説明

コロイダルシリカ

【課題】従来のコロイダルシリカよりも製造が容易で、製造コストが低く、金属不純物による汚染が少なく、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、半導体デバイスウエハ、磁気ディスク基板、水晶基板等の電子材料の研磨加工に用いることのできる新規なコロイダルシリカを提供する。
【解決手段】珪酸アルカリ水溶液を原料としたコロイダルシリカのシリカ粒子をコアとし、その粒子表面をテトラアルコキシシランのアルカリ触媒を用いた加水分解によるシリカからなる厚さ1〜10nmのシェルで被覆したコア・シェル型シリカ粒子を含有することを特徴とするコロイダルシリカである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、半導体デバイスウエハ、磁気ディスク基板、水晶基板等の電子材料の研磨加工に用いることのできるコロイダルシリカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、市販の珪酸アルカリを原料として製造されるコロイダルシリカは、シリコンウエハの研磨材、ブラウン管製造における蛍光体の接着バインダー、電池中の電解液のゲル化剤および揺変剤や飛散防止剤など様々な用途に用いられてきた。しかし珪酸アルカリを原料としたコロイダルシリカは、原料の珪酸アルカリ水溶液に含まれる不純金属成分を含有するため、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、半導体デバイスウエハ、磁気ディスク基板、水晶基板等の電子材料の研磨材としては不適な材料であった。
そのため金属不純物の混入を嫌う分野においては、これら金属不純物を実質的に含まないアルコキシシランのような高純度なシリカ原料から製造された高価なコロイダルシリカ製品を使用していた。
【0003】
通常の珪酸アルカリ水溶液を用いてコロイダルシリカを製造する工程で不純物を除去する方法は数多く提案されている。例えば、特許文献1には、アルカリ金属珪酸塩水溶液をH型強酸性陽イオン交換樹脂に接触させ、得られた活性珪酸水溶液に酸を加えて強酸性とし、これをH型強酸性陽イオン交換樹脂に接触させた後、OH型強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させて溶出金属イオンを除去して高純度の活性珪酸水溶液とした後、粒子成長させることにより高純度コロイダルシリカを製造する方法が記載されている。特許文献2には、活性珪酸水溶液に加える酸としてシュウ酸と硫酸等の無機強酸とを用いる方法が記載されている。特許文献3には、活性珪酸水溶液に酸を加えてpHを0〜2.5とした後、限外濾過膜を用いてイオン不純物を除去して得られたオリゴ珪酸溶液(高純度の活性珪酸水溶液)の一部に、アンモニアまたはアミンを加え加熱を行いヒールゾルを調製し、これに残りのオリゴ珪酸溶液を徐々に滴下してコロイド粒子を成長させる高純度シリカゾルの製造方法が記載されている。
いずれの方法も、活性珪酸水溶液に酸を加えて強酸性にして金属不純物をイオン化し、イオン交換樹脂に接触させるか、または限外濾過することにより金属不純物を除去する手段が基本になっている。しかしながら、これらの方法では、工程が煩雑で長いばかりでなく、希薄な活性珪酸水溶液を強酸性にするために大量の酸を使用しなくてはならない上に、添加した酸を後工程で除去し、廃液として処理しなくてはならない。アニオン交換法による酸の除去では、アニオン交換樹脂の再生に多量のアルカリを必要とし、コスト的に問題がある。限外濾過して除去する方法では、酸根を全量除去することはできない。
【0004】
また、コロイダルシリカのシリカ粒子表面をシリカ以外の材料で被覆して新たな性能を付与する方法も数多く提案されている。例えば、特許文献4には、無機酸化物粒子が一般式RnSiX4-n〔但し、nは1、2または3であり、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、nが2または3のときには互いに同一であっても異なっていてもよい。Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、または水素である。〕で表される加水分解性有機ケイ素化合物で表面処理されてなることを特徴とする研磨用粒子が記載されており、メチルトリメトキシシランの加水分解物で被覆したシリカ粒子が具体的に示されている。特許文献5には、シリカとアルミナとからなるシェルでシリカからなるコアを被覆した研磨用粒子が記載されている。特許文献6には、テトラメチルシクロテトラシロキサンの加水分解物の周囲にトリターシャルブトキシアルミニウムの加水分解物を生成させた化学機械研磨用微粒子が記載されている。特許文献7には、シリカゾルを噴霧乾燥した後、焼成して微粒子集合体を調製し、これをテトラエトキシシラン等の有機珪素化合物の加水分解物で被覆した球状無孔質粒子が記載されている。
