説明

コンクリートの締め固め方法

【課題】 コンクリートの締め固めを効率よく行うことできるとともに、作業者の熟練度に左右されることなく、均質の締め固めが得られるコンクリートの締め固め方法を提供する。
【解決手段】 コンクリートの締め固め方法であって、駆動モータと、該駆動モータの回転軸に連結されるとともに、3つ以上の支持部によって支持された偏心重りを有する棒状の振動体とを備えたバイブレータ1を用い、該バイブレータ1をその側面がコンクリート45の打設面に接触し、又は埋没するように型枠40の内部に横向きに挿入し、コンクリート45の打設高さに追従して前記バイブレータ1を横向きに保ちながら上方に引き上げることにより、打設されたコンクリート45を下方から上方に向けて順次締め固める。
バイブレータ1を横向きにした状態でコンクリート45に挿入すればよいので、作業者の熟練度に影響されることなく、均質の締め固めが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの締め固め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの締め固めに用いるバイブレータの一例が特許文献1に記載されている。このバイブレータは、モータと、モータの駆動軸に連結された偏心振子を有するバイブレータ本体とを備えた棒状のバイブレータであって、このバイブレータのバイブレータ本体を打設したコンクリート中に挿入し、モータを駆動させてバイブレータ本体を振動させることにより、打設したコンクリートに振動を付与して締め固めることができるというものである。
【0003】
上記のような構成の棒状のバイブレータを用いたコンクリートの締め固め方法の一例が特許文献2に記載されている。特許文献2に記載のコンクリートの締め固め方法は、まず、図19に矢印a、bで示すように、移動式型枠(以下、セントル40という。)の側壁部側の最下段の検査窓41からコンクリート45を打設して、その検査窓41と同一高さの別の検査窓41を通じて、バイブレータ35を上下方向に向いた状態でコンクリート45中に挿入することにより、最下段に打設したコンクリート45の締め固めを行う。
【0004】
次に、同様に、図20に示すように、中段に打設したコンクリート45の締め固めを行った後、図21に示すように、上段に打設したコンクリート45の締め固めを行い、図22に示すように、天端部と側壁部の上段との間に打設したコンクリート45の締め固めを行い、バイブレータ35を回収する。
【0005】
次に、図23及び図24に矢印aで示すように、天端部の検査窓41からコンクリート45を打設するとともに、予め天端部に配置しておいたバイブレータ36により、天端部に打設したコンクリート45の締め固めを行い、天端部へのコンクリート45の打設、締め固めが完了した後に、図25に示すように、バイブレータ36を回収する。
【0006】
そして、このような作業をトンネルの長手方向にセントル40を移動させながら順次行うことにより、トンネルの全長に亘って覆工コンクリートを施工することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭62−34049号公報
【特許文献2】特開2007−138594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のような構成のコンクリートの締め固め方法にあっては、側壁部へのコンクリート45の打設、締め固めを行う場合に、棒状のバイブレータ35を上下方向に向いた状態で挿入して、コンクリート45の締め固めを行っているため、バイブレータ35により振動を付与できる範囲が非常に狭い。このため、コンクリート45の全体を均質に締め固めるためには、バイブレータ35を引き上げながら、左右方向(トンネルの長手方向)に動かして、コンクリート45の締め固めを行わなければならず、コンクリート45の締め固めに非常に手間がかかるとともに、締め固めの品質が作業者の熟練度に左右され、経験の浅い作業者では打設したコンクリート45の全体を均質に締め固めることができない。
