説明

コレステロール低下薬、中性脂肪低下薬、血糖値低下薬、コレステロール吸着剤、吸着剤、中性脂肪吸着剤、健康食品、健康補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、医薬部外品、及び、医薬品

【課題】高い安全性を有するコレステロール低下薬、中性脂肪低下薬、血糖値低下薬、コレステロール吸着剤、中性脂肪吸着剤を提供する。
【解決手段】コレステロール低下薬、中性脂肪低下薬、血糖値低下薬、コレステロール吸着剤、中性脂肪吸着剤は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステロール低下薬、中性脂肪低下薬、血糖値低下薬、コレステロール吸着剤、吸着剤、中性脂肪吸着剤、健康食品、健康補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、医薬部外品、及び、医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
体内のコレステロールの殆どは肝臓で胆汁酸に異化され、このようにコレステロールから生合成された胆汁酸は、胆管を通して腸管内に分泌され、小腸内の脂肪吸収を助けている。分泌された胆汁酸は、その95%以上が腸管から再吸収され、体外に排出されるのは5%以下である。よって、血液中のコレステロール値を低下させるための一手段として、腸管内の胆汁酸を吸着除去させることで、胆汁酸の循環を抑制し、コレステロールから胆汁酸への異化作用を促進する方法が知られている。そして、活性炭を用いてコレステロールを低下させる技術が、例えば、特開昭62−112565、特開2002−020297から周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−112565
【特許文献2】特開2002−020297
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コレステロールから胆汁酸への異化作用を促進する薬剤として、陰イオン交換樹脂であるコレスチラミンが広く臨床応用されている。しかしながら、コレスチラミンは1日の投与量が8グラム乃至12グラムと多く、また、副作用として腹部膨満感や便秘等が発生する。また、スタチン系製剤(肝臓のHMG−CoA還元酵素阻害薬)が使用されているが、場合によっては、その重篤な副作用のため安全性が危ぶまれている。そのため、コレステロール吸着能力に優れた、副作用の少ない代替物質が望まれている。活性炭を用いてコレステロールを低下させる従来技術にあっては、コレスチラミンと比較してコレステロール吸着量が少ないといった問題がある。また、活性炭を用いて中性脂肪を低下させる技術、血糖値を低下させる技術は、本発明者が調べた限りでは知られていない。
【0005】
従って、本発明の目的は、高い安全性を有するコレステロール低下薬、中性脂肪低下薬、血糖値低下薬、コレステロール吸着剤、中性脂肪吸着剤、吸着剤を提供することにあり、また、係るコレステロール吸着剤及び/又は中性脂肪吸着剤を含む健康食品、健康補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、医薬部外品、及び、医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明のコレステロール低下薬は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む。
【0007】
本発明のコレステロール低下薬にあっては、蛋白質の共存がコレステロール低下能に影響を与えない形態とすることができるし、あるいは又、塩化ナトリウム(電解質)の共存がコレステロール低下能に影響を与えない形態とすることができる。ここで、蛋白質の共存がコレステロール低下能に影響を与えないとは、本発明のコレステロール低下薬と蛋白質とが共存した場合であっても、本発明のコレステロール低下薬のコレステロール低下能が低下しないこと、定量的には、血中のコレステロール値が、本発明のコレステロール低下薬を服用しないコントロールに対して、t検定又はU検定におけるP値が0.05以下であることを意味し、塩化ナトリウム(電解質)の共存がコレステロール低下能に影響を与えないとは、本発明のコレステロール低下薬と塩化ナトリウム(電解質)とが共存した場合であっても、本発明のコレステロール低下薬のコレステロール低下能が低下しないこと、定量的には、血中のコレステロール値が、本発明のコレステロール低下薬を服用しないコントロールと比較して、t検定又はU検定におけるP値が0.05以下であることを意味する。
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の中性脂肪低下薬は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む。
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の血糖値低下薬は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明のコレステロール吸着剤は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む。尚、多孔質炭素材料には、化学処理が施され、又は、分子修飾が施されていてもよい。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の中性脂肪吸着剤は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む。尚、多孔質炭素材料には、化学処理が施され、又は、分子修飾が施されていてもよい。
【0012】
本発明のコレステロール低下薬は、本発明の中性脂肪低下薬を包含してもよいし、本発明の血糖値低下薬を包含してもよいし、本発明の中性脂肪低下薬及び本発明の血糖値低下薬を包含してもよい。本発明の中性脂肪低下薬は、本発明の血糖値低下薬を包含してもよい。本発明のコレステロール吸着剤は、本発明の中性脂肪吸着剤を包含してもよい。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る吸着剤は、多孔質炭素材料から成り、コール酸ナトリウムの吸着量が150ミリグラム/グラム以上であり、分子量が1×104以上の分子の存在下でのコール酸ナトリウムの選択吸着率が3以上である。尚、1×104以上の分子として、例えば、α−アミラーゼ等の酵素又は蛋白質を挙げることができる。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る吸着剤は、多孔質炭素材料から成り、コール酸ナトリウムの吸着量が150ミリグラム/グラム以上であり、分子量が1×103以下の分子の存在下でのコール酸ナトリウムの選択吸着率が1.1以上である。尚、1×103以下の分子として、ビタミンK1等の有機化合物を挙げることができる。
【0015】
上記の目的を達成するための本発明の第3の態様に係る吸着剤は、多孔質炭素材料から成り、コール酸ナトリウムの吸着量が150ミリグラム/グラム以上であり、ミネラルの存在下でのコール酸ナトリウムの選択吸着率が6以上である。尚、ミネラルとして、カルシウム化合物(具体的には、例えば、硫酸カルシウム、炭化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、リン化カルシウム、酢酸カルシウム)、又は、マグネシウム化合物(具体的には、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水素化マグネシウム、二ホウ化マグネシウム、硫化マグネシウム、窒化マグネシウム、塩化マグネシウム)を挙げることができる。
【0016】
ここで、コール酸ナトリウムの選択吸着率とは、(コール酸ナトリウムの吸着率)/(比較対象物質の吸着率)と定義される。尚、比較対象物質とは、分子量が1×103以下の分子(本発明の第1の態様に係る吸着剤)、分子量が1×103以下の分子(本発明の第2の態様に係る吸着剤)、ミネラル(本発明の第3の態様に係る吸着剤)である。
【0017】
