説明

コロナ処理装置

【課題】本発明は、コロナ放電時に発生する有害ガス等を効率よくダクトを介して排出し、装置を小型化することを目的とする。
【解決手段】本発明によるコロナ処理装置は、本体ボックス(9)の側面に設けられたエルボ(40)と、前記エルボ(40)に接続されたダクト旋回継手(41)とを備え、前記ダクト旋回継手(41)に直接又は接続筒体(70)を介してダクト(16)が接続され、各電極ステーション(21)が旋回する時に前記ダクト(16)は前記ダクト旋回継手(41)を介して従来のように振れ回らないようにした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール上を案内されるフィルム・シートなどのシート材料表面を高周波、高電圧のコロナ放電照射により、化学的、物理的に改質して、印刷性、ラミネート性などを向上させるコロナ処理装置に関し、特に、コロナ放電時に発生する有害ガス等を効率よくダクトを介して排出し、装置を小型化するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のコロナ処理装置としては、例えば、特許文献1に開示されている構成を一例として挙げることはできるが、この特許文献に示されているコロナ放電装置に使用されているコロナ処理装置の具体的構成としては、図15及び図16で示される構成が採用されている。
すなわち、図15において、符号1で示されるものは互いに離間して配設された一対の横長形状のビームであり、この各ビーム1の両端には、一対のビーム受台1Aを介して一対の長手形状のフレーム2が設けられている。
【0003】
前記各フレーム2の下段位置には、支軸4を介してアースロール5が回転自在に設けられており、前記ビーム1の両端に設けられた一対のサポート6の下部には旋回支軸8を介して横長形状の本体ボックス9が旋回自在に設けられている。
【0004】
前記各サポート6に一端10aが軸支された各旋回装置10の他端10bは、一対のリンク12を介して前記旋回支軸8に接続され、前記各旋回装置10の伸縮動作によって前記本体ボックス9が旋回することができるように構成されている。
【0005】
前記本体ボックス9の長手方向の中央位置の外周面9aには、フランジ14及びダクトバンド15を介して曲折自在なダクト16が接続され、このダクト16によって有害ガス等の吸引動作を行うことができるように構成されている。
前記本体ボックス9の下面9bには、複数の絶縁ガイシ17及び電極ホルダ18を介してカバー22内に内設された長手形状の電極19が配設され、この電極19とアースロール5との隙間Dは、2〜4ミリ程度で設定されていると共に、高周波の交流高電圧を発生させてアースロール5との間でコロナ放電を発生させてシート20の表面改質を行うことができるように構成されている。
尚、前述の本体ボックス9、電極19、カバー22及び旋回支軸8によって電極ステーション21が形成されている。
【0006】
前述の構成において、図16に示すようには前記アースロール5に対して電極19を運転位置A及び退避位置Bに旋回移動させる場合について述べる。
まず、図16のように、前記旋回装置10を図示しない制御装置を介して作動させることにより、前記電極ステーション21は実線で示されるコロナ放電の運転位置Aでシート20に対してコロナ放電し、放電処理後、各旋回装置10を介して電極ステーション21を点線で示す退避位置Bに旋回させることにより、各電極19はアースロール5から離間して非運転状態となる。
【0007】
前述の場合、前記本体ボックス9に接続されたダクト16は、運転位置Aに位置している時は、コロナ放電によって発生した有害ガス等はダクト16を介して外部に排気されるが、電極ステーション21の旋回に応じてダクト16をタワミを伴って点線で示されるように、曲折されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−136158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のコロナ処理装置は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
(1) 本体ボックスにダクトが直接固定接続されているのみであるため、電極ステーションを解放する場合、図16で示されるように、ダクトが大きく曲がり、他の電極ステーションや部品に干渉することになり、故障等の原因となっていた。
