説明

コンクリートの処理方法

【課題】二酸化炭素を用いたコンクリートのpH調整処理が、より迅速に行えるようにする。
【解決手段】ステップS101で、コンクリートを100℃以上に加熱する。この加熱により、コンクリート中に含まれている水分を揮発させて減少させる。次に、ステップS102で、100℃以上に加熱したコンクリートを二酸化炭素が含まれる雰囲気に晒す。加熱処理で、コンクリート中に含まれている水分が減少しているので、例えば大気圧下であっても、雰囲気の二酸化炭素が内部にまで到達し、より迅速なpH調整処理が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中和するなどのコンクリートのpHを調整するコンクリートの処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、建築材料として大量に用いられている。このため、老朽化した建築物を解体した場合など、コンクリートの破砕物などのコンクリート廃材が大量に発生する。このようコンクリート廃材は、骨材として再利用される場合が多い。例えば、廃材となったコンクリートは、破砕されて路盤材としてアスファルト中に混入されて用いられる。
【0003】
このようにコンクリートを再利用する場合、一般には、中和などコンクリートのpHを調整する処理が行われる(特許文献1参照)。これは、セメントを原料とするコンクリートは、水酸化カルシウムなどを含んでアルカリ性を呈する物質であり、このまま用いると環境に対して様々な影響を与える場合があることを理由としている。例えば、廃材となったコンクリートは、粉砕して保管される場合が多いが、この保管場所は屋外の場合が多い。このように屋外に保管される場合、降雨などによりコンクリート中のアルカリ成分が溶け出して土壌に影響を及ぼす場合がある。このような場合であっても、コンクリートが中和処理されていれば、溶け出す成分による土壌への影響が抑制できるようになる。
【0004】
このようなコンクリートのpH調整(中和)処理として、二酸化炭素を用いる技術がある。二酸化炭素は、水に溶解すると酸性を呈する物質であり、アルカリ性の物質(塩基)と反応(中和反応)して炭酸塩を形成する。従って、二酸化炭素を用いることで、アルカリ性物質を中和するなど、コンクリートのpH調整が行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−238143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コンクリートは水分を含んでいるため、大気圧下では、内部にまで二酸化炭素が到達し難く、pH調整処理に多くの時間を要するという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、二酸化炭素を用いたコンクリートのpH調整処理が、より迅速に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンクリートの処理方法は、コンクリートを100℃以上に加熱する第1工程と、コンクリートを二酸化炭素が含まれる雰囲気に晒す第2工程とを少なくとも備える。
【0009】
上記第2工程では、二酸化炭素の気体が含まれる雰囲気にコンクリートを晒すようにすればよい。また、第2工程では、二酸化炭素が溶解した水溶液にコンクリートを晒すようにしてもよい。また、第1工程では、破砕されたコンクリートを100℃以上に加熱するとよい。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、コンクリートを加熱してから二酸化炭素に晒すようにしたので、二酸化炭素を用いたコンクリートのpH調整処理が、より迅速に行えるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1におけるコンクリートの処理方法を説明するフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の実施の形態2におけるコンクリート処理装置の構成を示す構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態2におけるコンクリートの処理方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0013】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるコンクリートの処理方法を説明するフローチャートである。まず、ステップS101で、コンクリートを100℃以上に加熱する。この加熱により、コンクリート中に含まれている水分を揮発させて減少させる。次に、ステップS102で、100℃以上に加熱したコンクリートを二酸化炭素が含まれる雰囲気に晒す。加熱処理で、コンクリート中に含まれている水分が減少しているので、例えば大気圧下であっても、雰囲気の二酸化炭素が内部にまで到達し、より迅速なpH調整処理が可能となる。なお、100℃は、水が沸騰する温度である。
【0014】
なお、ステップS101では、破砕されたコンクリートを100℃以上に加熱してもよい。破砕により処理対象のコンクリートが小さな寸法となるので、実効的に表面積が増大し、加熱による水分の除去がより効果的に行えるようになる。また、二酸化炭素の処理においては、雰囲気に直接触れる領域が増大し、二酸化炭素が、より迅速に内部にまで到達するようになる。この結果、二酸化炭素を用いたコンクリートのpH調整処理が、より迅速に行えるようになる。
【0015】
