説明

コンクリートの成形方法

【課題】混合着色特殊モルタルや着色された混合特殊モルタルの硬化時間の短縮化を図ることにより、短時間でスタンプ作業ができると共に、ワンディ(1DAY)工法も可能とすることで、工期の大幅な短縮を図り、もって作業コスト等も大幅に低減できる画期的なコンクリートの成形方法を提供する。
【解決手段】第3の工程(III)において、硬化促進剤としてリチウムを含むシリカ系混合無機質からなるレジン水溶液と特殊モルタルと着色剤とを混練して、速硬化性の混合着色特殊モルタルを得る(混練工程)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの成形方法に関し、特にその硬化を速めることにより当日仕上げを含め工期短縮可能となるコンクリートの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では二十数年前頃から、新しい表面処理工法に係る装飾用コンクリートシステムが既に施工・実施されている。すなわち、新設床の場合には、例えば事前に土間などにコンクリートを下げて打つことで後日施工可能となり、例えば住宅のアプローチやエントランスあるいはパーキングエリア、商業施設等の床・歩道、あるいは公園等の公共施設歩道等に施工されている。また、既設床の場合には、既存の床面に室内外問わず施工可能であることから、例えばブティックやレストラン等の店舗リユーアルに、住宅のアプローチやカーポートのリフォームに、あるいはホテル内通路等多岐に亘り施工されている。
そして、装飾用コンクリートシステムによれば、その強度や防滑性などの機能性に優れ、しかも自然石模様やレンガ風あるいは木目調模様等のデザインを比較的簡単に施工できることにより、装飾・意匠的に卓越しているという利点を有している。
【0003】
このような装飾用コンクリートシステムの一つとして、スタンプコンクリートを比較的簡便に施工できるレイヤード工法が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。これは、既存のコンクリートの上に施行できる工法であり、コンクリート床上に専用の特殊モルタルを塗り、それに型を押し付けて、レンガやタイル、自然石などのデザインを成形加工する工法である。
【0004】
従来のレイヤード工法では、図3に示すように、第1の工程(I)で、ベースとなる既存の床面の汚れや浮き、クラック処理およびレイタンス(脆弱層)、ほこり等の除去・洗浄等の下地処理を行う。第2の工程(II)では、清浄になったコンクリート上にプライマーの塗布を行う。第3の工程(III)では、レイヤード・グラウトと呼ばれる特殊モルタルと硬化用のレジン水溶液とを混練して、硬化可能な材料(以下、「混合特殊モルタル」という)を得る(材料混練工程)。次いで、第4の工程(IV)では、混合特殊モルタルを所定の厚さ(例えばトータルの厚さで6mm(商品名「レイヤード6」と呼ばれている)で、プライマー処理されたコンクリート上に均一に塗り付ける(モルタル塗布工程)。
第5の工程(V)では、スタンプハードナーEXと呼ばれる着色剤(トナー)を、硬化用のレジン水溶液に混ぜることにより、硬化可能な材料を得て、これを混合特殊モルタル上に塗り付ける(着色剤塗布工程)。
【0005】
第6の工程(VI)では、前記スタンプハードナーEXで着色された混合特殊モルタルに対して次工程(VII)で所望の模様を施すために、施工面(スタンプハードナーEX上)および可撓性の弾性材であるゴムマットからなる型の模様転写面(スタンプパターン)に、リリースオイルと呼ばれる液体離型剤を散布・塗布する(離型剤塗布工程)。次いで、第7の工程(VII)では、ゴムマットからなる型を施工面(着色された混合特殊モルタル)上に押し付けるスタンプ作業を行って、所望の模様を形成する(型材押し付け工程)。
次いで、第8の工程(VIII)では、リリースオイル(上記リリースオイルにリリースパウダーを混入したもの)と呼ばれる粉体を混入した液状離型剤を施工面に散布・塗布する(粉体混入離型剤塗布工程)。第9の工程(IX)では、リリースパウダーの色の濃い箇所はウエス等で拭き取りし、着色された混合特殊モルタルの強度を確保するため、所定期間養生を行う。これは、次のトップコート仕上げのために、施工面の下側から上がってくる余剰水が抜けて乾燥・硬化するまで必要である。次いで、第10の工程(X)では、液状被覆剤としてのスタンプコートと呼ばれるトップコートを施工面(着色された混合特殊モルタル)にローラ等により塗布するというものであった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−137761号公報