テトラアルコキシランを加水分解して、研磨剤用のコロイダルシリカを製造する方法についても数多くの提案がある。例えば、特許文献8および特許文献9には、水酸化第4アンモニウムをアルカリ触媒としたテトラアルコキシランの加水分解によりポリッシング用コロイダルシリカを製造する方法が記載されている。特許文献10には、メタノールの存在下でアンモニアをアルカリ触媒としてケイ酸メチルを加水分解して得られる研磨剤として有用な繭状のコロイダルシリカの製造方法が記載されている。特許文献11には、テトラアルコキシラン等のアルキルシリケートを酸触媒で加水分解した後、アルカリ触媒を加え加熱して粒子成長させる高純度シリカ水性ゾルの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−97422号公報
【特許文献2】特開平4−231319号公報
【特許文献3】特開昭61−158810号公報
【特許文献4】特開2003−277731号公報
【特許文献5】特開2003−277732号公報
【特許文献6】特開平8−3540号公報
【特許文献7】国際公開第2004/006873号パンフレット
【特許文献8】特開昭61−209909号公報
【特許文献9】特開昭61−209910号公報
【特許文献10】特開平11−60232号公報
【特許文献11】特開2000−178020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、半導体デバイスウエハ、磁気ディスク基板、水晶基板等の電子材料の研磨加工分野では依然として、従来のコロイダルシリカよりも金属不純物による汚染が少なく、高純度の粒子表面を有するコロイダルシリカの開発が望まれている。
したがって、本発明の目的は、従来のコロイダルシリカよりも金属不純物による汚染が少なく、高純度の粒子表面を有し、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、半導体デバイスウエハ、磁気ディスク基板、水晶基板等の電子材料の研磨加工に用いることのできる新規なコロイダルシリカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記のような従来の課題を解決することができた。
すなわち、本発明は、珪酸アルカリ水溶液を原料としたコロイダルシリカのシリカ粒子をコアとし、その粒子表面をテトラアルコキシシランのアルカリ触媒を用いた加水分解によるシリカからなる厚さ1〜10nmのシェルで被覆したコア・シェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来のコロイダルシリカよりも金属不純物による汚染が少なく、高純度の粒子表面を有するコロイダルシリカが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに説明する。
本発明によるコロイダルシリカは、珪酸アルカリ水溶液を原料としたコロイダルシリカのシリカ粒子をコアとし、その粒子表面をテトラアルコキシシランのアルカリ触媒を用いた加水分解によるシリカからなる厚さ1〜10nmのシェルで被覆したコア・シェル構造を有するシリカ粒子を含有するものである。
【0010】
珪酸アルカリ水溶液を原料とするコロイダルシリカは何ら限定されるものではなく、市販品を使用することができる。市販品は、通常、水ガラス(水ガラス1号〜4号等)と呼ばれる珪酸ナトリウム水溶液を原料として製造されている。また、Naイオンを嫌う場合には珪酸カリウム水溶液を原料として製造されたコロイダルシリカを使用するのが好ましい。
【0011】
コア・シェル型シリカ粒子においてコアとなるシリカ粒子の平均粒子径は、窒素吸着BET法の測定値で5〜100nmであることが好ましく、10〜80nmであるのがより好ましい。ここで言う窒素吸着BET法による平均粒子径とは、粉末化したコロイダルシリカの比表面積を窒素吸着BET法で測定し、下式に基づき、比表面積から真球換算で算出した平均一次粒子径である。