【0009】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、コンクリートの締め固めを効率よく行うことができるとともに、作業者の熟練度に影響されることなく、経験の浅い作業者でもコンクリートの全体を均質に締め固めることができるコンクリートの締め固め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、コンクリートの締め固め方法であって、駆動モータと、該駆動モータの回転軸に連結されるとともに、3つ以上の支持部によって支持された偏心重りを有する棒状の振動体とを備えたバイブレータを用い、該バイブレータをその側面がコンクリートの打設面に接触し、又は埋没するように型枠の内部に横向きに挿入し、コンクリートの打設高さに追従して前記バイブレータを横向きに保ちながら上方に引き上げることにより、打設されたコンクリートを下方から上方に向けて順次締め固めることを特徴とする。
【0011】
本発明のコンクリートの締め固め方法によれば、バイブレータをその側面がコンクリートの打設面に接触し、又は埋没するように型枠の内部に横向きに挿入し、コンクリートの打設に追従してバイブレータを横向きに保ちながら上方に引き上げることにより、コンクリートを締め固めることができる。
従って、バイブレータの振動をコンクリートの広範囲に付与することができるので、コンクリートの締め固めを効率よく行うことができる。また、コンクリートを締め固める場合に、バイブレータをその側面がコンクリートの打設面に接触し、又は埋没するように型枠の内部に横向きに挿入し、コンクリートの打設高さに追従してバイブレータを横向きに保ちながら上方に引き上げればよいので、コンクリートの締め固めの品質が作業者の熟練度に影響されるようなことはなく、経験の浅い作業者であってもコンクリートの全体を均質に締め固めることができる。
また、振動体の偏心重りは、3つ以上の支持部によって支持されているので、振動体の全長を長くすることができる。
従って、打設したコンクリートを締め固める場合に、コンクリートに対して横向きに振動体を挿入することにより、コンクリートの広範囲に振動体からの振動を付与することができ、コンクリートの締め固めを効率良く行うことができる。
また、コンクリートに対して振動体を横向きに挿入すればよいので、コンクリートの締め固めの品質が作業者の熟練度に影響されるようなことはなく、経験の浅い作業者であってもコンクリートの全体を均質に締め固めることができる。
さらに、偏心重りが回転する際の撓み量は、支持部間の距離が長くなるほど大きくなり、この撓み量を許容値内に抑えるために支持部間の距離も一定以下に制約される。これに対して、本発明では、偏心重りを3つ以上の支持部で支持しているので、偏心重りを2つの支持部でのみ支持する場合に比べて、支持部間の距離を一定以下に抑えつつ、振動体の全長を長くすることができる。
なお、バイブレータの横向きとは、水平、及び概ね水平を含むものとする。要は、バイブレータを型枠の内部に挿入した際に、バイブレータの側面をコンクリートの打設面に接触させ、又は埋没させることができる角度を意味する。
【0012】
また、本発明において、前記回転軸には、偏心重りが取り付けられていることとしてもよい。
【0013】
本発明のコンクリートの締め固め方法によれば、振動体よりも質量の大きい駆動モータも振動させることができるので、駆動モータに対応するコンクリートの部分も締め固めることができる。
【0014】
また、本発明において、前記駆動モータは、両軸モータであることとしてもよい。
【0015】
本発明のコンクリートの締め固め方法によれば、バイブレータの全長を所定の長さに設定する場合に、両軸の駆動モータの各回転軸に棒状の振動体をそれぞれ連結することになるので、片軸の駆動モータの回転軸に1つの棒状の振動体を連結して、バイブレータの全長を所定の長さに設定する場合に比べて、各振動体の長さを短くすることができる。
従って、各振動体の固有振動数が高くなり、バイブレータの使用振動域から各振動体の固有振動数をずらすことができるので、振動体に共振による節(振動しない部位)ができにくくなり、バイブレータ全体によるコンクリートの締め固め性能を高めることができる。
【0016】
また、本発明は、駆動モータと、該駆動モータの回転軸に連結されるとともに、2つ以上の支持部によって支持された偏心重りを備えた振動ユニットを、2つ以上離脱可能に連結して構成された棒状の振動体を備えたバイブレータを用い、該バイブレータをその側面がコンクリートの打設面に接触し、又は埋没するように型枠の内部に横向きに挿入し、コンクリートの打設高さに追従して前記バイブレータを横向きに保ちながら上方に引き上げることにより、打設されたコンクリートを下方から上方に向けて順次締め固めることを特徴とする。
