説明

コンクリートに含まれる短繊維の分散性確認方法

【課題】短繊維を含むコンクリートを型枠に充填した際、短繊維の種類にかかわらず、短繊維の分散状態を簡便に確認することが可能な短繊維の分散性確認方法を提供する。
【解決手段】高流動コンクリート1を充填後、所定の時間が経過したら蓋型枠板3aを取り外して、コンクリート採取対象箇所にコンクリート採取器10を差し込む。コンクリート採取器10は、周囲からコンクリート採取対象箇所へ高流動コンクリート1が流入することを防止するための筒状の枠10aと、フランジ10bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短繊維を含むコンクリートを型枠に充填した際における当該短繊維の分散性を確認するための分散性確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維を含むコンクリートを型枠内に充填してコンクリート構造物を製作する際に、繊維による補強効果を十分に得るためには、コンクリート構造物中に繊維が均等に分散しているのを確認することは重要である。
【0003】
そこで、特許文献1には、繊維を含むコンクリートにX線を照射して繊維の分散状態を確認する方法が開示されている。この方法は、繊維を含むコンクリートにX線を照射してX線画像を取得し、そのX線画像を濃淡差に基づいて画像処理して、繊維の分散状態を確認するものである。
【特許文献1】特開平7−146256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、繊維が鋼繊維の場合は、X線画像に写るので分散状態を確認できるが、繊維がビニロン繊維やポリプロピレン繊維等の樹脂繊維の場合には、X線画像に写らないので分散状態を確認できないという問題点があった。また、X線画像を取得するための装置が高価となるうえ、X線に対する保護の対策を講ずる必要があり、煩雑であるという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであって、短繊維を含むコンクリートを型枠に充填した際、短繊維の種類にかかわらず、短繊維の分散状態を簡便に確認することが可能な短繊維の分散性確認方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、短繊維を含むコンクリートを型枠内に充填した際に、前記短繊維の分散性を確認する分散性確認方法において、前記型枠内に充填したコンクリート内のコンクリート採取対象箇所を囲うように、筒状のコンクリート採取器を当該コンクリート採取対象箇所に差し込む工程と、前記コンクリート採取器の内側のコンクリートを採取する工程と、前記採取したコンクリート中に含まれる短繊維の混入状態を確認する工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、筒状のコンクリート採取器をコンクリート採取対象箇所を囲うように差し込むので、コンクリート採取対象箇所に周囲のコンクリートが流入することを防止できる。したがって、コンクリート採取対象箇所のコンクリートのみを正確に採取することができる。
【0008】
本発明の短繊維の分散性確認方法において、前記コンクリートを採取する工程では、前記コンクリート採取器の内側の前記コンクリートを浅い位置から深い位置へ順次、採取することとすれば、深さ方向の分散性を確認することができる。
【0009】
本発明の短繊維の分散性確認方法において、環状の覆工体を構成するコンクリート製のセグメントを製作する場合は、前記型枠内に充填したコンクリートが前記型枠を外しても変形しない程度に硬化するまで所定の時間静置する工程を更に備えることとすれば、蓋型枠を取り外して試料となるコンクリートを採取することができる。このような方法によれば、蓋型枠を用いて製作されるセグメントにも適用することができる。
【0010】
本発明の短繊維の分散性確認方法において、前記コンクリート採取器は、前記充填したコンクリート内のコンクリート採取対象箇所を囲うための筒状の枠と、前記枠の上端部に、外方に向かって突出するように取り付けられたフランジとを備えることとしてもよい。
【0011】
本発明によれば、コンクリートの試料を採取した後に、フランジを握持してコンクリート内からコンクリート採取器を抜き出すことができる。したがって、コンクリート採取器を再利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、型枠内における任意の採取対象箇所のコンクリートを採取することができる。また、型枠内に充填されたコンクリート内に含まれる短繊維の分散状態を短繊維の種類にかかわらず、簡便に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態では、本発明を短繊維を含むコンクリート製セグメントの製作に適用した場合について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る型枠3を示す斜視図である。また、図2及び図3は、本実施形態に係るセグメント5の製造工程を示す正断面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、コンクリートを注入するための注入管2を注入孔3bに挿通して、型枠3内にポリプロピレン繊維を含む高流動コンクリート1を充填する。その後、図3に示すように、蓋型枠板3aの注入孔3b部分を仕上げて所定の時間静置する。
【0016】
本実施形態においては、上記所定の時間は、充填作業終了後から蓋型枠板3aを取り外しても高流動コンクリート1が変形しない程度に硬化するまでの時間とした。なお、この所定の時間は、高流動コンクリート1に含まれる成分の配合割合、セグメント5の厚さ、幅、長さ等により異なるものであり、適宜、試験等により求められる。
【0017】
次に、本発明による試験体の採取方法について説明する。なお、今回の事例では、試験体を採取するセグメント5は、分散性を確認するためのものであり、採取後、廃棄される。
【0018】
図4に示すように、例えば、採取点No.1〜採取点No.8の合計8箇所の高流動コンクリート1を採取する場合を想定する。
【0019】
図5は、採取点No.1及び採取点No.2の高流動コンクリート1を採取している状態を示す図である。また、図6は、本実施形態に係るコンクリート採取器10を示す図である。
【0020】
図5に示すように、高流動コンクリート1を型枠3内に充填した後、上記所定の時間が経過したら蓋型枠板3aを取り外して、高流動コンクリート1内のコンクリート採取対象箇所にコンクリート採取器10を差し込む。
【0021】
図6に示すように、コンクリート採取器10は、周囲からコンクリート採取対象箇所へ高流動コンクリート1が流入することを防止するための筒状の枠10aと、この枠10aの上端部に、外方に向かって突出するように取り付けられたフランジ10bとを備える。
【0022】
