説明

コロイド炭酸カルシウム填剤及びその製造方法、並びに該填剤を配合してなる樹脂組成物

【課題】白色度が高く、耐熱性や耐光性に優れ、光反射シートや合成紙等の白色系合成樹脂に好適なコロイド炭酸カルシウム填剤を提供する。
【解決手段】炭酸カルシウム中に、酸化抑制剤が含有されていることを特徴とするコロイド炭酸カルシウム填剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコロイド炭酸カルシウム填剤及びその製造方法、並びに該填剤を配合してなる樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、色相安定性に優れ、耐熱性、耐光性に優れることから、例えば合成樹脂シートに添加された場合に、高度の白色性を長期間保持することが可能で、例えば、ノート型パソコンや携帯電話等で使用されるサイドライト型バックライトの光反射シートや、液晶TVで用いられる直下型バックライトの光反射シート、ポスターや地図等のポリオレフィン系白色合成紙用途において好適に使用することができるコロイド炭酸カルシウム填剤及びその製造方法、並びに該填剤を配合してなる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、白色系合成樹脂としては、地図、包装紙、書籍用紙、ポスター用紙等に使われるポリオレフィン系白色合成紙(例えば、特許文献1)や、ノート型パソコンや携帯電話等で使用されるサイドライト型バックライトの光反射シートや、液晶TVで用いられる直下型バックライトの光反射シートとして、白色PETシートや白色PPシート(例えば特許文献2、3)が提案されている。これらの合成紙やPETシート、PPシートの製造方法は、炭酸カルシウム等を樹脂に添加し、延伸法で空孔ボイドを形成させ、光の乱反射で白色性を付与する方法である。従って、このような白色系樹脂用途に用いる炭酸カルシウムもまた、高度の白色性を有し、その色相が長期に亘り安定していることが必要であり、バックライトの光反射シートに用いられる場合は、更に、バックライト光源に起因する耐熱性や耐光性にも優れていることが必要である。
【0003】
ところで、炭酸カルシウムは、一般的に天然の鉱物(糖晶質石灰石)を粉砕して粒度調整した重質炭酸カルシウムと、天然の鉱物(緻密質石灰石)を焼成して酸化カルシウムから炭酸カルシウムを得るコロイド炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムで代表される沈降性炭酸カルシウムとに大別できる。色相の面では、重質炭酸カルシウムは乾式による粒度調整に対し、沈降性炭酸カルシウムは湿式であるため、篩工程等により比較的不純物が除去されやすい製法であるため、色相の良好な炭酸カルシウムを得ることができる。しかしながら、沈降性炭酸カルシウムも出発原料は天然の炭酸カルシウムであることに変わりはなく、従って、鉄、マンガン、クロム、銅、ニッケルなどの着色金属の不純物量が必ずしも一定ではないため、通常、炭酸カルシウムの色相も同様に一定ではない。特に鉄系の不純物は、炭酸カルシウムや該炭酸カルシウムを配合して得た樹脂組成物の黄変性に影響を与えるため、問題とされている。
従って、例えば、液晶用光反射樹脂シートに鉄などの着色金属を多く含有した炭酸カルシウムを配合した場合、樹脂シートが黄変しやすいばかりでなく、バックライト光源に起因する耐熱性や耐光性の経年劣化性においても劣化を促進させ、光反射率の低下を招きやすい問題がある。
なお、前述したコロイド炭酸カルシウムと軽質炭酸カルシウムとの違いは、同じ合成方法であるが、通常、コロイド形状か紡錘形状かとの形状における差や、例えば紙用に用いた場合、パルプから抜け落ちず該用途に使えるものを軽質、抜け落ちて使えないものをコロイドと呼ぶ。本発明の目的用途において、軽質炭酸カルシウムでは、凝集体粒子であるため光学用途では不適当であり、コロイド炭酸カルシウムであることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−277449号公報
【特許文献2】特開昭63−161029号公報
【特許文献3】特開2006- 195453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み、着色金属の含有量が増加しても色相の低下が抑制され、略均一な色相を長期間に亘って維持する色相安定性に優れ、例えば、樹脂に配合した場合、色相の安定的保持はもちろんのこと、耐熱性、耐光性に優れた樹脂組成物を与えることのできるコロイド炭酸カルシウム填剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意検討した結果、コロイド炭酸カルシウム填剤を製造する過程において、金属の酸化を抑制する薬剤を含有させたコロイド炭酸カルシウム填剤が、例えば白色系合成樹脂に配合された場合においても、前記した課題を解決できること見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第1の特徴は、コロイド炭酸カルシウム中に、酸化抑制剤が含有されているコロイド炭酸カルシウム填剤である。
【0008】
