説明

コンクリートの養生方法

【課題】脱枠後のコンクリートに対し材齢毎の最適な養生管理を行うようにしたコンクリートの養生方法を提供すること。
【解決手段】打設型枠を取り外したコンクリート1に対して、所要間隔をあけてコンクリート1の表面を被覆するように防水シート2を張設し、防水シート2とコンクリート1の間に空間部3を形成するとともに、水和反応により経時的に温度変化するコンクリート1に対し、その表面温度と略同じ温度に調整した水を、この略密閉の空間部3に噴霧し充満させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの養生方法に関し、特に、脱枠後のコンクリートに対し材齢毎の最適な養生管理を行うようにしたコンクリートの養生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路や鉄道等のトンネル構造物の本体部材であるコンクリートは、これまでコンクリート打設後の養生に関しては、早期に脱枠移動したり工期が限られる等の施工時の制約や、また、アーチ状でコンクリートの表面が上向きであるなどの構造の特殊性により、何も実施されない状態であった。
トンネル構造物の場合、通常材齢1日(コンクリート打設後15〜20時間)で脱枠し、コンクリート表面は何も保護されない剥き出しの状態となり、表面からの水分の蒸散による表面の乾燥によって、コンクリートの硬化強度発現に必要な水和反応を持続するための水分が不足することになる。
そのため、養生不足による表面の欠陥(ひび割れ等)の発生や、強度低下等による長期耐久性の低下が懸念され、極端な場合は、コンクリート片の剥落や崩落など、人身事故に繋がる重大な問題が発生したり、公共構造物の資産の劣化が考えられる。
【0003】
しかし、土木構造物全般のうち、野外で構築するボックスカルバート内面、橋梁橋脚部アバット等の壁面構造物などの垂直、天井部分など、従来の養生方法(散水、シートによる覆い、型枠存置)では養生し難い場合がある。それらの形状の特殊性や複雑性に起因して養生が不足すると、上記と同様の問題の発生が考えられる。
【0004】
一方、トンネル構造物や土木構造物全般に対し、従来の養生技術の一つとして、コンクリート表面に薄い膜を形成する液状養生剤を撒布塗膜する方法がある。
これは、コンクリートにその表面から水分の蒸散を防止する膜を形成し、養生する手段であるが、撒布塗膜時の施工性や均一性等の確実性に問題があり、完全に水分の蒸散を防げるものではない。
【0005】
そこで、本件出願人は、下記の特許文献1にて、コンクリートの養生方法を提案している。
このコンクリートの養生方法は、トンネルやボックスカルバート等の連続体で施工するコンクリートに対し、コンクリート打設型枠取り外し後、直ぐにそのコンクリート表面から100〜300mm離れた位置に支保部材を組み立て、この支保部材にシートを掛けることによりコンクリートに覆いを設ける。
そして、支保部材に散水設備を設置し、コンクリート表面に24時間〜72時間連続して散水することによりコンクリートの養生を行うようにしている。
【0006】
ところで、養生時のコンクリートは水和反応により経時的に発熱温度が変化していくが、上記従来のコンクリートの養生方法では、スプリンクラーによって一定温度の水を散水することから、特に温度や湿度においてコンクリートの材齢毎の最適な養生管理を行うことは難しい。
【特許文献1】特開2004−285803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来のコンクリートの養生方法が有する問題点に鑑み、脱枠後のコンクリートに対し材齢毎の最適な養生管理を行うようにしたコンクリートの養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のコンクリートの養生方法は、打設型枠を取り外したコンクリートに対して、所要間隔をあけてコンクリートの表面を被覆するように防水シートを張設し、該防水シートとコンクリートの間に空間部を形成するとともに、水和反応により経時的に温度変化するコンクリートに対し、その表面温度と略同じ温度に調整した水を前記空間部に噴霧し充満させることを特徴とする。
【0009】
