説明

コロナウイルスのためのLAMP増幅用核酸プライマーセット

【課題】コロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのプライマーセット、前記ウイルスを検出および/または分類するための方法の提供。
【解決手段】コロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって;当該FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマー、B3プライマーが特定な配列からなるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のプライマーである;プライマーセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナウイルス由来の核酸を増幅および/または検出する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスは、1本鎖の(+)鎖RNAゲノムを持つエンベロープウイルスである。細胞膜由来のウイルスエンベロープ表面に存在するクラブ様突起(Spike)によって太陽のコロナのような外観を持つことからこのように称される。ウイルス粒子形状は、直径60〜220nmの多形性であるが、楕円形あるいは、多形成の粒子を示すものも良く知られている。ウイルスの増殖は細胞質内で行われ、小胞体やゴルジ装置から出芽する。このウイルスはニドウイルス目、コロナウイルス科に分類されるが、コロナウイルス科は更に、コロナウイルス属、トロウイルス属に大別される。ヒトを含み様々な哺乳動物や鳥類に感染し、さまざまな疾病を引き起こす。主に呼吸器系、肝臓、小腸、中枢神経系等の疾患の原因となることが知られている。
【0003】
特に、コロナウイルス属ウイルスによって引き起こされる経済動物に対する重大な疾病には、牛コロナウイルス病(bovine coronavirus infection)、家畜伝染病予防法における届出伝染病である豚流行性下痢(porcine epidemic diarrhea;PED)や、豚伝染性胃腸炎(transmissible gastroenteritis of swine;TGE)が知られており、注目を集めている。一方、マウス、ラットなどの動物実験は、生命科学研究には必要不可欠である。再現性の高い動物実験を行うためには、病原微生物等を対象とした定期的な微生物モニタリングが必須である。それにより品質管理された実験動物が提供される。そのような状況において、マウスなどの実験動物では、最も重要な病原微生物の1つとしてコロナウイルス属ウイルスであるラットコロナウイルス(Rat coronavirus 、Rat sialodacryoadenitis coronavirus)や、マウス肝炎ウイルス(Murine hepatitis virus)を対象とした微生物モニタリングが定期的に実施されている。これまでの検査手法は、主に「血清抗体の検査」が用いられている。しかしながら、免疫不全動物や感染初期の動物では十分な抗体上昇がなく、囮動物を使用したとしても、あくまでも飼育室環境をモニターする形となり、実際に使用する実験動物自体の汚染の有無を直接検査することが出来ない。そのため、汚染を見逃す危険がある。これら抗体検査が無効な動物や、動物実験に関連した細胞及び配偶子などの汚染検査にはウイルス自体を特異的且つ迅速に検出する検査手法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コロナウイルス由来の核酸を特異的且つ迅速に増幅するためのプライマーセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための手段は、
(1)コロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットは、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマー、B3プライマーを含み、
当該FIPプライマーは配列番号1、配列番号5、配列番号9、配列番号13若しくは配列番号17若しくは配列番号44またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、
当該BIPプライマーは配列番号2、配列番号6、配列番号10、配列番号15、配列番号18、配列番号21若しくは配列番号45またはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドを含み、
当該F3プライマーは配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号14若しくは配列番号19、配列番号34、配列番号35若しくは配列番号46またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含み、および
当該B3プライマーは配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号16、配列番号20若しくは配列番号22またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドを含む
プライマーセット
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コロナウイルス由来の核酸を特異的且つ迅速に増幅するためのプライマーセットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】LAMP法におけるプライマーの各領域を示す模式図。
【図2】LAMP法を用いて得られる増幅産物を示す模式図。
【図3】LAMP法におけるプライマーの各領域を示す模式図。
【図4】LAMP法の増幅産物を示す模式図。
【図5】本発明の核酸プローブ固定化チップ。
【図6】本発明の核酸プローブ固定化チップ。
【図7】LAMP増幅の電気泳動写真の一例を示す図。
【図8】電流検出型核酸チップによる検出結果の一例を示す図。
【図9】電流検出型核酸チップによる検出結果の一例を示す図。
【図10】電流検出型核酸チップによる検出結果の一例を示す図。
【図11】電流検出型核酸チップによる検出結果の一例を示す図。
【図12】電流検出型核酸チップによる検出結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.プライマー
本発明の1態様により、コロナウイルス由来の核酸を特異的且つ迅速に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットが提供される。
【0009】
ここにおける「LAMP法」は、それ自身公知の何れのLAMP法をも含むが、好ましくはRT−LAMP法である。RT-LAMP法とは、等温遺伝子増幅法であるLAMP法の1種で、逆転写反応とLAMP反応を同時に行う事によりRNAを鋳型にLAMP増幅できる方法である。ここにおいて「LAMP法」というとき、RT−LAMP法などを含むそれ自身公知の何れのLAMP法を含む。「LAMP増幅」および「RT−LAMP増幅」とは、LAMP法またはRT−LAMP法により行なわれる増幅または増幅工程を指す。
【0010】
一般的にLAMP法は2種若しくは4領域または4種若しくは6領域のプライマーを用いる点がPCR法とは異なる。LAMP法は、PCRを用いた方法に比べ増幅効率が優れていると共に、サンプル中の不純物の影響も受けにくい。そのため、簡便なサンプルの前処理で微量なコロナウイルス属に分類される微生物を検出することが可能である。
【0011】
LAMP法におけるプライマー設計および得られる増幅産物について、図1および図2を参照して説明する。
【0012】
図1は、検出されるべき二本鎖DNAと、合計4種類のプライマー配列、即ち、FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマー、B3プライマーを示す。FIPプライマーおよびBIPプライマーは、各々二つの領域を含む。即ち、FIPはF1cとF2を含み、BIPはB2とB1cを含む。F3プライマーはF3領域を含む。B3プライマーはB3領域を含む。
【0013】
ここでF3、F2、F1、B1c、B2cおよびB3cの各領域は、前記二本鎖DNAのうちの一本鎖DNAの5’→3’方向に向けてこの順で設定された領域である。またB3、B2、B1、F1c、F2cおよびF3cの各領域は、その相補鎖の一本鎖DNAの5´→3´方向に向けてこの順で設定された領域である。B3とB3c、B2とB2c、B1とB1c、F1cとF1、F2cとF2、F3cとF3は互いに相補鎖である。ここにおいて、ある配列名の配列は、当該配列名に「c」を付した配列と互いに相補的な関係にあることを示す。例えば、「配列」という名称の配列がある場合、その相補鎖は「配列c」と記載される。
【0014】
このようなFIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマーおよびB3プライマーを用いてLAMP増幅を行なうと、図1の二本鎖DNAの夫々の鎖から、図2に示すようなダンベル型のステム・アンド・ループ構造の増幅産物が得られる。その増幅機構については、例えば特開2002−186781号公報を参照することが可能である。また、この4種のプライマーのほかにループプライマーを併せて用いてもよい。
【0015】
RT−LAMP法が使用される場合、前記LAMP法反応液に逆転写活性を持つ酵素を添加して、逆転写反応を行いながらLAMP増幅法を行えばよい。LAPM法であっても、RT−LAMP法であっても、同じ配列のプライマーを等しく使用することが可能である。
【0016】
検出しようする配列であるターゲット配列は、一本鎖のループ部分またはステム部分の何れに対しても設定することが可能である。好ましくはループ部分に設定される。ターゲット配列とは、所望の増幅が行なわれた後に得られる増幅産物を検出する際に使用される配列である。ターゲット配列の有無の検出は、例えば、ターゲット配列に相補的なプローブとのハイブリダイゼーションの有無を検出することにより行えばよい。
【0017】
次に、一本鎖ループ部分にターゲット配列が位置するようにプライマーを設計する場合を説明する。図3を参照されたい。ターゲット配列(図3ではFPc、FP、BPおよびBPcの何れかとして理解されればよい)が、領域F1とF2との間(この領域はF2領域を含んでもよい)、領域F2cとF1cとの間(この領域はF2c領域を含んでもよい)、領域B1とB2との間(この領域はB2領域を含んでもよい)、および/または領域B2cとB1cとの間(この領域はB2c領域を含んでもよい)の何れかに対応して位置するように、6つのプライマー領域を設定する。ターゲット配列は、上記それぞれの領域間に形成される一本鎖のループ部分のいずれの部位に位置するように設計されてもよい。ここで、プライマー領域F1とF2との間のループ部分には、F2領域自体も含まれてよい。こうして設定された6つのプライマー領域に基づいて4種類のプライマーを作製し、これらプライマーを用いてLAMP増幅を行なう。それにより、図4に示すような部分を一部として含むLAMP増幅産物が得られる。このLAMP増幅産物中においては、ターゲット配列FPc、FP、BP、BPcは増幅産物のダンベル構造における一本鎖ループ中に位置する。
【0018】
一方、プライマー領域F1cとF1、およびB1cとB1は、もともと相補的な配列を有しているので、相互に自己ハイブリダイゼーションを生じて二本鎖を形成する。
【0019】
増幅産物中に含まれるターゲット配列は、図4に示すように、ループ中に一本鎖の部分が存在する。その部分を利用すれば、変性操作を行なうことなく、各ターゲット配列に対して相補的なプローブ核酸(FP、FPc、BP、BPc)との特異的ハイブリダイゼーションが行なえる。
【0020】
特異的ハイブリダイゼーションとは、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphisms:SNPs)または変異が存在する場合、その僅かの違いも検出することが可能であることを意味する。
【0021】
コロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのプライマーセットは、LAMP増幅用核酸プライマーセットであってよい。各プライマーは、対象となるコロナウイルスのゲノムの塩基配列を基に、F1、F2、F3、B1、B2およびB3領域を決定することにより設計することが可能である。
【0022】
好ましいF1領域、F2領域、F3領域、B1領域、B2領域およびB3領域、並びにLPf領域およびLPb領域の例を表A−1に示す。LPf領域およびLPb領域は、ループプライマーのための領域である。ループプライマーについては後述する。
【表A−1】