(2) 例えば、ダクトの内径が250mmの場合、ダクト長さ1m程度が開放動作で位置変化し、図16のダクトの退避位置のように、横方向にダクト直径の3倍程度(750mm)の空間が必要となり、この場合は電極ステーションを多く配置できないこととなり、電極ステーションを多く配置するためには、より大径のロールを必要とし、装置の小型化への障害となっていた。
(3) また、ダクトが前述のように大きく移動することにより、精密かつ清潔なシート上面にダクト外面のチリ、ほこり、ダクト接触磨耗粉などが落下し、製品シートが汚染される恐れがあった。
(4) また、装置の本体ボックスの長さが8mもの大型になると自重タワミが大きくなり、図17のように、最大タワミが100%となっていた。
(5) また、電極とロール間のスキマが運転時の振動やコロナ放電に伴う温度変化で一定に保てなくなり、放電にムラが生じる場合があった。
(6) また、タワミを小さくするため大型断面の本体ボックスとなっていた。
(7) また、停電時やエアー圧力が停止した場合の電極、カバーを含む電極ステーションの回避動作が得られず、シート材の巻き込み事故を防ぐ安全手段が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるコロナ処理装置は、横長形状のビームの両端に設けられた一対のフレームと、前記各フレーム間に回転自在に設けられたアースロールと、前記ビームの下部のサポート台に旋回装置を介して旋回自在に設けられ横長形状の電極を有する1個又は複数の電極ステーションと、前記電極ステーションの本体ボックスに接続されたダクトと、を備え、前記アースロールに巻きかけたシートに対して前記電極を介してコロナ放電を行い発生する少なくとも有害ガスを前記ダクトを介して外部に排気するようにしたコロナ処理装置において、前記本体ボックスの側面に設けられたエルボと、前記エルボに接続されたダクト旋回継手とを備え、前記ダクト旋回継手に直接又は接続筒体を介して前記ダクトが接続されている構成であり、また、前記旋回装置の旋回支軸の軸芯と前記エルボのエルボ軸芯とは一致している構成であり、また、前記電極は、電極ホルダ及び絶縁ガイシを介して前記本体ボックスの外面に接続され、前記電極、電極ホルダ及び絶縁ガイシは、少なくとも四面を覆うカバーによって囲まれ、前記本体ボックスの長手方向に平行な軸芯を有する前記旋回支軸を、前記本体ボックスの外面の近傍にサポートを介すると共に前記長手方向に沿って複数配置し、前記本体ボックスと電極とカバーと旋回支軸により前記各電極ステーションを形成し、前記サポートは前記サポート台の下面に設けられている構成であり、また、前記サポート台に設けられた前記サポートは、可変位置決め手段を介して前記サポート台に対して上下動自在に設けられ、前記可変位置決め手段により前記各旋回支軸とアースロールとの間の距離を可変とする構成であり、また、前記旋回装置は、伸縮自在型の機械式又は流体式のリニアアクチュエータよりなり、前記サポートと前記旋回支軸との間には、一方向に付勢力を有する機械式又は流体式のバランサが設けられ、前記バランサにより、前記旋回支軸を中心に前記本体ボックスを含む前記各電極ステーションの自重アンバランス回転モーメントを補正する構成であり、また、前記バランサは、予め設定された設定荷重を前記自重アンバランス回転モーメントより大とし、停電時及びエアー源圧力低下時に前記各電極ステーション全体を前記アースロールから離間した退避位置に移動させるための安全開放装置の機能を有する構成であり、また、前記カバーの各長手方向面のうち少なくとも一面は開閉自在カバーとして、前記本体ボックスに蝶番を介して開閉自在にした構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるコロナ処理装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
(1) 大型のダクトを振り回さない構造のため、電極ステーションの装置設置面積が小さくなり、小型化が容易である。
(2) ダクトの設置面積が小さくなるので、アースロールに多くの電極ステーション、及び電極を配置できる。
(3) シート幅が8m以上の大型のコロナ処理装置でも本体ボックスを多点支持できるので図14のように、タワミ強度を小さくでき本体ボックスを小型・軽量化できる。
