説明

コレステロール輸送の調節のための化合物

脂質およびコレステロールの取り込みを調節するための方法が、記載されており、この方法は、SR−BI HDLレセプターの発現または機能を調節することに基づく。実施例は、エストロゲンは、LDLレセプターの絶大なアップレギュレーション条件下で、SR−BIを劇的にダウンレギュレートすることを示す。実施例はまた、エストロゲンで処理したラット副腎膜およびエストロゲンで処理した動物由来の他の非胎盤ステロイド産生組織におけるSR−BIのアップレギュレーションを示すが、他の非胎盤非ステロイド産生組織(肺、肝臓、および皮膚)ではSR−BIのアップレギュレーションはないことを示す。実施例はさらに、動物の肝臓細胞中への蛍光標識HDLの取り込みを示す。これは、その動物をエストロゲンで処理した場合には生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の援用)
本出願は、2002年10月8日に出願した米国特許仮出願番号60/417,083に対する優先権を主張する。
【0002】
米国政府は、National Institutes of Health−National Heart,Lung and Blood Instituteからの助成金HL52212、HL66105およびHL64737によって、本発明の特定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、一般に、SR−BIスカベンジャーレセプターを介して媒介されるコレステロール輸送の調節および脂質調節のための、化合物の領域にある。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
循環系を通る脂質の細胞間輸送には、これらの疎水性分子を水溶性キャリア(リポタンパク質と呼ばれる)中のパッケージングすること、およびレセプター媒介性経路によって適切な組織へのこれらのリポタンパク質の調節された標的化が必要である。最も良く特徴付けられているリポタンパク質レセプターは、LDLレセプターである。LDLレセプターは、アポリポタンパク質B−100(apoB−100)およびアポリポタンパク質E(apoE)に結合する。これらのアポリポタンパク質は、低密度リポタンパク質(LDL)(ヒト血漿中の主要なコレステリルエステル輸送体)、超低密度リポタンパク質(VLDL)(肝臓により合成されるトリグリセリドがリッチなキャリア)、中間密度リポタンパク質(IDL)および代謝されたカイロミクロンの構成成分である。
【0005】
Kreigerら、WO96/00288「Class BI and CI Scavenger Receptors」Massachusetts Institute of Technology,米国特許第6,359,859号および同第6,429、289号(「Kriegerら」は、SR−BI(AcLDLおよびLDLに結合するスカベンジャーレセプター)のハムスターホモログおよびマウスホモログを特徴付けでクローン化した。Kreigerによって、SR−BIレセプターは、ステロイド産生組織および肝臓において主に発現され、HDL輸送およびコレステロール取り込みを媒介するようであることが、報告された。競合結合研究によって、SR−BIが、LDL、改変型LDL、負に荷電したリン脂質、およびHDLに結合することが示される。直接結合研究によって、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞の改変体)において発現したSR−BIが、HDL−アポリポタンパク質の細胞分解を伴わずにHDLに結合し、脂質が、このレセプターを発現する細胞内に蓄積されることが示される。これらの研究は、SR−BIが、末梢組織から、HDLを介する、肝臓およびステロイド産生組織へのコレステロールの輸送において主要な役割を果たし得ること、および肝臓または他の組織における発現の増加もしくは減少は、SR−BIを発現する細胞によるコレステロールの取り込みを調節し、それによって泡沫細胞におけるレベルおよびアテローム発生に関与する部位における沈着を減少するために、有用であり得ることを示した。
【0006】
その後の研究によって、SR−BIは、脂質に結合するだけではなく、細胞内および細胞外へとコレステロールを輸送もすることが、Kriegerらに対する米国特許第5,962,322号および同第5,925,333号に記載されるように、確認された。さらに、SR−BIは、ステロイド産生組織において主に発現され、脂質調節において一定の役割を果たし、コレステロールレベルだけではなく、雌の受胎能に対しても、Massachusetts Institute of TechnologyによるWO99/11288に記載されるように、影響を与える。
【0007】
コレステロールの取り込み及び輸送におけるSR−BIの役割は、例えば、Miettinenら(2001)J.Clin.Invest.108(11):1717〜1722により記載されるように、雌の受胎能を回復するためにプロブコール処置を使用することによって、示されるようにSR−BIを介して操作され得る。この研究は、SR−BI媒介性の脂質取り込みおよび脂質代謝を刺激または阻害するさらなる薬物の必要性を、明らかに示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SR−BIへの結合およびSR−BIにより媒介される脂質移動を刺激または阻害し得、かつ細胞による脂質およびコレステロールの取り込みおよび代謝を変更(redirect)し得る、薬物ならびにその薬物を設計するための方法および試薬を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
SR−BIの発現または機能の調節に基づいて、コレステロール輸送を調節するための化合物が、記載される。SR−BIは、脂質(主にコレステロールエステル)のHDLから細胞への選択的取り込み、および細胞からリポタンパク質へのコレステロールの流出の両方を媒介する。これらの脂質輸送の基礎となる機構は、古典的なレセプター媒介性エンドサイトーシスとは別個であるが、不十分にしか理解されていないままである。SR−BIの作用機構およびインビボでの機能を調査するために、ハイスループットスクリーニングが、インタクトな細胞におけるSR−BI媒介性脂質輸送の低分子インヒビターを同定するために開発された。低ナノモル濃度〜マイクロモル濃度の範囲で、脂質輸送(選択的取り込みおよび流出の両方)をブロックする200個の化合物(BLT)が、同定された。これらの化合物の効果は、SR−BI経路に高度に特異的であった。なぜなら、これらの化合物は、クラスリンベースのレセプターが媒介するエンドサイトーシスに干渉することも、細胞内小胞輸送に干渉することもなかったからである。実施例により示されるように、5つのBLT(BLT−1[MIT9952−53];BLT−2[MIT9952−61];BLT−3[MIT9952−19];BLT−4[MIT9952−29]およびBLT−5[MIT9952−6])は、HDLに対するSR−BIの結合親和性を増加する(解離速度の減少)ことによって、HDL結合を阻害するどころかむしろ増強した。他のものは、HDL結合を阻害した。これらは、アテローム性動脈硬化症の管理、不妊症の処置において、または逆に、避妊薬として、およびタンジアー病の処置において、有用であるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
(I.コレステロールのSR−BI輸送の調節因子)
化合物ライブラリーが、HDL結合の変化について、下記のアッセイのようなアッセイを使用してスクリーニングされた。これらの化合物は、タンパク質、DNA配列、多糖、または合成有機化合物であり得る。活性を有すると同定された約200個が、下記表Iに列挙される。
【0011】
(II.SR−BI活性を阻害または増強する化合物のスクリーニング)
上記SR−BIタンパク質および抗体ならびにそれらのDNAは、SR−BIの活性および/または発現を調節する薬物のスクリーニングにおいて使用され得る。SR−BIをコードするcDNAは、クローン化されており、米国特許第6,359,859号および同第6,429,289号において報告されており、GenBankにおいて列挙されている。SR−BIをコードするcDNAは、509アミノ酸の推定タンパク質配列を生じる。SR−BI活性を増強する薬物は、アテローム性動脈硬化症、脂肪細胞による脂肪取り込み、およびいくつかの種類の内分泌障害を処置または予防する際に有用である。SR−BI活性を阻害する薬物は、避妊薬として、およびタンジアー病の処置において、有用である。
【0012】
下記のアッセイは、特定の化合物(例えば、放射標識した改変型HDLおよびLDL、またはポリイオン)の結合に対する阻害効果について化合物が試験され得る、慣用的方法論を明らかに提供する。その後、上記レセプターに対する選択的結合を阻害するようである化合物のインビトロ研究が、動物試験によって確認され得る。それらの分子は、非常に進化上保存されているので、実験室動物(例えば、マウス)における研究を行ってヒトにおける影響を予測することが、可能である。
【0013】