また、ステップS102における二酸化炭素の処理では、例えば、大気に曝すことが考えられる。大気中に含まれる二酸化炭素が、水分の減少したコンクリート中に浸透し、コンクリートの成分であるアルカリ性物質を中和するなど、コンクリートのpH調整が行える。また、このようにすることで、大気中の二酸化炭素をコンクリートに固定化することができ、大気中の二酸化炭素を減少させることが可能となる。なお、大気に限らず、二酸化炭素ガスを添加した空気を用いるようにしてもよく、また、二酸化炭素ガスの雰囲気で処理をしてもよい。
【0016】
また、ステップS102における二酸化炭素の処理では、二酸化炭素が溶解した水溶液にコンクリートを晒すようにしてもよい。例えば、加熱処理したコンクリートを、二酸化炭素が溶解した水溶液(炭酸水)に浸漬すればよい。また、加熱処理したコンクリートに、シャワーノズルなどを用いて炭酸水を供給してもよい。
【0017】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。はじめに、実施の形態2におけるコンクリートの処理方法を実施するための装置について説明する。図2は、本発明の実施の形態2におけるコンクリート処理装置の構成を示す構成図である。この処理装置は、コンクリートを破砕する破砕部201と、粉砕したコンクリート(コンクリート片)を加熱する加熱部202と、加熱処理したコンクリート片に炭酸水を供給して作用させる二酸化炭素処理部203とを備える。
【0018】
この処理装置における動作について図3を用いて説明すると、まず、ステップS301で、破砕部201では、例えば、破棄されたコンクリートが供給され、供給されるコンクリートを連続的に破砕し、破砕したコンクリートを加熱部202に搬送する。ステップS302で、破砕部201より破砕したコンクリート片が搬送される加熱部202では、コンクリート片を100℃以上の加熱する。例えば、加熱部202は、加熱炉とこの加熱炉内でコンクリート片を移動する移動部とを備え、移動部で炉内を移動させることで、コンクリート片を100℃以上に加熱する。
【0019】
このようにして加熱部202で加熱されたコンクリート片は、ステップS303で、二酸化炭素処理部203に搬出される。次に、ステップS304で、二酸化炭素処理部203に搬入されたコンクリート片は、処理槽中の炭酸水(例えば、飽和炭酸水)に浸漬される。この浸漬により、加熱処理により水分が減少しているコンクリート片では、炭酸水がより迅速に内部にまで浸透する。この結果、二酸化炭素を用いたコンクリートのpH調整処理が、より迅速に行えるようになる。なお、飽和炭酸水に限るものではなく、二酸化炭素が溶解している水溶液を用いればよい。なお、二酸化炭素処理部203では、外部より大気を導入し、導入した大気を加熱処理されたコンクリート片に吹き付けるようにしてもよい。これにより、大気に含まれている二酸化炭素により、コンクリート片のpH調整処理が行える。
【0020】
上述した本発明によれば、コンクリートのアルカリ性物質の浸出による土壌への影響が抑制できるようになる。また、コンクリート廃材を用いることで、効率的に大気中の二酸化炭素を固定することができる。ところで、炭酸水を用いた場合には、処理対象のコンクリートに過剰の炭酸水が含まれて酸性になる場合も発生する。しかしながら、大気の二酸化炭素圧は0.03%程度であり、この状態と平衡に達しようとすることで、水溶液中の二酸化炭素はすぐに気化し、酸性度は非常に弱いものとなる。また、飽和炭酸水であっても、pH=4程度の弱酸性であり、取り扱い上も問題が発生しない。
【0021】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、加熱処理においては、コンクリートが分解しない程度の温度を上限とすればよいことは、いうまでもない。また、二酸化炭素による処理では、作用させる二酸化炭素の濃度および処理の時間を制御することで、処理対象のコンクリートにおけるpHを調整し、また、中和処理をすることができる。この処理の程度は、予め実験などにより検量データを作成しておけば、例えば、処理対象のコンクリートの質量により、処理における濃度や時間などを適宜に設定することが容易である。
【符号の説明】
【0022】
201…破砕部、202…加熱部、203…二酸化炭素処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを100℃以上に加熱する第1工程と、
前記コンクリートを二酸化炭素が含まれる雰囲気に晒す第2工程と
を少なくとも備えることを特徴とするコンクリートの処理方法。
【請求項2】
請求項1記載のコンクリートの処理方法において、
前記第2工程では、二酸化炭素の気体が含まれる雰囲気に前記コンクリートを晒すことを特徴とするコンクリートの処理方法。
【請求項3】
請求項1記載のコンクリートの処理方法において、
前記第2工程では、二酸化炭素が溶解した水溶液に前記コンクリートを晒すことを特徴とするコンクリートの処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の処理方法において、
前記第1工程では、破砕されたコンクリートを100℃以上に加熱することを特徴とするコンクリートの処理方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−547(P2012−547A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135958(P2010−135958)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】