説明

コレステロール吸収阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤および安定化剤を含有する組成物

【課題】脂質の管理ならびにアテローム性動脈硬化症および関連する状態ならびに疾患の事象の予防ならびに治療に有用な、コレステロール吸収阻害剤とHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の組み合わせから構成される新規医薬製剤の提供。該医薬製剤は、望ましい安定性を有する。
【解決手段】(a)1から20重量%のコレステロール吸収阻害剤;(b)1から80重量%のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の少なくとも一種;(c)0.005から10重量%の安定化剤の少なくとも一種;(d)クロスカルメロースナトリウム;および(e)ポビドンを含有する医薬組成物。好ましくは、該コレステロール吸収阻害剤がエゼチミブであり、該HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がシンバスタチンまたはアトルバスタチンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤、とりわけシンバスタチン、および、コレステロール吸収阻害剤、とりわけエゼチミブ、または医薬適合性のこれらの化合物の塩、溶媒和物もしくはエステル、の組み合わせから構成されるバルク組成物および経口用投薬単位のための医薬製剤に関する。このものは、脂質の管理ならびにアテローム性動脈硬化症および関連する状態ならびに疾患の事象の予防ならびに治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
数十年間に亘って、上昇した血中コレステロールは冠状動脈性心臓病(CHD)の主要な危険因子であることが明らかにされてきた。そして多数の研究から、脂質低下療法によって、CHDの事象のリスクを減少できることが示されてきた。1987年以前では、脂質を低下させる方法論は、基本的に、低飽和脂肪および低コレステロールの食物、胆汁酸性の金属イオン封鎖剤(コレスチラミンおよびコレスチポール)、ニコチン酸(ナイアシン)、フィブラート類およびプロブコールに限定されていた。残念なことに、これらの処置のすべてに、効果もしくは許容性のいずれかにまたはその両方に制限があった。HDL(高密度リポタンパク質)コレステロールの増加を伴うLDL(低密度リポタンパク質)コレステロールの実質的な減少は、ニコチン酸の添加の有無に関わらず、脂質を低下させる食物と胆汁酸性の金属イオン封鎖剤とを組み合わせることによって達成することができた。しかしながら、この治療法は、投与することまたは許容することが簡単ではなく、従って、脂質の治療についての専門医を除き、多くの場合失敗に終わった。フィブラート類は、HDLコレステロールの増加を伴うLDLコレステロールの穏やかな減少と中性脂肪の実質的な減少とを実現し、およびこれらは十分に許容されるので、これらの薬剤はより広範囲に用いられてきた。プロブコールは、LDLコレステロールをわずかに減少させるだけで、さらにはHDLコレステロールも減少させる。HDLコレステロールレベルとCHDリスクとの間には強い負の関係があるため、このことは一般的に望ましくないこととみなされる。ロバスタチン(1987年に処方薬として利用できるようになった、HMG−CoAレダクターゼの最初の阻害剤である)の導入よって、極めてわずかな副作用しかなく、医師が初めて血漿コレステロールを大きく減少させることができた。
【0003】
最近の研究から、ロバスタチン、シンバスタチンおよびプラバスタチン(HMG−CoAレダクターゼ阻害剤クラスのすべてのメンバーである)は、冠動脈および頸動脈におけるアテローム性病変の進行を遅延させることが明白に実証された。さらにシンバスタチンおよびプラバスタチンが冠状動脈性心臓病の事象のリスクを減少させることが示され、およびシンバスタチンの場合、心臓発作による死亡のリスクと全死亡率が顕著に減少することが、スカンジナビアでのシンバスタチンの生存の研究によって示された。この研究から、脳血管に関する事象を減少させることについてのいくつかの証拠も提供された。
【0004】
シンバスタチンによって心臓発作の罹患率および死亡率のリスクの実質的な減少が達成されるにもかかわらず、治療された患者におけるリスクはなお、相当程度存在する。たとえば、スカンジナビアでのシンバスタチンの生存の研究では、心臓発作による死亡のリスクが42%減少するが、この5年間の研究の間に、それでもなお治療された患者の5%がこれらの疾患により死亡する状態のままであった。リスクのさらなる減少は、明らかに必要とされている。
【0005】
