説明

コレラ毒素のBサブユニットのための発現システム

本発明は、コレラ毒素のBサブユニット(CTB)の収量を改善するための発現システムを提供するものであり、本発現システムは、thyA遺伝子の機能性を欠如するコレラ菌宿主細胞と、機能性thyA遺伝子およびCTB遺伝子を含んでなる発現ベクターとを含んでなり、該CTB遺伝子は、CTB遺伝子が由来する宿主細胞の天然ゲノムにおいてCTB遺伝子の5’および3’末端に直接隣接するフランキング配列を実質的に有さない。本発明は、CTBを製造する方法、および発現システムにおいて発現ベクターとして用いられる単離核酸構築物もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、コレラ毒素のBサブユニット(CTB)を産生するための発現システム、CTBを産生する方法および本発現システムにおいて使用するための発現ベクターとしての単離核酸構築物に関する。
【0002】
コレラ毒素の非毒性Bサブユニット(CTB)は、広範な分野の試験で、コレラによって引き起こされた下痢および腸毒素原性大腸菌(E.coli)によって引き起こされた下痢の両方を予防することが示されてきた有効な経口免疫化剤である(Sanchez and Holmgren 1989 PNAS 86: 481-485)。このことから、CTBはそれ自体、コレラ(V.cholerae)死菌細胞全体と共に、経口コレラワクチンの重要な構成要素となった。さらに、CTBは、他の種々のペプチドまたは炭水化物抗原のための免疫原性担体として、および免疫応答をダウンレギュレートする免疫調節剤として、最近、多くの関心が寄せられている。これらの知見により、CTBの利用に基づくワクチン開発をいくぶん容易にするための大規模製造のために、CTBの収率を増加させる必要性が強調されている。
【0003】
CTB製造のための発現システムの選択は、該蛋白質の蛋白分解安定性、該蛋白質が分泌性かどうか、および最終CTB産物のコスト許容性などの多くの因子に依存する。ワクチン抗原を製造するために通常用いられている主な発現システムには4つある。これらは、細菌、酵母、昆虫および哺乳動物の発現システムである。さらに、遺伝子導入植物発現システムが、サブユニットワクチンの製造および食用植物を介したワクチン送達双方のための植物利用を目的として登場し始めた。例えば、国際公開第99/54452号は、CTBコード配列および自己抗原コード配列を含んでなるキメラ遺伝子構築物、該キメラ遺伝子構築物で形質転換した植物細胞および遺伝子導入植物、ならびにこれらの植物細胞および遺伝子導入植物から食用ワクチンを調製する方法を開示している。
【0004】
細菌の宿主細胞における組換え遺伝子の発現は、たいてい、適切なプロモーターの制御下で対象となる蛋白質の構造遺伝子をコードするエピソームの自己複製エレメント(プラスミドなど)を宿主細菌内に導入することによって達成される。このようなプラスミドは、一般に、特定の抗生物質(アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、テトラサイクリンなど)に対する耐性を付与する蛋白質をコードする選択的マーカー遺伝子の封入によって維持される。次いで、プラスミドは培養培地に適切な抗生物質を添加することにより、宿主内に維持される。
【0005】
大腸菌は、異種蛋白質の産生のために最も一般的に用いられる細菌であるが、大腸菌以外の細菌システムにおける組換え抗原の発現が有利な場合もあり得る。ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、コレラ菌(V.cholerae)およびブレビス菌(Bacillus brevis)は、ワクチン製造を目的とした抗原発現に用いられてきた他の細菌のいくつかの例である。
【0006】
異種蛋白質産生のための、コレラ菌(Vibrio cholerae)宿主細胞を用いた公知の発現システムとしては、限定はしないが、Sanchez and Holmgren, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1989: 86: 481-5に開示されたCTB発現システムが挙げられる。この発現システムの詳細は、米国特許第5268276号、米国特許第5834246号、米国特許第6043057号および欧州特許第0368819号にも開示されている。この発現システムにおいては、コレラ毒素のAサブユニット(CTA)をコードするコレラ菌遺伝子の不在下で、コレラ菌宿主細胞においてコレラ毒素のBサブユニットをコードする遺伝子を発現させることによって、CTBサブユニットが得られる。
【0007】
Lebens et al(1993 Biotech 11; 1574-8)は、CTBを調製するために、Sanchez and Holmgren(1989 上掲)の方法の修正法を記載している。これに関して、組換えCTBは、CT遺伝子を欠如したコレラ菌01の変異株をCTBをコードする多コピー型プラスミドによりトランスフェクトすることによって産生される。用いられるCTBは、記載されたとおり、塩析沈殿法とクロマトグラフィー法の組み合わせにより、培養培地から精製される。
【0008】
Sanchez and Holmgren (1989)(上掲)ならびにLebens et al(1993)(上掲)により実証されているとおり、組換え蛋白質発現のためにコレラ菌宿主細胞などの細菌宿主細胞を使用することは、特定の組換え産物が大量に産生されて培養培地に分泌され、それにより下流の精製操作を助けるという点で、一般的に使用されている原核生物の発現システムよりも有利であることが示されている。コレラ菌宿主細胞からのCTBの効率的分泌は、発現産物が細胞周辺腔に集合することの多い大腸菌細胞の分泌過程とは異なっている(Neill et al 1983 Science. 221: 289-290)。しかしながら、最近、大腸菌宿主細胞からの組換え蛋白質の効率的分泌を考慮する、大腸菌の腸毒素原性株による易熱性腸毒素(LT)分泌の蛋白質分泌経路が確認された(Tauschek et al (2002) PNAS 99: 7066-7071)。
【0009】
Sanchez and Holmgren (1989)(上掲)ならびにLebens et al(上掲)において開示された発現システムは、許容できるレベルでCTBを産生すると思われるが、これらの発現システムは、対象となる遺伝子を含むプラスミドの選択および維持による最適産生を維持するために、培養培地内にアンピシリンなどの抗生物質を必要とするという不利を被っている。アンピシリン不在下では、CTBサブユニット蛋白質をコードする遺伝子を含有するプラスミドが安定に維持されず、CTBの収率は低下する。また、精製産物から全ての残留抗生物質を効率的に除去するために、さらなる下流処理工程が必要とされる。
【0010】
組換え蛋白質の産生における抗生物質の使用は、多くの理由から望ましくない。増殖培地への添加物として抗生物質を添加する必要性から生じる明らかなコスト増とは別に、ヒトまたは家畜への使用が意図されたいずれの組換え蛋白質の産生においても抗生物質の使用は問題であると考えられる。これには主に3つの理由がある。第1に、残留抗生物質は、敏感な個体に重篤なアレルギー反応を引き起こし得る。第2に、本産物を使用する者の天然細菌叢の抗生物質耐性菌を選択する可能性がある。最後に、抗生物質耐性をコードするDNAもまた、本産物を使用している個体における感受性細菌に移入され、それにより、コホート内に望ましくない抗生物質耐性を広げる恐れがある。
【0011】
残留抗生物質を含まないCTBなどの組換え蛋白質の大規模産生は、製薬工業において商業的に重要であるため、できるだけ高収率で医薬上許容されるCTBを提供する必要がある。
【0012】
発明の簡単な記載
本発明は、知の細菌宿主細胞産生システムによって得られる収率と比較して予想外に高収率のCTBを産生するための、新規な発現ベクターと一緒に使用される、thyA遺伝子の機能性を欠如したコレラ菌宿主細胞を含んでなるCTB産生システムを用いてCTB収率を改善する方法を教示する。
【0013】
チミジル酸シンターゼ酵素(thyA)遺伝子をコードする遺伝子をCTB遺伝子を含むプラスミドの選択および維持の手段として用いたプラスミド発現ベクターが構築された。CTB遺伝子の顆粒の非コードコレラ菌DNAの実質的に全てが除去されているため、CTBを産生するための公知の発現プラスミドと比較して該プラスミドのサイズは縮小されている。
【0014】
この発現システムを用いて得られたCTBの予想外の高収率によって、コレラ菌宿主細胞における異種遺伝子発現の効率性およびコレラ菌宿主細胞株におけるthyA欠如を補完することによって維持された該プラスミドの安定性の双方が実証された。例えば、100世代に相当する液体培養による反復継代の後でも、全ての細胞が該プラスミドおよび組換え蛋白質の発現能力を保持した。
【0015】
本明細書に報告した発現システムは、限定はしないが、
コレラおよびLT大腸菌起因の下痢に対する経口ワクチン接種における防御的免疫原;
免疫応答のダウンレギュレーション、調節、脱感作または再方向づけのための免疫調節剤または寛容原性誘導剤または免疫偏向剤;
抗原特異的または非特異的免疫応答を変更、増強、方向づけ、再方向づけ、強化または開始するためのアジュバント;
1つ以上の非関連抗原に対する免疫応答を刺激するための担体;および
診断用または免疫診断用試験に使用するための抗体(モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体など)の製造のための診断薬
を包含する使用法のためのCTB産生を容易にすることから有利である
【0016】
thyA遺伝子の機能性を欠如した安定な細菌宿主細胞株を用いて、比較的高収量のCTBを得ることができることは、ワクチン成分としてのCTBの精製および規格化の点から特に有利である。
【0017】
本発明は、特に、コレラ毒素のBサブユニット(CTB)を産生する発現システムを提供し、本発現システムは、
(a)thyA遺伝子の機能性を欠如するコレラ菌宿主細胞と、
(b)機能性thyA遺伝子およびCTB遺伝子を含んでなる5kb未満のサイズの発現ベクターであって、該CTB遺伝子が、該CTB遺伝子が由来する宿主細胞の天然ゲノムにおいてCTB遺伝子の5’および3’末端に直接隣接するフランキング配列を実質的に有さない発現ベクター
を含む。
【0018】
本発明による発現システムの一実施形態において、宿主細胞はCTA遺伝子の機能性を欠如している。他の実施形態において、発現ベクターは約3kbのサイズである。さらなる一実施形態において、発現ベクターは、大腸菌のthyA遺伝子を含んでなる。さらなる他の実施形態において、発現ベクターは、配列番号1で示されたヌクレオチド配列を有する。さらなる他の実施形態において、発現ベクターは、さらに、易熱性大腸菌腸毒素LTの非毒性成分または形態などの異種蛋白質をコードする少なくとも1つのさらなるヌクレオチド配列を含み、好ましくは、LTの非毒性成分は、そのBサブユニット(LTB)またはその断片である。
【0019】
また、本発明は、CTBを産生する方法に関し、該方法は、
機能的thyA遺伝子およびCTB遺伝子を含んでなる5kb未満のサイズの発現ベクターであって、該CTB遺伝子が、該CTB遺伝子が由来する宿主細胞の天然ゲノムにおいてCTB遺伝子の5’および3’末端に直接隣接するフランキング配列を実質的に有さない発現ベクターで、thyA遺伝子の機能性を欠如しているコレラ菌宿主細胞を形質転換し、次いで
形質転換したコレラ菌宿主細胞を、CTBの産生を可能にする条件下で培養し、その後、任意で、宿主細胞からCTBを単離および/または精製することを含む。
【0020】
本発明の発現システムおよび方法に用いられる発現ベクターは、新規な核酸構築物から構成される。
【0021】
したがって、本発明はさらに、thyA遺伝子およびCTB遺伝子を含んでなる単離核酸構築物に関するものであり、ここに、該CTB遺伝子はCTB遺伝子が由来する宿主細胞の天然ゲノムにおいてCTB遺伝子の5’および3’末端に直接隣接するフランキング配列を実質的に有さず、かつ該核酸構築物は、5kb未満のサイズである。
【0022】
本発明による核酸構築体の一実施形態において、該核酸構築物は、約3kbのサイズである。他の実施形態において、核酸構築物は、図13に示されるような制限エンドヌクレアーゼ地図を特徴とするpMT−ctxBthyA−2などのプラスミドである。さらに他の実施形態において、プラスミドは、配列番号1のヌクレオチド配列を有する。
【0023】
したがって、本発明は、(i)thyA遺伝子の機能性が欠如している安定なコレラ菌宿主細胞株、および(ii)機能性thyA遺伝子およびCTB遺伝子を含んでなる安定な発現ベクターであって、該CTB遺伝子が、該CTB遺伝子が由来する宿主細胞の天然ゲノムにおいてCTB遺伝子の5’および3’末端に直接隣接するフランキング配列を実質的に有さない発現ベクターの組み合わせを含んでなる新規な改善された安定な発現システムを提供する。
【0024】
安定な発現システムは、(i)CTBの一貫した高信頼の産生を確実にすることから有利である、CTBをコードするプラスミドの安定した維持を確実にする(例えば、大規模産生発酵槽における100%のプラスミド保持を確実にすることによって);および
(ii)CTBのN末端に見られる不均質性を排除することによりCTBの品質を改良し、同一のCTB最終産物を一貫して産生することを確実にするので、有利である。
【0025】
また、本発明は、CTBを産生するための単離された安定な発現ベクターを提供し、該ベクターは、CTBを産生はするが機能的thyA遺伝子を依然として含んでいる公知の発現ベクターよりも改良されている。該発現プラスミドは、CTB遺伝子の下流のコレラ菌DNAの実質的に全てを除去しているため、そのサイズは縮小されている。理論による拘束は望まないが、ctxB遺伝子の下流のコレラ菌DNAの実質的に全てを除去することにより、発現ベクターのサイズの縮小がもたらされ、CTB産物の安定性改善および収率の改善に寄与していると考えられる。プラスミド安定性改善の例として、発現システムにコレラ菌宿主細胞が用いられる場合、ほとんど全てのコレラ菌細胞が、(i)CTB遺伝子を含むプラスミドおよび(ii)100世代に相当する液体培養による反復継代の後でも、組換えCTB蛋白質を発現する能力を保持した。
【0026】
発現ベクター中の機能的thyA遺伝子の存在は、以下の理由から有利である:
それは、コレラ菌宿主株のthyA欠如を補完する;
それは、増殖培地中、チミン不在下で、該株の増殖を可能にする;および
該プラスミドの喪失により宿主株が死滅に至ることから、それは、外来チミンを欠いた培地において増殖させた場合、コレラ菌宿主株の遺伝子安定性を確実にする。
【0027】
いくつかの実施形態では、機能的チミジル酸シンターゼ(thyA)酵素をコードするヌクレオチド配列は、大腸菌のヌクレオチド配列であるかまたは大腸菌から誘導できる。大腸菌から誘導できるthyA酵素をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドの使用は、コレラ菌thyA遺伝子が対応する大腸菌のthyA配列と約30%の相同性しか有さず、組換え事象の危険性が減少するため有利である。
【0028】
規定された安定な発現ベクターをthyA遺伝子の機能性が欠如したコレラ菌宿主細胞中へ導入し、次いで、該宿主細胞をCTBが産生する条件下で培養することを含むコレラ毒素B(CTB)サブユニット蛋白質の産生方法は、以下の利点を提供する:
(i)公知のCTB発現システム(例えば、Sanchez and Holmgren (1989) (上掲))に記載された公知のCTB発現システムを用いて産生されたCTBのレベル)と比較して、該発現システムからのCTBの収率が4〜5倍増加するようなCTB収率の改善;
(ii)CTBから残留抗生物質を除去する下流の工程を省くことができるため、CTBの産生方法の簡便化。該蛋白質の大規模製造におけるコストの減少および発現されたCTB産物から残留抗生物質を除去する「下流処理工程」の必要性の排除のため、該産生方法の簡便化により、より安価な産物がもたらされる。
【0029】
本発明の他の態様は、添付の特許請求の範囲および以下の説明ならびに図面により、当業者に明らかとなろう。
【0030】
詳細な記載
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特定の例示された分子または処理パラメータに限定されるものではなく、それらは当然変化し得ることを理解する必要がある。また、本明細書に用いられる用語は、本発明の特定の実施形態を説明することだけが目的であって限定の意図はないことも理解する必要がある。なお、本発明の実施には、別に指示しない限り、ウィルス学、微生物学、分子生物学、組換えDNA法および免疫学の従来の方法が採用され、それらは全て通常の当業技術の範囲内にある。それらの技法は文献に充分に説明されている。例えば、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989)、DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II (D. Glover, ed.)、Oligonucleotide Synthesis (N. Gait, ed., 1984)、A Practical Guide to Molecular Cloning (1984)、Fundamental Virology, 2nd Edition, vol. I & II (B.N. Fields and D.M. Knipe, eds.)を参照されたい。
【0031】
本明細書に引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、上記のものも下記のものも参照としてそれらの全体が本明細書に組み込まれている。本明細書および添付の請求項において用いられる単数形の「ある」および「該」は、その内容が明らかにそうでないことを示していない限りは、指示されたものの複数形を含む。疑問を避けるために言うと、用語の「含んでなる」は、「含んでいる」ならびに「から成り立つ」を包含する。例えば、組成物がXを「含んでなる」は、もっぱらXから成り立つ場合もあるし、XおよびYなどのように、Xに加えて何かを含む場合もある。
【0032】
本出願において用いられる全ての科学用語および専門用語は、別に規定しない限り、当業界において通常用いられる意味を有する。DNA制限エンドヌクレアーゼ、制限部位および制限配列の定義には、例えば、E-L Winnacker, From Genes to Clones, VCH Publishers, New York (1987)に用いられている標準的命名法が順守されている。オリゴデオキシヌクレオチドおよびアミノ酸は、従来の1文字および3文字の省略記号によって表わされている。IUPAC−IUB生物化学命名委員会によって推奨されている1文字のアミノ酸記号は、実施例の節の初めに提供されている。
【0033】
本出願に用いられている以下の語句は、規定された意味を有する。
【0034】
発現システム
本発明は、CTBを産生するための宿主細胞および発現ベクターの組み合わせを含んでなる安定な発現システムに関する。
【0035】
用語の「発現システム」とは、例えば、ベクターによって担持され、宿主細胞内に導入された外来DNAによりコードされた蛋白質の発現など、好適な条件下で維持された宿主細胞および適合性発現ベクターの組み合わせを言う。本明細書に記載された発現システムの場合、細菌の生存にとって必須のthyA遺伝子が細菌宿主細胞の染色体上で非機能性にされている。機能的thyA遺伝子は、補足するプラスミド上に提供される。したがって、プラスミドの喪失は、細菌宿主細胞が生存できないことを意味するため、thyA遺伝子は選択マーカーとして作用する。非抗生物質選択マーカーとしてthyA遺伝子を選択することによって、上記に概説したように、特別な利点が提供される。
【0036】
用語の「発現する」および「発現」は、例えば、RNA(rRNAまたはmRNAなど)の産生により、または対応する遺伝子またはDNA配列の転写および翻訳に関係する細胞機能を活性化することによる蛋白質の産生により、遺伝子またはDNA配列の情報の発現を可能にするか、または引き起こすことを含む。DNA配列は、細胞によって発現されてRNA(例えば、rRNAまたはmRNAなど)または蛋白質などの「発現産物」を形成する。例えば、生じたRNAまたは蛋白質などの発現産物それ自体もまた、細胞によって「発現される」と言うことができる。
【0037】
宿主細胞
本明細書に用いられる用語の「宿主細胞」は、細胞による物質の産生のために、任意の方法において選択、修飾、形質転換、増殖または操作される任意の生物の任意の細胞を言う。例えば、宿主細胞は、特定の遺伝子、DNAまたはRNA配列、蛋白質または酵素を発現させるために操作される細胞であり得る。宿主細胞はさらに、スクリーニングまたは他のアッセイのために使用できる。用語の「宿主細胞」は、例えば、組換えベクターまたは他の転移DNAのレシピエントとして用いることができるか、または用いられた細菌細胞を表すことができ、形質転換された元の細胞の後代を含み得る。単一親細胞の後代は、天然の、偶発的な、または故意の変異により、必ずしも元の親と形態的に完全に同一、またはゲノムDNAまたはDNA全体が元の親と相補的である必要がないことは理解される。例えば、本発明のCTBは、コレラ菌宿主細胞において発現させることができる。
【0038】
一実施形態において、本発明は、公知の細菌宿主細胞産生システムによって得られる収率と比較して、予想外の高収率でCTBを産生させるための、新規の発現ベクターと一緒に用いられるthyA遺伝子の機能性を欠如したコレラ菌宿主細胞を含んでなるCTB産生システムに関する。
【0039】
コレラ菌宿主細胞
血清型01および0139のコレラ菌は、感染個体の腸内で増殖すると、腸管上皮から活性電解質および水分の分泌を誘導するコレラ毒素(CT)の放出により、重篤な下痢疾患を引き起こし得ることは当業界に周知である。類似した機構により、いくつかの他の細菌、例えば、腸毒素原性大腸菌(ETEC)もまた、CTに関連していることもあるし、関連していないこともある他の腸毒素の放出によって下痢を引き起こし得る。
【0040】
CTは原型の細菌腸毒素である。それは、2つのタイプのサブユニット:分子量28,000の1つのAサブユニットおよび各分子量が11,600の5つのBサブユニットから構成された蛋白質である。Bサブユニットは、緊密な非共有結合により1つの環に凝集しており;Aサブユニットは、弱い非共有相互作用により、Bペンタマー環に結合し、おそらく部分的に該Bペンタマー環内にはめ込まれている。これら2つのタイプのサブユニットは、中毒過程において異なった役割を有している:Bサブユニットは細胞結合の原因となり、Aサブユニットは、直接的な毒性活性の原因となる。
【0041】
腸細胞および他の哺乳動物細胞に対する毒素結合、およびAサブユニット(およびそのA1断片)の細胞内作用によるアデニル酸シクラーゼの活性化を導く引き続いての事象の分子的様相は、かなり詳細に明らかにされている(J Holmgren, Nature 292:413-417, 1981を参照)。最近、コレラ菌によるコレラ毒素の合成、組み立ておよび分泌の遺伝学および生化学についての情報も入手できるようになった。
【0042】
CTは、AサブユニットおよびBサブユニットそれぞれに関する染色体構造遺伝子によってコードされる。これらの遺伝子は、数種類の株からクローン化されており、それらのヌクレオチド配列が決定されている(例えば、Heidelberg et al (2000) Nature 406: 477-483を参照)。CTのAおよびBサブユニットの遺伝子は、Aシストロン(ctxA)がBシストロン(ctxB)の前に置かれた単一の転写単位において配置される。伝統的バイオタイプおよびEI Torバイオタイプのコレラ菌株におけるCT遺伝子の組織化についての研究により、伝統的バイオタイプ株にはCT遺伝子の2つのコピーがあり、一方、大多数のEI Tor株には1つだけコピーがあることが示唆されている(J J Mekalanos et al, Nature 306:551-557, 1983 を参照)。CTの合成は、ctx発現多様体を増加させる遺伝子、toxRにより正に調節される(V L Miller and J J Mekalanos, Proc Natl Acad Sci USA, 81:3471-3475, 1984)。toxRは転写レベルで作用し、伝統的バイオタイプおよびEI Torバイオタイプ双方の株に存在する。toxRは、おそらく、ctxプロモーター領域と正に相互作用する調節蛋白質をコードすることによって、ctx転写を増加させている。
【0043】
thyA遺伝子の機能性を欠如しているコレラ菌宿主細胞株は、本発明の方法により、または当業者に公知の方法(Sambrook, J. E. F. Fritsch, and T. Maniatis, Molecular cloning : a laboratory manual. 2nd ed. 1989: Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y)により調製できる。thyA遺伝子の機能性を欠如しているコレラ菌株を調製する適切な公知の方法としては、国際公開第99/61634号パンフレットに概説された方法が挙げられる。
【0044】
本発明の文脈において、例えば、thyA遺伝子が、欠失などにより除去された場合、または該遺伝子が例えば、thyA酵素の発現が無いように、thyA遺伝子の不活化または部位特異的変異により、遺伝子的に不能にされた場合に、thyA遺伝子は機能性を欠如する。thyA遺伝子の機能性の欠如は、例えば、thyA陰性ベクターをthyA陽性遺伝子により形質転換し、チミン不在下で、増殖が無いということに関して選択することによって決定できる。
【0045】
THYA選択マーカーシステム
細菌宿主細胞株における染色体損傷の補完は、プラスミド維持の手段として用いられてきた。したがって、選択性マーカーとして働き、抗生物質耐性選択マーカーの必要性を除く相補的プラスミド上に提供される機能性thyA遺伝子の存在によって、コレラ菌染色体上の非機能性thyA遺伝子は補完される。該プラスミドの喪失は、コレラ菌が生存できないことを意味する点で、thyA遺伝子はまた、選択性マーカーとしても働く。
【0046】
コレラ菌、大腸菌および他の細菌のthyA遺伝子によってコードされるチミジル酸シンターゼ(thyA)酵素は、デオキシウリジル酸(dUMP)のデオキシチミジル酸(dTMP)へのメチル化を触媒し、DNA中への組み込みのためのデオキシリボチミジン三リン酸(dTTP)の生合成における必須酵素である。この酵素が存在しないと、細菌は、deo遺伝子によってコードされるサルベージ経路によりdTTPに組み込まれるチミンの外部供給源に依存することになる(Milton et al 1992 J Bacteriol 174: 7235-7244)。
【0047】
thyA遺伝子は保存的遺伝子であり、バクテリオファージ、原核生物および真核生物において見出すことができることが知られている。thyA酵素は保存的であるため、例えば、大腸菌のthyA遺伝子は、下記に検討する関連細菌種の染色体に位置する変異thyA遺伝子を補足することができる。プラスミド中の機能性thyA遺伝子は、大腸菌以外の供給源からのものであってもよい。宿主細胞がコレラ菌宿主細胞である一実施形態において、該thyA遺伝子のコレラ菌thyA遺伝子との相同性は低い。
【0048】
当該分野における先行研究により、組換えプラスミドは、大腸菌のthyA遺伝子によるthyA変異の補足により、抗生物質選択無しで、コレラ菌における組換えプラスミドを維持できることが実証されている。前記原理は、最初、大腸菌のthyA遺伝子を担持するプラスミドを用い、コレラ菌の自然発生のthyA変異体を、トリメトプリムに対する抵抗性に基づいて単離することで、実証された(Morona et al 1991 Gene 107: 139-144 )。
【0049】
Carlinおよび共同研究者によるさらなる研究によって、コレラ菌のthyA遺伝子座のクローニングおよび特性化ならびに安定な規定されたレシピエントコレラ菌株の生成がもたらされた。Carlinおよび共同研究者によって決定されたコレラ菌thyA遺伝子の配列は、EMBL(ジーンバンク登録番号AJ006514)に公表されている。国際公開第99/61634号は、コレラ菌の規定されたthyA変異体が、thyA補足により維持されたプラスミド上にコードされた組換え蛋白質のための好適な産生株として使用できることを教示している。
【0050】
コレラ菌thyA遺伝子と低い相同性を有する補完性プラスミド上のthyA遺伝子の使用は、コレラ菌染色体との交差が減少するため有利である。
【0051】
補完性プラスミド上のthyA遺伝子は、コレラ菌thyA遺伝子と低い相同性を有する大腸菌thyA遺伝子であることが好ましい。説明のために言うと、大腸菌thyA遺伝子の公表された配列は、ジーンバンク登録番号J01709に見ることができる。Carlinらによって決定されたコレラ菌thyA遺伝子の配列(アミノ酸283個の蛋白質)(ジーンバンク登録番号AJ006514を参照)と大腸菌thyA遺伝子(ジーンバンク登録番号J01709を参照)との比較により、アミノ酸の同一性がわずか32%であることが示され、DNAレベルで454bpの重なりのある約54%だけの相同性を反映している(国際公開第99/61634号の図7を参照)。これに関して、EMBL DNAおよびSwiss−Prot蛋白質データライブラリーの相同性検索は、GCGプログラムパッケージにおけるFASTAソフトウェアによって行われた(Wisconsin Package Version9.0、ウィスコンシン州、マジソン所在、Genetics Computer Group(GCG))。
【0052】
本明細書に記載されたCTBの発現は、種々のプロモーターによって進められる。該プロモーターは異種プロモーターであることが好ましい。本明細書に用いられている用語の「異種の」は、天然には一緒に見られない2つの生物学的構成要素を言う。該構成要素は、プロモーター類などの調節領域であり得る。本明細書に用いられている用語の「異種プロモーター」は、作動可能に結合している遺伝子と関連のないプロモーターを言う。該プロモーターは、異種原核生物のプロモーターであることが好ましい。特に、該プロモーターは、それが用いられる宿主細胞に好適なプロモーターであることが好ましい。本明細書に記載された発現システムにおけるCTB遺伝子の発現は、tacPプロモーターまたはT7RNAポリメラーゼ依存性プロモーターにより進められることがより好ましい。一実施形態において、CTBは、tacPプロモーターなどの異種プロモーターの制御下、誘導的(発現の開始に刺激が必要であるような)または構成的(それが連続して産生されるような)方法で発現され得る。誘導的発現の場合、rCTBの産生は、例えば、培養培地への誘導物質、例えば、Lacオペロンの人工的誘導物質であるデキサメタゾンまたはイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)の添加が必要とされる際に開始できる。