上記の目的を達成するための本発明の健康食品、本発明の健康補助食品、本発明の栄養機能食品、本発明の特定保健用食品、本発明の医薬部外品、あるいは、本発明の医薬品は、上記の好ましい形態を含む本発明のコレステロール吸着剤、及び/又は、上記の好ましい形態を含む本発明の中性脂肪吸着剤を含む。ここで、本発明の健康食品及び健康補助食品は食品衛生法で規定され、本発明の栄養機能食品及び特定保健用食品は健康増進法・食品衛生法で規定され、本発明の医薬部外品及び医薬品は薬事法で規定される。具体的には、本発明の健康食品とは、健康の保持増進に役立つ機能を有する食品を意味し、本発明の健康補助食品とは、毎日の食事だけでは十分に取ることのできない栄養素を補うための食品を意味し、本発明の栄養機能食品とは、栄養素(ビタミン・ミネラル)の補給のために利用される食品で、栄養素の機能を表示するものを意味し、本発明の特定保健用食品とは、食生活において特定の保健の目的で摂取する者に対し、その摂取によってこの特定の保健の目的が期待できる旨の表示をする食品を意味し、本発明の医薬部外品とは、薬事法に定められた、医薬品と化粧品の中間的な分類で、人体に対する作用の緩やかなもので、機械器具でないものを意味し、本発明の医薬品とは、飲んだり(内服)、塗ったり(外用)、注射することで、人や動物の疾病の診断、治療、予防を行うためのものを意味する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコレステロール低下薬、中性脂肪低下薬、血糖値低下薬、コレステロール吸着剤、中性脂肪吸着剤、吸着剤、健康食品、健康補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、医薬部外品、あるいは、医薬品にあっては、これらに含まれる多孔質炭素材料(以下、『本発明における多孔質炭素材料』と呼ぶ場合がある)の比表面積の値、各種細孔の容積の値が規定されているので、高効率にて血液中のコレステロール値、中性脂肪値、血糖値を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例4、比較例4及び参考例における血中総コレステロール濃度の測定結果、及び、血中中性脂肪濃度の測定結果を示すグラフである。
【図2】図2の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例4、比較例4及び参考例における血中グルコース値の測定結果、及び、試験終了後の肝臓のコレステロール濃度の測定結果を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例4、比較例4及び参考例におけるモデルラットの体重に対する相対肝臓重量の測定結果を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例5、比較例5A及び比較例5Bにおけるコール酸ナトリウムの選択吸着率の測定結果を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例1B、比較例2及び比較例5Bの、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明のコレステロール低下薬、中性脂肪低下薬、血糖値低下薬、コレステロール吸着剤、中性脂肪吸着剤、健康食品、健康補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、医薬部外品、及び、医薬品、全般に関する説明
2.実施例1(本発明のコレステロール低下薬及びコレステロール吸着剤)
3.実施例2(本発明の中性脂肪低下薬及び中性脂肪吸着剤)
4.実施例3(実施例1の変形)
5.実施例4(本発明のコレステロール低下薬、中性脂肪低下薬及び血糖値低下薬)
6.実施例5(本発明の第1の態様〜第3の態様に係る吸着剤)
7.実施例6(本発明の健康食品、健康補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、医薬部外品、及び、医薬品)、その他
【0021】
[本発明のコレステロール低下薬、中性脂肪低下薬、血糖値低下薬、コレステロール吸着剤、中性脂肪吸着剤、吸着剤、健康食品、健康補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、医薬部外品、及び、医薬品、全般に関する説明]
本発明における多孔質炭素材料は、植物由来の材料を原料とすることができる。ここで、植物由来の材料として、米(稲)、大麦、小麦、ライ麦、稗(ヒエ)、粟(アワ)等の籾殻や藁、珈琲豆、茶葉(例えば、緑茶や紅茶等の葉)、サトウキビ類(より具体的には、サトウキビ類の絞り滓)、トウモロコシ類(より具体的には、トウモロコシ類の芯)、果実の皮(例えば、ミカンやバナナの皮等)、あるいは又、葦、茎ワカメを挙げることができるが、これらに限定するものではなく、その他、例えば、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類、海草を挙げることができる。尚、これらの材料を、原料として、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また、植物由来の材料の形状や形態も特に限定はなく、例えば、籾殻や藁そのものでもよいし、あるいは乾燥処理品でもよい。更には、ビールや洋酒等の飲食品加工において、発酵処理、焙煎処理、抽出処理等の種々の処理を施されたものを使用することもできる。特に、産業廃棄物の資源化を図るという観点から、脱穀等の加工後の藁や籾殻を使用することが好ましい。これらの加工後の藁や籾殻は、例えば、農業協同組合や酒類製造会社、食品会社、食品加工会社から、大量、且つ、容易に入手することができる。
【0022】
本発明における多孔質炭素材料の原料を、ケイ素(Si)を含有する植物由来の材料とする場合、具体的には、限定するものではないが、多孔質炭素材料は、ケイ素(Si)の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素(Si)の含有率が、5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることが望ましい。
【0023】
本発明における多孔質炭素材料は、例えば、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって得ることができる。このような本発明における多孔質炭素材料の製造方法(以下、単に、『多孔質炭素材料の製造方法』と呼ぶ場合がある)において、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化することにより得られた材料であって、酸又はアルカリでの処理を行う前の材料を、『多孔質炭素材料前駆体』あるいは『炭素質物質』と呼ぶ。
【0024】
多孔質炭素材料の製造方法において、酸又はアルカリでの処理の後、賦活処理を施す工程を含めることができるし、賦活処理を施した後、酸又はアルカリでの処理を行ってもよい。また、このような好ましい形態を含む多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、植物由来の材料を炭素化する前に、炭素化のための温度よりも低い温度(例えば、400゜C〜700゜C)にて、酸素を遮断した状態で植物由来の材料に加熱処理(予備炭素化処理)を施してもよい。これによって、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を抽出することが出来る結果、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。尚、酸素を遮断した状態は、例えば、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気とすることで、あるいは又、真空雰囲気とすることで、あるいは又、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とすることで達成することができる。また、多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、植物由来の材料中に含まれるミネラル成分や水分を減少させるために、また、炭素化の過程での異臭の発生を防止するために、植物由来の材料をアルコール(例えば、メチルアルコールやエチルアルコール、イソプロピルアルコール)に浸漬してもよい。尚、多孔質炭素材料の製造方法にあっては、その後、予備炭素化処理を実行してもよい。不活性ガス中で加熱処理を施すことが好ましい材料として、例えば、木酢液(タールや軽質油分)を多く発生する植物を挙げることができる。また、アルコールによる前処理を施すことが好ましい材料として、例えば、ヨウ素や各種ミネラルを多く含む海藻類を挙げることができる。
【0025】
多孔質炭素材料の製造方法にあっては、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化するが、ここで、炭素化とは、一般に、有機物質(本発明における多孔質炭素材料にあっては、植物由来の材料)を熱処理して炭素質物質に変換することを意味する(例えば、JIS M0104−1984参照)。尚、炭素化のための雰囲気として、酸素を遮断した雰囲気を挙げることができ、具体的には、真空雰囲気、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とする雰囲気を挙げることができる。炭素化温度に至るまでの昇温速度として、限定するものではないが、係る雰囲気下、1゜C/分以上、好ましくは3゜C/分以上、より好ましくは5゜C/分以上を挙げることができる。また、炭素化時間の上限として、10時間、好ましくは7時間、より好ましくは5時間を挙げることができるが、これに限定するものではない。炭素化時間の下限は、植物由来の材料が確実に炭素化される時間とすればよい。また、植物由来の材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。植物由来の材料を予め洗浄してもよい。あるいは又、得られた多孔質炭素材料前駆体や多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。あるいは又、賦活処理後の多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。更には、最終的に得られた多孔質炭素材料に殺菌処理を施してもよい。炭素化のために使用する炉の形式、構成、構造に制限はなく、連続炉とすることもできるし、回分炉(バッチ炉)とすることもできる。