(米国特許第5,767,115号およびRe.37721に記載されている)エゼチミブなどの特定のヒドロキシ置換アゼチジノンは、現在、アテローム性動脈硬化症の治療および予防におけるコレステロール低下剤として有用であることが知られている。コレステリルエステルは、アテローム性病変の主要な構成成分であり、および動脈壁細胞におけるコレステロールの主要な貯蔵形態である。コレステリルエステルの形成は、食事性コレステロールの腸管吸収における重要なステップでもある。従って、コレステリルエステルの形成阻害および血清コレステロールの減少によって、アテローム性病変の形成の進行が抑制され、動脈壁におけるコレステリルエステルの蓄積が減少し、そして食事性コレステロールの腸管吸収が阻止されると思われる。
【0006】
シンバスタチンなどのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤とエゼチミブなどのコレステロール吸収阻害剤とから構成される多剤併用療法によって、リスクのさらなる減少が達成され、脂質の管理が提供できるようになり、そしてアテローム性動脈硬化症を治療したり、またはそのリスクを減少させることができる;これらの二つの活性物質の併用は、米国特許第5,846,966号に記載されている。シンバスタチンなどのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤と同じく、エゼチミブを一日に一回、経口で投与できるため、安定で活性物質の劣化を最小限度に抑える製剤方法を利用して、二つの活性物質を組み合わせて錠剤などの一度で経口投与することができる医薬用投薬単位とすることが有利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シンバスタチンおよびエゼチミブから構成される、バルク医薬組成物のためのおよび経口用の医薬用投薬単位のための新規製剤であって、不要な分解による副産物を最小限度とし、そして望ましい保存安定性を有する高品質の最終産物を提供する頑強なプロセスにおいて生産することができる新規製剤を提供することによって、本発明はこの必要性に取り組んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要約)
本発明は、コレステロール吸収阻害剤とHMG−CoAレダクターゼ阻害剤とを含む新規医薬製剤であって、望ましい安定性を有するも、アスコルビン酸の存在もアルファ化デンプンの存在も必須ではない医薬製剤を提供する。
【0009】
より具体的には、本発明は、1から20重量%のエゼチミブなどのコレステロール吸収阻害剤;1から80重量%のシンバスタチンなどのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤;および0.01から2重量%のBHAなどの安定化剤を含有する医薬組成物を提供する。さらに1から80重量%の微結晶性セルロース;0.5から10重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;0.1から4重量%のステアリン酸マグネシウム;および25から70重量%のラクトースを含有する。この組成物は、必要に応じて一以上のクロスカルメロースナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸および没食子酸プロピルを含有してもよい。この組成物はアスコルビン酸を含むことが可能ではあるが、望ましい結果を得るために、アスコルビン酸を含有することは必要ではない。同様に、この組成物はアルファ化デンプンを含むことは可能ではあるが、望ましい結果を得るために、この組成物が、アルファ化デンプンを含有する必要はない。この組成物をバルクの形態で調製することができ、およびこの組成物は、錠剤などの個別の経口用の投薬単位を形成することに適しており、高コレステロール血症を含む高脂血症などの血管の状態を治療したり、心筋梗塞などのアテローム性動脈硬化症の事象を治療し予防するのに有用である。
【0010】
本発明の別の側面は、1から20重量%のエゼチミブなどのコレステロール吸収阻害剤;1から80重量%のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の少なくとも一種;および0.005から10重量%の安定化剤の少なくとも一種を含有する医薬組成物である。さらなる側面は、次の詳細な説明から明らかになる。
【0011】
