説明

コンクリートの気泡低減振動機及び気泡低減方法

【課題】 本発明は、鋤板と型枠との間隔を調整することが容易で、コンクリート表面の気泡を低減できるコンクリート表面の気泡低減振動機を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、電動機を連結又は内臓する振動体と、鋤板と、この振動体と鋤板を連結する連結部とを有するコンクリート表面の気泡低減振動機であって、以下の条件、
ア)該鋤板が上記振動体の中心軸と外れる位置で接合した上記連結部を介して該振動体に連結していること、
イ)該鋤板が上記連結部の上記振動体との接合位置よりも上記振動体の中心軸に近づいていること、
ウ)該鋤板が上記振動体の中心軸と略平行であること、
を満たすコンクリート表面の気泡低減振動機である。更にスペーサーを有すると好適である。また、本発明は、上記の気泡低減振動機を未硬化のコンクリートの型枠近傍に挿入し、振動させることを特徴とするコンクリート表面の気泡低減方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未硬化のコンクリートに挿入して用いるコンクリート用振動機に関し、詳しくは、未硬化のコンクリートと型枠との界面近傍に生じた気泡を消失又は除去することで、硬化後のコンクリートの気泡、特に表面の気泡を低減するコンクリートの気泡低減振動機に関する。また、本発明は、未硬化のコンクリートの気泡を低減することで硬化後のコンクリートの気泡を低減するコンクリートの気泡低減方法に関し、詳しくは、未硬化のコンクリートと型枠との界面近傍に生じた気泡を消失又は除去することで、硬化後のコンクリートの気泡、特に表面の気泡を低減するコンクリートの気泡低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートを型枠に打ち込みコンクリート硬化体を製造する場合、多くは充填不良の防止の目的で振動機を用いて締め固めを行っている。この振動機には、大別して振動体を未硬化のコンクリートに挿入して用いる内部振動機と、振動体を未硬化のコンクリートに挿入せず型枠等を外部から振動させる外部振動機がある。これらの振動機を用いても、未硬化のコンクリートと型枠との界面に生じた気泡を充分に低減できず、硬化・脱型後のコンクリートの表面には気泡が多数存在し、この気泡はコンクリートの美観上及びコンクリートの中性化が進行しやすい等品質上好ましくない。この気泡を低減するための鋤板を有する振動機が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照。)。しかし従来提案されているコンクリートの気泡低減振動機では鋤板と型枠との間隔を調整することが困難で、鋤板と型枠が面で接触してしまい硬化後のコンクリート表面にこの接触の痕跡が大きく現れたり、鋤板と型枠とが離れすぎると気泡を低減できない等の問題が起ることあった。
【特許文献1】実開昭64−43150号公報
【特許文献2】実開昭64−26463号公報
【特許文献3】特開平11−107530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、鋤板と型枠との間隔を調整することが容易で、コンクリートの気泡、特に表面の気泡を低減できるコンクリートの気泡低減振動機を提供することを目的とする。また、本発明は、容易に硬化後のコンクリートの気泡、特に表面の気泡を低減するコンクリートの気泡低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、本発明は、以下の(1)又は(2)で表すコンクリートの気泡低減振動機、並びに(3)で表すコンクリートの気泡低減方法である。
(1)電動機を連結又は内臓する振動体と、鋤板と、この振動体と鋤板を連結する連結部とを有するコンクリートの気泡低減振動機であって、以下の条件、
ア)該鋤板が上記振動体の中心軸と外れる位置で接合した上記連結部を介して該振動体に連結していること、
イ)該鋤板が上記連結部の上記振動体との接合位置よりも上記振動体の中心軸に近づいていること、
ウ)該鋤板が上記振動体の中心軸と略平行であること、