本発明の第2の特徴は、コロイド炭酸カルシウムが、飽和脂肪酸、縮合リン酸、ホスホン酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の表面処理剤で処理されている。
【0009】
本発明の第3の特徴は、上記酸化抑制剤が還元剤である。
【0010】
本発明の第4の特徴は、上記酸化抑制剤が硫化物系還元剤である。
【0011】
本発明の第5の特徴は、上記酸化抑制剤の含有量が、コロイド炭酸カルシウムに対し0.001〜10重量%である。
【0012】
本発明の第6の特徴は、水酸化カルシウム水懸濁液に炭酸ガスを導通して炭酸化反応により得たコロイド炭酸カルシウム水懸濁液に、酸化抑制剤をコロイド炭酸カルシウム固形分に対し0.001〜10重量%含有させるコロイド炭酸カルシウム填剤の製造方法である。
【0013】
本発明の第7の特徴は、樹脂中に、上記コロイド炭酸カルシウム填剤を配合してなる樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤は、白色度が高く、耐熱性や耐光性に優れているので、特に、光反射シートや合成紙等の白色系合成樹脂用の填剤として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記したように、沈降性炭酸カルシウムは、石灰石を焼成して得た生石灰に水を加えて得た石灰乳と、焼成時に出る炭酸ガスとを反応させて得られる。コロイド炭酸カルシウムの一般的用途は、塗料やゴムなどの白色系体質顔料であるため、鉄、マンガン、クロム、銅、ニッケル等の合成樹脂の黄変に影響を与える着色金属が多く含有されているのは好ましくない。
【0016】
着色金属の中でも、特に鉄は他の着色金属より石灰石中での含有量が多いため、例えば、特開平10−72215号公報の従来技術で記載されているように、コロイド炭酸カルシウムの一次粒子を分散および成長させる目的で熟成させる場合、該炭酸カルシウムの色相の低下(黄変)が起こりやすく、また、熟成時間と該炭酸カルシウムの色相低下とは、比例する傾向を示す。
前記したコロイド炭酸カルシウムの熟成と色相低下とが比例する傾向を示すことのメカニズムについては必ずしも明確ではないが、熟成が進む程、鉄化合物である無色又は無色に近い水酸化第一鉄(2価)から、不溶性で赤褐色の水酸化第二鉄(3価)への酸化が進む、もしくは熟成によるコロイド炭酸カルシウムの成長に合わせ、水酸化第二鉄も同様に成長し、色相低下することが考えられる。
【0017】
従って、コロイド炭酸カルシウムの色相低下を抑制する方法としては、イオン交換法等の対応は該炭酸カルシウムが存在する水懸濁液系では困難であることから、着色金属の酸化を抑制する酸化抑制剤を添加することが好適である。このような酸化抑制剤としては、着色金属イオンを補足して酸化を抑制する金属イオン封鎖剤や、着色金属イオンを還元させる還元剤などが挙げられる。
【0018】
金属イオン封鎖剤としては、ヒドロキシエチレンジアミン四酢酸(HEDTA )等のEDTA系有機系封鎖剤が例示できるが、一般に有機系の場合は、耐熱性や耐光性が低いアミノカルボン酸系が多いため耐熱性や耐光性の要求される用途では適当ではない場合が多い。
【0019】
一方、還元剤の場合は、鉄等の着色金属の酸化防止作用や漂白作用があり、また無機系のものが多く、耐熱性や耐光性に優れている。
従って、耐熱性や耐光性が要求される用途においては、酸化抑制剤として還元剤が好適である。還元剤としては、二酸化硫黄(SO2 )、亜硫酸ソーダ(Na2 SO3 )、硫酸ソーダ(Na2 SO4 )、チオ硫酸ソーダ(Na2 2 3 )、亜二チオン酸ソーダ(Na2 2 4 )、ホルムアミジンスルフィン酸((NH2 )(NH)CSO2 H)、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ソーダ(NaHSO2 ・CH2 O・H2 O)、ホルムアルデヒドスルホキシル酸亜鉛(Zn(HSO2 ・CH2 O)2 )、重亜硫酸ソーダ(Na2 2 3 )などの硫化物系;塩化第一スズ(SnCl2 )などのスズ(II)イオン系;ギ酸(CH2 2 )、シュウ酸(C2 2 4 )などの有機物系;ソーダボロハイドライド(NaBH4 )、ジメチルアミンボラン((CH3 3 HNBH3 )、トリメチルアミンボラン((CH3 3 HNBH4 )、水素化シアノホウ素ソーダ(NaCNBH3 ) などのホウ素系などが挙げられる。
これらの中では、チオ硫酸ソーダや亜二チオン酸ソーダ、ホルムアミジンスルフィン酸、硫酸ソーダ、重亜硫酸ソーダ等の硫化物系は、環境面やコスト面、安定性の面で好ましく、特にチオ硫酸ソーダや亜二チオン酸ソーダは、食品添加物としても認められているため、ポリオレフィン等衛生協議会での自主基準(ポジティブリスト)に適合する面で好ましい。
【0020】
本発明で用いる酸化抑制剤の含有量は特に限定されるものでないが、コロイド炭酸カルシウムの白色度を積極的に高めるのではなく、色相低下の抑制を目的としているため、通常、コロイド炭酸カルシウムに対し、0.001〜10重量%が適当である。0.001重量%未満では十分な酸化抑制効果が得られ難く、一方、10重量%を超えてもそれ以上の酸化抑制効果が得られ難くいばかりか、例えば、樹脂とのコンパウンドの際、他の添加剤と併用された場合,その添加剤に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、好ましくは0.003〜1重量%、さらに好ましくは0.005〜0.1重量%である。