【0017】
本発明のコンクリートの締め固め方法によれば、振動体は、2つ以上の支持部によって支持された偏心重りを備えた振動ユニットを、2つ以上離脱可能に連結して構成されているので、コンクリートの締め固め範囲に応じた長さに振動体の全長を設定することにより、コンクリートの締め固め範囲の大小に柔軟に対応することができる。
【0018】
さらに、本発明において、前記回転軸には、偏心重りがそれぞれ取り付けられていることとしてもよい。
【0019】
さらに、本発明において、前記駆動モータは、両軸モータであることとしてもよい。
【0020】
さらに、本発明において、前記バイブレータの周囲には、前記バイブレータと型枠との干渉を避ける2つ以上の干渉リングが取り付けられていることとしてもよい。
【0021】
本発明のコンクリートの締め固め方法によれば、バイブレータの周囲には、2つ以上の干渉リングが取り付けられ、この干渉リングによってバイブレータが型枠と干渉するのを避けることができるので、バイブレータが型枠と干渉して損傷等するのを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
以上、説明したように、本発明のコンクリートの締め固め方法によれば、コンクリートの締め固め作業を効率よく行うことができるとともに、作業者の熟練度に影響されることなく、経験の浅い作業者であってもコンクリートの全体を均質に締め固めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるコンクリートの締め固め方法に使用するバイブレータの一例を示した平面図である。
【図2】図1のバイブレータの断面図である。
【図3】図2のA部の拡大図である。
【図4】振動体の内部を示した説明図である。
【図5】干渉リングの斜視図である。
【図6】本発明によるコンクリートの締め固め方法の一実施の形態を示した説明図であって、側壁部の最下段へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図7】側壁部の中段へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図8】側壁部の上段へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図9】天端部と側壁部の上段との間へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図10】天端部へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図11】天端部へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図12】コンクリートの打設、締め固めが完了した状態を示した説明図である。
【図13】セントルの蓋及びガイドを示した説明図である。
【図14】図13の蓋及びガイドの動作を示した説明図である。
【図15】本発明によるコンクリートの締め固め方法に使用するバイブレータの他の例を示した斜視図である。
【図16】図15の部分拡大断面図である。
【図17】本発明によるコンクリートの締め固め方法に使用するバイブレータの他の例を示した部分拡大断面図である。
【図18】図17の偏心重りの平面図である。
【図19】従来のコンクリートの締め固め方法の一例を示した説明図であって、側壁部の最下段へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図20】側壁部の中段へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図21】側壁部の上段へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図22】天端部と側壁部の上段との間へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図23】天端部へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図24】天端部へのコンクリートの打設、締め固めの手順を示した説明図である。
