説明

コンクリートの湿潤養生装置

【課題】打設後のコンクリートの養生のため、打設表面に散水を施す場合において、コンクリート表面を適切な湿潤状態に保つように適切に散水すること。
【解決手段】天井面に設置されトンネルの長手方向に延びる軌道3と、軌道3に沿って移動可能な移動体4と、コンクリートに向けて散水液を散水する散水装置5と、 移動体4
に設置され、前記コンクリートの水分量を計測する赤外線水分センサー7と、赤外線水分センサー7により、前記覆工クリートの湿潤状態を検知し、乾燥していると判定されると、散水装置5を作動させ、所定量散水した後に散水装置5の作動を停止させる散水装置作動制御手段Cとを備えるコンクリートの湿潤養生装置2。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリートの湿潤養生技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の構築工事、例えば、地山を掘削して形成された素堀トンネルの掘削面をコンクリートで被覆するトンネル覆工工事では、一般的にはまず素堀トンネルの掘削面にコンクリートを吹き付ける一次覆工を行う。そして、一次覆工後のトンネル内壁面をさらにコンクリートで被覆する二次覆工を行う。
【0003】
二次覆工では、トンネル内を移動可能な型枠(以下セントル)を用いて、コンクリートを被覆する。セントルは、一次覆工後のトンネル内に移動される。そして、固形化する前のコンクリートを、セントルと一次覆工後のトンネル内壁面との間へ流し込むコンクリート打設を行う。
【0004】
打設されたコンクリートは、硬化するまでの所定時間の間に外力が加わらないように、セントル内部で保護される。そして、硬化した後でセントルは外される。これを脱枠という。
【0005】
脱枠後、硬化したコンクリートの表面の品質を向上させるため、硬化したコンクリートの表面は、適度な湿潤状態に保つ必要がある。これをコンクリートの養生という。
コンクリートの養生のため、打設表面に散水を施し、水和反応を促進することがよく行われる。なお、この明細書でいう散水とは、噴霧及び液滴の少なくとも一方を含む水まきをいうものとする。
【0006】
トンネル内壁面の養生方法としては、例えば、次のような方法が周知である。
すなわち、複数の散水口が長手方向に形成された散水管をトンネルの長手方向に延びるようにかつトンネル内周面に沿って等間隔になるように複数配置し、前記散水管に高圧で水を送り込み、トンネル内壁面に向けて各散水管の散水口から散水するという方法である。
【0007】
また、散水管の配置形態としては、上記の他にトンネルの横断面形状に沿うように、例えばアーチ形状にされた複数の散水管をトンネルの長手方向に等間隔で配置するというものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−248398号公報
【特許文献2】特開2009−144321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、トンネルの場合には、側壁から天井面にかけてのアーチ状の散水作業となるため散水が不完全となり易かった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてされたものである。その解決しようとする課題は、打設後のコンクリートの養生のため、打設表面に再散水を施す場合において、再散水の管理(再散水を行う時期の決定支援、自動判定等)による乾燥防止ができるコンクリートの湿潤養生
装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る装置は、コンクリート構造物の構築工事で使用され、前記コンクリート構造物構築のための型枠に打設されたコンクリートの硬化後、当該硬化したコンクリートの表面の品質を向上させるためコンクリート表面を湿潤状態にして養生し、乾燥を防止するコンクリートの湿潤養生装置である。
【0012】
本装置は、コンクリート表面に向けて噴霧及び液滴の少なくとも一方を含む散水を行う散水装置と、前記コンクリート構造物の乾燥状態を非接触で検知する非接触検知手段と、この非接触検知手段により、前記コンクリート表面が湿潤状態より乾燥していると判定されると、前記散水装置を作動させ当該箇所に向け所定量散水した後、当該散水装置の作動を停止させる散水装置作動制御手段とを備えるコンクリートの湿潤養生装置である。
【0013】
また、前記非接触検知手段は、前記コンクリート構造物の長手方向において複数個固定して配置するようにしてもよい。
さらに、本装置は、軌道と、この軌道に沿って移動可能な移動体とを備える。移動体は、前記軌道上を滑走する滑走部と、この滑走部に支持されかつ前記散水装置を装備する散水装置装備部と、前記非接触検知手段と、を装備する。
【0014】
本装置によれば、軌道に沿って移動可能な移動体に非接触検知手段が設置されているので、軌道に沿って移動体を移動して、非接触検知手段によりコンクリートの湿潤量を計測する。そして、非接触検知手段によりコンクリート表面の乾燥箇所を検知すると、散水装置作動制御手段が、前記散水装置を作動させ、湿潤量が所定値より低い前記箇所に向け所定量の散水をした後、当該散水装置の作動を停止する。
【0015】
また、本発明のコンクリートの湿潤養生装置は、軌道と、この軌道に沿って移動可能な移動体とを備え、前記移動体は、コンクリート構造物の横断面の少なくとも上半部分の形状に沿って延伸するハンガーを備えるものであることが望ましい。
【0016】
さらにまた、前記非接触検知手段は、前記ハンガーの延伸方向に複数備えることができる。
加えて、前記非接触検知手段は、前記ハンガーの延伸方向に沿って移動可能に単数又は複数設置するようにしてもよい。