結合の阻害に基づく研究は、レセプター結合の変化の間接的影響について予測的である。例えば、SR−BIレセプターへのコレステロール−HDL結合の阻害は、細胞にりょうコレステロールの取り込みの減少をもたらし、従って、そのSR−BIレセプターを発現する細胞によるコレステロール輸送を阻害する。細胞へのコレステロール−HDL結合を増加すると、血流からの脂質除去が増加し、それにより、血流中の脂質沈着が減少する。コレステロールのマクロファージ取り込みを増強するために刺激因子を使用し、それによりアテローム性動脈硬化症を処置する研究が、M−CSFを使用して実行された(Schaubら、1994、Arterioscler.Thromb.14(1)、70〜76;Inabaら、1993、J.Clin.Invest.92(2)750〜757)。
【0014】
以下のアッセイが、SR−BI発現、SR−BI濃度、またはコレステロール輸送を変化させるための方法において有効な化合物についてスクリーニングするために使用され得る。
【0015】
(SR−BI結合またはSR−BI発現の変化についてのアッセイ)
マウス組織のノーザンブロット分析は、SR−BIが、副腎、卵巣、肝臓、精巣、および脂肪において最も発現されること、およびSR−BIが、他のいくつかの組織においてはより低レベルで存在することを、示す。SR−BI mRNAの発現は、3T3−L1細胞から脂肪細胞への分化の際に誘導される。SR−BIおよびCD36の両方が、アセチル化LDLについての高い親和性結合を示し、見かけの解離定数は、約5μgタンパク質/mlの範囲にある。競合アッセイにより決定されるCD36およびSR−BIのリガンド結合特異性は、類似するが、同一ではない。両方とも、改変型タンパク質(アセチル化LDL、メチル化BSA)に結合するが、クラスAレセプターのリガンドである広範囲の他のポリアニオン(例えば、フコイジン、ポリイノシン酸、ポリグアノシン酸)には結合しない。SR−BIは、HDLの細胞分解を付随しないHDLの高親和性かつ飽和可能な結合を示す。HDLは、CD36に対するAcLDLの結合を阻害する。これは、SR−BIと同様に、CD36が、HDLに結合することを示唆する。ネイティブLDL(これは、クラスAレセプターまたはCD36のいずれかに対するアセチル化LDLの結合について競合しないn)は、SR−BIへの結合について競合する。
【0016】
125I−AcLDLの結合、取り込み、および分解のアッセイ)
37℃におけるスカベンジャーレセプター活性は、Krieger、Cell 33、413〜422、1983;およびFreemanら(1991)Proc Natl Acad Sci USA.1991 Jun 1;99(11)493〜5により記載されるような、リガンドの結合、取り込み、および分解のアッセイによって、測定される。結合についての値および取り込みについての値は、合わされ、そして5時間のインキュベーション後に観察される結合+取り込みとして提示され、そして、細胞タンパク質1mg当たりの5時間当たりの125I−AcLDLタンパク質のngとして、表される。分解活性は、細胞タンパク質1mg当たりの5時間に分解された125I−AcLDLのngとして表される。特定の高親和性値は、過剰な非標識競合リガンドの存在下(単回測定)で得られた結果と、その非存在下(二連測定)で得られた結果との間の差を示す。細胞表面での4℃での結合は、示されるような方法Aまたは方法Bのいずれかを使用してアッセイされる。方法Aにおいて、細胞は、氷上で15分間事前冷却され、10%(v/v)ウシ胎仔血清を補充して75〜200μg/mlの非標識M−BSAを含むかまたは含まない氷冷した培地B中で125I−AcLDLを再供給され、振盪機にて4℃で2時間インキュベートされる。その後、細胞は、2mg/ml BSAを含むTris洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl、0.15M NaCl,pH7.4)で迅速に3回洗浄され、その後、BSAを含まないTris洗浄緩衝液を用いる5分間の洗浄を2回、迅速な洗浄を2回行われる。これらの細胞は、振盪機において、室温で20分間、1mlの0.1N NaOH中で可溶化され、タンパク質測定用に30μlが取り出され、残りにおける放射能が、LKBγカウンターを使用して測定される。方法は、細胞が45分間事前冷却され、培地が10mM HEPESを含みかつ5%(v/v)ヒトリポタンパク質欠損血清(ウシ胎仔血清ではなく)を含み、硫酸デキストランを用いる処理により放出される細胞関連放射能がKrieger(1993)Cell 33、413〜422;Freemanら(1991)Proc Natl AcadSci USA.1991 Jun 1;88(11):4931〜5により記載されるように測定されるという点が、方法Aと異なる。
【0017】
(ノーザンブロット分析)
Baldiniら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 89,5049〜5052により記載されるように、種々のマウス組織からか、または脂肪細胞への分化を開始した0日間後、2日間後、4日間後、6日間後、または8日間後に、3T3−L1細胞から、調製した0.5μgのポリ(A)+RNAが、ホルムアルデヒド/アガロースゲル(1.0%)上で分画され、その後、BiotransTMナイロン膜上にブロットされ固定される。このブロットに、32P標識(2×10dpm/ml、ランダムプライム標識システム)されたプローブを用いてハイブリダイズされる。42℃および50℃それぞれにおけるハイブリダイゼーション条件および洗浄条件は、Charronら、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86、2535〜2539により記載されるように実施される。SR−BI mRNA分析のためのプローブは、そのcDNAコード領域からの0.6kb BamHIフラグメントであった。マウスサイトゾルhsp70遺伝子のコード領域(HuntおよびCalderwood、1990、Gene 87、199〜204)が、等しいmRNAローディングについてのコントロールプローブとして使用される。
【0018】
組織におけるSR−BIタンパク質は、SR−BIに対するポリクローナル抗体を用いてブロッティングすることによって検出される。
【0019】
(HDL結合研究)
SR−BIおよびCD36に対する、HDLおよびVLDLの結合が、LDLおよび改変型LDLについて記載されるように実行される。
【0020】
SR−BIに結合しているHDLが分解または再利用されるか否か、およびHDLに結合している脂質が細胞中に輸送されるか否かを決定するために実行される研究は単一濃度(10μgタンパク質/ml)でトランスフェクト細胞または非トランスフェクト細胞の培養物に添加される、蛍光脂質標識HDL、H−コレステリルエステル標識HDLおよび125I−HDLを使用して実施される。上記細胞に結合したHDLが、経時的に測定される。定常状態には、約30分間〜1時間で達する。蛍光リガンドであるDiIまたは3H−コレステロールエステルが、細胞による脂質(例えば、コレステロールまたはコレステロールエステル)取り込みについてのマーカーとして使用される。漸増濃度のDiIは、脂質が、HDLからレセプターへと輸送され、その後、細胞によりインターナライズされることを示す。その後、DiI欠如HDLが、放出され、別のHDL分子により置換される。
【0021】
(SR−BIへのHDL結合)
競合結合研究は、HDLおよびVLDL(400μg/ml)が、SR−BIに対する125I−AcLDLの結合を競合的に阻害することを示す。SR−BIを発現する125I−HDLの直接的結合もまた、測定される。
【0022】
(SR−BIの組織分布)
SR−BIの生理学的機能を探索するために、SR−BIの組織分布が、マウス組織(コントロール動物およびエストロゲン処理動物の両方において)において、以下の実施例に記載されるようにして、測定された。各レーンに、種々のマウス組織(腎臓、肝臓、副腎、卵巣、脳、精巣、脂肪、横隔膜、心臓、肺、脾臓、または他の組織)から調製された0.5μgのポリ(A)+RNAがローディングされる、そのブロットに、SR−BIのコード領域の750塩基対フラグメントを用いてハイブリダイズされる。SR−BI mRNAは、副腎、卵巣、および肝臓において最も高度に発現され、供給源に依存して脂肪において中程度または高度に発現され、そして他の組織においてより低レベルで発現される。SR−BIの細胞質領域に対するポリクローナル抗体を使用するブロットは、非常に高レベルのタンパク質が、マウスの肝臓、副腎組織および卵巣において存在するが、非常にわずかまたは検出不能なレベルでしか、白色脂肪および褐色脂肪、筋肉、または種々の他の組織において存在しないことを示す。ラット組織におけるバンドは、約82kDにて存在した。マウス組織において、肝臓およびステロイド産生組織において観察される92kD形態は、SR−BIでトランスフェクトした培養細胞において観察されるのと同じサイズである。
【0023】
有用な活性について化合物を試験するためのアッセイは、このレセプタータンパク質(好ましくは、上記の細胞のような、トランスフェクト細胞の表面上に発現される)との相互作用のみに基づき得るが、その指標がリポタンパク質の結合の阻害または増加である場合には、溶液中のタンパク質または不活性基材上に固定されたタンパク質もまた、利用され得る。
【0024】