【0023】
ここにおいて、表中の配列番号を示すカラムにおいて“()”内に示される番号は、同じヌクレオチド配列を有する配列の配列番号を示す。
【0024】
また、それを基に設計した好ましいFIP、BIP、F3、B3、LPfおよびLPbの例を表A−2に示す。
【表A−2】

【0025】
表A−1の領域を基に設計されたプライマーにより得られる増幅産物を検出するためのプローブ領域の例を表B−1に示す。
【表B−1】

【0026】
表B−1に示した領域を利用したプローブの例を表B−2に示す。
【表B−2】

【0027】
また、表A−1の領域を基に設計したプライマーの例は表1に示されるものであってもよい。
【表1−1】

【0028】
【表1−2】

【0029】
【表1−3】

【0030】
表A−1に記載される領域が、コロナウイルスのゲノムのどの位置に対応するのかを表2に示す。
【表2−1】

【0031】
【表2−2】

【0032】
【表2−3】

【0033】
表2には、複数種のコロナウイルスのゲノムについてアラインメントを示した。最下段には、塩基について全ての種が共通する塩基を有する位置には「*」を示し、種により変異のある位置には「.」を記した。表2に示す領域は、コロナウイルス属において高度に保存された領域である。また、当該プライマーにより増幅される領域は、コロナウイルスを特定するために特徴的な領域である。
【0034】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F1領域は配列番号247(または配列番号241)またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。また、当該F1領域は、配列番号247またはその相補配列で示されるポリヌクレオチドの何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入による変異を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2の同アライメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、配列番号247、変異を含む配列番号247およびそれらの相補配列は、その配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが、混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0035】
ここで、ユニバーサルなヌクレオチドの例は、これらに限定するものではないが、デオキシイノシン(deoxyinosine;dI)や、Gren Research社の3−ニトロピロール(Nitropyrrole)、5-ニトロインドール(Nitroindole)、デオキシリボルラノシル(deoxyribofuranosyl ;dP)、デオキシ-5'-ジメトキシトリチル-D-リボフラノシル(deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl ;dK)が含まれる。
【0036】
またここで、プライマーの各配列間またはその末端側には、1〜100ヌクレオチド、好ましくは2〜30ヌクレオチド程度の配列(例えば、スペーサーとして使用される配列)が含まれていてもよい。当該プライマーの長さは30〜200ヌクレオチド程度であってよく、好ましくは35〜100ヌクレオチド、更に好ましくは43〜60ヌクレオチドであってよい。
【0037】
混合ヌクレオチドは一般的に「ミックス塩基」とも称される。混合ヌクレオチドを使用する場合、当該箇所が異なる塩基、即ち、アデニン、チミン、シトシンおよびグアニンの何れかをある塩基を含む複数の配列からなるプライマーが、1つの反応系、例えば、1つの反応容器中で2以上または全て混合されて一緒に使用されればよい。
【0038】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F2領域は、配列番号248(または配列番号242)およびそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなF2領域に好ましい各配列は、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入の変異を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2のアライメント上の同領域の他の配列を参照して得られる配列またはその相補鎖であってもよく、例えば、配列番号249またはその相補配列であってもよい。また、配列番号248および配列番号249、並びに変異を含む配列番号248および配列番号249、並びにそれらの相補配列は、その配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが、混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0039】
好ましいプライマーセットにおいて、当該F3領域は配列番号250(または配列番号3)またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなF3領域に好ましい各配列は、その何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入の変異を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2のアライメント上の同領域の他の配列を参照して得られる配列またはその相補鎖であってもよく、例えば、配列番号251(または配列番号31若しくは243)またはその相補配列であってもよい。また、配列番号250、変異を含む配列番号250およびそれらの相補配列は、その配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが、混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0040】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B1領域は配列番号252(または配列番号244)およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなB1領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入の変異を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2のアライメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、配列番号252、変異を含む配列番号252およびそれらの相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0041】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B2領域は配列番号253およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなB2領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入の変異を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2のアライメント上の同領域の他の配列を参照されたい。また、配列番号253、変異を含む配列番号253およびそれらの相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0042】
好ましいプライマーセットにおいて、当該B3領域は配列番号254(または配列番号4)およびその相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなっても、当該ポリヌクレオチドを含んでなってもよい。このようなB3領域に好ましい各配列はその何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入の変異を有していてもよい。そのようなポリヌクレオチドの例は、表2のアライメント上の同領域の他の配列を参照して得られる配列またはその相補鎖であってもよく、例えば、配列番号255またはその相補配列であってもよい。また、配列番号254および配列番号255、および変異を含む配列番号254および配列番号255、並びにそれらの相補配列の何れかの位置の1〜5個、好ましくは1〜数個のヌクレオチドが混合ヌクレオチドまたはユニバーサルなヌクレオチドであってもよい。
【0043】
上記のような領域を使用したプライマーを用いて、コロナウイルス属に分類される微生物あるいはその遺伝子を含有する検体試料に対してLAMP法による増幅を行うと、図4で説明したように、ステム・アンド・ループ構造が形成され、一本鎖のループ構造内に含まれるコロナウイルス属に分類される微生物由来のターゲット配列が得られる。
【0044】
表1に示したプライマーの中でもコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅するために好ましいプライマーセットの例は次の通りである。
【0045】
当該FIPプライマーが配列番号1、配列番号5、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号44若しくは配列番号260またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のFIPプライマーであり、
当該BIPプライマーが配列番号2、配列番号6、配列番号10、配列番号15、配列番号18、配列番号21若しくは配列番号45またはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のBIPプライマーであり、
当該F3プライマーが配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号14、配列番号19、配列番号34、配列番号35若しくは配列番号48またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のF3プライマーであり、および
当該B3プライマーが配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号16、配列番号20、配列番号22、配列番号36若しくは配列番号47またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のB3プライマーである
FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマーおよびB3プライマーを含むプライマーセットである。
【0046】
プライマーセットにおいて使用されるFIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマーおよびB3プライマーの組み合わせの例は、以下の(1)〜(9)よりなる群から少なくとも1選択された組み合わせであってよい。これらの組み合わせは、(1)〜(9)に示される他のプライマーやそれ自身公知の何れのプライマーと同時に使用されてもよい。1つの組み合わせに含まれる配列の並びは、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマーおよびB3プライマーの順である:
(1) 配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(2) 配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(3) 配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(4) 配列番号13、配列番号10、配列番号14および配列番号12によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(5) 配列番号13、配列番号15、配列番号14および配列番号16によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(6) 配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(7) 配列番号17、配列番号21、配列番号19および配列番号22によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
ここで、(1)〜(7)の組み合わせは、コロナウイルスを検出することが可能なプライマーの組み合わせである。更に、そこにおいて、少なくとも1つのプライマーの一部にコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含んでもよい。そのような範囲とは、分類学的にコロナウイルスと同定されるために必ずしも必要ではない範囲であればよい;