(4) シート幅が大きい大型のコロナ処理装置で2本のサポートで支持する場合でもサポートのスパンを小さくでき本体ボックスのタワミを小さくできる。
(5) シート幅が広いコロナ処理装置でも本体ボックスのタワミが小さいので振動や温度変化があっても電極/ロール間スキマの変化が少なく、コロナ発生分布が均一になり、表面改質の処理ムラが少ない高精度な処理が得られる。
(6) 本体ボックスを含む電極ステーションの旋回支軸中心の自重アンバランスをバランサでキャンセルできるので、旋回駆動装置を小型にすることができる。
(7) 停電、エアー圧ダウン等異常時に電極が自動退避・スキマ開放し、シート巻き込み事故を防止でき、安全な装置ができる。
(8) 電極ステーションの長手方向カバー7に蝶板があるので簡単にカバーが開き、電極部メンテナンスが容易である。
(9) ダクトを振り回さないのでチリ、ゴミ、磨耗粉の発生が減少し、製品シートの汚染が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるコロナ放電装置を示す正面概略構成図である。
【図2】図1の駆動側からみた矢視A図である。
【図3】図2の退避旋回構成図である。
【図4】図1の他の形態を示す構成図である。
【図5】図4の駆動側からみた矢視A図である。
【図6】図1の要部を示す正面図である。
【図7】図6の断面図である。
【図8】図1の要部を示す拡大詳細構成図である。
【図9】図8の右側面図である。
【図10】図1の要部を示す拡大詳細構成図である。
【図11】図10の右側面図である。
【図12】図1の要部を示す拡大詳細図である。
【図13】図12の右側面図である。
【図14】図1の本体ボックスの自重タワミを示す特性図である。
【図15】従来のコロナ放電装置を示す正面図である。
【図16】図15の矢視A図である。
【図17】図15の本体ボックスの自重タワミを示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、コロナ放電時に発生する有害ガス等を効率よくダクトを介して排出し、装置を小型化するようにしたコロナ放電装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明によるコロナ処理装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明する。
図1において、符号1で示されるものは、互いに離間して配設された一対の横長形状のビーム(図2に示す)であり、この各ビーム1の両端には、一対のビーム受台1Aを介して一対の長手形状のフレーム2,2が設けられている。
【0015】
前記各フレーム2,2の下段位置には、支軸4を介してタッチロール5Aと接するアースロール5が回転自在に設けられており、このアースロール5はゴムを被覆した構造で、被処理物であるシート20を上面に巻きかけ、モータ30によって回転駆動されるように構成されている。
前記アースロール5の両端には、前記各フレーム2,2に支持されたアースブラシ31,32が摺接するように設けられ、地上側にアースされるように構成されている。
尚、前記シート20は、シート幅が8mであり、このシート20の表面改質を行うことができるように構成されている。
【0016】
前記各ビーム1の下面には複数のサポート台7Aが設けられ、この各サポート台7Aの下面には下方に垂下するサポート6が、ねじ等の可変位置決め手段33を介して矢印Cで示される上下方向に沿って高さ調節することができるように構成されている。
【0017】
前記各サポート6の下部には旋回支軸8に設けた支持サポート34を介して密閉型の本体ボックス9が旋回自在に取付けられ、この本体ボックス9の下面には、断面コ字状をなすカバー22を介して絶縁ガイシ17に接続された横長形状の電極19が前記アースロール5の表面に対して2〜4mmの隙間Dが形成されるように配設されている。
尚、前記カバー22の一面の開閉自在カバー7Bは、図8に示すように、蝶番48及び取手48Aを介して開閉自在とされ、電極19等のメンテナンスを行うことができるように構成されている。
【0018】
主として、前記本体ボックス9と電極19とカバー22と旋回支軸8とにより、各々複数の電極ステーション21が形成され、図2に特に示されるように、一方の電極ステーション21が上流側に、他方の電極ステーション21がその下流側に互いに離間して配設されている。
【0019】