2720/比表面積(m2/g)=真球換算で算出した平均一次粒子径(nm)
また、シリカ粒子の形状は、球状、繭状、紐状などのいずれでもよい。コロイダルシリカの平均粒子径が5nmより小さいと研磨剤としての研磨性能が低く実用に適さない場合がある。また、100nmよりも大きくしても粒子径に応じた研磨性能は得られない場合があり、シリカ粒子の沈降や価格が高いなどの不利な面が多くなる。粒度分布は多分散でも、単分散でもよいが、粒子径の異なる数種類のシリカ粒子を特定の比率で混合したコロイダルシリカが高い研磨性能を示すことがある。
【0012】
本発明で使用されるテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。また、テトラアルコキシシランとして、それらの混合物を使用してもよいし、重合度が2〜10の市販の珪酸オリゴマー(例えば、コルコート(株)製「エチルシリケート40」)も使用できる。より高純度の粒子表面を形成するために、テトラアルコキシシランは高純度の製品を使用することが好ましい。
【0013】
コア・シェル型シリカ粒子におけるシェルの厚さは1〜10nmである必要がある。1nmよりも薄いとコア粒子中の金属不純物がシェルに拡散移動してシェル表面まで汚染されるので、被覆の効果がなくなる。10nmよりも厚くすることは、厚さに応じた効果が得られることはないので、被覆に関わるコストが無駄となる。好ましいシェルの厚さは1〜5nmである。
【0014】
テトラアルコキシシランの加水分解には、酸触媒を用いる方法とアルカリ触媒を用いる方法の2つがあるが、本発明では、その種類を適切に選べば除去の必要がないという点で、アルカリ触媒を用いる必要がある。酸触媒を用いると酸根の除去工程が必要となり、製造工程が煩雑になる。
本発明でテトラアルコキシシランの加水分解に使用されるアルカリ触媒としては、特に限定されるものではなく、水酸化アルカリ金属、水酸化テトラアルキルアンモニウム、アミン類、イミダゾール類、ピペラジン、モルホリン、アルギニン、ヒドラジンなどが使用できる。これらは、半導体ウエハ用研磨剤のエッチャント成分としてしばしば提案されてきた材料であるため、研磨対象に合わせてその種類を適切に選べば、除去の必要がない。
アルカリ触媒としては、水酸化アルカリ金属または水酸化テトラアルキルアンモニウムが好ましく、水酸化ナトリウムまたは水酸化テトラメチルアンモニウムがより好ましい。
【0015】
本発明で使用されるアルカリ触媒の量は、反応時間、反応温度およびテトラアルコキシシランの使用量によって適宜決定される。テトラアルコキシシランの加水分解で生成したシリカがコロイダルシリカのシリカ粒子表面に沈積する際に、アルカリ触媒の一部はシリカ粒子表面に取り込まれていく。したがって、反応開始より終了までの間、反応系をpH10.0〜12.5に維持できる量が必要となる。目安としては、テトラアルコキシシラン/アルカリ触媒のモル比は10〜50である。
【0016】
テトラアルコキシシランは水には溶けないので、アルカリ触媒によって加水分解され珪酸モノマーとして水相に溶けていく。アルカリ触媒が多すぎると水相の添加部位で一挙に珪酸モノマー濃度が高くなるため、シリカ粒子を形成してしまい、コロイダルシリカのシリカ粒子表面に沈積できなくなる。また逆にアルカリ触媒が少なすぎると、いたずらに反応時間が長くなるばかりで、実際的でなくなる。
【0017】
反応温度はアルカリ触媒の量と反応時間との関係で任意に設定することができるが、均一な被覆を行うには、短時間とするのは好ましくない。1〜5時間で加水分解が終了するように、上記の触媒量の範囲で、反応温度を決めるのが好ましい。触媒量は少ないことが好ましいので、反応温度は室温より高くすることが好ましい。具体的には40〜100℃が好ましい。また、テトラアルコキシシランの加水分解によって生成するアルコールを反応系から除去することにより、加水分解反応を促進することもできるので、反応温度は80〜100℃とするのが好ましい。
【0018】
ただし、反応後に未反応のテトラアルコキシシランが残存するようであれば、少量のアルコールを添加して、テトラアルコキシシランを水相に溶解して反応を完結させる方法をとることもできる。
【0019】
