説明

コンクリートの変状を検知する方法

【課題】 コンクリートの表面に外部電源により発熱する塗料を塗布するという簡単な施工によってコンクリートの変状を的確に検知する方法を提供する。
【解決手段】 コンクリートの変状を検知する方法において、コンクリート表面上に発熱塗料の塗りパターン22を形成するとともに、この発熱塗料の塗りパターン22上に表面被覆材25を塗布し、前記発熱塗料の塗りパターン22にスイッチ24を介して電源23を接続し、前記発熱塗料の塗りパターン22を加熱して前記コンクリートを発熱させることで、赤外線撮像装置を用いた赤外線画像により、前記コンクリートの変状を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの変状を検知する方法に係り、特に、表面被覆材が塗布されたコンクリートの変状を検知する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被覆されたコンクリート表面の変状の検知方法としては以下に開示されるようなものがあった。
(1)熱赤外線映像法を実橋としての道路橋の変状の調査に適用した方法(下記非特許文献1参照)。この例では、一般的な検査技術である目視観察のみでは困難であった変状の確認について、コンクリート主桁の表面被覆下の変状や、アスファルト舗装下の調整コンクリートの剥離を抽出できるようにしているしている。この方法は、対象橋梁を人為的に加熱・冷却することにより、調査にかかる時間短縮を可能とするとともに、データ解析の際に、差画像を用いることにより、変状のより明確な抽出を可能にしている。
【0003】
(2)電磁誘導加熱を利用して非接触、非破壊にてコンクリート内部の鉄筋を加熱し、コンクリート表面に表れる温度変化を赤外線サーモグラフィで計測することによって、かぶり部分に存在する空洞箇所を非破壊で診断する方法(下記非特許文献2参照)。
(3)コンクリートの劣化に伴う表面剥離部を把握するため、構造物表面を強制的に加熱し、剥離部と健全部の温度差を赤外線画像により把握するアクティブ赤外線法による剥離検知方法(下記特許文献3および非特許文献3参照)。
【0004】
(4)熱画像に基づいてコンクリートの剥離を診断するパッシブ赤外線法による剥離診断手法(下記特許文献1,2および非特許文献4参照)。熱画像による診断は温度を指標とするため、日照、気温などの環境条件に大きく影響されるので、この診断手法の適用可能条件を定量化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4448553号公報
【特許文献2】特開2008−232898号公報
【特許文献3】特開2008−232897号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】浅利公博,後藤惠之輔,高橋洋一,渡邉浩平,「実道路橋変状調査への橋体の加熱および冷却を用いた熱赤外線映像法の適用」,土木構造・材料論文集,第21号(2005)
【非特許文献2】谷口修,重松文治,堀江宏明,大下英吉,「電磁誘導加熱を利用したコンクリート表面の温度性状に基づくRC構造物の空洞検出システムの開発に関する研究」,土木学会論文集E,Vol.64,No.1,pp.173−185(2008)
【非特許文献3】大屋戸理明,田中寿志,鳥取誠一,栗田耕一,「強制加熱によるコンクリート剥離検知手法における照射出力と画像解析法の検討」,コンクリート工学論文集 第18巻第3号,pp.37−45(2007)
【非特許文献4】長田文博,山田裕一,虫明成生,赤松幸生,「熱画像による鉄道高架橋コンクリートの剥離診断手法の開発」,土木学会論文集,No.760/V−63,pp.121−133(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したアクティブ赤外線法(上記特許文献3および非特許文献3参照)では、手間をかければ、強制加熱によって、被覆されたコンクリート表面の変状を検知できることは分かっているものの、作業時間や装置(ランプ、ジェットヒータ)に対する制約の問題などから、現場への適用が難しいのが現状である。また、パッシブ赤外線法(上記特許文献1,2および非特許文献4参照)では測定条件が限られている。
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みて、コンクリートの表面に外部電源により発熱する塗料を塗布してその上を表面被覆材で保護し、塗りパターンを加熱してコンクリートを加熱させることで、赤外線画像によりコンクリートの変状を検知する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕コンクリートの変状を検知する方法において、コンクリート表面上に発熱塗料の塗りパターンを形成するとともに、この発熱塗料の塗りパターン上に表面被覆材を塗布し、前記発熱塗料の塗りパターンにスイッチを介して電源を接続し、前記発熱塗料の塗りパターンを加熱して前記コンクリートを発熱させることで、赤外線撮像装置を用いた赤外線画像により、前記コンクリートの変状を検出することを特徴とする。
【0010】
〔2〕上記〔1〕記載のコンクリートの変状を検知する方法において、前記発熱塗料の塗りパターンが一筆書きのパターンであることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載のコンクリートの変状を検知する方法において、前記コンクリート表面がRCラーメン高架橋の下面であり、前記スイッチが遠隔操作スイッチであることを特徴とする。
【0011】
〔4〕上記〔1〕又は〔2〕記載のコンクリートの変状を検知する方法において、前記電源が携帯型の小型直流電源であることを特徴とする。
〔5〕上記〔1〕又は〔2〕記載のコンクリートの変状を検知する方法において、前記電源が太陽電池であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部電源により発熱する発熱塗料の塗りパターンおよび表面被覆材をコンクリートの表面に塗布するという簡単な施工によってコンクリートの変状を的確に検知することができる。