前記電極ステーション21の電極19は、アースロール5の軸芯に平行に配置されると共に、I型板状のアルミニウム、ステンレス鋼で製作された8mmピッチ程度の等ピッチで10〜20本程度でアースロール5と平行に配置されている。
前記電極19は、多数の電極ホルダ35と前記絶縁ガイシ17によって前記本体ボックス9に電気絶縁した状態で支持されている。
前記電極ホルダ35は、前記絶縁ガイシ17先端のねじ17aで一対のナット(図示せず)に挟まれて上下動自在に設けられている。
【0020】
前記本体ボックス9の一面には、図9で示されるように、多数の孔36が設けられ、電極19のコロナ放電に伴う有害ガスを後述のダクト16に流すためのガス通路となり、このダクト16に接続するためのガス排出孔37は本体ボックス9の長手方向の中央に位置している。
前記各電極19には、図1で示されるように、端子ブロック38の高電圧配線39により、図示しない高電圧高周波電源装置から電源が供給されるように構成されている。
【0021】
前記本体ボックス9の中央位置に設けられたガス排出孔37には、曲折したエルボ40を介して旋回自在なダクト旋回継手41が接続され、このダクト旋回継手41には90°のダクトエルボ42(接続筒体70を構成)を介してダクト16が接続されている。尚、前記ダクト16は、ダクトエルボ42を用いることなく、直接ダクト旋回継手41に接続することができる。
【0022】
前記各サポート6には、図1、図2、図8、図9等に特に示されているように、前記サポート6に一端10aが支持された旋回装置10の他端10bは、前記支持サポート34の旋回支軸8にベアリング45を介して設けられたアーム43の端部に接続され、この旋回装置10に対して並設されたバランサ44は前記サポート6とアーム43間に配設されている。尚、このアーム43は、サポート6に設けられたストロークストッパ46に当接し、電極19がアースロール5に近接した状態でアーム43がストロークストッパ46に当接する構成である。
【0023】
前記旋回装置10は、例えば、周知の両クッション付きエアーシリンダで構成され、他の構造としては、ガス又は油等の流体アクチュエータを用いることもできる。
前記旋回装置10により、アーム43を押し引きすることにより、前記電極ステーション21全体を旋回させることができ、前記ストロークストッパ46の先端に出没自在にボルト47が設けられており、このボルト47の突出量によって電極ステーション21の旋回角度を調節することができるように構成されている。
【0024】
前記バランサ44は、図8及び図9にも示すように、周知のガススプリング(ガス封入式押しシリンダ)又は引張りバネ等の機械式又は流体式の構造よりなり、このバランサ44により、前記旋回支軸8を中心に本体ボックス9を含む電極ステーション21の自重アンバランス回転モーメントを補正することができるように構成されている。
【0025】
前記ダクト16は、図6及び図7に示すように構成され、図では1本のダクト16が示されているが、複数の電極ステーション21の各ダクト16は1本にまとめられて外部にガス等を排出することができるように構成されている。
前記本体ボックス9の旋回支軸8側に前記ガス排出孔37があり、エルボ40がダクト16のフランジに取り付けされている。
このエルボ40はガス通路の軸芯を90°曲げて本体ボックス9の軸芯と平行な方向にして、このエルボ40の先端にダクト旋回継手41を設けている。
さらに先端には90°のダクトエルボ42があり、この90°のダクトエルボ42先端にはレジューサ49がありガス通路断面積を拡大した後、さらにダクトバンド50で固定したフレキシブルなダクト16を連結し、図示しない吸引ブロアーを介して外部へと続いている。
このダクト旋回継手41は90°のダクトエルボ42と自由回転し、エルボ軸芯52を中心に回転できる。また、内部にベアリング53が2箇所あり、内サイドにはシール54があり、外気流入を防ぐように構成されている。
このエルボ軸芯52は前記した電極ステーション21の回転中心の旋回支軸8の軸芯と概一致させる。また、この軸芯の一致程度は厳格なものではない。
図9にエルボ軸芯52と旋回支軸8の旋回支軸8の軸芯が偏心Eだけずれている状態を示している。
【0026】