【0026】
多孔質炭素材料の製造方法において、上述したとおり、賦活処理を施せば、孔径が2nmよりも小さいマイクロ細孔(後述する)を増加させることができる。賦活処理の方法として、ガス賦活法、薬品賦活法を挙げることができる。ここで、ガス賦活法とは、賦活剤として酸素や水蒸気、炭酸ガス、空気等を用い、係るガス雰囲気下、700゜C乃至1400゜Cにて、好ましくは700゜C乃至1000゜Cにて、より好ましくは800゜C乃至950゜Cにて、数十分から数時間、多孔質炭素材料を加熱することにより、多孔質炭素材料中の揮発成分や炭素分子により微細構造を発達させる方法である。尚、より具体的には、加熱温度は、植物由来の材料の種類、ガスの種類や濃度等に基づき、適宜、選択すればよい。薬品賦活法とは、ガス賦活法で用いられる酸素や水蒸気の替わりに、塩化亜鉛、塩化鉄、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸等を用いて賦活させ、塩酸で洗浄、アルカリ性水溶液でpHを調整し、乾燥させる方法である。
【0027】
前述したとおり、本発明における多孔質炭素材料の表面に対して、化学処理又は分子修飾を行ってもよい。化学処理として、例えば、硝酸処理により表面にカルボキシ基を生成させる処理を挙げることができる。また、水蒸気、酸素、アルカリ等による賦活処理と同様の処理を行うことにより、多孔質炭素材料の表面に水酸基、カルボキシ基、ケトン基、エステル基等、種々の官能基を生成させることもできる。更には、多孔質炭素材料と反応可能な水酸基、カルボキシ基、アミノ基等を有する化学種又は蛋白質とを化学反応させることでも、分子修飾が可能である。
【0028】
多孔質炭素材料の製造方法にあっては、酸又はアルカリでの処理によって、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去する。ここで、ケイ素成分として、二酸化ケイ素や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素酸化物を挙げることができる。このように、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去することで、高い比表面積を有する多孔質炭素材料を得ることができる。場合によっては、ドライエッチング法に基づき、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去してもよい。
【0029】
本発明における多孔質炭素材料には、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)や、リン(P)、硫黄(S)等の非金属元素や、遷移元素等の金属元素が含まれていてもよい。マグネシウム(Mg)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、カリウム(K)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、カルシウム(Ca)の含有率として0.05重量%以上3重量%以下、リン(P)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、硫黄(S)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下を挙げることができる。尚、これらの元素の含有率は、比表面積の値の増加といった観点からは、少ない方が好ましい。多孔質炭素材料には、上記した元素以外の元素を含んでいてもよく、上記した各種元素の含有率の範囲も、変更し得ることは云うまでもない。
【0030】
本発明における多孔質炭素材料にあっては、各種元素の分析を、例えば、エネルギー分散型X線分析装置(例えば、日本電子株式会社製のJED−2200F)を用い、エネルギー分散法(EDS)により行うことができる。ここで、測定条件を、例えば、走査電圧15kV、照射電流10μAとすればよい。
【0031】
本発明における多孔質炭素材料は、細孔(ポア)を多く有している。細孔として、孔径が2nm乃至50nmの『メソ細孔』、及び、孔径が2nmよりも小さい『マイクロ細孔』が含まれる。具体的には、メソ細孔として、例えば、20nm以下の孔径の細孔を多く含み、特に、10nm以下の孔径の細孔を多く含んでいる。また、マイクロ細孔として、例えば、孔径が1.9nm程度の細孔と、1.5nm程度の細孔と、0.8nm〜1nm程度の細孔とを多く含んでいる。本発明における多孔質炭素材料にあっては、BJH法及びMP法による細孔の容積は0.1cm3/グラム以上であるが、0.3cm3/グラム以上であることが一層好ましい。
【0032】
本発明における多孔質炭素材料において、窒素BET法による比表面積の値(以下、単に、『比表面積の値』と呼ぶ場合がある)は、より一層優れた機能性を得るために、好ましくは50m2/グラム以上、より好ましくは100m2/グラム以上、更に一層好ましくは400m2/グラム以上であることが望ましい。
【0033】
窒素BET法とは、吸着剤(ここでは、多孔質炭素材料)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータを式(1)で表されるBET式に基づき解析する方法であり、この方法に基づき比表面積や細孔容積等を算出することができる。具体的には、窒素BET法により比表面積の値を算出する場合、先ず、多孔質炭素材料に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、吸着等温線を求める。そして、得られた吸着等温線から、式(1)あるいは式(1)を変形した式(1’)に基づき[p/{Va(p0−p)}]を算出し、平衡相対圧(p/p0)に対してプロットする。そして、このプロットを直線と見なし、最小二乗法に基づき、傾きs(=[(C−1)/(C・Vm)])及び切片i(=[1/(C・Vm)])を算出する。そして、求められた傾きs及び切片iから式(2−1)、式(2−2)に基づき、Vm及びCを算出する。更には、Vmから、式(3)に基づき比表面積asBETを算出する(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第66頁参照)。尚、この窒素BET法は、JIS R 1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準じた測定方法である。
【0034】
a=(Vm・C・p)/[(p0−p){1+(C−1)(p/p0)}] (1)
[p/{Va(p0−p)}]
=[(C−1)/(C・Vm)](p/p0)+[1/(C・Vm)] (1’)
m=1/(s+i) (2−1)
C =(s/i)+1 (2−2)
sBET=(Vm・L・σ)/22414 (3)
【0035】
但し、
a:吸着量
m:単分子層の吸着量
p :窒素の平衡時の圧力
0:窒素の飽和蒸気圧
L :アボガドロ数
σ :窒素の吸着断面積
である。
【0036】
窒素BET法により細孔容積Vpを算出する場合、例えば、求められた吸着等温線の吸着データを直線補間し、細孔容積算出相対圧で設定した相対圧での吸着量Vを求める。この吸着量Vから式(4)に基づき細孔容積Vpを算出することができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第65頁参照)。尚、窒素BET法に基づく細孔容積を、以下、単に『細孔容積』と呼ぶ場合がある。
【0037】
p=(V/22414)×(Mg/ρg) (4)
【0038】
但し、
V :相対圧での吸着量
g:窒素の分子量
ρg:窒素の密度
である。
【0039】
メソ細孔の孔径は、例えば、BJH法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。BJH法は、細孔分布解析法として広く用いられている方法である。BJH法に基づき細孔分布解析をする場合、先ず、多孔質炭素材料に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、脱着等温線を求める。そして、求められた脱着等温線に基づき、細孔が吸着分子(例えば窒素)によって満たされた状態から吸着分子が段階的に着脱する際の吸着層の厚さ、及び、その際に生じた孔の内径(コア半径の2倍)を求め、式(5)に基づき細孔半径rpを算出し、式(6)に基づき細孔容積を算出する。そして、細孔半径及び細孔容積から細孔径(2rp)に対する細孔容積変化率(dVp/drp)をプロットすることにより細孔分布曲線が得られる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第85頁〜第88頁参照)。
