説明

コレステロール分子とエプスタイン・バーウイルス誘発受容体2の間の相互作用のモジュレーター

本発明は、エプスタイン・バーウイルス誘発受容体−2(EBI2)とコレスト−5−エン−3b,7b,25−トリオール(7、25−ジヒドロキシコレステロール)(“7,25DHC”)および/またはコレスト−5−エン−3b,7b−ジオール(7−ヒドロキシコレステロール)(“7HC”)25−ジオール(25−ヒドロキシコレステロール)(“25HC”)、特にコレスト−5−エン−3b,7a,25−トリオール(7a,25−ジヒドロキシコレステロール)(“7a,25DHC”)および/またはコレスト−5−エン−3b,7b,25−トリオール(7b,25−ジヒドロキシコレステロール)(“7b,25DHC”)立体異性体の間の相互作用のモジュレーターに関する。モジュレーターは小化学分子、抗体または他の治療用タンパク質であり得る。医学的治療方法およびモジュレーターの同定方法も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 発明の分野
本発明は、コレスト−5−エン−3b,7a,25−トリオール(7a,25−ジヒドロキシコレステロール)(“7a,25DHC”)および/またはコレスト−5−エン−3b,7a,27−トリオール(7a、27−ジヒドロキシコレステロール)(“7a,27DHC”)および/またはコレスト−5−エン−3b,7b,25−トリオール(7b,25−ジヒドロキシコレステロール)(“7b,25DHC”)および/またはコレスト−5−エン−3b,7b,27−トリオール(7b,27−ジヒドロキシコレステロール)(“7b,27DHC”)および/またはコレスト−5−エン−3b,7a−ジオール(7a−ヒドロキシコレステロール)(“7aHC”)および/またはコレスト−5−エン−3b,7b−ジオール(7b−ヒドロキシコレステロール)(“7bHC”)、25−ジオール(25−ヒドロキシコレステロール)(“25HC”)とエプスタイン・バーウイルス誘発受容体2(“EBI2”)の間の相互作用のモジュレーター、特に阻害剤に関する。より具体的に本発明は、該モジュレーターを含む医薬組成物および該相互作用の調節に応答する疾患または障害の処置方法に関する。他の面において、本発明の目的および利益は、以下の記載から明らかである。
【背景技術】
【0002】
2. 発明の背景
エプスタイン・バーウイルス(EBV)誘発遺伝子2(EBI2)は、GPR183とも呼ばれ、Gタンパク質共役受容体(GPCR)としても知られるロドプシン様7TM受容体(七回膜貫通セグメント受容体)のスーパーファミリーに属する受容体に分類される。EBI2、は、オーファンGタンパク質共役受容体であり、それに対するリガンドは未知である。EBI2は、1993年にエプスタイン・バーウイルス(EBV)感染バーキットリンパ腫細胞における最も上方制御された遺伝子(>200倍)の一つとしてクローン化された(Birkenbach, M., et al. (1993)。Epstein-Barr virus-induced genes: first lymphocyte-specific G protein-coupled peptide receptors. J. Virol. 67, 2209-2220.)。EBI2遺伝子は染色体13q32.3に位置する。EBI2は、鶏痘ウイルスFPV206とアミノ酸レベルで約35%相同性を有し、P2Y5およびP2Y9受容体と30〜32%相同性を有する。EBI2はまたオーファン7TM受容体GPR18および2個の脂質受容体システイニルロイコトリエン受容体1および2(CysLT1、および2)(それぞれ25%および28%相同性)と密接に関係する。
【0003】
EBV感染細胞のリアルタイムPCRは、潜伏期ならびに溶菌性ウイルス複製期の間EBI2の高発現を示した(Rosenkilde, et al. (2006) Molecular pharmacological phenotyping of EBI2 - An orphan seven-transmembrane receptor with constitutive activity. Journal of Biological Chemistry 281[19], 13199-13208.)。EBI2遺伝子の極めて高い発現が末梢血単核細胞(PBMC)、リンパ系組織(脾臓およびリンパ節)および肺組織で報告された(Birkenbach, M., et al. (1993).; Rosenkilde, M. M. et al. (2006))。EBI2発現はBリンパ球で最も高く、Tリンパ球、NK細胞が続き、単球で最低である(Rosenkilde, M. M. et al. (2006), Cahir-McFarland, E.D. et al., (2004). Role of NF-kappa B in cell survival and transcription of latent membrane protein 1-expressing or Epstein-Barr virus latency III-infected cells. J. Virol. 78, 4108-4119.)。EBI2の発現プロファイルは、免疫系調節における役割を示唆する。最後に、EBI2のGαiを介する構成的シグナリングおよび細胞表面局在化も証明された(Rosenkilde, M. M. et al. (2006))。
【0004】
EBI2のリガンドを同定することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0005】
3. 発明の要約
本発明は、少なくとも一部、7,25DHCおよび7,27DHCならびに7HCおよび25HCがEBI2のリガンドであるとの発見に基づく。
【0006】
本発明の第一の面によって、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HC(すなわちリガンド)およびEBI2(例えばヒトEBI2)の間、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよびEBI2(例えばヒトEBI2)の間、特に7a,25DHCとEBI2(例えばヒトEBI2)の間の相互作用のモジュレーター(例えば阻害剤)が提供される。
【0007】
この面の他の態様において、モジュレーターは7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と、より好ましくは7a,25DHCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドとEBI2の間の相互作用を阻害する。本阻害剤は治療用タンパク質、例えば抗体または抗体フラグメント、または小分子化学物質であり得る。
【0008】
この面の他の態様において、モジュレーターは、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HC産生の内因性産生を調節(例えば阻害)し、好ましくはモジュレーターは、例えば、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HC産生の内因性酵素仲介産生を阻害することにより、7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCの内因性産生を調節(例えば阻害)し、好ましくはモジュレーターは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCの内因性酵素仲介産生を阻害する。モジュレーターは、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCの直接前駆体から7a,25DHCおよび/または7b,25DHCへの、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCの直接前駆体の前駆体から7a,25DHCおよび/または7b,25DHCへの変換を担う酵素の各々を阻害し得る。
【0009】
この面の他のいくつかの態様において、モジュレーターは;小化学物質、抗体、アドネクチン、アンキリン、マキシボディ/アビマー、アフィボディ、アンチカリン、アフィリン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)から成る群から選択される。モジュレーターは抗体または抗体フラグメントであり得る。
【0010】
モジュレーターが抗体であるとき、それはヒト定常領域を含んでよくおよび/またはIgGアイソタイプ(例えばIgG1またはIgG4)を有してよくおよび/またはキメラ、ヒトまたはヒト化抗体であってよい。
【0011】
モジュレーターが抗体フラグメントであるとき、抗体フラグメントは;Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ScFv、VHドメイン、VHHドメインから成る群から選択される。
【0012】
この面のさらに別の態様において、モジュレーターはEBI2発現の阻害剤である。かかる阻害剤は、生理学的条件下で、(a)EBI2遺伝子の一部と安定な三本鎖を形成できる、または(b)EBI2遺伝子のmRNA転写物の一部と安定な二本鎖を形成できる配列を本質的に含むか、またはこれから成るアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。これに代えて、またはこれに加えて、阻害剤はEBI2タンパク質の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは低分子干渉RNA(siRNA)分子であり得る(例えばEBI2転写物の翻訳を妨害できる)。
【0013】
本発明の第二の面において、上記第一の面のモジュレーターを薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物が提供される。
【0014】
この第二の面のある態様において、医薬組成物は使用指示書を含んでよい。
【0015】
本発明の第三の面において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよびEBI2の間、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の調節に応答する疾患または障害を有する哺乳動物患者、特にヒト患者の処置方法であって、治療有効量の上記医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0016】
本発明の第四の面において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよびEBI2の間、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の調節に応答する疾患または障害を有する哺乳動物患者、特にヒト患者の予防方法であって、治療有効量の上記の第二の面の医薬組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【0017】
これらの第三および第四の面の態様のいくつかにおいて、疾患または障害は;高血圧、狭心症、アテローム性動脈硬化症、鬱血性心不全、卒中、肥満、代謝症候群、自己免疫性疾患、例えば関節炎、(特にリウマチ性関節炎)および狼瘡、アトピー状態、例えば喘息およびアトピー性皮膚炎喘息、COPD、肺高血圧、ウイルス感染症、例えばEBV、HIV、肝炎(A型またはC型)、脂肪肝疾患、肝硬変(特にアルコール誘発肝硬変)、癌、異脂肪血症、糖尿病(特にII型)、移植拒絶反応、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、慢性炎症の疾患、アレルギー、乾癬、嚢胞性線維症、高コレステロール血症、腎臓疾患、多発性硬化症から成る群から選択される。
【0018】
第五の面において、上記第一の面のモジュレーターおよび第二の面の医薬組成物の製造方法が提供される。
【0019】
本発明の第六の面において、7,25DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2の間、好ましくは7a,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用のモジュレーター、特に阻害剤の同定方法であって、7,25DHCおよび/または7HCおよび/またはEBI2、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよびEBI2と、候補モジュレーターを接触させ、リガンドと受容体の間の調節を観察することを含む方法が提供される。
【0020】
4. 発明の詳細な記載
明細書を通して、用語“7,25DHC、7,27DHC、25HC”および“7HC”はその全ての鏡像体、立体異性体、ラセミ体混合物および光学的に純粋な異性体形態を含む。故に本明細書を通して、“7,25DHC”および/または“7,27DHC”および/または“7HC”および/または“25HC”を述べる本発明の態様は、示されるリガンドのラセミ体混合物の個々の態様ならびに示されるリガンドの光学的に純粋な異性体形態の個々の態様を言うと解釈すべきである。用語“7a,25DHC”および“7a,27DHC”は、本明細書を通し、光学的に純粋なまたは実質的に光学的に純粋な異性体形態のみを示す。それ故に、用語“7a,25DHC”および“7a,27DHC”は示されるリガンドの、光学的に純粋な異性体形態の個々の態様を言うと解釈すべきである。同様に、用語“7b,25DHC、7b,27DHC、7aHC、7bHC”および“25HC”もまた示されるリガンドの光学的に純粋な異性体形態の個々の態様を言うと解釈すべきである。ここで記載する治療用タンパク質、ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドは、単離された形態である。この明細書の第4章における“EBI2”の記載は、特にことわらない限りヒトEBI2を意味する。同様に、疾患または障害の記載は、ヒト疾患または障害を意味する。
【0021】
4.1 − 治療用タンパク質
本発明の治療用タンパク質は抗体、アドネクチン、アンキリン、マキシボディ/アビマー、アフィボディ、アンチカリン、またはアフィリンであり得る。
【0022】
4.1.1.− 抗体
本発明の抗体は、当業者に既知の多様な形態のいずれでもよい。これらの形態は、インタクトな抗体、種々の抗体フラグメントおよび以下に記載する通り他の操作された形態を含む。好ましい形態において、本発明の抗体はモノクローナル集団として提供される。
【0023】
4.1.1.1 − インタクトな抗体
インタクトな抗体は、少なくとも2個の重鎖と2個の軽鎖を含むヘテロ多量体糖タンパク質を含む。IgM以外、インタクトな抗体は通常、2個の同一の軽(L)鎖および2個の同一の重(H)鎖から成る約150KDaのヘテロ四量体糖タンパク質である。典型的に、各軽鎖は、1個の共有結合的ジスルフィド結合により重鎖に結合し、他方、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間のジスルフィド結合の数は様々である。各重および軽鎖はまた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、後に多くの定常領域がある。各軽鎖は、1個の可変ドメイン(VL)および他端に定常領域を有する;軽鎖の定常領域は重鎖の第一定常領域と協調し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと協調する。ほとんどの脊椎動物種からの抗体の軽鎖は、定常領域のアミノ酸配列に基づきカッパまたはラムダと呼ばれる2個のうち一方に割り当てることができる。その重鎖の定常領域のアミノ酸配列によって、ヒト抗体は5群、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに割り当てることができる。IgGおよびIgAはさらにサブクラス、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4;およびIgA1およびIgA2に細分できる。少なくともIgG2a、IgG2bを有するマウスおよびラットで、種間変異体が存在する。抗体の可変ドメインは、抗体に相補性決定領域(CDR)と呼ばれる特定の可変性を示すある領域との特異性を提供する。可変領域の最も保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。インタクトな重および軽鎖各々の可変ドメインは、3個のCDRにより接続された4個のFRを有する。各鎖のCDRは、FR領域により密接に結合され、他の鎖からのCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。定常領域は抗体の抗原への結合に直接関与しないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害(ADCC)、Fcγr受容体への結合を介する食作用、新生児Fc受容体(FcRn)を介する半減期/クリアランス速度および補体カスケードのC1q成分を介する補体依存性細胞傷害への関与を示す。
【0024】
それ故に、本発明の一つの態様において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2に結合し、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用を阻害するインタクトな治療用抗体が提供される。好ましい本発明の態様において、インタクトな治療用抗体は7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用を阻害する。かかる抗体は、典型的にIgGアイソタイプ、例えばIgG1またはIgG4のヒト定常領域を有し、ヒト、ヒト化またはキメラであり得る。
【0025】
4.1.1.1.1 ヒト抗体
ヒト抗体は、当業者に既知の多数の方法により製造できる。ヒト抗体は、ヒト骨髄腫またはマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株を使用してハイブリドーマ法により製造できる(Kozbor J. Immunol 133, 3001, (1984) and Brodeur, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp51-63 (Marcel Dekker Inc, 1987)参照)。別の方法は、ヒトV領域レパートリーを利用するファージライブラリーまたはトランスジェニックマウスの使用を含む(Winter G, (1994), Annu. Rev. Immunol. 12, 433-455, Green LL (1999), J. Immunol. Methods 231, 11-23参照)。
【0026】
マウス免疫グロブリン座位がヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントで置き換えられている数系統のトランスジェニックマウスが、現在利用可能である(Tomizuka K, (2000) PNAS 97, 722-727; Fishwild DM (1996) Nature Biotechnol. 14, 845-851. Mendez MJ, 1997, Nature Genetics, 15, 146-156参照)。抗原曝露により、かかるマウスはヒト抗体のレパートリーの産生ができ、そこから目的の抗体を選択できる。特に注目すべきは、ヒトリンパ球を照射マウスに移植するTrimeraTM system(Eren R et al, (1988) Immunology 93:154-161参照)、ヒト(または他種)リンパ球を、大量の貯留インビトロ抗体産生法に付し、その後デコンヴォルーション(deconvulated)、限界希釈および選択方法に付すSelected Lymphocyte Antibody System(SLAM, Babcook et al, PNAS (1996) 93: 7843-7848参照)およびXenomouseTM(Abgenix Inc)である。別の方法は、MorphodomaTM技術を使用するMorphotek Inc.から利用可能である。