(8) 配列番号44、配列番号45、配列番号46および配列番号47によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
ここで、(8)の組み合わせにおいては、各配列中に複数の塩基を示す1塩基表示による記号を含む。それらの記号の示す塩基の意味は通常当該技術分野において一般的に使用される意味である。即ち、「r」はグアニンまたはアデニン、「y」はチミンまたはシトシン、「m」はアデニンまたはシトシン、「k」はグアニンまたはチミン、「s」はグアニンまたはシトシン、「w」はアデニンまたはチミン、「b」はグアニンまたはシトシンまたはチミン、「d」はアデニンまたはグアニンまたはチミン、「h」はアデニンまたはシトシンまたはチミン、「v」はアデニンまたはグアニンまたはシトシン、「n」はアデニンまたはグアニンまたはシトシンまたはチミンである。本明細書においてもこの通りに意味する。(8)の組み合わせでプライマーセットを使用する場合には、ミックス塩基で使用することは、ユニバーサルにウイルスを増幅するためにより効果的である。また、そこにおいて、少なくとも1つのプライマーの一部にコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含んでもよい。そのような範囲とは、分類学的にコロナウイルスと同定されるために必ずしも必要ではない範囲であればよい;
(9) 配列番号59、配列番号60、配列番号58および配列番号61によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(a)配列番号68、配列番号69、配列番号67および配列番号70によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(b)配列番号77、配列番号78、配列番号76および配列番号79によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(c)配列番号86、配列番号87、配列番号85および配列番号89によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(d)配列番号104、配列番号105、配列番号103および配列番号106によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(d)配列番号113、配列番号114、配列番号112および配列番号115によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(f)配列番号122、配列番号123、配列番号121および配列番号124によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;並びに
(g)配列番号131、配列番号132、配列番号130および配列番号133によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;を含むプライマーの組み合わせ;
ここにおいて、(9)の組み合わせに含まれるプライマーセットは、コロナウイルスの種を同定する、または判定するために使用することも可能なプライマーセットである。これらのプライマーセットによりユニバーサルにウイルスを増幅する場合には、全てのプライマーセットを使用する方が好ましい。特定の種のコロナウイルスを増幅したい場合には、種に応じて使用するプライマーセットを選択してよい。組み合わせ(a)および(f)はウシコロナウイルス(Bovine coronavirus)、(b)、(c)、(g)および(h)はヒトコロナウイルス(Human coronavirus)、(d)および(i)はブタ血球凝集脳脊髄炎ウイルス(Porcine hemagglutinating encephalomyelitis virus)にそれぞれ好ましい。また、そこにおいて、少なくとも1つのプライマーの一部にコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含んでもよい。
【0047】
前記(9)のプライマーセットは、コロナウイルスの種に応じた増幅を可能にするプライマーセットの組み合わせの例である。これらの組み合わせは、以下に示すような組み合わせにおいて、種特異的に増幅するためのプライマーセットとして使用されてもよい。また、上記(1)〜(9)および/または以下の(10)〜(17)に示される他のプライマーやそれ自身公知の何れのプライマーと同時に使用されてもよい。1つの組み合わせに含まれる配列の並びは、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマーおよびB3プライマーの順である:
(10) 配列番号59、配列番号60、配列番号58および配列番号61によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(11) 配列番号68、配列番号69、配列番号67および配列番号70によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(12) 配列番号77、配列番号78、配列番号76および配列番号79によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(13) 配列番号86、配列番号87、配列番号85および配列番号89によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(14) 配列番号104、配列番号105、配列番号103および配列番号106によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(15) 配列番号113、配列番号114、配列番号112および配列番号115によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;
(16) 配列番号122、配列番号123、配列番号121および配列番号124によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ;並びに
(17) 配列番号131、配列番号132、配列番号130および配列番号133によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマーの組み合わせ:
また、そこにおいて、少なくとも1つのプライマーの一部にコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含んでもよい。
【0048】
上述のプライマーの組合わせに加えて、更にループプライマーを使用してもよい。ループプライマーを使用することにより更に効率よく増幅を行なうことが可能である。好ましいループプライマーの例は、前記LPfが、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号37、配列番号48、配列番号62、配列番号71、配列番号80、配列番号89、配列番号107、配列番号116、配列番号125若しくは配列番号134またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含み、前記LPbが配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号49、配列番号63、配列番号72、配列番号81、配列番号90、配列番号108、配列番号117、配列番号126若しくは配列番号135またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む。
【0049】
ユニバーサルな増幅を行なう場合に好ましいループプライマーは、LPfが、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29であり、LPbが配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33である。ループプライマーは、LPfまたはLPbの何れかを使用してもよく、これらを同時に使用してもよいが、好ましくはLPfまたはLPbを同時に使用する。
【0050】
本発明は、上記のようなプライマーセットをコロナウイルス属に分類される微生物に対して適用すれば、コロナウイルス属に特徴的な遺伝子型を反映する核酸が増幅される。得られる増幅産物の有無を判定することにより、コロナウイルスの検出を行うことが可能である。従って、試料におけるコロナウイルスの検出は、検出対象である試料について、当該プライマーセットを用いて増幅反応を行うことを含む。
【0051】
増幅反応の条件は、それ自身公知の何れかの条件を利用すればよい。また、当該増幅反応を行った結果を基に当該試料はコロナウイルスが含まれていると判定すればよい。そのような判定により試料中のコロナウイルスを検出することが可能である。
【0052】
例えば、上記増幅反応は、1チューブ当たり1プライマーセットで行ってもよく、あるいは1チューブに各種遺伝子型に対応した複数のプライマーセットを用いて行ってもよい。複数の遺伝子型を特定する必要がある場合は、後者の方法で行う方が効率的である。
【0053】
また、上記増幅反応は、これに限定するものではないが、例えば、RT−LAMP法場合、反応液は以下の組成であってもよい;
RT−LAMP法の反応液組成
20mM Tris−HCL(pH8.8)
10mM KCL
8mM MgSO
10mM (NHSO
0.1% Tween20
0.8M Betaine
1.4mM dNTPs
16 U Bst DNA polymerase
0.625U AMV Reverse transcriptase
このような組成の反応液で、総量25μLで反応を行う際には、下記の濃度でそれぞれのプライマーを持ち込んでもよい;
プライマー添加量
FIPプライマー 40pmoL
BIPプライマー 40pmoL
F3プライマー 5pmoL
B3プライマー 5pmoL。
【0054】
ここで「試料」は「検体」または「検体試料」とも称してよく、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、フェレット、オナガザル、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、アザラシ、ネズミイルカなどの哺乳類、鳥類などの体液、組織、細胞、並びに水、湖水、川水、海水および土壌などの環境に存在する何れかの物質であってもよい。例えば、血液、血清、白血球、尿、精液、唾液、組織、バイオプシー、口腔内粘膜、培養細胞、喀痰等であってもよい。また、当該試料は、コロナウイルス属に分類される微生物あるいはその遺伝子が含まれている可能性の疑われる物質であってよい。そのような物質をそれ自身公知の手段により、核酸の増幅に適した状態に前処理したものであってもよく、何れの前処理もなされなくてもよい。例えば、そのような前処理の例は、変性、濾過、核酸抽出、不純物除去などを含む。
【0055】
以上のようなプライマーセットを用いて核酸の増幅を行うことにより、簡便、安価、高速に、特異的にコロナウイルスを増幅することが可能である。これを利用して、試料に含まれる核酸を当該プライマーまたはプライマーセットを用いるLAMP増幅反応に供し、増幅反応の結果生じた増幅産物の有無を判定することにより、当該試料にコロナウイルスを特異的に検出することが可能である。
【0056】
従来の方法では、特異性を配列検出の際の特異性は、一般的にPCR法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検出している。この場合、PCRにより生成される産物は2本鎖であるため、プローブとハイブリダイゼーション反応させると、相補鎖がプローブに対するコンペティターとなりハイブリ効率が低く検出感度が悪い。そのような方法において、また従来では、ターゲットを1本鎖にするために、相補鎖を分解する、または分離するといった方法も取られている。これらの場合、酵素の使用、磁気ビーズの使用などによる高価な価格となったり、操作が煩雑性になったりする。また、コロナウイルス属に分類される微生物は、培養が難しく、適切な培養条件を整えたとしても、時間がかかる。このような問題も本発明を用いることにより解決される。
【0057】
これまで、迅速診断法としては特異的な抗体を使って抗原−抗体反応を介して検出する方法や、DNA配列中の特徴的な配列を含む領域をポリメラーゼチェインリアクション(PCR)で増幅し、電気泳動法により検出する方法などが知られていた。しかしながら、前者の方法では近縁株等との区別が難しいことや、感染初期には抗体が検出できない事が知られている。また、後者のPCRを利用する方法は、サーマルサイクラーのような複雑な温度制御装置が必要なことや簡便性に課題があるなどの不利点がある。またPCR法では、万が一誤って相補鎖合成が行われてしまった場合にはその生成物が鋳型となり増幅してしまい、誤った判定をしてしまう可能性がある。実際に、プライマーの末端の1塩基相違のみでは特異的な増幅を制御することは困難である。このような問題も本発明を用いることにより解決される。
【0058】
ここで、本明細書に記載される核酸に関する情報を表3に纏めて示す。
【表3−1】