加水分解反応が終了して得られたコロイダルシリカは、必要に応じて、シリカの濃縮を行うことができる。シリカの濃縮は、水分の蒸発濃縮でもよいが、エネルギー的には限外濾過の方が有利である。
限外濾過によりシリカを濃縮するときに使用される限外濾過膜について説明する。本発明では、分画分子量3,000〜15,000の限外濾過膜を使用することが好ましい。3,000未満の膜では濾過抵抗が大きすぎて処理時間が長くなり不経済であり、15,000を超えると、精製度が低くなる。膜の材質は、ポリスルホン、ポリアクリルニトリル、焼結金属、セラミック、カーボンなどあり、いずれも使用できるが、耐熱性や濾過速度などからポリスルホン製が使用しやすい。膜の形状はスパイラル型、チューブラー型、中空糸型などあり、いずれも使用できる。中空糸型がコンパクトで使用しやすい。また、限外濾過工程が、テトラアルコキシシランの加水分解で生成したアルコールの洗い出し除去をかねている場合、必要に応じて、目標シリカ濃度に達した後も純水を加えるなどして、更に洗い出し除去を行って、アルコールの除去率を高める作業を行うこともできる。この工程でシリカの濃度が10〜50重量%となるように濃縮するのがよい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施例1〕
160gのコロイダルシリカ(シリカ濃度40重量%、平均粒子径18.3nm、日本化学工業株式会社製シリカドール(登録商標)40)を1600gの脱イオン水に加えて、シリカ濃度3.6重量%とした。これに市販の25重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液14gを添加してpHを12とした後、加熱して80℃とした。攪拌下、80℃を維持しつつ、357gのテトラエトキシシラン(試薬、シリカ換算濃度28.5重量%)を5時間かけて一定流量で添加した。添加途中にpHが低下したので25重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液14gをさらに添加した。添加終了後、加熱して液温を95℃とし、95℃を3時間維持して熟成を行い、被覆の反応を完結させた。次いで、放冷した。得られたコロイダルシリカはpHが9.98であり、コア・シェル型シリカ粒子の窒素吸着BET法による平均粒子径は25.1nmであった。被覆前後の平均粒子径の差から、被覆層(シェル)の厚さは3.4nmと算出された。この値はシリカ粒子のTEM画像でも確認された。また、テトラエトキシシラン/水酸化テトラメチルアンモニウムのモル比は22と算出される。
次いで、このコロイダルシリカを分画分子量6,000の中空糸型限外濾過膜(旭化成(株)製マイクローザ(登録商標)UFモジュールSLP−1053)を用いてポンプ循環送液による加圧濾過を行い、シリカ濃度20重量%まで濃縮し、コロイダルシリカ約800gを回収した。
【0021】
〔実施例2〕
160gのコロイダルシリカ(シリカ濃度40重量%、平均粒子径18.3nm、日本化学工業株式会社製シリカドール(登録商標)40)を1600gの脱イオン水に加えて、シリカ濃度3.6重量%とした。これに市販の25重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液14gを添加してpHを12とした後、加熱して80℃とした。攪拌下、80℃を維持しつつ、111gのテトラエトキシシラン(試薬、シリカ換算濃度28.5重量%)を1.5時間かけて一定流量で添加した。添加終了後、加熱して液温を95℃とし、95℃を3時間維持して熟成を行い、被覆の反応を完結させた。次いで、放冷した。得られたコロイダルシリカはpHが10.60であり、コア・シェル型シリカ粒子の窒素吸着BET法による平均粒子径は20.9nmであった。被覆前後の平均粒子径の差から、被覆層(シェル)の厚さは1.3nmと算出された。この値はシリカ粒子のTEM画像でも確認された。また、テトラエトキシシラン/水酸化テトラメチルアンモニウムのモル比は13.9と算出される。
【0022】
〔実施例3〕