本発明は、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびコレステロール吸収阻害剤の製剤を対象とする。より具体的には、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤はスタチンであり、たとえば、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチンおよびロスバスタチンが挙げられる。コレステロール吸収阻害剤は、米国特許RE37,721;第5,688,990号;第5,656,624号;第5,624,920号;第5,698,548号;第5,627,176号;第5,633,246号;第5,688,785号;第5,688,787号;第5,744,467号;第5,756,470号;第5,767,115号および2002年6月11日に出願された米国特許出願第10/166,942号のあらゆる開示から選択することができ、これらは引用することによって、本明細書に組み込まれる。このような化合物の作製方法はこれらの特許に開示されている。具体的に言えば、本発明は、シンバスタチンおよびエゼチミブの製剤を対象とする。
【0012】
シンバスタチンは世界中で売買されており、米国では、商標ZOCOR(登録商標)の下で販売されている。このものの作製方法は、米国特許第4,444,784号;第4,916,239号;第4,820,850号;その他の特許および刊行物に記載されている。シンバスタチンは次の構造式Iで示される:
【0013】
【化1】

【0014】
エゼチミブは現在、米国では商標ZETIA(登録商標)の下で売買されている。ZETA(登録商標)の製剤は、唯一の有効成分としてエゼチミブを含む。エゼチミブの作製方法は、米国特許第第5,631,365号;Re.37721;第5,846,966号;第5,767,115,号6,207,822号;2002年3月25日に出願された米国特許出願第10/105,710号、およびPCT第93/02048号に記載されている。エゼチミブは、次の構造式IIで示され、無水の形態または水和された形態のいずれかを取り得る:
【0015】
【化2】

【0016】
本発明の経口用の医薬組成物は、HMG−CoAレダクターゼ阻害活性を持つ物質およびコレステロール吸収阻害剤を持つ物質(とりわけシンバスタチンおよびエゼチミブ)に加えて、一種以上の微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ステアリン酸マグネシウム、ラクトースおよびポビドン(PVP)を含んでもよい。この組成物は、酸化防止剤を含む一種以上の安定化剤(たとえば、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、クエン酸、エデト酸二ナトリウムおよびメタ重亜硫酸カルシウムなど)を含有する。BHA、没食子酸プロピルおよびこれらの組み合わせが好ましく、BHAと没食子酸プロピルとの組み合わせが最も好ましい。必要に応じて、一種以上のクロスカルメロースナトリウム(CCNa)、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)およびこれらの塩が、組成物内に含まれる。特に、アスコルビン酸は組成物に含めることが可能ではあるが、この組成物はアスコルビン酸の存在を良好な結果を生じさせる成分として必要としていない。同様に、この組成物はアルファ化デンプンの存在を良好な結果を生じさせる成分として必要としていない。望むのであれば、アルファ化デンプンを組成物に含めることは可能である。本明細書で用語「アスコルビン酸」を用いる場合、遊離酸ならびにアスコルビン酸ナトリウムなどのその塩の形態を含むことを意図する。
【0017】
一成分とした場合、アスコルビン酸には医薬組成物やその他の組成物を変色させる傾向があることが知られている。医薬用の錠剤として用いる場合、この変色作用のせいで、変色を隠すために錠剤を被膜で覆って用いる必要があろう。本発明の組成物はアスコルビン酸を用いることなく製剤化することができるので、アスコルビン酸を用いることなく形成されたこのような錠剤を、フィルム被膜を加える特別の工程を伴うことなく調製することができる。当然のことながら、たとえば美観上の目的から必要に応じてフィルム被膜を加えることができるが、アスコルビン酸により生じる変色を隠すために、被膜を加える必要性は除かれる。
【0018】
本明細書で用いられるように、「医薬組成物」および「組成物」という用語は、シンバスタチンおよびエゼチミブなどの二種の医薬用の活性物質と、本明細書に記載の薬学的に不活性な賦形剤から構成される、バルク組成物および個々の経口用の投薬単位(錠剤、丸薬など)の両者を包含する(活性物質および賦形剤を、本明細書では集合的に組成物の「成分」と称する)。バルク組成物は、個々の経口用の投薬単位に形成されていない物質である。医薬組成物の経口用の投薬単位はその形態としては、錠剤が好ましい。
【0019】
実施例またはその他の指示を除いて、成分、反応条件ならびに明細書および請求の範囲に用いられたその他の量を表すすべての数値は、「約」という用語によってすべてのものが修飾されているものとして理解される。
【0020】
