動脈硬化症を引き起こす病理学的カスケードへのコレステロール蓄積、炎症、酸化、および細胞損傷の一見独立した別の因子と関連し得る。
【0219】
いくつかの研究は、コレステロール酸化生成物が細胞傷害性、アテローム発生性、および変異原性などの生物活性を有することを示す。H.Hietter,P.Bischoff,J.P.Beck,G.Ourisson,B.Luu,Cancer Biochem.Biophys.9,75(1986);J.L.Lorenso,M.Allorio,F.Bernini,A.Corsini,R.Fumagalli,FEBS Lett.218,77(1987);A.Sevanian,A.R.Peterson,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81,4198(1984)。コレステロール酸化生成物4aおよび5aが以前にヒトで生じると見なされていなかったことから考えると、アテローム発生の重要な局面に対するこれらの化合物の効果を下記のようにさらに調査した。
【0220】
(実施例4:コレステロールオゾン分解生成物の細胞傷害性)
いくつかのコレステロール酸化生成物は、細胞傷害性、アテローム発生性、および変異原性などの生物活性を有する。本実施例では、種々の細胞株に対する4aおよび5aの細胞傷害効果を分析した。
【0221】
以下の細胞株を本研究で使用した:Levy et al.,Cancer 22,517(1968)に記載のヒトBリンパ球(WI−L2);Weiss et al.,J.Immunol.133,123(1984)に記載のTリンパ球細胞株(Jurkat E6.1);Folkman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.76,5217(1979)に記載の血管平滑筋細胞株(VSMC)および腹大動脈内皮(HAEC)細胞株;Ralph et al.,J.Exp.Med.143,1528(1976)に記載のマウス組織マクロファージ(J774A.1);およびMbawuike et al.,J.Leukoc.Biol.46,119(1989)に記載の肺胞マクロファージ細胞株(MH−S)。
【0222】
化学合成された4aおよび5aは、アテローム硬化性プラーク内に存在することが公知の一定範囲の細胞型(白血球、血管平滑筋細胞、および内皮細胞)に対して細胞傷害性を示す。結果を図6および表3に示す。
【0223】
(表3)
【0224】
【表3】

4aおよび5aのIC50値は、試験した全細胞株で非常に類似している。さらに、試験最多細胞株に対する化合物4aおよび5aの細胞傷害性プロフィールは非常に類似していた。これらの結果は、4aと5aとの間の有意な構造の相違を考慮すれば驚くべきものであった。しかし、4aおよび5aは、アミノ酸などの細胞成分によって促進される過程で互いに釣り合っており(上記を参照のこと)、4aおよび5aは、細胞傷害アッセイの時間枠内で互いに釣り合い得る。したがって、化合物4aおよび5aは、インビボで類似の細胞傷害性を有し得る。
【0225】
類似の手順を使用して、化合物6a、7a、7c、10a、11a、および12aは、白血球細胞株に細胞傷害性を示すことが本発明者らによって示され、セコケトアルデヒド4aおよびそのアルドール付加体5aは、神経細胞株に細胞傷害性を示すことが示された。7c化合物は以下の構造を有する。
【0226】
【化107】

オゾンおよびコレステロールの並列により、in situで生成される細胞傷害ステロイド4a〜12aおよび7cを得ることができ、内皮または平滑筋の細胞損傷の促進またはアテローマ内の炎症細胞のアポトーシスの誘発による損傷の進行で役割を果たし得る(上記を参照のこと)。前に記載したアテローム硬化性プラークの結晶相内のコレステロールのオゾン分解は、動脈閉塞前の最終工程であると考えられるプラークの不安定化に寄与し得る。
【0227】
(実施例5:コレステロールオゾン分解生成物は、泡沫細胞形成を促進し、LDLおよびアポタンパク質B100構造を変化させる)
そのアテローム発生性を増大させる低密度リポタンパク質(LDL)の修飾は、心血管疾患の発症における極めて重要な事象と考えられる。D.Steinberg,J.Biol.Chem.272,20963(1997)。例えば、LDLまたはCD36および他のマクロファージスカベンジャー受容体を介したマクロファージへのLDL取り込みを増大させるアポタンパク質B100(アポB−100、LDLのタンパク質成分)に対する酸化的修飾は、アテローム性動脈硬化症の発症における重要な原因となる病理学的事象と見なされる。本実施例は、コレステロールオゾン分解生成物4aおよび5aがマクロファージからの泡沫細胞の形成を促進し、LDLおよびアポB−100の構造を修飾し得ることを示す実験を記載する。
【0228】
実施例1に記載のように、LDL(100μg/mL)を、非活性化マウスマクロファージ(J774.1)の存在下で4aおよび5aとインキュベートした。4aまたは5aへの曝露後、これらのマクロファージは脂質負荷を開始し、泡沫細胞が反応容器中に出現し始める(図7)。
【0229】
さらに、ヒトLDL(100μg/mL)の4aおよび5a(10μM)とのインキュベーションにより、円偏光二色性によって検出したところ、アポB−100の構造が時間依存性に変化した(図8B、C)。4aおよび5aを含まない総LDLの円偏光二色性分析により、LDLの二次構造が一般に実験期間(48時間)にわたり安定していることが明らかとなった(図8A)。図8Aに示すように、正常なLDLのタンパク質含有量は、αヘリックス構造が大部分を占め(約40±2%)、β構造(約13±3%)、βターン(約20±3%)、およびランダムコイル(27±2%)はより少ない。しかし、4aおよび5aとインキュベートしたLDLのスペクトルの形状が天然のLDLと幾らか類似している一方で(図8BおよびC)、二次構造が有意に喪失し、主に、αヘリックス構造が喪失し(4a、約23±5%;5a、約20±2%)、同様にランダムコイルはより高い比率で喪失する(4a、約39±2%;5a、32±4%)。したがって、4aおよび5aコレステロールオゾン分解生成物は、LDLの構造完全性を損なわせるようである。
【0230】
LDL構造を修飾するために、4aおよび5aのコレステロールオゾン分解生成物のアルデヒド部分とアポB−100リジン残基のε−アミノ側鎖との間で共有結合性反応が起こりシッフ塩基またはエナンチオマー中間体が形成され得るが、これらはマロンジアルデヒドおよび4−ヒドロキシノネナールのアポB−100との反応で以前に見出された化合物に類似する。Steinbrecher et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81,3883(1984);Steinbrecher et al.,Arteriosclerosis 1,135(1987);Fong et al.,J.Lipid.Res.28,1466(1987)。このようなシッフ塩基またはエナミン中間体は、有意な寿命を有し、誘導体化LDLをマクロファージスカベンジャー受容体によって認識される形態にし得る。したがって、4aおよび5aコレステロールオゾン分解生成物とポB−100−LDLとの間の共有反応により、マクロファージスカベンジャー受容体によってより早い速度で認識および取り込まれ、それにより図7で認められる泡沫細胞を生成する誘導化アポB−100−LDL複合体を生成し得る。
【0231】
アルデヒド成分を含むコレステロールの唯一の公知の酸化形成は、4aおよび5aオゾン分解生成物である。したがって、このようなコレステロール誘導体とLDL/アポB−100との間の反応により、これまで見逃されていたコレステロール間の結合、泡沫細胞形成、動脈プラーク形成を得ることができる。したがって、患者の血流中の高レベルの4aおよび5aのオゾン分解生成物の検出により、患者のアテローム性動脈硬化症の範囲を直接測定し得る。
【0232】
(実施例6:コレステロールオゾン化生成物に対する抗体の精製)
本実施例は、コレステロールのオゾン化生成物およびヒドラゾン生成物と反応し得る式13a、14a、または15aを有するハプテンに対して生成された抗体を記載する。式13a、14a、または15aを有するハプテンの構造を以下に示す。
【0233】
【化108】

化合物13aは、4−[4−ホルミル−5−(4−ヒドロキシ−1−メチル−2−オキソ−シクロヘキシル)−7a−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン−1−イル]ペンタン酸である。
【0234】
【化109】