【0017】
さらに、前記非接触検知手段には、赤外線水分センサー、デジタルカラー判別センサー、光量センサー、蛍光体検出UV(紫外線)センサー、光沢判別センサー、カラー判別センサーのいずれかを含む。
【0018】
本発明は、コンクリートの湿潤養生方法でもある。
本方法は、型枠に打設されたコンクリート表面の硬化後、当該硬化したコンクリートの表面に沿って移動しながら前記コンクリートの表面に向けて噴霧及び液滴の少なくとも一方を含む散水を行い、前記コンクリート表面の乾燥状態を非接触検知手段で検知後、乾燥していると判断した場合に再度前記散水を実行するコンクリートの湿潤養生方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、養生に必要な水分の不足している箇所を非接触検知手段により連続的に検知することも可能である。そして、当該検知によって水分の不足している箇所に向けて散水装置により散水できるので、養生不足の箇所が無いか又は極めて少なくすることができる。つまり、セメントの水和反応に必要な水分が供給されるため、コンクリートの品
質向上を期待できる。よって、コンクリート表面において、ひび割れの発生を効率的に防止し易くなる。
【0020】
水分の必要な箇所にのみ散水をし、水分が既に十分な箇所には散水をしないことも可能である。または、散水の頻度を少なくすることが可能である。したがって、養生水の供給量が多過ぎることはない。このため、養生水が、例えばトンネルの天井から落下する量を低減することができる。この結果、余分な養生水により路盤の泥濘化を引き起こすことを抑制できる。また無駄な散水がないので、多量の水の確保を不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施例に係るコンクリートの湿潤養生装置の概略全体斜視図である。
【図2】図1の要部拡大縦断面図である。
【図3】図1の拡大横断面図である。
【図4】図1の要部拡大詳細斜視図であって、移動体がセントルから離れた状態を示す図である。
【図5】図4と同様、図1の要部拡大詳細斜視図であって、移動体がセントルから離れる前の状態を示す図である。
【図6】図4の要部拡大図である。
【図7】貯水タンクに貯水されている水がスプレーノズルから噴射されるまでの経路を説明するための図である。
【図8】図7の領域VIII部分の拡大図である。
【図9】図8の右側面図である。
【図10】図9の領域X部分の拡大図である。
【図11】赤外線水分センサーの計測システムを説明するための予備実験の構成図である。
【図12】モルタルの乾燥重量と赤外線水分センサーとの電圧変化を示す予備実験データを示す図である。
【図13】支持材に支持された軌道の移動する順序を説明するための最初の図であり、セントルの進行に伴って増設された支持材に軌道がまだ支持されていない状態を示す図である。
【図14】図13に連続する図であって、支持材に軌道が支持される直前の状態を示す。
【図15】図14に連続する図であって、支持材に軌道の先端が支持された状態を示す図である。
【図16】図15に連続する図であって、軌道が支持材に完全に支持され、移動途中の状態にあることを示す図である。
【図17】図16に連続する図であって軌道の移動が終了し、軌道の後端を支持材が支持している状態を示す図である。
【図18】散水を一端終了した後、養生に必要な水分の不足している箇所を検知して、散水するまでの手順を説明するためのフローチャート。
【図19】本発明の第2の実施例に係るコンクリートの湿潤養生装置の概略全体斜視図である。
【図20】図19の要部拡大図である。
【図21】ピニオン機構部の側面図である。
【図22】図21の矢印IIXII方向から見た図である。
【図23】図22の鳥瞰図である。
【図24】図23の矢印IIXIV方向から見た図である。
【図25】図21の要部拡大斜視図である。
【図26】散水終了後、養生に必要な水分の不足している箇所を検知して、散水するまでの手順を説明するためのフローチャートである。
【図27】赤外線水分センサーがハンガーに1つ設置された場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0022】
以下、本発明のコンクリートの湿潤養生装置の実施の形体(以下、実施形体)を添付した図面を参照して説明する。
【0023】
図1〜5は、二次覆工が行われコンクリートの硬化後、脱枠されたトンネル1及び当該トンネル1内に設置された本発明に係るコンクリートの湿潤養生装置(以下、湿潤養生装置)2のトンネル1内における設置状態を示す。
【0024】
トンネル1は、横断面の外縁が円弧形のいわゆる「かまぼこ形」トンネルである。
【0025】
図1及び2に正対して右側が、素堀トンネルの形成側であり、その側に図示しない掘削装置を設置し、図1及び2の右側に掘削装置は進行する。掘削装置に続いて、セントルSは路盤上に走行可能に設置され自走する。またセントルSは湿潤養生装置2を牽引する。
【0026】
<湿潤養生装置2>
湿潤養生装置2は、セントルSの進行方向と反対の方向に向けて延びる軌道3と、軌道3に沿って移動可能な移動体4と、移動体4に設置され覆工のためのコンクリート(以下覆工コンクリート)に向けて散水する散水装置5と、同じく移動体4に設置され、覆工コンクリートで被覆されたトンネル内壁面の湿潤状態を計測する非接触検知手段である赤外線水分センサー7と(図3参照)、赤外線水分センサー7により、当該湿潤状態より乾燥していると判断した場合、散水装置5を作動させ、そこから所定量散水した後に散水装置5の作動を停止させる噴霧装置作動制御手段Cとを構成部材として有する。
以下、湿潤養生装置2のこれら構成部材について詳しく述べる。
【0027】
<軌道3>
