説明

コンクリートの単位水量推定試験方法および同方法に用いる試験装置

【課題】 フレッシュコンクリートの単位水量を短時間でかつ簡易な方法で推定する。
【解決手段】 一定体積のコンクリート試料と、第1の希釈水とを撹拌容器内に投入する。この撹拌容器によるコンクリート試料と希釈水との混合撹拌を行った直後に得られる、コンクリート試料に含有する結合材、骨材の微粉分及び水とが一様懸濁化した第1の懸濁液を採取して第1の懸濁液の濃度測定を行う。引き続き撹拌容器内に、第2の希釈液を加水し、同様の混合撹拌を行った直後に得られる第2の懸濁液の濃度を測定し、少なくとも第1の懸濁液と、第2の懸濁液の濃度をもとに、第1の希釈水と、第2の希釈水及びコンクリート試料の体積との関係から、コンクリート試料の水量を算出することで、コンクリート試料のもととなるコンクリートの単位水量を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリートの単位水量推定試験方法に係り、採取した懸濁液の濃度測定を行うことにより、短時間で、かつ簡易にコンクリートの単位水量を推定することができる試験方法および同方法に用いる試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フレッシュコンクリートの単位水量の変動は、完成したコンクリート構造物の強度等の品質や耐久性に及ぼす影響が大きく、適正な単位水量でのコンクリート打設が行われるよう、コンクリート打設時に適正な単位水量が確保されているかの確認が重要視されてきている。
【0003】
現在、種々の単位水量測定方法(装置)が実用化されてきている(非特許文献1)。非特許文献1に開示された単位水量の測定方法のうち、比較的普及したものとして、エアメータ法(非特許文献2)、電子レンジ法、静電容量法が知られている。
【0004】
非特許文献2に開示されたエアメータ法では、単位水量の変化によるコンクリートの単位容積質量と空気量の変化の関係を利用して、空気量と単位容積質量とを高精度に測定することにより、単位水量を求める方法が開示されている。電子レンジ法は、加熱乾燥により対象試料の蒸発水分量から単位水量を推定する方法で、その加熱乾燥手段として電子レンジ(高周波加熱装置)を利用するものである。静電容量法は、ウエットスクリーニングによって得られたモルタルの静電容量が水分量によって変化することを利用して推定単位水量を求める方法である。
【0005】
【非特許文献1】片平博,「フレッシュコンクリートの単位水量」,コンクリート工学,コンクリート工学協会刊,2001.5.Vol.39,p.65−67
【非特許文献2】中村博之他,「単位容積質量の測定結果から単位水量を検査する−高精度エアメータによる実証試験」,セメント・コンクリート,セメント協会刊,2002.2.No.659,p.44−48
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の各測定方法とも迅速性、簡易性、正確性のいずれかの要件に問題があることが知られている。非特許文献2で開示されたエアメータ法は、単位水量の測定精度が使用するエアメータの測定精度に依存するため、高精度のエアメータを必要とし、またあらかじめ骨材の密度を正しく求めておくことが精度確保上、必要である。骨材密度は同一材料であっても、ストックヤードにおける貯蔵位置等によってわずかなから変動することが知られている。このため、その状態に応じて密度試験を行うのは煩雑であり、データの整合性に問題が生じやすい。
【0007】
また、電子レンジ法は、一般にウエットスクリーニングされたモルタルを試料とするため、ウエットスクリーニング作業の手間に加え、打設予定の配合におけるモルタル分の組成がウエットスクリーニング後のモルタル分の組成に整合しないおそれがある。また細骨材中の水分量やセメントの初期水和量等を事前に試験で求めておかなければならない。さらに静電容量法においても、ウエットスクリーニングモルタルが用いられ、単位水量の算出において、事前に単位量(水、セメント、細骨材、粗骨材)、表面乾燥密度(セメント、細骨材、粗骨材)、吸水率(各骨材)、試料質量、空気量等の測定項目を必要とし、測定が煩雑である。
【0008】