【0040】
p=t+rk (5)
pn=Rn・dVn−Rn・dtn・c・ΣApj (6)
但し、
n=rpn2/(rkn−1+dtn2 (7)
【0041】
ここで、
p:細孔半径
k:細孔半径rpの細孔の内壁にその圧力において厚さtの吸着層が吸着した場合のコア半径(内径/2)
pn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔容積
dVn:そのときの変化量
dtn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの吸着層の厚さtnの変化量
kn:その時のコア半径
c:固定値
pn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔半径
である。また、ΣApjは、j=1からj=n−1までの細孔の壁面の面積の積算値を表す。
【0042】
マイクロ細孔の孔径は、例えば、MP法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。MP法により細孔分布解析を行う場合、先ず、多孔質炭素材料に窒素を吸着させることにより、吸着等温線を求める。そして、この吸着等温線を吸着層の厚さtに対する細孔容積に変換する(tプロットする)。そして、このプロットの曲率(吸着層の厚さtの変化量に対する細孔容積の変化量)に基づき細孔分布曲線を得ることができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第72頁〜第73頁、第82頁参照)。
【0043】
あるいは又、多孔質炭素材料は、水銀圧入法による細孔分布において1×10-7m乃至5×10-6mの範囲にピークを有し、且つ、BJH法による細孔分布において2nm乃至20nmの範囲にピークを有する構成とすることができる。そして、この場合、更には、水銀圧入法による細孔分布において2×10-7m乃至2×10-6mの範囲にピークを有し、且つ、BJH法による細孔分布において2nm乃至10nmの範囲にピークを有する構成とすることが好ましい。水銀圧入法による細孔の測定は、JIS R1655:2003「ファインセラミックスの水銀圧入法による成形体気孔径分布試験方法」に準拠する。
【0044】
本発明のコレステロール低下薬、中性脂肪低下薬、血糖値低下薬、コレステロール吸着剤、中性脂肪吸着剤、健康食品、健康補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、医薬部外品、あるいは、医薬品にあっては、これらに含まれる多孔質炭素材料は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法(NLDFT法,Non Localized Density Functional Theory 法)によって求められた直径1×10-9m乃至1×10-7mの細孔の容積の合計が0.1cm3/グラム以上である形態とすることもできる。あるいは又、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.2以上である形態とすることもできる。
【0045】
JIS Z8831−2:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第2部:ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法」、及び、JIS Z8831−3:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第3部:ガス吸着によるミクロ細孔の測定方法」に規定された非局在化密度汎関数法(NLDFT法)にあっては、解析ソフトウェアとして、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」に付属するソフトウェアを用いる。前提条件としてモデルをシリンダ形状としてカーボンブラック(CB)を仮定し、細孔分布パラメータの分布関数を「no−assumption」とし、得られた分布データにはスムージングを施す。
【0046】
多孔質炭素材料前駆体を酸又はアルカリで処理するが、具体的な処理方法として、例えば、酸あるいはアルカリの水溶液に多孔質炭素材料前駆体を浸漬する方法や、多孔質炭素材料前駆体と酸又はアルカリとを気相で反応させる方法を挙げることができる。より具体的には、酸によって処理する場合、酸として、例えば、フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等の酸性を示すフッ素化合物を挙げることができる。フッ素化合物を用いる場合、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分におけるケイ素元素に対してフッ素元素が4倍量となればよく、フッ素化合物水溶液の濃度は10重量%以上であることが好ましい。フッ化水素酸によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、二酸化ケイ素は、化学式(A)又は化学式(B)に示すようにフッ化水素酸と反応し、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)あるいは四フッ化ケイ素(SiF4)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0047】
SiO2+6HF → H2SiF6+2H2O (A)
SiO2+4HF → SiF4+2H2O (B)
【0048】
また、アルカリ(塩基)によって処理する場合、アルカリとして、例えば、水酸化ナトリウムを挙げることができる。アルカリの水溶液を用いる場合、水溶液のpHは11以上であればよい。水酸化ナトリウム水溶液によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、水酸化ナトリウム水溶液を熱することにより、二酸化ケイ素は、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。また、水酸化ナトリウムを気相で反応させて処理する場合、水酸化ナトリウムの固体を熱することにより、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0049】
SiO2+2NaOH → Na2SiO3+H2O (C)
【0050】
あるいは又、本発明における多孔質炭素材料として、例えば、特開2010−106007に開示された空孔が3次元的規則性を有する多孔質炭素材料(所謂、逆オパール構造を有する多孔質炭素材料)、具体的には、1×10-9m乃至1×10-5mの平均直径を有する3次元的に配列された球状の空孔を備え、表面積が3×1022/グラム以上の多孔質炭素材料、好ましくは、巨視的に、結晶構造に相当する配置状態にて空孔が配列されており、あるいは又、巨視的に、面心立方構造における(111)面配向に相当する配置状態にて、その表面に空孔が配列されている多孔質炭素材料を用いることもできる。
【実施例1】
【0051】
実施例1は、本発明のコレステロール低下薬及びコレステロール吸着剤(以下、これらを総称して、単に、実施例1のコレステロール低下薬と呼ぶ)に関する。実施例1のコレステロール低下薬は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む。尚、多孔質炭素材料は、ケイ素を含有する植物由来の材料を原料としている。そして、BJH法による細孔(メソ細孔)及びMP法による細孔(マイクロ細孔)は、少なくとも、ケイ素を含有する植物由来の材料からのケイ素の除去によって得られる。
【0052】
また、実施例1の多孔質炭素材料は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-9m乃至1×10-7mの細孔の容積の合計が0.1cm3/グラム以上(好ましくは0.2cm3/グラム以上)である多孔質炭素材料から成る。更には、実施例1の多孔質炭素材料は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.2以上(具体的には、0.479であり、全細孔の容積総計は1.33cm3/グラム)である多孔質炭素材料から成る。
【0053】