軌道3は、この実施形体では、I形鋼を複数直列に連結して構成されたものであり(図1、2、4及び5参照)、支持材6によってトンネル1の内壁面11のうち天井面11c(覆工クラウン部ともいう)に設置される(図8〜10参照)。また軌道3は、単に天井面11cに設置されるだけではない。支持材6により、天井面11cに懸架された状態で、トンネル長手方向に自在に移動できるようになっている(図13〜17参照)。
【0028】
トンネル内における軌道3の移動を掘削装置の進行に合わせて可能にするために、支持材6は、掘削装置に牽引されるセントルSの進行に伴って、その進行方向に増設される。そして、複数の支持材6により支持された状態で、軌道3は天井面11c沿いに滑走可能になる。
【0029】
支持材6は、図8〜10に示すように、トンネル天井面11cに垂下された状態で取り付けられる取り付け部61と、取り付け部61とその下方に位置して一体化され、軌道3を滑走自在に懸架する軌道懸架用滑車部62とを備える。
【0030】
なお、支持材6は、軌道3及びこの軌道3上を移動する移動体4並びにそれらの付属品の重量を支持できれば十分である。付属品としては、例えば後述する送水ホース、電気ケーブル等を挙げられる。
【0031】
取り付け部61は、埋め込みアンカー611と、埋め込みアンカー611により天井面11cに固定される固定部612と、固定部612に対して取り付けられ、軌道懸架用滑
車部62を揺動可能に下垂するための揺動支軸613とを有する。
【0032】
軌道懸架用滑車部62は、揺動支軸613の両端に揺動自在に対向状態で下垂された一対の下垂板621と、各下垂板621の対向面にそれぞれ取り付けられた一対の滑車622と、各滑車622を下垂板621に回転自在に取り付ける回転軸621aとを有する。
【0033】
下垂板621は、矩形板材であり、矩形の長辺が軌道3の長手方向に向けて取り付けられている(図10参照)。そして、一対の滑車622は、下垂板621にその長手方向において直列状態で配置されている。また、各下垂板621の滑車622は、相互に他方の下垂板621の滑車622と同軸上に位置する。すなわち滑車622は、軌道懸架用滑車部62に合計4つ備えられている。
【0034】
そして、軌道3を形成するI形鋼の上フランジ31の下面31aを、これら4つの滑車622で下方から片側2つずつI形鋼のウェブ33を境に当接する(図8,9,10参照)。これにより、軌道3が支持材6に可動状態で支持される。なお、I形鋼の前記上フランジ31に対する下フランジを符合32で示す(図8、10参照)。
【0035】
<移動体4>
移動体4は、軌道3上を滑走する滑走部41と、滑走部41に支持されかつ散水装置5を装備する散水装置装備部42と、散水装置装備部42に設置されている赤外線水分センサー7とを装備する(図9参照)。
【0036】
滑走部41は、軌道3の前記下フランジ32の上面32aに当接した状態で取り付けられるトロリーを有する(図9、10参照)。
トロリーは、駆動装置を有する電動トロリー411と、電動トロリー411から軌道3の長手方向に所定の間隔を空けて配置されている従動車としてのプレーントロリー412とを含む(図2,6及び9参照)。なお、散水装置装備部42にふらつきが無く安定して移動できれば、トロリーは、電動トロリー411のみでもよい。
【0037】
両トロリー411,412の違いは、駆動モータの有無の違いでしかない。
したがって、電動トロリー411のみについて説明し、プレーントロリー412のうち電動トロリー411と同一箇所には同一符合を付して、プレーントロリー412の説明は省略する。
【0038】
電動トロリー411は、図6,8,10からわかるように、軌道3を間に挟んで対峙する一対の基板411aと、当該一対の基板411aを一体化する連結軸411bと、各基板411aの対向面に取り付けられた一対の滑車411dと、片側の基板411aに取り付けられた駆動モータ411fと、駆動モータ411fと対向する側に設置されかつ電動トロリー411の駆動制御を行う制御板413とを有する。
【0039】
なお、基板411aのうち、滑車411dの取り付けられる対向面を内側面といい、滑車411dの取り付けられていない側の面を外側面という。
【0040】
基板411aは、矩形板材であり、矩形の長辺が軌道3の長手方向に向けて取り付けられている(図10参照)。そして、基板411aの一方(内側)の面には、前記一対の滑車411dが、基板411aの長手方向に直列状態で配置され、かつ回転軸411cにより回転自在に取り付けられている(図10参照)。また、各基板411aの滑車411dは、相互に他方の基板411aの滑車411dと同軸上に位置する。つまり滑車411dは、電動トロリー411に合計4つある。
【0041】
連結軸411bは、前記一対の基板411aの下方部でかつ当該基板411aの幅方向中央に位置する(図10参照)。
そして、軌道3の前記下フランジ32の上面32aと、これら4つの滑車411dが片側2つずつI形鋼のウェブ33を境に当接した状態で、電動トロリー411が軌道3に設置される(図8,10参照)。
【0042】
駆動モータ411fの駆動力は、駆動モータ411fの図示しない駆動軸から同じく図示を省略した伝達ギヤを介して、4つある滑車411dのうち駆動モータ411fの位置する側にある2つの滑車411dに伝達される。そして、制御板413により駆動モータ411fは正転及び逆転し、移動体4が軌道3上を任意の設定時間、往復移動できるようになっている。また、その間に散水装置5は散水するようになっている。散水装置5による散水は、図示しない散水コントローラによって行われる。
【0043】
なお、このような自動設定に限らず、手動により移動体4を移動し、そこで散水できるようにしてもよい。自動設定と手動設定とを選択し現場の状況に合わせて対応できるようになっていることが好ましい。