【0021】
本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤は、水酸化カルシウム水懸濁液に炭酸ガスを導通して炭酸化反応により得たコロイド炭酸カルシウム水懸濁液に、酸化抑制剤をコロイド炭酸カルシウム固形分に対し0.001〜10重量%添加することにより製造することができる。
コロイド炭酸カルシウム水懸濁液の製造方法は特に限定されないが、例えば、特開2006−265472号公報の製造方法を例示することができる。
該公報に記載の製造方法は、炭酸ガス化合法で、石灰石を焼成して得た生石灰に水を加えて得た石灰乳と、焼成時に出る炭酸ガスを導通して反応させる方法であり、得られる粒子が微細で一次粒子の粒径・形状も均一である。また反応時の条件や反応後の工程によって粒度調整、粗大粒子除去も可能であり、得られる粒子の物性に対する経済性や環境への負荷の点でも優れており、本発明の目的の一つである白色系合成樹脂シートに用いるのに好適である。
【0022】
原料として用いられる石灰石は不純物に留意して選択することが好ましく、着色金属の総量(鉄+マンガン+クロム+銅+ニッケル)が1000ppm 以下、好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm 以下である石灰石を用いることが好ましい。なお、着色金属の含有量の測定は、ICP(シーケンシャル高周波プラズマ発光分析装置)や原子吸光分光光度計などで測定することができる。焼成時の燃料は一般にコークスや灯油、ガス等が直接添加されているが、コスト的に許される限り、不純物の少ない軽油や灯油、(天然)ガスで焼成を行うことが色相の点でより好ましい。
【0023】
酸化抑制剤の添加時期は、コロイド炭酸カルシウムの黄変化が顕著になる熟成工程前に添加するのが好ましい。従って、炭酸化前の水酸化カルシウム水懸濁液または炭酸化後のコロイド炭酸カルシウムの水懸濁液系で、よく混合される工程において、酸化抑制剤を溶かし込んだ水溶液を適量添加することが好ましい。また、水酸化カルシウム水懸濁液中に酸化抑制剤を適量添加する場合は、コロイド炭酸カルシウム換算で行うことにし、コロイド炭酸カルシウム水懸濁液に添加する場合は、熟成工程で、好ましくは熟成工程の早い段階で添加することが好ましい。
【0024】
熟成工程で粒度調整を行って得られたコロイド炭酸カルシウム水懸濁液は、脱水され乾燥され解砕された後、本発明の色相が安定したコロイド炭酸カルシウム填剤が得られる。
【0025】
なお、解砕後、必要に応じて空気分級等の分級操作を行い、乾燥によって生じた凝集体や不純物を除去することは効果的であり、特に、コロイド炭酸カルシウム粒子の均一性や分散性を要求される白色系樹脂シート用においては、下記の式を満足することがより好ましい。
(a)0.3≦D50≦1.5 (μm)
(b)Da≦20 (μm)
但し、
D50 :レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラックFRA:日機装社製)で測定した篩上積算平均粒子径 [μm]
Da :レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラックFRA:日機装社製)で測定した時に示す最大粒子径 [μm]
【0026】
上記(a)式は、本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤を、下記のレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した篩上積算平均粒子径D50 で、0.3〜1.5(μm )の範囲内にあることが好ましく、0.3〜1.0μm であることがより好ましい。平均粒子径D50 を0.3μm 未満にすることは技術上可能であるがコストの点で好ましくなく、一方、1.5μm を越えると、フィルムシート一次粒子の凝集体で構成する2次粒子の凝集力が強く、樹脂中でも二次粒子のままで存在するため、例えば、光反射用白色樹脂シートに用いた場合、延伸法で空孔ボイドを形成させる際に、目的とする孔径以上の大きな空孔ができ、反射率が低下するなど適さない場合がある。
【0027】
<測定方法>
下記の配合材(I)と(II)をビーカに秤量し、超音波分散機にて予備分散させたものを試料として、粒度測定を行う。
(I)炭酸カルシウム試料 0.1〜0.5g
(II)メタノール 50g
予備分散として用いる超音波分散は、一定条件下で行う方が好ましく、本発明では超音波分散機としてUS−300T(日本精機製作所社製)を用い、電流値300μAの下で、60秒間の一定条件で予備分散させた。また、レーザー回折式粒度分布測定装置は、前記のマイクロトラックFRAを使用した。
【0028】
上記(b)式は、レーザー回折式粒度分布装置で測定した時の最大粒径(Da)であり、(a)式と同様の理由から、Da≦20(μm)の範囲内にあることが好ましく、Da≦15(μm)の範囲内であることがより好ましく、Da≦10(μm)の範囲内であることが更に好ましい。
【0029】