を満たすコンクリートの気泡低減振動機。(2)更にスペーサーを有する上記(1)記載のコンクリートの気泡低減振動機。(3)上記(1)又は(2)の気泡低減振動機を未硬化のコンクリートの型枠近傍に挿入し、振動させることを特徴とするコンクリートの気泡低減方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、鋤板と型枠との間隔を調整することが容易であるので、コンクリートの気泡、特に表面の気泡を低減できるコンクリートの気泡低減振動機が得られる。本発明のコンクリートの気泡低減振動機を用いて得られるコンクリート硬化体は、コンクリートの気泡、特に表面の気泡が極めて少なく且つ鋤板と型枠との接触の痕跡がコンクリート表面に無い、中性化し難い等の品質及び美観の優れたコンクリート硬化体となる。このコンクリート硬化体は、仕上塗材を省略することもできる。また、本発明によれば、容易にコンクリートの気泡、特に表面の気泡を低減できるコンクリートの気泡低減方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のコンクリートの気泡低減振動機は、電動機を連結又は内臓する振動体と、鋤板と、この振動体と鋤板を連結する連結部とを有するコンクリートの気泡低減振動機であって、以下の条件、
ア)該鋤板が上記振動体の中心軸と外れる位置で接合した上記連結部を介して該振動体に連結していること、
イ)該鋤板が上記連結部の上記振動体との接合位置よりも上記振動体の中心軸に近づいていること、
ウ)該鋤板が上記振動体の中心軸と略平行であること、
を満たすコンクリートの気泡低減振動機である。本発明の気泡低減振動機に設ける電動機、振動体、鋤板及び連結部の数は、それぞれ単数でも複数でも良い。更にスペーサーを設けると好適である。
【0007】
本発明の気泡低減振動機に用いる振動体は、電動機を連結又は内臓する。振動体と電動機を連結する場合は、振動体と電動機を直結しても良いし、振動体と電動機の間にフレキシブルシャフトを介して連結しても良い。本発明に用いる振動体及び電動機は、JIS A 8610「コンクリート棒形振動機」に適合するものが好ましい。
【0008】
本発明の気泡低減振動機に用いる鋤板は、複数の孔を有す板が好ましい。鋤板正面から見た場合のこの設けてある孔の合計面積が鋤板の面積の20%〜80%であると、コンクリートの気泡、特に表面の気泡をより低減できるので好ましい。孔の大きさは特に限定されないが、コンクリート中の粗骨材の最大寸法以下が好ましく、コンクリート中の粗骨材が通らないがセメントや細骨材は通る程度の大きさがより好ましい。孔の形状は特に限定されず、鋤板正面から見て円形、多角形、楕円形、半円形及びこれらを組み合わせた形状等が例示できる。上記鋤板の形状は特に限定されないが、略平板であるのが好ましく、鋤板正面から見た場合形状が三角形,四角形,五角形等の多角形、楕円形、円形及びこれらを組み合わせた形状等が例示できる。上記鋤板の材質は特に限定されないが、例えばアルミニウム,鉄,ステンレス等の金属、樹脂、セラミックス等が例示できる。上記鋤板の大きさは特に限定されないが、長さはコンクリートの1回分の打設高さの0.3倍〜2.0倍の長さ、幅は5cm〜150cm、厚みは0.1cm〜1cmとするのが好ましい。
【0009】
上記鋤板は、上記振動体に、該振動体の中心軸と外れる位置で接合した連結部を介して連結している。連結部の大きさ及び材質は特に限定されない。連結部の形状は、上記鋤板が上記連結部の上記振動体との接合位置よりも上記振動体の中心軸に近づき且つ該中心軸と略平行にでき得る形状であれば、特に限定されない。ここで、上記振動体の中心軸と略平行云う意味には、該中心軸が上記鋤板上に在る場合も含まれ、上記振動体の中心軸と上記鋤板上のなす交角が10°以内であれば良く、好ましく平行とする。上記連結部の上記振動体との接合位置又は上記連結部は、本発明の気泡低減振動機をコンクリートに挿入する場合の目安となる。上記鋤板と上記連結部、上記振動体と上記連結部、或いは上記鋤板、上記振動体と上記連結部は、一体に成形されていても良い。
【0010】