この場合において、噴霧する水の平均粒子径を10〜100μmの微霧とすることができる。
【0010】
また、コンクリートの水和反応による温度変化を温度センサにて検出し、該検出した温度に基づいて噴霧する水の温度を調整することができる。
【0011】
また、コンクリートの水和反応による温度変化を事前に理論値として求め、該理論値の温度に基づいて噴霧する水の温度を調整することができる。
【0012】
また、養生区間を複数のスパンに区画して、前記空間部をスパン毎に分割し、該スパン毎に噴霧する水の温度を調整することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコンクリートの養生方法によれば、打設型枠を取り外したコンクリートに対して、所要間隔をあけてコンクリートの表面を被覆するように防水シートを張設し、該防水シートとコンクリートの間に空間部を形成するとともに、水和反応により経時的に温度変化するコンクリートに対し、その表面温度と略同じ温度に調整した水を前記空間部に噴霧し充満させることから、コンクリートの表面温度の検出や養生時の温度変化の理論値に基づいて、材齢によるコンクリートの養生に最適な温度でその表面を湿潤させることができ、これにより、脱枠後のコンクリートに対して材齢毎の最適な養生管理を行うことができる。
また、コンクリート表面に形成した空間部を霧で充満させることにより、均一な湿度状態にある養生空間を形成することができ、これにより、コンクリートの硬化強度発現に必要な水和反応を持続するための水分の蒸散をなくすとともに、微粒子状の水分を積極的に供給することにより、コンクリート表面の緻密化や強度発現の増進に寄与し、コンクリート表面の欠陥の発生を低減することができる。
【0014】
この場合、噴霧する水の平均粒子径を10〜100μmの微霧とすることにより、複雑な形状や天井面、垂直面の養生も霧を容易に充満させるとともに、水滴等の衝突によるコンクリート表面の荒れや、筋上の水の滴れ跡が付くことを防止することができ、さらに、霧の発生のための必要な水量は微少であり、水による路面の泥濘化を防止することができる。
【0015】
また、コンクリートの水和反応による温度変化を温度センサにて検出し、該検出した温度に基づいて噴霧する水の温度を調整することにより、実際のコンクリートの発熱温度を検出しながら、リアルタイムで噴霧する水の温度管理を行うことができる。
【0016】
また、コンクリートの水和反応による温度変化を事前に理論値として求め、該理論値の温度に基づいて噴霧する水の温度を調整することにより、温度センサを配設する手間を省略し、コンクリートの打設条件に応じた理論値に基づいて噴霧する水の温度管理を行うことができる。
【0017】
また、養生区間を複数のスパンに区画して、前記空間部をスパン毎に分割し、該スパン毎に噴霧する水の温度を調整することにより、脱枠後のコンクリートに対して材齢毎のより最適な養生管理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のコンクリートの養生方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1〜図6に、本発明のコンクリートの養生方法の一実施例を示す。
このコンクリートの養生方法は、打設型枠を取り外したコンクリート1に対して、所要間隔をあけてコンクリート1の表面を被覆するように防水シート2を張設し、該防水シート2とコンクリート1の間に略密閉の空間部3を形成する。
そして、水和反応により経時的に温度変化するコンクリート1に対し、その表面温度と略同じ温度に調整した水を、この略密閉の空間部3に噴霧し充満させるようにしている。
なお、空間部3への水の噴霧は、コンクリート1から打設型枠を取り外したその直後から、例えば、湿度100%となるように連続して、通常7日間行うようにする。
【0020】
略密閉の空間部3を形成する養生装置4は、トンネルの場合、例えば、図1に示すように設けられる。
トンネル内側のコンクリート表面から数十cm離れるように、トンネルより一回り小さい断面形状のアーチフレーム5をH鋼材等で骨組みし、このアーチフレーム5を覆うように防水シート2を被せる。