【非特許文献1】“HACHIYA CONCRETE SYSTEM”、「平成18年4月1日検索」、インターネット、〈URL:http://www.hachiya.co.jp〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のレイヤード工法では、特に第9の工程(IX)における養生のために、季節および環境温湿度等の諸条件にもよるが、施工開始(打設開始)から施工終了(トップコート仕上げ終了)までの工期として、春夏秋期において大体5日位、冬季低温時において大体5日〜1週間位の日数が必要となっていた。十分な養生を行わない場合には、余剰水が上がってくることで、エフロ(白華)と呼ばれる不具合が発生してしまう。
また、第4の工程(IV)の混合特殊モルタルの塗り付けから第7の工程(VII)の型材押し付け・スタンプ作業開始までの時間も、着色された混合特殊モルタルが半硬化状態となる、いわゆる締った状態となるまで開始できないため、1〜3時間という短時間でのスタンプ作業を行えなかった。
上述したように、ユーザおよび業界では、短時間でスタンプ作業ができると共に、施工開始の当日、すなわちワンディ(1DAY)工法も可能となる工期の短縮が長い間非常に望まれていたが、未だに上記問題点を解決する本格的な提案はなされていない。
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、混合着色特殊モルタルや着色された混合特殊モルタルの硬化時間の短縮化を図ることにより、短時間でスタンプ作業ができると共に、ワンディ(1DAY)工法も可能とすることで、工期の大幅な短縮を図り、もって作業コスト等も大幅に低減できる画期的なコンクリートの成形方法を提供することを主な目的とする。
【0009】
本発明者は、上述の課題を解決するとともに上述の目的を達成するために、図3に示した第3の工程(III)の材料混練において、レイヤード・グラウトと呼ばれる特殊モルタルと硬化用のレジン水溶液とを混練する際に、単なる硬化用の樹脂等を配合したレジン水溶液を用いて混練していたことに着目し、速硬化を図れる硬化促進機能を有する材料の探求とレジン水溶液との関係について鋭意試験研究を重ねた結果、上記目的を達成できるレベルに到達したので、これをコンクリートの成形方法に適用した技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、硬化促進剤としてリチウムを含むシリカ系混合無機質からなるレジン水溶液と、特殊モルタルと、着色剤とを混練して混合着色特殊モルタルを得る混練工程と、前記混合着色特殊モルタルを所定の厚さで下地上に塗布するモルタル塗布工程と、前記混合着色特殊モルタルの半硬化状態時に、該混合着色特殊モルタルの表面に、型材を押し付けることにより所望の模様を形成する型材押し付け工程とを有することを特徴とするコンクリートの成形方法である。
【0011】
請求項2記載の発明は、硬化促進剤としてリチウムを含むシリカ系混合無機質からなるレジン水溶液と、特殊モルタルとを混練して混合特殊モルタルを得る混練工程と、前記混合特殊モルタルを所定の厚さで下地上に塗布するモルタル塗布工程と、前記混合特殊モルタルの半硬化状態時に、着色剤を前記混合特殊モルタルの表面に散布ないしは塗布することにより着色された特殊混合モルタルを得る着色剤塗布工程と、前記着色された混合特殊モルタルの半硬化状態時に、該着色された混合特殊モルタルの表面に、型材を押し付けることにより所望の模様を形成する型材押し付け工程とを有することを特徴とするコンクリートの成形方法である。