本明細書で意図されるように、一回の経口用の投薬単位の総重量(たとえば一錠の重量)は、投薬単位におけるすべての成分(すなわち二つの活性物質と賦形剤)の重量を加算することによって決定し、バルク組成物から形成された投薬単位に、必要に応じて外部から添加されるあらゆる被膜の重量を含めない。造粒プロセスの間に用いられ、次に乾燥している間に除去されるあらゆる溶媒も含めない。上記のように規定される一回の経口用の投薬単位の総重量は、投薬単位を構成する各成分の重量パーセントの計算の基準として用いられる。しかしながら、本明細書で記載された被覆されない成分、ならびにワックス、顔料などで被覆される成分を含む投薬単位は、本明細書の範囲内に含まれる。
【0021】
本明細書で記載された成分から構成されるバルク組成物の総重量は、生産に望ましいバルク組成物の量に従って、必然的に変化する。所定量のあらゆるバルク組成物を構成する成分のそれぞれの重量パーセントを計算するために、所定量のバルク組成物におけるすべての成分の重量(すなわち二つの活性物質および賦形剤)を加算してバルク組成物の総重量を決定する。本技術分野において理解されているように、バルク組成物には、造粒プロセスで用いられた溶媒、および成分としての被覆材料のいずれも含まれない。従って、このような被覆材料および溶媒は、バルク組成物の総重量の計算に含められることはない。
【0022】
本技術分野において、一回の経口用の投薬単位の組成物を記述するために、本明細書で用いられる成分の重量の範囲および具体的な重量を比例的にスケールアップしてバルク組成物を作製することが理解されている。当然、本明細書で用いられる成分の重量パーセントは、個々の経口用の投薬単位またはバルク組成物のいずれにも適用できる。
【0023】
本医薬用投薬単位の総重量は望みに応じて変更できるが、実務上の理由から、一回の経口用の投薬単位の総重量の範囲は50から1000mgが好ましく、とりわけ100から800mgが好ましい。
【0024】
本発明の一つの実施態様において、本医薬組成物は、本組成物の1から20重量%、とりわけ1.25から10%の量のエゼチミブなどのコレステロールの吸収阻害活性を有する物質;本組成物の1から80重量%、とりわけ1から20%、特に好ましくは5から10%の量のシンバスタチンなどのHMG−CoAレダクターゼの阻害活性を有する物質;ならびに0.005から20重量%、とりわけ0.01から2%、より好ましくは0.01から0.05%、特に好ましくは約0.02%の量のBHAなどの安定化剤の少なくとも一種を含有する。この実施態様の一つの側面においては、本組成物は、0から0.2%(すなわち0.2%以下)、とりわけ0.001から0.05%、特に好ましくは約0.005重量%の没食子酸プロピルをさらに含有する。一例として、100から800mgの範囲の総重量を持つ経口用の投薬単位は、1.25から10重量%のエゼチミブ、5から10重量%のシンバスタチン、約0.02%のBHA、および必要に応じて約0.005重量%の没食子酸プロピルを含んでもよい。
【0025】
この実施態様の範囲内において、本医薬組成物(たとえば、100から800mgの範囲の総重量を有する経口用の投薬単位が挙げられるが、これには限定されない)は、次の賦形剤をさらに含む:1から80重量%、とりわけ5から20重量%、特に好ましくは約15重量%の微結晶性セルロース;0.5から10重量%、とりわけ1から4重量%、特に好ましくは約2重量%のHPMC;および0.1から4重量%、とりわけ0.5から2重量%、特に好ましくは約1.5重量%のステアリン酸マグネシウム。
【0026】
ラクトースも本組成物の成分であり、所望の総重量を達成するために、量を変化させて使用できる。たとえば、一回の投薬単位について、ラクトース以外のすべての成分を合わせた重量が36.77mgの場合、63.23mgのラクトースを添加して投薬単位の総重量を100mgとすることができる。一回の投薬単位について、ラクトース以外のすべての成分を合わせた重量が73.54mgの場合、126.46mgのラクトースを添加して投薬単位の総重量を200mgとすることができる。本技術分野において理解されているように、このような成分の重量を比例的にスケールアップさせてバルク組成物を作製することができる。一般的に、本組成物の約25から70重量%がラクトースから構成される。
【0027】
この実施態様の一つの側面においては、必要に応じてクロスカルメロースナトリウムを本組成物における一成分に含めてもよい。従って、0から10%(すなわち10%以下)、とりわけ2から4%、特に好ましくは約3重量%のクロスカルメロースナトリウムを本組成物に含めてもよい。
【0028】
この実施態様の別の側面においては、必要に応じてクエン酸を本組成物における一成分として含めてもよい。従って、0から10%(すなわち10%以下)、とりわけ0.1から1.25%、特に好ましくは約0.25重量%のクエン酸を本組成物に含めてもよい。
【0029】
さらに、必要に応じて乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびEDTAの一つ以上を本組成物に含めてもよい。
【0030】
