説明

コンクリートセグメントおよびその製造方法

【課題】 コンクリートセグメントおよびその製造方法において、セグメント内周面または外周面の近傍における特定機能に係る特性、例えば耐食性、耐火性などを可変することができるとともに、安価かつ容易に製造することができるようにする。
【解決手段】 コンクリートセグメント1の内周面4を形成する保護層7を相対的に薄肉に層状に設け、板厚方向に隣接して相対的に厚肉のコンクリート層8を設ける。すなわち、型枠内に保護層7を形成する保護用モルタルを層状に配置して、半硬化状態でコンクリート層8を形成するコンクリートを打設し、それぞれを硬化させ、養生後、脱型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートセグメントおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートセグメントを用いた構造物、例えば、下水道、排水道、シールドトンネルや地下タンクなどでは、コンクリートセグメントの耐食性、止水性などの特性を向上するために、コンクリートセグメントの外周面または内周面にライニング層を設けている場合がある。
例えば、特許文献1には、コンクリートセグメントの内周面に耐油、耐食材としてガラス繊維強化プラスチックライニング材を塗布した洞道が記載されている。
また、特許文献2には、コンクリートセグメントの外周面からの地下水の侵入を防止するため止水性を有する無溶剤型塗料をセグメントの外表面に塗布、硬化して形成されるライニング層を設けた防食セグメントが記載されている。
また、特許文献3には、片面に突起を有する合成樹脂層と、その突起が貫入するように積層されたコンクリート層との間に抗菌剤が封入されてなる抗菌性コンクリート積層体が記載されている。
ライニング層を設けるこの他の方法としては、例えば、耐食性の樹脂パネルや樹脂シートをコンクリートセグメントに貼付する方法や、耐食材料をコンクリートセグメント表面に左官仕上げ、吹付け、塗布するなどの方法が知られている。
【特許文献1】特開平5−222899号公報(第2頁、図1、3)
【特許文献2】特開2001−349192号公報(第2−4頁、図1)
【特許文献3】特開平11−277656号公報(第3−5頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来のコンクリートセグメントおよびその製造方法には以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術によれば、コンクリートセグメントの内周面にライニング材を塗布するので、後施工となり、施工の手間がかかるという問題がある。
特許文献2に記載の技術によれば、セグメント単位でライニング層を設けられるので工場や、組立現場で加工できるものの、セグメントに別材料からなるライニング層を塗布しなければならない手間がかかることは特許文献1の場合と同様である。
特許文献3に記載の技術によれば、例えば、合成樹脂層をセグメント型枠に配置してからコンクリートを打設することにより合成樹脂層を一体化することができるので後加工、後施工の手間が省ける。しかしながら、一般にコンクリートセグメントには、何らかの穴形状やインサート金具などを設ける必要があるので、これらを形成・配置するために型枠面が複雑な構成となっているものである。そして、これらを避けて合成樹脂層を配置しなければならない。そのため、合成樹脂層の形状が複雑となり型枠に配置する手間がたいへんなものとなるという問題がある。
また、コンクリートセグメントを製造後、耐食性樹脂パネルなどを貼付したり、セグメント表面を左官仕上げなどしたりする場合も、後加工の手間がかかるという問題がある。
このように耐食性などを付与するためにライニング層を設けるようにした従来のコンクリートセグメントおよびその製造方法では、ライニング層の加工の手間がかかるために、製造コストが高いものにつくという問題がある。
また、ライニング層により、コンクリートセグメントの厚みが増しているにもかかわらず、ライニング層とセグメント本体との一体性が不十分であるため、ライニング層がセグメントの剛性、強度にほとんど寄与しない構造となっている。そのため、コンクリートセグメントの厚さが必要以上に厚くなってしまうという問題がある。