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のコンクリートの成形方法において、前記シリカ系混合無機質は、LiSiOが3.0〜5.5重量%、SiOが6.0〜14.0重量%、KCOが8.0〜16.0重量%、CaClが3.5〜6.5重量%、Alが3.0〜5.0重量%の混合物からなることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか一つに記載のコンクリートの成形方法において、前記下地が、コンクリートであり、前記コンクリート上にプライマー層を形成するプライマー処理工程を有し、前記モルタル塗布工程の前に、前記プライマー処理工程を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1記載のコンクリートの成形方法において、前記モルタル塗布工程と前記型材押し付け工程との間に、前記混合着色特殊モルタルの表面および前記型材に離型剤を塗布する離型剤塗布工程を有することを特徴とするコンクリートの成形方法。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項2記載のコンクリートの成形方法において、前記着色剤塗布工程と前記型材押し付け工程との間に、前記液体により着色された混合特殊モルタルの表面および前記型材に離型剤を塗布する離型剤塗布工程を有することを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1記載のコンクリートの成形方法において、前記型材押し付け工程の終了後に、所望の模様が形成された前記混合着色特殊モルタルの表面に、粉体を混入した液状離型剤を塗布する粉体混入離型剤塗布工程を有することを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明は、請求項7記載のコンクリートの成形方法において、前記粉体混入離型剤塗布工程終了後に、所望の模様が形成された前記混合着色特殊モルタルの表面に、液状被覆剤を塗布する被覆剤塗布工程を有することを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明は、請求項2記載のコンクリートの成形方法において、前記型材押し付け工程の終了後に、前記液体により着色され所望の模様が形成された前記混合特殊モルタルの表面に、粉体を混入した液状離型剤を塗布する粉体混入離型剤塗布工程を有することを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の発明は、請求項9記載のコンクリートの成形方法において、前記粉体混入離型剤塗布工程終了後に、前記液体により着色され所望の模様が形成された前記混合特殊モルタルの表面に、液状被覆剤を塗布する被覆剤塗布工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記課題を解決して新規なコンクリートの成形方法を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、上記構成により、混合着色特殊モルタルまたは着色された混合特殊モルタルの硬化時間の短縮化が図れるので、短時間で型材押し付け工程に進んでスタンプ作業を行えると共に、硬化した混合着色特殊モルタルまたは着色された混合特殊モルタルの部位で、下からの余剰水が上がるのを遮断する作用もあることにより、最終工程(例えば被覆剤塗布工程でのトップコート仕上げ)までの時間短縮も図れるので、ワンディ(1DAY)工法も可能となり、もって工期の大幅な短縮が図れ、これに伴い作業コスト等も大幅に低減でき、ユーザの要望に応えることができる(請求項1、2)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図を参照して、本発明を実施するための最良の形態および実施例を含む実施形態を説明する。実施形態および変形例等に亘り、同一の機能を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がないものは適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0022】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