本発明の第二の実施態様においては、本医薬組成物は、本組成物の1から20重量%のエゼチミブなどのコレステロール吸収阻害剤;本組成物の1から80重量%のスタチンなどのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の少なくとも一種;および本組成物の0.005から10重量%、とりわけ0.01から5%、特に好ましくは0.01から2%の量の安定化剤の少なくとも一種を含有する。
【0031】
この実施態様の一つの側面においては、安定化剤は酸化防止剤である。さらなる側面においては、酸化防止剤はブチル化ヒドロキシアニソール、クエン酸およびエデト酸二ナトリウムならびにそれらの混合物からなる群より選択される。
【0032】
この実施態様の別の側面においては、本組成物は、ラウリル硫酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、微結晶性セルロースおよびラクトース一水和物からなる群より選択される成分の一つ以上をさらに含有する。
【0033】
本発明の第三の実施態様において、シンバスタチン1mgあたり、5から20mg、とりわけ10mgのエゼチミブ;5から80mg、とりわけ5mg、10mg、20mg、40mgおよび80mgから選択される投薬量のシンバスタチン;ならびに0.002から0.004mgのBHAを含む経口用の投薬単位が提供される。より具体的には、必要に応じて、本組成物は1mgのシンバスタチン当たり0.0005から0.001mgの没食子酸プロピルを含有する。たとえば、本組成物は、0.01から16mg、とりわけ0.02から0.16mgのBHAを含有してもよく、さらには0.001から0.05mg、とりわけ0.005から0.04mgの没食子酸プロピルを含有してもよい。必須ではないが、本組成物中に没食子酸プロピルが含有されることが好ましい。
【0034】
第三の実施態様の一つの側面においては、投薬単位は1から640mg、とりわけ15から120mgの微結晶性セルロース;0.5から80mg、とりわけ2から16mgのHPMC;0.1から32mg、とりわけ1.5から12mgのステアリン酸マグネシウム;およびラクトースをさらに含む。
【0035】
上記で検討したように、投薬単位におけるラクトースの量は好みの問題であり、そしてラクトースの量を選択して錠剤の総重量を所望なものとすることができる。一般的に、投薬単位当たりラクトース約1000mg以下、たとえば約25から1000mgを用いて実用的なサイズの投薬単位を生産し得る。
【0036】
第三の実施態様の別の側面において、必要に応じてクロスカルメロースナトリウムを本組成物における一成分として含み得る。たとえば、経口用の投薬単位に0から80mg(すなわち80mg以下)のクロスカルメロースナトリウム、とりわけ3から24mgのクロスカルメロースナトリウムを含み得る。
【0037】
第三の実施態様の別の側面において、必要に応じてクエン酸を本組成物における一成分として含み得る。たとえば、経口用の投薬単位は0から80mg(すなわち80mg以下)、とりわけ0.25から2mgのクエン酸を含み得る。
【0038】
さらに、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびEDTAの一つ以上を場合により投薬単位に含めてもよい。
【0039】
本発明の第四の実施態様において、患者に本発明の医薬組成物の治療上有効な量を投与することによって、血管の状態に関連する疾患の治療が必要な患者の血管の状態に関連する疾患の一種以上を治療する方法が提供される。患者に本発明の医薬組成物の治療上有効な量を投与することによって、血管の状態に関連する疾患の治療が必要な患者の血管の状態に関連する疾患の一種以上を治療する方法も提供される。
【0040】
本発明のすべての実施態様の別の側面において、投薬単位当たりのエゼチミブの量は10mgであり、投薬単位当たりのシンバスタチンの量は次のものから選択される:
(a)5mg、ここで、シンバスタチンは組成物の1から20%、とりわけ5重量%である;
(b)10mg、ここで、シンバスタチンは組成物の1から20%、とりわけ10重量%である;
(c)20mg、ここで、シンバスタチンは組成物の2から20%、とりわけ10重量%である;
(d)40mg、ここで、シンバスタチンは組成物の4から20%、とりわけ10重量%である;および
(e)80mg、ここで、シンバスタチンは組成物の8から20%、とりわけ10重量%である。
【0041】
より具体的には、シンバスタチンの量が組成物の5重量%の場合、エゼチミブの量は組成物の10重量%であり、およびシンバスタチンの量が組成物の10重量%の場合、エゼチミブの量は次のものから選択される:
(a)組成物の1から20%、とりわけ10重量%;
(b)組成物の1から20%、とりわけ5重量%;
(c)組成物の1から20%、とりわけ2.5重量%;および
(d)組成物の1から20%、とりわけ1.25重量%。