本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤は、例えば光反射用樹脂等に配合される場合、該樹脂への安定性や分散性を付与するために各種表面処理剤で処理(被覆処理)することはさらに有効である。
【0030】
表面処理剤は特に限定されるものでなく、例えば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、樹脂酸、それらの塩やエステル、アルコール系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系やアミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルフォン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩、アミノカルボン酸、ホスホン酸、多価カルボン酸、縮合リン酸等が例示され、これらは、単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
飽和脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられ、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、脂環族カルボン酸としては、シクロペンタン環やシクロヘキサン環の末端にカルボキシル基を持つナフテン酸等が挙げられ、樹脂酸としてアビエチン酸、ピマル酸、ネオアビエチン酸等が挙げられる。
【0032】
アルコール系界面活性剤としては、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられ、ソルビタン脂肪酸エステル類としては、ソルビタンモノラウレートやポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等が挙げられ、アミド系やアミン系界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられ、長鎖アルキルアミノ酸としては、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等が挙げられる。
【0033】
アミンオキサイドとしては、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアミンオキサイド等が挙げられ、アルキルアミンとしては、ステアリルアミンアセテート等が挙げられ、第四級アンモニウム塩としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドや第四級アンモニウムサルフェート等が挙げられる。
【0034】
アミノカルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸やニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸等が挙げられる。
ホスホン酸としては、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)等が挙げられる。
多価カルボン酸系としては、ポリアクリル酸やポリマレイン酸等のポリカルボン酸や、その共重合物等が挙げられる。
縮合リン酸としては、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0035】
上記各種酸は、例えば、カリウムやナトリウムのアルカリ金属塩や、アンモニウム塩としても使うことができる。
【0036】
これらの中でも、樹脂への相溶性や粉体白色度、耐光性の観点から、ステアリン酸等で代表される飽和系脂肪酸及びその塩、縮合リン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩が好適に使用できる。
【0037】
上記表面処理剤の使用量は、コロイド炭酸カルシウムの比表面積や、コンパウンド条件等に応じて変わるので一概には規定しにくいが、通常、コロイド炭酸カルシウムに対して0.05〜10重量%が好ましい。使用量が0.05重量%未満では充分な表面処理効果が得られ難く、一方、10重量%を越えて添加しても効果の更なる向上が認められ難かったり、表面処理剤がブリードし易い傾向がある。
【0038】
表面処理方法としては、例えば、スーパーミキサーやヘンシェルミキサー等のミキサーを用い、粉体に直接表面処理剤を混合し、必要に応じて加熱して表面処理する一般に乾式処理と呼ばれる方法や、表面処理剤を水溶媒等で溶解し、炭酸カルシウム水懸濁液中に添加して表面処理した後、脱水、乾燥する一般に湿式処理と呼ばれる方法でも、その両者の複合でもよいが、炭酸カルシウム粒子表面への処理の度合いと経済的な観点から、主として湿式法単独が好ましく用いられる。
【0039】
表面処理剤量は、コロイド炭酸カルシウムの比表面積や表面処理剤の種類、配合される樹脂、コンパウンド条件等に応じて異なるため一概に規定されないが、通常、表面処理剤率(As)として、0.1〜4mg/m2 であることが好ましい。Asが0.1mg/m2 未満では十分な分散効果が得られにくく、一方、4mg/m2 未満を超えても、更なる効果の向上が得られにくいばかりでなく、処理剤過多による表面処理剤成分あるいは樹脂成分への遊離の原因になりやすい。