アーチフレーム5の両端には、コンクリート表面との隙間を塞ぐエアーバルク6が仕切壁として設けられ、これにより、コンクリート表面と外部空気とを遮断した略密閉の空間部3を確保する。この空間部は気密性が保持され、保温性・保湿性が確保される。
また、アーチフレーム5の下部には車輪7が設けられており、この車輪7は、トンネルの下部両側で長さ方向に敷設されたレール8上を移動することができる。養生装置4は、この車輪7を介してトンネルの内部を長さ方向に移動することができる。
【0021】
防水シートは、厚さ0.8〜1.2mm、材質プラスチック系のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン共重合体ビチューメント(ECB)又はポリプロピレン共重合体(PPC)のいずれでもよい。
防水シートの設置位置は、コンクリート表面から10cmから1mの隙間をあけて空気が逃げないようにコンクリート表面を覆う。
この隙間を選定した理由は、10cmよりも少ない場合、噴霧ノズル等がコンクリート表面に接触し傷つける可能性が大きい。1m以上離した場合、コンクリート表面との隙間が拡がり、温度を調節する体積量が増大したり、温度を調節する加温ユニット等が大型となるためである。
【0022】
アーチフレーム5には、多数の噴霧ノズル9が要所に配設されており、例えば、平均粒子径10〜100μm、より好ましくは、45〜60μmの微霧の水を略密閉の空間部3にまんべんなく噴霧して充満させることにより、均一な湿度状態にある養生空間を形成する。
このように、均一な湿度状態を保持することにより、コンクリート1の硬化強度発現に必要な水和反応を持続するための水分の蒸散がなく、逆に微粒子状の水分を積極的に供給することにより、表面の緻密化や強度発現の増進に寄与し、コンクリート1の表面の欠陥の発生を低減する。
【0023】
噴霧ノズル9は、噴霧部の口径により一般に超微霧10μm以下、微霧10〜100μm、細霧100〜300μm、中霧0.3〜1.0mm、粗霧1.0mm以上に分類される。
さらに、噴霧する面積や体積及び方向により、噴霧ノズル9を選定することが重要となる。すなわち、直接コンクリートに噴霧するとセメントが水和反応した後でコンクリート表面に色が付着して美観上問題となることや、水和反応に必要以上の噴霧を行うことは不経済となる。
超微霧のときは体積や面積を考慮すると噴霧ノズル9の数が多く必要となる。このようなことを総合的に検討、実験した結果、微霧の10〜100μm、より好ましくは、45〜60μmの範囲が最も適していることがわかった。
噴霧ノズル9の噴霧角度は、コンクリート表面までの距離や面積、体積、噴霧ノズル9の数を考慮した結果、80度が望ましい。また、噴霧ノズル9のピッチは、微霧用・角度80度を用いたとき3m間隔が最適である。
【0024】
また、噴霧される水の温度は、図4に示すように、加温ユニットにより噴霧ノズル9に供給される水を適宜加熱することにより調整することができる。
この場合、図6に示すように、コンクリート1の表面温度を検出してフィードバックしたり、コンクリート1の養生時の温度変化の理論値に基づいて、経時的に変化するコンクリート1の表面温度と同じ温度に調整した水を略密閉の空間部3に噴霧して充満させる。
噴霧される霧は、噴霧ノズルに至るまでに多少温度が下がったりするため、供給する水を多少高めに加温したりするが、噴霧時の温度でコンクリートの表面温度の±3℃、より好ましくは、±2℃、さらに好ましくは、±1℃の範囲であればよい。
また、コンクリートの水和反応による温度変化を事前に理論値として求めておき、この実験等による理論値の温度に基づいて噴霧する水の温度を調整することにより、温度センサを配設する手間を省略し、コンクリートの打設条件に応じた理論値に基づいて噴霧する水の温度管理を行うことができる。
なお、図6は噴霧する水の制御温度を示すが、型枠脱枠後のコンクリートの表面温度も同じ曲線を示す。コンクリートの表面温度は、打設厚さによっても変わってくるが、本実施例では、型枠脱枠後の2日間で約23℃から約35℃まで上がって約20℃まで下降し、その後の5日間は約20℃を概ねキープしている。
【0025】