【0027】
ファージディスプレイ技術をヒト抗体(およびそのフラグメント)の製造に使用できる(McCafferty; Nature, 348, 552-553 (1990)およびGriffiths AD et al (1994) EMBO 13: 3245-3260参照)。この技術に従い、抗体Vドメイン遺伝子を、糸状バクテリオファージ、例えばM13またはfdのタンパク質遺伝子のメジャーまたはマイナーコートのフレーム内にクローン化し、ファージ粒子の表面上の機能抗体フラグメントとして提示させる(通常ヘルパーファージの助けを借りて)。抗体の機能特性に基づく選択が、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択となる。ファージディスプレイ技術を使用して、上記疾患または障害を有する個体から、または、未免疫ヒトドナーから採取したヒトB細胞で作られたライブラリーから抗原特異的抗体を選択できる(Marks; J Mol Bio 222, 581-591, 1991参照)。Fcドメインを含むインタクトなヒト抗体が記載されているとき、所望の定常領域を含む哺乳動物発現ベクターにファージディスプレイ由来フラグメントを再クローンし、安定に発現する細胞株を確立することが必要である。
【0028】
親和性成熟の技術(Marks; Bio/technol 10, 779-783 (1992))を使用して、結合親和性を提供でき、ここで、一次ヒト抗体に対する該親和性は、HおよびL鎖V領域と天然に存在する変異体を連続的に置換し、改善された結合親和性に基づき選択することにより改善されている。この技術の変法、例えば‘エピトープインプリンティング’が現在また利用可能である(WO93/06213参照)。Waterhouse; Nucl Acids Res 21, 2265-2266 (1993)もまた参照のこと。
【0029】
それ故に、本発明の一つの態様において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2に結合し、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2の相互作用を阻害できるインタクトな治療用(ヒト)抗体が提供される。好ましい本発明の態様において、インタクトな治療用ヒト抗体は、7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用を阻害する。典型的態様において、インタクトな治療用ヒト抗体は、IgGアイソタイプ、例えばIgG1またはIgG4の定常領域を含む。
【0030】
4.1.1.1.2 キメラおよびヒト化抗体
ヒト疾患または障害の処置におけるインタクトな非ヒト抗体の使用は、現在確立されている免疫原性の問題の可能性がつきものであり、すなわち、患者の免疫系が非ヒトインタクト抗体を非自己と認識し、中和応答を開始し得る。非ヒト抗体のヒト患者への多数回投与によりこれは特に明白である。この問題に打ち勝つために多くの技術がここ数年間で開発されており、そして一般に、免疫化動物、例えばマウス、ラットまたはウサギから非ヒト抗体を比較的容易に得られることを維持しながら、インタクトな抗体における非ヒトアミノ酸配列の組成を減少させることを含む。大まかに二つの方法がこれを達成するために使用されている。第一は、一般にヒト定常領域に融合した非ヒト(例えば齧歯類、例えばマウス)可変ドメインを含むキメラ抗体である。抗体の抗原結合部位が可変領域内に局在化しているため、キメラ抗体は、抗原に対するその結合親和性を維持するが、ヒト定常領域のエフェクター機能を獲得し、それ故に、上記したようなエフェクター機能を行うことができる。キメラ抗体は、典型的に組み換えDNA法を使用して製造される。抗体をコードするDNA(例えばcDNA)を単離し、慣用法を使用して配列決定する(例えば本発明の抗体のH鎖およびL鎖をコードする遺伝子、例えば上記配列番号1、2、3、4、5および6をコードするDNAに特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの典型的供給源である。単離したら、DNAを発現ベクターに入れ、それを、他の方法で抗体の合成をするための免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えばE. Coli、COS細胞、CHO細胞または骨髄腫細胞にトランスフェクトする。DNAを、ヒトL鎖およびH鎖のコーディング配列を、対応する非ヒト(例えばマウス)HおよびL定常領域に蹴ることにより修飾してよい(例えばMorrison; PNAS 81, 6851 (1984)参照)。
【0031】
第二の方法は、抗体の非ヒト成分が可変領域のヒト化により減らされたヒト化抗体である。ヒト化のための二つの技が人気を博している。第一は、CDRグラフティングによるヒト化である。CDRは、抗体のN末端近くにループを形成し、そこで、フレームワーク領域により提供される足場に取り付けられた表面を形成する。抗体の抗原結合特異性は、主にトポグラフィーによりおよびそのCDR表面の化学特性により定義される。これらの特性が、次に個々のCDRの構造により、CDRの相対的配置(disposition)により、およびCDRを構成する残基の側鎖の性質および配置(disposition)により決定される。免疫原性の大きな減少は、非ヒト(例えばマウス)抗体(‘ドナー’抗体)のCDRのみをヒトフレームワーク(‘アクセプターフレームワーク’)および定常領域にグラフティングすることにより達成できる(Jones et al (1986) Nature 321, 522-525 and Verhoeyen M et al (1988) Science 239, 1534-1536参照)。しかしながら、CDRグラフティングそれ自体抗原結合特性の完全な保持をもたらさないことがあり、顕著な抗原結合親和性を回復すべきであるならば、ドナー抗体のあるフレームワーク残基(‘逆突然変異’と呼ばれることもある)がヒト化化合物に保存される必要があることが頻繁に見られる(Queen C et al (1989) PNAS 86, 10, 029-10,033, Co, M et al (1991) Nature 351, 501-502参照)。この場合、ヒトフレームワーク(FR)を提供するために非ヒトドナー抗体に最大の配列相同性を示すヒトV領域を、データベースから選択する。ヒトFRの選択は、ヒトコンセンサスまたは個々のヒト抗体のいずれかでなし得る。そこで、CDR構造を保存するために、ドナー抗体からの必要な重要な残基をヒトアクセプターフレームワークに置き換えて入れる。抗体のコンピュータモデリングをかかる構造的に重要な残基の同定を容易にするために使用し得る(WO99/48523参照)。
【0032】
あるいは、ヒト化を、‘ベニアリング(veneering)’の方法により達成し得る。独特なヒトおよびマウス免疫グロブリン重および軽鎖可変領域の統計分析は、暴露された残基の厳密なパターンがヒト抗体とマウス抗体で異なり、ほとんどの個々の表面位置が少ない数の異なる残基に強い優先傾向を有することが確認されている(Padlan EA, et al; (1991) Mol Immunol 28, 489-498およびPedersen JT et al (1994) J Mol Biol 235; 959-973)。それ故に、通常ヒト抗体で見られるものと異なるフレームワーク領域内の暴露された残基を置き換えることにより、非ヒトFvの免疫原性を減らすことが可能である。タンパク質抗原性が表面到達性と相関するため、表面残基の置き換えは、マウス可変領域を、ヒト免疫系に対して‘不可視’とするのに十分であり得る(またMark GE et al (1994) in Handbook of Experimental Pharmacology vol 113: The pharmacology of monoclonal Antibodies, Springer-Verlag, pp 105-134も参照のこと)。ヒト化のこの方法は、抗体の表面のみが変えられ、支持残基は影響を受けないままであるため‘ベニアリング’と呼ばれる。
【0033】
それ故に、本発明の一つの態様において7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用を阻害できるインタクトな治療用ヒト化抗体が提供される。好ましい本発明の態様において、インタクトな治療用ヒト化抗体は7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用を阻害する。典型的態様において、インタクトな治療用ヒト抗体は、IgGアイソタイプ、例えばIgG1またはIgG4の定常領域を含む。
【0034】
4.1.1.1.3 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2個の異なるエピトープに結合特異性を有する抗体である。かかる抗体の製造方法は当分野で既知である。伝統的に、二重特異性抗体の組み換え産生は、2個の免疫グロブリンH鎖−L鎖対の共発現に基づき、この2個のH鎖は異なる結合特異性を有する(Millstein et al, Nature 305, 537-539 (1983)、WO93/08829およびTraunecker et al, EMBO, 10, 1991, 3655-3659参照)。H鎖およびL鎖の無作為分類のために、10種の異なる抗体構造の混合物が産生される可能性があり、その中の1個のみが所望の結合特異性を有する。別の方法は、所望の結合特異性を有する可変ドメインの、少なくともヒンジ領域、CH2およびCH3領域の部分を含む重鎖定常領域への融合である。融合物の少なくとも1個に存在する軽鎖結合に対して必要な部位を含むCH1領域を有することが好ましい。これらの融合物および、望むならば、L鎖をコードする、DNAを、別の発現ベクターに入れ、適当な宿主生物に共トランスフェクトする。2個または全3個の鎖のためのコーディング配列を一つの発現ベクターに挿入することを考えることも可能である。一つの好ましい方法において、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有するH鎖を一つのアームに有し、そして他のアームに第二の結合特異性を提供するH−L鎖対を有する(WO94/04690参照)。またSuresh et al, Methods in Enzymology 121, 210, 1986も参照のこと。
【0035】
本発明の一つの態様において、二重特異性治療用抗体が提供され、ここで、該抗体の少なくとも一つの結合特異性は7,25DHCまたは7,27DHCまたは7HCまたは25HCに対してであり、第二の特異性はEBI2に対してである。好ましい本発明の態様において、二重特異性治療用抗体は、7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCに対して少なくとも一つの結合特異性およびEBI2に対して第二の特異性を有し、7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用を阻害する。好ましい形態において、二重特異性抗体はIgG(例えばIgG1またはIgG4)アイソタイプの霊長類、例えばヒト抗体である。
【0036】
4.1.1.1.4 抗体フラグメント
ある本発明の態様において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCとEBI2の間の相互作用を調節(例えば阻害する)治療用抗体フラグメントが提供される。かかるフラグメントは、インタクトおよび/またはヒト化キメラ抗体の機能的抗原結合フラグメント、例えば上記抗体のFab、Fab’、F(ab)2、Fv、ScFvフラグメントである。
【0037】
伝統的に、かかるフラグメントは、インタクトな抗体の例えばパパイン消化によるタンパク質分解消化により製造されるが(例えばWO94/29348参照)、直接組み換えによりトランスフォームした宿主細胞から製造してよい。ScFvの産生について、Bird et al; (1988) Science, 242, 423-426参照のこと。加えて、抗体フラグメントを、種々の下に記載する操作技術を使用して製造し得る。
【0038】
FVフラグメントは、Fabフラグメントよりもその2鎖の相互作用エネルギーが低いように見える。VHドメインおよびVLドメインを安定化するために、それらをペプチド(Bird et al, (1988) Science, 242, 423-426, Huston et al, PNAS, 85, 5879-5883)、ジスルフィド架橋(Glockshuber et al, (1990) Biochemistry, 29, 1362-1367)および‘ノブ・イン・ホール’突然変異(Zhu et al (1997), Protein Sci., 6, 781-788)で架橋する必要がある。ScFvフラグメントは、当業者に既知の方法により製造できる(Whitlow et al (1991), Methods companion Methods Enzymol, 2, 97-105およびHuston et al (1993) Int Rev Immunol 10, 195-217参照)。ScFvは、細菌細胞、例えばE. Coli内で製造してよいが、より好ましくは真核細胞内で製造する。ScFvの欠点の一つは、多価結合による結合活性の増加を妨げる生成物の単結合価、および短い半減期である。これらの欠点に打ち勝つ試みは、化学結合により(Adams et al (1993) Can Res 53, 4026-4034 and McCartney et al (1995) Protein Eng, 8, 301-314)または不対C末端システイン残基含有ScFvの本態性部位特異的二量体化により(Kipriyanov et al (1995) Cell. Biophys 26, 187-204参照)、さらなるC末端システインを含むScFvから製造した二価(ScFv’)である。あるいは、ScFvを、‘二重特異性抗体’を形成するためにペプチドリンカーを3および12残基に短くすることにより多量体を形成させることができる(Holliger et al PNAS (1993), 90, 6444-6448参照)。リンカーの減少は、さらにScFV三量体(‘トリアボディ’、Kortt et al (1997) Protein Eng, 10, 423-433参照)および四量体(‘テトラボディ’、Le Gall et al (1999) FEBS Lett, 453, 164-168参照)をもたらし得る。二価(bialent)ScFV化合物の構築もまた遺伝子融合と、タンパク質二量体化モチーフを融合させて、‘ミニ抗体’(Pack et al (1992) Biochemistry 31, 1579-1584参照)および‘ミニボディ’(Hu et al (1996), Cancer Res. 56, 3055-3061参照)を形成することによっても達成できる。ScFv−Sc−Fvタンデム((ScFV))もまた、2個のScFV単位を第三のペプチドリンカー(linger)により結合させることによっても製造し得る(Kurucz et al (1995) J Immunol, 154, 4576-4582参照)。二重特異性の二重特異性抗体は、短リンカーにより他方の抗体のVLドメインに結合した、一方の抗体由来のVHドメインから成る2個の一本鎖融合産物の非共有結合的結合によって製造できる(Kipriyanov et al (1998), Int J Can 77, 763-772)。かかる二重特異性の二重特異性抗体は、上に記載した通り、ジスルフィド架橋または‘ノブ・イン・ホール’突然変異の挿入により、または2個のハイブリッドScFvフラグメントがペプチドリンカーを介して結合している一本鎖二重特異性抗体(ScDb)の形成により増強できる(Kontermann et al (1999) J Immunol Methods 226, 179-188参照)。四価二重特異性化合物は、例えばScFvフラグメントをヒンジ領域を介してIgG化合物のCH3ドメインに、またはFabフラグメントに融合させることにより、利用可能である(Coloma et al (1997) Nature Biotechnol, 15, 159-163参照)。あるいは、四価二重特異性化合物は、二重特異性一本鎖二重特異性抗体の融合により製造されている(Alt et al (1999) FEBS Lett 454, 90-94参照)。小さい四価二重特異性化合物は、ScFv−ScFvタンデムとヘリックス・ループ・ヘリックス・モチーフを含むリンカー(DiBiミニ抗体、Muller et al (1998) FEBS Lett 432, 45-49参照)または4個の抗体可変ドメイン(VHおよびVL)を含む一本鎖化合物のいずれかとの、分子内対形成を妨げる配向での二量体化により形成できる(タンデム二重特異性抗体、Kipriyanov et al, (1999) J Mol Biol 293, 41-56参照)。二重特異性F9ab’)フラグメントは、Fab’フラグメントの化学結合により、またはロイシンジッパーを介するヘテロ二量体化により製造できる(Shalaby et al (1992) J Exp Med 175, 217-225およびKostelny et al (1992), J Immunol 148 1547-1553参照)。また利用可能なのは単離VHドメインおよびVLドメイン(Domantis plc)(US6,248,516;US6,291,158;US6,172,197参照)および単離VHHドメイン抗体(ナノボディ)である。これらのドメインおよびナノボディは、半減期延長タンパク質、例えばヒト血清アルブミン(HSA)に対する一つの特異性を有する二重特異性であり得る。かかるドメインおよびナノボディは、両方とも本発明のNRG1タンパク質に対して一特性であり、さらに、半減期延長タンパク質、例えばHSAに対する二重特異性が本発明によりにより特に意図される。
【0039】
一つの態様において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害する、上に記載した治療用抗体フラグメント(例えばScFv、Fab、Fab’、F(ab’))または操作された抗体フラグメントが提供される。好ましい本発明の態様において、治療用抗体フラグメントまたは操作された抗体フラグメントは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用を阻害する。
【0040】
4.1.1.1.5 ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体もまた本発明の態様を形成する。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の好都合な架橋法を使用して形成した2個の共有結合的に結合した抗体から成る。例えば、US4,676,980参照。
【0041】
4.1.1.1.6 他の修飾