(方法)
化合物13a、14a、または15aのKLH抱合体を調製した。標準的な手順によって、マウスをこれらのKLH抱合体で免疫化した。マウスから脾臓を取り出し、抗体産生細胞として脾臓細胞を得るために懸濁した。
【0235】
脾臓細胞およびマウス骨髄腫由来のSP2/0−Ag14細胞(ATCCCRL−1581)を、予め37℃に加温した無血清RPMI−1640培地(pH7.2)に同時懸濁して、それぞれ3×10細胞/mLおよび1×10細胞/mLの細胞密度を得た。懸濁液を遠心分離して沈殿を回収した。沈殿に、50w/v%ポリエチレングリコールを含む1mLの無血清RPMI−1640培地(pH7.2)を1分間滴下し、その後得られた混合物を37℃で1分間インキュベートした。無血清RPMI−1640培地(pH7.2)を混合物にさらに滴下して最終体積を50mLとし、遠心分離によって沈殿を回収した。沈殿をHAT培地中に懸濁し、200μLアリコートを96ウェルマイクロプレートに分注した。マイクロプレートを37℃で1週間インキュベートし、約1,200型のハイブリドーマが形成された。ハイブリドーマ由来の上清を、免疫アッセイによってコレステロールオゾン化生成物への結合について分析した。
【0236】
式15aを有する化合物から惹起されたハイブリドーマKA1−11C5およびKA1−7A6は、ブダペスト条約にしたがって、2003年8月29日にAmerican Type Culture Collection(10801 University Blvd.,Manassas,Va.,20110−2209 USA(ATCC))にATCC受託番号PTA−5427およびPTA−5428として受託された。式14aを有する化合物から惹起されたハイブリドーマKA2−8F6およびKA2−lE9も、ブダペスト条約にしたがって、2003年8月29日にATCCにATCC受託番号PTA−5429およびPTA−5430として受託された。
【0237】
ハプテン15aのKLH抱合体に対して産生されたモノクローナル抗体調製物KA1−7A6:6およびKA1−11C5:6ならびにハプテン14aのKLH抱合体に対して産生されたKA2−8F6およびKA2−1E9のプールを生成した。オゾン化生成物5aおよびコレステロールハプテン3cに対する15aに対して誘発されたKA1−7A6:6およびKA1−11C5:6モノクローナル抗体の結合力価をELISAアッセイによって決定した。13b、14b、およびコレステロールハプテン3cに対する(オゾン化生成物5aに対して誘発された)KA2−8F6:4およびKA2−1E9:4抗体の結合力価を決定するためにもELISAアッセイを行った。
【0238】
コレステロールハプテン3cの構造を以下に提供する。
【0239】
【化110】

ELISAアッセイを以下のように行った。13a、14a、3c、13b、14b、または15aのBSA抱合体を、個別にハイバインド96ウェルマイクロタイタープレート(FischerBiotech.)に添加し、4℃で一晩静置した。プレートを、PBSで十分に洗浄し、ミルク溶液(1%w/vを含むPBS、100μL)を添加した。プレートを室温で2時間静置し、その後PBSで洗浄した。異なる抗体調製物を含む培養物をPBSで連続希釈し、50μLの各希釈物を個別に各列の第1のウェルに添加した。混合および希釈後、プレートを4℃で一晩静置した。プレートをPBSで洗浄し、ヤギ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合体(0.01μg、50μL)を添加した。プレートを37℃で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、基質溶液(50μL)(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(0.1mgを含む10mLの酢酸ナトリウム(0.1M、pH6.0)および過酸化水素(0.01%%w/v)))を添加した。プレートを、暗所で30分間発色させた。硫酸(1.0M、50μL)を添加して反応を停止させ、450nmで光学密度を測定した。
【0240】
報告した力価は、50%の最大光学密度に対応する血清希釈物である。データを、GraphpadPrism v3.0を使用して分析し、少なくとも2連の測定値の平均値として報告する。
【0241】
(結果)
ELISA試験の結果を、表4および5に示す。
【0242】
(表4:15a、オゾン化生成物5a、およびコレステロールハプテン3cに対する抗15a抗体KA1−7A6:6およびKA111C5:6の結合力価)
【0243】
【表4】

力価を、15a、5a、および3cのBSA抱合体に対するELISAによって測定した。絶対値は、結合した場合に50%の最大吸収に対応する抗体の組織培養上清液の希釈係数である。
【0244】
表4に示すように、上記のように測定した見かけ上の結合親和性はほとんど同一である。
【0245】
(表5:15b、14b、およびコレステロールハプテン3cに対して5aに誘発されたKA2−8F6:4およびKA2−1E9:4の結合力価)
【0246】
【表5】

力価を、15b、14b、およびコレステロールハプテン3cのBSA抱合体に対するELISAによって測定した。絶対値は、13b、15b、およびコレステロールハプテン3cのBSA抱合体に結合した場合に50%の最大吸収に対応する抗体の組織培養上清液の希釈係数である。
【0247】
これらの結果は、高親和性抗体調製物をコレステロールオゾン化生成物に対して生成し得ることを示す。
【0248】
(実施例7:コレステロールオゾン化生成物のさらなる検出方法)
本実施例は、コレステロールオゾン化生成物を種々の手順(これらのオゾン化生成物上の遊離アルデヒド基の蛍光部分への抱合およびこれらのオゾン化生成物と反応性を示す抗体の使用が含まれる)によって検出し得ることを例示する。
【0249】
(材料および方法)
(一般的方法)
他で記載しない限り、全ての反応を、乾燥試薬、溶媒、および火炎乾燥(flame−dried)ガラス製品を使用して行った。他で記載しない限り、出発材料を、AldrichChemical Companyから購入し、入手したままの状態で使用した。コレステロール−[26,26,26,27,27,27−D]を、MEDICAL ISOTOPES,INCから購入した。フラッシュカラムクロマトグラフィを、シリカゲル60(230−400メッシュ)を使用して行った。コレステロールオゾン化生成物4aおよび5aならびにオゾン化生成物4aおよび5aの2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン(それぞれ4bおよび5b)を、前の実施例に記載のように合成した。Merck(0.25mm)コーティングシリカゲルKieselgel 60 F254プレートを使用して薄層クロマトグラフィ(TLC)を行い、パラアニスアルデヒド色素で視覚化した。H NMRスペクトルを、Bruker AMX−600(600 MHz)分光計で記録した。13C NMRスペクトルを、Bruker AMX−600(150 MHz)分光計で記録した。化学シフトを、外部標準からδスケールにてパーツ・パー・ミリオン(ppm)で報告する。
【0250】
(3β−ヒドロキシ−5−オキソ−5,6−セココレスタン−6−アールのダンシルヒドラゾン(4d)の合成)
ダンシルヒドラゾン(50mg、0.17mmol)およびp−トルエンスルホン酸(1mg、0.0052mmol)を、コレステロールオゾン化生成物4a(65mg、0.16mmol)のアセトニトリル(8mL)溶液に添加した。反応混合物を、アルゴン雰囲気下にて室温で2時間撹拌し、真空下で蒸発乾燥させた。残渣を塩化メチレン(10mL)に溶解し、水(2×10mL)で洗浄した。有機画分を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。粗黄色オイルを、シリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−ヘキサン(1:1;7:3))によって精製して、幾何異性体の混合物(シス:トランス=8:92)として表題化合物4d(70mg、68%)を得た:
【0251】
【化111】

2Cは、このシグナルがダンシル部分由来の2つの炭素シグナル(gHSQCあたりC)に対応すると考えられることを示す。
【0252】
(3β−ヒドロキシ−5β−ヒドロキシ−B−ノルコレスタン−6β−カルボキシアルデヒドのダンシルヒドラゾン(5c)の合成)
コレステロールオゾン化生成物5a(30mg、0.072mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液に、ダンシルヒドラジン(25mg、0.08mmol)および塩酸(濃縮、0.05mL)を添加した。直後に形成された白色沈殿を、水(0.2mL)の添加によって溶解した。均質な反応混合物を、アルゴン雰囲気下にて室温で3時間撹拌し、蒸発乾燥させた。赤色残渣を、酢酸エチル(10mL)に溶解し、水(2×10mL)で洗浄した。有機画分を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空蒸発させた。粗黄色オイルを、最初にシリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−塩化メチレン(1:4〜1:1))によって精製し、その後分離HPLC(C18Zorbax 21.22mmおよび25cm、100%アセトニトリル)によって精製して、幾何異性体の混合物(シス:トランス=17:83)として表題化合物5c(14.5mg、30%)を得た:
【0253】
【化112】