【0059】
【表3−2】

【0060】
【表3−3】

【0061】
【表3−4】

【0062】
【表3−5】

【0063】
【表3−6】

【0064】
【表3−7】

【0065】
【表3−8】

【0066】
【表3−9】

【0067】
【表3−10】

【0068】
【表3−11】

【0069】
【表3−12】

【0070】
2.プローブ
本発明は更に、上述のポリペプチドプライマーにより増幅されたコロナウイルスに由来する核酸を検出および/または分類するためのプローブおよびプローブセットもまた提供する。
【0071】
プローブは、所望の種を特異的に検出するためのプローブであってもよく、また、幾つかの種を特異的に検出するためのプローブであってもよい。このようなプローブは、例えば、上述のプライマーにより増幅されたステム・アンド・ループ構造を有するポリヌクレオチドの一本鎖のループ部分の領域に対して結合するように設定されればよい。また、当該プローブは好ましくは、約10〜60塩基長、約12〜40塩基長などであればよい。
【0072】
当該増幅産物を検出するためのプローブは、検出する細ウイルス株の保持する遺伝的多型や変異などに応じて変化させてもよい。上述したプローブは、何れも各表に示した配列の任意の位置の塩基が1つまたは数個置換あるいは欠失あるいは塩基を挿入された配列からなってもよい。また、核酸プローブの構造も特に限定されるものではなく、DNA、RNA、PNA、LNA、メチルホスホネート骨格の核酸、その他の人工核酸鎖を用いることが可能である。また、これらのキメラ核酸でもよい。
【0073】
例えば、好ましいプローブは、図3に示すようなステム・アンド・ループ構造のプライマー領域F1とF2との間(この領域はF2領域を含んでもよい)、プライマー領域F2cとF1cとの間(この領域はF2c領域を含んでもよい)、プライマー領域B1とB2との間(この領域はB2領域を含んでもよい)、および/またはプライマー領域B2cとB1cとの間(この領域はB2c領域を含んでもよい)の何れかの位置に対応するように選択されてよい。この選択は検出しようとするウイルス種に特異的な配列が適宜選択されるように行えばよい。或いは複数種を同時且つ特異的に、または広い範囲のウイルス種に亘り包括的、即ち、ユニバーサルに検出を行ってもよい。
【0074】
本発明に従うプローブの例は、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号145、配列番号146および配列番号147並びにそれらの相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に検出可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドによりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1であってもよい。これらのプローブは組み合わされて使用されてもよく、その塩基にミックス塩基が含まれている塩基がミックス塩基として使用されてもよい。これらのプローブを組み合わせたミックス塩基として、および/または単独でミックス塩基として使用可能である場合にはそのミックス塩基として使用することが、ユニバーサルな検出のためにより有利であるので好ましい。これらのプローブセットにより、コロナウイルス属、特にグループ2aに分類される微生物をユニバーサルに検出することが可能である。グループ2aに含まれるコロナウイルスの例はウシコロナウイルス(Bovine coronavirus)、マウス肝炎ウイルス(Murine(Mouse) hepatitis virus)、ヒトコロナウイルス、ブタ血球凝集脳脊髄炎ウイルスおよびラットコロナウイルス(Rat coronavirus)であるが、これらに限るものではない。
【0075】
また、当該プローブは、所望の種を検出するためのプローブであってもよい。そのようなプローブは、例えば、上述のプライマーにより増幅されたステム・アンド・ループ構造を有するポリヌクレオチドの一本鎖のループ部分の領域に対して結合するように設定されればよい。また、当該プローブは好ましくは、約10〜60塩基長、約12〜40塩基長などであればよい。所望の種を検出するためのプローブは、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号145、配列番号146および配列番号147、並びにそれらの相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に検出可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドによりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプローブ群から選択される少なくとも1であってもよい。また、複数の種を同時に検出するために、上記の配列から2または2以上選択して組み合わせて使用されてもよい。また、検出したいウイルス種のためのプローブを所望に応じて選択し、それらを組み合わせて、プローブセットとして使用してもよい。2種以上のプローブが選択され組み合わされて使用されてもよく、それぞれの配列からなる全てのプローブが一緒に使用されてもよい。また、これらの配列を構成する何れかの1以上の塩基がミックス塩基で設計されてもよい。また、複数種類の塩基に対して対合可能な修飾塩基で置換するように設計されてもよい。更に、このようなプローブは所望の種を検出することに加えて、或いは当該検出に代えてウイルスの型分けのために使用してもよい。更に、組み合わせて使用して、および/またはミックス塩基で使用してユニバーサルにウイルスを検出するために使用されてもよい。
【0076】
ウイルス種に対応するプローブの組み合わせの例を表4および表5に示す。
【表4−1】