実施例1にあっては、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を米(稲)の籾殻とした。そして、実施例1における多孔質炭素材料は、原料としての籾殻を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得られる。以下、実施例1の多孔質炭素材料の製造方法を説明する。
【0054】
実施例1の多孔質炭素材料の製造においては、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって、多孔質炭素材料を得た。即ち、先ず、粉砕した籾殻(鹿児島県産、イセヒカリの籾殻。ケイ素(Si)の含有率は10重量%)に対して、不活性ガス中で加熱処理(予備炭素化処理)を施す。具体的には、籾殻を、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得た。尚、このような処理を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(10リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で800゜Cまで昇温させた。そして、800゜Cで1時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却した。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続けた。次に、この多孔質炭素材料前駆体を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄した。次いで、120°Cにて乾燥させた後、900゜Cで水蒸気気流中にて3時間加熱させることで賦活処理を行うことで、実施例1の多孔質炭素材料を得ることができた。尚、多孔質炭素材料に化学処理を施し、又は、分子修飾を施す場合には、具体的には、例えば、多孔質炭素材料の表面にアミノ基を生成させる場合には、得られた多孔質炭素材料0.50グラムを飽和尿素水溶液150ミリリットルに添加し、室温で24時間攪拌し、この懸濁液を濾過して得られた生成物を、窒素雰囲気下、450゜Cで焼成すればよい。尚、こうして得られた多孔質炭素材料を、『実施例1Aの多孔質炭素材料』と呼ぶ。また、飽和尿素水溶液での処理を行うこと無く、焼成等を行って得られた多孔質炭素材料、即ち、飽和尿素水溶液での処理を行わない以外は実施例1Aの多孔質炭素材料と同様の工程によって得られた多孔質炭素材料を、『実施例1Bの多孔質炭素材料』と呼ぶ。
【0055】
和光純薬工業株式会社製の低分子化アルギン酸ナトリウム(分子量:5万乃至10万)を、比較例1Aとして試験に供した。更には、シグマアルドリッチ社製のキトサンパウダーを、比較例1Bとして試験に供した。尚、アルギン酸ナトリウムの分子量は、通常、20万乃至200万である。
【0056】
比表面積及び細孔容積を求めるための測定機器として、BELSORP−mini(日本ベル株式会社製)を用い、窒素吸脱着試験を行った。測定条件として、測定平衡相対圧(p/p0)を0.01〜0.99とした。そして、BELSORP解析ソフトウェアに基づき、比表面積及び細孔容積を算出した。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径分布は、上述した測定機器を用いた窒素吸脱着試験を行い、BELSORP解析ソフトウェアによりBJH法及びMP法に基づき算出した。また、多孔質炭素材料の細孔を水銀圧入法にて測定した。具体的には、水銀ポロシメーター(PASCAL440:Thermo Electron社製)を用いて、水銀圧入法測定を行った。細孔測定領域を10μm〜2nmとした。更には、非局在化密度汎関数法(NLDFT法)に基づく測定にあっては、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」を使用し、
解析前提条件 :なし
細孔形状前提条件:シリンダー型
スムージング回数:10回
とした。尚、測定に際しては、試料の前処理として、200゜Cで3時間の乾燥を行った。
【0057】
実施例1Bについて、比表面積及び細孔容積を測定したところ、表1に示す結果が得られた。尚、表1中、「比表面積」及び「全細孔容積」は、窒素BET法による比表面積及び全細孔容積の値を指し、単位はm2/グラム及びcm3/グラムである。また、「MP法」、「BJH法」、「水銀圧入法」は、MP法による細孔(マイクロ細孔)の容積測定結果、BJH法による細孔(メソ細孔)の容積測定結果、水銀圧入法による総細孔の容積測定結果を示し、単位はcm3/グラムである。尚、実施例1Aにおける比表面積及び細孔容積の測定結果は、実施例1Bとほぼ同じ値であった。また、図5に、実施例1B、比較例2及び比較例5Bの、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果のグラフを示す。
【0058】
[表1]
比表面積 全細孔容積 MP法 BJH法 水銀圧入法
実施例1B 1290 0.87 0.44 0.70 2.7
比較例2 1231 0.57 0.56 0.04 1.7
比較例3B 1559 0.76 0.75 0.14 1.5
比較例5A 1095 0.82 0.49 0.45 2.1
比較例5B 362 0.20 0.16 0.07 <1.5
【0059】
擬似腸液中におけるコレステロール(胆汁酸)吸着量を、以下に述べる方法で測定した。
【0060】
生理食塩水(水1000ミリリットルに9グラムの塩化ナトリウムを溶解させた水溶液)に胆汁酸を濃度6.4ミリモル及び脂肪酸を濃度9.9ミリモルとなるように添加し、攪拌、溶解して、擬似腸液(試験液)を調製した。
【0061】
バイアル瓶にこの試験液10.0ミリリットルを入れ、更に、実施例1A及び実施例1Bのコレステロール低下薬、比較例1A及び比較例1Bの試料のそれぞれを、10.0ミリグラム添加し、37゜Cの恒温槽中で1時間振とうした。次いで、これらの懸濁液を0.45μmのフィルターで濾過し、被験液を得た。そして、濾液の吸光度を測定して(測定波長:234nm)、胆汁酸(コレステロール)の吸着量を算出した。
【0062】
胆汁酸として、例えば、コール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ケノデオキシコール酸等や、これらの物質のナトリウム塩やカリウム塩等、及び、これらの物質がグリシンやタウリン等とアミド状に結合した抱合胆汁酸等を挙げることができる。これらの胆汁酸を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。尚、抱合胆汁酸として、例えば、グリココール酸、タウロコール酸、グリコケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸等や、これらの物質のナトリウム塩やカリウム塩等を挙げることができる。抱合胆汁酸は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、胆汁酸は、胆汁酸そのものであってもよいし、胆汁酸、及び、胆汁酸とミセル形成可能な化合物から成る胆汁酸複合ミセルであってもよい。胆汁酸とミセル形成可能な化合物として、例えば、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸等の脂肪酸やこれらの塩を挙げることができる。
【0063】
また、脂肪酸として、通常のヒト腸液中に含有される脂肪酸を挙げることができ、例えば、オレイン酸ナトリウム、リノール酸ナトリウム、リノレン酸ナトリウム、リシノレン酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムから成る群より選択された少なくとも1種類の化合物を挙げることができる。
【0064】
実施例1にあっては、胆汁酸として、具体的には、コール酸ナトリウムを使用した。また、脂肪酸として、具体的には、オレイン酸ナトリウムを使用した。試験において、実施例1A及び実施例1Bのコレステロール低下薬、比較例1A及び比較例1Bの試料、1グラム当たりの吸着量の算出を、以下の式に基づき算出した。その結果を、以下の表2に示すが、実施例1A及び実施例1Bは、比較例1A及び比較例1Bと比較して、コレステロールの吸着能に優れていることが判る。
【0065】
胆汁酸(コレステロール)の吸着量(ミリグラム/グラム)
=(胆汁酸の分子量)×{(吸着前の溶液モル濃度)−(吸着後の溶液モル濃度)}
/{溶液1000ミリリットル当たりの低下薬、吸着剤あるいは試料の質量
(グラム)}
【0066】
[表2]
擬似腸液中のコール酸ナトリウム吸着量(ミリグラム/グラム)
実施例1A 872
実施例1B 695
比較例1A 538
比較例1B 470
【実施例2】
【0067】
実施例2は、本発明の中性脂肪低下薬及び中性脂肪吸着剤(以下、これらを総称して、単に、実施例2の中性脂肪低下薬と呼ぶ)に関する。実施例2の中性脂肪低下薬も、実施例1のコレステロール低下薬と同様に、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む。実施例2においては、実施例1Bの多孔質炭素材料を中性脂肪低下薬として使用した。
