説明

コンクリートフレーム成型用の型枠

【課題】植生タイプと防草タイプの両コンクリートフレームを共通の型枠で成型することができるコンクリートフレームの型枠を提供する。
【解決手段】コンクリートフレームの外形を区画する外枠2と、外枠2内に配されてコンクリートフレームの内形を区画する内枠3とからなり、内枠は共通の下内枠上に上内枠12として植生用上内枠13と防草用上内枠とを選択配置して固定可能であり、植生用上内枠と前記下内枠との間にパッキング材を備える。

【考案の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
 本考案は、コンクリートフレームを生コンクリートの成型により製造する型枠に係り、特に、造成地において盛土の壁面に沿って配置するコンクリートフレームを製造する成型用の型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
 造成地においては、盛土して造成を行うことがあるが、その壁面に沿ってコンクリートフレームを配置して補強を行う。このコンクリートフレームは、植生タイプと防草タイプとに大別される。植生タイプのコンクリートフレームの中央には金網を張設した開口部が形成されており、土壁側に植生した草木を金網の網目から挿通させて表土を拘束するように成っている。一方、防草タイプのコンクリートフレームの中央には減肉凹部が形成されており、土壁面を露出させない構造と成っている。
 このような補強土擁に関連する技術としては、例えば、特開2001−311172号公報(特許文献1)に「間伐材とジオグリッドを相互補完的に組合せた補強土擁壁」に係る発明が開示されている。
【特許文献1】特開2001−311172号公報
【考案の開示】
【考案が解決しようとする課題】
【0003】
 上述したように、コンクリート擁壁を構築するコンクリートフレームには植生タイプと防草タイプとがあるが、双方のフレームの外形が同じであってもそれぞれ別個の型枠を用いて成型しているのが現状であり、作業スペースが増大し、多くの型枠材を要していた。
 また、植生タイプのコンクリートフレームの場合には、中央の開口部を形成する内枠に金網を張設し生コンクリートを打設して成型するが、成型時に金網の線材挿入部からコンクリートミルクが漏れ出てしまい、緻密な成型が困難であった。
【0004】
 本考案は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、その目的は、植生タイプのコンクリートフレームと防草タイプのコンクリートフレームとの双方のフレームを共通の型枠で成型することができ、植生タイプのフレームをも緻密に成型しうるコンクリートフレーム成型用の型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
 請求項1に記載のものは、盛土の壁面に沿って配置するコンクリートフレームを生コンクリートの成型により製造する型枠において、
 コンクリートフレームの外形を区画する外枠と、該外枠の内側に配されてコンクリートフレームの内形を区画する内枠と、からなり、
 該内枠は、下内枠と上内枠とに分割可能であって、共通の下内枠上に、上内枠として植生用上内枠と防草用上内枠とを選択して取り付け可能であり、
 前記植生用上内枠は、前記下内枠上に取り付けた状態でコンクリート打設面を超える上面高さを有し、
 該植生用上内枠の下端周縁部と前記下内枠の上端周縁部とに、上下から金網を挟み込むパッキング材を備えたことを特徴とするコンクリートフレーム成型用の型枠である。
【0006】
 請求項2に記載のものは、前記防草用上内枠が、前記下内枠上に配した状態でコンクリート打設面を下回る上面高さを有することを特徴とする請求項1に記載のコンクリートフレーム成型用の型枠である。
【考案の効果】
【0007】
 請求項1に記載の考案によれば、コンクリートフレームの外形を区画する外枠と、該外枠内に配してコンクリートフレームの内形を区画する内枠と、からなり、さらに内枠が下内枠と上内枠とに分割可能であり、共通の下内枠上に上内枠として植生用上内枠と防草用上内枠とを選択して取り付けるので、植生タイプのコンクリートフレームと防草タイプのコンクリートフレームとの双方のフレームを共通の型枠で製造することができる。
【0008】
 また、植生用上内枠は下内枠上に配した状態でコンクリート打設面を超える上面高さを有しているので、これら植生用上内枠および下内枠を内枠としてコンクリートフレームの中央に貫通開口部を形成することができる。そして、植生用上内枠と下内枠との間に、上下にパッキング材を介して金網を挟み込むので、金網の線材挿入部からコンクリートミルクが漏れ出すことがなく、植生タイプのコンクリートフレームをも緻密に成型しうる。
【0009】
 請求項2に記載の考案によれば、防草用上内枠は下内枠上に配した状態でコンクリート打設面を下回る上面高さを有するので、コンクリートフレームの中央に防草タイプとして減肉凹部を形成することができる。
【考案を実施するための最良の形態】
【0010】
 以下、本考案を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
 図1は、本考案のコンクリートフレームの型枠の一形態であり、下内枠上に植生用上内枠を装着した状態を示す斜視図である。図2は、本考案のコンクリートフレームの型枠における外枠と下内枠を示す斜視図である。
【0011】