次に、本発明の第1形態(図1、図2、図3、図8、図9)の動作について述べる。また、電極19のコロナ放電によりオゾンガスが発生するので、このオゾンガスは電極ステーション21の本体ボックス9のガス排出孔37からダクト16を経て外部に排出されるが、この場合、図1、図2では4箇所のサポート6の中で装置両サイドの合計2箇所に旋回装置10があるが中央部の2箇所はバランサ44のみ設置され、図2の電極ステーション21では本体ボックス9や電極19などは旋回支軸8で支えられており、重心は右にあるので右回りのモーメントが働いている。
図8、図9において、電極ステーション21は本体ボックス9と支軸サポート34及びアーム43が図示しないボルトで一体に固定連結されており、アーム43に連結されたバランサ44に押し力を与えているので旋回支軸8を中心に左回りモーメントを発生させて電極ステーション21の重量バランスを取っている。
バランサ44の押し力は重量バランス以上に設定してあるので、アーム43先端にピン結合されている旋回装置10(エアーシリンダ)がフリー状態では左回転して、図2の点線のようにアースロール5から電極19が離れる。すなわち電極19とアースロール5のスキマDが拡大して、シート20が接触しない位置に移動する。
この電極ステーション21の開放位置は旋回装置10のシリンダーストロークエンドで決まる。前記バランサ44は周知のガススプリングを使う。内部にピストン、ロッドがあり、ロッド押し側に高圧窒素ガスを封入して常に押し力が発生する構造である。
【0027】
このガススプリングは自動車後部ドアの重量バランス取りなどで多く利用されている周知のものである。
前記旋回装置10のエアーシリンダを押し引きさせると本体ボックス9が旋回し、電極ステーション21を開閉動作できる。また、バランサ44で本体ボックス9の重量バランスが取れているので、わずかな力で開閉動作できるもので、運転時は旋回装置10(エアーシリンダ)を押し動作させ、図8のストロークストッパ46に押し当てる。
この電極ステーション21の重量バランスについて追加説明すると、電極ステーション21の重心は開放動作の移動角度θによって三角関数のcosinθで変化する。(θは重心と地球水平方向の角度)また、バランサ44のガススプリングとアーム43との角度も動作に応じて変化し、押し力も変化する。
したがって、完全なバランスをとることは出来ないが、本実施例の目的はあくまで概略の重量バランスを取ることなので、運転時すなわち図2の状態でバランスを取っている。このことは引張りバネを利用したバランサ44でも同様である。
また、正確に言えば、下記に述べるように停電時及びエアー源圧力低下時に開放するようにバランサ44の力を大きくしている。
【0028】
前記旋回装置10としてのエアーシリンダは周知の速度調整弁があり、動作速度を調整できる。またエアーシリンダ両側クッション付きなのでストロークエンドでは停止クッションがあり、停止衝撃はない。
また、ストロークストッパ46は、前述のように、アースロール5と電極19のスキマDを微調整するために使われる。このストロークストッパ46はサポート6に設置されて先端のボルト47を出し入れすることで、アーム43の停止位置(角度)を調整することができる。
前記バランサ44は電極ステーション21の自重モーメントより大きい荷重にしているので、停電時、エアー源停止時の異常事態が発生した場合、自動的にスキマD開放方向に動作するのでシート20切れ端との衝突などの事故を回避でき安全な装置にできる。
また、重量をバランスさせているので旋回装置10の駆動力が小さくでき、小型の装置を実現することができる。
【0029】
図3は旋回装置10を開放動作させて電源ステーション21を開放位置にした状態を示すもので、電極ステーション21はエアーシリンダを引き動作させてスキマDを開放している。
同様に電極ステーション21のバランサ44は引き動作で力を出すように引張りバネを使っている。このバネも電極ステーション21の自重より力を大きく設定しているので、停電などでエアー圧が無くなっても自動的に開動作し、シート20が電極19に接触するのを防止でき安全な装置とすることができる。
【0030】
また、前述の図2に示すコロナ放電動作時において、電極ステーション21のカバー22とアースロール5のスキマDから外部空気が入り、電極19先端のコロナ放電で生じるオゾンガスを吸引排出する場合、空気とオゾンガスが混じった状態で、カバー22内部及び本体ボックス9の穴36(図9)を通過し、エルボ40、ダクト旋回継手41及びダクト16を通り、その後、コロナ処理装置の外で他の電極ステーション21のダクト16と合流してブロアーで外部に排気される。