【0077】
【表4−2】

【0078】
【表5−1】

【0079】
【表5−2】

【0080】
また、何れのプローブも、例えば、コロナウイルス・ピロリの場合などのように、同一種内での配列変異が明らかになっているなどの場合には、同一種内の配列変異に対応するために異なる配列からなるプローブを複数使用してよい。
【0081】
何れのプローブおよびプローブセットも、上述した増幅産物を所望に応じて検出するために使用されてよい。当該プローブは、固相基体表面に固定化されたものであってもよく、典型的にはDNAチップとして構成されたものが用いられてよく、また他のマイクロアレイを構成するプローブとして用いられてもよい。
【0082】
核酸プローブを固相、例えば、基体に固定化する場合は、末端にアミノ基、チオール基、ビオチン、などの官能基を導入してもよく、更に、官能基とヌクレオチドの間にスペーサーを導入してもよい。ここで用いられるスペーサーの種類は特に限定されないが、例えばアルカン骨格、エチレングリコール骨格などを用いてよい。また、一部の塩基がユニバーサルなヌクレオチドに置換されてもよい。本発明使用可能なユニバーサルなヌクレオチドの例は、deoxyinosine(dI)や、Gren Research社の3-Nitropyrrole、5-Nitroindole、deoxyribofuranosyl (dP)、deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl (dK)などを含む。
【0083】
本発明で使用する検出法は、これらに特に限定されるものではないが、濁度、可視光、蛍光、化学発光、電気化学発光、化学蛍光、蛍光エネルギー転移法、ESRなどの光学的な手法や、電流、電圧、周波数、伝導度、抵抗などの電気的な性質を利用することも可能である。
【0084】
基体に核酸プローブが固相されたDNAチップの例を以下に説明する。図5のDNAチップは、核酸プローブ固定化チップの非限定的な1例であるである。DNAチップ1は、基体2に固定化領域3を具備する。核酸プローブ4は該固定化領域3に固定化される。このようなDNAチップ1は、当該分野で周知の方法によって製造することができる。基体2に配置される固定化領域3の数及びその配置は、当業者が必要に応じて適宜設計変更することが可能である。このようなDNAチップは、蛍光を用いた検出方法のために好適に用いられてよい。1つの固定化領域には、独立した1つの信号として得ることが必要な情報を得るために必要な1種類または1種類以上の核酸プローブまたはプローブセットが固定化される。
【0085】
図6のDNAチップは、核酸プローブ固定化チップの非限定的な1例であるである。図6のDNAチップ11は、基体12に電極13を具備する。核酸プローブ14は電極13に固定化される。電極13は、パット15に接続される。電極13からの電気的情報はパット15を介して取得される。このようなDNAチップ11は、当該分野で周知の方法によって製造することができる。基体12に配置される電極13の数及びその配置は、当業者が必要に応じて適宜設計変更することが可能である。さらに、本例のDNAチップは、必要に応じて、参照電極及び対極を具備してもよい。1つの固定化領域には、独立した1つの信号として得ることが必要な情報を得るために必要な1種類または1種類以上の核酸プローブまたはプローブセットが固定化される。
【0086】
本発明で用いるプローブを固定化するための表面は、特に限定されるものではないが、樹脂ビーズ、磁気ビーズ、金属微粒子、マイクロタイタープート、ガラス基板、シリコン基板、樹脂製基板、電極基板などを用いることができる。
【0087】
本発明で使用する基体の材料は、特に限定されるものではない。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素、等の無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。
【0088】
例えば、電気的な性質を利用する場合、電極を基体に配置することが好ましい。電極は特に限定されるものではないが、例えば、金、金の合金、銀、プラチナ、水銀、ニッケル、パラジウム、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、タングステン等の金属単体及びそれらの合金、あるいはグラファイト、グラシーカーボン等の炭素等、またはこれらの酸化物、化合物であってよい。更に、酸化珪素等の半導体化合物や、CCD、FET、CMOSなど各種半導体デバイスを用いてもよい。
【0089】
抽出方法は特に限定される物ではなく、フェノール−クロロホルム法等の液−液抽出法や担体を用いる固液抽出法を用いることができる。また、市販の核酸抽出方法QIAamp(QIAGEN社製)、(社製)等を利用することも可能である。次に、抽出した核酸成分を鋳型にRT-LAMP増幅を行った後、遺伝子検出用電極とでハイブリダイゼーション反応を行う。反応溶液は、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液中で行う。この溶液中にはハイブリダイゼーション促進剤である硫酸デキストランや、サケ精子DNA、牛胸腺DNA、EDTA、界面活性剤などを添加することが可能である。ここに抽出・増幅した核酸成分を添加の上、核酸プローブとのハイブリダイゼーション反応に供与する。反応中は、撹拌、あるいは振とうなどの操作で反応速度を高めることもできる。反応温度は10℃〜90℃の範囲で、また反応時間は1分以上1晩程度行う。ハイブリダイゼーション反応後の洗浄には、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。
【0090】
抽出・増幅したサンプル核酸は、あらかじめFITCやCy3、Cy5、ローダミンなどの蛍光色素やビオチン、ハプテン、オキシダーゼやポスファターゼ等の酵素や、フェロセンやキノン類等の電気化学的に活性な物質で標識するか、あるいは前述した物質で標識したセカンドプローブを用いることで検出が可能になる。
【0091】
電気化学的に活性な核酸結合物質を用いた検出を行う場合は、以下のような手順で検出を行う。基体を洗浄後、電極表面に形成した二本鎖部分に選択的に結合する核酸結合物質を作用させ、電気化学的な測定を行ってよい。ここで用いられる核酸結合物質は特に限定される物ではないが、例えば、ヘキスト33258、アクリジンオレンジ、キナクリン、ドウノマイシン、メタロインターカレーター、ビスアクリジン等のビスインターカレーター、トリスインターカレーター、ポリインターカレーター等を用いることが可能である。更に、これらのインターカレーターを電気化学的に活性な金属錯体、例えば、フェロセン、ビオロゲン等で修飾しておくことも可能である。核酸結合物質の濃度は、その種類によって異なるが、一般的には1ng/ml〜1mg/mlの範囲で使用する。この際、イオン強度0.001〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。電極を核酸結合物質と反応させた後、電気化学的な測定を行う。電気化学的な測定は、3電極タイプ、すなわち参照電極、対極、作用極、あるいは2電極タイプ、すなわち対極、作用極で行う。測定では、核酸結合物質が電気化学的に反応する電位以上の電位を印加し、核酸結合物質に由来する反応電流値を測定する。この際、電位は定速で掃引するか、あるいはパルスで印加するか、あるいは、定電位を印加することができる。測定には、ポテンショスタット、デジタルマルチメーター、ファンクションジェネレーター等の装置を用いて電流、電圧を制御する。得られた電流値を基に、検量線から標的遺伝子の濃度を算出する。遺伝子検出用電極を用いた遺伝子検出装置は、遺伝子抽出部、遺伝子反応部、核酸結合物質反応部、電気化学測定部、洗浄部等から構成される。