【0068】
実施例2にあっては、試験液として、300ミリグラム/デシリットルのトリパルミチン水溶液を使用した。そして、バイアル瓶に試験液10.0ミリリットルを入れ、更に、実施例1B及び比較例2の試料のそれぞれを、10.0ミリグラム添加し、37゜Cの恒温槽中で3.5時間振とうした。尚、比較例2の試料は、市販の活性炭(和光純薬工業株式会社製)を粉末状にしたものであり、比表面積及び細孔容積を測定した結果を表1に示す。次いで、これらの懸濁液を0.45μmのフィルターで濾過し、被験液を得た。そして、濾液中のトリグリセライド量を測定し(トリグリセライド、E−テストワコー)、トリパルチミン(中性脂肪)の吸着量を求めた。結果を以下の表3に示す。表3から、実施例2の中性脂肪低下薬は、比較例2の試料と比較して、中性脂肪の吸着能が格段に優れていることが判る。
【0069】
[表3]
中性脂肪(トリパルチミン)の吸着量(ミリグラム/グラム)
実施例2 389
比較例2 55
【実施例3】
【0070】
周知のコレステロール低下薬であるコレスチラミンといった陰イオン交換樹脂では、塩化ナトリウム等の電解質の共存によって、コレステロール低下能に影響を受けるといった問題があることが知られている。
【0071】
実施例3においては、実施例1Bの多孔質炭素材料を実施例3のコレステロール低下薬及びコレステロール吸着剤(以下、これらを総称して、単に、実施例3のコレステロール低下薬と呼ぶ)として使用し、塩化ナトリウム等の電解質、蛋白質、脂質の共存によって、コレステロール低下能に影響を受けるかを調べた。また、比較例3Aとしてコレスチラミン、比較例3Bとしてクレメジンを用いた。比較例3Bのクレメジンの比表面積及び細孔容積を測定した結果を表1に示す。
【0072】
実施例3にあっては、実施例3のコレステロール低下薬、比較例3A及び比較例3Bの試料を、100゜Cで4時間乾燥させた。そして、各々を10ミリグラム秤量し、容積50ミリリットルのバイアル瓶に入れ、1ミリモルに調整した胆汁酸溶液(具体的には、1ミリモルのコール酸ナトリウム水溶液から成る)に、電解質である塩化ナトリウム(NaCl)を0.1重量%添加した溶液10ミリリットル(NaCl添加品と呼ぶ)、及び、塩化ナトリウムを添加していない溶液10ミリリットル(NaCl無添加品と呼ぶ)のそれぞれをバイアル瓶に更に加え、37゜Cの恒温槽中で24時間振とう、攪拌した。攪拌停止後、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過することにより、実施例3のコレステロール低下薬、比較例3A及び比較例3Bの試料を除去した。そして、濾液中の遊離の胆汁酸濃度を酵素比色法の測定キットにより測定した。尚、胆汁酸がメンブレンフィルターに吸着されないことは事前に確認した。遊離の胆汁酸の除去率測定結果(単位:%)を以下の表4に示すが、電解質(NaCl)の添加が胆汁酸の吸着量に影響を与えることが確認できた。
【0073】
[表4]
NaCl無添加品 NaCl添加品
実施例3 70 94
比較例3A 77 60
比較例3B 11 18
【0074】
次に、実施例3のコレステロール低下薬、比較例3A及び比較例3Bの試料を、100゜Cで4時間乾燥させた。そして、各々を10ミリグラム秤量し、容積50ミリリットルのバイアル瓶に入れ、1ミリモルに調整した上記の胆汁酸溶液に、電解質である塩化ナトリウム(NaCl)の添加量を種々変えた溶液10ミリリットルのそれぞれをバイアル瓶に更に加え、上記と同様にして、37゜Cの恒温槽中で4時間振とう、攪拌した。攪拌停止後、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過することにより、実施例3のコレステロール低下薬、比較例3A及び比較例3Bの試料を除去した。そして、濾液中の遊離の胆汁酸濃度を酵素比色法の測定キットにより測定した。遊離の胆汁酸の除去率測定結果(単位:%)を以下の表5に示す。
【0075】
[表5]
NaCl無添加品 NaCl0.1モル NaCl0.2モル
実施例3 60 100 100
比較例3A 100 33 29
比較例3B 4 21 22
【0076】
表5から、既存のコレステロール低下薬であるコレスチラミン(比較例3A)は、塩化ナトリウム濃度の増加によってコレステロール(胆汁酸)吸着量に大きな影響を受けている。一方、実施例3のコレステロール低下薬では、塩化ナトリウムの存在下でもコレステロール(胆汁酸)吸着量が低下することはなかった。また、腎臓疾患の既存薬として用いられるクレメジン(比較例3B)についても、塩化ナトリウムの濃度の増加によってコレステロール(胆汁酸)吸着量は増加するが、実施例3ほどの効果はみられない。
【0077】
次に、実施例3のコレステロール低下薬、比較例3A及び比較例3Bの試料を、100゜Cで4時間乾燥させた。そして、各々を10ミリグラム秤量し、容積50ミリリットルのバイアル瓶に入れ、1ミリモルに調整した人工腸液を用いた胆汁酸水溶液に、脂質であるトリオレイン(添加量:1ミリモル)、蛋白質であるアルブミン(添加量:1重量%)を添加した溶液10ミリリットルのそれぞれをバイアル瓶に更に加え、上記と同様にして、37゜Cの恒温槽中で4時間振とう、攪拌した。攪拌停止後、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過することにより、実施例3のコレステロール低下薬、比較例3A及び比較例3Bの試料を除去した。そして、濾液中の遊離の胆汁酸濃度を酵素比色法の測定キットにより測定した。遊離の胆汁酸の除去率測定結果(単位:%)を以下の表6に示す。尚、人工腸液は以下のように調製した。即ち、0.2モル/リットルのリン酸水素ナトリウム水溶液250ミリリットルと0.2モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液118ミリリットルに蒸留水を加えて、総量が1000ミリリットルとなるように調製した。
【0078】
[表6]
脂質及び蛋白質無添加品 脂質添加 蛋白質添加
実施例3 10 14 33
比較例3A 13 16 11
比較例3B 13 14 4
【0079】
表6から、既存のコレステロール低下薬であるコレスチラミン(比較例3A)、腎臓疾患の既存薬として用いられるクレメジン(比較例3B)では、アルブミン(蛋白質)の添加により胆汁酸の吸着量が低下するという影響を受けているが、実施例3のコレステロール低下薬では、アルブミン(蛋白質)の添加によりコレステロール(胆汁酸)吸着量が増加した。また、トリオレイン(脂質)の添加によっても、実施例3のコレステロール低下薬はコレステロール(胆汁酸)吸着量に影響を受けていない。
【0080】
以上のとおり、実施例3のコレステロール低下薬は、塩化ナトリウム等の電解質、蛋白質の共存によるコレステロール低下能に対する影響が、既存のコレステロール低下薬と比較して少ないことが判った。また、実施例3のコレステロール低下薬は、脂質の共存によってもコレステロール低下能に影響を受けないことが判った。
【実施例4】
【0081】
実施例4においては、実施例1Bの多孔質炭素材料をコレステロール低下薬、中性脂肪低下薬、血糖値低下薬(以下、これらを総称して、単に『実施例4の低下薬』と呼ぶ)として使用し、高脂血症のモデルラットにおいて、コレステロール、中性脂肪、血糖値を低下させるかを評価した。
【0082】
実施例4にあっては、試験群の構成を以下のとおりとした。
【0083】
即ち、被験物質群(実施例4)、対照群(比較例4)及び陽性対照群(参考例)のいずれにあっても、高コレステロール飼料(1重量%のコレステロール及び0.5重量%のコール酸含有粉末飼料)を給餌飼料とした。また、被験物質群(実施例4)にあっては、実施例4の低下薬を投与物質として、10重量%、給餌飼料に混合し、混餌投与した。一方、陽性対照群(参考例)にあっては、コレスチラミンを強制経口投与した。具体的には、コレスチラミンの投与量を500ミリグラム/キログラム/日とし、投与容量を10ミリリットル/キログラムとした。また、被験物質群(実施例4)、対照群(比較例4)、及び、陽性対照群(参考例)のいずれにあっても、動物数を8とした。
【0084】
高コレステロール飼料を、以下の方法で調製した。即ち、乾式粉体混合機(愛知電機株式会社製、ロッキングミキサー RM−10−2)を用いて、コレステロール及びコール酸を、それぞれ、最終総量の1重量%及び0.5重量%となるような割合で粉末飼料と混合し、調製した。具体的には、 高コレステロール飼料4.0キログラムを作製する場合、コレステロール400グラム及びコール酸20グラムをそれぞれ秤量した。そして、秤量したコレステロール及びコール酸と少量の粉末飼料を乾式粉体混合機で混合した。粉末飼料を少しずつ加えて混合する操作を3乃至4回繰り返し、前処理とした。次いで、残りの粉末飼料を乾式粉体混合機に投入し、30分間、乾式粉体混合機を作動させた。その後、乾式粉体混合機から混合粉末飼料を取り出し、対照群及び陽性対照群用の飼料はポリエチレン袋に入れて密封し、蓋付ステンレス製容器に保存した。残りの高コレステロール飼料を、更に、被験物質群(実施例4)における混合飼料を調製するために使用した。