一方、コンクリートセグメント全体を耐食性、止水性など所望の特性を有する材料で形成することも考えられるが、この場合には、材料コストが高くなるので、高価なコンクリートセグメントになってしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、セグメント内周面または外周面の近傍における特定機能に係る特性、例えば耐食性、耐火性などを可変することができるとともに、安価かつ容易に製造することができるコンクリートセグメントおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、水硬性セメント流動体を型枠内で硬化させて形成したコンクリートセグメントであって、前記水硬性セメント流動体の1つが、前記型枠の型枠面のうちセグメント内周面または外周面に沿って相対的に薄肉の第1硬化層を形成し、前記水硬性セメント流動体の他の1つが、前記第1硬化層に対してセグメント板厚方向に隣接して一体化された相対的に厚肉の第2硬化層を形成した構成とする。
この発明によれば、セグメント内周面または外周面から、板厚方向に薄肉の第1硬化層、厚肉の第2硬化層が形成され、型枠内で硬化されて一体化されたコンクリートセグメントとなる。そのため、第1、2硬化層を形成する水硬性セメント流動体の構成をそれぞれ変えることで、板厚方向に傾斜機能を有するコンクリートセグメント、すなわち板厚方向に特定機能に対応する構成、物性が変化するコンクリートセグメントが得られる。
また第1、2硬化層が一体化されることで、剛性を向上することができる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のコンクリートセグメントにおいて、前記第1硬化層が、前記第2硬化層の保護層とされた構成とする。
この発明によれば、相対的に薄肉の第1硬化層で第2硬化層の保護層を形成するので、比較的少量の第1硬化層により効率的に第2硬化層を保護し、耐久性の高いコンクリートセグメントとすることができる。
ここで、保護層とは、例えば、衝撃力や土水圧などの外力、化学変化、熱、火災などによる第2硬化層の破損、劣化を防止または低減する作用を有するものを言う。すなわち、必要に応じて、強度、耐食性、耐熱性、耐火性、断熱性、止水性などの少なくともいずれかの特性が第2硬化層に対して向上された構成となっていることを意味する。
なお、本明細書では、耐熱性が高いとは、温度上昇により水硬性セメント流動体の硬化物が化学変化を起こして強度が劣化したり、熱応力によって破損が生じたりしにくいことを意味し、耐火性が高いとは、火災によるコンクリートの爆裂が起こりにくいことを意味する。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のコンクリートセグメントにおいて、前記第1硬化層が、流体の透過を規制する不透水層とされた構成とする。
この発明によれば、第1硬化層が不透水層とされるので、トンネル形成時にトンネル内外へ流体が浸透、侵出することを防止できる。
【0008】
請求項4に記載の発明では、水硬性セメント流動体を型枠内で硬化させて形成したコンクリートセグメントの製造方法であって、前記水硬性セメント流動体の1つを、前記型枠の型枠面のうちセグメント内周面または外周面を形成する型枠面に沿って層状に配置し、該層状に配置された水硬性セメント流動体の1つの硬化が終了する前に、前記水硬性セメント流動体の他の1つを、前記層状に配置された水硬性セメント流動体の1つの上に隣接して打設し、養生後、前記水硬性セメント流動体のすべての硬化が終了してから脱型する方法とする。
この発明によれば、型枠面に沿う水硬性セメント流動体の1つの層が形成され、それが硬化する前にその上に水硬性セメント流動体の他の1つを打設してから、養生し、それぞれの硬化を終了させるので、少なくとも水硬性セメント流動体の1つと他の1つとにより、境界面の一体性が高い2層構造を有するコンクリートセグメントを製造することができる。
したがって、水硬性セメント流動体の1つの層を相対的に薄肉とし、水硬性セメント流動体の他の1つを相対的に厚肉となるように打設すれば、それぞれにより、請求項1に記載のコンクリートセグメントの第1硬化層、第2硬化層が形成されるものであり、請求項1に記載のコンクリートセグメントの製造方法となっている。
【0009】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載のコンクリートセグメントの製造方法において、前記水硬性セメント流動体の1つを前記型枠面に沿って層状に配置する際、吹付け工法を用いる方法とする。
この発明によれば、吹付け工法により水硬性セメント流動体を配置するので、型枠面に沿って迅速に配置することができる。