【図25】コンクリートの打設、締め固めが完了した状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5には、本発明によるコンクリートの締め固め方法に使用するバイブレータの一例が示されている。このバイブレータ1は、コンクリートの締め固めに適用可能なものであって、本実施の形態においては、山岳トンネルの覆工コンクリートの締め固めに適用している。
【0025】
すなわち、このバイブレータ1は、図1及び図2に示すように、棒状のバイブレータ1であって、駆動モータ2と、駆動モータ2の回転軸3に連結される棒状の振動体6と、振動体6の周囲に取り付けられる干渉リング25と、駆動モータ2に接続される電源ケーブル33とから構成されている。
【0026】
駆動モータ2は、片軸モータであって、図2に示すように、筒状のケーシング4と、ケーシング4内に設けられるモータ本体5とから構成され、ケーシング4の一端に後述する振動体6のケーシング7の一端が連結され、モータ本体5の回転軸3に後述する振動体6の偏心重り10の一端が連結される。
【0027】
振動体6は、2つ以上の支持部としての軸受9によって支持された偏心重り10を備えた振動ユニット13を、2つ以上離脱可能に連結して構成されるものであって、この例においては、図1及び図2に示すように、3つの振動体ユニット13を離脱可能に連結して構成されている。
【0028】
各振動ユニット13は、図4に示すように、筒状のケーシング7と、ケーシング7内の2箇所以上に装着される軸受9と、ケーシング7内に挿着されるとともに、ケーシング7内の軸受9によって回転自在に支持される略丸棒状の偏心重り10とから構成されている。図4では、ケーシング7内の両端部と中央部の3箇所に軸受9が装着され、この3つの軸受9によって偏心重り10の両端部と中央部の3箇所が支持されている。
なお、偏心重り10の長さに応じて、偏心重り10の両端の2箇所のみを軸受9で支持してもよいし、偏心重り10の4箇所以上を軸受9で支持してもよい。
【0029】
振動体ユニット13は、ケーシング7の一端を駆動モータ2のケーシング4の一端に連結し、偏心重り10の一端を駆動モータ2のモータ本体5の回転軸3に連結することにより、駆動モータ2に連結することができる。或いは、後述するジョイント15を介して2つの振動体ユニット13を互いに連結することもできる。
【0030】
振動体ユニット13のケーシング7の両端部の内周面側には雌ねじ部8が設けられ、この雌ねじ部8に後述するジョイント15(図3参照)のケーシング16の両端部の外周面側の雄ねじ部17を螺合させて締め付けることにより、振動体ユニット13のケーシング7とジョイント15のケーシング16とを相互に連結することができる。
【0031】
振動体ユニット13の偏心重り10は、周面の一部を略全長に亘って所定の深さで切欠して、重心の位置を中心軸線上からずらしたものであって、両端部と中央部の3箇所がケーシング7内に装着された3つの軸受9によって回転自在に支持されている。
【0032】
偏心重り10の一端部には、I形状の係合溝11が設けられるとともに、他端部には、I形状の係合突起12が一体に設けられ、この偏心重り10の係合溝11又は係合突起12と後述するジョイント15のジョイント軸20の両端部の係合突起21又は係合溝22とを互いに係合させることにより、振動体ユニット13の偏心重り10とジョイント15のジョイント軸20とを相互に連結することができる。
【0033】
ジョイント15は、図3に示すように、筒状のケーシング16と、ケーシング16内の両端部の2箇所に装着される軸受19と、ケーシング16内に挿着されるとともに、ケーシング16内の軸受19によって両端部が回転自在に支持される丸棒状のジョイント軸20とから構成されている。
【0034】
ジョイント15のケーシング16の軸方向の両端部の外周面側には雄ねじ部17が設けられ、この雄ねじ部17を振動体6のケーシング7の両端部の雌ねじ部8に螺合させて締め付けることにより、振動体6のケーシング7とジョイント15のケーシング16とを相互に連結することができる。
なお、図2に示すように、ジョイント15の外面には吊りかん18が設けられ、この吊りかん18に後述する第1ワイヤー47の先端を連結することにより、第1ワイヤー47の先端にバイブレータ1を吊り下げることができる。
なお、吊りかん18の設置位置は、ジョイント15に限定されるものではなく、振動体6、或いは駆動モータ2の任意の位置に設置してもよい。