なお、表面処理率(As)は下記の測定方法により求められる。
<表面処理率(As)の測定方法>
熱天秤(リガク社製TG−8110型)にて、直径10mmで0.5mlの白金製容器に表面処理したコロイド炭酸カルシウム粒子150mgを入れ、15℃/分の昇温速度で昇温して200℃から500℃までの熱減量を測定し、表面処理した炭酸カルシウム粒子1g当りの熱減量率(mg/g)を求め、この値をBET比表面積で除して求める。
【0040】
上記の如くして得られる本発明の色相が安定したコロイド炭酸カルシウム填剤の白色度は、下記の方法で測定することができる。
<白色度の測定方法>
色相測定方法は、コロイド炭酸カルシウム填剤と可塑剤(DOP)を脱泡機にて1:1に混合した後、分光式色差計(ZE-2000 ,日本電色社製)を用い、標準白色板(P6004)との比較で明度(L値)(色相)と黄変度(b値)を出力した。コロイド炭酸カルシウム填剤の白色度が高いほどL値は高く、b値はゼロに近づく。また、b値が高いほど黄変度が高い。
本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤を光反射シートや合成紙に使用する場合、L値とb値の両者が、特定の範囲にあることが好ましい。具体的に例示すると、L値は、通常81以上であることが好ましく、より好ましくは83以上である。一方、b値は、通常5以下であることが好ましく、より好ましくは4以下である。
【0041】
本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤が配合とされる樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン又はプロピレンと他のモノマーの共重合体等が挙げられる。なかでも、白色合成紙や光反射用白色樹脂シートとして用いる場合は、前記した如く、耐熱性や耐光性等で経時劣化が少なく経済的な点で、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0042】
本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤と樹脂との配合割合は、特に限定されるものでなく、樹脂の種類や用途、所望する物性やコストによって大きく異なるので、それらに応じて適宜決定すればよいが、前記した白色系樹脂へ配合される場合は、樹脂100重量部に対して60〜150重量部が適当であり、好ましくは80〜120重量部である。
【0043】
また、本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤の効能を阻害しない範囲で、シート特性の向上を目的として、脂肪酸、脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ソルビタン脂肪酸エステル等の滑剤、可塑剤及び安定剤、酸化防止剤等を添加してもよく、更に、一般に樹脂組成物に用いられる添加物、例えば滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、スリップ剤、着色剤等を配合してもよい。
【0044】
本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤と前記した各種添加剤を樹脂に配合する場合、通常、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で加熱混練し、Tダイ等でシートを作成後に一軸または二軸で延伸して微細な孔を有する多孔質フィルム製品とされる。
また、混練後にTダイ押出、あるいはインフレーション成形等の公知の成形機を用いて製膜し、それらを酸処理して本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤を溶解して微細な孔を有するシート製品としてもよい。
【0045】
樹脂の形状にはペレット状及び任意の粒径に調整されたパウダー(グラニュー)状があり、分散性の面からはパウダー状の樹脂を用い、ヘンシェルミキサー、タンブラー型ミキサー、リボンブレンダー等の公知のミキサーと称される混練機を用いて混合することが好ましい。
本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤は、ペレット状樹脂とともに用いられた場合でも、本発明以外の填剤に比べて、樹脂中での分散性等で良好な物性を示すが、パウダー状の樹脂と混合して使用すると特に良好である。例えばヘンシェルミキサーで混合した場合、混合が速やかに行えるメリットの他に、ミキサーの内壁面や攪拌・混合用の羽根への付着が少なく、ミキサー内部での付着が誘引する変質樹脂や凝集物の発生も少なくなり、混合の作業性が良好で、更に、後工程での混練押出機でのストレーナーの目詰まり等の発生も少ない等の特徴を有している。
【0046】
上記の混練機も様々な機種や設定条件があり、原料の投入方法も、樹脂中での粒子の分散性の他にも樹脂自体のMI値等への影響やコストを勘案して適宜決定される。
本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤を樹脂に配合する場合も、それらを考慮して選択されるが、ヘンシェルミキサー等で適度な粒度範囲の樹脂パウダーと混合した混合物を、二軸混練機等の混練機のホッパーに定量的に投入する方法が好ましい。