コンクリートの表面温度を測定する温度センサ12は、マイナス20℃から100℃までの測定範囲を有するものであれば適している。噴霧状況を踏まえると熱電対タイプφ6.4mm、長さ20cmのものが望ましい。
また、加温ユニットは、図4に示すように、温度コントローラ13、水タンク14、水温センサ(図示省略)、加熱ヒータ15及びポンプ16で構成されている。
温度コントローラ13は、温度センサ12の値を受信するとともに、この値を水温センサで比較し、加熱ヒータ15に伝達して供給する水をこの温度に加温する。
【0026】
一方、トンネル内のコンクリートは、例えば、約10mの長さを1スパンSとして施工されるが、本実施例では、養生装置4が3スパン等の複数のスパン長さを有しており、これにより、1スパンSの脱枠毎に養生装置4を前進させながら、複数のスパンSを同時に養生することができる。
この場合、養生装置4を各スパンSに区画して略密閉の空間部3をスパンS毎に分割し、脱枠毎に養生装置4を1スパン前進させることにより、脱枠後のコンクリート1を各スパン単位で、その材齢に最適な温度と湿度で順次養生することができる。
【0027】
例えば、第1スパンS1は、覆工型枠の直後の養生スパンであり、脱枠直後の最も養生温度を高くして制御管理すべき最初のスパンである。
第2スパンS2は、中間の養生スパンであり、コンクリート温度はピーク温度を超え下降パターンを示す。よって第1スパンS1の流末の配管からの水温を利用可能な場合もある。それ以外の場合、第1スパンS1と同等の加温ユニットの配置となるが、加熱ヒータは第1スパンS1ほど加温能力は必要ない。
第3スパンは、最終のスパンであり、コンクリートの表面温度がトンネル坑内の温度に近くなるが、急激な温度変化や湿度変化は有害な影響を与えるため、コンクリートの表面温度と略同じ温度の水を噴霧し続ける。
【0028】
他方、図5(b)〜(c)に示すように、橋梁橋脚部アバット10等の壁面構造物やカルバート11等のコンクリート構造物においても、打設型枠を取り外したコンクリート1に対して、所要間隔をあけてコンクリート1の表面を被覆するように防水シート2を張設し、該防水シート2とコンクリート1の間に略密閉の空間部3を形成する。
そして、この空間部3に、経時的に変化するコンクリート1の表面温度と略同じ温度に調整した水を噴霧し充満させる。
空間部3は、養生するコンクリート1の表面に沿って、フレームで支持した防水シート2を張設することにより形成することができる。
この場合、フレームには、多数の噴霧ノズル9を要所に配設し、微粒子の水を略密閉の空間部3にまんべんなく噴霧して充満させ、均一な湿度状態にある養生空間を形成する。
【0029】
セメントの水和に起因するひび割れは、温度解析により算定された温度分布に基づく体積変化と自己収縮による体積変化を求め、これらを採り入れた応力解析を行う。
このとき、コンクリートの表面の温度履歴を求め、この温度と差ができないように温度管理・養生すれば、コンクリート表面に温度差が起きず、温度によるひび割れ発生が防止できる。
一方、コンクリートのひび割れは、コンクリートの表面に引張強度(温度、乾燥収縮等による)が発生、その引張強度に対してコンクリートそのものが持っている引張強度が大きければ発生しないこととなる。
したがって、コンクリートの強度増加が早く大きく長期強度が大きいほどひび割れ抵抗性が大となるコンクリートを目指すことが必要となる。
【0030】
ところで、コンクリートの強度増加が伴えば、一般にひび割れ抵抗性が増大するといわれている。そこで、高炉セメントB種、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントの3種類、水セメント比55%において、材齢3日、7日、28日、養生方法を噴霧養生する方法と噴霧なしの空中養生方法で比較実験を行った。
その結果、噴霧養生は、空中養生に比べて1.5倍から1.8倍程度の圧縮・引張強度増加となった。
この値を温度解析による方法で求めたひび割れ検討を実施した結果、このような噴霧養生を行えば、ひび割れ防止に極めて有効であることがわかった。
さらに、このような噴霧養生を行うことにより、高炉セメントB種で、早強ポルトランドセメントよりも初期強度及び長期強度が1.3から1.7倍程度増加することがわかった。