【0053】
任意の好適な転写終結配列が使用できるが、最少の転写を生じさせるかまたは転写を生じさせない強力な転写終結配列が好ましい。本発明の好ましい一実施形態において、TrpAターミネーターがCTB遺伝子の下流に位置し、効果的にmRNAの転写を終結させる。実施例に記載された一実施形態において、転写ターミネーター配列のヌクレオチド配列が図14に示されている(約ヌクレオチド2732から約ヌクレオチド2759)。
【0054】
融合蛋白質は発現を指令する代替法を提供する。通常、内因性細菌蛋白質、または他の安定な蛋白質のN末端部分をコードするDNA配列を異種コード配列の5’末端に融合させる。発現時に、この構築物は、2つのアミノ酸配列の融合を提供する。例えば、細菌内に外来蛋白質の分泌を提供するシグナル/リーダーペプチド配列断片から成る融合蛋白質をコードするキメラDNA分子を創製することにより、細胞から外来蛋白質を分泌させることもできる〔例えば、米国特許第4,336,336号明細書を参照〕。シグナル/リーダー配列断片は、通常、細胞からの蛋白質分泌を指令する疎水性アミノ酸から成るシグナルペプチドをコードする。該蛋白質は、増殖媒体(例えば、グラム陽性細菌など)、または細胞(例えば、グラム陰性細菌など)の内膜と外膜との間に位置する細胞周辺腔のいずれかに分泌される。シグナルペプチド断片と外来遺伝子との間にコードされた、インビボまたはインビトロのいずれかで開裂できるプロセッシング部位があることが好ましい
【0055】
好適なシグナル配列をコードするDNAは、大腸菌外膜蛋白質遺伝子(ompA)〔Masui et al. (1983), in: Experimental Manipulation of Gene Expression ;Ghrayeb et al. (1984) EMBO J. 3:2437〕および大腸菌アルカリホスファターゼシグナル配列(phoA)〔Oka et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. 82:7212〕などの分泌性細菌蛋白質に関する遺伝子に由来し得る。追加例として、種々のバシラス(Bacillus)株のアルファ−アミラーゼ遺伝子のシグナル配列が、枯草菌(B.subtilis)から異種蛋白質を分泌させるために使用できる〔Palva et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:5582;欧州特許出願公開第244 042号明細書〕。
【0056】
本明細書に用いられている用語の「リーダー配列」または「シグナル配列」は、発現したCTB蛋白質を、存在するならば、細胞膜および細胞壁を横切って、または少なくとも、細胞壁を有する細胞の細胞膜を通って周辺腔へ、移動または移出させるなどの、蛋白質の移動または移出を促進する蛋白質分子上の任意のヌクレオチドコード配列またはコード化ペプチド配列に関する。本明細書に用いられている用語の「リーダー配列」または「シグナル配列」は、より大型のポリペプチドまたはプロペプチド配列の構成要素としての、それが合成される細胞の分泌経路を介して(小胞体からゴルジ体へ、さらに、分泌胞へなど)、より大型のポリペプチドを指令するポリペプチド(「分泌ペプチド」)をコードするDNA配列を言う。前記大型ポリペプチドは、分泌経路を介した移行時、通常、開裂して分泌ペプチドを除去する。分泌シグナル配列は、発現したポリペプチドを細胞の分泌経路へ効率的に方向付けることを確実にする任意のシグナルペプチドをコードし得る。シグナルペプチドは、天然のシグナルペプチドでもよいし、その機能的部分でもよいし、またそれは合成ペプチドでもよい。
【0057】
一実施形態において、リーダー配列は、大腸菌易熱性腸毒素(LT)リーダー配列などの腸毒素に由来するものである。LTリーダー配列の例は、表1に、それらのG1登録番号を列挙し、記載してある。好ましい一実施形態において、リーダー配列は、大腸菌易熱性腸毒素(LTB)リーダー配列である。本発明のCTBを産生するためのLTBシグナル配列は、表2に、MNKVKFYVLFTALLSSLCAHG(配列番号2)として示してある。リーダー配列の他の例としては、限定はしないが、表2に示されたリーダー配列および図14に示された配列の一部が挙げられる。
【0058】
記載された例において、天然Sacl部位が使用できるような方法で、CTB遺伝子を、大腸菌の易熱性腸毒素由来のLTBシグナルペプチドに融合させる。
【0059】
DNA構築物
通常、プロモーター、シグナル配列(所望の場合)、対象となるコード配列、および転写終結配列を含む上記構成要素を一緒に、発現構築物に入れる。発現ベクターなどの挿入または付加されたDNAを有するDNAのセグメントまたは配列もまた、「DNA構築物」または「核酸構築物」と呼ばれ得る。エンハンサー、機能的スプライス供与体および受容体部位を有するイントロン、およびリーダー配列もまた、所望の場合、発現構築物に含めてもよい。発現構築物は、細菌などの宿主中に安定に維持できる染色体外要素(例えば、プラスミド)などのレプリコン内に維持されることが多い。レプリコンは、複製システムを有し、したがって、発現のため、またはクローニングおよび増幅のため、原核生物宿主内に維持することが可能となる。また、レプリコンは、高または低コピー数プラスミドであり得る。高コピー数プラスミドは、一般に、約5から約200、通常は約10から約150の範囲のコピー数を有する。高コピー数プラスミドを含有する宿主は、好ましくは少なくとも約10個、より好ましくは少なくとも約20個のプラスミドを含有する。ベクターの効果および宿主細胞上の外来発現蛋白質に依存して、高または低コピー数のベクターのいずれかが選択できる。あるいは、上記構成要素のいくつかを一緒に、形質転換ベクター内に入れることができる。形質転換ベクターは、通常、上記のとおり、レプリコン内に維持されるか、または組み込みベクターへと発展した選択性マーカーから成り立つ。
【0060】
レプリコン
本明細書に用いられている「レプリコン」は、細胞内でポリヌクレオチド複製の自律的単位として働く任意の遺伝的要素、例えば、プラスミド、染色体、ウィルス、コスミドなどである。レプリコンはそれ自身の制御下で複製することができ、選択性マーカーを含み得る。
【0061】
ベクター
本明細書に用いられている「ベクター」は、付加されたセグメントの複製および/または発現がもたらされるように他のポリヌクレオチドセグメントが付加されているレプリコンである。用語の「ベクター」には、発現ベクターおよび/または形質転換ベクターが含まれる。用語の「発現ベクター」は、インビボまたはインビトロ/エクスビボで発現が可能な構築物を意味する。用語の「形質転換ベクター」は、1つの種から他の種に移入されることのできる構築物を意味する。ベクターの例としては、限定はしないが、プラスミド、染色体、人工的染色体またはウィルスが挙げられる。
【0062】
プラスミド
ベクターの一般的なタイプは「プラスミド」であり、これは、容易に追加の(異種など)DNAを受容することができ、好適な宿主細胞に容易に導入され得る、通常細菌起原の、一般的に二本鎖DNAの自己含有分子である。種々の真核および原核宿主内での複製および/または発現のために、プラスミドおよび真菌ベクターなどの多数のベクターが記載されている。本発明に使用されるプラスミドは、限定はしないが、pBR322、pACYC177またはpUCプラスミド誘導体などのプラスミドなどの当業界に公知のプラスミドまたはpBLUESCRIPTベクター(カリフォルニア州、ラホーヤ所在、Stratagene)であり得る。
【0063】
pJS162(Sanchez and Holmgren (1989) (上掲)に記載されているような)および(pML358)(Lebens et al 1993 ibidに記載されているような)などのプラスミドが、コレラ菌宿主細胞発現システムにおいてCTBを産生させるために用いられてきた。本発明の発現ベクターは、以下の点で、Sanchez-Holmgren(pJS162)およびLebens(pML358)の発現プラスミドと異なっている:
(i) CTB遺伝子の下流の非コードコレラ菌DNAの実質的に全てが除去されているため、プラスミドのサイズがより小さいこと;および
(ii) プラスミドが機能性thyA遺伝子を有していること。
【0064】
これに関して、表3は、本明細書に記載された発現ベクターと当業界に公知の関連発現ベクターとの比較分析を提供している。一実施形態において、本明細書に記載された安定な発現ベクターは、5kb未満のサイズであることが好ましい。より好ましい実施形態において、安定な発現ベクターは、約2.5kbから4kbのサイズである。さらに好ましい実施形態において、安定な発現ベクターは約3kbのサイズである。
【0065】
用語の「約」または「およそ」は、通常の当業者により測定されたその特定の値に関して許容できる範囲内を意味し、ある程度、測定システムの限界内でのその値の測定または判定のされ方に依る。例えば、「約」は、当業界の慣例に従い、1以内または1超の標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、さらに好ましくは1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に、生物学的システムまたは処理に関しては、該用語は、ある値の大きさの位数の範囲内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。
【0066】
より小さなDNA分子は、共に連結し、より効率的にコレラ菌などの原核生物宿主内に形質転換し、正しく構築された誘導体を得る機会を高めることから、プラスミドのサイズがより小さいと、インビトロ操作および誘導体の構築がより容易となるため有利である。また、サイズがより小さいと、例えば、形質転換により該構築物をレシピエント細菌に導入する際の効率をより高くでき、また、プラスミドの安定性も高めることができる。
【0067】
発現ベクター
本明細書に用いられている用語の「発現ベクター」は、宿主を形質転換し、導入した配列の発現(例えば、転写および翻訳など)を促進するために、ヌクレオチド配列(異種ヌクレオチド配列など)を宿主細胞内に導入できる媒体を意味する。
【0068】
単離発現ベクター
本明細書に用いられている用語の「発現ベクター」には、単離発現ベクターならびに宿主細胞/発現ベクター組み合わせの一部である発現ベクターが含まれる。用語の「単離された」および「精製された」は、自然環境から除去され、および/または本来関連している少なくとも1つの他の構成要素から単離または分離されている核酸配列またはアミノ酸配列または核酸構築体のいずれかの分子を言う。例えば、発現ベクターは、例えば、該物質がそこから得られる天然物質を含めて、汚染物質などの非関連物質の存在を減少または除去する条件下で調製された場合、「単離された」と考えることができる。さらに例を挙げると、精製蛋白質は、細胞内で関連している他の蛋白質または核酸が実質的に無い場合、単離されたと考えられる。同様に、精製核酸分子は、細胞内で共に見られ得る蛋白質または他の非関連核酸分子が実質的に無い場合、単離されている。蛋白質は、該物質の意図された目的を妨害せず、やはり、実質的に単離されていると考えられる担体または希釈剤と混合できる。
【0069】
異種ヌクレオチド配列
一般に、異種ヌクレオチド配列は、ベクターDNAの1つ以上の制限部位に挿入され、次いで、ベクターにより、伝達性ベクターDNAと共に宿主細胞に運ばれる。本明細書に用いられている用語の「異種ヌクレオチド配列」とは、細胞内または細胞の染色体部位内に本来配置されていないか、または細胞により本来発現されないヌクレオチド配列を言う。本明細書で用いられる場合、xがyと、同一の様式で本来関連していない、すなわち、xは本来yと関連していない、またはxはyと、自然に見られる様式と同じ様式では関連していない場合、xはyに関して「異種」である。用語の「異種ヌクレオチド配列」は、本文を通して、「外来」ヌクレオチド配列または「ゲスト」ヌクレオチド配列または「細胞外」ヌクレオチド配列または「外的」または「外因性」ヌクレオチド配列という用語と交換可能に用いられる。異種ヌクレオチド配列はコード配列でもあり得る。
【0070】
本明細書に用いられている用語の「遺伝子」、「コード配列」またはRNA、ポリペプチド、蛋白質または酵素などの発現産物を「コードする」ヌクレオチド配列は、発現された際にそのRNA、ポリペプチド、蛋白質または酵素の産生をもたらすヌクレオチド配列を言う。すなわち、該ヌクレオチド配列は、そのRNAを「コードする」か、または該ヌクレオチド配列は、そのポリペプチド、蛋白質または酵素のためのアミノ酸配列をコードする。用語の「ヌクレオチド配列」は、用語の「ポリヌクレオチド」と同義である。RNAポリメラーゼがコード配列をRNAに転写し、それが転移RNAスプライスされ(イントロンを含有する場合)、該配列が蛋白質をコードする場合はその蛋白質に翻訳される際に、遺伝子配列またはヌクレオチド配列は、細胞内の転写および翻訳制御配列「の制御下」にあるか、またはそれら「と、作動可能に結合」している。該ヌクレオチド配列は、ゲノムまたは合成または組換え源のDNAまたはRNAであり得る。該ヌクレオチド配列は、二本鎖でもよいし、一本鎖でもよく、センス鎖またはアンチセンス鎖またはその組み合わせのいずれでもよい。
【0071】
コード配列
本明細書に用いられている「コード配列」は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合、通常はmRNAにより、ポリペプチドへと翻訳されるポリヌクレオチド配列である。コード配列の境界は、5’末端における翻訳開始コドンおよび3’末端における翻訳停止コドンによって決定される。コード配列としては、限定はしないが、cDNA,および組換えポリヌクレオチド配列を挙げることができる。「オープンリーディングフレーム」(ORF)は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の領域であり;この領域は、コード配列の一部または全コード配列を表す。
【0072】
作動可能に結合
制御配列は、コード配列に作動可能に結合され得る。本明細書に用いられている用語の「作動可能に結合した」は、そのように記載された構成要素が、それらの意図された様式で機能できる関係にある並置を言う。コード配列に「作動可能に結合した」制御配列は、コード配列の発現が制御配列に適合した条件下で達成されるように結合されている。
【0073】
コレラ毒素(CT)およびそのBサブユニット(CTB)
本明細書に用いられている用語の「CT]は、コレラ毒素を言い、「CTB」は、コレラ毒素のBサブユニットを言う。別の本文では、これらは、それぞれ、「CT」または「Ct」および「CtxB」または「CtB」として指示されることもある。本発明の発現システムによって産生されるCTBは、組換えCTB(rCTB)と言われる場合もある。用語の「CTB」にはまた、追加配列をコードするハイブリッドCTB遺伝子またはその誘導体の一部である組換えCTBのDNA配列が含まれる。CTB誘導体は、CTB遺伝子融合蛋白質などの融合蛋白質または他の要素と結合したCTBであり得る。
【0074】
易熱性腸毒素(LT)およびそのBサブユニット(LTB)
本明細書に用いられている用語の「LT」は、本明細書においては、大腸菌易熱性腸毒素を言い、「LTB」は、LTのBサブユニットである。別の本文において、これらは、時には、それぞれ、「Etx」または「Et」および「EtB」または「EtxB」として指示され得る。腸毒素原性大腸菌(ETEC)の易熱性毒素(LT)は、構造的に、機能的におよび免疫学的にCTBに類似している。これら2つの毒素は、免疫学的に交差反応する。