【0044】
前記散水装置装備部42は、電動トロリー411及びプレーントロリー412の各連結軸411bに回転自在に垂下された一対の下垂ロッド44にその下端で取り付けられる。
散水装置装備部42は、散水装置5と赤外線水分センサー7とを装備し、かつ電動トロリー411及びプレーントロリー412に垂下できるようになっていればその形態は問わない。この実施形態では、軌道3の長手方向に延びる形状体とされている(図6参照)。
【0045】
電動トロリー411への電力供給用の電源をセントルに設け、この電源から図示しない電気ケーブルを介して、電動トロリー411やその他の電力の必要な箇所に電力が供給される。
【0046】
<散水装置5>
図6及び9からわかるように、散水装置装備部42に装備される散水装置5は、散水装置装備部42の長手方向のうちセントル側に設置されている。
そして、図3,4,8等からわかるように、散水装置5は、トンネル横断面の少なくとも上半部分の形状に沿って円弧形状に延伸するハンガー51と、このハンガー51の延伸方向に等間隔で備えられる多数の散水ノズル部52とを有する。
【0047】
ハンガー51は、鉛直方向において、軌道3と散水装置装備部42との間に位置し、軌道3の上方からの平面視で軌道3及び散水装置装備部42と直交するように配置されている。
【0048】
また、図7に示すように、ハンガー51には、その延伸方向に延びる中心線(図示せず)上に散水管511が、図示しない固定バンド等の取り付け手段によって設けられている。散水管511の長手方向には、散水ノズル部52を等間隔で多数点在して設けてある(図6〜8参照)。
【0049】
散水ノズル部52は、図8に示すように、ノズル52aと、ノズル52aに対して散水液を供給するパイプ体52bと、を有する。そして、少なくともパイプ体52bは、伸縮自在でかつ形状変化可能な蛇腹状をした塩化ビニル樹脂素材等からなる管体である。
【0050】
散水ノズル部52は、連結管511aを介して、散水管511に取り付けられる。この散水ノズル部52からトンネル内壁面11に向けて、散水液として、例えば、水や水を主成分とする被膜養生剤を挙げられる。
【0051】
また散水管511には、その中央部に、後述する貯水タンク8から水を供給するための送水ホース9を連結する連結部512が設けられている(図8参照)。
さらに図7に示すように、送水ホース9の途中には、水ポンプ91が介在されている。水ポンプ91によって、散水管511に水が高圧で送り込まれる。
【0052】
散水管511に向けて高圧で送り込まれた水は、連結部512で分岐し、散水管511を左右に分かれる。その後、水は、ハンガー51の両側に向けて延びる散水管511を経由し、散水管511に取り付けられている散水ノズル部52から勢いよく散水される。散水された水には、霧状の比較的粒径の小さいものから、比較的大きな粒径の液滴も含む。
【0053】
<非接触検知手段>
加えてハンガー51には、その延伸方向に、すなわちトンネル横断面の内壁の内周方向に等間隔で、前記赤外線水分センサー7が複数個備えられている(図1、3〜8参照)。当該赤外線水分センサー7の個数は、トンネル横断面の形状に合わせて万遍なく赤外線を照射できるに十分な数である。この実施例では、3個の赤外線水分センサー7が、ハンガー511の略中央及び左・右の側にそれぞれ一つずつ取り付けられている。また、各センサー7のトンネル内壁面11からの距離は一定に保たれている。
【0054】
非接触検知手段として赤外線水分センサーを適用するのは、水分は、赤外線を吸収する性質を有するからである。つまり水分を含む対象物であるトンネル内壁面に赤外線を照射すると、赤外線が水分に吸収される。このため、そのときの反射波の強さを計測することで、トンネル内壁面に含まれている水分の状態を測定できるのである。
【0055】
図11は、トンネル内壁面の一部といえるモルタル供試体100を用いたモルタルに含まれる湿潤量(以下、特に断らない限りモルタルの「重量」という)を赤外線水分センサーの電圧変化で調べるための実験用計測システムである。赤外線水分センサー7から赤外線を照射した場合に、時間経過と共に反射波の強さがどのように変化するかを見ている。モルタル供試体100は、電子秤102に載せられ、計測用のパーソナルコンピュータ(計測PC)104にデータを送信する。
【0056】
データロガー70は、赤外線水分センサー7と共に使用し、赤外線水分センサー7の検知(受光)した赤外線信号(受信波)を電圧や電流などの電気信号に変換し、散水装置作動制御手段Cに出力する。
【0057】
また、図12は当該システムを用いた結果を表すものであり、縦軸左側にモルタル重量を、同右側に電圧を、そして、横軸に時間をとってなる、乾燥重量と赤外線水分センサーの電圧変化とを時間経過と共に示す図である。なお、この場合の時間とは、コンクリート(又はモルタル)を打込んでからの養生期間である材齢を意味する。
【0058】
図12において、グラフVは電圧を示し、グラフWは重量を示す。これらのグラフからわかることは、時間の経過と共にモルタル供試体に含まれる水分が蒸発するため、モルタル供試体の重量が低下していることと、モルタル供試体に含まれる水分が少ないほどモルタル供試体による赤外線の吸収量が少ないため、赤外線水分センサーの赤外線受信波から検出される電圧が低い値を示すことである。
【0059】
よって、赤外線水分センサー7によるコンクリート湿潤状態の把握が電圧の変化から可能なことを示唆する。また、モルタル供試体100の重量の減少が長く続くのに対し、赤外線受信波の電圧変化は早い段階で定常状態になるこがわかる。これは、モルタル供試体100の表面部の湿潤量が早い段階で定数状態になるからであり、表面部の湿潤状態の変