混練機と製膜の間において、一旦、マスターバッチと称される本発明の炭酸カルシウム填剤と樹脂、更には必要に応じ、各種添加物を含有するペレットを作成し、該ペレットを樹脂と混合して溶融・製膜しても良い。更に必要に応じ、上記工程中のTダイ押出機を複数個重ねたり、あるいは延伸時に張り合わせるような工程を導入してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を更に実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
なお、実施例及び比較例で作製したコロイド炭酸カルシウム填剤のBET比表面積は、下記の測定方法に従った。
【0048】
<BET比表面積(Sw)の測定方法>
全自動BET 比表面積測定装置(NOVA2000,ユアサアイオニクス社製)を用い測定した。
【0049】
実施例1
灯油を熱源に灰色緻密質石灰石を流動槽式キルンで焼成して得られた生石灰を溶解して消石灰水懸濁液とし、炭酸ガスと反応させコロイド炭酸カルシウムを合成した。該炭酸カルシウムの着色金属含有量を表1に示したが、着色金属含有量(鉄+マンガン+クロム+銅+ニケッル)は80ppmであった。次に、200メッシュ篩で異物や粗大粒子の除去を行った後、コロイド炭酸カルシウム固形分に対し、酸化抑制剤として0.005重量%の亜二チオン酸ソーダ(還元剤)を添加したコロイド炭酸カルシウム水懸濁液をオストワルド熟成により粒子成長を行わせ、BET比表面積5m2 /g のコロイド炭酸カルシウムを10重量%含有する水懸濁液を得た。
次に、表面処理剤として、ステアリン酸カリウムとヘキサメタリン酸ナトリウムを用い、炭酸カルシウム固形分に対して各々1.5重量%と0.5重量%を表面処理し、その後、脱水・乾燥・解砕し、更に得られた乾粉を精密空気分級機で分級を行い、炭酸カルシウムを得た。得られたコロイド炭酸カルシウム填剤の各物性値を表2に示す。
【0050】
実施例2
酸化抑制剤をチオ硫酸ソーダに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行いコロイド炭酸カルシウムを得た。得られたコロイド炭酸カルシウム填剤の各物性値を表2に示す。
【0051】
実施例3
酸化抑制剤をホルムアミジンスルフィン酸に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行いコロイド炭酸カルシウムを得た。得られたコロイド炭酸カルシウム填剤の各物性値を表2に示す。
【0052】
実施例4
酸化抑制剤をソーダボロハイドライドに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行いコロイド炭酸カルシウムを得た。得られたコロイド炭酸カルシウム填剤の各物性値を表2に示す。
【0053】
実施例5
酸化抑制剤を鉄の封鎖剤であるヒドロキシエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行いコロイド炭酸カルシウムを得た。得られたコロイド炭酸カルシウム填剤の各物性値を表2に示す。
【0054】
実施例6〜10
実施例1〜5の酸化抑制剤の含有量を、コロイド炭酸カルシウム固形分に対し、それぞれ0.05重量%に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行いコロイド炭酸カルシウムを得た。得られたコロイド炭酸カルシウム填剤の各物性値を表2に示す。
【0055】
実施例11〜15
実施例1〜5の酸化抑制剤の含有量を、コロイド炭酸カルシウム固形分に対し、それぞれ1.0重量%に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行いコロイド炭酸カルシウムを得た。得られたコロイド炭酸カルシウム填剤の各物性値を表3に示す。
【0056】
実施例16〜20
実施例1〜5の酸化抑制剤の含有量を、コロイド炭酸カルシウム固形分に対し、それぞれ10重量%に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行いコロイド炭酸カルシウムを得た。得られたコロイド炭酸カルシウム填剤の各物性値を表3に示す。
【0057】
実施例21
酸化抑制剤を添加するタイミングを、オストワルド熟成の終了後に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行いコロイド炭酸カルシウムを得た。得られたコロイド炭酸カルシウム填剤の各物性値を表3に示す。
【0058】
実施例22
実施例1と同様の操作で、コロイド炭酸カルシウムを合成後、酸化抑制剤としてチオ硫酸ソーダを0.01重量%添加し、オストワルド熟成により粒子成長を行わせ、BET比表面積5m2 /g のコロイド炭酸カルシウムを得た。その後、脱水・乾燥・解砕し、更に得られた乾粉を精密空気分級機で分級を行い、コロイド炭酸カルシウム填剤を得た。得られたコロイド炭酸カルシウム填剤の各物性値を表3に示す。
【0059】
比較例1
酸化抑制剤を添加しない以外は、実施例1と同様の操作を行い、コロイド炭酸カルシウムを得た。得られたコロイド炭酸カルシウム填剤の各物性値を表3に示す。
【0060】