枠10aは、その水平断面形状が矩形になるように成形されるとともに、その高さがセグメント5の厚さよりもやや長くなるように製作されている。これにより、枠10aを高流動コンクリート1内に、その下端が内周面型枠板3cに当接するまで差し込んでも、フランジ10bは高流動コンクリート1内に埋まらない。
フランジ10bは、枠10aを高流動コンクリート1内へ挿脱する際に握持するための取っ手として利用される。
【0023】
次に、採取点No.1及び採取点No.2のコンクリートを採取する場合について説明する。
【0024】
まず、高流動コンクリート1内の採取点No.1及び採取点No.2が存在する平面位置にコンクリート採取器10をその下端が内周面型枠板3cに当接するまで差し込む。
【0025】
そして、採取点No.1に相当する外周側の深さ部分の高流動コンクリート1を所定の体積だけ採取する。本実施形態においては、各採取点の高流動コンクリート1をそれぞれ、例えば、7000cmずつ採取した。次に、採取点No.1より深い位置で、かつ、採取点No.2よりも浅い位置の高流動コンクリート1を採取して除去する。それから、採取点No.2に相当する内周側の深さ部分の高流動コンクリート1を採取する。その際、枠10aが高流動コンクリート1内に設置されているので、枠10a外の周囲の高流動コンクリート1が枠10a内に流入することはない。
【0026】
採取点No.1及び採取点No.2の採取が終わったらコンクリート採取器10を引き抜き、例えば、隣接する採取点No.3及び採取点No.4が存在する平面位置に差し込む。そして、上記と同様に、採取点No.3、間隙部分、採取点No.4の順番で高流動コンクリート1を採取する。以下、採取点No.5〜採取点No.8まで、上記と同様にして高流動コンクリート1を採取する。
【0027】
採取した試料は、例えば、コンクリート標準示方書(発行元:(社)土木学会)の「JSCE−F 554−1999:鋼繊維補強コンクリートの鋼繊維混入率試験方法」にしたがって、水を使用して高流動コンクリート1から、骨材と砂利とポリプロピレン繊維とをそれぞれ分離し、ポリプロピレン繊維のみを収集して混入状態を確認する。
【0028】
以上説明した本実施形態における分散確認方法によれば、高流動コンクリート1を型枠3に充填した後に、高流動コンクリート1が型枠3を外しても変形しない程度に硬化するまで所定の時間静置するので、蓋型枠板3aを取り外した状態で、高流動コンクリート1内の所定の位置に筒状の枠10aを差し込み、枠10a内の高流動コンクリート1を採取することができる。この蓋型枠板3aが取り外されているので、高流動コンクリート1を容易に、かつ、短時間で採取することができる。
【0029】
また、コンクリート採取対象箇所に筒状の枠10aを差し込むことにより、周囲の高流動コンクリート1が流入することを防止できる。したがって、コンクリート採取対象箇所の高流動コンクリート1のみを採取することができる。
【0030】
さらに、コンクリート採取器10は、フランジ10bを備えているので、高流動コンクリート1を採取した後に、そのフランジ10bを握持して高流動コンクリート1内から抜き出すことができる。したがって、コンクリート採取器10を再利用することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、高流動コンクリート1の採取点を8箇所とした場合について説明したが、この数に限定されるものではなく、セグメント5の厚さ、幅、長さ等によって採取数は異なるものであり、採取数及び採取位置は設計等により決定される。
【0032】
また、本実施形態においては、コンクリート構造物としてセグメント5を製作する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、一般的なコンクリート構造物を構築する場合に適用可能である。
【0033】
また、本実施形態においては、枠10aの水平断面形状を矩形にした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、その他の多角形や円形でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に係る型枠を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るセグメントの製造工程を示す正断面図である。
【図3】本実施形態に係るセグメントの製造工程を示す正断面図である。
【図4】分散性を確認するためのコンクリート採取対象箇所を示す図である。
【図5】採取点No.1及び採取点No.2の高流動コンクリート1を採取している状態を示す図である。
【図6】本実施形態に係るコンクリート採取器を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 高流動コンクリート
2 注入管
3 型枠
3a 蓋型枠板
3b 注入孔
3c 内周面型枠板
5 セグメント
10 コンクリート採取器
10a 枠
10b フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維を含むコンクリートを型枠内に充填した際に、前記短繊維の分散性を確認する分散性確認方法において、
前記型枠内に充填したコンクリート内のコンクリート採取対象箇所を囲うように、筒状のコンクリート採取器を当該コンクリート採取対象箇所に差し込む工程と、
前記コンクリート採取器の内側のコンクリートを採取する工程と、
前記採取したコンクリート中に含まれる短繊維の混入状態を確認する工程とを備えることを特徴とする短繊維の分散性確認方法。
【請求項2】
前記コンクリートを採取する工程では、前記コンクリート採取器の内側の前記コンクリートを浅い位置から深い位置へ順次、採取することを特徴とする請求項1に記載の短繊維の分散性確認方法。
【請求項3】
環状の覆工体を構成するコンクリート製のセグメントを製作する場合は、
前記型枠内に充填したコンクリートが前記型枠を外しても変形しない程度に硬化するまで所定の時間静置する工程を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の短繊維の分散性確認方法。
【請求項4】
前記コンクリート採取器は、
前記充填したコンクリート内のコンクリート採取対象箇所を囲うための筒状の枠と、
前記枠の上端部に、外方に向かって突出するように取り付けられたフランジとを備えることを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の短繊維の分散性確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−175476(P2010−175476A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20628(P2009−20628)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】