あるいは、上記アッセイは、上記レセプタータンパク質をコードする遺伝子配列(好ましくは、上記レセプタータンパク質の発現を指示する調節配列)との相互作用に基づき得る。例えば、上記調節配列および/または上記タンパク質コード配列に結合する、アンチセンスが、標準的オリゴヌクレオチド合成化学を使用して合成され得る。このアンチセンスは、標準的方法(リポソームもしくはミクロスフェア中へのカプセル化;分解に対して抵抗性の改変型ヌクレオチドまたはエンドヌクレアーゼに対する抵抗性を増加する基(たとえば、ホスホロチオエートおよびメチル化)の導入)を使用して、薬学的用途のために安定化され得、その後、上記レセプターを発現するトランスフェクト細胞または天然に存在する細胞においてまず、その後、実験室動物においてインビボで、レセプター活性の変化についてまずスクリーニングされ得る。代表的には、上記アンチセンスは、発現を阻害する。しかし、合成を「オフにする」配列をブロックする配列もまた、標的とされ得る。
【0025】
(II.SR−BIコレステロール輸送の調節方法)
HDLレセプターであるSR−BIは、HDLの構造および代謝の制御において重要な役割を果たす(Actonら(1996)、Science 271、518〜20;Krieger,M.(1999)Annu Rev Biochem 68、523〜58)。マウスにおける研究は、SR−BI発現の変化が、いくつかの生理学的系(胆コレステロール分泌、雌不妊症、赤血球発生、アテローム性動脈硬化症、および冠状心疾患の発症を含む)に大いに影響を与え得ることを示した(Trigattiら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96、9322〜7;Kozrsckyら(2000)Arterio.Thromb.Vasc.Biol.20、721〜7;Araiら(1999)J.Biol.Chem.274、2366〜71;Holmら(2002)Blood 99、1817〜24;Miettinenら(2001)J.Clin.Invest.108,1717〜22;Uedaら(2000)J.Biol.Chem.275、20368〜73;Kozarskyら(1997)Nature 387、414〜7;Braunら(2002)Cir.Res.90、270〜276;Mardonesら(2001)J.Lipid Res.42、170〜180))。SR−BIは、血漿HDLからのコレステリルエステルおよび他の脂質の選択的細胞取り込みを媒介することによって、HDL代謝を制御する。選択的取り込みの間に(Glassら(1983)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 80、5435〜9;Glassら(1985)J.Biol.Chem.260,744〜50;Steinら(1983)Biochimica etBiophysica Acta 752、98〜105)、HDLは、SR−BIに結合し、その粒子コアにあるその脂質(主に、中性脂質(例えば、コレステリルエステル)は、細胞へと輸送される。脂質が欠如した粒子は、その後、細胞外空間へと戻る。SR−BI媒介性選択的脂質取り込みとその後のこれらの脂質の細胞内輸送の機構は、探索され始めたばかりに過ぎない(Krieger 1999;Kriger,M.(2001)J Clin Inevst 108、793〜7;Uittenbogarrdら(2002)J.Biol.Chem.277,4925〜4931)が、この機構は、低密度リポタンパク質(LDL)レセプターによってLDLから細胞へとコレステロールエステルを送達するために使用されるクラスリンコートされた小窩(pit)および小胞を介するレセプター媒介性エンドサイトーシス経路(Brown,M.S.およびGoldstein,J.L.(1986)Science 232、34〜47)とは、明らかに基本的に異なる。SR−BIはまた、細胞からHDLへとコレステロール流出を媒介し得るTemelら(2002)J Biol Chem 8、8)。
【0026】
SR−BIは、HDL脂質代謝およびコレステロール輸送において重要な役割を果たすことが、現在示されている。SR−BIは、ステロイド産生組織および肝臓へのコレステロール送達を担うようであり、実際、HDL粒子から肝臓細胞を通して胆カニキュリ(canniculi)へとコレステロールを輸送し、ここで、コレステロールは腸へと通り抜ける。データは、SR−BIはまた、腸粘膜においても発現されることを示す。コレステロール取り込みが増加され得る細胞においてSR−BIの発現を増加して、HDLがコレステロールを貯蔵細胞(例えば、泡沫細胞(ここで、HDLは、アテローム性動脈硬化症において一定の役割を果たし得る)から取り出すための手段として自由に役立たせることは、有用である。
【0027】
レセプタータンパク質結合を変化させる化合物は、好ましくは、薬学的に受容可能なビヒクル中で投与される。適切な薬学的ビヒクルは、当業者にとって公知である。非経口投与のために、上記化合物は、滅菌水、リン酸緩衝化生理食塩水、または生理食塩水中に、通常は溶解または懸濁される。経腸投与のために、上記化合物は、錠剤、液体、またはカプセルの形態で、不活性キャリア中に組み込まれる。適切なキャリアは、デンプンであっても、糖であってもよく、これは、潤滑剤、矯味矯臭剤、結合剤、および同じ性質の他の物質を含み得る。上記化合物はまた、溶液、クリーム、ゲル、またはポリマー性物質(例えば、PluronicTM、BASF)の局所適用によって、局所投与され得る。上記化合物はまた、徐放または遅延放出のために処方され得る。
【0028】
あるいは、上記化合物は、リポソームまたはミクロスフェア(または微粒子)中で投与され得る。患者に投与されるリポソームおよびミクロスフェアを調製するための方法は、当業者にとって公知である。米国特許第4,789,734号は、リポソーム中に生物学的物質をカプセル化するための方法を記載する。本質的には、上記物質は、水溶液中に溶解され、適切なリン脂質および脂質が(必要な場合には、界面活性剤とともに)添加され、必要な場合には、上記物質は、透析または超音波処理され得る。公知の方法の概説は、G.Gregoriadis,第14章、「Liposomes」Drug Carriers in Biology and Medicine,pp.287〜341(Academic Press,1979)。ポリマーからかまたはタンパク質から形成されるミクロスフェアは、当業者にとって周知であり、胃腸管を通って血流中に直接通るために調整され得る。あるいは、上記化合物は、一定期間(数日間〜数ヶ月間)にわたる徐放のために移植されたミクロスフェア中またはミクロスフェア複合体に組み込まれ得る。例えば、米国特許第4,906,474号、同第4,925,673号および同第3,625,214号を参照のこと。
【0029】
本発明は、以下の非限定的実施例を参照することによって、さらに理解される。
【実施例】
【0030】
(実施例1:HDLレセプターであるSR−BIにより媒介される脂質の選択的輸送の化学的インヒビターの同定)
(略語)
HDL 高密度リポタンパク質
mSR−BI マウススカベンジャーレセプター(クラスB、I型)
LDL 低密度リポタンパク質
BLT 脂質輸送をブロックする
DiI 1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニンパークロレート
CE コレステリルエーテル
DMSO ジメチルスルホキシド
PBS リン酸緩衝化生理食塩水
EGF 上皮増殖因子
VSV−G 水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質
EGFP 増強型緑色蛍光タンパク質
IC 阻害濃度
EC 有効濃度
ACTH 副腎皮質刺激ホルモン
FC 遊離コレステロール。
【0031】
SR−BI媒介性脂質輸送の強力な低分子インヒビターを同定するための化学物質ライブラリーのハイスループットスクリーニング。脂質輸送をブロックする(lock ipid ransport)(BLT−1は、MIT9952−53に対応する;BLT−2は、MIT9952−61に対応する;BLT−3は、MIT9952−19似対応する;BLT−4は、MIT9952−29に対する;BLT−5は、MIT9952−6に対応する)、ならびに培養細胞におけるSR−BI活性に対するそれらの影響を試験した。5つすべてが、HDLからのSR−BI媒介性選択的脂質取り込み、およびHDLへの細胞コレステロールの流出を阻害した。これらのうちの1つであるBLT−1は、特に強力であり、低ナノモル濃度の範囲において、脂質輸送を阻害した。予期せぬことに、5つすべてのBLTは、SR−BIへのHDL結合を、その結合親和性を増加することによって、増強した。
【0032】
(方法)
(リポタンパク質および細胞)