【0035】
ジョイント軸20の軸方向の一端部には、I形状の係合突起21が一体に設けられるとともに、他端部には、I形状の係合溝22が設けられ、このジョイント軸20の係合突起21又は係合溝22を振動体ユニット13の偏心重り10の両端部の係合溝11又は係合突起12に係合させることにより、振動体ユニット13の偏心重り10とジョイント15のジョイント軸20とを相互に連結することができる。
【0036】
なお、図1及び図2に示すように、3つの振動体ユニット13のうち、第1の振動体ユニット13aを駆動モータ2に連結し、第1の振動体ユニット13aにジョイント15を介して第2の振動体ユニット13bを連結し、第2の振動体ユニット13bにジョイント15を介して第3の振動体ユニット13cを連結している。
【0037】
図1及び図2に示すように、振動体6の周囲の複数箇所(本実施の形態では2箇所)には干渉リング25が取り付けられ、この干渉リング25によって振動体6が後述するセントル40と干渉して破損等するのを防止できる。
なお、干渉リング25の取付位置は、振動体6に限定されるものではなく、駆動モータ2に取り付けてもよく、振動体6を安定して支持するためには、振動体6と駆動モータ2の両方に取り付けるのが好ましい。
【0038】
干渉リング25は、図5に示すように、ゴム等の弾性体から形成される一対の半円板状のリング本体26と、両リング本体26を円板状をなすように固定する固定部材30とから構成されている。
【0039】
各リング本体26の中心部には、振動体ユニット13のケーシング7を挿通させるための半円形状の挿通孔27が設けられ、両リング本体26の挿通孔27内に振動体ユニット13のケーシング7を挿通させた状態で、両リング本体26を固定部材30で円板状に固定することにより、両リング本体26を振動体6のケーシング7の周囲に固定することができる。
【0040】
固定部材30は、各リング本体26の両面に設けられた略L形状の固定プレート31と、両リング本体26の各面の固定プレート31間を連結する一対のねじ締結体32とから構成され、両リング本体26の挿通孔27内に振動体ユニット13のケーシング7を挿通させた状態で、両リング本体26の各面の両固定プレート31間を一対のねじ締結体32でそれぞれ連結することにより、干渉リング25を振動体6の周囲に固定することができる。
【0041】
図6〜図14には、本発明によるコンクリートの締め固め方法の一実施の形態が示されている。本実施の形態のコンクリートの締め固め方法は、図1〜図6に示すバイブレータ1を用いて、山岳トンネルの覆工コンクリートの締め固めを行うように構成したものである。以下、本実施の形態のコンクリートの締め固め方法について詳しく説明する。
【0042】
まず、図6に示すように、セントル40の下段の検査窓41(図中矢印a、b)からセントル40の内部にコンクリート45を打設するとともに、引上げ装置(図示せず)を操作して、引上げ装置から第1ワイヤー47を繰り出し、第1ワイヤー47の先端に取り付けた上記のバイブレータ1を天端部側の検査窓41からセントル40の内部に挿入し、バイブレータ1を横向きに保った状態で打設したコンクリート45中に挿入する。この場合、セントル40の全長に行き渡るように、複数(本実施の形態では3つ)のバイブレータ1を天端部側の検査窓41からセントル40の内部に挿入する。
【0043】
そして、各バイブレータ1の駆動モータ2を作動させることによって振動体6を振動させ、振動体6の振動をコンクリート45に付与することにより、最下段に打設したコンクリート45の締め固めを行う。
【0044】
この場合、振動体6は、3つの振動体ユニット13を連結して長尺に形成し、この長尺の振動体6を横向きにした状態でコンクリート45中に挿入しているので、バイブレータを上下方向に向けた状態でコンクリート45中に挿入した従来の技術に比べて、振動体6によるコンクリート45の締め固め範囲を大きくとすることができ、側壁部の最下段に打設したコンクリート45を効率良く締め固めることができる。
【0045】
また、振動体6を横向きに保った状態でコンクリート45内に挿入すればよいので、コンクリート45に上下方向に向けた状態でバイブレータの振動体を挿入する従来の技術のように、均質な締め固めを得るためにバイブレータを左右に動かす必要はなく、経験の浅い作業者であっても最下段に打設したコンクリート45の全体を均質に締め固めることができる。