比較例2
一般的な軽質炭酸カルシウムの調整として、実施例1で得た生石灰を溶解して消石灰水懸濁液とし、特開平6−73690の比較例1の如く炭酸化反応を行い、軽質炭酸カルシウムを合成した。次に、実施例1と同様に200メッシュ篩で異物や粗大粒子の除去を行った後、軽質炭酸カルシウムを10重量%含有する水懸濁液を調整した。尚、BET比表面積は4m2 /g であった。
次に、表面処理剤として、ステアリン酸カリウムとヘキサメタリン酸ナトリウムを用い、それぞれの軽質炭酸カルシウム固形分に対して各々1.3重量%と0.4重量%を表面処理し、その後、脱水・乾燥・解砕し、更に得られた乾粉を精密空気分級機で分級を行い軽質炭酸カルシウムを得た。得られた軽質炭酸カルシウム填剤の各物性値を表3に示す。
【0061】
比較例3
比較例2で調整した軽質炭酸カルシウム水懸濁液に対し、酸化抑制剤として軽質炭酸カルシウム固形分に対し0.005重量%の亜二チオン酸ソーダを添加した以外は、比較例2と同様の操作を行い軽質炭酸カルシウムを得た。得られた軽質炭酸カルシウム填剤の各物性値を表3に示す。
【0062】
得られたコロイド又は軽質炭酸カルシウム填剤の白色度を上記[0040]に記載した測定方法で測定した。測定結果を表2、表3に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
実施例23〜44、比較例4〜6
ポリプロピレン樹脂(住友化学(株)社製FS2011DG2 、MI=2.0 g/10min)100重量部、実施例1〜22及び比較例1〜3で得られたコロイド又は軽質炭酸カルシウム填剤110重量部、ステアリン酸カルシウム1重量部、ヒンダードアミンン系光安定剤1重量部をヘンシェルミキサーに仕込み5分間混合して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物をベント型二軸押出機によりペレット状に加工した。このペレットを、Tダイを装着した押出機を用いて未延伸シートを得た。得られた未延伸シートをテンターオーブン中で140℃の温度下で約7倍に延伸し厚さ180μmの光反射シートを作製した。
このように得られた光反射シートについて下記の方法で耐光性試験を行い、耐光性試験前後の拡散反射率を評価した。評価結果を表4、表5に示す。
【0067】
「評価・測定方法」
1)拡散反射率
拡散反射率の測定は、紫外可視分光光度計(UV3101PC,島津製作所社製) を用い、400〜1000nmの波長領域を測定し、550nmの拡散反射率を代表値とした。拡散反射率が高い程、光反射シートの色相が良好である。
【0068】
2)耐光性試験
耐光性試験はJIS K7350-2 に準拠し、キセノンウェザーメーター(SX75,スガ試験機社製)を用い、波長=300〜400nm、放射照度=180W/m2 、ブラックパネル温度=83℃、湿度=50%RHの条件で、144hr照射した。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
上記表4、表5の評価結果より、本発明の酸化抑制剤を含有したコロイド炭酸カルシウム填剤を配合してなる光反射シートの拡散反射率は、酸化抑制剤を含有していないコロイド炭酸カルシウム填剤を配合した比較例4と比べ、反射率が高く、耐光性も良く維持されていることが確認できる。また比較例5と比較例6は、配合した軽質炭酸カルシウム填剤が軽質炭酸カルシウムに酸化抑制剤を添加していないか、しているかの違いであるが、軽質炭酸カルシウムは熟成工程がない製法であるため、反射率において両者の差は殆どなく、また、アルカリを多く含む凝集体であるため、反射率も低いことが確認できる。
【0072】
実施例45〜66、比較例7〜9
(1)下記に示す配合からなる、基材層用の樹脂組成物(I)を、押出機を用いて溶融混練後、ダイより200℃の温度でシート状に押し出し、該シートを約50℃の温度まで冷却した後、140℃に加熱して、縦方向に5倍延伸した。
<基材層用樹脂組成物(I)の配合>
ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、MA−6):75重量部
実施例1〜22、比較例1〜3で得られたコロイド又は軽質炭酸カルシウム填剤:15重量部
高密度ポリエチレン(日本ポリプロ社製、EY−40):10重量部
【0073】
(2)下記に示す配合からなる、中間層用の樹脂組成物(II)と、表面層用の樹脂組成物(III)を、別々の押出機を用い溶融混練し、ダイより200℃の温度でシート状に押し出しラミネート化し、5層構造「表面層(III)/中間層(II)/基材層(I)/中間層(II)/表面層(III)」からなる積層シートを得た。
<中間層用樹脂組成物(II)の配合>
ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、MA−3):45重量部
実施例1〜22、比較例1〜3で得られたコロイド又は軽質炭酸カルシウム填剤:45重量部
高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリプロ、EY−40):5重量部
グラフトポリプロピレン(三菱化学社製,モディック):5重量部
<表面層用樹脂組成物(III)の配合>
ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、MA−3):50重量部