ヒトHDLを、単離し、125I(125I−HDL)、1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’、3’−テトラメチルインドカルボシアニンパークロレート(DiI,Molecular Probes;DiI−HDL)または[H]コレステリルオレイルエーテル[H]CE、[H]CE−HDL)のいずれかで標識した(Guら(1998)J.Biol.Chem.273,26338〜48;Guら(2000)J.Biol.Chem.275,29993〜30001;Actonら(1994)J.Biol.Chem.269,21003〜9;Pitasら(1981)Arteriosclerosis 1、177〜85)。低レベルの内因性SR−BIを発現するLDLレセプター欠損チャイニーズハムスター卵巣細胞、lDlA−7細胞(Kingsleyら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81、5454〜8)、高レベルのマウスSR−BIを発現するように安定にトランスフェクトされたIdIA−7細胞(lDlA[mSR−BI])(Actonら、1996)、ACTHを用いて誘導した後に高レベルのSR−BIを発現するY1−BS1マウス副腎皮質細胞(Rigottiら(1996)J.Biol.Chem.271,33545〜9)、サル腎臓BS−C1細胞(Kapoorら(2000)Journal of Cell Biology 150、975〜88)およびHeLa細胞(Temelら(2002)J Biol Chem 8、8)を、以前に記載されたように維持した。
【0033】
(ハイスループットスクリーニング)
0日目に、lDlA[mSR−BI]細胞を、底が透明で壁が黒い384ウェル黒色アッセイプレート(Costar)中に、培地A(2mM L−グルタミン酸、50単位/mlのペニシリン/50μg/mlストレプトマイシン、および0.25mg/mlのG418を補充した、Ham’s F12)に、10%ウシ胎仔血清を補充したもの(培地B)50μl中にて15,000細胞/ウェルでプレートした。1日目に、細胞を、培地C(培地Aに、1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)および25mM HEPES、pH7.4を含むがG418は含まない)で1回洗浄し、40μlの培地Cを再供給した。100% DMSO中に溶解した化合物(DiverSet E,Chembridege Corp.karano16,320)を、上記ウェルに個々にロボットにより「ピン(pin)」で移し(40nl)(http://iccb.med.harvard.edu)、名目上の濃度10μM(0.01% DMSO)を得た。37℃において1時間のインキュベーションの後、20μlの培地C中のDiI−HDL(最終濃度10μgタンパク質/ml)を、添加した。2時間後、蛍光を、室温にて、Analystプレートリーダー(ローダミンB二色性フィルター、発光525nmおよび励起580nm;LJL Biosystems)を使用して、インキュベーション培地を除去する前(自己蛍光および消光について試験するため)および培地除去して80μlのPBS/1mM MgCl2/0.1mM CaCl2で4回洗浄した後(DiIの細胞取り込みを測定するため)の両方で測定した。すべての化合物を、異なるプレート上にて二連でサンプリングした。各スクリーニングは、40倍過剰の非標識HDLの存在下および/または非存在下で、lDlA−7細胞およびIdA[mSR−BI]細胞を含んだが、コントロールとして化合物は添加しなかった。
【0034】
(アッセイ)
上記アッセイのために、すべての培地および緩衝液は、化合物の可溶性を維持するために、0.5% DMSOおよび0.5%ウシ血清アルブミンを含んだ。細胞を、BLTとともに1時間(またはトランスフェリン、EGFおよびコレラ毒素の取り込み実験のためには2.5時間)、プレインキュベートした。すべての実験は、37℃にて実施した。BLTおよびその影響の詳細な特徴付けを、LC−MSによってその正体および純度を確認した化合物を用いて実施した。
【0035】
((i)HDLからの脂質取り込みアッセイ、HDLへのコレステロール流出アッセイ、およびHDL結合アッセイ)
DiI−HDLおよび[H]CE−HDLからの脂質取り込みアッセイ、標識細胞からの[H]コレステロールの流出アッセイ、および125I−HDL結合を、Actonら、Science(1996)Jan 26;271(5248):518〜20;Guら、J Biol Chem.(2000)Sep 29;275(39):29993〜30001;およびJiら、J.Biol.Chem.(1997)272、20982〜5により記載されるとおりに実施した。いくつかの実験において、値を正規化して、コントロールの100%が、化合物の非存在下での活性を示し、0%が、40倍過剰な非標識HDLの存在下で決定した活性、またはY1−BS1細胞についてはLLB−1処断抗体の1:500希釈物の存在下で決定した活性を示すようにした(Guら(2000)、Karen Kzarskyからの寛大な贈り物)。細胞結合[H]コレステリルエーテルの量は、125I−HDL結合の相対量と[H]CE取り込みの相対量との直接比較を可能にする[H]CE−HDLタンパク質の等価量(ng)として表される。
【0036】
細胞からのHDL解離速度を、その細胞を125I−HDL(10μg/タンパク質、2時間、37℃)とともに、かつBLTとともにかまたはBLTを伴わずに、インキュベーションすることによって、測定した。その後、培地を、同じ培地(125I−HDLを、40倍過剰な非標識HDLで置換した)または同じ培地(40倍過剰な非標識HDLを、標識インキュベーション培地に添加した)のいずれかで置換した。その後、細胞結合型125I−HDLを、時間の関数として決定した。上記2つの方法は、同様の結果を生じた。
【0037】
((ii)細胞内輸送および細胞骨格組織化の蛍光顕微鏡分析)
HeLa細胞(Spiroら(1996)Mol Biol Cell 7、355〜67)によるAlexa−594標識トランスフェリンもしくはFITC標識上皮増殖因子(EGF、Molecular Probes)のレセプター媒介性エンドサイトーシス、およびBSC−1細胞によるAlexa−594標識ホロコレラ毒素(Wayer Lencer博士、Childrens Hospital,HMSからの親切な贈り物)を、蛍光顕微鏡によって検出した。水疱性口内炎ウイルスの温度感受性糖タンパク質(VSVGts045)がカルボキシル末端でEGFPに融合したもの(VSVGts045−EGFP)が、40℃から32℃へと2時間シフトした後に、小胞体から形質膜への細胞内輸送を、蛍光顕微鏡によって測定した。ローダミン標識ファロイジンを使用するアクチンの分布に対する上記化合物の影響、およびFITC標識DM1αモノクローナル抗体(Sigma Co.)を使用するチューブリンの分布に対する上記化合物の影響を、lDlA[mSR−BI]細胞において、Rigottiら(1996)J.Biol.Chem.271,33545〜9により記載される通りに、空中63×対物レンズ(Nikon)を使用する蛍光顕微鏡によって、測定した。
【0038】
((iii)SR−BI細胞表面発現のフローサイトメトリー分析)
細胞を、ICCE95濃度のBLTとともにかまたはそれを伴わずに、3時間(培地C)インキュベートし、2mM EDTAおよび化合物および含むPBSを用いて収集し、非固定細胞におけるSR−BI表面発現レベルを、KKB−1抗体(Guら(1998)J.Biol.Chem.273,26338〜48)を用いるフローサイメトリーによって測定した。
【0039】
(結果)
(SR−BI媒介性選択的脂質取り込みのインヒビターについてのハイスループットスクリーニング)
DiI標識HDL(DiI−HDL)からの蛍光二色性色素DiIの細胞取り込みおよび細胞蓄積は、HDLにおけるコレステリルエステルのSR−BI依存性選択的取り込みの信頼できる代理である。SR−BI媒介性選択的脂質取り込みの低分子インヒビターを同定するために、Chembridge library collectionのDiverSet Eを示す16,320個の化合物を、DiI−HDLからのDiIの細胞取り込みをブロックするそれらの化合物の能力についてスクリーニングした。上記化合物を、高レベルでmSR−BIを発現するlDlA[mSR−BI]を使用して、384ウェルプレートアッセイにおいて、名目濃度10μMにて試験した。
【0040】
図1は、コントロール(化合物なし、過剰な非標識HDLの添加、または非トランスフェクトlDlA−7細胞の使用)とともに、代表的アッセイプレートの結果を示す。この図は、第1回のハイスループットスクリーニングの間の1つの384ウェルプレートから得た蛍光読み取りの例である。SR−BI発現lDlA[mSR−BI]細胞を、384ウェルプレート中にプレートし、DiI−HDL(10μgタンパク質/ml)からのDiIの取り込みに対する約10μM化合物の影響を、高速蛍光プレートリーダーを使用して測定した。カラム1〜20は、1つのプレートからの1つのカラム(別々の色の記号)当たり16個の独立したウェルからの結果(蛍光(任意単位))を示し、合計320個の化合物を示す。化合物を用いないコントロールは、40倍過剰な非標識HDLの非存在下もしくは存在下でlDlA[mSR−BI]細胞を含むウェル、またはlDlA−7細胞(非常に低いSR−BI発現)を含むウェルのいずれかである。BLT−1と名づけた阻害化合物を含むウェル、およびDiI−HDL蛍光を消光する化合物(Q)を含むウェルが、示される。
【0041】
DiI−HDLの固有の蛍光を消光する化合物(「Q」)または増強する化合物は、さらには試験しなかった。最初の回のスクリーニングにおいてDiI取り込みを再現的にブロックした約200個の化合物を、再試験した。これらが、表Iに示される。
【0042】
(表I:SR−BIインヒビターの構造)
【0043】
【表1−1】