【0075】
CTB遺伝子
CTB遺伝子またはCTBをコードするヌクレオチド配列は、CTBコード化DNAが由来する微生物の天然ゲノムにおいてCTBコード化配列の5’および3’末端に直接隣接するフランキング配列を実質的に有さない。言い換えると、CTB遺伝子には、その宿主細胞ゲノムに相同性の5’および3’フランキング配列が実質的に無い。いくつかの適用において、CTB遺伝子またはCTB蛋白質をコードするヌクレオチド配列は、CTBの自然形態または天然形態または野生型形態と同一であり得る。
【0076】
「天然CTB」
本明細書に用いられている用語の「天然CTB」は、GM1に結合することができ、および/またはCTB分子の免疫原性能力または免疫調節能力を有するCTB分子の自然形態または野生型形態と実質的に同一である、活性(例えば、GM−1結合活性など)および/または免疫原性および/または免疫調節特性などの特性を有するCTB分子を言う。CTBの「天然」、「自然の」、「野生型」形態という用語は、本文を通して交換可能に用いられる。
【0077】
一実施形態において(下記の実施例に記載されるとおり)、実質的に純粋なCTB遺伝子は、図14において、約ヌクレオチド2402から約ヌクレオチド2710のヌクレオチド配列として示されている。
【0078】
いくつかの適用では、CTB遺伝子またはCTB蛋白質をコードするヌクレオチド配列は、自然または天然形態のCTBの変種、相同体、誘導体またはそれらの断片であり得る。
【0079】
本明細書に用いられている用語である、天然CTB分子の「変異体、相同体、誘導体およびそれらの断片」には、天然CTB分子とは構造的に異なり得る(例えば、ヌクレオチド配列に関してなど)が、特に、GM1ガングリオシドに対する結合などの結合特性および/またはELISAまたはGM1−ELISA試験によって検出される、CTBに対する抗血清との反応などの免疫学的特性に関して、天然CTB分子のような機能的働きをするCTB分子が含まれる。天然CTB分子のこれらの変異体、相同体、誘導体およびそれらの断片としては、限定はしないが、大腸菌B(LTB)由来の易熱性腸毒素のBサブユニットおよびBサブユニットの部分的または全体的な変異形態、延長形態、切断形態または別に修飾形態またはGM1または前記種々の抗血清と反応すると考えられる他の任意の蛋白質ならびにこれらの基準に合うと考えられるが、ADP−リボシル化活性を有さない蛋白質をコードすると考えられる任意の核酸調製物が挙げられる。
【0080】
他の実施形態において、CTB遺伝子は、図14において、約ヌクレオチド2402から約ヌクレオチド2710で示されている配列の変種、相同体、誘導体およびそれらの断片として示されている。
【0081】
成熟CTB
本明細書に用いられている用語の「成熟CTB」は、シグナル配列を欠いている発現CTBサブユニット蛋白質を言う。
本明細書に用いられている用語の「アミノ酸配列」は、ペプチド、ポリペプチド配列、蛋白質配列またはそれらの部分を言う。
【0082】
本明細書に用いられている用語の「蛋白質」は、「アミノ酸配列」という用語および/または「ポリペプチド」という用語と同義である。いくつかの例において、「アミノ酸配列」という用語は、「ペプチド」という用語と同義である。いくつかの例において、「アミノ酸配列」という用語は、「蛋白質」という用語と同義である。
【0083】
本明細書に用いられている用語の「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマーを言い、該産物の特定の長さを言わない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、および蛋白質は、ポリペプチドの定義の範囲内に含まれる。また、この用語は、ポリペプチドの発現後の修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などを言わないか、または除外する。例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸など)の1つ以上の類縁体を含有するポリペプチド、置換結合ならびに天然および非天然双方の、当業界に公知の他の修飾を有するポリペプチドが該定義に含まれる。
【0084】
指定された核酸配列「に由来する」ポリペプチドまたはアミノ酸配列とは、該配列内にコードされたポリペプチドのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその部分を言い、前記部分は、少なくとも3〜5個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも11〜15個のアミノ酸から成るか、または前記配列にコードされたポリペプチドにより免疫学的に確認できる。この用語はまた、指定された核酸配列から発現されたポリペプチドを含む。
【0085】
N末端変異
トレオニン(T)は、CTB分子の天然または自然形態由来の成熟CTBに通常見られる第1のアミノ酸である。したがって、一般に、成熟CTB分子のN末端配列は、Thr−Pro−Gln−Asn−Ile−Thr(TPQNIT)(配列番号3)である。TPQNITのN末端配列を有する成熟CTB分子の例としては、限定はしないが、コレラ菌株0395、古典的Ogawa由来のCTBアミノ酸配列が挙げられ、これは、米国特許第5268276号明細書、米国特許第58234246号明細書、米国特許第6043057号明細書、欧州特許第0368819号明細書およびSanchez and Holmgren (1989) (ibid)の図2に示されている。記載された実施形態は、コレラ菌宿主細胞発現システムを用いて産生された、TPQNITのN末端配列を有するCTB配列の例を提供している。
【0086】
一実施形態において、有利にAPQNIT(Ala−Pro−Gln−Asn−Ile−Thr)(配列番号4)のN末端配列を有するCTB配列の変異体が使用できる。例えば、やはり図14に示されているCTB配列配列番号1は、CTBアミノ酸配列の第1位に、トレオニン(Thr=T)の代わりにアラニン(Ala)残基が導入されている、該蛋白質配列のアミノ末端における1つの変異を別にして、コレラ菌株0395、古典的Ogawa由来のCTB天然配列と同じである。この特定アミノ酸(Ala)の導入は、CTBの野生型または天然形態のアミノ末端におけるトレオニン(Thr)残基と対照的に、限定されたシグナル配列開裂部位を作出するため有利である。この開裂部位は、翻訳後修飾において重要であり得る。このN末端変異は、公知のCTB発現システム(Sanchez and Holmgren (1989) (上掲)に記載されたCTB発現システムなど)を用いて産生されたCTBのN末端に見られる異種混交を排除することにより、CTBの品質を向上させ、また、したがって、同CTB最終産物の一貫した産生を確実にするため有利である。これに関して、天然CTB分子で得られる約2つまでの異なったN末端と比較して、生じるCTB蛋白質において得られるN末端が1つだけであるように、eltBlctxB遺伝子の接合部が修飾されている(米国特許第5268276号明細書、米国特許第58234246号明細書、米国特許第6043057号明細書、欧州特許第0368819号明細書ならびにSanchez and Holmgren (1989) (上掲)を参照)。
【0087】
変種
本明細書に用いられている用語の「変種」は、天然型配列とは異なる修飾されたまたは変化させた遺伝子、DNA配列、RNA、酵素、細胞などを示すためにも使用できる。変種は、同一の細菌株内に見られることもあるし、異なった株内に見られることもある。該変種は、CTB配列の天然または自然形態と、少なくとも90%の配列同一性を有することが好ましい。該変種は、該天然配列全体で、20以下の変異を有することが好ましい。該変種は、天然CTB配列全体で、10以下の変異を有することがより好ましく、5以下の変異を有することが最も好ましい。
【0088】
変異体
本明細書に用いられている用語の「変異体」および「変異」は、例えば、任意のDNAなどの遺伝物質における検出可能な任意の変化、またはそのような変化の任意の処理、機構または結果を言う。これには、遺伝子の構造(DNA配列など)を変化させる遺伝子変異が含まれ、任意の遺伝子またはDNAが任意の変異処理から生じ、任意の発現産物(例えば、RNA、蛋白質または酵素など)が修飾遺伝子または修飾DNA配列により発現される。変異体は、自然に生じる場合もあるし、人工的に作出される場合もある(例えば、部位指向的変異誘発など)。該変異体は、天然または自然の、または野生型CTB配列と、少なくとも90%の配列同一性を有することが好ましい。該変異体は、野生型CTB配列全体で、20以下の変異を有することが好ましい。該変異体は、野生型CTB配列全体で、10以下の変異を有することがより好ましく、5以下の変異を有することが最も好ましい。
【0089】
例えば、CTB変種は、CTBの1位と103位との間の残基の少なくとも1つの変異、付加、または欠失を含む任意のサブユニット蛋白質を含み得ることが開示されている。このような変異の例としては、これらの毒素、サブユニットまたは他の蛋白質内への任意の点変異、欠失または挿入、ならびにこれらの蛋白質への任意のペプチド伸長が挙げられ、これらは、蛋白質のアミノ端、カルボキシ端または別の場所に位置することもあり、また、これらのペプチドは、免疫応答を刺激または逸脱させることのできるB細胞エピトープ、T細胞エピトープまたは他のものであることによって、免疫学的特性を有するかどうかには無関係である。たとえば、多くのそのような変異体が文献に記載されている(Backstrom et al; Gene 1995; 165: 163-171;Backstrom et al., Gene 1996; 169: 211-217;Schodel et al., Gene 1991; 99: 255-259;Dertzbaugh et al. Infect. Immun. 1990; 58: 70-79)。
【0090】
相同性
本明細書に用いられている用語の「相同性」は、xとyとの間の類似の程度を言う。1つの決定と他の形態との間の対応は、当業界に公知の方法により判定される。例えば、それらは、ポリヌクレオチドの配列情報の直接的比較により判定できる。あるいは、相同性は、相同性領域間に安定な二重鎖を形成する条件(例えば、S1消化の前に用いられると考えられるもの)下で、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを行い、引き続き、一本鎖特異的ヌクレアーゼ(1つまたは複数)による消化後、消化された断片のサイズ測定により判定できる。
【0091】
相同体
限定はしないが、図14に示されたものまたは表1において、GI登録番号の下に記載されたものなどのいずれのCTB配列も、本発明に有用であり得る。一実施形態において、本発明のコレラ菌宿主細胞によって発現されるCTB蛋白質は、以下のものによってコードされうる:
(i) 図14に示された、または表1において、ジーンバンク登録番号により指定されたCTB遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなるDNA分子
(ii) (a)におけるヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズするDNA分子;または
(iii) (a)または(b)のDNA分子と同じアミノ酸配列をコードするが、(a)または(b)のDNA分子の縮重形態であるDNA分子。
【0092】
本明細書に定義される「相同体」は、天然または野生型のアミノ酸配列および天然または野生型のヌクレオチド配列との一定の相同性を有する構成要素を言う。本明細書において、用語の「相同性」は、「同一性」と等値できる。本発明には、(i)におけるポリヌクレオチド配列の相同体を使用できる。典型的には、相同体は、対応する指定された配列に対して、少なくとも40%の配列同一性、好ましくは少なくとも60%、70%、75%、80%または85%、より好ましくは90%、95%または99%の配列同一性を有する。このような配列同一性は、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、例えば、少なくとも40、60または100以上の連続ヌクレオチドの領域にわたって存在し得る。典型的には、相同体は、対象のアミノ酸配列と同じ活性部位などを含んでなる。相同性は、類似性(すなわち、類似した化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)に関して考えることもできるが、本発明の文脈では、配列同一性に関する相同性を表すことが好ましい。
【0093】
ポリヌクレオチドの相同性を測定する方法は、当業界に周知である。相同性の比較は、肉眼で、またはより通常には、容易に利用できる配列比較プログラムの補助により実施できる。これらの市販のコンピュータープログラムは、2つ以上の配列間の相同性パーセントを算出できる。相同性パーセントは、連続配列にわたって算出できる。すなわち、1つの配列を他の配列と整列させ、1つの配列における各アミノ酸を、一度に1残基ずつ、他の配列における対応するアミノ酸と直接比較する。これは、「アンギャップド」整列と呼ばれる。典型的には、このようなアンギャップド整列は、比較的少数の残基にわたってのみ実施される。
【0094】
この方法は、きわめて簡便で一貫性のある方法であるが、例えば、他の場合には同一である配列対における1つの挿入または欠失により、次のアミノ酸残基が整列から出され、したがって、全体の整列が実施されると、相同性パーセントの大幅な減少をもたらす可能性があることが考慮に入れられていない。したがって、多くの配列比較法は、過度に全体の相同性スコアを不利にすることなく、可能性のある挿入および欠失を考慮に入れる最適な整列を作製するためにデザインされる。これは、局所相同性を最大化する意図で、配列整列に「ギャップ」を挿入することにとって達成される。
【0095】
しかし、これらのより複雑な方法は、整列に生じる各ギャップに「ギャップペナルティー」を割り当てるため、同じ数の同一アミノ酸に関して、2つの比較配列間のより高い関連性を反映するできるだけ少ないギャップを有する配列整列が、多くのギャップを有する配列整列よりも高いスコアを得ることになる。ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、そのギャップにおける各々後続の残基に対してはより少ないペナルティーを課す「アフィンギャップコスト」が典型的に用いられる。これは最も一般的に用いられるギャップスコアリング法である。高ギャップペナルティーにより、当然、より少ないギャップを有する最適整列が生じる。多くの整列プログラムにより、ギャップペナルティーが修正できる。しかしながら、配列比較のためにこのようなソフトウェアを用いる場合は、デフォルト値を用いることが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを用いる場合、アミノ酸配列に対するデフォルトギャップペナルティーは、1つのギャップにつき、−12であり、各伸長につき、−4である。
【0096】