さらに、上述した各測定方法では、まだ誤差要因が多い点が指摘されている。そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、コンクリートに所定量の水を添加し、撹拌して得られた懸濁液の濃度測定を行うことにより、短時間で、かつ簡易にコンクリートの単位水量を推定することができる試験方法と同方法に用いる試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は一定体積のコンクリート試料と、第1の希釈水とを撹拌容器内に投入し、該撹拌容器による前記コンクリート試料と希釈水との混合撹拌を行った直後に得られる、前記コンクリート試料に含有する結合材、骨材の微粉分及び水とが一様懸濁化した第1の懸濁液を採取し、該第1の懸濁液の濃度測定を行い、引き続き前記撹拌容器内に、第2の希釈液を加水し、同様の混合撹拌を行った直後に得られる第2の懸濁液の濃度を測定し、少なくとも第1の懸濁液と、第2の懸濁液の濃度をもとに、前記第1の希釈水と、第2の希釈水及び前記コンクリート試料の体積との関係から、前記コンクリート試料の水量を算出することで、該コンクリート試料のもととなるコンクリートの単位水量を推定することを特徴とする。
【0010】
上述の推定試験に用いるための装置であって、所定の傾角に設定されたベース上に設置された回転駆動源と、該回転駆動源の回転軸を、水密性を保持して内部に貫通可能な外部容器と、該外部容器内に収容され、その内部にコンクリート試料が収容された際、前記コンクリート試料に含有する結合材、骨材の微粉分及び水とが透過可能な外周面が形成され、前記外部容器の底面を貫通した回転軸により伝達された回転駆動力により、前記外部容器内で回転可能な内部容器と、前記外部容器内に貯留した懸濁液を撹拌可能な撹拌手段と、前記懸濁液を前記内部容器に循環させるとともに、経路中に前記懸濁液を採取可能あるいは前記内部容器内に加水可能な液出入口を有する懸濁液循環手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、この推定試験方法において、コンクリート試料を希釈する希釈水を、前記第2の希釈水より高次の希釈水加水まで繰り返して行うことで得られる前記コンクリート試料の単位水量を平均化し、前記コンクリート試料の単位水量を求めることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンクリート種類、使用骨材の種類、配合にかかわりなく、フレッシュコンクリート中の単位水量を、たとえば現場等で、簡易な装置により迅速かつ高精度にに測定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のコンクリートの単位水量推定試験方法の実施するための最良の形態として、以下の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
以下、実施例1として本発明の単位水量の測定原理、懸濁液の濃度測定に用いる試験装置の構成について説明する。
[単位水量の測定原理]
(サンプル採取、濃度測定)
本発明のコンクリートの単位水量の推定試験方法における単位水量の測定原理について、図1を参照して説明する。
【0015】
所定の水密容器内に、所定の混練り工程を経て得られた一定体積のフレッシュコンクリート試料と1次希釈水(以下、1次水と記す。)とを投入する。この水密容器に蓋をした状態で収容されたコンクリート試料と1次水とが完全に混合されるように撹拌動作を加える。通常、水密容器を連続揺動したり、十分な上下振動を加えるようにしてコンクリート材料と1次水との混合を図る。この撹拌動作の直後に、容器内には底部に粗骨材が底部に沈降堆積し、その上部に水とセメントと混和剤と骨材微粒分とが十分に混合された一様濃度の懸濁液が得られる。この懸濁液は、経時的に微粒分の沈降が進行するため、撹拌動作後にただちに所定量の懸濁液(1次サンプル)を採取する。そして、この1次サンプルの固形分の質量を後述する測定方法により測定し、懸濁液濃度を測定する。
【0016】
その後、1次サンプルが採取された後の水密容器に所定量の2次希釈水(2次水)を加水し、上述と同様の撹拌動作を行い、撹拌直後の懸濁液(2次サンプル)を再度同一手法により採取し、同様にこの2次サンプルの濃度測定を行う。
【0017】
濃度測定においては、懸濁液を収容した試料容器の加熱と、加熱により試料が絶乾状態になり、高温状態にある試料容器の放冷を効率よく行うことが測定効率上、重要である。本実施例では、試料容器として、中央に蒸気抜き用の小孔が形成された密閉蓋ステンレス円筒容器を採用し、加熱装置により加熱し、試料の水分を完全蒸発させる。本実施例では、ガス加熱器を使用したが、電熱器等、通常の加熱手段を用いることできる。