第1の実施形態では、下地コンクリートの処理に係る下地処理工程と、下地コンクリート上にプライマー層を形成するプライマー処理工程と、硬化促進剤としてリチウムを含むシリカ系混合無機質からなるレジン水溶液と特殊モルタルと着色剤とを混練して混合着色特殊モルタルを得る混練工程と、混合着色特殊モルタルを所定の厚さで下地上に塗布するモルタル塗布工程と、混合着色特殊モルタルの表面および次工程で使用する型材に離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、混合着色特殊モルタルの半硬化状態時に、該混合着色特殊モルタルの表面に、型材を押し付けることにより所望の模様を形成する型材押し付け工程と、所望の模様が形成された混合着色特殊モルタルの表面に、粉体を混入した液状離型剤を塗布する粉体混入離型剤塗布工程と、粉体を混入した液状離型剤を塗布され所望の模様が形成された混合着色特殊モルタルの表面に、液状被覆剤を塗布する被覆剤塗布工程とを有する。
【0023】
以下、図3に示した従来の工程と同様の技術内容に関しては、上述しなかった技術内容についてその説明を補足するに留め、本実施形態に特有の技術内容を中心に説明する。
図1に示すように、第1の工程(I)で、ベース・施工面となる既存の下地コンクリート床面のひび割れは適宜補修を行い、またレイタンス(脆弱層)やほこり等は例えば砥石研磨や高圧洗浄等により除去を行い、さらに適宜、洗浄剤を併用しての洗浄等の下地処理を行う。この工程では、水を使用しての高圧洗浄等を行っても構わないが、次工程のプライマー処理のために、ある程度乾燥させる必要がある。
【0024】
第2の工程(II)では、清浄にされた下地コンクリートと次の第3の工程(III)における混合着色特殊モルタルとの接着を強化するためにプライマーを塗布する。プライマーは、例えばアクリル樹脂を主成分とするエマルジョンである。より具体的には、専用プライマー希釈液として、エバマイルドN(商品名:ハチヤ建材工業(株)製):水=1:2を作り、例えばスポンジローラまたは刷毛等の塗布手段に上記プライマー溶液を含浸させて、施工面(下地コンクリートの上面)に略均一に、溜まりのないように塗布する。
なお、寒冷時(4℃)以下の環境下では、プライマーは、第3の工程(III)で使用する本実施形態に特有の専用のレジン水溶液とセメントとをペースト状に混合したもの塗布するとよい。
以下、他の製造会社製の商品名であっても、ハチヤ建材工業(株)が代行店となっている場合には、説明の簡明化のため、単に「ハチヤ建材工業(株)製」というときがある。
【0025】
第3の工程(III)では、特殊モルタルとしての、例えば専用材料であるレイヤードXグラウト(商品名:ハチヤ建材工業(株)製)と、ベースの色合いを表現する着色剤としての、例えばレイヤードX専用トナー(商品名:ハチヤ建材工業(株)製)とをモルタルミキサ等に入れ、混練する。このときの混合比としては、レイヤードXグラウト1袋/25kgに対してレイヤードX専用トナー1袋/1kgの比率である。レイヤードXグラウトは、繊維質を含む専用プレミックスモルタルであり、硬化すると比較的割れにくい堅固な材料から構成されている。
さらに、硬化促進剤としてリチウムを含みシリカ系混合無機質からなるレジン水溶液としてのレイヤードXレジン(商品名:ハチヤ建材工業(株)製)を、前記混合材料に混入し、前記3つの材料を攪拌・混練して速硬化可能な混合着色特殊モルタルを得る。
ここで、「特殊モルタル」とは、セメント系または樹脂系等のペーストもしくはモルタルまたはこれらの混合物を意味する(以下、同様)。
【0026】
前記シリカ系混合無機質は、LiSiOが3.0〜5.5重量%、SiOが6.0〜14.0重量%、KCOが8.0〜16.0重量%、CaClが3.5〜6.5重量%、Alが3.0〜5.0重量%の混合物からなる。そして、前記レジン水溶液は、前記配合割合のシリカ系混合無機質とポリマー樹脂と水とを所定の割合で混合したものである。
レジン水溶液としてのレイヤードXレジンには、季節・環境条件に合わせて、夏用(15〜35℃)、春秋用(5〜17℃)、冬用(−2〜7℃)、極寒タイプ(−10〜−2℃)の4種類が設定されており、如何なる環境条件においても施工可能になっていることも一つの特徴となっている。
【0027】
レイヤードXレジンの物理・化学的性質としては、比重が1.3で、略中性:PH6.5のシリカ系混合無機質であり、かつ、水溶性である。取り扱いとしては、腐食性があるため、保護眼鏡、保護マスク、手袋等の保護具を着用し、通気の良い場所で作業を行う。
レイヤードXレジンは、前記混合成分の性質上、その混合成分が直ぐに分離・沈殿しやすいので、必ず乳白色ないし白濁色を呈するまで混ぜ合わせながら使用することが肝要である。
レイヤードXグラウト1袋に対してのレイヤードXレジン混合量の目安は、下表1のようである。なお、表1には、「レイヤード」という用語を省略して簡略化して記載している。