【0092】
3.アッセイキット
本発明に従うと、コロナウイルスの検出および/または分類するためのアッセイキットが提供されてもよい。そのようなアッセイキットは、上述のプライマーまたはプライマーセットとプローブまたはプローブセットとを含めばよい。当該アッセイキットは、当該プライマーまたはプライマーセットおよびプローブまたはプローブセットに加えて、LAMP増幅に必要なバッファーを含んでもよく、ハイブリダイゼーションに必要なバッファー、並びにそこにおいて当該増幅および/またはハイブリダイゼーションを行うための容器を具備してもよい。また、アッセイキットに含まれるプローブは基体に固定化されていてもよい。その場合の基体は上述した何れかの基体であればよい。
【0093】
4.コロナウイルス属の検出および分類方法
本発明に従うと、更に、コロナウイルスを検出する方法が提供される。当該検出方法は、上記したプライマー、プローブおよび増幅方法を利用することによって、更に、コロナウイルス属に分類される微生物の検出および属レベルまたは種レベルで遺伝子型分類を行う方法である。
【0094】
そのような方法は、試料に含まれる核酸を上述の何れかのプライマーセットを用いてLAMP増幅する工程と、前記増幅により生じた増幅産物と上述の何れかのプローブとを反応することと、前記反応の結果から試料に存在するコロナウイルスを検出および/または分類することを具備すればよい。
【0095】
また、上述の何れかのプライマーセットを用いて、試料についてLAMP増幅反応またはRT−LAMP増幅を行うことと、当該増幅反応により生じた増幅産物と、上述の何れかのプローブとを反応し、それにより生じるハイブリダイズの有無を検出することにより試料におけるコロナウイルスの存在の有無を判定する、および/または試料に含まれるコロナウイルスを分類することを具備する方法であってもよい。
【0096】
また、例えば、そのようなコロナウイルス属に分類される微生物の感染や存在を検出する方法は;
本発明に従うプライマーから任意に選択される少なくとも1つのプライマーを含む複数のプライマーを使用して、LAMP反応またはRT−LAMP反応により試料について核酸鎖増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応後に増幅産物の有無を検出する工程と、
を具備すればよい。当該試料は、予め核酸を抽出する工程に供されてもよい。
【0097】
「LAMP増幅」とはそれ自身公知の何れかの条件下でLAMP増幅を行なうことをいう。「RT-LAMP増幅」とは、逆転写を行いながらLAMP反応により増幅対象の核酸を増幅することをいう。当該LAMP増幅は、上述の何れかのプライマーを用いて増幅対象の核酸を増幅可能なそれ自身公知の何れの条件で行なえばよい。
【0098】
当該増幅産物と当該プローブとの反応は、上述の何れかのプローブを用いてハイブリダイズが可能なそれ自身公知の何れかの条件で行えばよい。
【0099】
LAMP産物に特徴的な複雑な高次構造が、ハイブリダイゼーション反応時においてプローブが結合した基体と物理的な障害を起こす要因となり、その結果ハイブリダイゼーション効率に悪影響を及ぼすことが見出されている(たとえば、特開2005-95043を参照されたい)。そのような悪影響を受けないようにするために、本発明に従うプローブは、従来のターゲット配列の位置とは異なり、一本鎖のループ部分にコロナウイルス属に分類される微生物由来のターゲット配列が位置するようにプライマーを設計した。
【0100】
本発明によれば、簡便、安価、高速にコロナウイルス属に分類される微生物の検出および属レベルまたは種レベルで遺伝子型を分類する方法が提供される。
【0101】
以上のようなことから、問題となるウイルスに特徴的な遺伝子配列の存在の検出と迅速な同定を行うことの出来る方法が臨床診断現場や微生物モニタリング、疫学研究、その他様々な分野において求められている。これまで、迅速診断法としてはウイルスRNAから逆転写酵素によりDNAを作成した上、前記DNA配列中の特徴的な配列を含む領域をポリメラーゼチェインリアクション(PCR)で増幅し、電気泳動法により検出する方法(RT-PCR法)などが知られている。しかしながら、PCRを利用する方法は、サーマルサイクラーのような複雑な温度制御装置が必要なことや簡便性に課題があるなどの不利点がある。またPCR法では、万が一誤って相補鎖合成が行われてしまった場合にはその生成物が鋳型となり増幅してしまい、誤った判定をしてしまう可能性がある。実際に、プライマーの末端の1塩基相違のみでは特異的な増幅を制御することは困難である。特異性を配列検出の際の特異性を挙げる方法としては、一般的にPCR法で増幅した目的遺伝子産物をDNAチップにより検出する手法が挙げられるが、PCRにて生成される産物が2本鎖であるため、プローブとハイブリダイゼーション反応させる場合に、相補鎖がプローブに対するコンペティターとなりハイブリ効率が低く検出感度が悪いのが問題であった。そこで、ターゲットを1本鎖にするために、相補鎖を分解する、または分離するといった方法がとられているが、いずれも、酵素の使用、磁気ビーズの使用などによる高価格化、操作における煩雑性が課題として残されており、これらに代わる新しい手法が求められている。
【0102】
[例]
以下に、本発明による核酸検知方法について例を用いて具体的に説明する。
【0103】
今回、発明者らは、コロナウイルス グループ2a(Coronavirus group 2a)および2bを構成するウイルス種では、ウイルスゲノム解析の結果nucleocapsid proteinをコードする遺伝子配列の一部領域が、ウイルス種毎にユニークな配列を保持しながら高度に保存されていることを見出した。そこで、先ず、コロナウイルス グループ2aおよび2bの代表列としてMHV及びSDAVを用い、前記遺伝子領域において検知に最適なPrimer/Probe設計遺伝子配列を検討した(例1−6)。選定されたプライマーおよびプローブを用いて様々な検体を検出した。その結果、望ましい検出特性(検出信号量および検出特異性)が得られることが確認された。
【0104】
次に、他のコロナウイルス2aの種および株、即ち、ウシコロナウイルス、ヒトコロナウイルス HKU1、ヒトコロナウイルス OC43、ブタ血球凝集脳脊髄炎ウイルス、およびグループ2b(例として、SARSコロナウイルス)についても、前述したMHVおよびSDAVを代表として選定した最適なプライマーおよびプローブに対応する遺伝子配列領域にプライマーおよびプローブを設計した。それぞれの核酸検出特性を確認した。それにより、望ましい検出特性が得られることを確認した。詳細を以下に記す。
【0105】
例1
<プライマーセットの選択>
MHV(Murine hepatitis virus、アクセション番号NC_001846, NC_006852, AF208067, AF190408, AF190408, AF201929, AF700211, AY910861, M35253, M35254, M35255, M35256, M80644))からアライメントを作成し、変異のない、または変異頻度の少ない領域を選んでプライマーを設計した。MHVの一部をクローニングしたプラスミド(103copies/reaction)をテンプレートにして、以下の組成にて63℃90分Realoop-30(モリテックス社製)を用いてLAMP増幅を行った。プライマーの組み合わせと増幅結果(濁度立上がり時間)を合わせて表1に示す。濁度立上がり時間80分未満が3種、80分以上が4種得られた。このうち、上位4種を候補として選択し、ループプライマーの設計を行った。結果を表6に示す。
【表6−1】