抗体のFc領域と種々のFc受容体(FcγR)の間の相互作用は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体の固定、食作用、および抗体の半減期/クリアランスを含む、抗体のエフェクター機能を仲介すると考えられる。本発明の抗体のFc領域に対する種々の修飾は、所望の特性に依存して行い得る。例えば、別の溶菌性抗体を得るためのFc領域の特異的突然変異、非溶菌性はEP0629240B1およびEP0307434B2に詳述されており、または血清半減期を延長するために抗体にサルベージ受容体結合エピトープを挿入し得る(US5,739,277参照)。現在5種の認識されているヒトFcγ、FcγR(I)、FCγRIIb、FcγRIIIaおよび新生児FcRnが存在する。Shields et al, (2001) J Biol Chem 276, 6591-6604は、共通のIgG1残基の組が全てのFcγRの結合に関与し、一方FCγRIIおよびFcγRIIIはこの共通の組の外の異なる部位を利用することを証明した。IgG1残基の一群は、アラニン:Pro−238、Asp−265、Asp−270、Asn−297およびPro−239に改変したとき、全FcγRへの結合が減少する。全てIgG CH2ドメイン内であり、CH1とCH2を結ぶヒンジ周辺に群発する。一方FcγRIは結合のためにIgG1残基の共通の組、FcγRIIおよびFcγRIII(例えばGlu−293)しか使用しない。いくつかの変異体はFcγRIIまたはFcγRIIIへの結合が改善されているが、他の受容体への結合には影響しなかった(例えばSer−267AlaはFcγRIIへの結合が改善されているが、FcγRIIIへの結合は影響を受けなかった)。他の変異体では、DcγRIIまたはFcγRIIIへの結合が改善され、他の受容体への結合は減少した(例えばSer298AlaはFcγRIIIへの結合が改善し、FcγRIIへの結合が減少した)。FcγRIIIaについて、最良の結合IgG1変異体がSer−298、Glu−333およびLs−334でのアラニン置換と組み合わせた。新生児FcRn受容体は抗体クリアランスおよび組織を通過する経細胞輸送の両方に関与すると考えられる(Junghans RP (1997) Immunol Res 16, 2957およびGhetie et al (2000) Annu Rev Immunol 18, 739-766参照)。ヒトFcRnと直接相互作用することが決定されたヒトIgG1残基は、Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434およびHis435を含んだ。この章で記載するこれらのいずれかの位置でのスイッチは、本発明の抗体の血清半減期の延長および/またはエフェクター特性改変が可能であり、およびそれ故に本発明の態様を形成する。
【0042】
他の修飾は、本発明の抗体の糖鎖付加変異体を含む。抗体の定常領域中の保存位置での糖鎖付加は、抗体機能、特に上に記載したようなエフェクター機能に顕著に影響することが知られている(例えば、Boyd et al (1996), Mol Immunol 32, 1311-1318参照)。1個以上の糖鎖が付加、置換、欠失または修飾された本発明の治療用抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする糖鎖(carbonhydrate moiety)付加変異体が意図される。アスパラギン−X−セリンまたはアスパラギン−X−スレオニンモチーフの挿入は、糖鎖(carbonhydrate moiety)が酵素結合する可能性のある端を作り、それ故に抗体の糖鎖付加を操作するために使用し得る。Raju et al (2001) Biochemistry 40, 8868-8876において、TNFR−IgGイムノアドヘシンの末端シアル酸付加(sialyation)が、ベータ−1,4−ガラクトース転移酵素(galactrosyltransferace)および/またはアルファ,2,3−シアリルトランスフェラーゼを使用した再ガラクトシル化および/または再シアル酸付加の過程を通して増加した。末端シアル酸付加の増加は、免疫グロブリンの半減期を延長すると考えられる。抗体は、ほとんどの糖タンパク質と共通して、典型的にグリコフォームの混合物として産生する。この混合物は、抗体が真核、特に哺乳動物細胞で産生されたとき、特に明らかである。規定されたグリコフォームを製造するための種々の方法が開発されている(Zhang et al, Science (2004), 303, 371; Sears et al, Science (2001), 291, 2344; Wacker et al (2002), Science 298, 1790; Davis et al (2002), Chem Rev 102, 579; Hang et al (2001), Acc Chem Res 34, 727)。それ故に本発明は、規定の数(例えば7個以下、例えば5個以下、例えば2個または2個)のグリコフォームを含む、ここに記載した多数の(plurity)治療用(モノクローナル)抗体(これはIgGアイソタイプ、例えばIgG1であり得る)または該抗体またはその抗原結合フラグメントを意図する。
【0043】
さらに本発明の態様は、非タンパク質性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンに結合した本発明の治療用抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。タンパク質のPEGへの結合は、タンパク質の半減期延長、ならびにタンパク質の抗原性および免疫原性減少のための確立された技術である。異なる分子量およびスタイル(直線状または分枝状)でのペグ化の使用は、インタクトな抗体ならびにFab’フラグメントで研究されている(Koumenis IL et al (2000) Int J Pharmaceut 198; 83-95参照)。
【0044】
4.2 アドネクチン類 − 化合物治療学
アドネクチン足場は、フィブロネクチンIII型ドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型の第10モジュール(10 Fn3ドメイン))に基づく。フィブロネクチンIII型ドメインは、2個のベータ・シートの間に分散する7個または8個のベータ・ストランドを有し、ベータ・シート自体、互いに包装されてタンパク質のコアを形成し、さらにベータ・ストランドを互いに接続し、溶媒曝露であるループ(CDRに類似)を含む。ベータ・シートサンドイッチの各端に少なくとも3個のかかるループが存在し、かかる端は、ベータ・ストランドの方向に垂直なタンパク質の境界である(US6,818,418)。
【0045】
これらのフィブロネクチンを利用した足場は免疫グロブリンではないが、全体的折りたたみは、重鎖の可変領域である最小機能的抗体フラグメントの折りたたみと密接に関係し、当該可変領域はラクダおよびラマIgGにおける全体的抗原認識単位を構成する。この構造のため、非免疫グロブリン抗体は抗体と性質および親和性が類似する抗原結合特性を摸倣する。これらの足場は、インビボでの抗体の親和性成熟に似たインビトロでのループランダム化および混合戦略に使用できる。これらのフィブロネクチンを利用した化合物は、化合物のループ領域が標準クローニング技術を使用して本発明のCDRに置き換えることができる足場として使用できる。従って、ある態様において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害するアドネクチン化合物が提供される。好ましい態様において、アドネクチン化合物は7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害する。
【0046】
4.3 アンキリン− Molecular Partners
この技術は、異なる標的に結合するために使用できる可変領域を担持するための足場としての、アンキリン由来反復モジュールを有するタンパク質の使用に基づく。アンキリン反復モジュールは、2個の逆平行α螺旋およびβターンから成る33アミノ酸ポリペプチドである。可変領域の結合は、リボソームディスプレイを使用してほとんど最適化される。従って、ある態様において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害するアンキリン化合物が提供される。好ましい態様において、アドネクチン化合物は7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害する。
【0047】
4.4 マキシボディ/アビマー− Avidia
アビマーは、天然Aドメイン含有タンパク質、例えばLRP−1に由来する。これらのドメインは、本来、タンパク質−タンパク質相互作用に使用され、ヒトでは250種を超えるタンパク質が、Aドメインに基づく構造である。アビマーは、アミノ酸リンカーを介して結合した多くの異なる“Aドメイン”モノマー(2−10)から成る。アビマーは、例えば、US20040175756;US20050053973;US20050048512;およびUS20060008844に記載された方法を使用して、標的抗原に結合できるように製造できる。従って、ある態様において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害するマキシボディ化合物が提供される。好ましい態様において、マキシボディ化合物は7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害する。
【0048】
4.5 プロテインA − アフィボディ
アフィボディ(登録商標)親和性リガンドは、プロテインAのIgG結合ドメインの1個の足場に基づく3個のヘリックスバンドルから成る、小さく、単純なタンパク質である。プロテインAは、細菌である黄色ブドウ球菌由来の表面タンパク質である。この足場ドメインは58アミノ酸から成り、そのうち13個は、多くのリガンド変異体を含むアフィボディ(登録商標)ライブラリーを作るために無作為化されている(例えば、US5,831,012参照)。アフィボディ(登録商標)化合物は抗体を摸倣し、150kDaである抗体の分子量に対して、6kDaの分子量である。サイズが小さいにもかかわらず、アフィボディ(登録商標)化合物の結合部位は抗体の結合部位に類似する。従って、ある態様において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害するプロテインA−アフィボディ化合物が提供される。好ましい態様において、プロテインA−アフィボディ化合物は7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害する。
【0049】
4.6 アンチカリン類− Pieris
アンチカリン類(登録商標)は、Pieris ProteoLab AG社が開発した製品である。それらは、通常化学感受性または不溶性化合物の生理学的輸送または貯蔵に関与する、小さく、頑強なタンパク質の広い群であるリポカリン類に由来する。数種の天然リポカリン類はヒト組織または体液に存在する。
【0050】
タンパク質構造は免疫グロブリン類を想起させ、強固なフレームワークの頂上に高頻度可変ループを有する。しかしながら、抗体またはその組み換えフラグメントとは対照的に、リポカリン類は、160〜180アミノ酸残基を有する単ポリペプチド鎖から成り、単免疫グロブリンドメインよりわずかに大きいだけである。
【0051】
結合ポケットを構成する4個のループの組が顕著な構造柔軟性を示し、種々の側鎖に耐容性である。この結合部位は、それ故に異なる形の所定の標的化合物を、高親和性および特異性で認識するために、独自の工程で再構成される。
【0052】
リポカリンファミリーの一タンパク質であるオオモンシロチョウ(Pieris Brassicae)のビリン結合タンパク質(BBP)が、4個のループの組の変異誘発によるアンチカリン類の開発に使用されている。“アンチカリン類”を記載する特許の一例は、PCT出願WO199916873である。
【0053】
従って、ある態様において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害するアンチカリン化合物が提供される。好ましい態様において、アンチカリン化合物は7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害する。
【0054】
4.7 アフィリン− Scil Proteins
アフィリンTM化合物は、タンパク質および小化合物に対する特異的親和性について設計された小非免疫グロブリンタンパク質である。新しいアフィリンTM化合物は、各々異なるヒト由来足場タンパク質に基づく2個のライブラリーから非常に速く検索できる。アフィリンTM化合物は、免疫グロブリンタンパク質に対していかなる構造相同性も示さない。Scil Proteinsは2個のアフィリンTM足場を用い、その一方は、ヒト構造的眼水晶体タンパク質であるガンマクリスタリンであり、他方は“ユビキチン”スーパーファミリータンパク質である。両方のヒト足場とも非常に小さく、高い温度安定性を示し、pH変化および変性剤にほとんど耐性である。この高い安定性は、大部分タンパク質の伸長したベータ・シート構造による。ガンマクリスタリン由来タンパク質の例はWO200104144に記載され、“ユビキチン様”タンパク質の例はWO2004106368に記載されている。従って、ある態様において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害するアフィリン化合物が提供される。好ましい態様において、アフィリン化合物は7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドと受容体の間の相互作用を阻害する。
【0055】
4.7.1 他の治療用モダリティ
先に記載した通り、本発明の他の治療用モダリティは、タンパク質発現前にその標的に対する効果を発揮するEBI2のモジュレーター(特に阻害剤)を含む。例は、(a)EBI2の一部(特にNRG1β1)遺伝子と安定な三本鎖を形成できる、または(b)生理学的条件下で、EBI2遺伝子のmRNA転写物の一部と安定な二本鎖を形成できる配列を含む(または基本的にこれから構成される)アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。他の例は、“RNA干渉”の減少に関与できる分子を含む。RNA干渉(RNAi)は、特定のタンパク質の産生を特異的に阻害するときに特に有用である。理論に縛られることを望まないが、Waterhouse et al. (1998)は、dsRNA(二本鎖RNA)をタンパク質産生の減少のために使用できる機構についてのモデルを提供している。好都合に、dsRNAは、組み換えベクターまたは宿主細胞において単プロモーターから製造でき、そこで、センス配列およびアンチセンス配列の横に無関係の配列があり、それがセンス配列およびアンチセンス配列がハイブリダイズして、該無関係の配列とdsRNA分子を形成し、ループ構造を形成することを可能にする。本発明のための好適なdsRNA分子の設計および製造は、特にWaterhouse et al. (1998)、Smith et al. (2000)、WO99/32619、WO99/53050、WO99/49029、およびWO01/34815を考慮して、当業者の能力の範囲内である。
【0056】
一例として、不活性化する標的遺伝子と相同性を有する少なくとも部分的に二本鎖のRNA生成物の合成を指向するDNAを挿入する。
【0057】
DNAは、それ故に、RNAに転写されたとき、ハイブリダイズして二本鎖RNA領域を形成できるセンス配列およびアンチセンス配列の両方を含む。好ましい態様において、センス配列およびアンチセンス配列は、RNAに転写されたとき、切り出されるイントロンを含むスペーサー領域を含む。この配置は高い効率で遺伝子サイレンシングをもたらすことが示されている。二本鎖領域は、1個または2個のDNA領域から転写された1個または2個のRNA分子を含み得る。二本鎖分子の存在は、標的哺乳動物遺伝子からの二本鎖RNAおよびまた相同RNA転写物の両方を破壊し、標的遺伝子の活性を効率的に減少させ、または無くす内在性哺乳動物システムからの応答の引き金を引くと考えられる。
【0058】
ハイブリダイズするセンス配列およびアンチセンス配列の長さは、各々少なくとも19連続ヌクレオチド、好ましくは少なくとも30または50ヌクレオチド、およびより好ましくは少なくとも100、200、500または1000ヌクレオチドでなければならない。全体的遺伝子転写物に対応する完全長配列を使用し得る。長さは、最も好ましくは100−2000ヌクレオチドである。標的転写物に対するセンス配列およびアンチセンス配列の同一性の程度は少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%およびより好ましくは95−100%でなければならない。RNA分子は、当然該分子の安定化のために機能し得る無関係の配列を含み得る。RNA分子はRNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼHIプロモーターの制御下に発現し得る。後者の例はtRNAまたはsnRNAプロモーターを含む。
【0059】
好ましい低分子干渉RNA(“siRNA”)分子は、標的mRNAの約19−21連続ヌクレオチドと同一のヌクレオチド配列を含む。好ましくは、siRNA配列はジヌクレオチドAAで始まり、約30−70%(好ましくは、30−60%、より好ましくは40−60%およびより好ましくは約45%−55%)のGC含量を有し、そして、例えば標準BLAST探索で測定して、それを挿入する哺乳動物のゲノムの標的以外のヌクレオチド配列と高い同一性パーセンテージを有さない。
【0060】
マイクロRNA制御は、慣用のRNAi/PTGSから逸脱し、遺伝子制御に対して発展されたRNAサイレンシング経路の明確に特化された派生形態である。
【0061】
マイクロRNAは、特徴的逆方向反復に統合された遺伝子様エレメントで符号化される小RNAの特異的クラスである。転写されたとき、マイクロRNA遺伝子はステムループ前駆体RNAを生じ、そこからマイクロRNAが処理される。マイクロRNAは典型的に約21ヌクレオチド長である。放出されたmiRNAは、配列−特異的遺伝子抑制するArgonauteタンパク質の特定のサブセットを含むRISC様複合体に包含される(例えば、Millar and Waterhouse, 2005; Pasquinelli et al. 2005; Almeida and Allshire, 2005参照)。
【0062】
4.8 産生方法
本発明の治療用タンパク質、および特に抗体はポリクローナル集団として製造してよいが、より好ましくはモノクローナル集団(すなわち特異的抗原結合部位に対する同一な抗体の実質的に均質な集団)として製造する。当然、当業者には集団が1個を超える抗体を意味することは明らかである。本発明の抗体はトランスジェニック生物、例えばヤギ(Pollock et al (1999), J. Immunol. Methods 231 :147-157参照)、ニワトリ(Morrow KJJ (2000) Genet. Eng. News 20:1-55参照)、マウス(Pollock et al参照)または植物(Doran PM, (2000) Curr. Opinion Biotechnol. 11, 199-204, Ma JK-C (1998), Nat.Med. 4; 601-606, Baez J et. al, BioPharm (2000) 13:50-54, Stoger E et al; (2000) Plant Mol. Biol. 42:583-590参照)で製造し得る。抗体を化学合成で製造してもよい。しかしながら、抗体および他の本発明の治療用タンパク質は、典型的に当業者に周知の組み換え細胞培養技術を使用して製造する。抗体をコードするポリヌクレオチドを単離し、複製可能ベクター、例えばプラスミドにさらなるクローニング(増幅)または発現のためにクローニングする。一つの有用な発現システムは、特に宿主細胞がCHOまたはNSO(下記参照)であるときの、グルタメート・シンテターゼシステム(例えばLonza Biologiesにより販売)である。抗体をコードするポリヌクレオチドは、慣用の方法(例えばオリゴヌクレオチドプローブ)を使用して、容易に単離および配列決定される。使用し得るベクターはプラスミド、ウイルス、ファージ、トランスポゾン、ミニ染色体であり、プラスミドが典型的な態様である。一般にかかるベクターはさらに発現を容易にするために、軽および/または重鎖ポリヌクレオチドに実行可能(operably)に結合したシグナル配列、複製起点、1個以上のマーカー遺伝子、エンハンサー・エレメント、プロモーターおよび転写終止配列を含む。軽鎖および重鎖をコードするポリヌクレオチドを別のベクターに挿入し、同じ宿主細胞にトランスフェクトするか、望むならば重鎖および軽鎖の両方を宿主細胞のトンラスフェクションのための同一ベクターに挿入できる。それ故に本発明の一面に従い、本発明の治療用抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする軽および/または重鎖をコードするベクターの構築方法であって、ベクターに、本発明の治療用抗体の軽鎖および/または重鎖のいずれかをコードするポリヌクレオチドを挿入する方法が提供される。