【0028】
【表1】

【0029】
この第3の工程(III)では、レイヤードXグラウト(特殊モルタル)と、レイヤードXレジン(レジン水溶液)との反応により、第6の工程(VI)におけるスタンプ作業可能な硬さまで速く(諸条件により変わるが、打設後1〜3時間位)硬化し、次工程でのスタンプ可能な硬化状態が長く続くという特性も有する。
ここでは、スタンプ作業可能な硬さまで速く硬化させるため、水の添加使用は厳禁としている。水を使用すると、レイヤードXレジン(レジン水溶液)の混合割合が崩れてしまうからである。水の使用禁止は、第3の工程(III)から第8の工程(VIII)の被覆剤塗布(トップコート塗布)まで厳守されなければならない。こうして、第3の工程(III)では、速硬化性(速凝結性)の混合着色特殊モルタルが得られる(材料混練工程)。
【0030】
次いで、第4の工程(IV)では、混合着色特殊モルタルを所定の厚さ(例えばトータルの厚さで3〜6mmの範囲で均一の厚さ)で、プライマー処理されたコンクリート上に均一に塗り付ける。この工程では、指触でプライマー処理された施工面の乾燥状態を確認後に、混合着色特殊モルタルを例えば「とんぼ」と呼ばれるへら状の作業具を用いて前記所定の厚さで均一の厚さになるように塗り付け・均す(モルタル塗布工程)。
【0031】
第5の工程(V)では、混合着色特殊モルタルの表面および次工程(VI)で所望の模様を施すために用いられる型材としてのゴム型(以下、「ゴムマット」というときがある)の模様転写面に、液体離型剤を散布・塗布する(離型剤塗布工程)。これにより、半硬化状態の混合着色特殊モルタルとゴムマットとの剥離を、転写すべき模様を崩すことなく、かつ、ゴムマットへの混合着色特殊モルタルの付着を防止してスムーズにゴムマットを剥がすことができる。
液体離型剤としては、例えば石油系溶剤や天然ガス系溶剤とアルコール系界面活性剤を混合させたリリースオイル(商品名:ハチヤ建材工業(株)製)と呼ばれる液体離型剤が好ましく用いられる。液体離型剤を散布するには、例えばドリームスプレーと呼ばれる専用散布機を使用すると効率的に作業を行える。
【0032】
次いで、第6の工程(VI)では、可撓性の弾性材である前記ゴムマットを施工面(液体離型剤を散布・塗布された混合着色特殊モルタル)上に押し付けるスタンプ作業を行って、所望の模様を形成する(型材押し付け工程)。
液体離型剤を散布・塗布された混合着色特殊モルタル層の半硬化状態時、換言すれば同層の締り具合を手等で触れて確認し、いわゆる中締り状態になった際に、ゴムマット押し付け成形が行われる。この時の液体離型剤を散布・塗布された混合着色特殊モルタル層の表面部の状態は、硬化前の比較的柔らかい状態であることが必要である。
【0033】
押しパターン型としては、図示しないが、扁平な板状をした可撓性型材が使用される。押しパターン型の転写面には、自然石模様、タイル模様、レンガ模様、木目模様等の凹凸状の転写模様が形成されている。押しパターン型は、上記したように、天然ゴム、シリコンゴム等のゴム材およびプラスチック材を主成分とする弾性体で形成されているものを適宜選択して使用するとよい。このような押しパターン型で液体離型剤を散布・塗布された混合着色特殊モルタル層の表面を押圧すると、型に応じた凹凸状の所望の模様が成形される。
【0034】
押しパターン型に弾性体のものを使用すると、混合着色特殊モルタル層の表面部への押圧時に、型の馴染みが良くなると共に、型を混合着色特殊モルタル層の表面部から剥がす際の離型性が良くなり、所望の模様を良好に成形することができる。所望の模様とは、型に形成された転写模様に対応する模様である。
押しパターン型は、上述した板状の可撓性型材に限らず、例えば転写模様を周面に形成されたローラ状の可撓性型材を用いても効率よく所望の模様を良好に成形することができる。以下、後述する第2の実施形態でも同様である。
【0035】
次いで、第7の工程(VII)では、所望の模様が形成された混合着色特殊モルタルの表面に、粉体を混入した液状離型剤を塗布する(粉体混入離型剤塗布工程)。
粉体を混入した液状離型剤の具体例としては、例えばハチヤ建材工業(株)製の、脂肪酸と顔料を主成分とする粉体状のリリースパウダー(商品名))を、石油系溶剤や天然ガス系溶剤とアルコール系界面活性剤を混合させた液状離型剤としてのリリースオイル(商品名)に混入したパウダー混入リリースオイルが挙げられる。