本発明の気泡低減振動機には、スペーサーを設けていることが好ましい。該スペーサーは、上記鋤板と型枠の接触を防止する。該スペーサーの設置個所、個数、形状及び材質は特に限定されず、上記鋤板と型枠の接触を防止でき且つ上記鋤板と型枠との距離をコンクリート表面の気泡を低減でき得る距離の範囲内に調整できれば良い。該スペーサーは、上記鋤板、上記振動体及び連結部の何れに設置しても良い。上記連結部をスペーサーとしての機能を果たせるような形状・大きさにしても良い。
【0011】
本発明のコンクリートの気泡低減方法は、上記の気泡低減振動機を未硬化のコンクリートの型枠近傍に挿入し、振動させることを特徴とする。上記の気泡低減振動機は、未硬化のコンクリートの型枠近傍に挿入し、振動させることでコンクリートの型枠近傍の気泡を低減する。更に、該気泡低減振動機を振動させながら上下及び/又は左右にコンクリートの型枠近傍を動かすことで、コンクリートの型枠近傍の気泡をより一層低減する。上記電動機の振動が上記振動体に伝えられ、更に上記連結部を介して上記鋤板に伝えられる。この振動により、未硬化のコンクリートと型枠との界面近傍のコンクリートの気泡が、分散し気泡の大きさが小さくなる、比重差でコンクリート上面に移動し破裂する、又は鋤板の上下運動に伴いコンクリート上面より出て破裂する等により、低減するので、硬化・脱型後のコンクリートの気泡、特に表面の気泡を大幅に低減する。上記の気泡低減振動機を振動を開始する時期は、上記の気泡低減振動機を未硬化のコンクリートの型枠近傍に挿入する前でも後でも良く、特に限定されない。
【0012】
上記気泡低減振動機は、上記鋤板が上記振動体の中心軸とずれる位置で接合した連結部を介して該振動体に連結し、該鋤板が上記連結部の上記振動体との接合位置よりも該振動体の中心軸に近づき且つ該鋤板が該中心軸と略平行であるので、本発明の気泡低減振動機を未硬化のコンクリートの型枠近傍に挿入するとき、或いは振動させながら上下及び/又は左右にコンクリートの型枠近傍を動かすときに、上記連結部がもしも型枠と接触しても、上記鋤板は型枠と接触せずに型枠との距離を適正な範囲内に収めることができる。
【0013】
上記連結部の上記振動体との接合位置は、上記気泡低減振動機をコンクリートに挿入する場合の目安となり、上記気泡低減振動機を未硬化のコンクリートの型枠近傍に挿入するとき、或いは振動させながら上下及び/又は左右にコンクリートの型枠近傍を動かすときに、上記鋤板と型枠との距離を適正な範囲内に収めることができる。
【0014】
上記気泡低減振動機に上記鋤板と型枠の接触を防止するための上記スペーサーを設けていると、上記鋤板と型枠との距離を容易且つ確実に設定できるので、硬化後にコンクリート表面に鋤板と型枠との接触の痕跡が現れず、また鋤板と型枠とが離れすぎて気泡を充分に低減できないとういことも起こらずに、コンクリート表面の気泡を容易且つ確実に低減できる。
【実施例】
【0015】
図1、図2、図3、図4及び図5は、本発明のコンクリートの気泡低減振動機の一実施形態を示すそれぞれ模式的な正面図、背面図、左側面図、使用状態を示す断面図、左側面図の連結部近傍の拡大図及び斜視図である。このコンクリートの気泡低減振動機1は、電動機2と直結した振動体3、連結部4、多数の孔6を有す鋤板5(長さ120cm×幅20cm×厚み0.5cm)を備えている。本実施例では鋤板5と連結部4は、鉄板をプレス機により折り曲げ且つ多数の孔6及びボルト用孔8を打ち抜くことで一体に成形され、更にこの鉄板にゴム製薄板11を接着してある。連結部4と振動体3は、固定板12と連結部4により振動体3を挟みボルト13とナット14で固定してある。このことにより、鋤板5が、該振動体の中心軸7と外れる位置で接合した連結部4を介して振動体3に連結していることになる。ゴム製薄板11と振動体3の接触面が、連結部4の振動体3との接合位置9である。鋤板5は連結部4の振動体3との接合位置9よりも振動体3の中心軸7に近づき、且つ鋤板5は該中心軸7と平行である。このことにより、鋤板5と型枠16が接触し難い。連結部4は、気泡低減振動機1を未硬化のコンクリート15に挿入する場合の目安となる。また、本実施例では、ボルト13が鋤板5と型枠16との接触を防止するためのスペーサーである。鋤板5の先端10付近乃至中央付近にもスペーサーを設けると、更に鋤板5と型枠16との接触を防止できる。本実施例では、鋤板5正面から見た場合の孔6の合計面積が鋤板の面積の50%である。
【0016】
[コンクリートブロック作製試験]