化を精度良く捉えていることを示唆する。
【0060】
<散水装置作動制御手段C>
散水装置作動制御手段Cは(図11、図3〜5参照)、パーソナルコンピュータ(以下「PC」)と散水装置5の散水コントローラ(共に図示せず)とを組み合わせた装置を意味する。そして、赤外線水分センサー7の受光赤外線を検出してデータロガー70からの電気信号をPCが検知し、トンネル内壁面に含まれている湿潤状態が、所定値(しきい値)よりも低い箇所があることを判別すると、散水コントローラが作動して、水ポンプ91(図7参照)により散水管511に水が高圧で送り込まれる。
【0061】
その結果、当該高圧で送り込まれた水は、連結部512から分岐し、ハンガー51の両側に向けて延びる散水管511を経由して、散水管511に取り付けられている散水ノズル部52から勢いよく散水される。なお、湿潤状態の所定値(しきい値)とは、例えば、赤外線受信波の電圧変化が定常状態の場合を挙げられる(図12参照)。
【0062】
<その他>
セントルSには、散水装置5に対して供給する散水用の水を蓄えておく前記貯水タンク8と、前記送水ホース9及び電気ケーブルを収納するホース収納空間10とを有する(図2〜5参照)。なお、図面では、便宜上、送水ホースに電気ケーブルを合わせたものを送水ホース9として示した。
【0063】
タンク8は、セントルSの下部に設置され(図4、5)、ホース収納空間10は、セントルSの上部空間のうち軌道3とセントルSとが交叉する箇所に確保されている(図2参照)。
そして、軌道3のうち、セントル側の端部には、送水ホース9を一定のピッチで支持すると共に移動体4の移動に合わせて軌道3上を滑走するホース支持用貨車13を複数備える(図2,4及び5参照)。
【0064】
ホース支持用貨車13は、ホース9を係止することができ、かつその状態で、軌道3であるI形鋼の下フランジ32を滑走できるものであれば、どのような構造であっても構わない。例えば、プレーントロリー412のような滑走手段の下端部に送水ホース9を通す輪状の係止部を備えたものが考えられる。
【0065】
ホース支持用貨車13を一定のピッチで送水ホース9に取り付けると、送水ホース9は、図2,4及び5に示すように、蛇腹状をしたアコーディオン形態となって移動体4の移動に合わせて軌道3に沿って伸縮する。
【0066】
また、ホース支持用貨車13は、送水ホース9と共に前記電気ケーブルを係止する。このようにすることで、電気ケーブルも送水ホース9と同様、アコーディオン形態となって移動体4の移動に合わせて軌道3に沿って伸縮する。
【0067】
なお、図1、3〜5に示される符号92が示唆するものは送風管である。送風管92は、トンネル1内に外気を導入して換気するための管である。送風管92は、トンネル1内をその天井面11cの近傍に設置され、トンネルの長手方向に延びている。
【0068】
<作用・効果>
次にこのような構成の実施例1に係る湿潤養生装置2の作用効果について述べる。
I形鋼が複数本直列に連結されてなる軌道3は、トンネル1の天井面11cに設置された多数の支持材6に滑走自在に懸架される。そして、軌道3の移動範囲は、当該支持材6がトンネル1内に設けられている範囲である。
【0069】
軌道3が支持材6により支持される状態を図13〜図17を参照して説明する。なお、図13〜図17は、一本の支持材6に対する軌道3の状態を例示的に示すが、既述の通り軌道3は複数の支持材6によって支持されている。
【0070】
図13には、セントルSの進行に伴って増設された支持材6に軌道3がまだ支持されていない状態を示す。
図13に示した支持材6に向け、セントルSに牽引された軌道3が、徐々に近づいて行き、支持材6に軌道3が当接する直前の状態に至る(図14参照)。
【0071】
その後、軌道3の先端が支持材6に支持される(図15参照)。
そして、軌道3は支持材6に完全に支持され、さらに矢印方向に移動する(図16参照)。
【0072】
軌道3の進行が終了すると、支持材6は軌道3の後端を支持する(図17参照)。
軌道3が停止した状態において、換言すればセントルSが停止している状態において、移動体4は、軌道3の長さ範囲で移動する。
また、支持材6は、セントルSの進行に伴い、その進行方向に増設される。よって支持材6の増設範囲は拡大する。
【0073】
移動体4の軌道3における移動に伴い、移動体4に設置されている散水装置5から覆工コンクリート1の内壁面11に向けて散水する。そして、散水装置5に含まれるハンガー51は、既述のようにトンネル横断面の上半部分の形状に沿った円弧形状をしており、ハンガー51には多数の散水ノズル部52が等間隔で備えられている。よって、軌道3上を移動体4が移動している間に散水すると、移動体4の移動した領域では、覆工コンクリートで覆工されたトンネル内壁面11が湿潤される。
【0074】
さらにハンガー51がトンネル1の横断面の上半部分の形状に沿った円弧形状をしているため、ハンガー51に取り付けられる多数の散水ノズル部52もトンネル1の横断面の上半部分の形状に沿って円弧形状に配置されるようになる。よって、トンネル横断面の形状に合わせて散水できるため、トンネル横断面を十分湿潤できる。
【0075】
上記湿潤の終了後、再度軌道3に沿って移動体4を移動し、散水箇所に漏れがないか否かを調べる。
図18のフローチャートを参照して説明する。
軌道3に沿って移動体4を移動する(S1)。
【0076】
赤外線水分センサー7によりコンクリートで被覆されたトンネル内壁面11の湿潤状態を検知する(S2)。
【0077】
赤外線水分センサー7により、赤外線を照射した箇所の湿潤状態より乾燥しているか否かを検知する(S3)。
【0078】