【0106】
【表6−2】

【0107】
LAMP反応液組成(1×)
FIP 40 pmol
BIP 40 pmol
F3 5 pmol
B3 5 pmol
(Lfc/Lb 20 pmol)
2×Reaction Mixture 12.5 μl
8 U/μl Bst DNA polymerase 1μl
Template 1μl
Distilled Water Up to 25μl。
【0108】
Reaction Mixture(反応時濃度)
Tris-HCl (pH8.8) 20 mM
KCL 10 mM
MgSO4 8 mM
(NH4)SO4 10 mM
Tween-20 0.1 %
Betaine 0.8 M
dNTPs 1.4 mM each。
【0109】
<ループプライマーの選択>
上記で候補となったプライマーセットに対し、定法に従ってループプライマーを設計して合成した。上述の反応組成に20pmolのループプライマーを追加して同様にLAMP増幅を行った。テンプレートは添加前に95℃5分処理したものを使用した。プライマーの組合せと増幅結果を合わせて表7に示す。この実験から各プライマーセットに対する良好なループプライマーを選択した。
【表7−1】

【0110】
【表7−2】

【0111】
<プライマーセットの最終選択>
プライマー中に変異塩基があると増幅特性を悪化させるため、変異に富む実際の検体を網羅的に検出するには、変異が存在しない箇所をプライマーにすることが望ましい。したがって、絞り込まれた4種のプライマーセットのうち、最も変異確率の少ない、セット1−1が最良であると判断した。調査した配列中に存在する変異数は、以下の表で表される。
【表8】

【0112】
上述の検討により、MHVを良好にLAMP増幅可能なプライマーセットを見出すことができた。
【0113】
MHVについて上記プライマーでLAMP増幅した結果を図7に示す。レーン2および3はHMVのLAMP産物についての結果である。レーン1は100bpラダーのマーカーである。
【0114】
例2
<SDAV(Rat sialodacryoadenitis coronavirus)用プライマーの設計>
SDAV(Rat sialodacryoadenitis coronavirus、アクセション番号 AF207551)は、ラットに感染するコロナウイルスであるが、MHVと配列が類似していることから、共通のプライマーで増幅できる可能性が高い。そこで、SDAVも対応可能なプライマーとするため、プライマーセット1−1,17−1それぞれに対応する領域の配列を調べ、表9に示すプライマーの組み合わせで増幅を行った。
【表9】

【0115】
対応するプライマーは等量の混合とした。その結果、この混合プライマーはMHV、SDAVのいずれも濁度立上がり時間30分未満で増幅可能であることが示された。
【0116】
例3
<変異株用プライマーの設計>
プライマーセット1-1について、プライマー領域にある変異箇所を調べたところ、F2領域、F3領域、B3領域およびLPb領域に頻度の高い変異があることがわかった。そこで、これら変異株も良好に増幅できるよう、表10のプライマーを新たに追加して増幅を行った。
【表10−1】

【0117】
【表10−2】

【0118】
【表10−3】

【0119】
対応するプライマーの混合量は等量とした。その結果、この混合プライマーは変異のない基準株、変異株のいずれも配列でも濁度立上がり時間30分未満で増幅可能であることが示された。
【0120】
例4
<RT-LAMP>
プライマーセット1-1および変異対応追加プライマーを混合したLAMP増幅液(上述の例1の記載の組成と同様)に、0.625UのAMV transcriptaseを添加し、実際のMHVウイルス(譲渡された2つの基準株A59, JHM )およびSDAVウイルスのRT-LAMP(63℃60分)を行った。その結果、抽出検体の段階希釈液において良好な増幅であった。
【表C】

【0121】
例5
Probe配列設計
前記プライマーセットにて増幅されたLAMP産物検出用プローブを選定するため、LAMP産物の1本鎖核酸領域にハイブリダイゼーションが可能な設計にて複数の候補配列を選定した。3’末端チオール修飾を持つ合成核酸として表11に示すプローブ候補を準備した。
【表11】

【0122】
例6
<プローブの選定>
図6に模式的に示すような構成の核酸プローブ固定化電極を作製した。基板12に配置された金電極13に対して、プローブ候補となる配列の合成核酸(3’末端がチオール修飾されている)7〜10をスポットすることにより配列毎に固定化した。
【0123】
また、同様にネガティブコントロールプローブもスポットした。その後、超純水で洗浄し、風乾し、電流検知型の核酸チップを作製した。作製した核酸チップを2×SSCの塩を添加したLAMP産物に浸漬し、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。LAMP産物は、標準株配列を持つプラスミドをテンプレートに増幅したものを用いた。更に、この電極を挿入剤であるヘキスト33258溶液を50μM含むリン酸緩衝液中に15分間浸漬した後、ヘキスト33258分子の酸化電流応答を測定した。電流測定の結果を表4に示す。
【0124】
電極に固定化したプローブは、領域中に存在する変異をあらかじめ考慮したものを複数用意した。30nA以上の増加量を示す最適なプローブ、20-30nAの増加量を示す良好なプローブが得られ、MHV検出用核酸チップに搭載するプローブ配列を選択することができた。また、今回選定した最適なプローブを用いた場合、上述の例2から得られたSDAV由来LAMP産物を検出サンプルとして使用したばあいについても、何れのプローブ配列からも30nA以上の電流増加量が得られることを確認した。
【0125】
例7
検出対象である、MHV及びSDAVはRNAウイルスである事から、ゲノム配列には多様な変異(バリエーション)が存在する。そこで、公表されている全てのMHV及びSDAVゲノム配列情報を基に、例1−6にて選定されてきた最適プライマーおよびプローブ領域の変異発生状況を確認した(表11を参照されたい)。
【0126】
具体的には、それぞれの変異に対応する鋳型配列を合成遺伝子により作成したと伴に、全パターンについて変異対応プライマーおよびプローブを準備した。配列変異を含むウイルス配列検知を試みた。その結果、何れの組み合わせにおいてもプライマーおよびプローブ配列と検体がフルマッチであれば、30nA以上の電流増加量にて検出が可能であることを確認した。なお、近縁ウイルスであるBovine coronavirus、Human coronavirus HKU1、Human coronavirus OC43、Porcine hemagglutinating encephalomyelitis virus等の配列を持つ鋳型核酸を検体として適用した場合、何れのプライマーおよびプローブの組み合わせにおいても、優位な電流値増加(20nA以上)は認められなかった。
【0127】
以上の事から、MHV及びSDAVにおいては、上述の例1−6にて選定されたプライマーおよびプローブ領域を用いることで、望ましい検出特性(即ち、検出信号量および検出特異性)が得られること、必要に応じてプライマーおよびプローブの配列を一部改変することで、ウイルス配列変異に対しても検出特性を損なうことなく対応可能であることが確認できた。
【0128】
HMVの陽性検体を用いて検出を行った結果を図8示す。また、陰性検体を用いた結果を図9に示す。
【0129】
例8
他のCoronavirus group 2a(Bovine coronavirus NC_003045、Human coronavirus HKU1 NC_005147、Human coronavirus OC43 NC_006577、Porcine hemagglutinating encephalomyelitis virus NC_007732)、 2b(SARScoronavirus NC_004718)についても、上述の例1−7で示されたMHVおよびSDAVを代表として選定した最適なプライマーおよびプローブの設計に対応する遺伝子領域を特定した。それぞれのウイルス種に対応したプライマーおよびプローブを構築した(表12を参照されたい)。
【表12−1】

【0130】
【表12−2】

【0131】
MHV及びSDAVを含めたCoronavirus group 2a、2bに対する検出特性を確認した。その結果、構築したプライマーおよびプローブにて、Coronavirus group 2a、2bの分類されるウイルス種を特異的かつ十分な信号量にて検知できることが確認できた
(表13を参照されたい)。
【表13】