【0085】
被験物質群(実施例4)における混合飼料を以下の方法で調製した。即ち、実施例4の低下薬と高コレステロール飼料を、上記の乾式粉体混合機を用いて混合した。具体的には、調製総量1.0キログラムに対して、10重量%の飼料とすべく、100グラムの実施例4の低下薬を秤量した。そして、秤量した実施例4の低下薬と少量の高コレステロール飼料を乾式粉体混合機で混合した。高コレステロール飼料を少しずつ加えて混合する操作を3乃至4回繰り返し、前処理とした。次いで、残りの高コレステロール飼料を乾式粉体混合機に投入し、30分間、乾式粉体混合機を作動させた。その後、乾式粉体混合機から被験物質群における混合飼料を取り出し、ポリエチレン袋に入れて密封し、蓋付ステンレス製容器に保存した。
【0086】
コレスチラミンを強制経口投与するための投与液として、以下の投与液を調製した。即ち、クエストラン粉末(サノフィ・アベンティス株式会社製)、1.800グラム(コレスチラミンとして0.800グラム)に滅菌蒸留水を加えて懸濁し、全量を16ミリリットルにメスアップして投与液(50ミリグラム/ミリリットル液)とした。
【0087】
給餌方法を、以下のとおりとした。即ち、ステンレス製粉末給餌器(株式会社夏目製作所製)に入れ、自由に摂取させた。動物入手時から投与開始前日までは、全例に粉末飼料CRF−1(オリエンタル酵母工業株式会社)を給与した。投与開始日以降、対照群及び陽性対照群にはコレステロール添加飼料を、被験物質群には更に実施例4の低下薬を混合した飼料を給餌した。交換は、剖検日(Day 29)を除き1週間に1回行った。尚、剖検日の8時から9時の間に全例の飼料を回収した。
【0088】
投与方法を以下のとおりとした。即ち、被験物質群にあっては、ステンレス製粉末給餌器により高コレステロール飼料と共に自由摂取させた。また、陽性対照群にあっては、2.5乃至5ミリリットルのポリプロピレン製注射筒及びラット用ゾンデを用い、強制経口投与した。投与液は、マグネチックスターラーで撹拌しながら注射筒に採取した。
【0089】
投与期間を28日間とした。陽性対照群へのコレスチラミン投与は1日1回とした。
【0090】
各群のDay 3、Day 14、Day 29において、血中総コレステロール、血中中性脂肪、血中グルコース値の測定を行った。試験終了後、肝臓中のコレステロール値、及び、体重に対する肝臓の相対重量も測定した。
【0091】
血中総コレステロール濃度の測定結果を図1の(A)に示すが、14日目、29日目において、実施例4は、比較例4及び参考例よりも有意差のある低い値を示した。また、血中中性脂肪濃度の測定結果を図1の(B)に示すが、29日目において、実施例4は、比較例4及び参考例よりも有意差のある低い値を示した。血中グルコース値の測定結果を図2の(A)に示すが、14日目、29日目において、実施例4は、比較例4及び参考例よりも有意差のある低い値を示した。また、試験終了後の肝臓のコレステロール濃度の測定結果を図2の(B)に示すが、実施例4は、比較例4及び参考例よりも有意差のある低い値を示した。更には、体重に対する相対肝臓重量の測定結果を図3に示すが、実施例4においては、コレステロールの蓄積が低かったため、比較例4及び参考例よりも有意差のある低い値を示した。これらの結果から、実施例4の低下薬は、血中総コレステロール、中性脂肪、血糖値の低下作用を有することが示された。尚、図1の(A)、(B)、図2の(A)、(B)及び図3において、実施例4及び比較例4のデータを、「実施例」及び「比較例」で示した。
【実施例5】
【0092】
実施例5は、本発明の第1の態様〜第3の態様に係る、多孔質炭素材料から成る吸着剤に関する。
【0093】
実施例5の吸着剤は、多孔質炭素材料から成り、コール酸ナトリウムの吸着量が150ミリグラム/グラム以上であり、分子量が1×104以上の分子の存在下でのコール酸ナトリウムの選択吸着率が3以上である。あるいは又、実施例5の吸着剤は、多孔質炭素材料から成り、多孔質炭素材料から成り、コール酸ナトリウムの吸着量が150ミリグラム/グラム以上であり、分子量が1×103以下の分子の存在下でのコール酸ナトリウムの選択吸着率が1.1以上である。あるいは又、実施例5の吸着剤は、多孔質炭素材料から成り、コール酸ナトリウムの吸着量が150ミリグラム/グラム以上であり、ミネラルの存在下でのコール酸ナトリウムの選択吸着率が6以上である。
【0094】
具体的には、実施例5の多孔質炭素材料は、実施例1Bの多孔質炭素材料から成る。また、比較例5Aは薬用炭から成り、比較例5Bは食用炭から成る。比較例5A、比較例5Bの比表面積及び細孔容積を測定した結果を表1に示す。
【0095】
実施例5、比較例5A、比較例5Bの試料を乾燥し、正確に10ミリグラム、秤量し、容器に入れた。一方、コール酸ナトリウムをリン酸緩衝液に溶解し、1ミリモルのコール酸ナトリウム溶液を調製した。このコール酸ナトリウム溶液10ミリリットルを各試料を入れた容器に加え、37゜Cで3時間振とうし、0.2μmのフィルターを使用して濾過した後、総胆汁酸テストワコー(酵素比色法)を用いて、波長560nmで吸光度を測定した。吸光度よりコール酸ナトリウムの吸着量、吸着率を求めた。
【0096】
同様にして、実施例5、比較例5A、比較例5Bの試料を乾燥し、正確に10ミリグラム、秤量し、容器に入れた。一方、α―アミラーゼ(分子量:5万)をリン酸緩衝液に500ミリグラム/リットルとなるように溶解し、α―アミラーゼ溶液を調製した。このα―アミラーゼ溶液10ミリリットルを各試料を入れた容器に加え、37゜Cで3時間振とうし、0.2μmのフィルターを使用して濾過した後、波長280nmで吸光度を測定した。吸光度よりα―アミラーゼの吸着量、吸着率を求めた。
【0097】
同様にして、実施例5、比較例5A、比較例5Bの試料を乾燥し、正確に10ミリグラム、秤量し、容器に入れた。一方、ビタミンK1(分子量:451)を30ミリグラム/デシリットルとなるようにエチルアルコールに溶解し、ビタミンK1を調製した。このビタミンK1溶液10ミリリットルを各試料を入れた容器に加え、37゜Cで3時間振とうし、0.2μmのフィルターを使用して濾過した後、波長250nmで吸光度を測定した。吸光度よりビタミンK1の吸着量、吸着率を求めた。
【0098】
同様にして、実施例5、比較例5A、比較例5Bの試料を乾燥し、正確に10ミリグラム、秤量し、容器に入れた。一方、塩化カルシウムをリン酸緩衝液に10ミリグラム/デシリットルとなるように溶解し、カルシウム溶液を調製した。このカルシウム溶液10ミリリットルを各試料を入れた容器に加え、37゜Cで3時間振とうし、0.2μmのフィルターを使用して濾過した後、カルシウムE−テストワコー(MXB法)を用いて波長610nmで吸光度を測定した。吸光度よりカルシウムの吸着量、吸着率を求めた。
【0099】
表7に、各試料のα―アミラーゼ、ビタミンK1、カルシウムに対するコール酸ナトリウムの選択吸着率を示し、表8にコール酸ナトリウム単独の吸着量(単位:ミリグラム/グラム)を示す。また、図4に、実施例5、比較例5A及び比較例5Bにおけるコール酸ナトリウムの選択吸着率の測定結果を示す。
【0100】
ここで、コール酸ナトリウムの選択吸着率とは、実施例5にあっては、
(コール酸ナトリウムの吸着率)/(α―アミラーゼの吸着率)
(コール酸ナトリウムの吸着率)/(ビタミンK1の吸着率)
(コール酸ナトリウムの吸着率)/(カルシウムの吸着率)
と定義される。
【0101】
[表7]
実施例5 比較例5A 比較例5B
α―アミラーゼ 3.6 2.1 0.8
ビタミンK1 1.2 0.8 0.9
カルシウム 6.4 4.1 0.3
【0102】
[表8]
コール酸ナトリウム単独の吸着量(ミリグラム/グラム)
実施例5 167.2
比較例5A 78.8
比較例5B 7.4
【0103】
表7から、実施例5の多孔質炭素材料から成る吸着剤は、α―アミラーゼ、ビタミンK1、カルシウムに対するコール酸ナトリウムの選択吸着率が高いことが判る。即ち、実施例5の多孔質炭素材料から成る吸着剤は、コール酸ナトリウムの吸着能に優れている一方、α―アミラーゼ、ビタミンK1、カルシウムでそれぞれ代表される、1×104以上の分子、1×103以下の分子、ミネラルを吸着し難いことが判る。云い換えれば、コール酸ナトリウムとα―アミラーゼとが共存している場合、コール酸ナトリウムを良く吸着する一方、α―アミラーゼを余り吸着せず(α―アミラーゼを残存させ)、コール酸ナトリウムとビタミンK1とが共存している場合、コール酸ナトリウムを良く吸着する一方、ビタミンK1を余り吸着せず(ビタミンK1を残存させ)、コール酸ナトリウムとカルシウムとが共存している場合、コール酸ナトリウムを良く吸着する一方、カルシウムを余り吸着しない(カルシウムを残存させる)。一方、例えば、比較例5Bの食用炭にあっては、α―アミラーゼ、ビタミンK1、カルシウムに対するコール酸ナトリウムの選択吸着率が低い。即ち、比較例5Bにあっては、コール酸ナトリウムを吸着すると同時に、α―アミラーゼ、ビタミンK1、カルシウムの多くを吸着してしまっている。