【0063】
4.8.1 シグナル配列
本発明の抗体は、成熟タンパク質のN末端に特異的開裂部位を有する異種シグナル配列との融合タンパク質として製造してよい。シグナル配列は宿主細胞により認識され、処理されなければならない。原核宿主細胞について、シグナル配列はアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、または熱安定性エンテロトキシンIlリーダーである。酵母分泌のために、シグナル配列は酵母インベルターゼ・リーダー、[アルファ]因子リーダーまたは酸ホスファターゼ・リーダーである(例えばWO90/13646参照)。哺乳動物細胞系では、ウイルス分泌性リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルおよび天然免疫グロブリンシグナル配列が利用可能である。典型的に、シグナル配列を本発明の抗体をコードするDNAのリーディングフレームにライゲートする。
【0064】
4.8.2 複製起点
複製起点は当分野で既知であり、pBR322がほとんどのグラム陰性細菌に好適であり、2μ プラスミドがほとんどの酵母に好適であり、種々のウイルス起源、例えばSV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPVがほとんどの哺乳動物細胞に好適である。一般に、複製起点成分は哺乳動物発現ベクターには必要ないが、初期プロモーターを含むためSV40を使用し得る。
【0065】
4.8.3 選択マーカー
典型的選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートまたはテトラサイクリンに対する抵抗性を付与するまたは(b)栄養要求性欠損を補うまたは複合培地から利用できない栄養素を供給するタンパク質をコードする。選択スキームは宿主細胞の増殖停止を含み得る。本発明の治療用抗体をコードする遺伝子での形質転換に成功した細胞は、例えば選択マーカーにより付与された薬剤抵抗性のために生存する。他の例は、形質転換体をメトトレキサート存在下で培養する、いわゆるDHFR選択マーカーである。典型的な態様において、細胞を、目的の外来性遺伝子のコピー数を増やすためにメトトレキサート存在下で、その濃度を高めながら培養する。CHO細胞が、DHFR選択のために特に有用な細胞株である。さらなる例は、グルタメート・シンテターゼ発現システム(Lonza Biologies)である。酵母で使用するための適当な選択遺伝子はtrp1遺伝子である(Stinchcomb et al Nature 282, 38, 1979参照)。
【0066】
4.8.4 プロモーター
本発明の抗体を発現するための好適なプロモーターを、抗体をコードするDNA/ポリヌクレオチドに実施可能なように結合する。原核宿主用プロモーターは、phoAプロモーター、ベータ−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーターシステム、アルカリホスファターゼ、トリプトファンおよびハイブリッドプロモーター、例えばTacを含む。酵母細胞での発現に好適なプロモーターは、3−ホスホグリセラートキナーゼまたは他の解糖酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド(glyceralderhyde)3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ビルベートデカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセラートムターゼおよびグルコキナーゼを含む。誘導型酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソサイトクロームC、酸ホスファターゼ、メタロチオネインおよび窒素代謝またはマルトース/ガラクトース利用を担う酵素を含む。
【0067】
哺乳動物細胞系での発現のためのプロモーターは、ウイルスプロモーター、例えばポリオーマ、鶏痘およびアデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(特に最初期遺伝子プロモーター)、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、アクチン、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターおよび初期または後期サルウイルス40を含む。当然プロモーターの選択は、発現に使用する宿主細胞との好適な適合性に基づく。
【0068】
4.8.5 エンハンサー・エレメント
例えば高級真核細胞での発現のために、適当なとき、ベクター内でプロモーター・エレメントに実施可能なように結合したエンハンサー・エレメントを使用し得る。好適な哺乳動物エンハンサー配列は、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、フェトプロテインおよびインスリンからのエンハンサー・エレメントを含む。あるいは、真核細胞ウイルス、例えばSV40エンハンサー(bp100−270で)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、polymaエンハンサー、バキュロウイルスエンハンサーまたはマウスlgG2a座位(WO04/009823参照)からのエンハンサー・エレメントを使用し得る。エンハンサーは、好ましくはプロモーターの上流部位でベクターに存在する。
【0069】
4.8.6 宿主細胞
本発明の抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、原核、酵母または高級真核細胞である。好適な原核細胞は、真正細菌、例えば腸内細菌科、例えばエシェリキア属、例えばE. Coli(例えばATCC 31, 446; 31, 537; 27,325)、エンテロバクター、エルウィニア、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア、例えば霊菌および赤痢菌ならびに桿菌、例えば枯草菌およびバチルス・リケニフォルミス(DD266710参照)、シュードモナス、例えば緑膿菌およびストレプトマイセスを含む。酵母宿主細胞の中で、出芽酵母、分裂酵母、クリベロマイセス(例えばATCC 16,045; 12,424; 24178; 56,500)、ヤロウイア属(EP402,226)、ピキア・パストリス(EP183,070、Peng et al J. Biotechnol. 108 (2004) 185-192も参照)、カンジダ、トリコデルマ・リーゼイ(Thchoderma reesia)(EP244,234J、ペニシリン、トリコデルマ・リーゼイ(Thchoderma reesia)およびアスペルギルス宿主、例えば偽巣性コウジ菌およびクロコウジカビも意図される。
【0070】
原核および酵母宿主細胞が本発明により特に意図されるが、好ましくは、しかしながら、本発明の宿主細胞は高級真核細胞である。好適な高級真核宿主細胞は哺乳動物細胞、例えばCOS−1(ATCC No. CRL 1650)、COS−7(ATCC CRL 1651)、ヒト胚腎臓系293、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)(ATCC CRL.1632)、BHK570(ATCC NO:CRL 10314)、293(ATCC NO. CRL 1573)、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO(例えばCHO−K1、ATCC NO:CCL 61、DHFR−CHO細胞株、例えばDG44(Urlaub et al, (1986) Somatic Cell Mol. Genet. 12, 555-556参照)、特に懸濁液培養に適するCHO細胞株、マウスセルトリ細胞、サル腎臓細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(ATCC CRL-1587)、HELA細胞、イヌ腎臓細胞(ATCC CCL 34)、ヒト肺細胞(ATCC CCL 75)、Hep G2および骨髄腫またはリンパ腫細胞、例えばNSO(US5,807,715参照)、Sp2/0、YOである。それ故に本発明の一つの態様において、ここに記載する治療用抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖および/または軽鎖をコードするベクターを含む、安定に形質転換された宿主細胞を含む。好ましくはかかる宿主細胞は、軽鎖をコードする第一ベクターおよび重鎖をコードする第二ベクターを含む。
【0071】
4.6.1 細菌発酵
細菌システムを使用して、上記の非免疫グロブリン治療用タンパク質を発現し得る。細菌システムはまた、抗体フラグメントの発現に特に適する。かかるフラグメントは細胞内、または周辺質内に局在化する。不溶性周辺質タンパク質を当業者に既知の方法に従い抽出し、再折りたたみして、活性タンパク質を形成できる(Sanchez et al (1999) J. Biotechnol. 72, 13-20およびCu pit PM et al (1999) Lett Appl Microbiol, 29, 273-277参照)。
【0072】
4.8.7 細胞培養方法
本発明の治療用抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするベクターで形質転換した宿主細胞を、当業者に既知の任意の方法により培養し得る。宿主細胞を、スピナ・フラスコ、ローラー・ボトルまたは中空繊維システムで培養できるが、大規模産生には、特に懸濁液培養のために撹拌タンク・リアクターを使用するのが好ましい。好ましくは撹拌タンカーは、例えばスパージャ、整流装置または低剪断羽根車を使用した通気に適する。バブルカラムおよび空輸リアクターに関して、空気または酸素バブルでの通気を使用し得る。宿主細胞を無血清培地で培養するとき、通気過程の結果としての細胞損傷を防止するために、細胞保護剤、例えばpluronic F-68を培地に添加するのが好ましい。宿主細胞特性によって、マイクロキャリアーを足場依存性細胞株のための増殖支持体として使用してよく、または細胞を懸濁液培養に適合させ得る(これが典型的)。宿主細胞、特に無脊椎動物の培養において、宿主細胞を種々の運用モードで、例えば流加、反復バッチ処理(Drapeau et al (1994) cytotechnology 15:103-109参照)、拡張バッチプロセスまたは灌流培養を使用し得る。組み換えによりトランスフォームした哺乳動物宿主細胞を血清、例えばウシ胎児血清(FCS)含有培地で培養できるが、かかる宿主細胞をKeen et al (1995) Cytotechnology 17:153-163に記載されたような合成無血清培地、または市販の培地、例えばProCHO-CDMまたはUltraCHO(TM)(Cambrex NJ, USA)で培養するのが好ましく、必要であれば、エネルギー源、例えばグルコースおよび合成増殖因子、例えば組み換えインスリンを添加する。宿主細胞の無血清培養は、細胞が無血清条件に適合していることが必要であり得る。一つの適合方法は、かかる宿主細胞を血清含有培地で培養し、宿主細胞が無血清条件への適合を学習するようにその培養培地の80%を繰り返し無血清培地に交換することである(例えばScharfenberg K et al (1995) in Animal Cell technology: Developments towards the 21st century (Beuvery E.G. et al eds), pp619-623, Kluwer Academic publishers参照)。
【0073】
培地に分泌された本発明の抗体または他の治療用タンパク質を、種々の技術を使用して、回収し、意図する使用に好適な純度まで精製し得る。例えばヒト患者の処置への本発明の治療用抗体の使用は、典型的に少なくとも95%純度、さらに典型的に98%または99%以上の純度が要求される(粗培養培地と比較して)。第一の例において、培養培地からの細胞残骸を、典型的に遠心分離により除去し、続いて上清を例えば精密濾過法、限外濾過および/またはデプス濾過を使用して浄化する。種々の他の技術、例えば透析およびゲル電気泳動およびクロマトグラフィー技術、例えばヒドロキシアパタイト(HA)、親和性クロマトグラフィー(場合により親和性タグ付加システム、例えばポリヒスチジンを含む)および/または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC、US5,429,746参照)が利用可能である。一つの態様において、本発明の抗体を、種々の浄化工程後、プロテインAまたはG親和性クロマトグラフィー、さらにクロマトグラフィー工程、例えばイオン交換および/またはHAクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換、分子ふるいクロマトグラフィーおよび硫酸アンモニウム沈殿を使用して補足する。典型的に、種々のウイルス除去工程も用いる(例えば例えばDV−20フィルターを使用したナノ濾過)。これらの種々の工程後、少なくとも75mg/ml以上、例えば100mg/ml以上の本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む精製した(好ましくはモノクローナル)調節物が提供され、それ故に本発明の態様を形成する。好適にはかかる調節物は、実質的に本発明の抗体凝集形態がない。
【0074】
4.9 スクリーニング方法
他の態様において、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用のモジュレーターを同定するための方法が提供される。かかる方法は、一般に7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCを候補化合物の存在下で接触させ、候補化合物非存在下の同じ実験と比較したリガンド7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用の調節(例えば阻害)を観察することを含む。好ましい本発明の態様において、リガンドは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCである。阻害特性を示す候補化合物の構造をさらに修飾して、臨床的にそれを必要とするヒト患者のために製剤および投与する前に、その標的に対するIC50を改善してよく、そして/または毒性プロファイルを改善してよい。
【0075】
4.10 医薬組成物
本発明は、薬学的に許容される担体と製剤された治療用タンパク質または低分子量化学物質を含む医薬組成物を提供する。組成物は、さらに、以下に記載するヒト疾患または障害の処置または予防に好適な他の治療剤を含んでよい。薬学的に担体は組成物を増強または安定化し、または組成物の製剤を容易にする。薬学的に許容される担体は生理学的に適合性の溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。
【0076】
本発明の医薬組成物は、当分野で既知の種々の方法で投与できる。投与経路および/または様式は、所望の結果によって異なる。投与が静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下であるのが好ましく、または標的部位の近位に投与する。薬学的に許容される担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば、注射または輸液による)に適さなければならない。投与経路によって、活性化合物(特に低分子量化学物質)をコーティングして、化合物を不活性化し得る酸および他の天然条件の影響から化合物を保護し得る。
【0077】
組成物は無菌であり、流体でなければならない。適当な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンの使用、分散の場合必要な粒子径の維持および界面活性剤の使用により維持できる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール類、例えばマンニトールまたはソルビトール、および塩化ナトリウムを組成物に包含させるのが好ましい。注射可能組成物の長時間吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えば、アルミニウムモノステアレートまたはゼラチンを組成物に包含することにより達成できる。
【0078】
本発明の医薬組成物は当業者に周知であり、日常的に実施されている方法に従い、製造できる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Co., 20th ed., 2000; and Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978参照。医薬組成物は、好ましくはGMP条件下で製造する。典型的に、ここに記載するNRG1(例えばNRG1β1)のモジュレーター、例えばNRG1β1抗体の治療有効量または効果的量を本発明の医薬組成物に用いる。典型的にそれらを当業者に既知の慣用法により、薬学的に許容される投与形態に製剤する。投与レジメンを所望の最適応答(例えば、治療用応答)を提供するために調節する。例えば、単ボラスを投与してよく、数回に分けた分割投与量を経時的に投与してよく、または治療状況の緊急度によって示されるように投与量を比例的に減少または増加してよい。投与の容易さおよび投与量の均一さのために、非経腸組成物を投与単位形態に製剤するのが特に有利である。ここで使用する投与単位形態は、処置する対象への均一投与に適した物理的に分かれた単位である;各単位は、必要な医薬担体と共に、所望の治療効果を生じることが計算された予定量の活性化合物を含む。
【0079】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与レベルは、患者に有害ではなく、特定の患者に所望の治療用応答を達成するのに有効な活性成分の量であり、組成物、および投与方式によって変わる。選択する投与レベルは、用いる特定の本発明の組成物、またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排泄速度、処置期間、用いる特定の組成物と組合せて使用する他の薬剤、化合物および/または物質、患者の年齢、性別、体重、状態、全体的健康および薬歴、および類似の因子を含む種々の薬物動態学的因子による。