また、型枠面が、例えば突起形状や穴形状などを有する複雑な形状を備えていたり、型枠面にインサート金具などが配置されたりする場合でも、型枠面やインサート金具などに対して、高い密実性を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンクリートセグメントによれば、第1、2硬化層を形成する水硬性セメント流動体の構成をそれぞれ変えることで、板厚方向に特定機能に対応する構成、物性を可変できるので、セグメント内周面または外周面の近傍における特定機能に係る特性、例えば耐食性、耐火性などを可変することができるとともに、剛性に優れ、安価かつ容易に製造することができるという効果を奏する。
また本発明のコンクリートセグメントの製造方法によれば、セグメント内周面または外周面に水硬性セメント流動体の1つを配置し、少なくとも水硬性セメント流動体の1つと他の1つとにより、境界面の一体性が高い2層構造を有するコンクリートセグメントを製造することができるので、セグメント内周面または外周面の近傍における特定機能に係る特性、例えば耐食性、耐火性などを可変できるとともに、剛性に優れたコンクリートセグメントを安価かつ容易に製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
本発明の実施形態に係るコンクリートセグメントについて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るコンクリートセグメントの外観について説明するための斜視説明図である。図2(a)は、本発明の実施形態に係るコンクリートセグメントの周方向に沿う断面説明図である。図2(b)は同じく延設方向に沿う断面説明図である。
【0012】
本実施形態のコンクリートセグメント1は、図1に示すように、略一定の厚さ(t)を有するとともに、一方向に円弧状の湾曲した板状部材であり、複数を接合して組み立てることにより、掘削トンネルの内部を覆工するために用いられるものである。
一般に、掘削トンネルを覆工するコンクリートセグメントの形状は、例えば平面視六角形のものや、平面視台形のK型セグメントなど種々の平面視形状が知られている。また継手構造の違いによっても種々の形状がある。
本発明はそのような種々の平面視形状や継手構造を有するコンクリートセグメントに対しても容易に適用できるが、以下では、簡単のために、トンネルの中心軸を含む2平面とトンネルの中心軸に直交する2平面で切り取った平面視矩形状の例で説明する。
すなわち、コンクリートセグメント1の側方には、トンネルの中心軸を含む平面に含まれる略矩形状の接合面2a、2aと、トンネルの中心軸と直交する平面に含まれる扇形状の接合面2b、2bとが形成されている。そして、湾曲の凹面側が内周面4(セグメント内周面)であり、凸面側が外周面5(セグメント外周面)になっている。
内周面4と、接合面2a、2a、2b、2bとが交差する位置に適宜間隔をおいて継手部3…が設けられている。
継手部3は、接合面2a(2b)に沿って、例えば、ボルト接合するための継手板3aが設けられ、内周面4側に接合作業を行うための穴空間が形成されているものである。
【0013】
以下、方向を参照する場合、トンネルの中心軸に一致するコンクリートセグメント1の湾曲の中心軸の延びる方向を軸方向、軸方向に直交する面内で湾曲に沿う方向を周方向、湾曲の径方向に沿う方向を板厚方向と称する場合がある(図1参照)。
【0014】
図2(a)、(b)を参照して、コンクリートセグメント1の断面の概略構成について説明する。
コンクリートセグメント1は、内周面4から板厚方向に沿って、保護層7(第1硬化層)、コンクリート層8(第2硬化層)が形成された2層構造を備えている。
保護層7は、コンクリート層8に対して破損、劣化などの原因となるストレスを遮断もしくは低減することで、コンクリート層8を保護するためのものであり、モルタルに適宜の添加材を混練して層状に硬化させ、内周面4からかぶりの範囲や、継手部3の裏面側などに形成されたものである。
保護層7の層厚は場所により異なっていてもよいが、平均厚さをtとすると、コンクリート層8の平均的な厚さtに対して相対的に薄肉になっている。すなわち、t<tであり、本実施形態では、t<t/2となっている。
厚さtは、コンクリート層8が保護可能な範囲でできるだけ薄くすることが好ましい。
【0015】
保護層7に含まれる添加材は、保護対象となるストレスにより異なる。
例えば、ストレスが衝撃力などの機械的ストレスである場合、ひび割れや剥落を防止するために、繊維を添加材とした繊維入りモルタルを採用することができる。繊維の種類としては、衝撃強さ、ひび割れ強度を向上できれば、適宜の材質、形状を採用できる。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維などの無機繊維や、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維などの有機繊維を採用することができる。