したがって、最大相同性パーセントの算出には、先ず、ギャップペナルティーを考慮に入れた最適整列の作製が必要である。このような整列を実施するための好適なコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, U. S. A.; Devereux et al 1984, Nucleic Acids Research 12: 387-395)である。配列比較を実施する他のソフトウェアの例としては、限定はしないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al 1999 ibid Chapter 18 を参照)、FASTA(Atschul et al 1990, J. Mol. Biol., 403-410)および比較ツールのGENEWORKS一式が挙げられる。BLASTおよびFASTAの双方とも、オフラインおよびオンライン検索に利用できる(Ausubel et al 1999 ibid, pages 7-58 to 7-60およびAltschul (1993) J Mol Evol 36: 290-300またはAltschul et al (1990) J Mol Biol 215: 403-10 を参照)。しかし、いくつかの適用に関しては、GCG Bestfitプログラムを用いることが好ましい。BLAST2Sequencesと呼ばれる新規ツールもまた、蛋白質およびヌクレオチド配列の比較に利用できる(FEMS Microbiol Lett 1999 174 (2): 247-50;FEMS Microbiol Lett 1999 177 (1) : 187-8 およびtatiana@ncbi. nlm. nih. gov を参照)。
【0097】
最終的な相同性パーセントは、同一性に関して測定できるが、整列処理それ自体は、典型的には、オールオアナッシングの対比較に基づくものではない。替わりに、化学的類似性または進化距離に基づいた、各対比較にスコアを割り当てるスケールド類似性スコアマトリクスが一般に用いられる。通常用いられるこのようなマトリクスの一例は、BLOSUM62マトリクス−プログラムのBLAST一式に対するデフォルトマトリクスである。GCG Wisconsinプログラムでは一般に、公開デフォルト値または供給させる場合は、慣行記号比較表を用いる(さらなる詳細は、使用説明書を参照)。いくつかの適用において、GCGパッケージには、公開デフォルト値、または他のソフトウェアの場合は、BLOSUM62などのデフォルトマトリクスを用いることが好ましい。該ソフトウェアが最適な整列を作製したら、相同性パーセント、好ましくは配列同一性パーセントを算出することが可能である。該ソフトウェアは、典型的に配列比較の一部としてこれを行い、数値結果を作出する。
【0098】
相同体は、該相同体の少なくとも30、例えば、少なくとも40、60または100以上の連続ヌクレオチドの領域にわたって、少なくとも1、2、5、10以上の置換、欠失または挿入により、対応する指定配列と異なり得る。したがって、該相同体は、少なくとも1、2、5、10、30以上の置換、欠失または挿入により、対応する指定配列と異なり得る。相同性CTB遺伝子は、好適な宿主内で該遺伝子を発現させ、特定のCTB抗原に特異的な抗体との交差反応性を試験することによって試験できる。
【0099】
本発明に用いられる発現プラスミドは、本明細書に提示されたヌクレオチド配列(本明細書に提示された配列の相補的配列を含む)にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含み得る。相同体は、典型的に、背景を超える有意性のレベルで対応する指定配列とハイブリダイズする。相同体と指定配列との間の相互作用によって生じたシグナルレベルは、背景ハイブリダイゼーションの強さの、典型的には、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍である。相互作用の強さは、例えば、32Pなどによるプローブの放射標識により測定できる。
【0100】
選択的ハイブリダイゼーションは、典型的には、中等度から高度のストリンジェンシーの条件、例えば、約50℃から約60℃で、0.03M塩化ナトリウムおよび0.003Mクエン酸を用いて達成される。好ましい態様において、本発明は、ストリンジェントな条件(例えば65℃および0.1SSCなど)下、本発明のヌクレオチド配列、本明細書に提示したヌクレオチド配列(本明細書に提示された配列の相補的配列を含む)にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含む。
【0101】
断片
「断片」という用語は、該ポリペプチドが野生型のアミノ酸配列の部分を含んでなることを示している。それは、配列の1つ以上の大きな連続区分または複数の小さな区分を含んでなり得る。該ポリペプチドは、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも65%、最も好ましくは少なくとも80%の野生型配列を含んでなることが好ましい。
【0102】
異種蛋白質/分子
Aサブユニット単独の免疫原性の低さとは対照的に、LTBおよびCTBは双方とも、例外的に強力な免疫原である。LTBおよびCTB双方の免疫原性のため、それらは他のエピトープおよび抗原のための担体として用いられており(Nashar et al Vaccine 1993;11(2):235-40)、コレラ菌および大腸菌媒介の下痢疾患に対するワクチンの成分として用いられてきた(Jetborn et al 1992 Vaccine 10: 130)。本明細書に記載された発現システムによって産生されたCTBは、化学的結合によってCTBに結合され得るか、またはキメラ蛋白質の一部として調製され得る他の免疫原性または寛容原性分子、例えば、異種分子の担体としても使用できる。
【0103】
本明細書に用いられている用語の「異種分子」とは、典型的には、宿主細胞とは異なった種由来の分子を言うが、同一の種の異なった、または非関連の株に由来する分子でもあり得る。宿主細胞は、2つ以上の異種ポリペプチドを発現するように操作でき、この場合、ポリペプチドは同じ生物由来でもよいし、異なった生物由来でもよい。本発明の好ましい実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、病原体の異種抗原をコードする。他の好ましい実施形態において、異なった病原体由来の2つ以上の異種抗原を発現できる。異種DNAまたは異種ポリペプチドは、完全な蛋白質でもよいし、エピトープを含有する蛋白質の一部でもよい。本発明の一実施形態において、異種ポリペプチドは、非毒性構成要素またはCTまたはLTの形態であり得る。他の実施形態において、異種抗原は、CFA1、CFAII(CS1、CS2、CS3)、CFAIV(CS4、CS5、CS6)フィンブリア抗原などのETEC抗原であり得る。さらに他の実施形態において、異種抗原は、融合蛋白質の一部として発現または調製できる。これに関して、融合蛋白質は、2つ以上の異なった抗原または1つの抗原と異種ポリペプチドの免疫原性を高めるためにデザインされた1つの領域を含み得る。異種抗原は、ウィルス、細菌、真菌、蛋白質、ポリペプチドまたはそれらの免疫原性部分よりなる群から選択できる。他の実施形態において、免疫原性構成要素は、百日咳菌毒素サブユニットS2、S3、S4、S5、ジフテリア毒素断片B、大腸菌フィンブリアK88、K99、987P、F41、CFAI、CFAII(CS1、CS2、CS3)、CFAIV(CS4、CS5、CS6)よりなる群から選択できる。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態において、安定化されるようにプラスミドによりコードされる異種ポリペプチドは、異種抗原をコードする配列以外の、またはそれに追加されるものである。例えば、該ポリペプチドは、細菌染色体または第2のプラスミド上の配列によってコードされる異種抗原の発現を調節または刺激し得る。あるいは、またはそれに加えて、プラスミドによってコードされる異種ポリペプチドは、選択マーカーまたはプラスミドを担持する細菌の最適な増殖に必要とされるポリペプチドであり得る。
【0105】
調節的役割を果たしている異種ポリペプチドの場合、それは、異種抗原をコードする配列に結合し、活性化し、またはそれからの発現を増加させ得る。前記調節は、抗原の発現が、適切な時、例えば、細菌が適当な増殖期にある時、またはワクチン接種される宿主への投与時だけ活性化されるような誘導性であり得る。これにより、発現が誘導されるまで、プラスミドを担持する細菌に対する早期選択圧を回避または減少し得る。
【0106】
上記に示したように、1つ以上の異種分子は、本発明に記載された発現システムによって産生されたCTBに、化学的結合によって結合され得るか、またはキメラ蛋白質の一部として調製され得る。本発明の一実施形態において、異種二機能性架橋剤などの機能的架橋剤を用いて、化学結合が実施される。該架橋剤は、N−y(−マレイミド−ブチルオキシル)スクシンイミドエステル(GMBS)またはN−スクシンイミジル−(3−ピリジル−ジチオ)−プロピオネート(SPDP)であることがより好ましい。用語の「結合」には、例えば、好意的なスペーサー基の提供による直接的または間接的結合が含まれる。例えば、結合した構成要素は、共有結合的に結合して、単一の活性部分/構成要素を形成し得る。あるいは、結合した構成要素は、他の構成要素に結合することもできる。国際公開第95/10301号パンフレットは、抗原を粘膜結合分子に、直接的または間接的に結合させ得る方法を教示している。
【0107】
CTBまたはLTBに基づいて融合蛋白質を作製する方法もまた記載されており、この方法においては、対象となる異種抗原のTまたはBエピトープのいずれかまたは双方をコードする核酸が、CTBのN末端またはC末端のいずれかまたは双方のコード配列に遺伝子融合されるか、あるいはCTBまたはLTBコード配列における鎖内位置、またはCTAもしくはLTAにおける類似位置に配置される(Backstrom et al., Gene 1995; 165: 163-171、Baeckstroem et al., Gene 1994;149: 211-217、Schoedel et al., Gene 1991; 99: 255259)。CTAまたはLTAのカルボキシ末端またはアミノ末端にペプチドを融合させ、これらの融合蛋白質をCTBまたはLTBと共に共発現させる方法もまた記載されている(Sanchez et al. FEBS Lett. 1986; 208: 194-198、Sanchez et al. FEBS Lett. 1997; 401: 95-97)。
【0108】
例えば、融合蛋白質を発現させるためのプロモーター、コレラ毒素結合サブユニットCTBのDNA配列、および免疫原性ペプチドコード配列を含有するベクターを用いて遺伝子融合体を調製できる。CTBおよび免疫原性ペプチドコード配列を、融合蛋白質を産生する適切なリーディングフレーム内にあるように結合させる。該融合蛋白質を発現させ、分泌させ、ワクチンとして使用するために精製する。ハイブリッドCTB/LTB蛋白質もまた、国際公開第96/34893号パンフレットにおける教示にしたがい、または当業界の公知の方法によって調製できる。これらの発現ハイブリッド蛋白質は成熟CTB配列を含み得るが、この配列においては、アミノ酸残基が、前記免疫原性成熟CTBに特徴的なLTB特異的エピトープを付与する成熟LTBの対応するアミノ酸残基によって置換されている(例えば、LCTBAと呼ばれるハイブリッド分子が生じる)。逆に、ハイブリッド蛋白質は、成熟LTB配列を含み得るが、この配列においては、アミノ酸残基が、前記免疫原性成熟LTBに特徴的なCTB特異的エピトープを付与する成熟CTBの対応するアミノ酸残基によって置換されている(例えば、LCTBBと呼ばれるハイブリッド分子が生じる)。さらに、LCTBA分子とLCTBB分子を組み合わせる第3のハイブリッド蛋白質が考察されている(国際公開第96/34893号パンフレットおよびLebens et al (1996) Infect and Immunity 64(6); 2144-2150 を参照)。
【0109】
CTB作製方法
CTBをコードする遺伝子の例としては、限定はしないが、やはり図14に示されているCTB遺伝子、配列番号1および表1におけるGI登録番号の下に指定されたものが挙げられる。CTB遺伝子は、発現ベクター内に挿入される。安定な発現ベクターは、従来の方法を用いて作製され、細菌内に形質転換させ得る。
【0110】
本明細書に用いられている用語の「形質転換」とは、宿主細胞が導入された遺伝子または配列を発現するように、宿主細胞、異種遺伝子、DNAまたはRNAなどのヌクレオチド配列中へ外因性ポリヌクレオチドを挿入することを言い、それは、典型的には、導入された遺伝子または配列によってコードされるRNAだが、導入された遺伝子または配列によってコードされる蛋白質または酵素でもある。挿入には、限定はしないが、直接的取込み、トランスダクション、f−メイティング(mating)、CaClまたは二価カチオンおよびDMSOなどの他の試剤の使用または電気穿孔などの任意の方法が使用できる。異種または外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター、例えばプラスミドとして維持することもできるし、あるいは、宿主ゲノム内に組み込むことができる。
【0111】
形質転換操作は、通常、形質転換される細菌種によって変化する。例えば、[Masson et al. (1989) FEMS Microbiol. Lett. 60:273; Palva et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:5582;欧州特許出願公開第036 259号および欧州特許出願公開第063 953号;国際公開第84/04541号パンフレット、バシラス]、[Miller et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:856; Wang et al. (1990) J. Bacteriol. 172:949、カンピロバクター(Campylobacter)]、[Cohen et al. (1973) Proc. Natl. Acad. Sci. 69:2110; Dower et al. (1988) Nucleic Acids Res. 16:6127; Kushner (1978) "An improved method for transformation of Escherichia coli with ColE1-derived plasmids. In Genetic Engineering: Proceedings of the International Symposium on Genetic Engineering (eds. H. W. Boyer and S. Nicosia); Mandel et al. (1970) J. Mol. Biol. 53:159; Taketo (1988) Biochim. Biophys. Acta 949:318、大腸菌(Escherichia)]、[Chassy et al. (1987) FEMS Microbiol. Lett. 25 44:173 乳酸菌(Lactobacillus)]、[Fiedler et al. (1988) Anal. Biochem 170:38、シュードモナス(Pseudomonas)]、[Augustin et al. (1990) FEMS Microbiol. Lett. 66:203、ブドウ球菌(Staphylococcus)]、[Barany et al. (1980) J. Bacteriol. 144:698; Harlander (1987) "Transformation of Streptococcus lactis by electroporation, in: Streptococcal Genetics (ed. J. Ferretti and R. Curtiss III); Perry et al. (1981) Infec. Immun. 32:1295; Powell et al. (1988) Appl. Environ. Microbiol. 54:655; Somkuti et al. (1987) Proc. 4th Evr. Cong. Biotechnology 1:412、連鎖球菌(Streptococcus)]を参照されたい。