【0080】
医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルより少ない医薬組成物中の本発明の抗体を用いて投与を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加できる。一般に、ここに記載するアレルギー性炎症性障害の処置のための、本発明の組成物の有効量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるのか動物であるのか、他の投与されている医薬、および処置が予防であるのか、治療であるのかを含む、多くの種々の因子により異なる。処置投与量は、安全性および効果を最適化するために力価測定する必要がある。抗体の投与のために、約0.0001〜100mg/kg、より一般的に0.01〜5mg/kgの宿主体重の範囲である。例えば投与量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重または1〜10mg/kgの範囲内であり得る。例示的処置レジメンは、2週間に1回または1ヶ月に1回または3〜6ヶ月に1回の投与を必要とする。
【0081】
抗体および他のタンパク質治療剤は、通常様々な機会に投与される。一投与の間の間隔は、週、月または年であり得る。間隔は、患者の治療用タンパク質の血液濃度の測定により決定されるように不定期でもあり得る。ある方法において、投与量を、1−1000μg/mlの血漿抗体濃度となるように調節し、ある方法では25−300μg/mlである。あるいは、抗体または他のタンパク質治療剤を徐放製剤として投与でき、その場合必要な投与頻度が少ない。投与量および頻度は、患者中の抗体または他のタンパク質治療剤の半減期によって変わる。一般に、ヒト化抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体より半減期が長い。投与量および投与頻度は、処置が予防であるのかまたは治療であるのかによって変わり得る。予防適用において、相対的に低用量を、相対的に長い間隔で長時間にわたり投与する。ある患者は、存命中は処置を受け続ける。治療適用において、相対的に短い間隔での相対的に高投与量が、疾患の進行が抑制され、または止まるまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的なまたは完全な改善を示すまで必要であることがある。その後、患者に予防レジメで投与できる。
【0082】
それ故に本発明は、7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用のモジュレーターを薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む、医薬組成物に関する。好ましい態様において、医薬組成物は、7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用のモジュレーターを含む。典型的に、かかるモジュレーターは、上に記載した阻害剤である。
【0083】
4.11 臨床使用
7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用の、モジュレーター、特に阻害剤、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用の阻害剤を含む本発明の医薬組成物は、この相互作用の調節に応答する疾患または障害に使用し得る。かかる疾患の例は、高血圧、狭心症、アテローム性動脈硬化症、鬱血性心不全、卒中、肥満、代謝症候群、自己免疫性疾患、例えば関節炎、(特にリウマチ性関節炎)、多発性硬化症、および狼瘡、ならびにアトピー状態、例えば喘息およびアトピー性皮膚炎、COPD、肺高血圧、ウイルス感染症、例えばEBV、HIV、肝炎(AまたはC)、脂肪肝疾患、肝硬変(特にアルコール誘発肝硬変)、癌、異脂肪血症、糖尿病(特にII型)、移植拒絶反応、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、慢性炎症の疾患、アレルギー、乾癬、嚢胞性線維症、高コレステロール血症、腎臓疾患を含む。
【0084】
5. 例示
本発明を、ここで例示のみの目的で記載する。
図面は次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】野生型CHO−Aeqに対するhEBI2 CHO−AeqクローンにおけるhEBI2原形質膜発現のフローサイトメトリー分析。
【図2】EBI2−特異的siRNAオリゴヌクレオチドの一過性トランスフェクション(リポフェクタミン)後のCHO−Aeq細胞におけるhEBI2原形質膜発現の減少。
【図3】エクオリン一次スクリーニング中のヒト敗血症性肝臓抽出における特異的EBI2“活性”の同定。X軸=フラクション数、Y軸=10%の増加目盛りでの%ATP。
【図4】hEBI2−CHO−AeqGqi5細胞における、EBI2siRNA(配列番号は以下の表2に定義する通り)での一過性トランスフェクション後の、ヒト肝臓抽出でのhEBI2活性化の減少。左から右方向で:
【表1】

【図5】プロテイナーゼKで処理したまたは処理していない活性肝臓フラクションでのhEBI2(エクオリン)の活性化。
【図6】活性肝臓フラクションおよび分子ふるいクロマトグラフィーを使用する、EBI2リガンドの分子サイズの測定。
【図7】ヒト敗血症性肝臓抽出物からのhEBI2天然リガンドの精製:5工程液体クロマトグラフィー法。
【図8】ヒツジ敗血症モデルからの肝臓抽出物におけるhEBi−CHO−AeqGqi5クローン7のエクオリンスクリーニング。
【図9】6連続液体クロマトグラフィー工程を用いるヒツジ敗血症性肝臓抽出からのhEBI2天然リガンドの精製。X軸=時間(分);Y軸=AU(吸収単位)(A)またはmAU(ミリ吸収単位)(B−F,)。工程1はパネル(A)に対応し;工程2はパネル(B)に対応し;工程3はパネル(C)に対応し;工程4はパネル(D)に対応し;工程5はパネル(E)に対応し、そして工程6はパネル(F)に対応する。工程4のパネル(D)において、活性を16.25〜16.75分の間に検出する(図には示していない)。工程5のパネル(E)において、活性を20.50〜21.50分の間に検出する(図には示していない)。工程6のパネル(F)において、活性を39〜40分の間に検出する(図には示していない)。
【図10】陽および陰イオンモードでのEBI2活性およびコントロールフラクションのMS分析(Nano ESI-FTMS, Orbitrap)。()は活性フラクションでのみ検出されたピークを示し(対コントロールフラクション)、一方、(**)は、異なるLC方法により集めた2個の活性フラクションの共通ピークを示す。
【図11】7b,25DHCおよび7bHCは、CHO−AeqGqi5(エクオリン)に安定に発現されたhEBI2を活性化する。
【図12】CHO−AeqGqi5細胞に安定に発現されたヒトEBI2の7b,25DHCでの活性化は特異的である(エクオリンアッセイ)。
【図13】異なるhEBI2CHO−AeqGqi5細胞株で確認したヒトおよびマウスEBI2の7b,25DHCでの活性化(エクオリンアッセイ)。
【図14】CHO−Aeq Gα16細胞における安定に発現されたヒトおよびマウスEBI2の7b,25DHCでの活性化(エクオリンアッセイ)。
【図15】安定にトランスフェクトされたCHO−AeqGα16細胞における、hEBI2の7a,25DHCおよび7b,25DHCによる活性化を測定するためのエクオリンアッセイ。
【図16】安定にトランスフェクトされたCHO−AeqGα16細胞における、hEBI2の7a,25DHCおよび7b,25DHCによる活性化を測定するためのcAMPアッセイ。
【図17】7a,25DHCおよび7b,25DHCによるhEBI2の活性化を評価するためのβアレスチンPathhunterアッセイ。
【図18】(A)7b,25DHCから7a,25DHCを分離するための液体クロマトグラフィー。(B)6個の異なる活性フラクションの保持時間マッチング。
【図19】EBI2天然リガンドと合成7a,25DHCおよび7b,25DHCの保持時間の液体比較(計数対捕捉時間)。
【図20】(A)合成7a,25DHCおよび(B)ブタ肝臓由来単離EBI2天然リガンドのH−NMR。
【図21】ホスホp44/42 MAPK特異的抗体を使用した、異なるオキシステロール類によるEBI2活性化5分間後のMAP/ERKリン酸化のウェスタンブロット分析。
【図22】異なるB細胞サブセットにおける(A)ヒトEBI2および(B)マウスEBI2のDNAアレイ分析。
【図23】7a,25DHCに向かうEBV感染ヒトB細胞の遊走。
【図24】(A)96トランスウェルアッセイにおける7a,25DHCに向かうRS11846細胞の遊走。(B)百日咳毒素(PTX)によるRS11846細胞のオキシステロール仲介走化性の阻害。
【図25】異なるオキシステロール類に向かうRS11846細胞の遊走。
【図26】ヒト免疫細胞におけるEBI2mRNA発現レベルのQ−PCRプロファイリング。
【図27】マウス骨髄由来樹状細胞の7a,25DHC仲介細胞遊走。
【図28】野生型およびEBI2(−/−)マウスのNP−CGG曝露。7日後の(A)抗NP IgM血清力価および(B)抗NP IgG1血清力価。
【実施例】
【0086】
5.1 EBI2組み換え細胞株
ヒトEBI2遺伝子を、HL−60 cDNAからのRT−PCRを使用してクローン化し、Genbank受入番号NP_004942に対応した。ヒトEBI2を、EcoR1部位およびXbal部位で、複数クローニング部位で、pEFIN3ベクターに挿入した。マウスEBI2を、マウスゲノムDNAからのRT−PCRを使用してクローン化し、Genbank受入番号Q3U6B2に対応した。マウスEBI2を、EcoR1部位およびXbal部位で、複数クローニング部位でpEFIN3ベクターに挿入した。ヒトおよびマウスEBI2を発現するプラスミドを、アポエクオリンを発現するCHO−K1およびHEK293細胞に安定にトランスフェクトした(CHO−AeqおよびHEK−Aeq)(表1)。EBI2遺伝子のmRNA配列完全性を、CHO細胞でT0およびT30培養時間でRT−PCRで確認した。
【0087】
【表2】

【0088】
5.2 ヒトEBI2モノクローナル抗体
hEBI2モノクローナル抗体(Costagliola, S., et al. (2000). Genetic immunization of outbred mice with thyrotropin receptor cDNA provides a model of Graves' disease. J. Clin. Invest 105, 803-811)を使用して、フローサイトメトリーを使用して、組み換えCHO細胞中のhEBI2の安定な原形質膜発現を確認した(図1)。
【0089】
5.3 ヒトEBI2 siRNA
hEBI2に特異的な3種のsiRNAオリゴヌクレオチド配列を開発し、検証した(表2)。これらのsiRNAのhEBI2遺伝子発現に対する‘サイレンシング’作用を、フローサイトメトリーを使用してhEBI2−CHO−Aeq細胞においてsiRNA一過性トランスフェクション後に検証した。細胞表面でのhEBI2受容体発現の顕著な減少が、hEBI2siRNAでの細胞処置後に見られる(図2)。
【表3】

【0090】
5.4 ヒト敗血症性肝臓抽出物由来フラクションによるhEBI2の特異的活性化
hEBI2CHO−Aeq細胞株を、天然リガンドの専有ライブラリーおよび組織抽出物コレクションに対する発光エクオリン機能的アッセイでスクリーニングした。我々は、ヒト敗血症性肝臓由来フラクションでhEBI2の特異的活性化を同定した(図3)。
【0091】
この病理学的肝臓抽出物に対するEBI2の詳細な活性化プロファイルは、各々48%、50%および60%アセトニトリル内で溶出する3個の活性ピークを示した。これらの‘生物学的活性’は病理学的肝臓状態(敗血症)で同定できたが、正常肝臓抽出物はEBI2を活性化しなかった。
【0092】
5.5 ヒト肝臓抽出物でのEBI2活性化の特異性
肝臓組織抽出物からhEBI2リガンドの精製を開始する前に、hEBI2活性化の特異性を確認し、全ての推定CHO細胞内在性応答と区別することが必要であった。この目的のために、我々は、特異的hEBI2siRNAオリゴヌクレオチド配列を使用してhEBI2遺伝子の発現を選択的に下方制御した。我々はhEBI2−CHO−AeqGqi5細胞内で、hEBI2siRNA(配列番号は表2に示す通り)の一過性トランスフェクションによるヒト肝臓抽出物でのEBI2活性化の継続的減少を確認した(図4)。
【0093】
EBI2リガンドの物理化学的特性および分子サイズ
EBI2特異的‘活性’はプロテイナーゼK処理後に減少せず、EBI2リガンドがペプチドではないことを示唆する(図5)。
【0094】
EBI2リガンドの分子サイズ
EBI2リガンドの分子サイズを、活性肝臓フラクションおよび分子ふるいクロマトグラフィーを使用して概算した。EBI2リガンドのサイズは、約400ダルトンと概算された(図6)。
【0095】
活性ヒト肝臓フラクションのMS分析
1− 活性ヒト肝臓フラクションのLC−MS分析を、EBI2リガンドの正確な質量を決定するために、Quattro Premier XE質量分光計に接続したWaters UPLC(超高速液体クロマトグラフィー)およびLCT質量分光計に接続したWaters UPLCで行った。恐らく、ものが少量であったために、全体として明瞭な結果は得られなかった。
【0096】
5.6 ヒト敗血症性肝臓由来EBI2リガンドの精製
ヒト病理学的肝臓組織からEBI2リガンドを濃縮し、そして単離するために、我々は、ヒト敗血症由来の8個の肝臓を試験した。8個中2個の肝臓は、EBI2の顕著な活性化を示した。我々は、以下の方法を使用して、1.8kgのヒト敗血症性肝臓を単離した:肝臓組織を7体積のメタノール−水−酢酸(90:9:1)混合物中で均質化した。30分間遠心分離(10,000g、4℃)後、上清をワットマン紙で濾過した。濾液を、水+0.1%TFAで3倍に希釈した。抽出物をDelta Pak C18カラム(400×40mm)に載せ、カラムを20%MeCN+0.1%TFAで洗浄した。80%MeCN+0.1%TFA、100mL/分で溶出した。続いて、我々はEBI2活性化を担う生物学的物質を精製するために、この抽出物を数回HPLC分画した(図7参照)。
【0097】
5.7 ヒツジ敗血症性肝臓抽出物でのhEBI2の特異的活性化
ヒト組織の入手の制限に打ち勝つために、我々は、‘活性’物質の供給源の可能性として、数種の敗血症動物モデルを試験した。我々は、腹膜炎ヒツジ敗血症モデル由来の肝臓抽出物によるEBI2の特異的活性化を検出した(図8)。それ故に、腹膜炎敗血症モデル由来のヒツジ肝臓は、EBI2リガンドの精製のためのさらなる物質供給源とみなした。
【0098】
5.8 ヒツジ敗血症肝臓由来EBI2リガンドの精製
ヒト敗血症肝臓組織から精製したEBI2リガンドの同定が不成功に終わったため(活性物質の低回収率によりほとんど説明が付く)、我々は、ヒツジ敗血症モデル由来の肝臓抽出物でのhEBI2受容体特異的活性化を先に確認して以来、ヒツジ敗血症肝臓からのEBI2リガンドの精製を開始した。
【0099】
抽出および精製方法
2kgのヒツジ肝臓を、6工程の液体クロマトグラフィーの後に、抽出および分画した。我々はhEBI2受容体を強く活性化する純粋フラクションを得た(図9A−F)。
【0100】
肝臓組織を7体積のメタノール−水−酢酸(90:9:1)混合物内で均質化した。30分間遠心分離(10,000g、4℃)後、上清をワットマン紙で濾過した。次いで濾液を水+0.1%TFAで3倍希釈した。抽出をDelta Pak C18カラム(400×40mm)に載せ、カラムを20%MeCN+0.1%TFAで洗浄した。80%MeCN+0.1%TFA、100mL/分で溶出した。
【0101】
第一HPLC分離カラム:
19×150mm C18−300 Symmetry、5μ Waters;19mL/分 50〜65%MeCN+0.1%TFAへの勾配。
【0102】
第二HPLC分離カラム:
7.75×250mm C8−300、5μ、ACE、3mL/分 第一LC分離からの活性フラクションを0.1%TFAで2倍希釈し、カラムに載せる。溶出勾配:40 to 46%MeCN+0.1%TFA、0.2%/分。
【0103】
第三HPLC分離カラム:
7.75×250mm C18−300、5μ、ACE、2.8mL/分 第二LC分離からの活性フラクションを0.1%HCOOHで3倍希釈し、カラムに載せた。溶出勾配:35〜65%MeCN+0.1%HCOOH、1%/分。
【0104】
第四HPLC分離カラム:
4.6×150mm HSF5、3μ、Supelco、0.8mL/分 第三LC分離からの活性フラクションを水で3倍希釈し、カラムに載せた。41%MeCNで溶出した。
【0105】
第五HPLC分離カラム:
4.6×150mm Symmetry-300、3.5μ、Waters、1.3mL/分 第四LC分離からの活性フラクションを水で3倍希釈し、カラムに載せた。41%MeCNで溶出した。
【0106】
第六HPLC分離カラム:
4.6×150mm ジフェニル、5μ、Vydac、1.5mL/分 第五LC分離からの活性フラクションを0.1%酢酸アンモニウム10mMで2倍希釈し、カラムに載せた。溶出勾配:26〜31%MeCN−酢酸アンモニウム10mM(9:1)、0.1%/分。
【0107】
5.9 ヒツジ敗血症性肝臓抽出物中のEBI2リガンドの同定
EBI2リガンドの同定:MS分析
1− 活性サンプル(工程5)の第一組のMS分析は、恐らく純粋分子の量が少ないため、EBI2リガンドの候補質量を明らかにできなかった。サンプル中に数種の汚染物質が存在し、特異的シグナルの同定を妨げた。加えて、活性サンプルとコントロールサンプルの間に明確な再は検出できなかった。
【0108】
2− 工程5由来のサンプルのさらなるHPLC精製工程を行った(工程6)。MS分析前に、C18 Zip−Tipsを使用してサンプルを濃縮し、かつ浄化した。80%ACN+10mM酢酸アンモニウムで最終溶出した。溶出サンプルを、NanoMate(Advion)装置を備えたOrbitrap MS(Thermo)に直接注入した。活性フラクションのMS分析は工程5(活性1)および工程6(活性2)の両方で相当な強度であり、コントロールサンプルでは無視できる4個のピークを示した。質量m/z 383.3303、401.3408、441.3332を有するイオンが陽イオンモードで観察され、一方質量m/z 477.3582を有するイオンが陰イオンモードで観察された(図10)。
【0109】
仮説:
陽モード:
441.3332=>[C2746Na1](質量精度(ppm):−1.5)
401.3408=>[C2745](−1.5ppm)
383.3303=>[C2743](−1.5ppm)
陰モード:
477.3582[C2950](+1.5ppm)
【0110】
4個の元素組成が、良好な質量精度で、両方の活性フラクションで検出された4個の共通イオンシグナルから得られた。質量m/z 441.3332に対応するイオンは、分子C2746のナトリウム付加物(M)に割り当てられ、一方質量m/z 477.3582は、Mのアセテート(CH3COOまたはOAc)付加物に割り当てることができた。さらに、質量401.3408および383.3303を有するイオンは、プロトン化分子イオンからの、水1個および2個の損失にそれぞれ割り当てることができた。得られた仮説は、それ故に、418.3447の理論的質量を有する化合物M=C2746が:陽イオンモードでは[M+Na]、[M+H−HO]および[M+H−2HO]として、そして陰イオンモードでは[M+OAc]として検出されたということである。プロトン化[M+H]イオンも、脱プロトン化[M−H]イオンも検出されなかった。