高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリプロ、EY−40):50重量部
【0074】
(3)得られた積層シートを40℃まで冷却した後、再度155℃まで加熱し、テンターを用いて横方向に8倍延伸し、次いで162℃の温度に設定されたオーブン中を通過させて熱セットし、更にコロナ放電処理して、基材層(I)の2軸延伸フィルムの肉厚が50μm 、中間層(II)の一軸延伸フィルム肉厚が20μm 、表面層の一軸延伸フィルム(III)の肉厚が5μm の5層構造の合成紙(膜圧100μm )を得た。
【0075】
(4)積層シートの表面層(III)に下記の配合からなる塗工剤を厚さ15μm の塗工膜が得られるように塗工し、70℃の温度で1分間乾燥させて、塗工層(IV)を形成させ、7層構造「(IV)/(III)/(II)/(I)/(II)/(III)/(IV)」からなる記録材料を調製した。
<塗工剤の配合>
クレー「ウルトラコート、EMC製」 70重量部
重質炭酸カルシウム「スーパー1700、丸尾カルシウム社製」 30重量部
カルボキシル化SBラテックス「L1608、旭化成工業社製」 11重量部
スターチ「王子エースA、王子コンスターチ社製」 3重量部
分散剤:ポリアクリル酸ソーダ「アロンT−40、東亜合成社製」 0.2重量部
中和剤:苛性ソーダ 0.1重量部
【0076】
(5)得られた記録材料の表面にオフセット印刷機(4E−4,三菱重工業社製)でオフセット印刷し、下記の方法で耐光性試験を行い、耐光性試験前後の発色濃度の評価を行った。評価結果を表6、表7に示す。
1)発色濃度
得られた発色画像部と未印字の地肌部の発色濃度を光学濃度計マクベスRD918を用いてそれぞれ測定した。発色画像部については数値が大きいほど画像保存性に優れ、未印字の地肌部については数値が小さいほど変色が少なく優れていることを示す。
2)耐光性試験
発色試験において得た発色画像部と未印字の地肌部を、JIS K7350-2 に準拠し、キセノンウェザーメーター(SX75,スガ試験機社製)を用い、波長=300〜400nm、放射照度=180W/m2 、ブラックパネル温度=63℃、湿度=65%RHの条件で、24hr照射した。
【0077】
【表6】

【0078】
【表7】

【0079】
上記表6、表7の評価結果より、本発明の酸化抑制剤を含有したコロイド炭酸カルシウム填剤を配合してなる合成紙は、酸化抑制剤を含有していないコロイド炭酸カルシウム填剤を配合した比較例7と比べ、変色が少なく耐光性も良く維持されていることがわかる。また比較例8と比較例9は、配合した軽質炭酸カルシウム填剤が軽質炭酸カルシウムに酸化抑制剤を添加していないか、しているかの違いであるが、軽質炭酸カルシウムは熟成工程がない製法であるため、耐光性において両者の差は殆どなく、また、アルカリを多く含む凝集体であるため、変色していることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
叙上のとおり、本発明のコロイド炭酸カルシウム填剤は、白色度が高く、耐熱性や耐光性に優れているので、特に、光反射シートや合成紙等の白色系合成樹脂用の填剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイド炭酸カルシウム中に、酸化抑制剤が含有されていることを特徴とするコロイド炭酸カルシウム填剤。
【請求項2】
コロイド炭酸カルシウムが、飽和脂肪酸、縮合リン酸、ホスホン酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の表面処理剤で処理されていることを特徴とする請求項1記載のコロイド炭酸カルシウム填剤。
【請求項3】
酸化抑制剤が、還元剤であることを特徴とする請求項1又は2記載のコロイド炭酸カルシウム填剤。
【請求項4】
酸化抑制剤が、硫化物系還元剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載のコロイド炭酸カルシウム填剤。
【請求項5】
酸化抑制剤の含有量が、コロイド炭酸カルシウムに対し0.001〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコロイド炭酸カルシウム填剤。
【請求項6】
水酸化カルシウム水懸濁液に炭酸ガスを導通して炭酸化反応により得たコロイド炭酸カルシウム水懸濁液に、酸化抑制剤をコロイド炭酸カルシウム固形分に対し0.001〜10重量%添加することを特徴とするコロイド炭酸カルシウム填剤の製造方法。
【請求項7】
樹脂中に、請求項1〜5のいずれか1項記載のコロイド炭酸カルシウム填剤を配合してなることを特徴とする樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−263224(P2009−263224A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90793(P2009−90793)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(390008442)丸尾カルシウム株式会社 (31)
【Fターム(参考)】