このパウダー混入リリースオイルの散布前に、スタンプ後の目地の仕上がりを確認しながらバリ等を除去する。この仕上げ後、パウダー混入リリースオイルを、例えばドリームスプレーを使用して、所望の模様が形成された混合着色特殊モルタルの表面に、散布・塗布する。
この工程により、混合着色特殊モルタル層の表面付近に、粉体混入離型剤層が形成され、これにより自然な濃淡が生まれ、仕上がりの色合いが決まり、色彩感あふれる質感および風合いを出すことができる。
【0036】
次いで、第8の工程(VIII)では、施工面、すなわち粉体を混入した液状離型剤を散布され所望の模様が形成された混合着色特殊モルタルの表面に、揮発性の液状被覆剤を塗布し、被覆剤層を形成する(被覆剤塗布工程)。
この被覆剤塗布工程までに到る時間(環境等の諸条件により異なるが長くても1日以内)には、混合着色特殊モルタルは略硬化している。混合着色特殊モルタルの略硬化状態では、その硬化した混合着色特殊モルタルの組織構造が水を完全に遮断する緻密な構造を有していることにより、下からの余剰水が上がるのを遮断するように作用するので、余剰水による白華現象を防止して、被覆剤塗布工程までをワンデイ(1DAY)で行うことが可能となる。
液状被覆剤は、第7の工程(VII)で形成された粉体混離型剤層の耐久性を高める機能を有する。この機能を得るには、例えば外装床の場合にはスタンプコート(商品名:ハチヤ建材工業(株)製)が、内装床の場合には水性クリアーシール(商品名:ハチヤ建材工業(株)製)がそれぞれ好適である。スタンプコートおよび水性クリアーシールは、共に溶剤系アクリル樹脂である。
第7の工程(VII)で形成された粉体混離型剤層(パウダー混入リリースオイル)が乾燥した後、ブロアー等で施工面上のゴミを除去した後、外装床の場合にはスタンプコートを、内装床の場合には水性クリアーシールを、例えばスポンジローラに含浸させて施工面に塗布する。
【0037】
上述したとおり、本実施形態によれば、図3を参照して説明した従来の問題点を解決して新規なコンクリートの成形方法を提供することができる。すなわち、本実施形態では、図3に示した従来のコンクリート成形方法に係るレイヤード工法と比較して、図3に示した第5の工程(V)の着色剤塗布工程を、図1に示したように、第3の工程(III)の材料混練でまとめて行うことができると共に、第3の工程(III)の上述した特有の材料混練で混合着色特殊モルタルの硬化時間の短縮化が図れ、かつ、図3に示した第9の工程(IX)の養生工程を実質的に減らすことができるので、実質的に2つの工程を減らすことができた。
換言すれば、本実施形態によれば、混合着色特殊モルタルの硬化時間の短縮化が図れるので、短時間で型材押し付け工程に進んでスタンプ作業を行える。また、硬化した混合着色特殊モルタルの部位で、下からの余剰水が上がるのを遮断する作用もあることにより、最終工程である被覆剤塗布工程でのトップコート仕上げまでの時間短縮も図れるので、ワンディ(1DAY)工法も可能となり、もって工期の大幅な短縮が図れ、これに伴い作業コスト等も大幅に低減でき、ユーザの要望に応えることができる。
さらに、レイヤード工法を用いたことに伴う従来技術の基本的な効果、すなわち、強度や防滑性などの機能性に優れ、しかも自然石模様やレンガ風あるいは木目調模様等のデザインを比較的簡単に施工できることにより、装飾・意匠的に卓越しているコンクリートの成形方法を提供できることは無論である(以下、同様)。
(第2の実施形態)
図2を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。
第2の実施形態では、下地コンクリートの処理に係る下地処理工程と、下地コンクリート上にプライマー層を形成するプライマー処理工程と、硬化促進剤としてリチウムを含むシリカ系混合無機質からなるレジン水溶液と特殊モルタルとを混練して混合特殊モルタルを得る混練工程と、混合特殊モルタルを所定の厚さで下地上に塗布するモルタル塗布工程と、混合特殊モルタルの半硬化状態時に、着色剤を混合特殊モルタルの表面に散布ないしは塗布することにより、着色された特殊混合モルタルを得る着色剤塗布工程と、着色された混合特殊モルタルの表面および次工程で使用する型材に離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、着色された混合特殊モルタルの半硬化状態時に、該着色された混合特殊モルタルの表面に、型材を押し付けることにより所望の模様を形成する型材押し付け工程と、所望の模様が形成され着色された混合特殊モルタルの表面に、粉体を混入した液状離型剤を塗布する粉体混入離型剤塗布工程と、粉体を混入した液状離型剤を塗布され所望の模様が形成され着色された混合特殊モルタルの表面に、液状被覆剤を塗布する被覆剤塗布工程とを有する。