【0254】
(3β−ヒドロキシ−5−オキソ−5,6−セコ−[26,26,26,27,27,27−D]−コレスタン−6−アール(D−4a)の合成)
オゾンと酸素の気体混合物を、−78℃のD−コレステロール(50mg、0.13mmol)の5mLクロロホルム−メタノール(9:1)溶液に1分間吹き込み、それにより溶液がわずかに青色に変わった。反応混合物を、蒸発させ、Zn粉末(40mg、0.61mmol)の2.5mL酢酸−水(9:1)と室温で3時間撹拌した。この不均一な混合物を、塩化メチレン(10mL)で希釈し、水(3×5mL)およびブライン(5mL)で洗浄した。有機画分を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル(5:1、3:1、および2:1))によって精製して、白色固体(44mg、0.104mmol)として表題化合物を得た:
【0255】
【化113】


【0256】
(3β−ヒドロキシ−5β−ヒドロキシ−B−ノルコレステロール−[26,26,26,27,27,27−D]−6β−カルボキシアルデヒド(D−5a)の合成)
−4a(26mg、0.061mmol)のアセトニトリル−水(20:1、5mL)溶液に、L−プロリン(11mg)を添加した。反応混合物を室温で2.5時間撹拌し、真空蒸発させた。残渣を、酢酸エチル(10mL)に溶解し、水(2×5mL)およびブラインで洗浄した。有機画分を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、NMR分析で純粋な白色固体(26mg、0.061mmol、収率:100%)を得た:
【0257】
【化114】


【0258】
(4−(5−(4−ヒドロキシ−1−メチル−2−オキソシクロヘキシル)−7α−メチル−4−(2−オキソエチル)−オクタヒドロ−1H−インデン−1−イル)ペンタン酸15aの合成)
−5aに記載のように、3β−ヒドロキシコレスト−5−エン−24−イン酸3cのオゾン分解を行った。
【0259】
【化115】


【0260】
(コレステロールオゾン化生成物の抽出)
修正Bligh and Dyer法を使用して、血液および組織サンプルの両方から総脂質を抽出した。Bligh EG,D.W.Can J Biochem Physiol 1959,37,911−17を参照のこと。抗凝固剤としてクエン酸塩およびEDTAを含むVacutainerチューブ中に採取し、4℃で保存したヒト血漿(200μL)を、リン酸二水素カリウム(KHPO、0.5M、300μL)を含む蓋付きガラスチューブに添加した。メタノール(500μL)を添加し、サンプルを短時間ボルテックスした。クロロホルム(1mL)を添加し、サンプルを2分間ボルテックスし、3000rpmで5分間遠心分離し、有機相を除去した。このクロロホルム添加プロセス、ボルテックス、および遠心分離を繰り返した。合わせた有機画分を合わせ、真空蒸発させた。日常的適用のために頸動脈内膜摘除術を受けた患者から血管内膜切除試料を得た。ScrippsGreen Hospital Institutional Review Boardは、ヒト被験体プロトコールを承認した。試料を凍結し、分析前に−70℃で保存した。分析のために、組織サンプルを室温に加温し、組織ホモジナイザー(Tekmar)を使用して、水性緩衝液(KHPO、0.5M、1〜2mL)中でホモジナイズした。ホモジネートを、メタノール:クロロホルム(1:3、6mL)溶液に添加し、3000rpmで5分間遠心分離した。有機画分を回収した。クロロホルム(6mL)を残存する水混和性画分に添加し、サンプルを遠心分離した(3000rpmで5分間)。次いで、合わせた有機画分を、真空蒸発させた。
【0261】
(ダンシルヒドラジンでの誘導体化および抽出されたコレステロールオゾン化生成物のHPLC分析)
蒸発させた血液または組織抽出物(上記を参照のこと)を、ダンシルヒドラジン(200μM)およびHSO(100μM)を含むイソプロパノール(200μL)中に再懸濁し、37℃で48時間インキュベートした。分析方法は、蛍光検出(励起波長360nm、放射波長450nm)を使用したアセトニトリル:水(90:10、0.5mL/分)の定組成移動相を使用したVydecC−18 RPカラムに接続されたHitachi D−7000 HPLCシステムでのHPLC分析を含んでいた。オゾン化生成物5aのダンシル誘導体(5c)の保持時間(R)は、約8.1分であった。5a(5b)のヒドラジン誘導体の保持時間は、約10.7分であった。MacintoshPCおよびPrism 4.0ソフトウェアを使用して標品を参照したピーク面積計算によって、濃度を日常的に決定した。
【0262】
(ガスクロマトグラフィ−質量分析)
蒸発させた試料を、塩化メチレンで1mLに再構成し、濃縮プラーク抽出物への1%トリメチルクロロシランを含む100μLピリジンおよび100μLN,O−ビス(トリメチルシリル)−トリフルオロアセトアミドの添加によってシリル化した。サンプルを、37℃で2時間インキュベートし、回転蒸発によって蒸発乾燥させた。分析前に各サンプルを100μL塩化メチレンに再懸濁した。2.5μLのサンプルをスプリットレス注入(splitlessinjection)(Agilent 7673オートサンプラー)でHP−5msカラム(30m×0.25mmID×0.25μmフィルム厚、流速1.2mL/分)に注入し、インジェクター温度は290℃であり、温度プログラムは50℃から開始し、5分間保持し、その後300℃まで20℃/分でランプ制御し、12分間保持した。Agilentmodel 5973 inert(スキャン範囲50〜700m/z、その後の選択イオンモニタリング(SIM)はm/z 354および360をスキャンする)で質量分析を行った。MSの四重極(quad)温度は150℃であり、MSソース温度は280℃であった。
【0263】
(キャリアタンパク質KLHおよびBSAへのハプテン15aのカップリング)
1−エチル−3,3’−ジメチルアミノプロピル−カルボジイミドヒドロクロリド(EDC、1.5mg、0.008mmol)およびスルホN−ヒドロキシスクシンイミド(1.8mg、0.008mmol)を、0.01mLHOに溶解し、ハプテン(2.5mg、0.006mmol)の0.1mL DMF溶液に添加した。混合物をボルテックスし、室温で24時間保持し、その後BSA(5mg)を含むPBS緩衝液(0.9mL、0.05mM、pH7.5)に4℃で添加した。この最終混合物を、4℃で24時間保持し、−20℃で保存した。化合物15aのKLHまたはBSA抱合体の合成に関与する反応を以下に示す。
【0264】
【化116】