S3で肯定判定した場合は、散水装置作動制御手段Cが、散水装置5を作動させ散水する(S4)。反対に、否定判定した場合は、散水せずに、移動体4の移動により、赤外線水分センサー7による検知を続行する(S1)。
【0079】
散水後、散水を止める(S6)。
本実施例にあっては、覆工場所の壁面に沿って設置される軌道3に沿って移動可能な移動体4にハンガー51を介して赤外線水分センサー7を複数設置してある。したがって、
軌道3に沿って移動体4を移動すれば、赤外線水分センサー7によりコンクリートで被覆されたトンネル内壁面11の湿潤状態を広範囲に検知できる。そして、赤外線水分センサー7により、湿潤量が所定値より低い箇所を検知すると、散水装置作動制御手段Cが、散水装置5を作動させ、所定量(所定時間の例えば数秒間)散水した後、散水装置5の作動を停止するので、コンクリート表面を自動的に十分な湿潤状態にすることができる。この結果、脱枠後、硬化したコンクリートの表面の品質を向上させることができる。
【0080】
なお、電源はセントルSに設置したものを例示したが、電動トロリー駆動用の充電池等を移動体4に搭載し、そこから電源を供給するようにしてもよい。
またトンネル横断面の形状に合わせて万遍なく赤外線を照射することができるに十分な数を設置するのが理想的であるが、赤外線水分センサー7の設置数は必要な検出精度に応じて適宜決定すればよい。
【0081】
以上より、実施例1に係るコンクリートの湿潤養生装置2によれば、打設後のコンクリートの養生のため、打設表面に散水を施す場合において、少なくとも散水を要する箇所を検出した上で散水することができる。
【0082】
なお、上記実施例では、赤外線水分センサーをトンネルの長手方向に移動させることで、コンクリートの湿潤状態を検出し、打設後のコンクリートの養生のため、打設表面に再散水を施す場合について記述したが、赤外線水分センサーをトンネルの長手方向に移動させることをせずに長手方向に複数固定して設置し、当該設置した箇所を計測することでも対処可能である。例えば、軌道3及び移動体4を設けることなく、既述の赤外線水分センサー7を複数設置したハンガー51をトンネルの長手方向に固定配置すればよい。配置する間隔は等間隔でもよいが、例えば水分管理の精度が要求される場所に細かく配置し、精度が要求されない場所に粗く配置してもよい。
【0083】
また、極めて簡略化する例示として赤外線水分センサー7を1個のみトンネル内壁の代表点に設置するようにしてもよい。また、代表点にハンガー51を1個固定設置してもよ
い。どこを代表点とするかについては、例えば経験的に最も乾き易いと推定される位置、あるいは、乾き易さが、トンネル内の平均的な値となる位置、最も乾き難い位置等、適宜選定すればよい。
【実施例2】
【0084】
図19〜27を用いて実施例2を説明する。
実施例2に係るコンクリートの湿潤養生装置2Aが実施例1のそれと相違する点は、赤外線水分センサー7を、ハンガー51とは別のハンガー80に設置し、ハンガー51を軌道に沿って移動した後にハンガー80を軌道に沿って移動することで、赤外線水分センサー7をトンネルの長手方向に移動させる点と、赤外線水分センサー7をハンガー80の延伸方向に沿っても移動させる点とにある。赤外線水分センサー7の両移動の実行により、赤外線水分センサー7が面的な動きをする。
【0085】
ハンガー80はハンガー51の後方に位置する。後方とは、トンネルの掘削方向に対して反対側のトンネル入り口側をいう。よって、図19では、図19に正対して左側が、素堀トンネルの形成側であり、当該側に図示しない掘削装置を設置し、当該方向に掘削装置は進行する。掘削装置に続いて、セントルS(図示せず)は、路盤上に走行可能に設置され自走する。またセントルSは、その後方に位置する湿潤養生装置2Aを牽引する。
【0086】
なお、説明の便宜上、ここでいうハンガー51とは、実施例1のハンガー51から赤外線水分センサー7を取り外した状態のものをいうことにし、実施例1と同じ構成部材には実施例に付したと同一の符号を付けて説明を省略する。
【0087】
ハンガー80のハンガー51との相違点は、ハンガー80には赤外線水分センサー7が一対設けられている点、当該一対の赤外線水分センサー7がハンガー80上でその延伸方向に沿っても移動するようになっている点にある。
【0088】
図19、20に示すように、ハンガー80には赤外線水分センサー7を設けてある。
また、図20及び21に示すように、ハンガー80はI形鋼で形成されており、ハンガー51と同様トンネル横断面の少なくとも上半部分の形状に沿った形状(円弧形状)をしている。さらに、ハンガー80の下フランジ81の下面81aには、当該下面81aに沿ってラックギヤ部83が形成され、ハンガー80全体でラックレールの形体を成している。なお、下フランジ81の下面81aに対し、同上面を符号81bで示す。
【0089】
そして、ラックギヤ部83と噛合するピニオン70を有するピニオン機構部700に赤外線水分センサー7を搭載し、ピニオン機構部700と共に赤外線水分センサー7をハンガー80に沿って移動させるようになっている。この実施例2では、一対のピニオン機構部700にそれぞれ赤外線水分センサー7を搭載したものを示した。よって、一対のピニオン機構部700は、それぞれハンガー80の右半分及び左半分を移動するようになっている。
【0090】
ピニオン機構部700は、図21〜25からわかるように、ハンガー80のラックギヤ部83を間に挟んで対峙する一対の基板71a・71bと、当該一対の基板71a・71bを一体化する連結軸72と、各基板71a・71bの対向面における上部に取り付けられた一対一組の滑車73を二組と、一方の基板71aに取り付けられた駆動モータ74と、他方の基板71bに取り付けられ駆動モータ74と同一軸線上に設置されかつピニオン機構部700の駆動制御を行う制御板75とを有する。また、連結軸72の中央部には、前記ピニオン70が固着されている。さらに連結軸72は、駆動モータ74の回転軸741と連結されている。