【0038】
以下、図1に示した第1の実施形態と相違する点を中心に、第2の実施形態を説明する。第2の実施形態は、前記相違点以外は、第1の実施形態と同様である。
第1の相違点は、第3の工程(III)が、第1の実施形態では、リチウムを含むシリカ系混合無機質からなるレジン水溶液と特殊モルタルと着色剤とを混練して混合着色特殊モルタルを得る工程であるのに対し、第2の実施形態では、着色剤を混合せずに、リチウムを含むシリカ系混合無機質からなるレジン水溶液と特殊モルタルとを混練して混合特殊モルタルを得る工程である点にある。
第2の相違点は、第1の相違点に伴い、第1の実施形態では、着色剤塗布工程を有しておらず、工程が一つ短縮されているのに対し、第2の実施形態では、第5の工程(V)で、混合特殊モルタルの半硬化状態時に、着色剤を混合特殊モルタルの表面に散布ないしは塗布することにより、着色された特殊混合モルタルを得る着色剤塗布工程を有する点にある。
その他の相違点に関しては、第1の実施形態で用いた「混合着色特殊モルタル」という用語を、第2の実施形態では、第5の工程(V)以降において、「着色された混合特殊モルタル」という用語に言い替えればよい。以下、第2の相違点である第2の実施形態における第5の工程(V)を簡単に説明する。
【0039】
第5の工程(V)では、混合特殊モルタルの半硬化状態時に、着色剤を混合特殊モルタルの表面に散布ないしは塗布することにより、着色された特殊混合モルタルを得る(着色剤塗布工程)。
着色剤の具体例としては、ポルトランドセメント、同白色セメント、天然顔料、天然骨材等から構成されたスタンプハードナーEX(インクリート・システムズ(株)製:ハチヤ建材工業(株)代行店)と呼ばれるトナー粉が好ましく用いられる。これを、半硬化状態の比較的柔らかいうちの混合特殊モルタルの表面に散布して、金ごて等で略均一に均し、所望の色付けを行う。
【0040】
上述したとおり、本実施形態によれば、図3を参照して説明した従来の問題点を解決して新規なコンクリートの成形方法を提供することができる。すなわち、本実施形態では、図3に示した従来のコンクリート成形方法に係るレイヤード工法と比較して、図2に示したように、第3の工程(III)の上述した特有の材料混練で混合特殊モルタルの硬化時間の短縮化が図れると共に、図3に示した第9の工程(IX)の養生工程を実質的に減らすことができるので、実質的に1つの工程を減らすことができた。
換言すれば、本実施形態によれば、混合特殊モルタルの硬化時間の短縮化が図れるので、短時間で型材押し付け工程に進んでスタンプ作業を行える。また、硬化した混合特殊モルタルの部位で、下からの余剰水が上がるのを遮断する作用もあることにより、最終工程である被覆剤塗布工程でのトップコート仕上げまでの時間短縮も図れるので、ワンディ(1DAY)工法も可能となり、もって工期の大幅な短縮が図れ、これに伴い作業コスト等も大幅に低減でき、ユーザの要望に応えることができる。
【0041】
上述した実施形態等では、コンクリート成形方法に係るレイヤード工法について、本発明を主として室内外の床に適用した例で説明したが、これに限らず、例えば室内外の壁に応用してもよい。また、下地がコンクリート以外の樹脂製や、タイルないしは陶器製、あるいは金属製の室内外の床や壁にも準用可能である。
以上説明したとおり、本発明を実施例を含む特定の実施形態等について説明したが、本発明の構成は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、これらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るコンクリートの成形方法の工程図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るコンクリートの成形方法の工程図である。