図6及び図7は図1の本体ボックス9の中央にある本体ボックス9とダクト16との接続部詳細を示しており、前述したように、エルボ40は本体ボックス9からのガス通路を90°曲げてダクト旋回継手41を介して、再度90°のダクトエルボ42(接続筒体70を構成)で90°曲げてダクト16へ連結されているため、ダクト旋回継手41は本体ボックス9の軸芯と平行なエルボ軸芯52を中心に互いのエルボを回転自在に角度変更ができる。また、シール54で吸引ガスのシールを行い、機密を保つことができる。
・また、前記したようにエルボ軸芯52と旋回支軸8の軸芯はほぼ一致しているので、本体ボックス9が旋回してもエルボ軸芯52の軸芯位置は変化しない。
・また、図9に示す偏心Eがあってもダクト16への旋回に伴う位置ズレは旋回角度が60°程度なので偏心E以内に収まる。また、本実施例でも偏心Eは60mm程度はあるが旋回時の90°のダクトエルボ42の軸芯の移動は60mm以下にとどまり、従来の750mmの移動に比べれば格段の改善効果が得られている。また、この移動はダクト16の柔軟性で吸収される。
このことで、本体ボックス9は開閉動作で旋回してもダクト16は振り回されること無くほぼ同じ位置にとどまることができる。また、ダクト旋回継手41の後流側にレジューサ49があり、通路断面積を大きくし、ガス流れ抵抗を低減させることができる。また逆に言えば、ダクト旋回継手41を小型化し、偏心E(図9)を小さくする。すなわち、通常エルボ40は大型で、支軸サポート34は小型なので偏心Eが生じる場合が多いのでEを小さくしている。
【0031】
また、図1の前記サポート6は4個あり、長い本体ボックス9を多点で支持するので自重のタワミが少なくなる(図14に示す)。
例として断面形状を同じにして長さを変え、両端支持の等分布荷重梁タワミを計算する。この場合、4個のサポート6で支えると梁長さが3倍になるとして試算する。この梁長さが3倍になると自重が3倍、さらにタワミは長さの3乗に比例し27倍になり、結果3×27=81倍のタワミになる。実際には図1のように連続梁であるのでさらに大きなタワミ比率になる。
すなわち、従来例の図15と本発明実施例図1の梁長さが3倍違うとしてタワミを比較すると1/81倍以下になり、タワミが従来より1/81以下に減少することが判明した。
【0032】
このようにサポート6による多点支持すると桁違いにタワミが少なくなり、本体ボックス9の強度を小さくできるので軽量化できる。
また、本体ボックス9の大まかなタワミ修正として、サポート6は4個あり、個々の上下位置は調整可能である(図12)。
また、サポート6は長い本体ボックス9が曲がっていた場合、また支える側の長いビーム1が曲がっていた場合に旋回支軸8の位置が上下に修正・調整可能である。すなわち、サポート6の上端板6Aに引きボルト60押しボルト61が各々近接して4組設けられ、押しボルト61はサポート6側にネジがあり、上部のサポート台7Aを押し、シムの代わりに使用する。引きボルト60は上部のサポート台7Aにネジ結合してサポート6を支える。この押し引き調整を行ってサポート6の上下位置を変更調整できる。その結果、本体ボックス9の旋回支軸8を個々に調整できるので中央部のタワミが大きい場合中央部の2個のサポート6を引き上げて、電極19とアースロール5のスキマDを広い範囲で概略調整できる。さらに、細かなスキマ調整は個々の電極ホルダー35位置を上下させて調整する。
【0033】
前記電極19の周囲の4方向に設置されたカバー22の開閉自在カバー7Bは本体ボックス9長手にある片側が蝶番48で取付けられ上方本体ボックス9側を支点に開くこともできる。
これは電極9のスキマ調整やヨゴレ除去相似の場合に、取手48Aがあるので開放動作が便利である。また、メンテナンス時には、カバー22を図示していないフックで開状態でとめて作業することができる。この蝶番48は図2の各電極ステーション21の外側面のカバーに設置され、メンテナンス作業は外側から行うので片面のみ設置されている。また、長手方向のカバー22は2m長さ単位でカットされ4枚並べて使用し、蝶番48は各カバー22に3ヶ使用される。
【0034】
また、前記ビーム1は装置全体を支えるので、高剛性に造り、運転に伴う振動で共振しないようにしているので、サポート6を介して支持している本体ボックス9も高剛性になり、電極19とアースロール5のスキマDが安定する。また、アースロール5はロール軸をアースブラシ32でアースし、モータ30で回転駆動され電極19とのスキマDでコロナ放電するが、また、シート20流れ上流側に図2に示すタッチロール5Aを設け、アースロール5と、シート20間の空気を除去し、シート20がアースロール5から浮かないようにしている。