【0111】
加えて、MS/MS実験を、4個の質量の活性フラクションで行った。m/z 441.3332および477.3582からフラグメントは得られず、これらがそれぞれナトリウムおよびアセテート付加物に対応するとの仮説に対する信用を与えた。これは、ガス相衝突誘発解離が、分子の断片化ではなく、ナトリウムまたはアセテートイオンの脱離を主としてもたらすためである。NaおよびOAcイオンの両方とも、MS/MS実験における“低質量カットオフ”(機器特異的)のために検出できなかった。m/z 383.3303のMS/MSにより数フラグメントを得た。これらの中で、m/z 365.3205(0.7ppm)で1個の水損失が検出された。m/z 383.3303のフラグメントでさらなる構造割り当ては試みなかった。m/z 401.3408では、低強度のためにMS/MSは行わなかった。
【0112】
質量418.3447のデータベースクエリーは、主に酸化コレステロール(オキシステロール類)またはビタミンD誘導体を提供した。データベース分析から、以下のリガンド候補物が同定された:
【0113】
次のものから成る39種のコレステロール誘導体
8個のケト−ジオール類
27個のトリオール類
2個の酸
1個のジオール+エポキシ
1個のジオール+アルデヒド
【0114】
エクオリンアッセイでEBI2活性化について試験した化合物
1 (25R)−5−アルファ−スピロスタン
2 5−アルファ−コレスタン−3,6−ジオン
3 5−アルファ−コレスタン−2,3−ジオン
4 5−アルファ−コレスタン−3,7−ジオン
5 コレスタ−4,6−ジエン−3−オン
6 3−ベータ−ヒドロキシコレスト−4−エン−6−オン
7 5−アルファ−ヒドロキシ−6−ケトコレステロール
8 コレスタ−3,5−ジエン−7−オン
9 5−コレステン−3b−オール−7−オン
10 4,5−エポキシ−3−コレスタノン
11 4−ベータ,5−エポキシ−5−ベータ−コレスタン−3−オン
12 コレステロール
13 b−シトステロール
14 25−ヒドロキシコレステロール
15 22(S)−ヒドロキシコレステロール
16 22(R)−ヒドロキシコレステロール
17 1−アルファ,25−ジヒドロキシビタミンD3
18 24(R),25−ジヒドロキシビタミンD3
19 25−ヒドロキシビタミンD3
【0115】
2746分子式を有する候補分子の一覧に優先順位を付け、hEBI2活性化について試験した。かかる優先リストは、コレステロール代謝経路中の中間体として同定されたコレステロール誘導体からおよび既知ビタミンD誘導体から確立した。この一覧は、分子式C2746(質量418.3447)の12個のコレステロール誘導体および5個のビタミンD誘導体を含んだ。
3個のオキシステロールおよび3個のビタミンD3化合物を、エクオリンアッセイでEBI2活性化について試験した。
【0116】
これらの候補分子の中で、2個の関連するオキシステロール類である、構造Iの化合物により表されるコレスト−5−エン−3b,7b,25−トリオール(7b,25DHC)、および構造IIの化合物により表されるコレスト−5−エン−3b,7b−ジオール(7bHCが、それぞれ50nMおよび15μMに近いEC50値でEBI2受容体の特異的活性化を誘発するが、構造IIIの化合物により表されるコレスト−5−エン−7−メトキシ,3b−オールはEBI2を活性化せず(図11)、構造−活性相関におけるアルコール基とその位置の関連を強調する。
【0117】
【化1】

【0118】
5.10 CHOおよびHEK細胞でのコレステロール由来リガンドによる特異的EBI2活性化の確認
我々は、WT CHO−AeqGqi5細胞および無関係のGPCRs、例えばオーファンHCRおよびGPR23と比較して、コレスト−5−エン−3b,7b,25−トリオール(7b,25DHC)が、特異的にかつ選択的にhEBI2を活性化することを証明した(図12および14)。我々はまた、異なるCHO−Aeq細胞バックグラウンド(Gqi5およびGα16(=WTA11))での7b,25DHCによるhEBI2の活性化も証明した(図14)。加えて、我々は、7b,25DHCでのマウスEBI2受容体の活性化を証明した(図13および14)。最後に、我々は、hEBi2−HEK−AeqGα16細胞(pCAeqG9)およびHEK T細胞に一過性にトランスフェクトしたhEBi2での7b,25DHCによるhEBI2の活性化を確認した(データは示していない)。
【0119】
5.11 7,25−OHC標準化合物のMS
合成標準サンプル7a25−OHCおよび7b25−OHCを、5.9に記載したものと同じMS方法で分析した。相対的に低い濃度で、酢酸アンモニウム存在下で[M+Na]m/z 441.3338(0.3ppm)、[M+H−HO]m/z 401.34140(0.5ppm)および[M+H−2HO]m/z 383.33084(0.01ppm)のみが陽イオンモードで検出され、そして[M+OAc] m/z 477.3585(0.2ppm)のみが陰イオンモードで検出された。プロトン化および脱プロトン化シグナルは検出されなかった。これらの観察は活性フラクションで得られたものに一致する。
【0120】
5.12 結論
我々は、腹膜炎敗血症モデルから得たヒツジ肝臓からEBI2天然リガンドを精製した。EBI2活性化はヒト敗血症性肝臓抽出物で最初に検出されたが、ヒト病理学的物質を得るのが困難であり、1.8kgのヒト敗血症性肝臓からのEBI2リガンドの精製で、MS分析により検出するために十分量の活性物質を単離することが不可能であった。
精製ヒツジ肝臓活性フラクションの質量分析により、候補質量418.3447および関連分子式C2746の同定がもたらされた。かかる特徴を示す化合物は、本質的にコレステロールまたはビタミンD誘導体に対応する。
【0121】
hEBI2活性化のための候補選択およびスクリーニング(エクオリンアッセイ)後、我々は、コレスト−5−エン−3b,7b,25−トリオール(7、25−ジヒドロキシコレステロール)(“7b,25DHC”)およびコレスト−5−エン−3b,7b−ジオール(7−ヒドロキシコレステロール)(“7bHC”)を、hEBI2での2種の活性リガンドとして同定した。コレスト−5−エン−3b,7b,25−トリオールは、約50nMのEC50値でhEBI2を強力に活性化し、ATP応答(内在性P2Y受容体)と比較して100%より大きい効力を示す。
hEBI2に対するコレスト−5−エン−3b,7b,25−トリオールの特異性および選択性を、WT CHO−Aeq細胞および無関係のGPCRと比較して証明した。
h コレスト−5−エン−3b,7b,25−トリオールでのhEBI2の活性化をCHO−K1細胞およびHEK293細胞で証明した。
【0122】
5.13 EBI2受容体でのオキシステロール類の薬理学的プロファイル
EBI2受容体での7b,25DHCおよび7bHCに対する活性が証明されたら、我々は、どれがインビボで活性化合物である可能性が最も高いかを決定することを試みた。7b,25DHCは、酵素反応により天然に産生される化合物ではなく、むしろ特異的条件下の自己酸化の生成物である。我々は、それ故に、オキシステロール類/EBI2相互作用の薬理学的特徴付けを行った。
【0123】
方法論
化合物:
7a,25DHC(CAS No. 64907-22-8)および7b,25DHC(CAS No. 64907-21-7)を、以下に記載する通り7−ケト前駆体から合成した。7a,27DHC(CAS No. 144300-24-3)、7b,27DHC(CAS No. 240129-43-5)をAvanti Polar Lipids Inc.(Alabaster, AL, USA)から購入した。7aHC(CAS No. 566-26-7)を社内でバッチ合成した。7bHC(CAS No. 566-27-8)、25HC(CAS No. 2140-46-7)、およびコレステロール(CAS No. 57-88-5)をSigma-Aldrich(Buchs, Switzerland)から購入した。
【0124】
化合物製造
特にことわらない限り、化合物をDMSOまたはエタノール(コレステロール、25MDC)中10mMで溶解した。連続希釈を90%DMSO(FLIPR, GTPgS)またはアッセイ緩衝液(結合アッセイ)で行った。細胞使用アッセイについて、最終DMSO濃度を1%以下に維持する。疎水性化合物のアッセイプレートへの吸着を阻止するために、0.1%(2−ヒドロキシプロピル)−βシクロデキストリン(Aldrich, #33259-3)を添加する。
【0125】
細胞株
特にことわらない限り、リガンド同定に使用したE2と呼ばれる同じチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株をこれらの実験で使用した。この細胞株は、(1)組み換えヒトEBI2受容体、(2)乱交雑Gqi5タンパク質ならびに(3)アポエクオリンを発現する。
【0126】
FLIPR
細胞を、黒色/透明底、ポリ−D−リシン被覆384ウェルプレートに、培養培地を使用して、10,000細胞/25μL/ウェルの細胞密度で播種した。細胞を、24時間、37℃/5%COで培養した。培養培地を除去し、細胞負荷のために、20μL/ウェルの負荷緩衝液(洗浄色素のないカルシウム−4)をウェルに分配し、プレートを60分間、37℃で5%CO中インキュベートした。FLIPRピペッター内で、10μLの異なる化合物を細胞に添加し、続いて蛍光変化を3分間モニターした。FLIPRソフトウェア・ツールを使用して、蛍光カルシウム応答の2つの値をエクスポートした:ピーク時の傾向であるFmaxと化合物注入前の値に対応するFbasal。これらの2つの値から、カルシウム応答を、dF/F=(Fmax−Fbasal)/Fbasalを使用してカルシウム・ベースライン値に対して標準化する。最大dF/FをEmaxと呼ぶ。
【0127】
膜製造
ヒトEBI2(E2)を安定に発現するCHO細胞をローラー・ボトル(Corning #431191)でコンフルエンシーまで増殖させ、リン酸緩衝化食塩水(PBS)で1回洗浄し、−80℃に凍結した。凍結細胞ペレットを、プロテアーゼ阻害剤カクテル(CompleteTM, Roche, # 05 056 489 001 - 14302200)を添加した氷冷均質化緩衝液(10ml/g、20mM Tris pH7.2)に再懸濁した。細胞懸濁液をDounceホモジナイザー(10ストローク)を穴あけ機(driller)と共に用いて均質化した。110000×gで45分間遠心分離し、上清を除去した後、ペレットをボルテックス処理によりスクロース緩衝液(50mM Tris pH7,2、250mM スクロース、10%グリセロール)に再懸濁した。懸濁液を再びDounceホモジナイザー(10ストローク)を使用して均質化し、100000×gで45分間回転させた。上清を廃棄し、ペレットをスクロース緩衝液に再懸濁し、タンパク質濃度を決定し、等分し、−80℃で凍結した。これらの膜調節物を結合ならびにGTPgSアッセイに使用した。
【0128】
GTPγSアッセイ
反応を96ウェルプレート(OptiプレートTM, Perkin Elmer #6005299)で行った。10μgのEBI2膜を、10μM GDPを添加した40μlの緩衝液A(20mM Hepes pH7.4、100mM NaCl、1.5mM MgCl、サポニン10μg/ml)に溶解する。20μlシンチレーション近接アッセイ(SPA)ビーズ(100μg/ウェル、Amersham, RPNQ0001)添加後、成分を穏やかに混合し、RTで15分間インキュベートする。緩衝液Aに希釈した20μlの化合物および20μlのGTPγ35S(Perkin Elmer NEG030X)を添加し、1時間、RTでインキュベートする。プレートをTopCount(Perkin Elmer NXT HTSTM)に写し、計測し、カウントを分析し、標準ソフトウェア(PrismTM, GraphPad Software Inc.)を使用した活性化の最大の半分の濃度を測定するためにプロットする。
【0129】
結合アッセイ
物質
凍結乾燥小麦胚芽アグルチニンシンチレーション近接アッセイ(SPA)ビーズ(RPNQ0001)をGE Healthcare(Buckinghamshire, UK)から購入した。1個のバイアル(500mg)を、5mLの蒸留水の添加により再構成して、100mg/mLの最終濃度とする。再構成したSPAビーズは4℃で貯蔵しなければならないが、凍結させてはならない。[H]−7a,25−OHCを、H−L−セレクトリドの存在下、7−ケト,25DHCの還元により合成した。このプロトコルにより、等量の7a,25DHCおよび7b,25−OHCが生じる(下記参照)。この実験に使用した[H]−7a,25DHCは、バッチRSE 436-2であり、1024GBq/mmolの比活性を有し、−20℃で貯蔵した。EBI2384ウェルプレート(Cat. No. 6007290、白色ポリスチレン、平な正方形の底)をPerkin Elmer(Boston, USA)から購入した。
【0130】
放射標識7,25DHCの合成
トリチウム標識線上、排気した、二首フラスコ(V=2mL)を(99%、179.25mmol、p=728mbar)下、296Kに置いた。続いて、ブチル−リチウムのヘキサン溶液(160μmol、100μL、c=1.6M)およびテトラメチルエチレンジアミン(200μmol、30μL)を添加した。55分間後、懸濁液を液体Nで冷却し、過剰のを廃棄物貯蔵部に戻し、溶媒を蒸発させた。残留物をN下に置き、THF(500μL)を添加し、懸濁液をsec−ブチル−ボランのTHF溶液(160μmol、160μL、c=1M)で希釈し、−90℃に冷却した。この温度で、1(24μmol、10mg)のTHF(500μL)溶液を1分間以内に添加し、反応混合物を90分間撹拌し、その間、温度は−80℃から−50℃にゆっくり上昇した。この後、アセトン(150μL)を添加し、反応混合物をさらに90分間撹拌し、その間、温度は−50℃から−8℃にゆっくり上昇した。最後に、反応混合物を1.0N NaOH(250μL)および30%H(250μL)でクエンチし、15分間、室温で撹拌した。続いて、反応混合物を液体窒素で凍結し、蒸発乾固し、エタノール(4×1mL)と共蒸発させた。残留物をSiO(1g)で濾過し、生成物をCHCl/MeOH 95:5で溶出して、851MBqの2および3の混合物(14mLエタノールに溶解;α異性体/β異性体=58:42)を得て、それを、MN Nucleodur Sphinx RPの分取逆相HPLC(5μm、8×150mm、T=20℃、λ=210nm;溶離剤A:水+0.1%TFA;溶離剤B:CHCN+0.1%TFA)で分離した。続いて、各々、固体支持StrataX(2×100mg)での抽出後、2(59.94MBq、α異性体/β異性体=70:30)および3(108.04MBq、α異性体/β異性体=38:62)の2個の富化フラクションを得た。富化された、予め精製されたフラクションを、さらに、Water's SunFire C18の分取逆相HPLC(5μm、10×250mm、T=40℃、λ=210nm;溶離剤A:HO/MeOH=95:5;溶離剤B:HO/MeOH=5:95)で精製して、50.6MBqのジアステレオマー的に純粋な2(α異性体/β異性体=99.9:0.1)および51.4MBqのジアステレオマー的に純粋な3(α異性体/β異性体=0.1:99.9)を得た。
【0131】
決定
決定を、固定濃度の膜およびビーズ(各々ウェルあたり20μgおよび200μg)および0.05〜300nMの濃度範囲の[H]−BYX998を使用して行った。これらの溶液を、50mM Tris;100mM NaCl;5mM MgClおよび0.1%シクロデキストリン含有緩衝液津に製造した。
特異的結合を10μMの一定最終濃度の7a,25DHC(NVP-BYX998-NX-4)の存在下で測定し、対応する総結合を、NVP-BYX998-NX-4の変わりに緩衝液を用いて測定した。
【0132】
IC50決定
SPAアッセイを、384ウェルポリスチレンOptiプレート中、50μL/ウェルの最終体積で行った。成分を、次の通りウェルに添加した:
− 50mM Tris中10μL試験化合物;100mM NaCl;5mM MgClおよび0.1%シクロデキストリン。
総結合を、10μLの50mM Tris;100mM NaCl;5mM MgClおよび0.1%シクロデキストリンの添加により決定し、非特異的結合を10μL NVP-BYX998-NX-4(最終濃度10μM)の添加により決定した。
− アッセイ緩衝液(50mM Tris−HCl、100mM NaCl、5mM MgClおよび0.1%シクロデキストリン)中、最終20μLの10nM [H]−BYX998。
− 20μg膜/ウェルおよび200μgビーズ/ウェルの最終濃度を得るための、アッセイ緩衝液中の20μLの混合ビーズおよび膜懸濁液。
【0133】
プレートを密閉し、室温で10分間振盪させ、室温で少なくとも12時間静置した。プレートをPerkin Elmer TopCountリーダーを使用して計数し、各ウェルを1分間計数した。
各IC50決定を11個の濃度で行った。
【0134】
次の通り、標準データ削減アルゴリズムを使用して、試験化合物存在下の特異的結合を計算した:
((B−NSB)/(合計−NSB))×100
〔式中、
B=試験化合物存在下の結合(cpm)
NSB=過剰阻害剤存在下の非特異的結合(cpm)
合計=試験化合物非存在下の結合(cpm)〕
【0135】
4パラメータロジスティックフィットを使用した正規化濃度応答曲線の曲線フィッティングをXLfit(v.2またはv.4、IDBS, Guildford, UK)を使用して行う。使用する式は、一部位シグモイド用量応答曲線についての、XLfit式第205番である:Y=A+((B−A)/(1+((C/X)^D)))(式中、A=分間、B=max、C=IC50、D=傾斜)。デフォルトでは、minは0に固定されているが、maxは固定されていない。
Kiを、Cheng-Prusoff式(Cheng, Y. and Prusoff, W.H. (1973). Relationship between the inhibition constant (K1) and the concentration of inhibitor which causes 50 per cent inhibition (I50) of an enzymatic reaction. Biochem. Pharmacol. 22, 3099-3108)に従い計算する:
【0136】
エクオリンアッセイ
エクオリンアッセイを使用して、我々は、7a,25DHCがCHO細胞中で安定に発現されたEBI2を、18.4nMのEC50で活性化し、それに対し、活性が低い7b,25DHCではEC50の398nMが測定されることを発見した(図15)。
【0137】
方法論
ヒトEBI2(pcDNA3.1ベクター中)およびGα16を発現する安定な細胞株を、アポエクオリンを安定に発現する親CHO細胞を用いて産生した(Euroscreen CHO-A12細胞株)。細胞を384ウェル黒色透明底プレート(Greiner Bio-one)に、3%FBS含有F12培地中10,000細胞/25μl/ウェルで播種し、一夜インキュベートした。セレンテラジン(最終20μM)を、細胞プレートに25μl/ウェルで添加した。細胞プレートを3時間インキュベーターに戻した。化合物を、Tyrode緩衝液(130mM NaCl、2mM CaCl、5mM NaHCO、5mM KCl、1mM MgCl、20mM HEPES、pH7.4)で、中間プレートに1:20で希釈した。12.5μl/ウェルの予め希釈した化合物を細胞アッセイプレートに移し、点滅発光(flash luminescence)についてLumiLuxTM(Perkin Elmer)で読んだ。
【0138】