【0044】
【表1−2】

【0045】
【表1−3】

【0046】
【表1−4】

【0047】
【表1−5】

【0048】
【表1−6】

【0049】
【表1−7】

【0050】
【表1−8】

【0051】
【表1−9】

【0052】
【表1−10】

【0053】
【表1−11】

μMまたはより低い範囲のICDiI50を有する最も有効な化合物のうちの5つ(図2A)を、BLT1〜BLT5と名づけて、さらに特徴付けた。著しいことに、これらのうちの最も強力なBLT−1およびBLT−2は、nM範囲にて阻害し、これらは、構造的に関連する(表II)。DiI取り込みの阻害は、新規なタンパク質合成を必要としなかった。なぜなら、100μg/mlのシクロヘキシミドで30分間細胞を事前処理すると、その阻害効果を消滅しなかったからである。最後に、上記BLTのうちのいずれも、最少量のSR−BIしか発現しない非トランスフェクldlA−7細胞によるDiIまたは[H]CEの低いバックグラウンドレベルの取り込みを、実質的に阻害しなかった。
【0054】
ldlA[mSR−BI]細胞により[H]CE−HDLからのより生理的脂質である[H]コレステリルエーテル([H]CE)の取り込みの阻害についてのICCE50は、DiI取り込みについてのICCE50と同様であった(図2Bおよび表II)。[H]CE取り込みの阻害は、可逆的であった(化合物との1時間のインキュベーション、その後3〜6時間の洗浄期間)。さらに、上記化合物はまた、高レベルのSR−BIを発現するY1−BS1副腎皮質細胞(Rigottiら(1996)J.Biol.Chem.271,33545〜9)による[H]CEの取り込みをブロックした(表II)。このことは、上記化合物による阻害効果は、細胞型特異的ではないことを示す。上記細胞または標識HDLを上記化合物とともにプレインキュベートする実験は、上記HDLよりも上記細胞が、上記化合物の標的であることを示した。
【0055】
(表2:SR−BI結合についての試験の結果)
【0056】
【表2−1】