この噴霧養生を実施すれば、高炉セメントB種で早強ポルトランドセメントよりもひび割れ抵抗性が大きい。このことからも、セメントの水和反応を十分に発揮させるためには、水中養生や90〜100%の湿度養生が有効であることがわかる。
【0031】
一方、噴霧する水の温度管理を行う本実施例のコンクリートの養生方法について、その養生効果を確認するために実物大試験を行った。
図3〜図4に示すように、通常の2車線トンネルで、長さ10.5m、高さ7m、上断面半径5mである。このトンネルの内側を長さ6m区間に亘って防水シート2で覆って略密閉の空間部3を設け、このアーチフレーム5の中に、円周方向8箇所に噴霧ノズル9を設けたアーチフレーム5を長さ方向に2列配置し、噴霧ノズル9を合計16個設けた(図では一部省略している)。
さらに、コンクリートの表面温度を測定する温度センサ12を、円周方向で3箇所ずつアーチフレーム5に設置した。コンクリート1の厚さは30cmで、高炉セメントB種を用いた。このような条件において、噴霧養生を7日間実施し、その後、防水シート2の覆いを外した。
その結果、防水シート2で覆い本実施例の養生方法を実施したコンクリートには、ひび割れが発生しなかった。
【0032】
これに対して、養生を実施しなかった4.5mの区間のコンクリートには、トンネル長さ方向で略直線状の幅が0.5から3.5mmのひび割れが発生した。このひび割れは、現在施工されているトンネル覆工コンクリートに発生しているひび割れ形状と同様である。
コンクリートの強度については、圧縮・引張強度は、材齢28日、φ10cmで長さ30cmのコンクリートコアを、養生を行ったコンクリート及び養生を行わなかったコンクリートからそれぞれ3箇所ずつ採取した。
この試料を圧縮試験JISA1108・引張強度試験JISA1113の試験方法により試験した。その結果、養生したコンクリートコアは、養生しないコンクリートコアに比べて圧縮及び引張強度とも約1.5倍となった。
すなわち、噴霧する水の温度管理を行う本実施例のコンクリートの養生方法では、ひび割れ防止及び強度増加に対してその効果が確認できたが、これは、ひび割れ防止に乾燥収縮ひび割れを防止するために保温と湿潤養生ができ、セメントの水和熱に起因する温度応力ひび割れが温度制御により防止できたためである。
【0033】
かくして、本実施例のコンクリートの養生方法によれば、打設型枠を取り外したコンクリート1に対して、所要間隔をあけてコンクリート1の表面を被覆するように防水シート2を張設し、該防水シート2とコンクリート1の間に略密閉の空間部3を形成するとともに、水和反応により経時的に温度変化するコンクリート1に対し、その表面温度と略同じ温度に調整した水を前記空間部3に噴霧し充満させることから、コンクリート1の表面温度の検出や養生時の温度変化の理論値に基づいて、材齢によるコンクリート1の養生に最適な温度でその表面を湿潤させることができ、これにより、脱枠後のコンクリート1に対して材齢毎の最適な養生管理を行うことができる。
また、コンクリート表面に形成した略密閉の空間部3を霧で充満させることにより、均一な湿度状態にある養生空間を形成することができ、これにより、コンクリート1の硬化強度発現に必要な水和反応を持続するための水分の蒸散をなくすとともに、微粒子状の水分を積極的に供給することにより、コンクリート表面の緻密化や強度発現の増進に寄与し、コンクリート表面の欠陥の発生を低減することができる。
【0034】
この場合、噴霧する水の平均粒子径を10〜100μm、より好ましくは、45〜60μmの微霧とすることにより、複雑な形状や天井面、垂直面の養生も霧を容易に充満させるとともに、水滴等の衝突によるコンクリート1表面の荒れや、筋上の水の滴れ跡が付くことを防止することができ、さらに、霧の発生のための必要な水量は微少であり、水による路面の泥濘化を防止することができる。
【0035】
また、コンクリート1の水和反応による温度変化を温度センサ12にて検出し、該検出した温度に基づいて噴霧する水の温度を調整することにより、実際のコンクリート1の発熱温度を検出しながら、リアルタイムで噴霧する水の温度管理を行うことができる。
【0036】