【0018】
加熱後は、ただちに放冷装置内に試料容器自体を収容し、試料の絶乾状態が保持されるように試料容器の冷却を行う。本実施例では、放冷装置は排熱ファンが装備され、この排熱ファンの運転により、収容された試料容器が短時間に冷却される。このとき放冷装置内の試料が空気中の水分を吸湿しないように、放冷装置内にはシリカゲル等の乾燥剤を充填しておくことが好ましい。上述の加熱、放冷工程を経て得た試料(固形分)の質量測定を公知の計量手段により行う。この一連の測定工程は15分程度で行うことができる。
【0019】
(単位水量の算定)
上述の1次サンプル、2次サンプルから得られた懸濁液中の固形分の質量値を用いて、一連の下式により、練り上がり時のフレッシュコンクリートの単位水量を算出することができる。なお、この単位水量の算出は、試料中のコンクリートの混練り水、及び試験のために添加される1次水、2次水を含む試料中の懸濁液中の浮遊分にはセメント、混和材等の結合材、骨材の微粒分の量が一定に含まれるという仮定のもとに行っている。
【0020】
第1回目と第2回目の懸濁液濃度測定値m1(%),m2(%)はそれぞれ(式1),(式2)で表すことができる。
【0021】
1(%)=(b+p)/(w+w1)×100 …(式1)
【0022】
2(%)=(b+p)/(w+w1+w2)×100 …(式2)
ここで、b:コンクリート試料中の結合材の質量(kg),p:懸濁液中に浮遊した細骨材中の微粒分および粗骨材に付着していた固形分の質量(kg),w:コンクリート試料中の水量(kg),w1,w2:1次水、2次水の添加水量
【0023】
(式1),(式2)からb+pを消去すると、試料中の水量(w)を求める式(式3)が導かれる。これにより、コンクリート1m3の単位水量は(式4)より求めることができる。
【0024】
w={w1×(m1−m2)−w2×m2}/(m2−m1
…(式3)
【0025】
このとき、コンクリート1m3当たりの単位水量W(kg/m3)は、
W=w/v×1000 …(式4)
ここで、v:コンクリート試料の体積(l)
【0026】
上述の展開より明らかなように、このとき得られるコンクリートの単位水量はコンクリートに用いられる材料の種類および配合に依存しないことが特徴である。また、単位水量推定のための検量線や補正係数が不要なため、配合や材料種類の不明なコンクリートにおいても単位水量が測定できるという利点がある。
【0027】
なお、1次水、2次水を加水する際、1次水加水時に懸濁液濃度が約60%、さらに2次水加水時には、懸濁液濃度が50%になるように、1次水、2次水の加水量を決定することが好ましい。また、試験終了後に、内部容器に残留した骨材を洗い分析することにより、サンプリングしたコンクリート試料中のモルタル分の示方配合からの差異を知ることができ、単位水量の測定精度をさらに向上させることができる。
【0028】
[単位水量推定試験装置]
【0029】
上述のコンクリート単位水量推定試験を効率よく行え、1次サンプル、2次サンプルのとしての懸濁液を自動的に採取し、そのときの固形分の質量を容易に知ることができ、上述の算出方法により対象となるコンクリートの単位水量を精度良く推定できるようにしたコンクリート単位水量推定試験装置(以下、単に試験装置と記す。)の構成について説明する。
本実施例の試験装置は、図1に示したように、前端が所定の高さに調整可能な脚部3で支持され、固定床2上に設置され、脚部3を調整して所定の傾角で据え付けられた装置ベース4上に固定支持された円筒形状の外部容器10と、この外部容器10内に収容され、外周側面に形成された開口窓21に所定目合いの金網22が取り付けられ、外部容器10の底部中心孔(図示せず)を貫通して外部容器10内に延設された回転駆動軸11と外部容器10の下半蓋12に形成された中空軸受16に支持された状態で回転駆動軸11により外部容器10内で回転可能な内部容器20と、外部容器10の底面から回転軸13が突出し、この回転軸13の先端に撹拌翼14が装着された懸濁液撹拌装置15と、同様に外部容器10の底面に取着され、懸濁液撹拌装置15の近傍に懸濁液の取入口(図示せず)が設けられ、取入口から吸引した懸濁液を、外部容器10の下半蓋12に形成された中空軸受16を通過するように配管された循環パイプ30を介して内部容器20内に環流させる循環ポンプ17と、外部容器10内に延設され、内部容器20を回転する回転駆動軸11の駆動モータ5とを備えた構成からなる。
【0030】