【0042】
本発明のすべての実施態様の別の側面において、BHAおよび没食子酸プロピルは本組成物の範囲内に含まれる。
【0043】
本発明のすべての実施態様のさらに別の側面において、本組成物にアスコルビン酸は存在しない。具体的には、アスコルビン酸は本組成物に存在せず、およびバルク組成物から形成される錠剤の投薬単位には、錠剤を覆うフィルム被膜が無い。
【0044】
本発明のすべての実施態様のさらに別の側面において、本組成物にアルファ化デンプンは存在しない。具体的には、アルファ化デンプンおよびアスコルビン酸の両者が本組成物に存在しない。より具体的には、アルファ化デンプンおよびアスコルビン酸の両者が組成物に存在せず、およびBHAおよび没食子酸プロピルの両者は組成物の範囲内に含まれる。
【0045】
本発明の範囲内に包含される一例は、エゼチミブ、シンバスタチン、BHAおよび没食子酸プロピルから構成されるものがあり、ここで、この組成物には、アスコルビン酸およびアルファ化デンプンの一つまたは両者が存在しない。さらなる例として、エゼチミブ、シンバスタチン、BHAおよび没食子酸プロピルから構成される錠剤状の医薬用投薬単位が挙げられ、ここでの投薬単位には、アスコルビン酸および錠剤を覆うフィルム被膜の両者が存在しないか、またはより具体的には、アスコルビン酸、アルファ化デンプンおよび錠剤を覆うフィルム被膜のすべてが存在しない。
【0046】
造粒用の流体を用いて原末を塊にし、バルク材料の加工特性を改善する。本発明の組成物のためには、エタノールと水との混合物が造粒用の流体として適切に用いられる。水:エタノールの割合を変化させて用いることが可能であり、たとえば、体積に基づいて水:エタノールが10:1〜1:3の範囲である。具体的には、造粒用の流体は体積に基づいて水:エタノールが3:1の割合である。添加される造粒用の流体の総量は、作業スケールに基づいて変更することができる。本発明の組成物に用いられる造粒用の流体についての通常の範囲は、組成物の約15から30重量%であり、とりわけ約25%である。バルク材料を錠剤に圧縮する前に、トレー乾燥、流動床乾燥、マイクロ波による乾燥および真空乾燥などの本技術分野において公知の技術を用いて、造粒用の流体を除去する。
【0047】
バルクの形態および錠剤の形態の本発明の医薬組成物を、次のプロセスによって調製することができる。ラクトース、微結晶性セルロース、シンバスタチン、エゼチミブ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびクロスカルメロースナトリウムを高剪断力混合造粒機で混合して、それぞれの成分が確実に均一に分散した状態とする。BHAおよび没食子酸プロピルをエタノールに溶解させ、およびクエン酸を水に溶解させることによって、造粒用の溶媒を調製する。次いで、水溶液およびエタノール溶液を混合し、そして高剪断力混合造粒機内の粉末床上に噴霧する。次いで、得られた湿った塊を乾燥させ、篩い分けする。次いで、ステアリン酸マグネシウムを添加して円滑化する。円滑化された最終的な粉末混合物を圧縮して錠剤とする。
【0048】
経口用の投薬単位のより具体的な例は、次の通りである。実施例1から6に記載された経口用の投薬単位を、上記のプロセスを利用して、適切なスケールのバルク組成物から作製することができる。
【実施例1】
【0049】
【表1】

【実施例2】
【0050】
【表2】

【実施例3】
【0051】
【表3】

【実施例4】
【0052】
【表4】

【実施例5】
【0053】
【表5】

【実施例6】
【0054】
【表6】

【0055】
実施例7に記載された経口用の投薬単位を、下記のように調製することができる。
【実施例7】
【0056】
【表7】

【0057】
エゼチミブの造粒:エゼチミブの造粒のために、上記の量のBHAおよびクエン酸を70:30の水/アルコール混合物中に溶解させた。エゼチミブの造粒のために、上記の量のポビドン(PVP)およびアスコルビン酸を水に溶解させた。エゼチミブの造粒のために、上記の量のエゼチミブ、ラクトース、クロスカルメロースナトリウムの半分および微結晶性セルロースの半分をHobartミキサーで混合した。混合している間に、上記のBHA溶液をエゼチミブ混合物に添加した。上記のポビドン/アスコルビン酸溶液を用いて、得られた混合物を造粒した。得られた湿った塊を上記のように造粒し、次いでクロスカルメロースナトリウムおよび微結晶性セルロースの残りの半分と混合した。
【0058】
シンバスタチンの造粒:シンバスタチンの造粒のために、上記の量のBHAおよびクエン酸を7:3の水/アルコール混合物中に溶解させた。シンバスタチンの造粒のために、上記の量のポビドン(PVP)およびアスコルビン酸を水に溶解させた。シンバスタチンの造粒のために、上記の量のシンバスタチン、ラクトース、クロスカルメロースナトリウムの半分および微結晶性セルロースの半分をHobartミキサーで混合した。混合している間に、上記のBHA溶液をシンバスタチン混合物に添加した。上記のポビドン/アスコルビン酸溶液を用いて、得られた混合物を造粒した。得られた湿った塊を上記のように造粒し、次いでクロスカルメロースナトリウムおよび微結晶性セルロースの残りの半分と混合した。