【0046】
次に、側壁部の最下段へのコンクリート45の打設、締め固めが完了した後に、図7に示すように、引上げ装置の操作によって第1ワイヤー47を引き上げ、各バイブレータ1を最下段のコンクリート45の打設面46から上方に所定の距離、離間させるとともに、中段の検査窓41(図中矢印a、b)からセントル40の内部にコンクリート45を打設し、引上げ装置を操作することによって第1ワイヤー47を繰り出し、各バイブレータ1を側壁部の中段に打設したコンクリート45中に横向きに保った状態で挿入することにより、中段に打設したコンクリート45の締め固めを行う。
【0047】
次に、側壁部の中段へのコンクリート45の打設、締め固めの作業が完了した後に、図8に示すように、中段と同様に、側壁部の上段へのコンクリート45の打設、締め固めを行い、図9に示すように、天端部と側壁部の上段との間へのコンクリート45の打設、締め固めを行う。
【0048】
なお、中段、上段、天端部と上段との間のコンクリート45を締め固める場合にも、最下段の場合と同様に、振動体6によるコンクリート45の締め固め範囲を大きくとすることができるので、中段、上段、及び天端部と上段との間に打設したコンクリート45を効率良く締め固めることができる。また、振動体6を横向きに保った状態でコンクリート45内に挿入すればよいので、経験の浅い作業者であっても中断、上段、天端部と上段の間に打設したコンクリート45の全体を均質に締め固めることができる。
【0049】
次に、天端部と側壁部の上段との間へのコンクリートの打設、締め固めが完了した後に、図10に示すように、セントルの妻部側の一組のバイブレータ1(図中では手前側の一組)を残し、天端部の検査窓41から他のバイブレータ1を回収するとともに、残した一組のバイブレータ1を天端部にセントル40の長手方向に延出するように予め水平に配置しておいた第2ワイヤー48に取り付け代える。
【0050】
そして、図10、図11に示すように、天端部の検査窓41(図中矢印a)からセントル40の内部にコンクリート45を打設し、図12に示すように、バイブレータ1を作動させて第2ワイヤー48をトンネルの長手方向に引き抜くことにより、天端部へのコンクリート45の打設、締め固めを行う。
【0051】
このようにして、セントル40の全長に対応する部分に覆工コンクリートを施工することができ、このようなコンクリート45の打設、締め固めをセントル40をトンネルの長手方向に移動させながら順次行うことにより、トンネルの全長に亘って覆工コンクリートを施工することができる。
【0052】
なお、図13及び図14に示すように、セントル40の内面側には、セントル40の各検査窓41を開閉させる四角形板状の蓋43と、第1ワイヤー47を引上げ装置から繰り出し可能に支持する円弧状のガイド44とが回転自在に設けられている。側壁部へコンクリート45を打設する際には、コンクリート45の打設面46よりも下方の検査窓41は蓋43で閉じた状態とし、打設面46よりも上方の検査窓41は開いた状態とし、開いた状態の検査窓41からセントル40の内部にガイド44を突出させ、このガイド44によって天端部の検査窓41からセントル40の内部に挿入した第1ワイヤー47と電源ケーブル33とを支持し、コンクリート45の打設面46の上昇に伴って、検査窓41を順次蓋41で閉塞するとともに、検査窓41からガイド44を回収しながらバイブレータ1を上昇させるものとする。なお、図14中、42は、ガイド44を回収した状態に固定する固定部材である。
【0053】
上記のように構成した本実施の形態のコンクリートの締め固め方法にあっては、セントル40の内部にコンクリート45を打設し、この打設したコンクリート45中にバイブレータ1を横向きに保った状態で挿入して、コンクリート45の締め固めを行うように構成したので、バイブレータ1の振動体6の全長に対応するコンクリート45の部分に振動を付与することができる。
【0054】
従って、バイブレータを上下方向に向いた状態でコンクリート45中に挿入する従来の締め固め方法に比べて、バイブレータ1の振動体6によるコンクリート45の締め固めの範囲を広くとることができるので、コンクリート45の締め固めを効率よく行うことができる。
【0055】