反応aは、上記のように、O/Oでの化合物3cのオゾン分解を含んでいた。反応bは、EDCおよびHOBtを含むDMFでの化合物15aの一晩の処理およびその後のBSAまたはKLHを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)とのインキュベーションを含んでいた。
【0265】
標準的な方法によって、モノクローナル抗体を産生した。8週齢の129GIX+マウスを、同体積のRIBIアジュバントと混合したマウスあたり10μgKLH−15a抱合体を含む50μL PBSを、3日毎に全部で5回のIP注射による免疫化によって免疫化した。血清力価を、ELISAによって決定した。30日後、50μgKLH−15a抱合体を含む100μL PBSの最終の静脈内(IV)注射を外側の尾静脈に行った。動物を屠殺し、融合のために脾臓を3日後に取り出した。免疫化動物由来の脾臓細胞を、遠心分離したRPMI培地中でX63−Ag8.653骨髄腫細胞と5:1で混合し、37℃の1mLPEG 1500に再懸濁した。PEGを、9mLのRPMIで3分間にわたって希釈し、37℃で10分間インキュベートし、遠心分離し、培地に再懸濁し、15×96ウェルプレートに入れた。コレステロールオゾン化生成物4aまたは5aに結合するがコレステロールに結合しない抗体をスクリーニングするために、ELISAを行った。選択されたハイブリドーマを、2世代サブクローニングして単一クローン性を保証した。
【0266】
(ApoEノックアウトマウスの上行大動脈由来の組織学的切片の調製)
試料を液体窒素中で瞬間凍結した。10ミクロンの切片を採取し、スライドガラス上に置いた。試料を、1:1エチルアルコール:ジエチルエーテル中に20分間、100%エタノール中に10分間、および95%エタノール中に10分間の連続浸漬によって固定した。PBSでの洗浄後、コレステロールオゾン化生成物に特異的の200倍希釈の抗体を適用し、組織と1時間インキュベートした。FITC標識ヤギ抗マウスIgG(Calbiochem)の40倍希釈物で二次標識を行った。オプトエレクトロニクスマイクロファイアデジタルカメラを使用して画像を得て、AdobePhotoshopを使用して処理した。
【0267】
(結果)
(コレステロールオゾン化生成物のダンシルヒドラゾンの蛍光検出)
前の実施例に記載のように、コレステロールオゾン化生成物を、K.Wang,E.Bermudez,W.A.Pryor,Steroids 58,225(1993)による化学的研究で開発された分析手順の修正形態を使用してインビボで検出し得る。この修正プロセスは、ホモジナイズしたプラーク物質(湿重量約50mg)のPBS(1mL)(pH7.4)の懸濁液の有機溶媒(塩化メチレン、3×5mL)への抽出、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンヒドロクロリド(DNPHHCl)(2mM、pH6.5)のエタノール溶液での室温で2時間の処理を含んでいた。この反応混合物を、4b(4aの2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン(2,4−DNP)誘導体)および5b(5aの2,4−DNP誘導体)の存在についての逆相HPLC(直接注入、360nmでの紫外線検出)およびインライン陰イオンエレクトロスプレー質量分析によって分析した。この技術は迅速且つ感度が高い。しかし、生体サンプルに適用する場合、このアッセイは多数の制限事項が存在する。これらには、360nmで紫外線吸収を有する他の生物学的化合物による妨害、抱合反応時の4bの5bへの変換、および低濃度のコレステロールオゾン化生成物での抱合反応効率の減少が含まれる。
【0268】
したがって、アッセイ感度を増加させることができるかどうかを確認するために新たな手順を試験した。この手順は、コレステロールオゾン化生成物の蛍光発色団を有しているヒドラジンへの抱合ならびにその後の蛍光検出およびおHPLC分析を含んでいた。選択した蛍光発色団は、ダンシル基であった。アッセイは、上記の酸性条件下でのダンシルヒドラジンでの抽出されたコレステロールオゾン化生成物の誘導体化を含んでいた。コレステロールオゾン化生成物4aとのダンシルヒドラジンの反応生成物は4dであり、以下に示す。
【0269】
【化117】

コレステロールオゾン化生成物5aとのダンシルヒドラジンの反応生成物は5cであり、以下に示す。
【0270】
【化118】

ダンシルヒドラジン誘導体の反応効率を、一定範囲の溶媒(ヘキサン、メタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、およびイソプロパノール(IPA)など)中で評価した。この分析より、反応効率およびコレステロールオゾン化生成物4aの5aへの同時アルドール化率の低さの点から見て、IPAが至適な溶媒であると判断された。反応効率を、化学合成した標準ダンシルヒドラゾン標準4dおよび5cを使用したHPLCによって定量した(図9)。保持時間(R)約11.2分で4aのヒドラゾン誘導体4dを形成するためのダンシルヒドラジン(200μM)および硫酸(100μM)を含むIPAを使用した37℃で48時間のコレステロールオゾン化生成物4aの誘導体化効率は、86.0±8.0%であった。重要には、誘導体化プロセス中に4aまたは4dのアルドール化によってたった1.3%しか5cが形成されなかった。5aのそのダンシルヒドラゾン誘導体5c(R約19.4分)への変換効率は、0.01〜100μMの濃度範囲については83±11%であった。ダンシルヒドラゾン4dおよび5cの感度レベルは、約10nMである。
【0271】
4aおよび5aコレステロールオゾン化生成物を血漿サンプルから抽出して誘導体化する効率を決定するために、ヒト血漿サンプルに5aを急上昇させ、抽出し、2,4−DNPまたはダンシルヒドラジンのいずれかと抱合した。いずれかの方法で検出された抱合ヒドラゾンの量に有意差は認められなかった;37.5±1.9%がダンシルヒドラゾン5cとして誘導体化され、31±8.9%が2,4−DNPヒドラゾン5bとして回収された。
【0272】
(インライン質量分析を使用した同位体希釈ガスクロマトグラフィ(ID−GCMS))
現在、血液(血漿)およびアテローム硬化性動脈などのコレステロールが豊富な組織中のオキシステロールの最も分析的な測定方法は、炎イオン化検出(FID)または選択イオンモニタリング(SIM)を使用したGCに基づく。FID法を超えるSIM法の利点は、検出の特異性である。この特異性は、生物学的マトリクス中のオキシステロールの分析に必要である。SIMストラテジーの重要な態様は、内部標準の使用である。5α−コレスタンが最も一般的である。Jialil,I.;Freeman,D.A.;Grundy,S.M.Aterioscler.Thromb.1991,1l,482−488;Hodis,H.N.;Crawford,D.W.;Sevanian,A.Atherosclerosis 1991,89,117−126を参照のこと。しかし、重水素標識内部標準を使用したGC−MSは、高感度且つ特異的で、個となる分析物の異なる回収率を補正するため、好ましい方法である。Dzeletovic,S.;Brueuer,O.;Lund,E.;Diszfalusy,U.Analytical Biochem.1995,225,73−80。重水素内部標準の役割は、2つある。第1に、これらは、濃縮を使用した同位体の存在比の補正によって定量可能である。第2に、抽出手順前の既知量の重水素分子の添加により、コレステロールオゾン化生成物の抽出効率を評価可能である。Leoni,V.;Masterman,T.;Patel,P.;Meaney,S.;Diczfalusy,U.;Bjorkhelm,I.J.Lipid.Res.2003,44,793−799。
【0273】
以下に概説のように、6重水素化(hexadeuterated)コレステロールオゾン化生成物D−4aおよびD−5aを、[26,26,26,27,27,27−D]−コレステロール(重水素化3c)から調製した。
【0274】
【化119】

第1の合成工程(a)では、オゾンを、78℃のD−3cのクロロホルム−メタノール(9:1)溶液に吹き込んで、D−4aを生成した。第2の工程(b)では、DMSOにD−4aを溶解し、室温で2.5時間プロリンと反応させてD−5aを生成した。
【0275】
実験室内Agilent GC/MSでのGC/MS法の感度を試験するために、内部標準としてD−4aおよびD−5aを使用した。典型的な手順では、標準コレステロールサンプル4a、5a、D−コレステロール、D−4a、およびD−5aを、アルゴン下での37℃で2時間のピリジンおよびBSTFAでの処理によってそのトリメチルシリルエーテルに変換した。揮発性物質の除去後(真空下)、残渣を塩化メチレンに溶解し、オートサンプラーバイアルに移した。
【0276】
次いで、5973 Inert MSDに連結したAgilantTechnologies 6890 GC(スプリット/スプリッター流入システムおよび7683オートインジェクターモジュールを備える)でGC−MSを行った。質量分析計を、フルイオンスキャンモードで操作した。認められた保持時間(R)およびMイオンは以下である:オゾン化生成物4aおよび5a(R=29.6分、M354);D−4aおよびD−5a(R=29.6分、M360);コレステロール(R=27.2分、M329);D−コレステロール(R=27.2分、M335)。GC−MS内のコレステロールオゾン化生成物4aおよび5aの推定断片化を以下に示す。
【0277】
【化120】