【0035】
次に、本発明の他の形態について、図4及び図5と共に説明する。すなわち、図4及び図5のコロナ放電装置においては、シート幅が5m程度の比較的幅の狭い装置の実施例を示す。
ダクト16の排出部を本体ボックス9の側端9aである駆動側に設けた例である。サポート6は3組設置している。ダクト16は旋回支軸8にほぼ一致させ、ダクト旋回継手41先端側にフレキダクト16A(前記接続筒体70を構成)を介してダクト16に接続されている。ダクト16はダクトサポート55でフレーム2に固定している。
本体ボックス9が旋回装置10で回転すると前記偏心Eの位置ずれで固定側のダクト16にズレが生じるがフレキダクト16Aでズレを吸収できる。このダクト16もフレキシブルであるがフレキダクト16Aはさらに柔軟性があるように構成されている。尚、前記フレキダクト16Aを用いることなく、前記ダクト16をダクト旋回継手41に直接接続することもできる。
また、旋回動作のネジレはダクト旋回継手41が自由回転するので吸収できる。また、本例では本体ボックス9片側よりガス吸引するので吸引力が幅方向で差が生じる。このため図9に示す穴36のピッチPを段階的に差を設け、吸引口から遠い操作側のピッチPを狭くし、駆動側を広くしている(ピッチ寸法比3:4程度)。
これにより、片側吸引でも実用運転可能なレベルの幅方向でほぼ均一なガス吸引力が得られる。
この図4、図5の実施例では、ダクト旋回継手41にはストレート型のフレキダクト16Aが接続され、さらにダクトサポート55、ダクト16が設けられているが、図1、図2、図7のようにダクト旋回継手41の後端にダクトエルボ42を設けてもよい。
尚、前述の実施の形態と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略している。
【0036】
次に、本発明のさらに他の形態について述べる。
図1の例ではサポート6を4組使用したが、サポート6は2組でもよい。シート20幅は関係なく、幅広のシート20で本体ボックス9長さが8mでも適用でき、サポート6,2本でも充分タワミが小さくなり実用上充分効果がある。
図4では、本体ボックス9の長さ方向両端から1mの2箇所に設置することで従来の図17の図(従来例、図15、図16に相当)に比較してタワミは41%に減少する(試算:両端自由支持梁、等分布荷重。と支持スパンを6m/8m=75%にした連続梁の比較)。
【0037】
次に、本発明のさらに他の形態について述べる。前記ダクト旋回継手41について、ダクト旋回継手41は中央及び操作側に配置した例を説明したが、ダクト旋回継手41を両側に配置して操作側と駆動側の両側からガス排気してもよく、シート20幅が今後大型化して10mを超える装置に適用できる。
また、ダクト旋回継手41を2個、本体ボックス9の幅方向25%位置と75%位置に配置してもよい。ダクト16の配置は図1と同様、上方に伸ばしビーム1上で2本のダクトを合流させて1本にして外部にガス排気する。これは大型装置に効果的である。
また、バランサ44の場合、バランサ44はアーム43に接続したが他の場所、本体ボックス9にフックをつけてサポート6やサポート台7Aにバネなどで連結してもよい。また、シート下面の処理装置の場合、本例はシート上面処理用であるが下面処理用では上下を反転し、重量バランス方向も反転させると構成できる。
すなわち、アースロール5の下側に電極ステーション21を配置することにより実現できる。
また、本実施例の図1〜図6では、電極ステーション21は、1本のアースロール5に2組設けたが、1組の場合、3組の場合もあり、通常、小型機では1組、大型機では2〜3組使用する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によるコロナ放電装置は、プラスチックシートの表面処理に限らず、他の紙、アルミシートのコーティング、前処理等への利用に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ビーム
1A ビーム受台
2 フレーム
5 アースロール
5A タッチロール
6 サポート
7A サポート台
7B 開閉自在カバー
8 旋回支軸
9 本体ボックス