また、バイブレータ1の振動体6は、2つ以上の振動体ユニット13を離脱可能に連結して構成しているので、コンクリート45の締め固め範囲に応じて振動体6の長さを任意に設定でき、各種のコンクリート45の締め固めに柔軟に対応することができる。
【0056】
さらに、バイブレータ1の振動体6を横向きに保った状態でコンクリート45中に挿入すればよいので、作業者の熟練度によってコンクリート45の締め固めの品質が左右されるようなことはなく、経験の浅い作業者でもコンクリート45の全体を均質に締め固めることができる。
【0057】
なお、前記の説明においては、2つ以上(上記の実施の形態では3つ)の振動体ユニット13を離脱可能に連結することによって振動体6を構成したが、振動体ユニット13を用いずに、3つ以上の軸受によって支持された偏心重りによって振動体を構成してもよい。その場合には、バイブレータ1を、振動体ユニット13、駆動モータ2等のパーツに分けることなく、一体の製品とすることができるので、これらのパーツの接合部における故障を防ぐことができる。
【0058】
図15及び図16には、本発明によるコンクリートの締め固め方法に使用するバイブレータの他の例が示されている。このバイブレータ1は、駆動モータ2に2つの回転軸3a、3bを有する両軸モータを用い、各回転軸3a、3bにそれぞれ振動体6a、6bを連結したものであって、その他の構成は図1〜図5に示すものと同様である。
【0059】
駆動モータ2は、筒状のケーシング4と、ケーシング4内に設けられる、ステータ5a、ロータ5b、2つの回転軸3a、3b等からなるモータ本体5と、ケーシング4の両端にそれぞれ設けられる軸受ケース4a、4bと、各軸受ケース4a、4bの外側に設けられる蓋4e、4fとから構成され、各軸受ケース4a、4bに設けられた軸受4c、4dによってモータ本体5の各回転軸3a、3bが回転自在に支持されている。
【0060】
駆動モータ2のケーシング4の一端及び他端には、一方の振動体6aのケーシング7aの一端及び他方の振動体6bのケーシング7bの一端がそれぞれ連結され、モータ本体5の一方の回転軸3a及び他方の回転軸3bには、一方の振動体6aの偏心重り10aの一端及び他方の振動体6bの偏心重り10bの一端がそれぞれ連結されている。
【0061】
そして、図15及び図16に示すバイブレータ1を用いて、山岳トンネルの覆工コンクリートの締め固めを行う場合においても、図6〜図14に示した一実施の形態のコンクリートの締め固め方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
また、駆動モータ2の各回転軸3a、3bにそれぞれ振動体6a、6bを連結することにより、バイブレータ1の全長を所定の長さに設定しているので、1つの振動体6によってバイブレータ1の全長を所定の長さに設定した図1〜図5に示した例に比べて、各振動体6a、6bの長さを短くすることができる。
従って、各振動体6a、6bの固有振動数が高くなり、バイブレータ1の使用振動域から各振動体6a、6bの固有振動数をずらすことができるので、振動体6a、6bに共振による節(振動しない部位)ができにくくなり、バイブレータ1全体によるコンクリートの締め固め性能を高めることができる。
【0063】
図17及び図18には、本発明によるコンクリートの締め固め方法に使用するバイブレータの他の例が示されている。このバイブレータ1は、駆動モータ2に2つの回転軸3a、3bを有する両軸モータを用い、各回転軸3a、3bにそれぞれ振動体6a、6bを連結するとともに、各回転軸3a、3bにそれぞれ偏心重り10c、10dを取り付けたものであって、その他の構成は図15及び図16に示すものと同様である。
【0064】
偏心重り10c、10dは、図18に示すように、略円弧板状をなすものであって、各軸受ケース4a、4bの内面とロータ5bとの間に位置する各回転軸3a、3bの部分に取り付けられている。
【0065】
そして、このバイブレータ1を用いて、山岳トンネルの覆工コンクリートの締め固めを行う場合においても、図1〜図5、及び図15〜図16に示すバイブレータ1を用いた場合と同様の作用効果を奏する他に、このバイブレータ1は、駆動モータ2の各回転軸3a、3bにそれぞれ偏心重り10c、10dを取り付けているので、駆動モータ2も振動させることができ、駆動モータ2に対応するコンクリートの部分も締め固めることができる。
【0066】