上記のように、コレステロールオゾン化生成物4aおよび5aは、約M+354のフラグメントを生じる。重水素化(D)4aおよび5aコレステロールオゾン化生成物は、約M+360のフラグメントを生じる。
【0278】
したがって、GC−MSアッセイでコレステロールオゾン化生成物4aと5aとの間に相違は認められず、おそらくシリル化工程でコレステロールオゾン化生成物4aが5aに変換したためである。したがって、M+354(または360)の量は、標準4aおよび5aコレステロールオゾン化生成物の濃度基準である。354イオンピーク面積は、濃度に比例し、したがってコレステロールオゾン化生成物の測定されたより低い感度レベルは10fg/μLである(前の実施例に記載のLC/MS由来の検出限界の評価された2log増加に等価)。
【0279】
臨床的に切除した頸動脈プラーク物質からのコレステロールオゾン化生成物の抽出によってGCMSアッセイをさらに立証した。日常的分析のために頸動脈内膜摘除術を受けた患者から得た頸動脈内膜摘除組織(n=2)を、組織ホモジナイザーを使用して10分間ホモジナイズし(アルゴン下)、CHCl/MeOHに抽出した。抽出物を上記のようにシリル化し、GC−MS分析に供した(図10および11)。時間に対するイオン存在率のGC−MSの軌跡は、依然として定義されていない多数のオキシステロールの存在を示す。しかし、オゾン化生成物4aおよび5aの組み合わせ(R=22.49分)は明確に解析されていた。
【0280】
これらのデータは、生体サンプル中の4aおよび5aコレステロールオゾン化生成物の分析についての全抽出およびGC−MSの実行可能性を明確に確立し、前の実施例におけるアテローム硬化性プラーク物質の分析で記載した結果を立証する。
【0281】
(コレステロールオゾン化生成物4aおよび5aの免疫組織学的局在化)
上記のように、マウスを、コレステロールオゾン化生成物4aのアナログである化合物15aのKLH抱合体で免疫化した。ハイブリドーマ法によってモノクローナル抗体を生成した。2つのマウスモノクローナル抗体(11C5および7A7)は、コレステロールオゾン化生成物5aに対して良好な結合親和性(1μM未満)を有し、コレステロールを超える優れた特異性を有していた(1/1000未満の特異性)。
【0282】
上記のように、血液へのコレステロールオゾン化生成物4aの添加によって5aに迅速に変換されるため、4aアナログであるハプテンに対する抗5a抗体の精製は、あまり驚くべきことではない。
【0283】
抗体11C5およびFITC標識抗IgGに底歌いでのApoE欠損マウス由来の大動脈の凍結固定切片の免疫組織学的染色により、非特異的マウス抗体で染色した連続切片と比較した場合に、血管の内膜下層内のアテローム性動脈硬化症領域中にコレステロールオゾン化生成物5aの局在が示された。可溶性コレステロールでの抗体の吸収は、内膜下に蛍光を発しなかった。
【0284】
(参考文献)
【0285】
【表6】