【図3】従来例に係るコンクリートの成形方法の工程図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化促進剤としてリチウムを含むシリカ系混合無機質からなるレジン水溶液と、特殊モルタルと、着色剤とを混練して混合着色特殊モルタルを得る混練工程と、
前記混合着色特殊モルタルを所定の厚さで下地上に塗布するモルタル塗布工程と、
前記混合着色特殊モルタルの半硬化状態時に、該混合着色特殊モルタルの表面に、型材を押し付けることにより所望の模様を形成する型材押し付け工程と、
を有することを特徴とするコンクリートの成形方法。
【請求項2】
硬化促進剤としてリチウムを含むシリカ系混合無機質からなるレジン水溶液と、特殊モルタルとを混練して混合特殊モルタルを得る混練工程と、
前記混合特殊モルタルを所定の厚さで下地上に塗布するモルタル塗布工程と、
前記混合特殊モルタルの半硬化状態時に、着色剤を前記混合特殊モルタルの表面に散布ないしは塗布することにより着色された特殊混合モルタルを得る着色剤塗布工程と、
前記着色された混合特殊モルタルの半硬化状態時に、該着色された混合特殊モルタルの表面に、型材を押し付けることにより所望の模様を形成する型材押し付け工程と、
を有することを特徴とするコンクリートの成形方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のコンクリートの成形方法において、
前記シリカ系混合無機質は、LiSiOが3.0〜5.5重量%、SiOが6.0〜14.0重量%、KCOが8.0〜16.0重量%、CaClが3.5〜6.5重量%、Alが3.0〜5.0重量%の混合物からなることを特徴とするコンクリートの成形方法。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一つに記載のコンクリートの成形方法において、
前記下地が、コンクリートであり、
前記コンクリート上にプライマー層を形成するプライマー処理工程を有し、
前記モルタル塗布工程の前に、前記プライマー処理工程を行うことを特徴とするコンクリートの成形方法。
【請求項5】
請求項1記載のコンクリートの成形方法において、
前記モルタル塗布工程と前記型材押し付け工程との間に、前記混合着色特殊モルタルの表面および前記型材に離型剤を塗布する離型剤塗布工程を有することを特徴とするコンクリートの成形方法。
【請求項6】
請求項2記載のコンクリートの成形方法において、
前記着色剤塗布工程と前記型材押し付け工程との間に、前記液体により着色された混合特殊モルタルの表面および前記型材に離型剤を塗布する離型剤塗布工程を有することを特徴とするコンクリートの成形方法。
【請求項7】
請求項1記載のコンクリートの成形方法において、
前記型材押し付け工程の終了後に、所望の模様が形成された前記混合着色特殊モルタルの表面に、粉体を混入した液状離型剤を塗布する粉体混入離型剤塗布工程を有することを特徴とするコンクリートの成形方法。
【請求項8】
請求項7記載のコンクリートの成形方法において、
前記粉体混入離型剤塗布工程終了後に、所望の模様が形成された前記混合着色特殊モルタルの表面に、液状被覆剤を塗布する被覆剤塗布工程を有することを特徴とするコンクリートの成形方法。
【請求項9】
請求項2記載のコンクリートの成形方法において、
前記型材押し付け工程の終了後に、前記液体により着色され所望の模様が形成された前記混合特殊モルタルの表面に、粉体を混入した液状離型剤を塗布する粉体混入離型剤塗布工程を有することを特徴とするコンクリートの成形方法。
【請求項10】
請求項9記載のコンクリートの成形方法において、
前記粉体混入離型剤塗布工程終了後に、前記液体により着色され所望の模様が形成された前記混合特殊モルタルの表面に、液状被覆剤を塗布する被覆剤塗布工程を有することを特徴とするコンクリートの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−283607(P2007−283607A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112611(P2006−112611)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(593176357)ハチヤ建材工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】