【0132】
例9
検出対象である、Coronavirus group 2a、2bはRNAウイルスである事から、ゲノム配列には多様な変異(バリエーション)が存在する。そこで、上述の例7同様、公表されている全てのBovine coronavirus、Human coronavirus HKU1、Human coronavirus OC43、Porcine hemagglutinating encephalomyelitis virus、SARScoronavirusのゲノム配列情報を元に、前述の例において選定されてきた最適なプライマーおよびプローブの領域の変異発生状況を確認。それぞれの変異に対応する鋳型配列を合成遺伝子により作成したと伴に、全パターンについて変異対応プライマーおよびプローブを準備した。それらを用いて配列変異を含むウイルス配列検出を試みた。その結果、何れの組み合わせにおいてもプライマーおよびプローブ配列と検体がフルマッチであれば、30nA以上の電流増加量にて検出が可能であることを確認した。検出結果の例を図10〜図12に示す。図10はorcine hemagglutinating encephalomyelitis virus 陽性検体を用いて得た結果の例である。図11は、Bovine corona virus 陽性検体を当てた結果である。図12は、陰性検体を当てた結果を示す。
【0133】
なお、変異対応を行なったプライマーおよびプローブを使用した場合であっても、表13に示したのと同様、近縁ウイルス間での交差反応による20nA以上の優位な電流値増加は全く認められなかった。この事は、配列の更に異なる他のウイルス属・ウイルス種や、他の微生物との交差反応を生じないことを示唆する。
【0134】
考察
以上の事から、本発明にて選定されたプライマーおよびプローブ領域を用いることで、コロナウイルス グループ2aおよび2bの検出ならびに種判別および/またはタイピングを、望ましい検出特性(即ち、検出信号量および検出特異性)にて行な得ることが示された。また必要に応じてプライマーおよびプローブの配列を一部改変する事で、コロナウイルス グループ2aおよび2bを構成するウイルス種およびウイルス配列変異に対して、検出特性を損なうことなく対応可能であることが確認できた。
【符号の説明】
【0135】
1・・DNAチップ、2・・基体、3・・固定化領域、4・・核酸プローブ、11・・DNAチップ、12・・基体、13・・電極、14・・核酸プローブ、15・・パット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅するためのLAMP増幅用核酸プライマーセットであって、前記LAMP増幅用核酸プライマーセットは、FIPプライマー、BIPプライマー、F3プライマー、B3プライマーを含み、
当該FIPプライマーが配列番号1、配列番号5、配列番号9、配列番号13、配列番号17若しくは配列番号44またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のFIPプライマーであり、
当該BIPプライマーが配列番号2、配列番号6、配列番号10、配列番号15、配列番号18、配列番号21若しくは配列番号45またはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のBIPプライマーであり、
当該F3プライマーが配列番号3、配列番号7、配列番号11、配列番号14、配列番号19、配列番号34、配列番号35若しくは配列番号46またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のF3プライマーであり、および
当該B3プライマーが配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号16、配列番号20、配列番号22、配列番号36若しくは配列番号47またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種類のB3プライマーである
プライマーセット。
【請求項2】
請求項1に記載のプライマーセットであって、前記FIPプライマー、前記BIPプライマー、前記F3プライマーおよび前記B3プライマーの組み合わせが以下からなる群より少なくとも1選択され、前記増幅がコロナウイルス由来の核酸の増幅であるプライマーセット;
(1) 配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(2) 配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(3) 配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(4) 配列番号13、配列番号10、配列番号14および配列番号12によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(5) 配列番号13、配列番号15、配列番号14および配列番号16によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(6) 配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(7) 配列番号17、配列番号21、配列番号19および配列番号22によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(8) 配列番号44、配列番号45、配列番号46および配列番号47によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー、ここで、各配列により示されるポリヌクレオチドがミックス塩基であるプライマー;ならびに
(9) 配列番号59、配列番号60、配列番号58および配列番号61によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
配列番号68、配列番号69、配列番号67および配列番号70によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
配列番号77、配列番号78、配列番号76および配列番号79によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
配列番号86、配列番号87、配列番号85および配列番号89によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
配列番号104、配列番号105、配列番号103および配列番号106によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
配列番号113、配列番号114、配列番号112および配列番号115によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
配列番号122、配列番号123、配列番号121および配列番号124によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;並びに
配列番号131、配列番号132、配列番号130および配列番号133によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;からなるプライマー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプライマーセットであって、前記FIPプライマー、前記BIPプライマー、前記F3プライマーおよび前記B3プライマーの組み合わせが以下からなる群より少なくとも1選択されるプライマーセット;
(10) 配列番号59、配列番号60、配列番号58および配列番号61によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(11) 配列番号68、配列番号69、配列番号67および配列番号70によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(12) 配列番号77、配列番号78、配列番号76および配列番号79によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(13) 配列番号86、配列番号87、配列番号85および配列番号89によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(14) 配列番号104、配列番号105、配列番号103および配列番号106によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(15) 配列番号113、配列番号114、配列番号112および配列番号115によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;
(16) 配列番号122、配列番号123、配列番号121および配列番号124によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー;並びに
(17) 配列番号131、配列番号132、配列番号130および配列番号133によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドからなるプライマー。
【請求項4】
前記LAPM増幅用核酸プライマーセットが、更に、ループプライマーLPfおよびLPbを含み、前記LPfが、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号37、配列番号48、配列番号62、配列番号71、配列番号80、配列番号89、配列番号107、配列番号116、配列番号125若しくは配列番号134またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含み、前記LPbが配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号49、配列番号63、配列番号72、配列番号81、配列番号90、配列番号108、配列番号117、配列番号126若しくは配列番号135またはその相補配列により示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に増幅可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含む請求項1〜3の何れか1項に記載のプライマーセット。
【請求項5】
コロナウイルスに由来する核酸を特異的に増幅する方法であって、試料を請求項1〜4の何れか1項に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅することを具備する方法。
【請求項6】
コロナウイルスを検出および/または分類する方法であって、
試料に含まれる核酸を請求項1〜4の何れか1項に記載のプライマーセットを用いてLAMP増幅することと、
前記LAMP増幅により生じた反応産物と、
配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42および配列番号43、並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に検出可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含むプローブ群;および/または
配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号145、配列番号146および配列番号147並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に検出可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含むプローブ群;
より形成されるプローブ群から選択される少なくとも1種類のプローブから選択される少なくとも1種類のプローブと、
を反応することと、
前記反応の結果から、試料に存在するコロナウイルスを検出および/または分類することと
を具備する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記プローブ群が基体に固定化されている方法。
【請求項8】
コロナウイルスの検出および/または分類するためのアッセイキットであって、
請求項1〜3の何れか1項に記載のプライマーセットと、
前記プライマーセットを用いて得られた増幅産物からコロナウイルスを特異的に検出および/または分類するためのプローブであり、
配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42および配列番号43、並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に検出可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含むプローブ群;および/または
配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号145、配列番号146および配列番号147、並びにそれらの相補配列によりそれぞれ示されるポリヌクレオチドまたはコロナウイルス由来の核酸を特異的に検出可能な範囲で変異を含む前記ポリヌクレオチドを含むプローブ群;
より形成されるプローブ群から選択される少なくとも1種類のプローブと、
を含むことを特徴とするアッセイキット。
【請求項9】
請求項8に記載のアッセイキットであって、前記プローブ群が基体に固定化されているアッセイキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−24039(P2012−24039A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167491(P2010−167491)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390016470)公益財団法人実験動物中央研究所 (12)
【Fターム(参考)】