【0286】
【表7】

【0287】
【表8】


【0288】
本明細書中に参照または記載した全ての特許および刊行物は、本発明に属する当業者の技術レベルを示し、このような各々の特許または刊行物は、その全体が個別に参考として援用されるかその全体が本明細書中に記載されているのと同一の範囲で本明細書中で参考として援用される。出願人は、任意のこのような引用した特許または刊行物からの任意のおよび全ての材料および情報を本明細書中に物理的に援用する権利を留保する。
【0289】
本明細書中に記載の特定の方法および組成物は、好ましい実施形態を代表および例示し、本発明の範囲を制限すると解釈することを意図しない。本明細書を考慮して、当業者は他の目的、態様、および実施形態を実施し、これらは特許請求の範囲に記載の本発明の精神の範囲内に含まれる。本発明の範囲および精神を逸脱することなく本明細書中に開示の本発明を様々に置換および修飾し得ることが当業者に容易に自明である。本明細書中に例示的に記載の本発明を、不可欠であると本明細書中で特に開示されていない任意の要素または制限の非存在下で実施し得る。本明細書中に例示的に記載されている方法およびプロセスを、工程の順序を変えて適切に実施することができ、本明細書中または特許請求の範囲に示した工程の順序に必ずしも制限されない。本明細書中および添付の特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」には、他で明確に記載されていない限り、複数形が含まれる。したがって、例えば、「宿主細胞(ahost cell)」には、このような宿主細胞の複数形(例えば、培養物または集団)などが含まれる。いかなる場合でも、本特許を、本明細書中に開示の特定の例、実施形態、または方法に制限されると解釈されない。いかなる場合でも、本特許を、任意の審査官、特許庁の任意の他の職員によって作製された記述が具体的に留保(qualification)または保留(reservation)することなく出願人の応答書で明確に採用されない限り、このような記述に制限されると解釈されない。
【0290】
使用した用語および表現は、説明のために使用し、本発明を制限せず、表示および記載した特徴の任意の等価物またはその一部を排除するためのこのような用語および表現の使用を意図しないが、特許請求の範囲に記載の発明の範囲内で種々の修正形態が可能であると認識される。したがって、本発明を好ましい実施形態および最適な特徴によって具体的に開示しているが、当業者は本明細書中に開示の概念の修正形態および変形形態を使用することができ、このような修正形態および変形形態は添付の特許請求の範囲に定義の本発明の範囲内に含まれると見なされると理解される。
【0291】
本発明を、本明細書中に広範且つ一般的に記載している。属概念の開示内に含まれるそれぞれのより狭い種概念および下位概念も本発明の一部を形成する。これには、除外された要素が具体的に本明細書中で引用されるかどうかに関係なく、類概念から任意の主題を除く条件または消極的限定を含む本発明の属概念の記述が含まれる。
【0292】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。さらに、本発明の特長または態様がマーカッシュ形式で記載されているが、当業者は、マーカッシュ形式により、本発明がマーカッシュ形式の任意の各選択肢(member)または選択肢の下位集団に関して記載されると認識する。
【図面の簡単な説明】
【0293】
【図1】図1A〜1Dは、4−β−ホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)処置ヒトアテローム硬化症病変によってインディゴカルミン1が酸化されてイサチンスルホン酸2を形成し得ることを示す。図1Aは、オゾンによるインディゴカルミン1のイサチンスルホン酸2への変換時に起こる化学変化を示す。図1Bは、PMA活性化アテローム硬化症病変によるインディゴカルミン1の脱色を示す。各ガラスバイアルは、インディゴカルミン1溶液(200μM)およびウシカタラーゼ(50μg)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、10mMリン酸ナトリウム、150mMNaCl)(pH7.4)中に等量のアテローム硬化性プラークの分散物(湿重量約50mg)を含んでいた。バイアルへのPMA(10μL、40μg/mL)のDMSO溶液の添加30分後に写真を撮った(右)。PMAを含まない同体積のDMSOをバイアルに添加した(左)。反応混合物の総体積は1mLであった。図1Cは、逆相HPLCによって分析したところ、図1Bに示す+PMAバイアルの上清中で新規のHPLCピークが得られることを示す。新規のピークは、イサチンスルホン酸2に対応し、保持時間(R)は約9.71分であった。図1Dは、上の図1Bに記載するインディゴカルミン1と反応した遠心分離したPMA活性化ヒトアテローム硬化性プラーク物質由来の上清の陰イオンエレクトロスプレー質量分析を示す。懸濁プラーク物質のPMA活性化が指標インディゴカルミン1を使用してH18O中有で行われた場合、単離された切断生成物であるイサチンスルホン酸2のマススペクトル中の[M−H]230マスフラグメントピークの概観および相対強度によって示されるように、約40%のインディゴカルミン1のラクタムカルボニル酸素18Oに組み込まれた。通常の水(H16O)の存在下でのインディゴカルミン1から形成されたイサチンスルホン酸2のマスフラグメントピーク[M−H]は228である。
【図2A】図2Aは、5aへのアルドール化(aldolization)によって変換し得る5,6−セコステロール4aを得るためのコレステロール3のオゾン分解に関与する化学的工程を示す。2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(2mMを含む0.08%HCl)での誘導化により、ヒドラゾン誘導体4bおよび5bがそれぞれ得られた。誘導過程中の4aから形成された5bの量は、約20%であった。K.Wang,E.Bermudez,W.A.Pryor,Steroids 58,225(1993)に記載のように、5aおよび5bの高次構造を割り当てた。
【図2B】図2Bは、オキシステロール6a〜9aおよび図3中の約18分で[M−H]579にて溶離したピークの標準として調査された2,4−塩酸ジニトロフェニルヒドラジン誘導体6b〜7bの構造を示す。7a〜7bの高次構造割り当ては、標準合成7b材料を使用したH−HROESY実験に基づいた。
【図3A】図3A〜Eは、液体クロマトグラフィ質量分析(LCMS)を使用したプラーク物質およびヒドラゾン4b、5b、および6bの化学合成された標準サンプルの分析を示す。条件:2,4−塩酸ジニトロフェニルヒドラジン(DNPHHCl)での誘導体化後のプラーク抽出物のAdsorbosphere−HS RP−C18カラム、75%アセトニトリル、20%水、5%メタノール、流速0.5mL/分、360nmでの検出、インライン陰イオンエレクトロスプレー質量分析(MS)(HitachiM8000装置)。図3Aは、PMA活性化を使用しないが、本明細書中に記載の2,4−ジニトロフェニルヒドラジンでの誘導体化後のプラーク物質のLCMS分析を示す。化合物4b(RT薬14.1分)、5b(RT約20.5分)、および6b(RT約18分)を、PMA(40μg/mL)での活性化前にアテローム硬化性病変中で検出した。
【図3B】図3A〜Eは、液体クロマトグラフィ質量分析(LCMS)を使用したプラーク物質およびヒドラゾン4b、5b、および6bの化学合成された標準サンプルの分析を示す。条件:2,4−塩酸ジニトロフェニルヒドラジン(DNPHHCl)での誘導体化後のプラーク抽出物のAdsorbosphere−HS RP−C18カラム、75%アセトニトリル、20%水、5%メタノール、流速0.5mL/分、360nmでの検出、インライン陰イオンエレクトロスプレー質量分析(MS)(HitachiM8000装置)。図3Bは、上記のPMA(40μg/mL)での活性化、抽出、および2,4−ジニトロフェニルヒドラジンでの誘導体化後のプラーク物質のLCMS分析を示す。PMA(40μg/mL)での活性化後のアテローム硬化性病変中に大量の化合物4b(RT約14.1分)だけでなく、少量の化合物6b(RT約18分)も検出された。
【図3C】図3A〜Eは、液体クロマトグラフィ質量分析(LCMS)を使用したプラーク物質およびヒドラゾン4b、5b、および6bの化学合成された標準サンプルの分析を示す。条件:2,4−塩酸ジニトロフェニルヒドラジン(DNPHHCl)での誘導体化後のプラーク抽出物のAdsorbosphere−HS RP−C18カラム、75%アセトニトリル、20%水、5%メタノール、流速0.5mL/分、360nmでの検出、インライン陰イオンエレクトロスプレー質量分析(MS)(HitachiM8000装置)。図3Cは、標準4bのHPLC分析を示し、挿入図は質量分析を示す。
【図3D】図3A〜Eは、液体クロマトグラフィ質量分析(LCMS)を使用したプラーク物質およびヒドラゾン4b、5b、および6bの化学合成された標準サンプルの分析を示す。条件:2,4−塩酸ジニトロフェニルヒドラジン(DNPHHCl)での誘導体化後のプラーク抽出物のAdsorbosphere−HS RP−C18カラム、75%アセトニトリル、20%水、5%メタノール、流速0.5mL/分、360nmでの検出、インライン陰イオンエレクトロスプレー質量分析(MS)(HitachiM8000装置)。図3Dは、標準6bのHPLC分析を示し、挿入図は質量分析を示す。
【図3E】図3A〜Eは、液体クロマトグラフィ質量分析(LCMS)を使用したプラーク物質およびヒドラゾン4b、5b、および6bの化学合成された標準サンプルの分析を示す。条件:2,4−塩酸ジニトロフェニルヒドラジン(DNPHHCl)での誘導体化後のプラーク抽出物のAdsorbosphere−HS RP−C18カラム、75%アセトニトリル、20%水、5%メタノール、流速0.5mL/分、360nmでの検出、インライン陰イオンエレクトロスプレー質量分析(MS)(HitachiM8000装置)。図3Eは、標準5bのHPLC分析を示し、挿入図は質量分析を示す。
【図4A】図4A〜Dは、100μLの注入体積を使用して微量のヒドラゾンを検出した抽出および誘導体化したアテローム硬化性物質のHPLC−MS分析を示す。図4Aは、上に詳述の条件を使用した強度に対するLCの時間の軌跡を示す。R26.7は、7bである(標準物質との比較による)。R約24.7でのピークは、[M−H]461の未知のヒドラゾンである。図4Bは、[M−H]597の単一イオンモニタリングを提供する。図4Cは、[M−H]579の単一イオンモニタリングを提供する。図4Dは、[M−H]461の単一イオンモニタリングを示す。
【図4B】図4A〜Dは、100μLの注入体積を使用して微量のヒドラゾンを検出した抽出および誘導体化したアテローム硬化性物質のHPLC−MS分析を示す。図4Aは、上に詳述の条件を使用した強度に対するLCの時間の軌跡を示す。R26.7は、7bである(標準物質との比較による)。R約24.7でのピークは、[M−H]461の未知のヒドラゾンである。図4Bは、[M−H]597の単一イオンモニタリングを提供する。図4Cは、[M−H]579の単一イオンモニタリングを提供する。図4Dは、[M−H]461の単一イオンモニタリングを示す。
【図4C】図4A〜Dは、100μLの注入体積を使用して微量のヒドラゾンを検出した抽出および誘導体化したアテローム硬化性物質のHPLC−MS分析を示す。図4Aは、上に詳述の条件を使用した強度に対するLCの時間の軌跡を示す。R26.7は、7bである(標準物質との比較による)。R約24.7でのピークは、[M−H]461の未知のヒドラゾンである。図4Bは、[M−H]597の単一イオンモニタリングを提供する。図4Cは、[M−H]579の単一イオンモニタリングを提供する。図4Dは、[M−H]461の単一イオンモニタリングを示す。
【図4D】図4A〜Dは、100μLの注入体積を使用して微量のヒドラゾンを検出した抽出および誘導体化したアテローム硬化性物質のHPLC−MS分析を示す。図4Aは、上に詳述の条件を使用した強度に対するLCの時間の軌跡を示す。R26.7は、7bである(標準物質との比較による)。R約24.7でのピークは、[M−H]461の未知のヒドラゾンである。図4Bは、[M−H]597の単一イオンモニタリングを提供する。図4Cは、[M−H]579の単一イオンモニタリングを提供する。図4Dは、[M−H]461の単一イオンモニタリングを示す。
【図5A】図5A〜Cは、患者A〜Nについてのアテローム硬化性抽出物中のコレステロールオゾン化生成物の濃度を示す。図5Aは、PMAでの活性化前後の患者のアテローム硬化性病変からの抽出および4aの誘導後のヒドラゾン4bの測定濃度を示す棒グラフである。棒グラフは、GraphPadPrism V3 for Macintoshを使用したスチューデントt検定(両側)(p<0.05、n=14)によって決定した活性化前後に検出された量の数値を示す。
【図5B】図5A〜Cは、患者A〜Nについてのアテローム硬化性抽出物中のコレステロールオゾン化生成物の濃度を示す。図5Bは、PMAでの活性化前後の患者のアテローム硬化性病変からの抽出および5aの誘導後のヒドラゾン5bの測定濃度を示す棒グラフである(n=14)。
【図5C】図5A〜Cは、患者A〜Nについてのアテローム硬化性抽出物中のコレステロールオゾン化生成物の濃度を示す。図5Cは、患者から採取した結晶サンプルからの抽出および5aの誘導化後の5bの測定濃度を示す棒グラフである。コホートA(n=8)患者に、24時間以内に頸動脈内膜摘除術を行った(サンプル採取3日後に血漿分析を行った)。コホートB(n=15)患者を、一般的な診療所に通院している患者から無作為に選択した(サンプル採取7日後に血漿分析を行った)。予備調査血漿レベルの5aで、1日あたり約5%減少することに留意のこと。このアッセイ条件下で、4bおよび5bの検出限界は1〜10nMであった。したがって、4bまたは5bが明らかでない場合、4bまたは5bのレベルは10nM未満であった。
【図6A】図6Aは、B細胞(WI−L2)細胞株に対する3、4a、および5aの細胞傷害性を示す。各データポイントは、少なくとも2つの測定値の平均である。4a(黒四角)および5a(黒上三角)のIC50±標準誤差を、GraphPadPrism v3.0 for Macintosh computerを使用した非線形回帰分析(Hillプロット分析)を使用して計算した。この濃度範囲で、3を使用した細胞傷害性(黒下三角)が認められなかった。
【図6B】図6Bは、T細胞(Jurkat)細胞株に対する3、4a、および5aの細胞傷害性を示す。各データポイントは、少なくとも2つの測定値の平均である。4a(黒四角)および5a(黒上四角)のIC50±標準誤差を、GraphPadPrism v3.0 for Macintosh computerを使用した非線形回帰分析(Hillプロット分析)を使用して計算した。この濃度範囲で、3を使用した細胞傷害性(黒下四角)が認められなかった。
【図7A】図7A〜Bは、コレステロールオゾン分解生成物4aおよび5aがマクロファージによって脂質負荷が増加して泡沫細胞を産生することを示す。図7Aは、J774.1マクロファージとインキュベートしたLDLがこのマクロファージの脂質負荷にほとんど影響を受けないことを示す。マクロファージを最初に10%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640中で24時間成長させ、その後、LDL(100μg/mL)を含む同一の培地中で72時間インキュベートした。細胞を4%ホルムアルデヒドで固定し、脂質粒子が暗赤色に染色されるようにヘマトキシリンおよびオイルレッドOで染色した。倍率は100倍である。
【図7B】図7A〜Bは、コレステロールオゾン分解生成物4aおよび5aがマクロファージによって脂質負荷が増加して泡沫細胞を産生することを示す。図7Bは、オゾン分解生成物4aとインキュベートしたLDLによりマクロファージの脂質負荷が誘導されて泡沫細胞が産生されることを示す。J774.1マクロファージを、10%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640中で24時間成長させた。次いで、細胞を、LDL(100μg/mL)およびオゾン分解生成物4a(20μM)を含む同一の培地中で72時間インキュベートした。細胞を4%ホルムアルデヒドで固定し、脂質粒子が暗赤色に染色されるようにヘマトキシリンおおよびオイルレッドOで染色した。倍率は100倍である。マクロファージに対するオゾン分解生成物4aの効果はオゾン分解生成物5aの効果と区別不可能であることに留意のこと。
【図8A】図8A〜Cは、円偏光二色性によって検出したところ、LDL中のタンパク質の二次構造がオゾン分解生成物4aまたは5aへの曝露によって変化することを示す。報告した結果は、各サンプルについて少なくとも2つの実験に由来する。図8Aは、正常LDLのタンパク質含有量はαヘリックス構造が大部分を占め(約40±2%)、β構造(約13±3%)、βターン(約20±3%)、およびランダムコイル(27±2%)はより少ないことを示す。図8Aは、37℃のPBS(pH7.4)中でのLDL(100μg/mL)の時間依存円偏光二色性を示す。
【図8B】図8A〜Cは、円偏光二色性によって検出したところ、LDL中のタンパク質の二次構造がオゾン分解生成物4aまたは5aへの曝露によって変化することを示す。報告した結果は、各サンプルについて少なくとも2つの実験に由来する。図8Bは、37℃のPBS(pH7.4)中でのオゾン分解生成物4aとのLDLのインキュベーションによってアポB−100の二次構造が喪失することを示す。図8Aは、37℃のPBS(pH7.4)中でのLDL(100μg/mL)の時間依存円偏光二色性および4a(10μM)を示す。
【図8C】図8A〜Cは、円偏光二色性によって検出したところ、LDL中のタンパク質の二次構造がオゾン分解生成物4aまたは5aへの曝露によって変化することを示す。報告した結果は、各サンプルについて少なくとも2つの実験に由来する。図8Cは、37℃のPBS(pH7.4)中でのオゾン分解生成物5aとのLDLのインキュベーションによってアポB−100の二次構造が喪失することを示す。図8Aは、37℃のPBS(pH7.4)中でのLDL(100μg/mL)の時間依存円偏光二色性および5a(10μM)を示す。
【図9】図9は、ダンシルヒドラジンコレステロールオゾン化生成物4aおよび5aの構造(それぞれ4dおよび5c)ならびにこれらのヒドラジン誘導体のHPLC溶離パターンを示す。示すように、コレステロールオゾン化生成物4aおよび5aにより、異なるHPLCの保持時間を有するダンシルヒドラゾン抱合体が得られる。
【図10】図10は、コレステロールオゾン化生成物を、ガスクロマトグラフィ質量分析(GCMS)によってヒト頸動脈試料で検出し得ることを示す。示したクロマトグラムは、典型的なアテローム硬化性抽出物である。22.49分で溶離されたピークは、コレステロールオゾン化生成物4aおよび5aの両方に対応するピークである。挿入した質量分析クロマトグラフは、22.49分で溶離された種がm/z354であることを示す。
【図11】図11は、ID−GCMSによる2つのアテローム硬化性プラーク(P1およびP2)の定量分析を提供する。コレステロールオゾン化生成物4aおよび5aの検出量は約80〜100pmol/mg組織であり、これはLC−MS分析によって検出された量に類似した。各バーは、2連の抽出物を示し、平均±SEMとして報告する。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アテローム硬化性プラーク中に生成された、コレステロールの単離されたオゾン化生成物。
【請求項2】
式4a:
【化1】