【0059】
複合造粒物:エゼチミブの造粒物およびシンバスタチンの造粒物をTurbulaミキサーで一緒に混合した。ステアリン酸マグネシウムをこの造粒混合物と混合し、そして上記と類似のやり方で圧縮して錠剤とした。
【0060】
従って、別の実施態様においては、本発明は、(a)ステロール吸収阻害剤の少なくとも一種または医薬適合性のその塩もしくはその溶媒和物の1から20重量%、および第一の安定化剤の少なくとも一種の0.005から10重量%からなる第一の量;ならびに(b)HMG CoAレダクターゼ阻害剤の少なくとも一種の1から80重量%、および第二の安定化剤の少なくとも一種の0.005から10重量%からなる第二の量を含み、第一の量および第二の量が合わさって、アテローム性動脈硬化症の治療または予防のための治療上有効な量を含む、治療用の組み合わせを提供する。第一の安定化剤および第二の安定化剤は同一のものでも化学的に異なるものでもよく、たとえば、上記にリストアップされた安定化剤が含まれる。
【0061】
本明細書で用いられるように、「治療用の組み合わせ」とは、たとえば上記のアテローム性動脈硬化症またはそれに関連するあらゆる状態を予防または治療するために、二以上の治療剤(たとえば(単数または複数の)ステロール吸収阻害剤と(単数または複数の)HMG CoAレダクターゼ阻害剤)を投与することを意味する。このような投与には、これらの治療剤を実質的に同時のやり方で共投与することが包含される。たとえば、所定の比率の有効成分を含む単一の錠剤またはカプセル、またはそれぞれの治療剤についての複数の個別のカプセルがある。さらに、このような投与には、それぞれのタイプの治療剤を連続したやり方で用いることが包含される。いずれかの場合において、多剤併用療法を用いる治療によって、アテローム性動脈硬化症の状態を治療する有益な効果が提供される。本明細書に開示された多剤併用療法の可能性ある利点は、アテローム性動脈硬化症の状態を効果的に治療する個別の治療用化合物の必要量または治療用化合物の全体の必要とされる総量を減少でき得ることである。治療剤を併用することによって、個々の化合物の副作用を単剤療法よりも減少させることができる。これによって患者のコンプライアンスを改善することができる。さらに、治療剤を選択して、より広範囲の代償なしの効果または代償なしの作用モードを提供することができる。
【0062】
特定の具体的な実施態様を参照して、本発明を記載し説明してきたが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱すること無く、種々の変更、改変および置換をなし得ることを理解する。たとえば、上記の本明細書の記載された特定の投与量以外の有効な投与量は、上記に示された本発明にて用いられた活性物質についてのあらゆる指示についての、治療を受ける哺乳動物の応答性のばらつきの結果として適切であろう。従って、次に続く請求の範囲によって本発明は規定されることと、かかる請求の範囲が妥当な程度と同等に広く解釈されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1から20重量%のコレステロール吸収阻害剤;
(b)1から80重量%のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の少なくとも一種;
(c)0.005から10重量%の安定化剤の少なくとも一種;
(d)クロスカルメロースナトリウム;および
(e)ポビドン
を含有する医薬組成物。
【請求項2】
コレステロール吸収阻害剤がエゼチミブである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がシンバスタチンまたはアトルバスタチンである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
安定化剤がアスコルビン酸である、請求項3に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2008−291034(P2008−291034A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150227(P2008−150227)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【分割の表示】特願2004−524692(P2004−524692)の分割
【原出願日】平成15年7月22日(2003.7.22)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】