エクオリン動的データの分析のために曲線下面積(AUC)に類似するアルゴリズムを社内で作り、それをSlope Threshold(Slope 100)と名付けた。本アルゴリズムは、各時点の強度と前の時点との差異を比較することにより発光強度ピークの開始と終点を規定し、該差異が、通常100に設定した閾値を超えるか否かを決定する。超えれば、後の時点の強度をSlope Thresholdの合計に加える。
【0139】
cAMPアッセイ
同様に、cAMPアッセイにおいて、立体異性体7a,25DHC(EC50=10.3nM)は立体異性体7b,25DHC(EC50=10.6μM)よりも有効であることが示される(図16)。
【0140】
方法論
エクオリンアッセイに使用したのと同じ安定なEBI2細胞株をcAMPアッセイに使用した。10,000細胞(25μl)を白色固体384ウェルプレートのウェル当たりに播種し、37℃インキュベーターで一夜インキュベートした。500nlの化合物を各アッセイウェルに移し、5μlのフォルスコリンを30μMの最終濃度で添加した。細胞を37℃インキュベーターに30分間戻した。最後に、ウェル当たりそれぞれ15μlのHiRange D2-cAMPおよび抗cAMPクリプテートを分配した。>1時間室温でインキュベーション後、データ収集を、EnvisionTMまたはViewLuxTM(Perkin Elmer)で時間分解FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)モードで行った。コンジュゲートしたcAMPと抗cAMP抗体の間のFRETを表す、アクセプター蛍光シグナル(A665nm)対ドナー蛍光シグナル(A620nm)の比×104を計算し、Y軸にプロットした。シグナルが高い程、サンプルの内在性cAMP濃度が低い。
【0141】
オキシステロール類(DiscoveRx)での活性化後のEBI2のベータアレスチン相互作用
多くのGPCRについて、受容体活性化が、C末端での残基のリン酸化およびβアレスチン動員をもたらすことが示されている。その後、GPCR/βアレスチン複合体がクラスリン被覆ピットに取り込まれ、それが小胞を含む受容体の内在化および受容体シグナリングの脱感作をもたらす。
【0142】
いくつかのアッセイ技術(TransfluorTM, (Ghosh,R.N., et al. (2005). Quantitative cell-based high-content screening for vasopressin receptor agonists using transfluor technology. J Biomol Screen 10.; Granas, C., at al. (2005). High content screening for G protein-coupled receptors using cell-based protein translocation assays. Comb Chem High Throughput Screen 8.); PathhunterTM, (Hammer, M.M., et al. (2007). A novel enzyme complementation-based assay for monitoring G-protein-coupled receptor internalization. Faseb J, 21; Wehrman, T.S., at al. (2005). Enzymatic detection of protein translocation. Nat Methods 2), TangoTM, (Barnea, G., et al. (2008))。ここで、我々は、PathhunterTM方法(DiscoverRx)を適用して、EBI2とBアレスチンの相互作用を探った。このために、GPCR−prolink融合タンパク質産生のためにヒトEBI2をProlinkTMベクター(DiscoveRx)にクローン化した。βアレスチン2−β−gal−EA融合タンパク質(HEK293−BAEA)を安定に発現する親HEK293細胞を脱離し、懸濁液モードでFugene 6トランスフェクション試薬を使用してhEBI2−prolinkベクターで一過性にトランスフェクトした。アッセイ培地(10%FBS添加無フェノールレッドDMEM)中のトランスフェクトした細胞を白色固体384ウェルプレートに15,000細胞/25μl/ウェルで播種した。一夜インキュベーション後、200nlの試験分子をPinToolTM(GNF Systems)により細胞プレートに移し、1−2時間、37℃、5%COでインキュベーションした。Flash検出試薬を12.5μl/ウェルで添加した。5分間−1時間室温インキュベーション後、細胞プレートの発光シグナルをCLIPRTM(Perkin Elmer)またはAcquestTM(Molecular Devices)で読んだ。結果は、7a,25DHC(式IVの化合物)および7b,25DHC(式Vの化合物)が、hEBI2を、それぞれ8.0nMおよび837nM(48%効率)のEC50で活性化することを示す(図17)。
【0143】
【化2】

【0144】
5.14 7a,25−OHCは、組織抽出物から精製されたオキシステロールである
7a,25DHCを、以下に記載する通り、既知方法の改変(合成方法1)(Li, D. & Spencer T. A. (2000) Synthesis of 7a-hydroxy derivatives of regulatory oxysterol, Steroids 65, 529-535)または一工程方法(合成方法2)により合成した。
【0145】
合成方法1
市販の5−コレステン−3b,25−ジオール(Steraloids, C6510-000)から、ジオール基をベンゾイルクロライドで保護し、150℃で4時間、マイクロ波照射下に、無水ベンゼンおよびモレキュラー・シーブ中、ピリジニウムクロロクロマートでC7酸化した。−78℃でTHF中、L−セレクトリドが、C7カルボニルから7α−ヒドロキシ基へのジアステレオ−選択的還元(20:1)を促進した。2個のジアステレオマーは、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(75%酢酸エチルのヘキサン溶液からら100%酢酸エチル)を使用して、好都合に単離できる。ジ−ベンゾイルエステルの脱保護により、最終生成物7a,25DHCを全体として14%収率(4工程)で得た。
【化3】

【0146】
合成方法2
市販の5−コレステン−3β,25−ジオール−7−オン(Steraloids, C6510-000)から、C7−カルボニル基を、L−セレクトリドを用いて、THF中、−78℃で5時間、ジアステレオ選択的に(dr〜20:1)還元し、後処理およびカラムクロマトグラフィー後、純粋7a,25DHCを約50%収率で1工程で得ることができる。この1工程方法は、放射標識(例えばH標識)7a,25DHCの合成に有用である。
【化4】

【0147】
上の表3に示す通り、化合物7a,25DHCは7b,25DHCよりも強力であることが証明されている。
オキシステロールの正確な性質を決定するために、我々はヒツジ肝臓から精製し、我々は液体クロマトグラフィーにより2種のオキシステロール立体異性体(7a,25DHCと7b,25DHC)を分離するための分析法を開発している。
【0148】
方法論
組織抽出物からの生理活性物質の7,25DHC立体化学を決定するために、我々は、最初に参照化合物を使用した2個のジアステレオマー7a,25DHCおよび7b,25DHCを分離するための分析方法を確立した。第二工程において、参照化合物の保持時間を組織抽出物由来の生理活性物質と比較した。この実験に使用したサンプルは、2種のヒツジ肝臓調製物、S5およびS7であり、各調節物からの3種の生物学的に活性フラクションを精製の最後の工程で回収した。
【0149】
7a,25DHCおよび7b,25DHCを、Thermo-Fischer Hypersil GoldTMカラム上での液体クロマトグラフィー(LC)により分離した。水(5mM NHAc)およびアセトニトリル(0.1%酢酸)を移動相に使用した。勾配は、12分間にわたる20%〜85%アセトニトリルの範囲であった(図18A)。化合物を、2種の装置でエレクトロスプレー質量分析により選択学的に検出した。両方の場合、インソース・フラグメンテーション生成物(2 HO C2747の損失−> C2743、383.3308Da)をモニターし、同時にその特異的イオンの253.27および157.18Daでの2個のCID(衝突誘発減衰)フラグメントをモニターした。全3個のイオンが同時に観察されたときのみ、DHCが検出されたと結論付ける。
【0150】
第一に、Thermo Finnigan LTQTM機器を使用した。速いデータ収集が可能であり、液体クロマトグラフィー保持時間(RT)ピーク分離の完全な使用を可能とする。全6サンプルで、7a,25DHCのみが検出され、7b,25DHCは検出されなかった(図18B)。我々は、これらの結果を、高い質量解像度および精度を示すが、液体クロマトグラフィー解像度はわずかに低い第二の機器(Thermo LTQ-OrbitrapTM)で確認した。
【0151】
5.15 ブタ肝臓からの天然EBI2リガンドの単離
EBI2の調節ができるオキシステロール類の広い薬理学的特徴付けと並行して、ブタ肝臓抽出物からの天然EBI2リガンドの精製を試みている。
【0152】
抽出プロトコル
ブタ肝臓10Kgを、肉挽き機で粉砕し、500gの湿状態粉砕組織あたり500mLの水を用いてvita mixを使用して均一化し、1:1 ヘキサンおよびイソプロパノール混合物20Lで1時間抽出した。ペレットおよび2層の液体を、30分間遠心分離(15000g、4℃)することにより分離し、有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、薄い帯白色固体(〜1kg、完全には乾燥させていない)を得た。
【0153】
分画プロトコル
分画工程1:1kgの粗抽出を10kgシリカゲル手動カラムクロマトグラフィーに載せ、2カラム体積(16L)の100%ヘキサン、ヘキサン中10%、25%、50%および75%EtOAc、100%EtOAc、およびMeOH中10%EtOAcで連続的に溶出し、合計40フラクションを回収した(4L/フラクション)。フラクションを減圧下、25℃で、ロータリーエバポレーターにより乾燥させ、活性をDiscoverXベータアレスチンアッセイにより試験した。
【0154】
分画工程2:順相HPLC、21×250シリカゲルカラム、溶出条件:100%ヘキサンで5分間、100%ヘキサン〜100%EtOAcで60分間、100%EtOAcで10分間、EtOAc中0〜20%メタノールで20分間、カラムあたり1グラム負荷(18個のデュプリケート試験)
【0155】
分画工程3:順相HPLC、4.6×250シリカゲルカラム、F3は、工程2再分画からのEBI2特異的であり、18個の並行試験から集め、工程3順相HPLCに、ジクロロメタン(DCM)およびメタノール、5%DCMで5分間、メタノール中5〜50%DCMを60分間を溶媒として用い、50%DCMで20分間維持
【0156】
分画工程4:逆相C18(4.6×250)HPLCカラムクロマトグラフィー、4.6×250 C18樹脂、溶出条件:TFAモディファイヤーなしで、HO中50−100%アセトニトリル(ACN)、1mL/分/分画
【0157】
分画工程5:逆相C4(2.0×250)HPLCカラムクロマトグラフィー、0.35mL/分/フラクション、50%−100%ACN/HOから溶出、2時間
【0158】
活性および不活性フラクションのLC−MS分析を、C4カラム(2.0×50mm、YMCTM Pro C4, S-5, 120A)を用いる逆相HPLCを使用して、Agilent 1200シリーズで行った。MS獲得パラメータ:装置:Agilent 6520 Accurate-Mass Q-TOF LC/MS;ガス温度:350℃;乾燥ガス:10l/分;ネブライザー:45psig;VCap:4000V;キャピラリー:0.047μA;チャンバー:0.63μA;フラグメンテーター:175V;スキマー:65V OCT 1 RF Vpp:750V;獲得質量範囲:50−1500;獲得速度:1スペクトル/秒;参照質量:121.050873および922.009798(参照溶液を全体的ランタイム中注入した)。
【0159】
サンプルを、0.35mL/分で、モディファイヤーとして0.1%ギ酸を含むHO中30〜100%アセトニトリルの勾配で溶出した。カラムを30℃に維持した。
【0160】
全イオンクロマトグラム(陽モード)で9.77分の主ピークを有する純粋フラクションを同定した。質量m/z 365.3202、383.3311、401.3411および441.333を有するイオンを陽イオンモードで観察し、M+H−O、M+H−2HO、M+H−HO、およびM+Naとして説明された。M+Hは419.3で観察されなかった。これらのデータは、上の5.9章に示した発見をさらに確認し、かつ支持する。
【0161】
合成7a,25DHCおよび7b,25DHCを、上記のブタ肝臓抽出物の分画により得た活性フラクションと比較した。合成化合物および活性フラクションを、液体クロマトグラフィーの保持時間およびMS/MSで分析した(図19)。これらの結果は、ブタ肝臓抽出物から単離されたEBI2の天然リガンドが7a,25DHCであることを確認する。
【0162】
7a,25DHC(図20A)およびブタ肝臓由来7a,25DHC単離EBI2天然リガンド(図20B)のH−NMRをNMRにより分析した。上に記載した分画に従うブタ肝臓(35Kg規模)のスケール・アップ抽出/分画により、約100μgの実質的に純粋なEBI2リガンドを得た。H−NMR分析は、さらに、ブタ肝臓から精製された天然EBI2リガンドであることを7a,25DHC確認する。
【0163】
5.16 結果
我々は、3位以外のヒドロキシル化7位および25位のヒドロキシル化が、強力なEBI2活性化に必要であることを同定した。7位で、アキシャルなアルファ位が、エクアトリアルなベータ位よりはるかに優先する(式IVで表される化合物7a,25DHCおよび式Vで表される化合物7b,25DHC)。側鎖のヒドロキシル化は、25位で好ましいが、27化合物も良好な効果を示した。我々、種々のアッセイにおける種々のオキシステロール類の効果順は同じであることを発見した(表3)
【表4】

【0164】
[H]−7a,25DHCを使用して、我々はヒトEBI2を安定に発現するCHO細胞由来の膜を使用した結合実験を行った。[H]−7a,25DHCのEBI2への結合は、高親和性(Kd=25±10nM(n=3))で飽和可能であり、7a,25DHCおよび他のオキシステロール類の濃度を蔵相させることにより置き換え可能である。他の立体異性体である[H]−7b,25DHCを使用して、我々は、EBI2膜への特異的結合を観察することができなかった(データは示していない)。
【0165】
5.17 EBI2の活性化は、MAP/ERK経路のリン酸化に至る
マイトージェン活性タンパク質キナーゼ類(MAPK)は、細胞外刺激に応答し、種々の細胞活性を制御するセリン/スレオニン特異的タンパク質キナーゼである。
【0166】
方法論
細胞(E2=CHO/AEQ/Gqi5/hEBI2)を、12ウェルプレート(TPP #92012)に2×10細胞/ウェルで播種し、37℃/5%COで一夜インキュベートした。翌日培地を除去し、細胞を無血清培地で4時間涸渇させた。その後、化合物を5分間、RTで添加し、細胞を溶解した(70μl、0,5%Triton−X100、300mM NaCl、50mM Tris pH7,5、CompleteTMプロテアーゼ阻害剤カクテルRoche#04693124001)。細胞溶解物を、勾配SDS−PAGE(NuPageTM 4-12%, #NP0322Box)により分解し、ニトロセルロース(Invitrogen, #LC2001)へセミドライブロッティングにより移し、ホスホp42/44 MAPK(T202/Y204)ウサギmAb(Cell Signaling #4376S)でプローブした。二次ヤギ抗ウサギ−HRP(Pierce #41460)抗体で処理後、ブロットを化学ルミネセンス(SuperSignal West DuraTM, Pierce #34075)のために展開し、BioRad GEL DOCTM造影システムを使用して可視化した。
【0167】
我々は、EBI2発現CHO細胞株でMAP/ERKリン酸化について試験し、本発明に従う7a,25DHCおよび他のオキシステロール類がp44/42 MAPキナーゼのリン酸化によりMAP/ERKシグナリング経路を強力に活性化できることを発見した(図21)。コントロールとして、我々は、ヒトEBI2を発現しない親CHO細胞株を使用した。さらに高い7a,25−OHC濃度でも、このコントロール細胞株ではMAP/ERKシグナルは活性化されない。
【0168】
5.18 7a,25DHCおよび7a,27DHCとEBI2との相互作用の特異性
現在まで、オキシステロール類は、種々の生理学的活性、すなわち、ステロールおよび脂肪代謝の両方に関与する遺伝子の発現の制御を有し、胆汁酸の合成の基質として働き、そして、ステロール類の末梢から肝臓への輸送における中間体であることが記されている(Russell,D.W. (2000). Oxysterol biosynthetic enzymes. Biochim. Biophys. Acta 1529, 126-135)。二つの最も強力なEBI2アゴニスト(7a,25−OHCおよび7a,27−OHC)の相互作用の可能性を評価するために、それらを以下の核ホルモン受容体に対する一連のレポーター遺伝子アッセイで試験した:SXR(NR1I2; ENSG00000144852)、ERa(NR3A1; ENSG00000091831)、FXRa(NR1H4; ENSG00000012504)、GR(NR3C1; ENSG00000113580)、LXRa(NR1H3; ENSG00000025434)、PPARg(NR1C3; ENSG00000132170)、RXRa(NR2B1; ENSG00000078380)。我々は、これら2種のオキシステロール類が上記核ホルモン受容体を、最高10μMまでの濃度で活性化させないことを発見した。我々はまた、同じ2種の化合物を、医薬開発中の化合物の評価に日常的に使用されている安全性パネルでも評価している。これは、26種のGPCRへの結合アッセイ、9種のGPCRの機能的アッセイ、40種のキナーゼアッセイ、ならびに選択したイオンチャネル、プロテアーゼ類、トランスポーターおよび酵素アッセイを含む。これらのアッセイのいずれでも、我々は、7a,25DHCまたは7a,27DHCと試験相手の間の顕著な相互作用を見ることはなかった(データは示していない)
【0169】
5.19 オキシステロール7a,25DHCは、免疫細胞の走化性因子として作用する
方法論
走化性アッセイを、MultiScreen-MICTM96ウェルプレートで、5μm孔ポリカーボネートフィルター(Millipore #MAMI C5S10)を使用して行った。細胞懸濁液およびケモカイン希釈を、1%非必須アミノ酸(Invitrogen, #11140-035)、ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen, #11360-039)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen, #15140-114)、50μM β−メルカプトエタノール(Invitrogen#31350-010)および0.5%BSA(Gibco #15260)を補った、glutamaxTM(Invitrogen, #61870-010)を含むRPMI1640中で製造した。
【0170】