装置ベース4の傾角は、内部容器20内のコンクリート試料の撹拌効率に影響を与える。たとえば図2に示したように、装置ベース4が固定床2となす角度が30°程度に設定した場合、もっとも内部容器20内のコンクリート試料のセメント粒子の付着や水分の偏りがないことが確認されている。この角度が25°より小さい状態では懸濁液の液漏れ等のおそれがあり、35°より大きい状態では内部容器20内のコンクリートの撹拌が十分に行えず、骨材のセメント粒子が容器内面に付着した状態となり、懸濁液の濃度が小さくなる傾向にある。
【0031】
外部容器10は、本実施例では、直径220mm,高さ180mmの金属製円筒形容器からなり、装置ベース4上に固定され、底部の中心位置には駆動モータ5の回転駆動軸11の端部がシール軸受19を貫通して固着されている。一方、上部の開口部側には円形断面の下半を覆うように、下半蓋12が着脱自在に設けられている。この下半蓋12は、液密性が保持され、内部容器20および外部容器10内に貯留された状態のコンクリートと懸濁液とが容器外にあふれたり、漏洩しないようになっている。さらに下半蓋12の外部容器10の中心軸線上には中空軸受16が形成され、内部容器20の内蓋24の断面中心位置に設けられた軸受25と協働して内部容器20の片側の回転支持軸として機能する。
【0032】
内部容器20は、本実施例では、直径210mm,高さ140mmの金属製円筒形容器からなり、上述したように、底部側が回転駆動軸11により、開口部側が内蓋に設けられた軸受により、外部容器10に対して同軸をなし、周囲に所定のクリアランスを保持して回転可能に外部容器10内に収容されている。内部容器20の外周面には、図2に示したように、所定寸法の開口窓21が周方向に所定間隔をあけて形成されており、さらに各開口窓21は金網22で覆われている。本実施例では、金網22の目合いを150μmとしたが、内部容器20内にコンクリート試料の骨材が貯留され、撹拌時にセメント等の結合材や骨材の微粒分が金網22を通じて自由に通過可能な程度の目合い寸法に設定すればよい。また、金網22の線径もコンクリート試料の撹拌時に骨材の衝突により変形しない程度の剛性が保持できる程度のものを使用すればよい。なお、内部容器20は回転時に十分な剛性が確保されれば、円筒形状フレームに金網22を張った篭状体としてもよい。
【0033】
この内部容器20は、図2に示したように、外部容器10の底部に設けられたシール軸受19を貫通して内部容器20の底部に連結された回転駆動軸11により回転する。回転駆動軸11、軸受25は、内部容器20が傾斜状態にあり、貯留されたコンクリート試料の重量が作用した際にも軸ブレを生じない程度の剛性の部材が使用されている。また、回転数は、駆動モータ5に連設されたギアボックス6により所定回転数に切り替えることができる。
【0034】
また、外部容器10底部と内部容器20底部との間には所定高さの空間18が形成されており、後述するように、両容器が傾いた状態で、この空間18内に溜まる懸濁液を撹拌する懸濁液撹拌装置としての撹拌翼14が外部容器10の装置ベース4よりに設けられている。一方、この撹拌翼14の近傍には懸濁液を、容器外部に設置された循環ポンプ17に吸引可能な懸濁液取入口(図示せず)が設けられている。
【0035】
循環ポンプ17は、懸濁液等ように固形分を含む所定粘度の液状体を吸引し、閉塞なく所定圧で吐出可能な性能を有する公知の電動ポンプが用いられている。本実施例では、この循環ポンプ17には、外部容器10内の懸濁液を吸引し、再び内部容器20の上部開口側から容器内に送る循環パイプ30が配管されている。懸濁液は循環ポンプ17、循環パイプ30を介して環流される構造になっている。なお、この循環パイプ30の中間位置には三方弁31が設けられ、三方弁31の経路切替えにより、環流する懸濁液の一部を外部の試料容器に採取したり、後述する2次水の加水を循環パイプ30内に供給できるようになっている。
【0036】
ここで、簡単に上述した装置の機能について、図2を参照して説明する。
所定傾角に据え付けられた試験装置1の内部容器20に所定の混練り状態にあるコンクリート試料と希釈用の1次水が投入されると、コンクリート試料は内部容器20内に溜まり、1次水は金網22を通過して外部容器10内に溜まる。この状態で駆動モータ5により内部容器20を回転させ、内部のコンクリート試料を撹拌する。この撹拌と、内部容器20の回転に伴う遠心力がコンクリートに作用し、セメント、添加材などの微粒子分が分散し、金網22を通過して1次水が溜まっている外部容器10に溜まる。この状態で、外部容器10底部に装備された撹拌翼で外部容器10に溜まった1次水と金網22の通過成分とを高速撹拌する。また内部容器20の回転に伴う遠心力の作用により、内部容器20内の懸濁液の濃度が低下しないように、懸濁液は循環ポンプ17、循環パイプ30を介して内部容器20内に環流される。