【0016】
また、例えばトンネル内を流れる水、排水、薬剤などによりコンクリートを腐食させるというようなストレスの場合には、それらに応じた耐食性を備え、水や薬剤がコンクリート層8に浸透しないような材質とする。例えば、止水性を有する高炉スラグ、シリカフューム、フライアッシュなどの混和材を配合した無機系高緻密モルタルや、ポリマーセメントモルタルなどからなる耐食モルタルなどが採用できる。
【0017】
また、トンネル内が高温になる場合には、耐熱性を備える軽量骨材モルタルや、空隙層を備える気泡モルタルのような断熱性モルタルを採用できる。
また、トンネル内で火災が発生する恐れがある場合など、コンクリート層8の爆裂を防止するために、保護層7として、コンクリート層8からの水蒸気をトンネル内に逃がすための水蒸気が通気できるものを採用することができる。このような通気性はある程度の高温時になると生じるような構成としてもよい。例えば、連続気泡を有する気泡モルタルや、所定温度で溶融する合成樹脂繊維を混練した繊維入りモルタルなどを採用することができる。
【0018】
次に。本実施形態のコンクリートセグメント1の製造方法について説明する。
図3(a)、(b)、(c)、図4(d)、(e)は、本発明の実施形態のコンクリートセグメントの各製造工程を順次説明するための周方向断面視の工程説明図である。
本実施形態の製造方法に用いる型枠は、下型枠10(図3(a)参照)と蓋型枠16(図3(c)参照)とからなる。
下型枠10は、コンクリートセグメント1の内周面4、接合面2a、2a、2b、2bの形状を形成するためのもので、それぞれに対応して内周部型枠面10a(型枠面)、接合部型枠面10b、10b(型枠面)、そして、不図示の接合部型枠面10c、10c(型枠面)が紙面奥側および手前側に設けられ、上方が開口され、それぞれの上端部が外周面5の湾曲に沿う型枠端面10dが形成されたものである。
内周部型枠面10a上には、継手部3、穴部6など必要な形状に応じて、継手部形成用突起13、孔部形成用突起14などが適宜設けられる。
蓋型枠16は、下型枠10を上方から覆い、外周部型枠面16b(型枠面)を型枠端面10d上に設置することで、コンクリートを打設するための型枠空間を形成するためのものである。蓋型枠16の湾曲の頂部には、コンクリートを注入するための注入孔16aが設けられている。
【0019】
まず、第1硬化層形成工程では、図3(a)に示すように、下型枠10の内周部型枠面10a等に向けて、吹付けノズル11により、保護用モルタル12を吹付け施工することで、保護用モルタル12(水硬性セメント流動体の1つ)を内周部型枠面10a、継手部形成用突起13、孔部形成用突起14などを覆う層状に配置する。
保護用モルタル12は、モルタルと適宜の添加材とが混練され、硬化後に、保護層7を形成するための水硬性セメント流動体である。そして、吹付ける直前に急結材などが混合され、吹付けノズル11から噴射でいきるようになっている。そして、内周部型枠面10a上で、自重などにより層厚が大きく変化しない程度の適度の粘度を有し、比較的短時間で硬化するように配合が調整されている。
このとき、図示していないが、吹付けの障害とならないように鉄筋9を配筋したり、配筋するためのスペーサなどを配置しておいたりしてもよい。
【0020】
次に、図3(b)に示すように、保護用モルタル12が完全に硬化する前に、鉄筋9の配筋を行う。そして、保護用モルタル12の硬化が適宜進行するまで放置する。
保護用モルタル12の硬化の程度は、保護用モルタル12の材質などにより異なるが、次工程のコンクリート打設により層厚があまり変化せず、かつコンクリートとの一体性が確保される程度の半硬化状態とする。このような半硬化状態は、保護用モルタル12の材質などにより異なるが、いずれの場合も急結材混合後の時間を管理することで、常に一定の状態が得られるものである。
以上で、第1硬化層形成工程が終了する。
【0021】
次に第2硬化層形成工程を行う。
本工程では、図3(c)に示すように蓋型枠16を型枠端面10d上に配置し、注入孔16aから、コンクリート17(水硬性セメント流動体の他の1つ)を打設する。
コンクリート17は、硬化後、コンクリート層8を形成するもので、適宜強度を発現する構造用コンクリートなどを採用することができる。
そして、下型枠10内の型枠空間に十分コンクリート17が充填されたら、図4(d)に示すように、下型枠10に型枠に振動を加えるなどして、外周部型枠面16bに沿って隙間なくコンクリート17を充填していく。