【0057】
【表2−2】

【0058】
【表2−3】

【0059】
【表2−4】

【0060】
【表2−5】

【0061】
【表2−6】

【0062】
【表2−7】

【0063】
【表2−8】

【0064】
【表2−9】

【0065】
【表2−10】

【0066】
【表2−11】

【0067】
【表2−12】

(BLTにより選択的脂質取り込みの阻害は、特異的である)
BLT阻害の特異性を、[H]CE取り込みを95%阻害する濃度(ICCE95)でいくつかの他の細胞特性に対するそれらのBLTの影響を試験することによって、試験した(図3)。上記BLTのうちのいずれも、アクチンネットワークおよびチューブリンネットワークの完全性を破壊しなかった。これらはまた、蛍光標識したエンドサイトーシスレセプターリガンドであるトランスフェリンおよび上皮増殖因子の取り込みを阻害することも、それらの細胞内分布を変化させることもなかった。上記BLTはまた、細胞表面から、部分的にコレステロールリッチな脂質漂流物(raft)およびスフィンゴ脂質リッチな脂質漂流物(raft)に依存すると考えられる経路(Lencerら(1999)Biochim.Biophys.Acta 1450、177〜190)を通る、核周囲領域への、蛍光標識コレラ毒素の取り込みを阻害しなかった。さらに、BLTは、増強型緑色蛍光タンパク質−標識した内在性ウイルス膜糖タンパク質であるVSVG(VSVGts045−EGFP)の輸送の分析によって評価した場合、その分泌経路を妨害しなかった。従って、BLTは、クラスリン依存性細胞内膜輸送およびクラスリン非依存性細胞内膜輸送においても、細胞骨格の組織化においても、一般的欠損を誘導せず、これらの基準によって、SR−BI依存性脂質取り込みの特異的インヒビターである。
【0068】
(BLTは、細胞からHDLへのSR−BI媒介性コレステロール流出を阻害する)
HDLからの選択的脂質取り込みを媒介することに加えて、SR−BIは、細胞からHDL粒子への非エステル化コレステロールの流出を促進し得る(Jianら(1998)J Biol Chem 273、5599〜606、Jiら(1997)J.Biol.Chem.272,20982〜5)。上記BLTがこのSR−BI媒介性脂質輸送経路を阻害し得るか否かを決定するために、細胞を、[H]コレステロールで標識し、非標識HDLへのその流出を、上記BLTの存在下または非存在下で測定した。(図2C、表II)。細胞を、50μM BLT−1(MIT9952−53)の非存在下(上図)または存在下(下図)で3時間インキュベートし、エピ蛍光顕微鏡を使用して、蛍光標識したトランスフェリン(A、B;HeLa細胞)およびEGF(C,D;HeLa細胞)のクラスリン依存性エンドサイトーシス;蛍光標識したコレラ毒素のクラスリン非依存性エンドサイトーシス(E,F;BSC−1細胞)、ならびにERから細胞表面への温度感受性蛍光膜タンパク質VSVGts045−EGFPの輸送(G、H;BSC−1細胞)といった、細胞活性をモニターした。さらに、アクチン細胞骨格の細胞内分布(ローダミン標識ファロイジンを用いて可視化した)およびチューブリンネットワークの細胞内分布(γ−チューブリンに特異的な蛍光標識抗体を用いて可視化。K,L;BSC−1細胞)を測定した。BLT−1(MIT9952−53)および他のBLT(示さず)は、これらの細胞特性または細胞活性のいずれに対しても、影響を有さなかった。
【0069】
表IIIにおいて示されるように、すべてのBLTは、SR−BI媒介性コレステロール流出を、[3H]CE取り込みについての相対能力と類似する相対能力(ICFC50)で阻害した。しかし、BLT−3(MIT9952−19)、BLT−4(MMIT9952−29)およびBLT−5(MIT9952−6)の場合には、流出のICFC50は、取り込みについてよりも高かった。このことは、上記BLTは、取り込み機構と流出機構との間に差があり得ることを明らかにし得ることを示唆する。上記BLTは、SR−BI非依存性流出(特異的抗SR−BI遮断抗体KKB−1によって阻害されなかった)(Kapoorら(2000)Journal of Cell Biology 150、975〜88)に対してほとんど影響を有さなかった。比較的低レベルの内因性SR−BIを発現する非トランスフェクトldlA−7細胞において、全コレステロール流出およびSR−BI依存性(例えば、KKB−1により阻害可能な)コレステロール流出は、ldlA[mSR−BI]細胞においてよりもかなり低かった(約5〜10分の1)。上記BLTは、ldlA−7細胞における低いSR−BI依存性コレステロール流出を阻害可能であったが、同様に低いSR−BI非依存性流出に対しては、何ら阻害効果を有さなかった。
【0070】
(表III)
【0071】
【表3】