【0091】
なお、基板71a・71bのうち滑車73の取り付けられる対向面を内側面といい、滑車73の取り付けられていない側の面を外側面という。
そして、基板71bの外側面に赤外線水分センサー7が取り付けられている。また滑車73は、ハンガー80の下フランジ81の上面81bに当接する。当該当接状態でピニオン機構部700が、その基板71a・71bを介して、ハンガー80に垂下された状態になる。
【0092】
基板71a・71bは、上下方向に長めの略矩形な板材である。そして、基板71a・71bの各内側面には、それぞれ前記一対の滑車73が、ピニオン機構部700の移動方向に直列状態で配置され、かつ回転軸73aにより回転自在に取り付けられている。また、各基板71a・71bの滑車73は、相互に他方の基板71b・71aの滑車73と同軸上に位置する。つまり滑車73は、ピニオン機構部700に合計4つある。
【0093】
そして、ハンガー80の前記下フランジ81の上面81bに対してこれら4つの滑車73が片側2つずつI形鋼のウェブ82を境にして当接した状態で、ピニオン機構部700がハンガー80に設置される(図21〜25参照)。
【0094】
駆動モータ74の駆動力は、駆動モータ74の回転軸741から連結軸72を経由してピニオン70に伝達され、ピニオン70が回転する。そして、制御板75により駆動モータ74は正転及び逆転し、ピニオン機構部700がハンガー80上を往復移動できるようになっている。
【0095】
またその移動中に、赤外線水分センサー7からトンネル内壁面11に向けて赤外線Iが照射される(図20参照)。そして、トンネル内壁面の湿潤状態を検知し、コンクリート表面が乾燥状態にあると判定した場合には散水装置作動制御手段Cが、そこへ散水装置5を備えた移動体4を移動し、移動後、そこで散水装置5による散水が実行される。その後、所定量(例えば数秒間)を散水した後は、散水装置作動制御手段Cが散水装置5の作動を停止させる。
【0096】
なお、自動設定に限らず、手動により移動体4を移動し、そこで散水できるようにしてもよい。自動設定と手動設定とを選択し現場の状況に合わせて対応できるようになっていることが好ましい。
【0097】
ハンガー80自体の軌道3上での移動は、散水装置装備部42の電動トロリーと同じ型の電動トロリー411によって実施される。なお、プレーントロリー412は設けられていない。
【0098】
<作用・効果>
養生に必要な水分の不足箇所を検知して、散水するまでの手順を図26のフローチャートを参照して、説明すると次のようになる。
赤外線水分センサー7を備えたハンガー80を移動させるため、ハンガー80を備えた移動体4を軌道3に沿って移動する。(S1)。
【0099】
当該移動体4の移動に伴って、赤外線水分センサー7を装備した一対のピニオン機構部700をハンガー80に沿ってそれぞれ移動し、当該移動中に赤外線水分センサー7によりコンクリートで被覆されたトンネル内壁面11の湿潤状態を検知する(S2)。
【0100】
一対のピニオン機構部700にそれぞれ装備されている赤外線水分センサー7のうちいずれか一方の赤外線水分センサーにより湿潤状態よりも乾燥していると検知されたか否かを判定する(S3)。つまり、散水による養生が必要であるか否かを判定する。肯定判定したらS4に進み、否定判定したら処理を終了する。
【0101】
S3で肯定判定したら、S3で検知した箇所にまで散水装置装備部42を移動させる。そのために軌道3上を移動体4が移動し、移動後は、散水装置装備部42の散水装置5から散水が実行される(S4)。
【0102】
その後、散水装置5の作動を停止して、散水を止める(S5)。
【0103】
赤外線水分センサー7による検知によって、トンネル内壁面の水分が不足している箇所に向けて散水装置5により散水できる。従って、養生不足の箇所を極めて少なくすることができる。この結果、脱枠後、硬化したコンクリートの表面の品質を向上させることができる。なお、非接触での計測となるため、コンクリート中に異物は混入しない。
【0104】
しかも、水分の必要箇所であると検出された箇所に散水をし、水分が既に十分であると検出された箇所には散水をしないことも可能である。または散水の頻度を少なくすることが可能である。したがって、養生水の供給量が多過ぎることはない。このため、養生水が例えばトンネルの天井から落下する量を低減できる。この結果、余分な養生水により路盤の泥濘化を引き起こすことを抑制できる。
【0105】
さらに、レールを取り付けて赤外線センサーを当該レールに沿って移動させることに
より、面的に水分量を確認することが可能である。そして、しきい値によって、散水の自動運転化が考えられる。
【0106】
さらにまた温度計や湿度計を併用することによって、これらも自動計測することが可能になる。
加えて、ネットワーク回線を利用することによって、養生状態をトンネルの外部から管理するようにしてもよい。
【0107】
なお、本発明は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種種変更を加え得ることは勿論である。例えば、図27のように赤外線水分センサー7を有する一のピニオン機構部700をハンガー80に装備するようにしてもよい。
【0108】
また、軌道3及び移動体4を設けることなく、実施例2のハンガー80をトンネル長手方向に固定配置してもよい。配置する間隔は、等間隔でも異なる間隔でもよい。そして、ハンガー80をトンネルに固定し、赤外線水分センサーを搭載したピニオン機構部700がハンガー80に沿って、往復移動するようにしてもよい。
【0109】