10 旋回装置
16 ダクト
16A フレキダクト(接続筒体70を構成)
17 絶縁ガイシ
19 電極
20 シート
21 電極ステーション
22 カバー
30 モータ
33 可変位置決め手段
32 アースブラシ
34 支軸サポート
35 電極ホルダ
36 穴
38 端子ブロック
39 高電圧配線
40 エルボ
41 ダクト旋回継手
42 ダクトエルボ(接続筒体70を構成)
43 アーム
44 バランサ(ガススプリング、引張りバネ)
44A 安全開放装置
45 ベアリング
46 ストロークストッパ
48 蝶番
48A 取手
49 レジューサ
50 ダクトバンド
52 エルボ軸芯
53 ベアリング
54 シール
60 引きボルト
61 押しボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長形状のビーム(1)の両端に設けられた一対のフレーム(2)と、前記各フレーム(2)間に回転自在に設けられたアースロール(5)と、前記ビーム(1)の下部のサポート台(7A)に旋回装置(10)を介して旋回自在に設けられ横長形状の電極(19)を有する1個又は複数の電極ステーション(21)と、前記電極ステーション(21)の本体ボックス(9)に接続されたダクト(16)と、を備え、
前記アースロール(5)に巻きかけたシート(20)に対して前記電極(19)を介してコロナ放電を行い発生する少なくとも有害ガスを前記ダクト(16)を介して外部に排気するようにしたコロナ処理装置において、
前記本体ボックス(9)の側面に設けられたエルボ(40)と、前記エルボ(40)に接続されたダクト旋回継手(41)と、を備え、
前記ダクト旋回継手(41)に直接又は接続筒体(70)を介して前記ダクト(16)が接続されていることを特徴とするコロナ処理装置。
【請求項2】
前記旋回装置(10)の旋回支軸(8)の軸芯と前記エルボ(40)のエルボ軸芯(52)とは一致していることを特徴とする請求項1記載のコロナ処理装置。
【請求項3】
前記電極(19)は、電極ホルダ(35)及び絶縁ガイシ(17)を介して前記本体ボックス(9)の外面に接続され、前記電極(19)、電極ホルダ(35)及び絶縁ガイシ(17)は、少なくとも四面を覆うカバー(22)によって囲まれ、前記本体ボックス(9)の長手方向に平行な軸芯を有する前記旋回支軸(8)を、前記本体ボックス(9)の外面の近傍にサポート(6)を介すると共に前記長手方向に沿って複数配置し、前記本体ボックス(9)と電極(19)とカバー(22)と旋回支軸(8)により前記電極ステーション(21)を形成し、前記サポート(6)は前記サポート台(7A)の下面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のコロナ処理装置。
【請求項4】
前記サポート台(7A)に設けられた前記サポート(6)は、可変位置決め手段(33)を介して前記サポート台(7A)に対して上下動自在に設けられ、前記可変位置決め手段(33)により前記各旋回支軸(8)はアースロール(5)との間の距離を可変とすることを特徴とする請求項3記載のコロナ処理装置。
【請求項5】
前記旋回装置(10)は、伸縮自在型の機械式又は流体式のリニアアクチュエータよりなり、前記サポート(6)と前記旋回支軸(8)との間には、一方向に付勢力を有する機械式又は流体式のバランサ(44)が設けられ、前記バランサ(44)により、前記旋回支軸(8)を中心に前記本体ボックス(9)を含む前記電極ステーション(21)の自重アンバランス回転モーメントを補正することを特徴とする請求項3記載のコロナ処理装置。
【請求項6】
前記バランサ(44)は、予め設定された設定荷重を前記自重アンバランス回転モーメントより大とし、停電時及びエアー源圧力低下時に前記電極ステーション(21)全体を前記アースロール(5)から離間した退避位置に移動させるための安全開放装置(44A)の機能を有することを特徴とする請求項5記載のコロナ処理装置。
【請求項7】
前記カバー(22)の各長手方向面のうち少なくとも一面は開閉自在カバー(7B)として、前記本体ボックス(9)に蝶番(48)を介して開閉自在に構成されていることを特徴とする請求項3記載のコロナ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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