(BLTは、SR−BIの表面発現を変化させない)
BLTがその細胞表面発現を減少することによりSR−BI機能を阻害したか否かを決定するために、本発明者らは、KKB−1抗mSR−BI抗体およびフローサイトメトリーを使用して、表面発現を測定した。図4は、ICCE95(BLT1(MIT9952−53)およびBLT2(MIT9952−61)については1μM、BLT3〜5(MIT9952−19、MIT9952−29、およびMIT9952−6)については50μMに対応する)での3時間のインキュベーションの後に、BLTは、ldlA[mSR−BI]細胞の表面上でのmSR−BIの発現を変化しなかったことを示す。
【0072】
(BLTは、SR−BIに対するHDLの結合を増強する)
上記BLTは、SR−BIに対するHDLの結合を阻害することにより機能することが、まず予期された。しかし、細胞を、亜飽和濃度の[H]CE−HDLまたは125I標識HDL(125I−HDL)のいずれか(10μgタンパク質/ml)および漸増量の化合物(図5)とともにインキュベートした場合、[H]CE取り込み(実線、記号なし、図2Bからのデータ)の減少および[H]コレステロール流出(破線、図2Cからのデータ)の減少には、対応する125I−HDL結合の増加(実線、四角の記号)が付随した。125I−HDL結合の濃度依存性を、ICCE95濃度でのBLTの存在下または非存在下で測定した(図6および表II)。上記BLTは、結合部位の数(Bmax)を実質的には変化させなかったが、むしろ、HDLについてのSR−BIの親和性の小さいが有意な増加(より低い見かけのKd)を誘導した。さらに、上記BLTは、SR−BIからの125I−HDLの解離速度を減少させた(表II)。このことは、上記BLTにより誘導されるより緊密な結合は、少なくとも部分的には、上記解離速度の減少に起因したことを示す。
【0073】
(考察)
表Iに示される、SR−BI媒介性脂質輸送を変化させる200個の化合物が、インビトロアッセイを使用して同定された。試験の結果が、表IIに示される。BLT−1(MIT9952−53)〜BLT−5(MIT9952−6)は、HDLレセプターであるSR−BIによって媒介される、HDLと細胞との間の脂質輸送を阻害する低分子として同定された。BLTは、HDLコレステリルエーテルの選択的な細胞脂質取り込みおよびHDLへの細胞コレステロールの流出の両方を阻害した。上記BLTの阻害効果は、特異的(例えば、これらは、SR−BI結合を特異的に変化させる)である。なぜなら、これらは、活性SR−BIレセプターの発現を必要とし、かつこれらは、いくつかのクラスリン依存性エンドサイトーシス経路およびクラスリン非依存性エンドサイトーシス経路を妨害せず、その分泌経路も、アクチン細胞骨格ネットワークもチューブリン細胞骨格ネットワークも妨害しなかったからである。顕著なことに、BLTによる脂質輸送の阻害は、増強されたHDL結合親和性(減少した解離速度)を伴った。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1A】図1A〜図1Cは、HDLと細胞との間のSR−BI媒介性脂質輸送の、BLTによる阻害の濃度依存性のグラフである。lDlA[mSR−BI]細胞を、指示した濃度のBLTとともにインキュベートした。(A)DiI−HDLからのDiI取り込み、(B)[H]CE−HDLからの[H]CE取り込み、および(C)細胞からHDLへの[H]コレステロールの流出に対する、BLTの影響が、決定された。コントロール値の100%は、(A)50.6ng HDLタンパク質等価物/ウェル(384ウェルプレート)、および(B)3908ng HDLタンパク質等価物/mg細胞タンパク質であった。(C)において、データは正規化されて、化合物の非存在下での細胞からHDLへと輸送された[H]コレステロールの最大量(合計の55.7%)が、100%に設定された。0%値は、BLTがなく、かつ飽和阻害量の特異的抗SR−BI遮断モノクローナル抗体KKB−1の存在下で、lDlA[mSR−BI]細胞からHDLへと輸送された[H]コレステロールの流出(合計の15%)に対応する。KKBIの非存在下または存在下で測定されたlDlA−7細胞からの[H]コレステロールの流出は、それぞれ、全細胞[H]コレステロールの15%および15%であった。
【図1B】図1A〜図1Cは、HDLと細胞との間のSR−BI媒介性脂質輸送の、BLTによる阻害の濃度依存性のグラフである。lDlA[mSR−BI]細胞を、指示した濃度のBLTとともにインキュベートした。(A)DiI−HDLからのDiI取り込み、(B)[H]CE−HDLからの[H]CE取り込み、および(C)細胞からHDLへの[H]コレステロールの流出に対する、BLTの影響が、決定された。コントロール値の100%は、(A)50.6ng HDLタンパク質等価物/ウェル(384ウェルプレート)、および(B)3908ng HDLタンパク質等価物/mg細胞タンパク質であった。(C)において、データは正規化されて、化合物の非存在下での細胞からHDLへと輸送された[H]コレステロールの最大量(合計の55.7%)が、100%に設定された。0%値は、BLTがなく、かつ飽和阻害量の特異的抗SR−BI遮断モノクローナル抗体KKB−1の存在下で、lDlA[mSR−BI]細胞からHDLへと輸送された[H]コレステロールの流出(合計の15%)に対応する。KKBIの非存在下または存在下で測定されたlDlA−7細胞からの[H]コレステロールの流出は、それぞれ、全細胞[H]コレステロールの15%および15%であった。
【図1C】図1A〜図1Cは、HDLと細胞との間のSR−BI媒介性脂質輸送の、BLTによる阻害の濃度依存性のグラフである。lDlA[mSR−BI]細胞を、指示した濃度のBLTとともにインキュベートした。(A)DiI−HDLからのDiI取り込み、(B)[H]CE−HDLからの[H]CE取り込み、および(C)細胞からHDLへの[H]コレステロールの流出に対する、BLTの影響が、決定された。コントロール値の100%は、(A)50.6ng HDLタンパク質等価物/ウェル(384ウェルプレート)、および(B)3908ng HDLタンパク質等価物/mg細胞タンパク質であった。(C)において、データは正規化されて、化合物の非存在下での細胞からHDLへと輸送された[H]コレステロールの最大量(合計の55.7%)が、100%に設定された。0%値は、BLTがなく、かつ飽和阻害量の特異的抗SR−BI遮断モノクローナル抗体KKB−1の存在下で、lDlA[mSR−BI]細胞からHDLへと輸送された[H]コレステロールの流出(合計の15%)に対応する。KKBIの非存在下または存在下で測定されたlDlA−7細胞からの[H]コレステロールの流出は、それぞれ、全細胞[H]コレステロールの15%および15%であった。
【図2A】図2A〜図2Dは、SR−BIの細胞表面発現のグラフである。lDlA[mSR−BI]細胞およびlDlA−7細胞を、BLT(その対応するICE95濃度)(BLT−1[MIT9952−53]およびBLT−2[MIT9952−61]について、1μM;BLT−3[MIT9952−19];BLT−4[MIT9952−29]およびBLT−5[MIT9952−6]について、50μM)で3時間処理したか、または処理せず、その後、フローサイトメトリーによってSR−BIの表面発現レベルを決定した。図A〜Cは、それぞれ、BLTを用いないlDlA[mSR−BI]細胞についての表面発現、1μM BLT−1(MIT9952−53)で処理したlDlA[mSR−BI]細胞についての表面発現、およびBLTを用いないlDlA−7細胞についての表面発現のヒストグラムを示す。図Dは、5つのすべてのBLTについてのlDlA[mSR−BI]細胞における結果を要約しており、化合物を用いずに決定した値を100%に設定した。nは、独立した測定の数であり、SDは、標準偏差である。
【図2B】図2A〜図2Dは、SR−BIの細胞表面発現のグラフである。lDlA[mSR−BI]細胞およびlDlA−7細胞を、BLT(その対応するICE95濃度)(BLT−1[MIT9952−53]およびBLT−2[MIT9952−61]について、1μM;BLT−3[MIT9952−19];BLT−4[MIT9952−29]およびBLT−5[MIT9952−6]について、50μM)で3時間処理したか、または処理せず、その後、フローサイトメトリーによってSR−BIの表面発現レベルを決定した。図A〜Cは、それぞれ、BLTを用いないlDlA[mSR−BI]細胞についての表面発現、1μM BLT−1(MIT9952−53)で処理したlDlA[mSR−BI]細胞についての表面発現、およびBLTを用いないlDlA−7細胞についての表面発現のヒストグラムを示す。図Dは、5つのすべてのBLTについてのlDlA[mSR−BI]細胞における結果を要約しており、化合物を用いずに決定した値を100%に設定した。nは、独立した測定の数であり、SDは、標準偏差である。
【図2C】図2A〜図2Dは、SR−BIの細胞表面発現のグラフである。lDlA[mSR−BI]細胞およびlDlA−7細胞を、BLT(その対応するICE95濃度)(BLT−1[MIT9952−53]およびBLT−2[MIT9952−61]について、1μM;BLT−3[MIT9952−19];BLT−4[MIT9952−29]およびBLT−5[MIT9952−6]について、50μM)で3時間処理したか、または処理せず、その後、フローサイトメトリーによってSR−BIの表面発現レベルを決定した。図A〜Cは、それぞれ、BLTを用いないlDlA[mSR−BI]細胞についての表面発現、1μM BLT−1(MIT9952−53)で処理したlDlA[mSR−BI]細胞についての表面発現、およびBLTを用いないlDlA−7細胞についての表面発現のヒストグラムを示す。図Dは、5つのすべてのBLTについてのlDlA[mSR−BI]細胞における結果を要約しており、化合物を用いずに決定した値を100%に設定した。nは、独立した測定の数であり、SDは、標準偏差である。