また、コンクリート1の水和反応による温度変化を事前に理論値として求め、該理論値の温度に基づいて噴霧する水の温度を調整することにより、温度センサ12を配設する手間を省略し、コンクリート1の打設条件に応じた理論値に基づいて噴霧する水の温度管理を行うことができる。
【0037】
また、養生区間を複数のスパンSに区画して、前記空間部3をスパンS毎に分割し、該スパンS毎に噴霧する水の温度を調整することにより、脱枠後のコンクリート1に対して材齢毎のより最適な養生管理を行うことができる。
【0038】
以上、本発明のコンクリートの養生方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のコンクリートの養生方法は、脱枠後のコンクリートに対して材齢毎の最適な養生管理を行えることから、例えば、トンネルやボックスカルバート、桟橋、橋梁、擁壁、水路、建築の柱・壁・梁等、多くの構造物のコンクリートの養生に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のコンクリートの養生方法の一実施例を示し、(a)は施工するトンネルの断面図、(b)は左半が(a)のB矢視断面図、右半が(a)のA矢視断面図である。
【図2】同実施例で使用する養生装置を示し、(a)は天井部付近の断面図、(b)は車輪とレールの2面図、(c)はレールの3面図である。
【図3】同コンクリートの養生方法の実験例を示す斜視図である。
【図4】加温ユニットを示す概要図である。
【図5】本発明のコンクリートの養生方法を示し、(a)はトンネルへの施工を示す斜視図、(b)は橋梁橋脚部への施工を示す斜視図、(c)はカルバートへの施工を示す斜視図である。
【図6】コンクリート表面の温度に対応して、噴霧ノズルから噴霧される水の温度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
1 コンクリート
2 防水シート
3 空間部
4 養生装置
5 アーチフレーム
6 エアーバルク
7 車輪
8 レール
9 噴霧ノズル
10 橋梁橋脚部アバット
11 カルバート
12 温度センサ
13 温度コントローラ
14 水タンク
15 加熱ヒータ
16 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設型枠を取り外したコンクリートに対して、所要間隔をあけてコンクリートの表面を被覆するように防水シートを張設し、該防水シートとコンクリートの間に空間部を形成するとともに、水和反応により経時的に温度変化するコンクリートに対し、その表面温度と略同じ温度に調整した水を前記空間部に噴霧し充満させることを特徴とするコンクリートの養生方法。
【請求項2】
噴霧する水の平均粒子径を10〜100μmの微霧としたことを特徴とする請求項1記載のコンクリートの養生方法。
【請求項3】
コンクリートの水和反応による温度変化を温度センサにて検出し、該検出した温度に基づいて噴霧する水の温度を調整することを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリートの養生方法。
【請求項4】
コンクリートの水和反応による温度変化を事前に理論値として求め、該理論値の温度に基づいて噴霧する水の温度を調整することを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリートの養生方法。
【請求項5】
養生区間を複数のスパンに区画して、前記空間部をスパン毎に分割し、該スパン毎に噴霧する水の温度を調整することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のコンクリートの養生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−223372(P2008−223372A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64574(P2007−64574)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(390036515)株式会社鴻池組 (41)
【出願人】(505356491)株式会社マシノ (10)
【Fターム(参考)】