そして、注入孔16aを塞いで、例えば、適宜の温室度条件下で蒸気養生などを行い、保護用モルタル12、コンクリート17が完全に硬化するまで適宜養生を続ける。
以上で、第2硬化層形成工程が終了する。
【0022】
養生終了後、図4(e)に示すように、蓋型枠16を外して脱型する。このようにして、保護用モルタル12、コンクリート17が硬化して、それぞれ保護層7、コンクリート層8が形成されたコンクリートセグメント1が製造される。
【0023】
本実施形態のコンクリートセグメント1によれば、脱型状態で、内周面4が保護層7で覆われた2層構造が形成されるので、内周面4からのストレスに対して耐久性の優れたコンクリートセグメントとすることができる。また、保護層7を形成するために後加工などの手間をかけることなく製造でき、添加材などが含まれて比較的高価な保護層7を保護が必要な内周面4に薄肉で設けることができるので、迅速かつ安価に製造することができるという利点がある。
また、本実施形態の製造方法によれば、吹付け工法により保護層7を形成するので、内周部型枠面10a上に、例えば、継手部形成用突起13、孔部形成用突起14、鉄筋9、配筋用スペーサなどの凹凸のある部材が配置されていても、保護層7を確実かつ容易に配置できるという利点がある。また、吹付け時間、硬化時間が比較的短くて済むので、施工時間が短縮できるという利点がある。
また、保護用モルタル12が半硬化状態でコンクリート17を打設してともに硬化させるので、硬化後の保護層7とコンクリート層8との一体性に優れ、保護層7が強度断面として十分に機能するため、高強度のコンクリートセグメント1とすることができる。
【0024】
次に、本発明の実施形態の変形例について説明する。
図5(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施形態の第1、第2変形例に係るコンクリートセグメントについて説明するための、周方向断面を示す断面説明図である。
【0025】
本実施形態の第1変形例に係るコンクリートセグメント100は、図5(a)に示すように、本実施形態のコンクリートセグメント1において、保護層7が接合面2a、2aまで覆う構成としたものである。あるいは図示していないが、必要に応じて接合面2b、2bを覆うものであってもよいことは言うまでもない。
このようなコンクリートセグメント100は、第1硬化層形成工程において、下型枠10の接合部型枠面10b(図3(a)参照)、10c(不図示)まで含めて、保護用モルタル12を吹付けることにより容易に製造できる。
コンクリートセグメント100によれば、接合面2a、2bを保護層7により保護することができるものである。
【0026】
本実施形態の第2変形例に係るコンクリートセグメント101は、図5(b)に示すように、本実施形態のコンクリートセグメント1において、コンクリート層8の上方をコンクリート層8に比べて薄肉の保護用コンクリート18(第1硬化層)で覆う3層構造としたものである。
保護用コンクリート18は、コンクリートに添加材を加えて、種々のストレスに対して、外周面5側からコンクリート層8を保護するためのものである。保護対象となるストレスは、保護層7について説明したすべてのストレスを対象とすることができる。コンクリートセグメント101は、内周面4と外周面5とで、異なるストレスに曝される場合には、保護用モルタル12と保護用コンクリート18とが異なる特性を備えるようにすることは言うまでもない。
保護用コンクリート18は、コンクリート層8を所定量打設した後、上方から打ち継ぐようにして打設すればよい。保護用コンクリート18は、層厚が薄いので、より効率よく打設するために、例えば高流動コンクリートなどを採用するようにしてもよい。
このようなコンクリートセグメント101によれば、内周面4、外周面5がともに保護されたコンクリートセグメントとされるので、内周面4、外周面5のそれぞれのストレスに応じた保護層を容易に設けることができ、耐久性に優れ、しかも安価なコンクリートセグメントとすることができる。
【0027】
なお、上記の説明では、保護層7が内周面4に設けられた例で説明したが、外周面5に設けられていてもよい。その場合、下型枠10の内周部型枠面10aが外周面5を形成するような図3とは上下が反対の湾曲を有する型枠構成とすれば、保護層7を上記と同様に吹付け工法により形成することができる。
【0028】
また、上記の説明では、保護層7を吹付け工法で形成する例で説明したが、保護層7の配置は、吹付け工法に限定されるものではない。