B細胞(RS11846またはEBV感染ヒトB細胞)またはマウス骨髄由来樹状細胞を1回培地で洗浄し、1×10/mlに再懸濁した。100μlのこの懸濁液をフィルタープレートのウェルに添加し、150μlのある化合物希釈を含むレシーバー・プレートに穏やかに入れた。最終DMSO濃度は0.1%未満であった。3時間、37℃でインキュベーターで遊走後、フィルタープレートをレシーバー・プレートから注意深く外し、廃棄した。レシーバー・プレートに遊走した細胞を再懸濁し、、丸底96ウェルプレートに移し、遠心分離し、2%FCSおよび0.1%NaN含有100μl PBS(FACS緩衝液)に再懸濁した。投入細胞(100μl)を同様に処理した。特異的遊走の計算のために、20μl FACS緩衝液中一定数のビーズ(10000;Invitrogen#PCB100))を添加し、懸濁液を、FACS機器PASTM(Partec)を使用したフローサイトメトリーにより分析した。細胞を、その前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)パターンに基づき同定した。走化性を全細胞数または投入細胞のパーセントとして示す。
【0171】
種々の生活環段階のB細胞からのDNA発現アレイは、異なるEBI2発現プロファイルを示す(図22AおよびB)。未処理B細胞においてEBI2は明らかに発現しているが、リンパ節胚中心からのB細胞はEBI2発現を鋭く下方制御する(Gatto, D., at al. (2009) Guidance of B Cells by the Orphan G Protein-Coupled Receptor EBI2 Shapes Humoral Immune Responses. Immunity 31[2], 259-269; Pereira, J. P., et al. (2009) EBI2 mediates B cell segregation between the outer and centre follicle. Nature, 460)。親和性成熟が完了したら、B細胞は血漿B細胞または記憶B細胞に形質転換し、EBI2発現は再び高い(図20AおよびB)。このパターンはヒトおよびマウスB細胞サブセットで同じである(Longo, N.S., et al. (2009). Analysis of somatic hypermutation in X-linked hyper-IgM syndrome shows specific deficiencies in mutational targeting. Blood 113, 3706-3715; Luckey, C.J., et al. (2006). Memory T and memory B cells share a transcriptional program of self-renewal with long-term hematopoietic stem cells. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103, 3304-3309)。
【0172】
EBI2は、元々、エプスタイン・バーウイルスに感染したB細胞における上方制御によって同定された(Birkenbach 1993)。抗EBI2モノクローナル抗体(Eurocreen)を使用したFACS(蛍光標示式細胞分取)実験によって、我々は、EBV感染ヒトB細胞株が高レベルのEBI2を細胞表面上に発現することを発見した。
【0173】
EBV形質転換末梢Bリンパ球の産生の方法論
ヒト末梢Bリンパ球(PBL)を、末梢血からFicoll plaque上の遠心分離により細胞懸濁液として調整した。PBLをPBSで濯ぎ、完全RPMI1640培地(10%FCSおよび抗生物質)に、2×10細胞/mlの濃度で再懸濁した。細胞を500μl量に等分し、24ウェルプレートに播種した。各ウェル(10PBL)に、500μlのB95−8細胞株上清(エプスタイン・バーウイルス含有)を添加した。B95−8細胞株は、EBVの製造に使用される細胞株である(American Type Culture Collection, Cat. CRL-1612)。0.8μg/mlシクロスポリンA(CsA)を各ウェルに添加する。細胞を、培地の約半分を、0.8μg/ml CsAを含む新鮮な培地に変えることにより週に1回給餌する。この処置を、増殖細胞の塊が見えるようになるまで3週間繰り返す。一つの塊を小培養フラスコに移し、形質転換細胞をさらに拡張させる。ほとんどの形質転換細胞はB細胞系統由来である。一定量の細胞を、細胞が十分に増殖するやいなや凍結する。凍結させた一定量(1ml、約10細胞)を融解し、RPMI 1640、10%FCS、50μg/mlゲンタマイシンで希釈し、1/4から1/8に希釈することにより継代する。
【0174】
我々は、7a,25DHCが、これらのEBV感染B細胞をトランスウェルアッセイシステムで強力に引きつけることができることを発見した。コントロールとして、7a,25DHCの濃度は両区画で同一であった(図23)。
【0175】
第二の実験として、我々は、RS11846と呼ばれるバーキットリンパ腫プレB細胞株を試験した(Dr. John C. Reed, Burnham Institute for Medical Research, La Jolla, USAから提供; Gauwerky, C.E., et al. (1988). Pre-B-cell leukemia with a t(8;14) and a t(14;18) translocation is preceded by follicular lymphoma. Oncogene 2, 431-435.; Reed, J.C. et al. (1993). Somatic point mutations in the translocated bcl-2 genes of non-Hodgkin's lymphomas and lymphocytic leukemias: implications for mechanisms of tumor progression. Leuk. Lymphoma 10, 157-163)。DNAアレイデータ(BioGPS)の試験は、この細胞株の内在性EBI2が高発現レベルであることを示した。
【0176】
我々は、7a,25DHCがRS11846細胞を強力に誘引することができ、この誘引は、GαiサブユニットのADPリボシル化によりGαi−共役受容体のシグナリングを遮断する試薬である百日咳毒素により遮断できる。古典的ケモカイン類と同由生に、我々は、ベル型活性曲線を発見し、これは高化合物濃度で誘引が減少することを示す(図24AおよびB)。
【0177】
我々はまた、種々のオキシステロール類の組でRS11846細胞の細胞遊走実験を行った。結果(図25)は、RS11846細胞を誘引するオキシステロール類の能力と、EBI2の機能的活性化(FLIPR、GTPgS)またはEBI2放射性リガンド結合アッセイ(表3参照)についての細胞を利用したアッセイにおける化合物の有効性の間の明らかな相関を示す。
【0178】
オキシステロール仲介化学誘引はB細胞に限らず、EBI2を発現する他の免疫細胞でも見ることができる。種々のヒト免疫細胞でのメッセンジャーRNA発現分析は、骨髄および形質細胞様樹状細胞が高度にEBI2を発現することを示す(図26)。
【0179】
十分な数の樹状細胞(DC)を産生するために、我々は野生型およびEBI2欠損マウス(Deltagen)から骨髄を単離し、マウスIL4およびマウスGM−CSFで7〜8日間処理した。このプロトコルを使用して、樹状細胞の均質な集団を産生できた。我々は、野生型動物由来のDCが7a,25DHCに向かって遊走するが、EBI2(−/−)マウス由来のDCは7a,25DHCに向かって遊走しないことを発見した。この結果は、7a,25DHCの化学誘引物質特性がEBI2により仲介されることを示す(図27)。
【0180】
EBI2ノックアウトマウス(−/−)の免疫曝露
免疫細胞上のオキシステロール類の化学誘引物質特性の同定は、EBI2のアブレーションが、種々の生理学的条件下のEBI2発現細胞の適切な通行に影響を与えるであろうことを示唆する。それ故に、我々は、野生型およびEBI2(−/−)マウスをニトロ−フェニルニワトリガンマグロブリン(NP−CGG)およびミョウバンに暴露した。
【0181】
ニトロフェニル−ニワトリガンマグロブリン(NP−CGG)でのEBI2(−/−)および野生型マウスの免疫化
方法論
NP−CGGのプレブリーディング後、EBI−2koマウスまたは同腹子の免疫化を、ミョウバン(Serva; #12261)中、200μlの50μg NP(15)−CGG(Biosearch Technologies, Inc.; # N-5055)の腹腔内注射により行った。7日後、血清を採り、NP特異的IgG1およびIgMをELISAで分析した。
【0182】
ニトロフェニル特異的免疫グロブリンのELISA測定
IgG1およびIgM抗NP ELISAを、96ウェルプレート(Costar; #9018)をPBS(Gibco; #14040-091)中10μgml−1 NP(23)BSA(Biosearch Technologies, Inc.; #N-5050)で一晩、RTでコーティングし、PBS/1%BSA/0.05%Tween 20で1時間、RTで遮断することにより行った。血清サンプルを、PBS/1%BSA/0.05%Tween 20 (=試薬緩衝液)中1:50で開始して、デュプリケートで連続希釈し(1:3)、2時間、25℃でインキュベートし、NP結合IgG1およびIgMをビオチン接合ラット抗マウスIgG1(Zymed; #04-6140)またはビオチン接合ヤギ抗マウスIgM(Southern Biotech; #1020-08)、続いてEuropiumコンジュゲートストレプトアビジン(Wallac; #1244-360)を使用して検出した。各インキュベーション工程後、プレートを6時間、PBS/0.05%Tween 20で洗浄した。Europium関連発光を測定するために、Enhancement SolutionTM(Wallac; #1244-105)を添加し、プレートをVictor 2 DeviceTM(Wallac; 1420 Multilabel Counter)で、デフォルトEuropiumプログラムを使用して測定した。NP特異的IgG1およびIgM力価を、50%maxで力価を決定することにより計算し、群を平均化し、力価50%max±STDでおよび中央値で示した。免疫曝露7日後、我々は免疫グロブリンレベルを測定した。IgM発現レベルに変化はなかったが(図28A)、我々は、EBI2(−/−)マウスが野生型動物に対して約半分の力価しか生じないIgG1応答の鈍りを発見した(図28B)。
【0183】
5.20 結果
我々の発見は、EBI2のリンパ系臓器内へのB細胞局在化の促進における重要な役割を同定した最近の結果(Pereira, J. P., et al. (2009) EBI2 mediates B-cell segregation between the outer and centre follicle. Nature 460[7259], 1122-1; Gatto, D., et al (2009) Guidance of B Cells by the Orphan G Protein-Coupled Receptor EBI2 Shapes Humoral Immune Responses. Immunity 31[2], 259-269)およびオキシステロール類が適応性免疫応答を形作る機構を同定した実験(Bauman, D.R., et al., (2009). 25-Hydroxycholesterol secreted by macrophages in response to Toll-like receptor activation suppresses immunoglobulin A production. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 106, 16764-16769; Diczfalusy, U., et al. (2009). Marked up-regulation of cholesterol 25-hydroxylase expression by lipopolysaccharide. J. Lipid Res, 投稿中)との予期しない関連を提供し、これらの生理活性シグナリング分子についての新規な生理学的側面を確立する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HC(すなわちリガンド)とヒトEBI2の間の相互作用の単離されたモジュレーター。
【請求項2】
相互作用が7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとヒトEBI2の間である、請求項1に記載のモジュレーター。
【請求項3】
相互作用が7a,25DHCとヒトEBI2の間である、請求項2に記載のモジュレーター。
【請求項4】
該相互作用の阻害剤である、請求項1〜3のいずれかに記載のモジュレーター。
【請求項5】
小化学物質、抗体、アドネクチン、アンキリン、マキシボディ/アビマー、アフィボディ、アンチカリン、アフィリン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)から成る群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載のモジュレーター。
【請求項6】
7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2と結合し、リガンドとEBI26の間の相互作用を阻害する、請求項1〜5のいずれかに記載のモジュレーター。
【請求項7】
7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよび/またはEBI2発現の内因性産生を調節する、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよび/またはEBI2発現の内因性産生を調節する、請求項1〜5のいずれかに記載のモジュレーター。
【請求項8】
7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCの内因性産生の阻害剤である、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCの内因性産生の阻害剤である、請求項7に記載のモジュレーター。
【請求項9】
7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCの内因性酵素仲介産生を阻害する、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCの内因性酵素仲介産生を阻害する、請求項6に記載のモジュレーター。
【請求項10】
7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCの直接前駆体からそれぞれ7,25DHCおよび/または7HCおよび/または25HCへの、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCの直接前駆体からそれぞれ7a,25DHCおよび/または7b,25DHCへの酵素仲介変換を阻害する、請求項9に記載のモジュレーター。
【請求項11】
抗体または抗体フラグメントである、請求項1〜10のいずれかに記載のモジュレーター。
【請求項12】
抗体がヒト定常領域を含む、請求項11に記載のモジュレーター。
【請求項13】
抗体がIgGアイソタイプ(例えばIgG1またはIgG4)を有する、請求項11または12に記載のモジュレーター。
【請求項14】
抗体がキメラ、ヒトまたはヒト化である、請求項11〜13のいずれかに記載のモジュレーター。
【請求項15】
Fab、Fab’、F(ab)、Fv、ScFv、VHドメイン、VHHドメインから成る群から選択される抗体フラグメントである、請求項11に記載のモジュレーター。
【請求項16】
EBI2タンパク質発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAである、請求項1〜5のいずれかに記載のモジュレーター。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載のモジュレーターを薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含み、場合によりその使用指示書を含んでよい、医薬組成物。
【請求項18】
7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用の調節に応答するヒト疾患または障害の処置方法であって、治療有効量の請求項17に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項19】
7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用の調節に応答するヒト疾患または障害の処置のための予防方法であって、治療有効量の請求項17に記載の医薬組成物を投与する過程を含む、予防方法。
【請求項20】
疾患または障害が;高血圧、狭心症、アテローム性動脈硬化症、鬱血性心不全、卒中、肥満、代謝症候群、自己免疫性疾患、例えば関節炎、(特にリウマチ性関節炎)および狼瘡、アトピー状態、例えば喘息およびアトピー性皮膚炎、COPD、肺高血圧、ウイルス感染症、例えばEBV、HIV、肝炎(AまたはC)、脂肪肝疾患、肝硬変(特にアルコール誘発肝硬変)、癌、異脂肪血症、糖尿病(特にII型)、移植拒絶反応、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、慢性炎症の疾患、アレルギー、乾癬、嚢胞性線維症、高コレステロール血症、腎臓疾患、多発性硬化症からなる群から選択される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用のモジュレーター、特に阻害剤の同定方法であって;
(a) 候補モジュレーターを準備し;
(b) 工程(a)のモジュレーターと7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCおよびEBI2、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCおよびEBI2をインキュベートし;
(c) 7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用が該候補モジュレーターの存在下で、該候補モジュレーター非存在下の7,25DHCおよび/または7,27DHCおよび/または7HCおよび/または25HCとEBI2、好ましくは7a,25DHCおよび/または7b,25DHCおよび/または7a,27DHCおよび/または7b,27DHCおよび/または7aHCおよび/または7bHCおよび/または25HCとEBI2の間の相互作用と比較して調節されているか否かを決定することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2012−511536(P2012−511536A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540047(P2011−540047)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066550
【国際公開番号】WO2010/066689
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【出願人】(399038620)ザ スクリプス リサーチ インスティチュート (51)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】