また、最上層には被覆層としての表面被覆材が塗布されるので、発熱塗料の塗りパターンが酸化したり、ダメージを受けることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例を示すコンクリート表面であるスラブ下面に発熱塗料の塗りパターンおよび表面被覆材が施工された状態を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例を示す発熱塗料の塗りパターンおよび表面被覆材の施工例(その1)である。
【図3】本発明の実施例を示す発熱塗料の塗りパターンおよび表面被覆材の施工例(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のコンクリートの変状の検知方法は、コンクリートの変状を検知する方法において、コンクリート表面上に発熱塗料の塗りパターンを形成するとともに、この発熱塗料の塗りパターン上に表面被覆材を塗布し、前記発熱塗料の塗りパターンにスイッチを介して電源を接続し、前記発熱塗料の塗りパターンを加熱して前記コンクリートを発熱させることで、赤外線撮像装置を用いた赤外線画像により、前記コンクリートの変状を検出する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示すコンクリート表面であるスラブ下面に発熱塗料の塗りパターンおよび表面被覆材が施工された状態を示す模式図である。
この図において、1はコンクリートであるスラブ(鉄筋コンクリートの床板、天井板、デッキ等)、2はスラブ下面の表面に形成される一筆書きの発熱塗料の塗りパターン、3は電源、4は発熱塗料の塗りパターン2に電源3からの電力を供給するスイッチ、5はスラブの梁、6は発熱塗料の塗りパターン2上に形成される表面被覆材である。
【0016】
スラブ下面1Aのコンクリートの変状の検知を行う場合、スイッチ4をオンにして、電源3からの電力をスラブ下面1A上に形成された一筆書きの発熱塗料の塗りパターン2に供給する。すると、スラブ下面1Aは一筆書きの発熱塗料の塗りパターン2の発熱により加熱されるので、例えば、画像解析法(上記非特許文献3,4参照)により、表面被覆材6を介してコンクリート剥離などの状態を検出することができる。
【0017】
図2は本発明の実施例を示す発熱塗料の塗りパターンおよび表面被覆材の施工例(その1)である。
この図において、11はコンクリートであるスラブ、12はスラブ下面11Aの表面に形成される発熱塗料の塗りパターンであり、この発熱塗料の塗りパターン12は、複数回折り返された細い長尺状の塗りパターンである。13は、例えば、携帯型の小型直流電源、14は発熱塗料の塗りパターン12に携帯型の小型直流電源13からの電力を供給する、小型直流電源13と一体に配置されたスイッチ、15は発熱塗料の塗りパターン12上に形成される表面被覆材である。
したがって、施工、または取替えも容易である。
【0018】
図3は本発明の実施例を示す発熱塗料の塗りパターンおよび表面被覆材の施工例(その2)であり、図3(a)はその平面図、図3(b)は図図3(a)のA−A線断面図である。
これらの図において、21はコンクリートであるスラブ、22はスラブ下面21Aの表面に形成される発熱塗料の塗りパターンであり、この発熱塗料の塗りパターン22は、1回折り返された幅広の塗りパターンである。23は、例えば、太陽電池の直流電源、24は発熱塗料の塗りパターン22に直流電源23からの電力を供給するスイッチ、25は発熱塗料の塗りパターン22上に形成される表面被覆材である。
【0019】
なお、上記した表面被覆材は発熱塗料の塗りパターン22を外部からのダメージから保護する役割も果たすことができる。
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のコンクリートの変状の検知方法は、簡易な施工により、コンクリートの変状の検知を的確に検知する方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1,11,21 スラブ
21A スラブ下面
2,12,22 発熱塗料の塗りパターン
3 電源
4,14,24 スイッチ
5 スラブの梁
6,15,25 表面被覆材
13 携帯型の小型直流電源
23 太陽電池の直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート表面上に発熱塗料の塗りパターンを形成するとともに、該発熱塗料の塗りパターン上に表面被覆材を塗布し、前記発熱塗料の塗りパターンにスイッチを介して電源を接続し、前記発熱塗料の塗りパターンを加熱して前記コンクリートを発熱させることで、赤外線撮像装置を用いた赤外線画像により、前記コンクリートの変状を検出することを特徴とするコンクリートの変状を検知する方法。
【請求項2】
請求項1記載のコンクリートの変状を検知する方法において、前記発熱塗料の塗りパターンが一筆書きのパターンであることを特徴とするコンクリートの変状を検知する方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコンクリートの変状を検知する方法において、前記コンクリート表面がRCラーメン高架橋の下面であり、前記スイッチが遠隔操作スイッチであることを特徴とするコンクリートの変状を検知する方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のコンクリートの変状を検知する方法において、前記電源が携帯型の小型直流電源であることを特徴とするコンクリートの変状を検知する方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載のコンクリートの変状を検知する方法において、前記電源が太陽電池であることを特徴とするコンクリートの変状を検知する方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−159333(P2012−159333A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17666(P2011−17666)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】