例えば、添加材の種類により吹付け工法が採用できない高粘度となったりする場合や、内周部型枠面10aの形状が単純な場合などには、ローラで圧延するなどして層状に配置してもよい。その場合でも、後加工する場合に比べれば少ない手間で製造できる。
【0029】
また、上記の説明では、保護層7はモルタルとして説明したが、水硬性セメント流動体であればよく、必要に応じてコンクリートであってもよい。
また、上記の第2変形例の説明で、外周面5を保護するために保護用コンクリート18を用いた例で説明したが、これもコンクリートに限るものではなく、モルタルを採用することもできる。
【0030】
また、上記の変形例は、互いに組み合わせて用いてもよい。そうすれば、コンクリート層8を保護層7、保護用コンクリート18で完全に覆った層状構造を形成することができる。
【0031】
また、上記の説明では、第1硬化層として保護層を設ける場合で説明したが、第2硬化層と異なる特定機能を付与するために用いるならば、保護層には限定されない。例えば、単に遮水性能を付与するための不透水層としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るコンクリートセグメントの外観について説明するための斜視説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るコンクリートセグメントの周方向に沿う断面説明図、および延設方向に沿う断面説明図である。
【図3】本発明の実施形態のコンクリートセグメントの各製造工程を順次説明するための周方向断面視の工程説明図である。
【図4】同じく図3に続く工程を説明するための工程説明図である。
【図5】本発明の実施形態の第1、第2変形例に係るコンクリートセグメントについて説明するための、周方向断面を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1、100、101 コンクリートセグメント
2a、2b 接合面
3 継手部
4 内周面(セグメント内周面)
5 外周面(セグメント外周面)
6 穴部
7 保護層(第1硬化層)
8 コンクリート層(第2硬化層)
9 鉄筋
10 下型枠(型枠)
10a 内周部型枠面(型枠面)
10b 接合部型枠面(型枠面)
12 保護用モルタル(水硬性セメント流動体の1つ)
16 蓋型枠(型枠)
16b 外周部型枠面(型枠面)
17 コンクリート(水硬性セメント流動体の他の1つ)
18 保護用コンクリート(第1硬化層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性セメント流動体を型枠内で硬化させて形成したコンクリートセグメントであって、
前記水硬性セメント流動体の1つが、前記型枠の型枠面のうちセグメント内周面または外周面に沿って相対的に薄肉の第1硬化層を形成し、
前記水硬性セメント流動体の他の1つが、前記第1硬化層に対してセグメント板厚方向に隣接して一体化された相対的に厚肉の第2硬化層を形成したことを特徴とするコンクリートセグメント。
【請求項2】
前記第1硬化層が、前記第2硬化層の保護層とされたことを特徴とする請求項1に記載のコンクリートセグメント。
【請求項3】
前記第1硬化層が、流体の透過を規制する不透水層とされたことを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリートセグメント。
【請求項4】
水硬性セメント流動体を型枠内で硬化させて形成したコンクリートセグメントの製造方法であって、
前記水硬性セメント流動体の1つを、前記型枠の型枠面のうちセグメント内周面または外周面を形成する型枠面に沿って層状に配置し、
該層状に配置された水硬性セメント流動体の1つの硬化が終了する前に、前記水硬性セメント流動体の他の1つを、前記層状に配置された水硬性セメント流動体の1つの上に隣接して打設し、
養生後、前記水硬性セメント流動体のすべての硬化が終了してから脱型することを特徴とするコンクリートセグメントの製造方法。
【請求項5】
前記水硬性セメント流動体の1つを前記型枠面に沿って層状に配置する際、吹付け工法を用いることを特徴とする請求項4に記載のコンクリートセグメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−62133(P2006−62133A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245133(P2004−245133)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】