【0112】
導入されたDNAまたはRNAを受容し、発現する宿主細胞は「形質転換」され、「形質転換体」または「クローン」である。宿主細胞に導入されるDNAまたはRNAは、宿主細胞と同じ属または種の細胞、または異なった属または種の細胞など、任意の供給源に由来し得る。
【0113】
コレラ菌宿主細胞などの原核宿主細胞内に安定な発現ベクターを導入する手段は当業界に知られている。好適な方法の例としては、限定はしないが、電気穿孔、共役および電気泳動が挙げられる。形質転換されたコロニーは、標準的なスクリーニング法および選択法を用いてスクリーンし、正しい取込みに関して選択できる。CTBの発現は、CTBが過剰産生され、増殖培地中に蓄積するように設計される。
【0114】
培養後、本明細書に記載されたとおり、本発明の発現システムによって産生されたCTBサブユニット蛋白質は、例えば、クロマトグラフィー、沈殿、および/または密度勾配遠心分離によって精製できる。このようにして得られたCTB蛋白質は、ワクチンとして使用でき、または受動免疫に使用できる、前記ペプチドに向けられた抗体の産生のために使用できる。
【0115】
本明細書に記載された発現システムによって産生されたCTBは、標準的な硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換およびアフィニティークロマトグラフィー法(国際公開第01/27144号パンフレットに概説されたような)を用いて、培養濾液から精製できる。CTBは、GM−1 ELISA、比色分析蛋白質アッセイ(A280、Lowry、Bradford、BCA)、ウエスタンブロット(Western Blots)および一元放射状免疫拡散法(SRI)ならびにマンツィーニ(Mancini)試験(実施例に記載されたような)を用いて特性化される。汚染物質が実質的に無い精製物質は、少なくとも50%純粋であることが好ましく、少なくとも90%純粋であることがより好ましく、少なくとも99%純粋であることがさらに好ましい。純度は、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、免疫アッセイ、組成分析、生物学的アッセイ、および他の当業界に公知の方法によって評価できる。
【0116】
単離CTB
該発現システムは、抗生物質抵抗性マーカーを発現せず、したがって、該発現システムにおいて抗生物質添加物の使用は必要ないので、本明細書に記載された方法によって得ることができる安定に発現された単離CTBは、事実上、残留抗生物質を含まない。
【0117】
一実施形態において、コレラ菌宿主細胞は、少なくとも1つの異種抗原を発現する。
【0118】
他の実施形態において、コレラ菌宿主細胞は多価性であるように、多数の異なった抗原を発現する。
【実施例】
【0119】
本発明はまた、本明細書の下記に示される具体的な実施例を含めた実施例によって説明され、以下の図を参照にする。本明細書のどこにおいても、このような実施例の使用は、単に例示的なものであって、決して本発明および例証した用語の範囲および意味を限定するものではない。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
【表3−1】

【表3−2】

【0123】
実施例I
A.原材料
ctxB遺伝子の出所は、コレラ菌血清型O1株395(Ogawa)〔2〕である。eltBシグナル配列は、プラスミドpMMB68〔3〕から得た。eltBとctxB遺伝子の連結は、〔4〕に記載されている。
複製起点は、pBlueScriptKS(Stratagene)から得られたColE1である。
pMT−ctxBthyA−2に用いられるtacプロモーターの出所は、プラスミドpkk223−3(Pharmacia)に由来する。
大腸菌thyA遺伝子のPCR増幅に用いられるDNA配列は、大腸菌SY327〔5〕である。
染色体コレラ菌thyA座の不活化に用いられるKan耐性遺伝子ブロックは、pUC4K(Pharmacia)から得られた。
コレラ菌thyA座の部位特異的変異に用いられる自殺ベクターは、〔7〕に記載されたpNQ705〔6〕およびpDM4であった。
コレラ菌thyA遺伝子の配列は、SBL VaccinABにおいて決定されており、登録番号AJ006514の下、EMBL/ジーンバンクに公示されている。
【0124】
A.1 rCTB産生のためのコレラ菌Inaba株401古典的バイオタイプの構築
A.1.2. 宿主株コレラ菌JS1569ΔthyAΔKanの構築
コレラ菌株JS1569ΔthyAΔkanは、本来、コレラ菌株569B;ATCC No25870に由来する古典的O1リファンピシン耐性コレラ株である。該コレラ腸毒素遺伝子の2つのコピーを、部位特異的変異により欠失させた。減毒は、コレラ毒素Aサブユニット遺伝子の欠失からなる〔9〕。thyA遺伝子の欠失および挿入不活化は、以下に記載されている。
【0125】
A.1.3. コレラ菌JS1569におけるthyA遺伝子の不活化
JS1569〔Carlinら、ジーンバンク登録番号AJ006514〕由来thyA遺伝子の単離および配列決定の過程で、thyA遺伝子全体を包含する大腸菌HindIII断片が1.4kbDNA断片にて、ベクターpUC19中にクローン化された。このプラスミドは、thyA1.4と呼ばれる(図1)。
【0126】
A.1.4. Kan遺伝子ブロックの挿入によるthyA遺伝子の不活化
プラスミドpthyA1.4を、PstIにより開裂し、pUC4K(Pharmacia Biotech)由来Kan遺伝子ブロックのPstI断片に連結した。該連結混合物を大腸菌HB101内にエレクトロポレーションし、アンピシリンおよびカナマイシンを含有するSyncase寒天プレートで平板培養により、形質転換体を選択した。このプラスミドは、pthyA Kanと呼ばれる(図2)。
【0127】
thyA Kan遺伝子は、高い配列正確性でPCR断片を生成させるTaqおよびPwoDNAポリメラーゼ混合物を用いて、pthyA KanからPCR増幅した(Expand(登録商標)高正確性PCRシステム、Boehringer Mannheim)。用いられたプライマーは、thyA−10 GCT CTA GAG CCT TAG AAG GCG TGG TTC(配列番号7)およびthyA−11 GCT CTA GAG CTA CGG TCT TGT TTT ACG GTA T(配列番号8)であり、Xbal末端を有するPCR断片を生じた(図3)。
【0128】
この断片を、上記のとおり、Xbalにより消化し、Xbalにより消化されたベクターpMAL−C2に連結し、脱リン酸化した。断片のサイズおよび方向は、制限酵素分析により確認した。
【0129】
A.1.5 部位特異的変異誘発によるコレラ菌染色体内thyA遺伝子の挿入不活化
自殺ベクターpNQ705〔6〕(図4)は、複製起点R6Kを含有しており、したがって、pir遺伝子を有する宿主内に維持される必要がある。また、それは、mobRP4遺伝子およびCAT遺伝子を含有し、クロラムフェニコール選択が可能となる。
thyA Kan遺伝子をXbal断片として、pMAL−C2から切り出し、Xbal消化したpNQ705内に連結した(図4)。該連結混合物を大腸菌SY327〔Δ(lac pro)argE(Am)rif malA recA56〕中にエレクトロポレーションし、形質転換体をクロラムフェニコール含有プレートで選択した。再ストリークした個々のコロニーを、挿入体の存在および方向に関して、制限酵素により分析した。
【0130】
生じたプラスミドpNQ705thyA Kanを、大腸菌S17−1(thi pro hsdR hsdM recA RP4−2−Tc::Mu−Km::Tn7)内へのエレクトロポレーションにより形質転換した。37℃で、リファンピシン(50μg/ml)、チミン(200μg/ml)およびカナマイシン(50μg/ml)を添加したLB寒天でのストリークメイティングとして、JS1569 thyA(thyA遺伝子〔10〕に1つの点変異を有するJS1569のトリメトプリン耐性変種)と大腸菌S17−1(pNQ705 thyA Kan)とのメイティングを行った。接合から生じた個々のコロニーを、上記のとおり、リファンピシン、チミンおよびカナマイシン添加物を有する液体LBブロスに移し、この培地で3日間継代した。
この時点で、トランス接合体を、thyA Kan遺伝子の挿入に関してPCRで試験した。予想されたPCR断片を有した培養物を、上記のとおりの添加物を有するLB寒天で培養した。
【0131】
次に、個々のコロニーを、取り出し、クロラムフェニコール(25μg/ml)に対する感受性およびカナマイシンに対する耐性に関して試験した。これらのコロニーを再ストリークし、個々のコロニーを凍結させた。この株は増殖に関してチミン依存性の表現型であった。
【0132】
A.1.6. Kan遺伝子の挿入不活化およびthyA遺伝子の欠失
この株のチミン依存の安定性をさらに確認するために、機能性Kan遺伝子を、切断非機能性の変形型と置き換え、thyA遺伝子の大部分を除去するように、実験設計した。この実験のために、Xbal末端を有するthyA Kan断片を、Xbal消化したpNEB193(New England Biolabs)内にサブクローン化した。双方ともXhol開裂端を含む2種のPCRプライマー、thyA−14およびthyA−15を設計した。これらのプライマーは、thyA遺伝子における209個の塩基対を除去し、Kan遺伝子における144個の塩基対を除去(Kan遺伝子ブロックから、合計266bp)するように設計された。Kan遺伝子における欠失は、Kan遺伝子の最初の48個のアミノ酸を含んでおり、これにより、トランス接合体Kanを首尾よく作製できる。生じたPCR断片をXholによって開裂させ、自己連結させ、大腸菌内に形質転換し、形質転換体を、アンピシリン含有寒天で選択した。コロニーを、カナマイシン感受性に関して試験し、制限酵素分析によって欠失を確認した。
【0133】
このプラスミドから、生じたΔthyA Δkan断片をXbal断片として切除した。この断片を、Xbalによって消化した自殺ベクターpDM4内に挿入した。pDM4は、pNQ705から、マルチクローニング部位の置換、および枯草菌由来のSacB遺伝子の挿入により誘導した。SacB遺伝子は、グラム陰性菌にとって致命的であるレバンスクラーゼ遺伝子をコードする。該連結混合物を大腸菌SY327内に形質転換させ、形質転換体を、クロラムフェニコールに関して選択した。挿入体のサイズおよび方向は、制限酵素分析により確認した。メイティング実験のため、プラスミドpDM4ΔthyAΔKanを、大腸菌S−17内に形質転換させた。リファンピシン、クロラムフェニコールおよびチミンを含有するLBプレートで、大腸菌S−17(pDM4ΔthyA ΔKan)とJS1569 ΔthyA Kanとのメイティングを実施した。トランス接合体を、リファンピシン、クロラムフェニコールおよびチミンを有するLBブロスでさらに増殖させた。この培地で3日間継代後、コロニーを、チミンおよび5%スクロースを含有するLBプレートで培養した。これらのプレートに出現したコロニーを、チミン有無の培地、クロラムフェニコール含有チミンプレートおよびカナマイシン含有プレート上で増殖させるためのレプリカ培養によって試験した。チミン要求を有するクロラムフェニコールおよびカナマイシン感受性コロニーを選択し、thyA Kan遺伝子ブロックをΔthyA ΔKanインサートに置換するための適切なプライマーにより、PCRで試験した。この株の単一コロニーを再ストリークした。これらのコロニーに関して、遺伝子型(リファンピシン耐性、ctxA座の欠失、チミン依存性、クロラムフェニコールおよびカナマイシン感受性)の再確認を行い、その株をJS1569ΔthyA ΔKanと名づけた。
【0134】
さらなる特性化は、PCR増幅およびこの株中の修飾染色体thyA座の部分配列決定を含んだ。最初のメイティング実験に用いられたトリメトプリム耐性thyA株における点変異は、野生型に変えられたが、すなわち、この株のチミン依存性は、thyA遺伝子のさらなる下流の欠失により引き起こされることが判明した。DNA配列決定はまた、thyAの欠失およびKan遺伝子ブロックを確認した(データは示していない)。
【0135】
B. 発現プラスミドpMT−ctxBthyA−2
B.1.1. 大腸菌thyA遺伝子のクローニング
大腸菌thyA遺伝子のクローニング関して公表された配列(ジーンバンク登録番号J01709)を、PCRプライマーを設計するために使用した。
【化1】

太字は、公表された配列(センス鎖上の塩基16〜39)からの配列を示し、イタリック文字は、配列に加えられたXhol部位を示す。

【化2】

太字は、公表された配列(非センス鎖上の塩基1152〜1128)からの配列を示し、イタリック文字は、配列に加えられたSall部位を示す。
これらのプライマー類は、大腸菌SY327からthyA遺伝子を増幅させるために用いた。
【0136】
生じたPCR断片は、T4ポリメラーゼにより平滑末端修復し、このベクターにおけるEcoRV部位において、pBluescript KS(Stratagene)中にクローン化した。連結されたプラスミドを大腸菌XL1−Blue(Stratagene)内に入れて形質転換させた。形質転換体は、X−GalおよびIPTGの存在下、青色/白色コロニーを基準にしてアンピシリンで補足されたLBプレート上で選択された。挿入された断片のサイズおよび方向は、制限酵素の開裂により確認された。thyA遺伝子の機能性は、組換えプラスミドをJS1569 thyA中にエレクトロポレーションすることにより、またチミン不在下での修飾syncase培地上のアンピシリン耐性および増殖双方の選択により確認された。このプラスミドは、pML−thyA(XS)と呼ばれる。
【0137】
B.1.2. 大腸菌thyA遺伝子を有するクローニングベクターの生成
大腸菌thyA遺伝子のクローニングのため、ベクターpML−X1を用いた(図8)。このプラスミド源は、pBC SK(Stratagene)である。pML−X1において、複製起点(ColE1)には、独特なBglIIおよびStul部位が側面に位置し、それはまた、pBC SK由来のクロラムフェニコール(cat)遺伝子を有する(図8)。
pML−X1 DNAは、Agel/Stul制限酵素により消化され、T4ポリメラーゼにより平滑末端修復された。
【0138】
pML−thyA(XS)ベクターは、BamHI/SalIにより消化され、また、平滑末端修復された(図8)。2つのDNA調製物を混合し、連結した。該連結混合物をJS1569 4.4(そのthyA遺伝子において単一点変異を有するJS1569のトリメトプリム耐性変種)中にエレクトロポレーションし、チミン依存性およびクロラムフェニコール耐性を選択した。生じたプラスミドpMT−thyA/catを再ストリークし、広範囲な制限酵素分析に供し、その異なる成分のサイズおよび方向を確認した(図8)。
【0139】
B.1.3. ctxBのpMT−thyA/catへの挿入