未硬化のコンクリート15を型枠16内に打ち込み、長さ200cm×高さ100cm×幅50cmの直方体のコンクリートブロックを作製した。このとき、コンクリートの半分(長さ100cm×高さ100cm×幅50cm)のみに本発明の気泡低減振動機1をコンクリートが固まる前に振動させながら挿入し、型枠にボルトを接触させながら上下、左右に動かした。コンクリートの打ち込み7日後に脱型し、コンクリートブロック側面における気泡の占める面積の割合を、本発明の気泡低減振動機を用いた部分と用いなかった部分に分けて測定した。気泡の占める面積の測定は、透明なセロハン紙をコンクリートの側面に当て直径1mm以上の気泡を写し取った後、画像解析装置を用いて測定した。
【0017】
この結果、本発明の気泡低減振動機を用いなかった部分のコンクリートブロック側面における気泡の占める面積の割合が4.5%であったのに対し、本発明の気泡低減振動機を用いた部分のコンクリートブロック側面における気泡の占める面積の割合は0.8%であった。また、本発明の気泡低減振動機を用いた部分のコンクリートブロックの側面に、鋤板と型枠との接触の痕跡は無かった。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によれば硬化後のコンクリートの気泡、特に表面の気泡が大幅に低減したコンクリート硬化体を容易に作製できるので、美観及び品質の優れたコンクリート硬化体が得られる。本発明により得られたコンクリート硬化体は、特に打放しコンクリートを用いたコンクリート構造物に好適であるので、本発明は、打放しコンクリートを用いたコンクリート構造物の製造に、好適に用いることができる。また、本発明を用いて製造したコンクリート硬化体は、コンクリート表面の気泡が大幅に低減され且つ該気泡の大きさも小さいので、コンクリート表面を仕上塗材で仕上る場合に、コンクリート表面の気泡を補修材等で埋める工程を、省略又は軽減できる。したがって、本発明は、仕上塗材で仕上るコンクリート構造物の製造にも、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のコンクリートの気泡低減振動機の一実施形態を示す模式的な正面図である。
【図2】本発明のコンクリートの気泡低減振動機の一実施形態を示す模式的な背面図である。
【図3】本発明のコンクリートの気泡低減振動機の一実施形態を示す模式的な左側面図である。
【図4】本発明のコンクリートの気泡低減振動機の一実施形態の使用状態を示す模式的な断面図である。
【図5】図3に示す本発明のコンクリートの気泡低減振動機の一実施形態を示す左側面図の連結部近傍の拡大図である。
【図6】本発明のコンクリートの気泡低減振動機の一実施形態を示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 コンクリートの気泡低減振動機
2 電動機
3 振動体
4 連結部
5 鋤板
6 孔
7 振動体の中心軸
8 ボルト用孔
9 連結部4の振動体3との接合位置
10 鋤板5の先端
11 ゴム製薄板
12 固定板
13 ボルト
14 ナット
15 未硬化のコンクリート
16 型枠
17 保持ハンドル
18 保持ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を連結又は内臓する振動体と、鋤板と、この振動体と鋤板を連結する連結部とを有するコンクリートの気泡低減振動機であって、以下の条件、
ア)該鋤板が上記振動体の中心軸と外れる位置で接合した上記連結部を介して該振動体に連結していること、
イ)該鋤板が上記連結部の上記振動体との接合位置よりも上記振動体の中心軸に近づいていること、
ウ)該鋤板が上記振動体の中心軸と略平行であること、
を満たすコンクリートの気泡低減振動機。
【請求項2】
更にスペーサーを有する請求項1記載のコンクリートの気泡低減振動機。
【請求項3】
上記請求項1又は2の気泡低減振動機を未硬化のコンクリートの型枠近傍に挿入し、振動させることを特徴とするコンクリートの気泡低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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