を有する、請求項1に記載のオゾン化生成物。
【請求項3】
式5a:
【化2】

を有する、請求項1に記載のオゾン化生成物。
【請求項4】
式6a〜15aまたは7c:
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

のいずれか1つを有する、請求項1に記載のオゾン化生成物。
【請求項5】
亜硫酸水素付加体、イミン、オキシム、ヒドラゾン、ダンシルヒドラゾン、セミカルバゾン、またはTollins試験の生成物を含むコレステロールオゾン化生成物の検出可能な誘導体であって、該コレステロールのオゾン化生成物がアテローム硬化性プラーク内に生成される、コレステロールオゾン化生成物の検出可能な誘導体。
【請求項6】
前記コレステロールのオゾン化生成物がアテローム硬化性プラーク内に生成される、コレステロールのオゾン化生成物のヒドラゾン誘導体。
【請求項7】
式4bまたは式4c:
【化7】

を有する、請求項6に記載のヒドラゾン誘導体。
【請求項8】
式5b:
【化8】

を有する、請求項6に記載のヒドラゾン誘導体。
【請求項9】
式6b〜15bまたは10c:
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

のいずれか1つを有する、請求項6に記載のヒドラゾン誘導体。
【請求項10】
式4d:
【化13】

を有する、請求項6に記載のダンシルヒドラゾン誘導体。
【請求項11】
式5c:
【化14】

を有する、請求項6に記載のダンシルヒドラゾン誘導体。
【請求項12】
式13aまたは13b:
【化15】

【化16】

を有するハプテンであって、該ハプテンを使用してコレステロールのオゾン化生成物またはヒドラゾン生成物と反応し得る抗体を生成し得る、ハプテン。
【請求項13】
式14aまたは14b:
【化17】

を有するハプテンであって、該ハプテンを使用してコレステロールのオゾン化生成物またはヒドラゾン生成物と反応し得る抗体を生成し得る、ハプテン。
【請求項14】
式3c:
【化18】

を有するハプテンであって、該ハプテンを使用してコレステロールのオゾン化生成物またはヒドラゾン生成物と反応し得る抗体を生成し得る、ハプテン。
【請求項15】
式15a:
【化19】