所望のctxB遺伝子をpMT−thyA/catプラスミド中へ挿入するために、プラスミドpML−LCTBλ2から1.2kb EcoRI/Xhol断片を得た。プラスミドpML−LCTBλ2は、以前に記載されており[4]、簡単に言えば、ctxB遺伝子がプラスミドpCVD30から単離された[2]。pCVD30プラスミドに含まれているctxB遺伝子は[2]、コレラ菌血清型O1株395(Ogawa)から由来する。
【0140】
pML−LCTBλ2におけるctxB遺伝子を、天然Sacl部位が使用できるような方法で、大腸菌の易熱性腸毒素由来のeltBシグナルペプチドに上流で融合する(図9)。これはまた、天然トレオニンよりもアラニンをN−末端アミノ酸として導入する。N−末端配列およびシグナルペプチドのこの修飾は、先に用いられたpJS752−3と比べて、単一のN−末端配列のみが、rCTBのためのこの新規な発現プラスミドから形成されるということを導いている(下記のC.2節を参照)。pML−LCTBλ2由来のEcoRI/Xhol断片上のctxB遺伝子の下流に、強力なtrpAターミネーターが配置され、m−RNA転写を効果的に終了させる。pML−LCTBλ2由来のEcoRI/Xhol断片を、同一の酵素により消化させたpMT−thyA/catプラスミドに連結し(図10)、eltbシグナルペプチドの上流プロモーターを欠如するプラスミドpMT−thyA/cat(ctxB)を生じた。
【0141】
B.1.4. tacプロモーターのpMT−thyA/cat(ctxB)への挿入
tacプロモーターは、起源としてクローニングベクターpKK223−3(Pharmacia)から得られた256塩基対のBamHI/EcoRI断片として挿入された(図11)。この反応由来の連結DNAをコレラ菌JS1569 4.4に導入し、コロニーを、チミン不在下での増殖および耐クロラムフェニコールに基づいて選択した。形質転換体は、組換えプラスミドの制限酵素分析およびCTBの産生の双方によりスクリーンされた。GM1−ELISAにより判定された最高のrCTB産生を伴う単一コロニーを選択した。組換えプラスミドは、pMT−ctxB/thyA(cat)と命名された。
【0142】
B.1.5. cat遺伝子の除去
cat遺伝子を除去するため、すなわち、いずれの抗生物質選択マーカーも有さない発現プラスミドを得るために、pMT−ctxB/thyA(cat)プラスミドを、制限酵素BamHIおよびBglIIにより消化した。切断されたプラスミドを再連結させ、再度コレラ菌株JS1569 4.4中にエレクトロポレーションした。形質転換体は、チミンの不在下およびクロラムフェニコールの不在下での増殖に基づいて選択された。個々のコロニーを、クロラムフェニコールに対する感受性についてスクリーンし、Wizard Minipreppsにおけるプラスミドの存在をチェックした。プラスミドは、制限酵素により分析された。これらコロニー由来の培養上澄液をGM1 ELISAに供した。生じたプラスミドは、pMT−ctxB/thyAであった(図12)。
【0143】
B.1.6. pMT−ctxB/thyAからの余分なコレラ菌DNAの除去、pMT−ctxBthyA−2の生成
pML−LCTBλ2由来のEcoRI/Xhol断片は、およそ1200塩基対からなり、これらのうち約400塩基対だけがctxB遺伝子をコードする。ctxBの他の方向に向かう1つのリーディングフレーム内に、pyrFオペロン中のorfF蛋白質をコードする可能性があるオープンリーディングフレームがある。この配列は不完全であり、したがって、恐らく発現されない。非コードCTB部分を除くために、PCRプライマーは、まず、ctxB遺伝子の末端(下記のイタリックにおいて)およびSpel部位(下記の太字において)を含むように設計された。他のPCRプライマーは、trpAターミネーター(下記のイタリックにおいて)、またSpel部位(下記の太字において)を含むように設計された。
【化3】

【化4】

【0144】
pMT−ctxB/thyAプラスミドは、PCR反応の鋳型として寄与した。正しいサイズのPCR断片を得た後、これをゲル精製し、Spelにより消化した。このプラスミドを自己連結させ、コレラ菌JS1569 4.4にエレクトロポレーションした。形質転換体をチミン不在下での増殖に基づいて選択し、単一コロニーを単離し、再ストリークし、これらの培養物由来のプラスミドDNAを制限酵素分析により分析した。全orfFコード配列を含むおよそ800塩基対のDNAを除去した。GM1 ELISAは、これがCTBの発現に影響を及ぼさなかったことを示した。
【0145】
生じたプラスミドは、pMT−ctxBthyA−2と呼ばれ、rCTB産生株コレラ菌株401を形成するために宿主株コレラ菌JS1569 ΔthyAΔkanと共に用いられる最終構築物である。
【0146】
B.1.7. コレラ菌JS1569 ΔthyAΔkanへのpMT−ctxBthyA−2の挿入
コレラ菌JS1569 4.4中のpMT−ctxBthyA−2由来のプラスミド調製物を、コレラ菌JS1569 ΔthyAΔkan中へエレクトロポレーションすることにより、コレラ菌株のInaba株401古典的バイオタイプを形成した。形質転換体は、チミン不在下で増殖する能力に関して選択された。個々のコロニーは、CTBおよびLTB(大腸菌易熱性腸毒素)の双方に特異的なモノクローナル抗体を用いて、ニトロセルロースフィルタ(下記のSBL試験法PT00020)上でのコロニーリフトによって、rCTBを産生能について試験した。コロニーを再ストリークして単一コロニーを得、これらのコロニーの培養物を、プラスミド分析および拡大制限分析に用い、最後に凍結した。
【0147】
SBL試験法PT00020
これは、産生能力を失ったものからrCTBを産生できるrCTB産生株のコロニーを見分けるために使用する方法である。使用される方法論は、ニトロセルロースフィルタにコロニーを移して、寒天プレート上に試験される細菌コロニーを増殖させることからなる。このフィルタを、ペンタマーrCTBに特異的なモノクローナル抗体と共にインキュベートし、洗浄してから、抗マウスIgGアルカリホスファターゼコンジュゲートと共にインキュベートする。洗浄後、フィルタを沈降染料で展開し、青黒色のrCTBコロニーが残るが、非産生コロニーは、本質的に無色のままである。
【0148】
C. pMT−ctxBthyA−2発現ベクターを有するコレラ菌JS1569 ΔthyAΔkan株の説明:コレラ菌401株
C.1 ctxB遺伝子のヌクレオチド配列および翻訳されたポリペプチドのアミノ酸配列
C1.1 ctxB遺伝子の詳細なヌクレオチド配列およびフランキング領域
プラスミドDNAは、CsCl勾配超遠心分離から精製し、配列決定した。プラスミドpMT−ctxBthyA−2の完全なヌクレオチド配列は、図14に示している。該プラスミドの95%は、シードロットの産生前の段階で配列決定(完全に)された。マスターワーキングシード(Master Working Seed)ロットにおいて、ctxB遺伝子に対するコード領域を、(図13に示されるように)マスターシードロットバンクにおいて2つの異なるチューブから配列決定した。3つの一貫したロットから産生細胞の終末もまた配列決定された。マスターシードロットならびに一貫したロットの双方から得られた配列は、100%同一性を示す。
【0149】
C.2 熟成組換え蛋白質のアミノ末端配列
図15において、コレラ菌401株により産生されたrCTBのアミノ酸配列を、大腸菌由来の天然CTBおよび天然LTB毒素のアミノ酸配列と比較する。図15に見られるように、LTBおよびrCTB 401のシグナルペプチドのアミノ酸配列は、その成熟蛋白質のN−末端アミノ酸である場合、同一である。天然CTB(古典的バイオタイプ)とrCTB 401とを比較すると、唯一の相違がN−末端アミノ酸である(天然CTBではトレオニン、rCTB 401ではアラニン)ことを示す。この修飾は、ctxB配列に結合したeltBシグナル配列をも有するrCTB 213分子を用いる以前の経験により正当化されている[9]。また、その時点で利用できる組換えDNA技法の方法により、このrCTB 213分子の配列連結領域に含まれる4つの追加のアミノ酸が存在した[9]。
【0150】
発酵槽規模の製造におけるrCTB 213による経験では、アミノ末端が異なる6種までのrCTB種が単離し得ることが明らかとなった。この知識を考慮して、rCTB 401結合は、結合領域内の余分なアミノ酸が除去されるように、また、N−末端アミノ酸が天然LTBのものと同一であるように、すなわちアラニンに置換されるように設計された。この修飾は、それ自体利点があることが証明された。発酵時間および条件にかかわりなく、rCTB 401の全ての実験的一貫性バッチにおいて単離されたrCTB 401において、N−末端は1つだけであった。
【0151】
C.3. 発現様式
ctxB遺伝子を潜伏させるpMT−ctxBthyA−2プラスミドは、強力なリプレッサー遺伝子(lacl)を含有しない。コレラ菌において、ゲノムにリプレッサー(lacl)が存在するかどうか知られていない。コレラ菌は、乳糖を発酵しないが、lacZ遺伝子を有する[12]。最終的なリプレッサーは、laclと効力が同じではなく、また高コピー数のプラスミド上に配置されるプロモーター(tacP)よりも極めて少量で存在すると仮定することは妥当である。その結果、agctbの発現は、実際構成的である。
【0152】
D. 発現システムの安定性
D.1. 貯蔵安定性
コレラ菌株401のマスターロットおよびワーキングシードロットは、それぞれ−65℃以下で1年未満の間貯蔵されている。マスターロットおよびワーキングシードロット双方の遺伝的安定性は、一貫したロット製造で増殖された場合、100%のコロニーがrCTBを生産することから、貯蔵6ヵ月後に立証されている。コレラ菌株213を産生するrCTBのシードロットシステムによる以前の経験から、その株に関して7年超優れた安定性があることが示されている。マスターロットおよびワーキングシードロットは、5年ごとの試験による安定性試験のプログラムに含まれている。
【0153】
D.2. 培養時間の延長における安定性
プラスミド保持安定性およびrCTB生産安定性を調べるために設計された実験において、コレラ菌株401を、Modified Syncaseブロス中、37℃でシェーカ上で増殖させた。毎日この培養物を、新鮮な培地で10,000倍希釈した。これは、11日間行った。7日目と11日目に培養物を、Modified Syncase寒天上に拡げ、rCTBを産生するコロニーの能力を、LTBに特異的なモノクローナル抗体およびCTBとの交差反応を用いてコロニーブロット法[下記のとおりSBLワクチン試験法PT00020]により試験した。100世代超(11日間の増殖)後、100%のコロニーが、rCTBを産生する能力を保持した。
【0154】
SBL試験法PT00020
上記に示されたとおり(例えば、B.1.7.節を参照)、PT00020は、産生能力を失ったものからrCTBを産生できるrCTB産生株のコロニーを見分けるために使用する方法である。使用される方法論は、ニトロセルロースフィルタにコロニーを移して、寒天プレート上に試験される細菌コロニーを増殖させることからなる。このフィルタを、ペンタマーrCTBに特異的なモノクローナル抗体と共に温置し、洗浄してから、抗マウスIgGアルカリホスファターゼ複合体と温置する。洗浄後、フィルタを沈降染料で展開し、青黒色のrCTBコロニーが残るが、非産生コロニーは、本質的に無色のままである。
【0155】
D.3. 製造安定性
コレラ菌株401の製造スケールは、500リットルである。培地は、グルコースがショ糖の代わりに用いられること以外、上記に使用されたものと同じmodified syncase培地である。プラスミド保持を調べるため、また一貫性を示すために、3連続の500リットルの製造発酵から中断点でサンプルを採取した。主要500リットルの発酵槽中、37℃でおよそ18時間後、100%の細胞は、rCTB製造能力を保持している。
【0156】
D.4. 製造発酵中の遺伝子構築物の安定性
遺伝子構築物の安定性を示すために、DNAをコレラ菌株401の中断点の採取から調製した。プラスミドDNAを、CsCl超音波処理により精製し、図13に要約されているように配列決定した。コンセンサス配列における第1の塩基は、pMT−ctxBthyA−2 DNA中の塩基番号2210に相当し、最後の塩基は、pMT−ctxBthyA−2中の塩基220に相当する。配列決定された領域は、tacプロモーター前の配列、eltB−ctxB全体およびthyA遺伝子のコード領域内の末端18塩基を包含する。製造発酵時に採取されたサンプルから決定された配列は、シードロットから得られたものと同一のtacプロモーターのDNA配列、eltb−ctxB遺伝子およびフランキングDNAを示すことにより、構築物の安定性を立証した。
【0157】
比較例I
「401」株 対 「213」株
213製造システム
先行技術の213コレラ菌発現システムにおいて産生されるrCTB構成要素は以下に要約している:
ctxA欠失コレラ菌O1(JS1569)を、異種プロモーターの制御下でCTBの遺伝子配列を含有するプラスミド(pJS752−3と称される)により形質移入され、CTBコード配列は、異種リーダーポリペプチド(大腸菌LTリーダー配列)をコードする配列に結合して宿主細胞からCTBの分泌を促進させる。pJS752−3プラスミドは、プラスミドJS162中のCTB遺伝子の切除により、また、IPTG依存の原因であるPJS162に存在するlaclq遺伝子ではなくてtacPプロモーターを含有するプラスミドベクターPKK223−1に遺伝子を挿入することにより調製された(これらのプラスミド類を調製するより詳細な方法および使用法に関しては、本明細書に記載され、Sanchez and Holmgren (1989) ibidおよび米国特許第5268276号明細書、同第58234246号明細書および同第6043057号明細書ならびに欧州特許第0368819B号明細書に提供されている)。
【0158】
pJS752−3プラスミドは、抗生物質選択性マーカー(アンピシリン耐性マーカー)をさらに含み、CTB配列を含有する好適なプラスミド類の選択を可能にする。発現ベクター(pJS752−3)によるコレラ菌産生株(JS1569)の指定はコレラ菌213株である。
【0159】
CTBが過剰発現され、モノマー形態で213産生株から分泌されたが、その後、特徴的なペンタマー環様構造に構築されて、およそ58kDaの分子量を有するrCTBを提供する。この方法において、rCTBは、コレラ腸毒素の非毒性部分(毒素Aサブユニットは、製造株から遺伝子的に削除されていることから)のみから構成されるが、腸管上皮細胞表面上のGM−1受容体に結合する能力を保持する(この発現システムに関するより詳細は、米国特許第5268276号明細書、米国特許第58234246号明細書および米国特許第6043057号明細書、欧州特許第0368819号明細書およびSanchez et al (1989) (ibid) を参照)。
【0160】
「401」発現システム
本明細書に記載されるように、thyA遺伝子の機能性を欠くJS 1569コレラ菌産生株の誘導体が、製造された(例えば、thyA遺伝子が除去され得るか、または遺伝学的に無能にされ得る)。機能性thyAは、プラスミドを保持し、チミンの不在下で(国際公開第99/61634号パンフレットに記載されているように)増殖できないコレラ菌宿主細胞の選択を可能にする発現プラスミドにおいて提供される。本明細書に記載されている発現ベクター(pMT−CtxBthyA−2)による誘導コレラ菌産生株(JS1569 ΔthyAΔkan)の名称は、CTB産生401コレラ菌株である。
【0161】
【表4】