160gのコロイダルシリカ(シリカ濃度40重量%、平均粒子径18.3nm、日本化学工業株式会社製シリカドール(登録商標)40)を1600gの脱イオン水に加えて、シリカ濃度3.6重量%とした。これに5重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを12とした後、加熱して80℃とした。攪拌下、80℃を維持しつつ、357gのテトラエトキシシラン(試薬、シリカ換算濃度28.5重量%)を5時間かけて一定流量で添加した。添加中はpHが10〜12を維持するよう5重量%水酸化ナトリウム水溶液を同時添加した。添加終了後、加熱して液温を95℃とし、95℃を2時間維持して熟成を行い、被覆の反応を完結させた。次いで、放冷した。5重量%水酸化ナトリウム水溶液の全添加量は28gであった。得られたコロイダルシリカはpHが10.34であり、コア・シェル型シリカ粒子の窒素吸着BET法による平均粒子径は21.1nmであった。テトラエトキシシランの添加量から算出される平均粒子径の予想値よりも小さい粒子径となっているので、被覆表面が多孔質になっていると推定された。被覆前後の平均粒子径の差から、被覆層(シェル)の厚さは2.8nmと算出された。シリカ粒子のTEM画像では平均粒子径は25nm程度になっており、それをもとに被覆層(シェル)の厚さを算出すると3〜4nmとなる。また、テトラエトキシシラン/水酸化ナトリウムのモル比は49と算出される。
【0023】
〔実施例4〕
160gのコロイダルシリカ(シリカ濃度40重量%、平均粒子径18.3nm、日本化学工業株式会社製シリカドール(登録商標)40)を1600gの脱イオン水に加えて、シリカ濃度3.6重量%とした。これに5重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを12とした後、加熱して80℃とした。攪拌下、80℃を維持しつつ、81.2gのテトラメトキシシラン(試薬、シリカ換算濃度39.4重量%)を2時間かけて一定流量で添加した。添加中はpHが10〜12を維持するよう5重量%水酸化ナトリウム水溶液を同時添加した。添加終了後、加熱して液温を95℃とし、95℃を3時間維持して熟成を行い、被覆の反応を完結させた。次いで、放冷した。5重量%水酸化ナトリウム水溶液の全添加量は14gであった。得られたコロイダルシリカはpHが10.22であり、コア・シェル型シリカ粒子の窒素吸着BET法による平均粒子径は20.3nmであった。被覆前後の平均粒子径の差から、被覆層(シェル)の厚さは1.0nmと算出された。この値はシリカ粒子のTEM画像でも確認された。テトラメトキシシラン/水酸化ナトリウムのモル比は31と算出される。
【0024】
〔実施例5〕
58gのコロイダルシリカ(シリカ濃度30重量%、平均粒子径50nm、日本化学工業株式会社製シリカドール(登録商標)30G−50)を282gの脱イオン水に加えて、シリカ濃度5.1重量%とした。これに5重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを12とした後、加熱して80℃とした。攪拌下、80℃を維持しつつ、64gのテトラメトキシシラン(試薬、シリカ換算濃度39.4重量%)を5時間かけて一定流量で添加した。添加中はpHが10〜12を維持するよう5重量%水酸化ナトリウム水溶液を同時添加した。添加終了後、加熱して液温を95℃とし、95℃を8時間維持して熟成を行った。次いで、放冷した。pHは10.6であった。放冷後の液には、液面に未反応のテトラエトキシシランが僅かに観察されたので、5重量%水酸化ナトリウム水溶液でpHを11.5とした後、10gのエタノールを添加し、再度加熱して液温を95℃とし、95℃を2時間維持して被覆の反応を完結させた。放冷後の液には、未反応のテトラエトキシシランは観察されなかった。5重量%水酸化ナトリウム水溶液の全添加量は13gであった。得られたコロイダルシリカはpHが10.8であり、コア・シェル型シリカ粒子の窒素吸着BET法による平均粒子径は67nmであった。被覆前後の平均粒子径の差から、被覆層(シェル)の厚さは8.5nmと算出された。この値はシリカ粒子のTEM画像でも確認された。テトラメトキシシラン/水酸化ナトリウムのモル比は26と算出される。
【0025】
〔実施例6〕