また、実施例1の末尾に述べたように、軌道を設けることなく、赤外線水分センサーをトンネルの長手方向に複数個固定して配置してもよい。
さらに、トンネルの長手方向に交差する方向に非接触検知手段を複数個固定して配置してもよい。
また、構造物の壁面上で代表点を1点決定し、代表点に非接触検知手段を設けてもよい。
【0110】
さらに、本発明は上記実施例で述べたトンネル覆工の湿潤養生にのみ限定されるものではなく、コンクリートの湿潤養生技術において広く適用できるものであることはいうまでもない。例えば、橋梁、柱状の構造物、曲面又は平面状の壁面を有するコンクリート構造物としても適用できる。柱状の構造物に対しては、長手方向に軌道を設置する。アームが柱状円周をとり囲むように設けてもよい。片持ちを防止するため軌道を複数にしてもよい。平面に対し、軌道を複数設けてもよい。
また、軌道を設けることなく、壁面の固定点に赤外線水分センサーを設けてもよい。赤外線水分センサーは、複数個設けてもよいし、代表点に1個設けてもよい。
【0111】
また、非接触検知手段としては、赤外線水分センサー以外に、デジタルカラー判別センサー、光量センサー、蛍光体検出UVセンサー、光沢判別センサー、カラー判別センサーなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0112】
1 トンネル(コンクリート構造物)
2,2A コンクリートの湿潤養生装置
3 軌道
4 移動体
5 散水装置
6 支持材
7 赤外線水分センサー(非接触検知手段)
8 貯水タンク
9 送水ホース
10 ホース収納空間
11 トンネル内壁面
11c トンネル天井面
13 ホース支持用滑車
31 上フランジ
31a 下面
32 下フランジ
32a 上面
33 ウェブ
41 滑走部
42 散水装置装備部
44 下垂ロッド
51 ハンガー
52 散水ノズル部
52a ノズル
52b パイプ体
61 取り付け部
62 軌道懸架用滑車部
70 ピニオン
71a・71b 基板
72 連結軸
73 一対の滑車
73a 回転軸
74 駆動モータ
75 制御板
80 ハンガー
81 下フランジ
81a 下面
81b 上面
82 ウェブ
83 ラックギヤ部
91 水ポンプ
92 送風管
100 モルタル供試体
102 電子はかり
104 計測PC
411 電動トロリー
411a 基板
411b 連結軸
411c 回転軸
411d 滑車
411f 駆動モータ
412 プレーントロリー
413 制御板
511 散水管
511a 連結管
512 連結部
611 埋め込みアンカー
612 固定部
613 揺動支軸
621 下垂板
621a 回転軸
622 滑車
700 ピニオン機構部
741 駆動モータの回転軸
C 散水装置作動制御手段
I 赤外線
S セントル(型枠)
V 電圧
W 重量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の構築工事で使用され、前記コンクリート構造物構築のための型枠に打設されたコンクリートの硬化後、当該硬化したコンクリートの表面の品質を向上させるためコンクリート表面を湿潤状態にして養生させるコンクリートの湿潤養生装置であって、コンクリート表面に向けて噴霧及び液滴の少なくとも一方を含む散水を行う散水装置と、
前記コンクリート構造物の乾燥状態を非接触で検知する非接触検知手段と、
この非接触検知手段により、前記コンクリート表面が湿潤状態より乾燥していると判定されると、前記散水装置を作動させ当該箇所に向け所定量散水した後、当該散水装置の作動を停止させる散水装置作動制御手段と、
を備えるコンクリートの湿潤養生装置。
【請求項2】
前記非接触検知手段は、前記コンクリート構造物の長手方向において複数個固定して配置されている請求項1に記載のコンクリートの湿潤養生装置。
【請求項3】
軌道と、
この軌道に沿って移動可能な移動体とを備え、
前記移動体は、前記軌道上を滑走する滑走部と、この滑走部に支持されかつ前記散水装置を装備する散水装置装備部と、前記非接触検知手段と、を装備する請求項1に記載のコンクリートの湿潤養生装置。
【請求項4】
軌道と、
この軌道に沿って移動可能な移動体とを備え、
前記移動体は、コンクリート構造物の横断面の少なくとも上半部分の形状に沿って延伸するハンガーを備える請求項1に記載のコンクリートの湿潤養生装置。
【請求項5】
前記非接触検知手段は、前記ハンガーの延伸方向に複数備えられている請求項4に記載のコンクリートの湿潤養生装置。
【請求項6】
前記非接触検知手段は、前記ハンガーの延伸方向に沿って移動可能に単数又は複数設置される請求項4に記載のコンクリートの湿潤養生装置。
【請求項7】
前記非接触検知手段には、赤外線水分センサー、デジタルカラー判別センサー、光量センサー、蛍光体検出UVセンサー、光沢判別センサー、カラー判別センサーのいずれかを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンクリートの湿潤養生装置。
【請求項8】
型枠に打設されたコンクリート表面の硬化後、当該硬化したコンクリートの表面に沿って移動しながら前記コンクリートの表面に向けて噴霧及び液滴の少なくとも一方を含む散水を行い、前記コンクリート表面の乾燥状態を非接触検知手段で検知後、乾燥していると判定された場合に再度前記散水を実行するコンクリートの湿潤養生管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−153497(P2011−153497A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17021(P2010−17021)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】