【0162】
表4のデータは、発酵時間の終了時にthyA欠失コレラ菌株(「401」株と呼ばれる)から約1.4mg/mlのrCTBの平均収量が、「213」株からのrCTB収量(0.4mg/ml)よりも3〜4倍大きな範囲であることを表示している。
【0163】
rCTB濃度を測定するために用いられる方法は、高度に精製されたrCTB対する抗血清を用いてマンツィーニ(Mancini)試験(Mancini et al (1965) Immunochem 2: 235-254: Immunochemical quantitation of antigen by single radial immunodiffusion)としても公知の一元放射免疫拡散法(SRI)である。検量線を調製するために用いられるrCTB標品は、多くの蛋白質試験により特性化されている高度に精製されたrCTBである。
【0164】
この収量(1.4mg/ml)は、野生型コレラ菌569B株から報告されたものよりも約50倍であり、SanchezおよびHolmgren(1989)により報告されたものよりも約20倍である。
【0165】
比較例Iの考察
先行技術「213」製造システムおよび「401」製造システムで用いられた発現プラスミド間の主たる相違は、表3に要約されている。これらには、より小さなプラスミドサイズ、および抗生物質耐性マーカーの不在、「213」株に比して「401」株からのrCTBのより高い収量が含まれている。
【0166】
理論に拘束されることは望まないが、発現ベクターのサイズ減少をもたらすctxB遺伝子の非コードコレラ菌DNAの下流の一部の除去は、安定性の改善およびCTB最終産物の収量改善に役立っていると考えられる。プラスミド安定性改善の例により、該カセットを含有するプラスミドは、抗生物質選択の不在下でも100世代後の培養物において細菌細胞が依然として100%存在した。「401」株における抗生物質耐性マーカーの不在もまた、より安全でより安価なCTB最終産物の点から利点がある。製造されたrCTBもまた、より均質なCTB産物が製造されることから有利である。この点において、産生株が401株である場合、1種のrCTBのみが製造され、このrCTB配列は、単一N−末端変異(トレオニン(Thr)のアラニン(Ala)への置換)において野生型CTB配列とは異なる。対照的に、産生株が213株である場合、CTB配列のN−末端残基内に生じる少なくとも2つの異なる変異があるので、最終rCTB産物は、実際、僅かに異なるrCTBアミノ酸配列を含有する(Sanchez and Holmgren 1989 (ibid))。
【0167】
比較例II
358株(Lebens)および401発現システムを用いて製造されたCTBのレベル
Lebens et al (1993) (ibid)の製造システムに用いられた発現プラスミド類と「401」製造システムとの間の主たる相違は、表3に要約されている。これらには、抗生物質耐性マーカーの不在、およびより小さなプラスミドサイズが含まれている。
【0168】
Lebens et al (1993)に記載されているCTB発現システムは、微生物が増殖する場合いつでも抗生物質の存在を必要とする。抗生物質耐性マーカーは、アンピシリン耐性マーカーである。アンピシリン耐性は、抗生物質を開裂する酵素β−ラクタマーゼの発現のためである。Lebensの発現システムに用いられる「358」株と称されるコレラ菌株は、最適製造を維持するために培地中にアンピシリンの持続的存在を必要とする。したがって、Lebensの発現システムに用いて得られたCTB収量は、「アンピシリンの存在下選択的圧」を用いてのみ得られる。
【0169】
国際公開第01/27144号パンフレットに開示された発現システムを用いて製造されたCTBのレベルおよび「401」発現システム
細菌における組換えCTBの製造
発現プラスミドMS−0(国際公開第01/27144号パンフレットの図2を参照)は、rCTBおよびその変種を発現するために用いられた。rCTB遺伝子を含有するMS−0は、pML−CTBtaclと命名される。プラスミドpML−CTBtaclは、驚くべきことに、比較可能なプラスミド(Sanchez and Holmgren 1989 (ibid)に開示されているベクターpJS162)により生成された産物を5回まで生成する。pML−CTBtaclは、CTBゲノム領域の一部および完全CTBコード領域を、3.66Kb発現プラスミドを創製するプラスミドMS−0中にクローン化することにより構築された。ポリリンカー中のPvull部位は、クローン化時に破壊された。このプラスミドは、pKK223のtacプロモーター、EcoRI−BamHIポリリンカー断片を含有し、ジーンバンク登録番号M77749に見出すことができる。
【0170】
コード化蛋白質は、コレラ菌株569B(配列番号2)の配列と同一である。シグナル配列(配列番号3)もまた、CTBコレラ菌古典的株569B CTB遺伝子から由来する。コレラ菌株569B CTB遺伝子の完全ヌクレオチド配列は国際公開第01/27144号パンフレットの図1(配列番号1)に示している。LTB(配列番号13)のシグナル配列は、MNKVKCYVLFTALLSSLCAYGであり、また国際公開第01/27144号パンフレットの配列リストに示されており、LTBの変異株または変異体の製造に使用できる。
【0171】
401発現システムとの比較
国際公開第01/27144号パンフレットに開示されているCTB製造システムに用いられた発現プラスミドと「401」製造システムとの間の主たる相違は、表3に要約されている。これらには、抗生物質耐性マーカーの不在、より小さなプラスミドサイズ、および国際公開第01/27144号パンフレットに開示されている発現システムから得られた収量に比して「401」株からのrCTBのより高い収量が含まれている。
【0172】
全体の概要
蛋白質の高レベルの転写および翻訳は、多くの因子に依存することが周知である。これらの因子としては、限定はしないが:プロモーター強度、翻訳開始配列、コドン選択、mRNAの二次構造、転写終了、プラスミドのコピー数、プラスミドの安定性および宿主細胞の生理機能が挙げられる。したがって、種々の蛋白質類の発現は、劇的に変化でき、強力なプロモーター単独の使用により、所望の蛋白質の過剰発現の好結果を保証しない。
【0173】
本発明は、抗生物質耐性マーカー以外のマーカー類および抗生物質選択の必要性のない適切な宿主細胞株によるCTB製造システムを用いるCTB収量の改善方法を教示している。該CTB製造システムは、新規な発現ベクターと共に用いられるthyA遺伝子の機能性を欠く細菌宿主細胞を含んでなり、公知の細菌宿主細胞の製造システムにより得られた収量に比してコレラ毒素の組換えBサブユニット(rCTB)の予想外の高収量を生じる。
【0174】
一実施形態において、本発明は、新規な発現ベクターと共に用いられるthyA遺伝子の機能性を欠くコレラ菌宿主細胞を含んでなるCTB製造システムを用いるCTB収量の改善方法を教示し、公知のコレラ菌製造システムにより得られた収量に比してコレラ毒素の組換えBサブユニット(rCTB)の予想外の高収量を生じる。
【0175】
大腸菌のチミジル酸シンターゼ(thyA)遺伝子が、CTB遺伝子を含むプラスミドの選択および維持の手段として用いられる、プラスミド発現ベクターを構築した。CTB遺伝子の非コードコレラ菌DNAの実質的に全てが除去されたことから、該プラスミドは、CTB製造のための公知の発現プラスミドに比してサイズが減じている。
【0176】
この発現システムを用いて得られたCTBの予想外の高収量により、コレラ菌株における異種遺伝子の発現効率およびthyA欠失の補完により維持されたプラスミドの安定性の双方を立証した。さらに、該プラスミドは、極めて安定であることが判明した。100世代に等しい液体培養を介する反復継代後であっても、全ての細胞は、該プラスミドおよび組換え蛋白質を発現する能力を保持した。
【0177】
本明細書に報告された発現システムは、限定はしないが、以下に挙げられる使用のためにCTB産生を促進することから有利である:
コレラおよびLT起因大腸菌の下痢に対する経口ワクチン接種における防御的免疫原;
免疫応答のダウンレギュレーション/調節/脱感作/再方向づけのための免疫調節剤または寛容原性誘導剤または免疫偏向剤;
抗原特異的または非特異的免疫応答を変更、増強、方向づけ、再方向づけ、強化または開始するためのアジュバント;
1つ以上の非関連抗原に対する免疫応答を刺激するための担体;および
診断用または免疫診断用試験に使用するための抗体(モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体など)の製造に関する診断薬。
【0178】
thyA遺伝子の機能性を欠如した安定な細菌宿主細胞株を用いて、比較的高収量のCTBを達成できることは、ワクチン成分としてのCTBの精製および規格化の点から特に有利である。
【0179】
本発明はまた、ヒト使用のためにより安全な製造物をもたらす、本質的に残留抗生物質のない安定なCTB調製物を得る方法を教示する。
【0180】
本発明の精神と範囲
本発明は、本明細書に記載されている具体的な実施形態による範囲に限定するつもりはない。実際、本明細書に記載されたものに加えて本発明の種々の修飾は、前述の説明および添付の図面から当業者にとって明らかになるであろう。このような修飾は、その範囲内に入るように意図されている。
【0181】
全ての値は、近似であり、説明のために提供されていることをさらに理解すべきである。特許、特許出願、刊行物、製造説明およびプロトコルは、本出願を通して引用され、その開示は、全ての目的のために参照としてそれらの全体が本明細書に援用されている。不一致の場合、定義を含む本開示が優先される。
【0182】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】pUC19における1.4kb EcoRI/HindIII断片のクローニングを示す図である。
【図2】pUC19におけるコレラ菌thyA遺伝子のPstI部位にKanR耐性遺伝子ブロックの挿入を示す図である。
【図3】Xbal末端を有するthyA−Kan断片を生成するために使用されたPCRプライマー類を示す図である。
【図4】thyA−Kan断片のXbal制限pNQ705への挿入を示す図である。
【図5】thyA遺伝子の一部およびカナマイシン遺伝子コード領域の開始の除去を示す図である。
【図6】ΔthyAΔKan断片のXbal制限pDM4への挿入を示す図である。
【図7】pUC19における大腸菌thyA遺伝子のPCR増幅およびサブクローニングを示す図である。
【図8】pMT−thyA/catの作出を示す図である。
【図9】pMT−thyA/catにおけるpML−LCTBλ2由来eltb−ctxBコード断片の挿入を示す図である。
【図10】pMT−thyA/cat(ctxB)におけるtacプロモーターの挿入およびpMT−ctxB/thyA(cat)の作出を示す図である。
【図11】cat遺伝子の除去、pMT−ctxB/thyAの作出を示す図である。
【図12】pMT−ctxB/thyAから余分のコレラ菌DNAを除去するためのPCR反応、pMT−ctxBthyA−2の作出を示す図である。
【図13】マスターシードロットおよび一貫性バッチで配列決定されたpMT−ctxBthyA−2の一部をグラフで表したものである。
【図14】発現プラスミドのpMT−ctxBthyA−2のDNA配列を示す図である(204〜295:大腸菌thyAのコード領域;1192〜1876:Col E1複製起点;2339〜2710:eltB−ctxBコード領域;2402〜2710:ctxBコード領域;および2732〜2759:trpAターミネーター)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(c)thyA遺伝子の機能性を欠如するコレラ菌宿主細胞、および
(d)機能性thyA遺伝子およびCTB遺伝子を含んでなる5kb未満のサイズの発現ベクターであって、該CTB遺伝子が、該CTB遺伝子が由来する宿主細胞の天然ゲノムにおいてCTB遺伝子の5’および3’末端に直接隣接するフランキング配列を実質的に有さない発現ベクター
を含んでなるコレラ毒素(CTB)のBサブユニットを産生する発現システム。
【請求項2】
宿主細胞が、CTA遺伝子の機能性を欠如する請求項1に記載の発現システム。
【請求項3】
発現ベクターが、約3kbのサイズである請求項1または2に記載の発現システム。
【請求項4】
発現ベクターが、大腸菌thyA遺伝子を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の発現システム。
【請求項5】
発現ベクターが、配列番号1に示されたヌクレオチド配列を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の発現システム。
【請求項6】
発現ベクターがさらに、異種蛋白質をコードしている少なくとも1つのさらなるヌクレオチド配列を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の発現システム。
【請求項7】
さらなるヌクレオチド配列が、易熱性大腸菌腸毒素LTの非毒性成分または形態をコードし、好ましくは、LTの非毒性成分が、Bサブユニット(LTB)またはその断片である請求項6に記載の発現システム。
【請求項8】
機能的thyA遺伝子およびCTB遺伝子を含んでなる5kb未満のサイズの発現ベクターであって、該CTB遺伝子が、該CTB遺伝子が由来する宿主細胞の天然ゲノムにおいてCTB遺伝子の5’および3’末端に直接隣接するフランキング配列を実質的に有さない発現ベクターで、thyA遺伝子の機能性が欠如しているコレラ菌宿主細胞を形質転換し、
該形質転換したコレラ菌宿主細胞を、CTBの産生を可能にする条件下で培養することを含むCTBの産生方法。
【請求項9】
さらに、宿主細胞からCTBを単離および/または精製することを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
thyA遺伝子およびCTB遺伝子を含んでなる単離核酸構築物であって、該CTB遺伝子は、該CTB遺伝子が由来する宿主細胞の天然ゲノムにおいてCTB遺伝子の5’および3’末端に直接隣接するフランキング配列を実質的に有さず、かつ該核酸構築物のサイズが5kb未満である単離核酸構築物。
【請求項11】
サイズが約3kbである請求項10に記載の核酸構築物。
【請求項12】
プラスミドである請求項10または11に記載の核酸構築物。
【請求項13】
プラスミドが、図13に示される制限エンドヌクレアーゼ地図を特徴とするpMT−ctxBthyA−2である請求項12に記載の核酸構築物。
【請求項14】
プラスミドが、ヌクレオチド配列配列番号1を有する請求項12に記載の核酸構築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【公表番号】特表2007−510413(P2007−510413A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537938(P2006−537938)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001571
【国際公開番号】WO2005/042749
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(506147401)エスベーエル・ワクチン・アクチボラグ (1)
【氏名又は名称原語表記】SBL VACCIN AB
【Fターム(参考)】