【0037】
駆動モータ5は回転駆動軸11に連結されたギヤボックス6の変速機によって所定の回転数に制御可能であるが、本実施例では、回転数を30rpmとした。回転数が早すぎると遠心力によってコンクリート材料が内部容器20の内周面や金網22に張り付き十分な撹拌ができず、均一な濃度の懸濁液が得られない。一方、回転数が遅すぎるとセメントなどの微粒分を分散させ懸濁化させるのに時間を要する。
【0038】
なお、図2に示された本実施例では、循環パイプ30の一部に設けられた三方弁31の一経路には2次水あるいはそれより高次の希釈水を加水可能な希釈水供給装置35と、1次サンプル、2次サンプルを採取し、採取したサンプルの懸濁液の濃度を自動的あるいはマニュアル操作により測定可能な懸濁液濃度測定装置36とが切り替え可能に装備された構成が示されている。
【0039】
(懸濁液の濃度測定装置)
懸濁液の濃度測定は、上述したような加熱工程、放熱工程と、固形分の質量測定により行うのが簡易である。しかし、装置の自動化を考慮した場合は、図2に示したように、希釈水供給装置や、公知の自動計測装置であるマイクロ波、レーザー、超音波、近赤外線等の濃度測定装置を循環パイプの経路上あるいは三方弁で切り替えた側に装備することが好ましい。これにより、1次水、2次水あるいはさらに高次の希釈水を自動計量して加水したり、撹拌直後の懸濁液の濃度をリアルタイムに連続測定することが可能になる。なお、上述のマイクロ波、レーザー、超音波、近赤外線等の測定装置では、測定対象に対応した検量線を必要に応じて用いた測定を行うことが好ましい。
【0040】
なお、試験所要時間として、1次水、2次水の加水・撹拌(各5分)後、加熱放冷装置を用いた測定では、濃度測定に15分を要し、25分程度の試験時間が見込まれるが、濃度測定、加水等に自動化装置を用いることにより、3次水以上の高次の加水を行っても大幅な測定時間短縮が可能である。
【実施例2】
【0041】
以下、実施例2として、上述の試験装置1を用いた実験の手順と、その結果について図3〜図5を参照して説明する。
【0042】
[コンクリート試料の使用材料]
コンクリート試料の使用材料は以下のとおりである。
1)セメント ;普通ポルトランドセメント(JIS R 5210)
密度 3.16g/cm3,比表面積3,310cm2/g
2)粗骨材 ;多久産砕石(密度2.7g/cm3,吸水率1.4%)
3)細骨材 ;筑後川川砂(密度2.56g/cm3,吸水率2.5%)
4)AE減水剤 ;変性リグニンスルホン酸化合物、ポリカルボン酸エーテル複合体 (商品名:ポゾリス78H)
5)AE剤 ;アルキルアリルスルホン酸化合物系陰イオン界面活性剤
(商品名:マイクロエア303A)
6)水 ;水道水
【0043】
[コンクリート配合]
上記使用材料を用いて、表−1に示した配合表に基づいた4種類のコンクリート試料(練り上がり1バッチ容量を1リットルとして計量)を用いた実験を行った。
【0044】
【表1】

【0045】
[実験・測定手順]
まず、図3(a)〜(b)に示したように、試験装置1の装置ベース4を傾角30°に設定した状態で、外部容器10の下半蓋12を取り付け、上述のコンクリート試料を投入し、同時に1次水を加水する。このときの1次水W1の加水量としては、懸濁液濃度が約60%になるように決定する。この状態で5分間、内部容器20を30rpmで回転すると同時に、外部容器10の底部の撹拌翼を高速回転させ、懸濁液の濃度の均一化を行う。また、循環ポンプ17の運転により循環パイプ30を介して懸濁液Mを内部容器20に環流させ、コンクリート試料C中の微粒分を懸濁化を促進させる。所定の撹拌時間(本実施例では5分間)経過後、循環パイプ30に設けられた三方弁31から1次サンプルM1としての懸濁液を採取する(図3(c))。本実施例では、採取するサンプルの質量は10〜20gとしたが、懸濁液濃度の測定手段に応じた適正量を採取することが好ましい。本実施例では、上述の加熱放冷方式等の手順によって、各工程での質量測定を行い、濃度測定を行った。
【0046】