【実施例6】
【0104】
実施例6は、本発明の健康食品、健康補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、医薬部外品、及び、医薬品に関する。実施例6においては、実施例1にて説明したコレステロール吸着剤を含み、あるいは又、実施例2にて説明した中性脂肪吸着剤を含み、あるいは又、実施例1及び実施例2にて説明したコレステロール吸着剤及び中性脂肪吸着剤を含む。より具体的には、実施例6にあっては、実施例1Bの多孔質炭素材料を含んでいる。
【0105】
より具体的には、実施例6の健康食品あるいは健康補助食品を、実施例3のコレステロール吸着剤粉末5重量部にショ糖脂肪酸エステル95重量部を加えて均一に混合し、打錠機を用いて1錠当たり200ミリグラムの錠剤に成形することで得た。
【0106】
また、実施例6の栄養機能食品あるいは特定保健用食品を、ドリンク類に粉体状の実施例1Bの多孔質炭素を添加することで得た。あるいは又、ビスケットやサブレ、クッキーに添加することで得た。
【0107】
また、実施例6の医薬部外品を、実施例1Bの多孔質炭素あるいは実施例3のコレステロール吸着剤粉末1重量部に水98.7重量部、香料0.2重量部、甘味料0.1重量部を加えて攪拌溶解し、1缶当たり100ミリリットルの飲料とすることで得た。
【0108】
更には、実施例6の医薬品を、バインダーとしての糖やセルロース系ポリマーを3重量部、実施例1Bの多孔質炭素あるいは実施例3のコレステロール吸着剤粉末を7重量部、混合し、錠剤とすることで得た。あるいは又、実施例1Bの多孔質炭素あるいは実施例3のコレステロール吸着剤粉末をそのままカプセルに封入することで得た。
【0109】
以上、好ましい実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0110】
実施例にあっては、多孔質炭素材料の原料として、籾殻を用いる場合について説明したが、他の植物を原料として用いてもよい。ここで、他の植物として、例えば、藁、葦あるいは茎ワカメ、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類及び海草等を挙げることができ、これらを、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。具体的には、例えば、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲の藁(例えば、鹿児島産;イセヒカリ)とし、多孔質炭素材料を、原料としての藁を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲科の葦とし、多孔質炭素材料を、原料としての稲科の葦を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。また、フッ化水素酸水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム水溶液といったアルカリ(塩基)にて処理して得られた多孔質炭素材料においても、同様の結果が得られた。
【0111】
あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を茎ワカメ(岩手県三陸産)とし、多孔質炭素材料を、原料としての茎ワカメを炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。具体的には、先ず、例えば、茎ワカメを500゜C程度の温度で加熱し、炭化する。尚、加熱前に、例えば、原料となる茎ワカメをアルコールで処理してもよい。具体的な処理方法として、エチルアルコール等に浸漬する方法が挙げられ、これによって、原料に含まれる水分を減少させると共に、最終的に得られる多孔質炭素材料に含まれる炭素以外の他の元素や、ミネラル成分を溶出させることができる。また、このアルコールでの処理により、炭素化時のガスの発生を抑制することができる。より具体的には、茎ワカメをエチルアルコールに48時間浸漬する。尚、エチルアルコール中では超音波処理を施すことが好ましい。次いで、この茎ワカメを、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得る。尚、このような処理(予備炭素化処理)を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(10リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で1000゜Cまで昇温する。そして、1000゜Cで5時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却する。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続ける。次に、この多孔質炭素材料前駆体を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄する。そして、最後に乾燥させることにより、多孔質炭素材料を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含むコレステロール低下薬。
【請求項2】
蛋白質の共存がコレステロール低下能に影響を与えない請求項1に記載のコレステロール低下薬。
【請求項3】
塩化ナトリウムの共存がコレステロール低下能に影響を与えない請求項1に記載のコレステロール低下薬。
【請求項4】
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む中性脂肪低下薬。
【請求項5】
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む血糖値低下薬。
【請求項6】
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上ある多孔質炭素材料を含むコレステロール吸着剤。
【請求項7】
多孔質炭素材料には、化学処理が施され、又は、分子修飾が施されている請求項6に記載のコレステロール吸着剤。
【請求項8】
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む中性脂肪吸着剤。
【請求項9】
多孔質炭素材料には、化学処理が施され、又は、分子修飾が施されている請求項8に記載の中性脂肪吸着剤。
【請求項10】
コール酸ナトリウムの吸着量が150ミリグラム/グラム以上であり、分子量が1×104以上の分子の存在下でのコール酸ナトリウムの選択吸着率が3以上である、多孔質炭素材料から成る吸着剤。
【請求項11】
1×104以上の分子は、酵素又は蛋白質である請求項10に記載の吸着剤。
【請求項12】
コール酸ナトリウムの吸着量が150ミリグラム/グラム以上であり、分子量が1×103以下の分子の存在下でのコール酸ナトリウムの選択吸着率が1.1以上である、多孔質炭素材料から成る吸着剤。
【請求項13】
1×103以下の分子は、ビタミンKである請求項12に記載の吸着剤。
【請求項14】
コール酸ナトリウムの吸着量が150ミリグラム/グラム以上であり、ミネラルの存在下でのコール酸ナトリウムの選択吸着率が6以上である、多孔質炭素材料から成る吸着剤。
【請求項15】
ミネラルは、カルシウム化合物又はマグネシウム化合物である請求項14に記載の吸着剤。
【請求項16】
請求項6又は請求項7に記載のコレステロール吸着剤、及び/又は、請求項8又は請求項9に記載の中性脂肪吸着剤を含む健康食品。
【請求項17】
請求項6又は請求項7に記載のコレステロール吸着剤、及び/又は、請求項8又は請求項9に記載の中性脂肪吸着剤を含む健康補助食品。
【請求項18】
請求項6又は請求項7に記載のコレステロール吸着剤、及び/又は、請求項8又は請求項9に記載の中性脂肪吸着剤を含む栄養機能食品。
【請求項19】
請求項6又は請求項7に記載のコレステロール吸着剤、及び/又は、請求項8又は請求項9に記載の中性脂肪吸着剤を含む特定保健用食品。
【請求項20】
請求項6又は請求項7に記載のコレステロール吸着剤、及び/又は、請求項8又は請求項9に記載の中性脂肪吸着剤を含む医薬部外品。
【請求項21】
請求項6又は請求項7に記載のコレステロール吸着剤、及び/又は、請求項8又は請求項9に記載の中性脂肪吸着剤を含む医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−167030(P2012−167030A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26859(P2011−26859)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】