なお、図1〜図5に示すバイブレータ1において、図17〜図18に示すバイブレータ1と同様に、駆動モータ2の回転軸3にも偏心重りを取り付け、駆動モータ2に対応するコンクリートの部分も締め固めるように構成してもよい。
【0067】
なお、前記の説明においては、本発明によるコンクリートの締め固め方法を山岳トンネルの覆工コンクリートの締め固めに用いたが、これに限定することなく、その他の各種のコンクリートの締め固めに用いてもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0068】
1 バイブレータ
2 駆動モータ
3 回転軸
3a、3b 回転軸
4 ケーシング
4a、4b 軸受ケース
4c、4d 軸受
4e、4f 蓋
5 モータ本体
5a ステータ
5b ロータ
6 振動体
6a、6b 振動体
7 ケーシング
7a、7b ケーシング
8 雌ねじ部
9 軸受
10 偏心重り
10a、10b、10c、10d 偏心重り
11 係合溝
12 係合突起
13 振動ユニット
15 ジョイント
16 ケーシング
17 雄ねじ部
18 吊りかん
19 軸受
20 ジョイント軸
21 係合突起
22 係合溝
25 干渉リング
26 リング本体
27 挿通孔
30 固定部材
31 固定プレート
32 ねじ締結体
33 電源ケーブル
35 バイブレータ
36 バイブレータ
40 セントル
41 検査窓
42 固定部材
43 蓋
44 ガイド
45 コンクリート
46 打設面
47 第1ワイヤー
48 第2ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの締め固め方法であって、
駆動モータと、該駆動モータの回転軸に連結されるとともに、3つ以上の支持部によって支持された偏心重りを有する棒状の振動体とを備えたバイブレータを用い、
該バイブレータをその側面がコンクリートの打設面に接触し、又は埋没するように型枠の内部に横向きに挿入し、コンクリートの打設高さに追従して前記バイブレータを横向きに保ちながら上方に引き上げることにより、打設されたコンクリートを下方から上方に向けて順次締め固めることを特徴とするコンクリートの締め固め方法。
【請求項2】
前記回転軸には、偏心重りが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの締め固め方法。
【請求項3】
前記駆動モータは、両軸モータであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリートの締め固め方法。
【請求項4】
駆動モータと、該駆動モータの回転軸に連結されるとともに、2つ以上の支持部によって支持された偏心重りを備えた振動ユニットを、2つ以上離脱可能に連結して構成された棒状の振動体を備えたバイブレータを用い、
該バイブレータをその側面がコンクリートの打設面に接触し、又は埋没するように型枠の内部に横向きに挿入し、コンクリートの打設高さに追従して前記バイブレータを横向きに保ちながら上方に引き上げることにより、打設されたコンクリートを下方から上方に向けて順次締め固めることを特徴とするコンクリートの締め固め方法。
【請求項5】
前記回転軸には、偏心重りがそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載のコンクリートの締め固め方法。
【請求項6】
前記駆動モータは、両軸モータであることを特徴とする請求項4又は5に記載のコンクリートの締め固め方法。
【請求項7】
前記バイブレータの周囲には、前記バイブレータと型枠との干渉を避ける2つ以上の干渉リングが取り付けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のコンクリートの締め固め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−233394(P2012−233394A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37390(P2012−37390)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【分割の表示】特願2011−197479(P2011−197479)の分割
【原出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】