【図2D】図2A〜図2Dは、SR−BIの細胞表面発現のグラフである。lDlA[mSR−BI]細胞およびlDlA−7細胞を、BLT(その対応するICE95濃度)(BLT−1[MIT9952−53]およびBLT−2[MIT9952−61]について、1μM;BLT−3[MIT9952−19];BLT−4[MIT9952−29]およびBLT−5[MIT9952−6]について、50μM)で3時間処理したか、または処理せず、その後、フローサイトメトリーによってSR−BIの表面発現レベルを決定した。図A〜Cは、それぞれ、BLTを用いないlDlA[mSR−BI]細胞についての表面発現、1μM BLT−1(MIT9952−53)で処理したlDlA[mSR−BI]細胞についての表面発現、およびBLTを用いないlDlA−7細胞についての表面発現のヒストグラムを示す。図Dは、5つのすべてのBLTについてのlDlA[mSR−BI]細胞における結果を要約しており、化合物を用いずに決定した値を100%に設定した。nは、独立した測定の数であり、SDは、標準偏差である。
【図3A】図3A〜図3Eは、HDLからのSR−BI媒介性コレステロールエーテル取り込み、HDLへの細胞コレステロール流出、およびHDL結合に対する、BLTの影響を示す。[H]CE−HDLからの[3H]CEのSR−BI媒介性取り込み(実線、記号なし)、細胞からHDLへの[H]コレステロールの流出(破線)、または細胞への125I−HDLの結合(実線、黒塗り記号)に対する、示した濃度のBLTの影響(図A〜E)を、lDlA[mSR−BI]細胞を使用して決定した。比較を単純にするために、観察された最小の[H]CE取り込み値および[H]コレステロール流出値(図2から)を0%として、BLTの非存在下での値を100%として、比較した。BLTの非存在下での125I−HDL結合についての100%コントロール値は、403ng HDLタンパク質/mg細胞タンパク質であった。
【図3B】図3A〜図3Eは、HDLからのSR−BI媒介性コレステロールエーテル取り込み、HDLへの細胞コレステロール流出、およびHDL結合に対する、BLTの影響を示す。[H]CE−HDLからの[3H]CEのSR−BI媒介性取り込み(実線、記号なし)、細胞からHDLへの[H]コレステロールの流出(破線)、または細胞への125I−HDLの結合(実線、黒塗り記号)に対する、示した濃度のBLTの影響(図A〜E)を、lDlA[mSR−BI]細胞を使用して決定した。比較を単純にするために、観察された最小の[H]CE取り込み値および[H]コレステロール流出値(図2から)を0%として、BLTの非存在下での値を100%として、比較した。BLTの非存在下での125I−HDL結合についての100%コントロール値は、403ng HDLタンパク質/mg細胞タンパク質であった。
【図3C】図3A〜図3Eは、HDLからのSR−BI媒介性コレステロールエーテル取り込み、HDLへの細胞コレステロール流出、およびHDL結合に対する、BLTの影響を示す。[H]CE−HDLからの[3H]CEのSR−BI媒介性取り込み(実線、記号なし)、細胞からHDLへの[H]コレステロールの流出(破線)、または細胞への125I−HDLの結合(実線、黒塗り記号)に対する、示した濃度のBLTの影響(図A〜E)を、lDlA[mSR−BI]細胞を使用して決定した。比較を単純にするために、観察された最小の[H]CE取り込み値および[H]コレステロール流出値(図2から)を0%として、BLTの非存在下での値を100%として、比較した。BLTの非存在下での125I−HDL結合についての100%コントロール値は、403ng HDLタンパク質/mg細胞タンパク質であった。
【図3D】図3A〜図3Eは、HDLからのSR−BI媒介性コレステロールエーテル取り込み、HDLへの細胞コレステロール流出、およびHDL結合に対する、BLTの影響を示す。[H]CE−HDLからの[3H]CEのSR−BI媒介性取り込み(実線、記号なし)、細胞からHDLへの[H]コレステロールの流出(破線)、または細胞への125I−HDLの結合(実線、黒塗り記号)に対する、示した濃度のBLTの影響(図A〜E)を、lDlA[mSR−BI]細胞を使用して決定した。比較を単純にするために、観察された最小の[H]CE取り込み値および[H]コレステロール流出値(図2から)を0%として、BLTの非存在下での値を100%として、比較した。BLTの非存在下での125I−HDL結合についての100%コントロール値は、403ng HDLタンパク質/mg細胞タンパク質であった。
【図3E】図3A〜図3Eは、HDLからのSR−BI媒介性コレステロールエーテル取り込み、HDLへの細胞コレステロール流出、およびHDL結合に対する、BLTの影響を示す。[H]CE−HDLからの[3H]CEのSR−BI媒介性取り込み(実線、記号なし)、細胞からHDLへの[H]コレステロールの流出(破線)、または細胞への125I−HDLの結合(実線、黒塗り記号)に対する、示した濃度のBLTの影響(図A〜E)を、lDlA[mSR−BI]細胞を使用して決定した。比較を単純にするために、観察された最小の[H]CE取り込み値および[H]コレステロール流出値(図2から)を0%として、BLTの非存在下での値を100%として、比較した。BLTの非存在下での125I−HDL結合についての100%コントロール値は、403ng HDLタンパク質/mg細胞タンパク質であった。
【図4】図4は、lDlA[mSR−BI]細胞への125I−HDL結合の濃度依存性に対する、BLT−1(MIT9952−53)の影響のグラフである。lDlA[mSR−BI]細胞への125I−HDLの結合を、1μM BLT−1(MIT9952−53;ICCE95)の存在下(青色)または非存在下(黒色)において、示したHDL濃度にて、二連で決定した。各値は、BLT−1(MIT9952−53)の存在下でのlDlA[mSR−BI]細胞に対する、40倍過剰な非標識HDLの疎な時下での125I−HDLの結合について、補正した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置される必要があるヒトまたは動物を処置するために有効な量で、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わされた、SR−BIの結合活性を特異的に変化させる化合物であって、該化合物は、SR−BI結合活性またはSR−BI発現の変化について化合物ライブラリーをスクリーニングすることによって得られる、化合物。
【請求項2】
表Iに示される群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、BLT−1(MIT9952−53)、BLT−2(MIT9952−61)、BLT−3(MIT9952−19)、BLT−4(MIT9952−29)、およびBLT−5(MIT9952−6)からなる群より選択される、化合物。
【請求項4】
細胞内または細胞外へとコレステロール輸送を変化させるための方法であって、SR−BI発現またはSR−BI活性を阻害する工程を包含し、該阻害は、請求項1〜3に記載の組成物を、該阻害を必要とする動物またはヒトに投与することを包含する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記組成物は、HDLに対するSR−BIの結合親和性を増加することによって、HDL結合を増強する、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、前記阻害されたSR−BI結合活性は、SR−BI媒介性脂質輸送をブロックする、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記阻害されたSR−BI結合活性は、SR−BI媒介性の選択的脂質取り込みをブロックする、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記脂質は、HDLコレステリルエーテルである、方法。
【請求項9】
請求項4に記載の方法であって、前記阻害されたSR−BI結合活性は、細胞コレステロールのHDLへの流出をブロックする、方法。
【請求項10】
SR−BI結合活性またはSR−BI発現を変化させる化合物を同定する方法であって、
化合物ライブラリーをスクリーニングする工程
を包含する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記SR−BI発現は、ノーザン分析によって決定される、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記ライブラリーは、化学物質ライブラリーである、方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、前記SR−BI結合活性が、阻害される、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記阻害されたSR−BI結合活性は、SR−BI媒介性脂質輸送をブロックする、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記阻害されたSR−BI結合活性は、SR−BI媒介性の選択的脂質取り込みをブロックする、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記脂質は、HDLコレステリルエーテルである、方法。
【請求項17】
請求項10に記載の方法であって、前記阻害されたSR−BI結合活性は、細胞コレステロールのHDLへの流出をブロックする、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−515274(P2006−515274A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543548(P2004−543548)
【出願日】平成15年10月8日(2003.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/031918
【国際公開番号】WO2004/032716
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【出願人】(503404073)ザ シービーアール インスティテュート フォー バイオメディカル リサーチ, インコーポレイテッド  (2)
【Fターム(参考)】