次いで、1次サンプルM1を採取した状態から、引き続き、図4(d)に示したように三方弁31の取入口を介して2次水W2を加水する。2次水加水時には、懸濁液Mの濃度が50%になるように2次水W2の加水量を決定する。そして再度、1次サンプルM1採取時と同条件の内部容器20回転、懸濁液の撹拌、環流を行った後、2次サンプルM2としての懸濁液を採取し(図4(e))、同様の測定方法により懸濁液濃度を求める。
【0047】
その後、上述の算出式(式4)をもとにコンクリートの単位水量推定値を求める。同示方配合における単位水量を縦軸とし、算出した単位水量推定値との相関関係を得たのが図5である。同図に示したように、本発明によるコンクリート単位水量推定試験によれば、高い相関関係で、対象としたフレッシュコンクリートの単位水量を推定できることが確認できた。
【0048】
なお、以上の説明では、1次サンプル、2次サンプルによる推定値算出を例に説明したが、自動加水装置、懸濁液の濃度測定の自動化装置の併用により、3次水以上の高次の加水による3次サンプル以上の高次の懸濁液の濃度を測定することもできる。これにより、多データの平均化による測定値の精度向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】コンクリート単位水量の推定試験の測定原理について説明した概略説明図。
【図2】本発明のコンクリート単位水量推定試験装置の一実施例を示した装置構成図。
【図3】図2に示した試験装置を用いた単位水量推定試験手順を示した順序図(その1)。
【図4】図2に示した試験装置を用いた単位水量推定試験手順を示した順序図(その2)。
【図5】本実施例によるコンクリート単位水量推定試験の実験結果を示したグラフ。
【符号の説明】
【0050】
1 単位水量推定試験装置
4 固定ベース
5 駆動モータ
10 外部容器
11 回転駆動軸
14 撹拌翼
15 懸濁液撹拌装置
17 循環ポンプ
20 内部容器
21 開口窓
22 金網
30 循環パイプ
31 三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定体積のコンクリート試料と、第1の希釈水とを撹拌容器内に投入し、該撹拌容器による前記コンクリート試料と希釈水との混合撹拌を行った直後に得られる、前記コンクリート試料に含有する結合材、骨材の微粉分及び水とが一様懸濁化した第1の懸濁液を採取し、該第1の懸濁液の濃度測定を行い、引き続き前記撹拌容器内に、第2の希釈液を加水し、同様の混合撹拌を行った直後に得られる第2の懸濁液の濃度を測定し、少なくとも第1の懸濁液と、第2の懸濁液の濃度をもとに、前記第1の希釈水と、第2の希釈水及び前記コンクリート試料の体積との関係から、前記コンクリート試料の水量を算出することで、該コンクリート試料のもととなるコンクリートの単位水量を推定することを特徴とするコンクリートの単位水量推定試験方法。
【請求項2】
所定の傾角に設定されたベース上に設置された回転駆動源と、該回転駆動源の回転軸を、水密性を保持して内部に貫通可能な外部容器と、該外部容器内に収容され、その内部にコンクリート試料が収容された際、前記コンクリート試料に含有する結合材、骨材の微粉分及び水とが透過可能な外周面が形成され、前記外部容器の底面を貫通した回転軸により伝達された回転駆動力により、前記外部容器内で回転可能な内部容器と、前記外部容器内に貯留した懸濁液を撹拌可能な撹拌手段と、前記懸濁液を前記内部容器に循環させるとともに、経路中に前記懸濁液を採取可能あるいは前記内部容器内に加水可能な液出入口を有する懸濁液循環手段とを備えた請求項1の推定試験方法に用いられるコンクリートの単位水量推定試験装置。
【請求項3】
請求項1の推定試験方法において、コンクリート試料を希釈する希釈水を、前記第2の希釈水より高次の希釈水加水まで繰り返して行うことで得られる前記コンクリート試料の単位水量を平均化し、前記コンクリート試料の単位水量を求めるようにしたことを特徴とするコンクリートの単位水量推定試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−53083(P2006−53083A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235745(P2004−235745)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年2月19日 佐賀大学主催の「理工学部都市工学科卒業論文審査会」において文書をもって発表
【出願人】(502327735)
【出願人】(502327746)
【Fターム(参考)】