231gのコロイダルシリカ(シリカ濃度40重量%、平均粒子径48.45nm、日本化学工業株式会社製シリカドール(登録商標)40G−50)を1600gの脱イオン水に加えて、シリカ濃度5.0重量%とした。これに市販の25重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を希釈した5重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を添加してpHを12とした後、加熱して80℃とした。攪拌下、80℃を維持しつつ、5重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液と78gのテトラエトキシシラン(試薬、シリカ換算濃度28.5重量%)を2.5時間かけて一定流量で同時添加した。5重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液の全添加量は18gであった。添加終了後、加熱して液温を95℃とし、95℃を2時間維持して熟成を行い、被覆の反応を完結させた。次いで、放冷した。放冷後の液には、液面に未反応のテトラエトキシシランが僅かに観察された。得られたコロイダルシリカはpHが10.32であり、コア・シェル型シリカ粒子の窒素吸着BET法による平均粒子径は51.45nmであった。被覆前後の平均粒子径の差から、被覆層(シェル)の厚さは1.5nmと算出された。この値はシリカ粒子のTEM画像でも確認された。また、テトラエトキシシラン/水酸化テトラメチルアンモニウムのモル比は38と算出される。
【0026】
〔実施例7〕
160gのコロイダルシリカ(シリカ濃度40重量%、平均粒子径82.3nm、日本化学工業株式会社製シリカドール(登録商標)40G−80)を1600gの脱イオン水に加えて、シリカ濃度3.6重量%とした。これに市販の25重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を希釈した5重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を添加してpHを12とした後、加熱して80℃とした。攪拌下、80℃を維持しつつ、5重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液と45gのテトラエトキシシラン(試薬、シリカ換算濃度28.5重量%)を2.5時間かけて一定流量で同時添加した。5重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液の全添加量は11gであった。添加終了後、加熱して液温を95℃とし、95℃を2時間維持して熟成を行い、被覆の反応を完結させた。次いで、放冷した。得られたコロイダルシリカはpHが9.98であり、コア・シェル型シリカ粒子の窒素吸着BET法による平均粒子径は85.1nmであった。被覆前後の平均粒子径の差から、被覆層(シェル)の厚さは1.4nmと算出された。この値はシリカ粒子のTEM画像でも確認された。また、テトラエトキシシラン/水酸化テトラメチルアンモニウムのモル比は36と算出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸アルカリ水溶液を原料としたコロイダルシリカのシリカ粒子をコアとし、その粒子表面をテトラアルコキシシランのアルカリ触媒を用いた加水分解によるシリカからなる厚さ1〜10nmのシェルで被覆したコア・シェル型シリカ粒子を含有することを特徴とするコロイダルシリカ。
【請求項2】
珪酸アルカリ水溶液が珪酸ナトリウム水溶液であることを特徴とする請求項1に記載のコロイダルシリカ。
【請求項3】
テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のコロイダルシリカ。
【請求項4】
珪酸アルカリ水溶液を原料としたコロイダルシリカ中のシリカ粒子の平均粒子径が5〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載のコロイダルシリカ。
【請求項5】
シェルの厚さが1〜5nmであることを特徴とする請求項1に記載のコロイダルシリカ。
【請求項6】
アルカリ触媒が、水酸化アルカリ金属または水酸化テトラアルキルアンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載のコロイダルシリカ。

【公開番号】特開2010−241642(P2010−241642A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92836(P2009−92836)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】