を有するハプテンであって、該ハプテンを使用してコレステロールのオゾン化生成物またはヒドラゾン生成物と反応し得る抗体を生成し得る、ハプテン。
【請求項16】
コレステロールのオゾン化生成物に結合し得る、単離された抗体。
【請求項17】
コレステロールのオゾン化生成物に結合し得る、モノクローナル抗体。
【請求項18】
前記コレステロールのオゾン化生成物が、式4a:
【化20】

を有する、請求項16または請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
前記コレステロールのオゾン化生成物が、式5a:
【化21】

を有する、請求項16または請求項17に記載の抗体。
【請求項20】
前記コレステロールのオゾン化生成物が、式6a〜14aまたは7c:
【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

のいずれか1つを有する、請求項16または請求項17に記載の抗体。
【請求項21】
前記抗体が、式15a:
【化26】

を有するハプテンに対して惹起された、請求項16または請求項17に記載の抗体。
【請求項22】
コレステロールのオゾン化生成物のヒドラゾン誘導体に結合し得る、単離された抗体。
【請求項23】
前記ヒドラゾン誘導体が、式4bまたは式4c:
【化27】

【化28】

を有する、請求項22に記載の単離された抗体。
【請求項24】
前記ヒドラゾン誘導体が、式5b:
【化29】

を有する、請求項22に記載の単離された抗体。
【請求項25】
前記ヒドラゾン誘導体が、式6b〜15bまたは式10c:
【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

のいずれか1つを有する、請求項22に記載の単離された抗体。
【請求項26】
前記単離された抗体が、式13aまたは14a:
【化34】

【化35】

を有するハプテンに対して惹起される、請求項22に記載の単離された抗体。
【請求項27】
前記単離された抗体が、式15a:
【化36】

を有するハプテンに対して惹起される、請求項22に記載の単離された抗体。
【請求項28】
ATCC受託番号PTA−5427またはPTA−5428を有するハイブリドーマKA1−11C5:6またはKA1−7A6:6に由来する、単離された抗体。
【請求項29】
ATCC受託番号PTA−5429およびPTA−5430を有するハイブリドーマKA2−8F6:4またはKA2−1E9:4に由来する、単離された抗体。
【請求項30】
患者においてアテローム性動脈硬化症を検出するための方法であって、コレステロールのオゾン化生成物が患者から得た試験サンプル中に存在するかどうかを検出する工程を包含する、方法。
【請求項31】
前記オゾン化生成物がアテローム硬化性プラークによって生成される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記試験サンプルが、血清、血漿、血液、アテローム硬化性プラーク物質、尿、または脈管組織である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記オゾン化生成物が、式4a:
【化37】

を有する化合物である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記オゾン化生成物が、式5a:
【化38】

を有する化合物である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記オゾン化生成物が、式6a〜15aまたは7c:
【化39】

【化40】

【化41】

のいずれか1つを有する化合物である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、前記試験サンプルと、亜硫酸水素塩、アンモニア、シッフ塩基、芳香族ヒドラジンまたは脂肪族ヒドラジン、ダンシルヒドラジン、ジェラード(Gerard)試薬、Tollins試験試薬とを反応させる工程、およびこのような反応によって形成されるコレステロールのオゾン化生成物の誘導体を検出する工程をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、前記試験サンプルをヒドラジン化合物と反応させてコレステロールのオゾン化生成物のヒドラゾン誘導体を生成する工程をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記ヒドラジン化合物が2,4−ジニトロフェニルヒドラジンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ヒドラゾン誘導体が、式4bまたは式4c:
【化42】

を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記ヒドラゾン誘導体が、式5b:
【化43】

を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記ヒドラゾン誘導体が、式6b〜15bまたは式10c:
【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

のいずれか1つを有する、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記方法が、前記試験サンプルをダンシルヒドラジンと反応させてコレステロールのオゾン化生成物のダンシルヒドラゾン誘導体を生成する工程をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項43】
前記ダンシルヒドラゾン誘導体が、式4dまたは5c:
【化49】

【化50】

を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、試験サンプルとコレステロールのオゾン化生成物に結合し得る抗体と接触させる工程をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体が、式13aまたは14a:
【化51】

【化52】

を有するハプテンに対して惹起される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体が、式15a:
【化53】

を有するハプテンに対して惹起される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記抗体が、ATCC受託番号PTA−5427またはPTA−5428を有するハイブリドーマKA1−11C5:6またはKA1−7A6:6に由来する、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体が、ATCC受託番号PTA−5429およびPTA−5430を有するハイブリドーマKA2−8F6:4またはKA2−1E9:4に由来する、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体が、式4a:
【化54】

を有する化合物に結合し得る、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体が、式5a:
【化55】

を有する化合物に結合し得る、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体が、式6a〜15aまたは7c:
【化56】

【化57】

【化58】

【化59】

のいずれか1つを有する化合物に結合し得る、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
患者のアテローム硬化性プラークによってコレステロールのオゾン化生成物が放出されるかどうかを検出するための方法であって、
コレステロールのオゾン化生成物が患者から得た試験サンプル中に存在するかどうかを検出する工程であって、ここで、該オゾン化生成物が式5a:
【化60】

を含む化合物である、工程
を包含する、方法。
【請求項53】
患者のアテローム性動脈硬化症を検出するための方法であって、
患者由来の試験サンプルに2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを添加する工程、および
コレステロールのオゾン化生成物のヒドラゾン誘導体が該試験サンプル中に存在するかどうかを検出する工程
を包含する、方法。
【請求項54】
前記ヒドラゾン誘導体が、式4b、4c、5b、6b、7b、8b、9b、10b、10c、11b、12b、13b、14b、または15b:
【化61】

【化62】

【化63】

【化64】

【化65】

を有する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
患者のアテローム性動脈硬化症を検出するための方法であって、
患者由来の試験サンプルにダンシルヒドラジンを添加する工程、および
コレステロールのオゾン化生成物のダンシルヒドラゾン誘導体が前記試験サンプル中に存在するかどうかを検出する工程
を包含する、方法。
【請求項56】
前記ダンシルヒドラゾン誘導体が、式4dまたは5c:
【化66】

を有する化合物である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
コレステロールオゾン分解生成物が試験サンプル中に存在するかどうかを検出するための方法であって、
マクロファージを該試験サンプルと接触させる工程、および
マクロファージによる脂質取り込みが増加するかどうかを決定する工程
を包含する、方法。
【請求項58】
患者のアテローム性動脈硬化症を検出するための方法であって、
マクロファージを該患者由来の試験サンプルと接触させる工程、および
マクロファージによる脂質取り込みが増加するかどうかを決定する工程
を包含する、方法。
【請求項59】
試験サンプル中のコレステロールオゾン分解生成物を検出するための方法であって、
低密度リポタンパク質を該試験サンプルと接触させる工程、および
該低密度リポタンパク質の二次構造が変化するかどうかを観察する工程
を包含する、方法。
【請求項60】
患者のアテローム性動脈硬化症を検出するための方法であって、
低密度リポタンパク質を該患者から得た試験サンプルと接触させる工程、および
該低密度リポタンパク質の二次構造が変化するかどうかを観察する工程
を包含する、方法。
【請求項61】
試験サンプル中のコレステロールオゾン分解生成物を検出するための方法であって、
アポタンパク質B100を該試験サンプルと接触させる工程、および
該アポタンパク質B100の二次構造が変化するかどうかを観察する工程
を包含する、方法。
【請求項62】
患者のアテローム性動脈硬化症を検出するための方法であって、
アポタンパク質B100を該患者から得た試験サンプルと接触させる工程、および
該アポタンパク質B100の二次構造が変化するかどうかを観察する工程
を包含する、方法。
【請求項63】
前記低密度リポタンパク質またはアポタンパク質B100の二次構造が、円偏光二色性によって観察される、請求項57〜請求項62のいずれか1項に記載の方法。

【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−504250(P2007−504250A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525517(P2006−525517)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/029063
【国際公開番号】WO2005/023831
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Macintosh
【出願人】(501244222)ザ スクリプス リサーチ インスティテュート (33)
【Fターム(参考)】