説明

コレステロール低下剤−胆汁酸腸管吸収抑制物質

【課題】肥満、高脂血症、動脈硬化症、脂肪蓄積症などの治療に用いる新規胆汁酸腸管吸収抑制物質の提供。
【解決手段】胆汁酸の腸管からの再吸収量を顕著に減少させ、肝臓でのコレステロールから胆汁酸への異化作用を促進し、血中コレステロール量を効率的に低下させる分子インプリントポリマーである分子認識高分子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に胆汁酸の腸管における能動輸送系を介した吸収を抑制することにより、肥満、高脂血症、動脈硬化症、脂肪蓄積症などの治療に用いられる、分子認識および捕捉能を持つ胆汁酸腸管吸収抑制物質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脂肪の過剰摂取に伴う肥満、あるいは、血中コレステロール値の増大を原因とする、高脂血症、動脈硬化症、あるいは、脂肪蓄積症患者が増加しつつある。体内コレステロールの80〜90%は、肝臓で胆汁酸に異化された後、腸管内に排泄される。排泄された胆汁酸の95%以上は腸管から再吸収されて、腸肝循環を行いながら小腸内脂肪の消化吸収に効率的に利用される。また、残りの5%以下は、糞便として排泄される(牧野勲他:代謝,24(8) ,685(1987) )。したがって、血中コレステロール値を低下させるためには、コレステロールから胆汁酸への異化作用を促進させることが有効と考えられる。
【0003】
この考え方に基づき、種々の胆汁酸吸着剤を経口投与する薬物療法が、高脂血症等の治療に用いられている(特公平1−18884、特開平2−212505、特開平3−35005)。例えば、クエストラン(ブリストルマイヤーズ社製、米国特許第3499960号、米国特許第3780171号)は、水不溶性の陰イオン交換樹脂で、腸内に分泌された胆汁酸を樹脂に吸着させて糞便中に排泄させる。その結果、肝臓でのコレステロールから胆汁酸への異化作用が促進されて、血中コレステロール値が低下するという。
【0004】
また、従来、分子インプリントポリマーを製造する技術としては、(1)鋳型分子の存在下に、必要に応じて架橋剤を使用して、個々のモノマーを重合し、得られたポリマーから鋳型分子を除去して分子インプリントポリマーを得る方法(架橋重合法)、及び(2)溶解又は溶融したポリマーに鋳型分子を溶解させて、ポリマーの官能基と共有又は非共有結合させて固化した後、鋳型分子を除去する方法(相転換法)が知られている。(例えば、特許文献1、2及び非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−523465号公報
【特許文献2】特開2003−40807号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】化学,Vol,57,No.3(2002),64−65
【非特許文献2】J Am Chem Soc.131(41):14699−702(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、クエストランの使用に見られるように、従来の胆汁酸吸着剤による治療においては、その有効投与量が9g/日・3回と非常に多量であるという難点を有している。
【0008】
また、クエストランは、胆汁酸に特異な親和性を有していないため、胆汁酸以外の酸性タンパク質、アミノ酸、有機酸なども吸着除去してしまう恐れがある。
【0009】
従って、本発明は、少量で高効率を有する胆汁酸の分子認識および捕捉機能を有する分子認識高分子を含有する高分子組成物、及び該組成物の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
胆汁酸の腸管での再吸収は、主に、回腸に局在する能動輸送系により主に行われている。すなわち、その再吸収には、胆汁酸に対して特異的親和性を有するキャリアーが関与している。このキャリアーは、胆汁酸のステロイド骨格を認識する部位、アニオン基を認識する部位、カチオン基を認識する部位の3つの部位を有することが報告されている。また、このキャリアーに対する親和性の程度は、トリヒドロキシ胆汁酸>ジヒドロキシ胆汁酸>モノヒドロキシ胆汁酸の順であり、抱合型の方が遊離型よりも親和性が高いと言われている(牧野勲他:代謝,24(8) ,685(1987) )。したがって、このキャリアーに親和性を有する物質は、拮抗的に内因性の胆汁酸の腸管吸収を抑制する可能性がある。本発明は、この考えに基づいて立案されたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、胆汁酸を高選択的に分子認識、および、捕捉する能力を持つ高分子からなる胆汁酸腸管吸収抑制物質に関する。本発明においては、分子認識(インプリント)法による胆汁酸吸収抑制物質の製造を行う。分子インプリント法は、認識、捕捉等の対象となる特定物質を鋳型分子とし、この鋳型分子と相補的な空隙や表面構造(選択認識性のある分子認識サイト)を高分子中に形成する技術である。ここで主体をなす高分子は、胆汁酸の能動輸送を行うキャリアーに対して親和性を有する物質であり、このキャリアーに結合して内因性の胆汁酸の腸管吸収を拮抗的に抑制するという作用機序を発現する。該分子認識高分子は、回腸に局在する胆汁酸のキャリアーに特異的に結合する能力が付与され、しかもそれ自身が高分子であることから、腸管から容易に吸収されない特徴を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明による胆汁酸吸収抑制物質は、胆汁酸の再吸収を特異的に阻害し、また、有用物質の腸管吸収を妨げることなく、より安全で効率的に胆汁酸の再吸収を抑制し得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
鋳型分子の存在下に、必要に応じて架橋剤を使用して、個々のモノマーを重合し、得られたポリマーから鋳型分子を除去して分子インプリントポリマーを得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胆汁酸を、高効率、特異的に吸着する分子認識高分子からなる胆汁酸腸管吸収抑物質。

【公開番号】特開2012−224590(P2012−224590A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94633(P2011−94633)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(711004562)
【出願人】(511100866)
【Fターム(参考)】