 本考案の型枠1は、コンクリートフレームの外形を区画する外枠2と、この外枠2内に配してコンクリートフレームの内形を区画する内枠3とから概略構成されており、図3に示すような植生タイプのコンクリートフレーム21と、図4に示すような防草タイプのコンクリートフレーム22との双方のフレームを製造することができる。
【0012】
 植生タイプのコンクリートフレーム21は、中央に金網23を張設した貫通開口部24を有しており、土壁側に植生した草木を金網23の網目から挿通させて表土を拘束するように成っている。一方、防草タイプのコンクリートフレーム22の中央には減肉凹部25が形成されており、この減肉凹部25で土壁面を覆って露出させない構造と成っている。
【0013】
 外枠2は、チャンネル鋼材等の枕材4上に敷設される長方形状の底板枠5と、この底板枠5の四辺を囲繞する二対の堰枠6,7とからなっている。これら二対の堰枠6,7の上面は所望のコンクリート打設面を超える高さに設定されており、離型時には二対の堰枠6,7をそれぞれ外側へと移動(回動)させて型開きできるように成っている。したがって、コンクリートフレーム21,22の上下面に段差部を成形しても支障なく脱型することができる。
【0014】
 この外枠2の内側には、正方形の四隅を面取りした八角形状を呈する内枠3が設けられており、本実施形態では、外枠2内に二つの内枠3が左右横並びとなるように設けられている。各内枠3は、八角形の皿状の下内枠11と上内枠12とに上下に分割可能であり、共通の下内枠11上に、上内枠12として植生用上内枠13と防草用上内枠14(図6参照)とを交換して選択配置させることができる。下内枠11は八角形の皿を上向きにした形状を呈しており、その上端周縁部には、ゴム製リップ状のパッキング材8が上方に突出した状態で装着されており、上端周縁部により囲まれた内側には、植生用上内枠13を固定するためのナット15が四隅に固定されると共に、その近傍に防草用上内枠14の固定に用いる4箇所のボルト挿通孔17が穿設されている。
【0015】
 上内枠12は、上述したように植生用上内枠13と防草用上内枠14との二種類が備えられており、それぞれ下内枠11に対応して八角形の皿を下向きにした形状を呈している。植生用上内枠13の下端周縁部には、ゴム製リップ状のパッキング材9(図8参照)が下向きに突出した状態で装着されており、その上面の四隅には上記ナット15の位置に対応するようにボルト挿通孔18が穿設されいる。したがって、この植生用上内枠13を下内枠11上に載せ、ボルト挿通孔18に上方からボルト19を挿入してナット15に螺合すると、植生用上内枠13が下内枠11上に固定されて内枠となる。
【0016】
 この植生用上内枠13は、下内枠11上に固定した状態でコンクリート打設面を超える上面高さを有しており、植生タイプのコンクリートフレーム21を成型する際には、図5に示すように、下内枠11と植生用上内枠13との間に、上下にパッキング材8,9を介して金網23を挟み込んで、ボルト締結により固定する。そして、このようにして金網23を挟み込んでボルトで締め付けると、図8に示すように、金網23の線材がパッキング材8,9に潜り込んで両パッキング材8,9の間に隙間が生じない。なお、本実施形態では、金網23として、例えば4φの線材を縦横に溶接した金網を使用する。
【0017】
 一方、防草用上内枠14は、図6に示すように、防草タイプのコンクリートフレーム22の減肉凹部25を形成するので、下内枠11上に取り付けた状態でコンクリート打設面を下回る上面高さを有しており、その上面は平滑に形成されている。そして、図7に示すように、防草用上内枠14の下面には、下内枠11内に穿設した上記ボルト挿通孔17内に挿通するようにスタッドボルト26が溶接固定されている。したがって、この防草用上内枠14を下内枠11上に載せてスタッドボルト26をボルト挿通孔17に通して底板枠5の下面へと挿通してナット16を螺合することにより、防草用上内枠14が固定できる。
【0018】
 なお、本実施形態では、外枠2内に左右に横並びとなるように一対の下内枠11を配しているが、下内枠11の数はこれに限るものではなく、単一または三以上横並びに配してもよく、その形状も八角形に限るものではない。
【0019】
 次に、本実施形態の型枠1を使用してコンクリートフレーム21,22を製造する手順を説明する。
 植生タイプのコンクリートフレーム21を成型する場合は、まず、長方形の底板枠5の四辺に二対の堰枠6,7を固定して外枠2を組み立てた後、外枠2内の下内枠11上に金網23を載せる。本実施形態では、外枠2内に2つの下内枠11が設けられているので、各下内枠11上にそれぞれ略正方形に裁断した金網23を別個に載せてもよいし、両下内枠11上に亘るように略長方形に裁断した溶接金網23を載せてもよい。そして、その上に植生用上内枠13を配して、植生用上内枠13の上面の四隅のボルト挿通孔18に上方からボルト19を挿入し、ナット15に螺合することにより植生用上内枠13を固定する。
【0020】
 この状態で、外枠2内に植生用上内枠13の上面未満の所定の高さまで生コンクリートを打設し、バイブレーターで振動を与えて隙間をなくす。このようにして生コンクリートを打設した時に、下内枠11と植生用上内枠13との間に金網23を挟み込んでいても、図8に示すように、上下のパッキング材8,9の変形により金網23の線材を潜り込ませて隙間をなくして密着させているので、線材挿入部からコンクリートミルクが漏れ出すことがなく、植生タイプのコンクリートフレーム21を緻密に成型することができる。
【0021】
 そして、養生した後に脱型すると、植生用上内枠13の上面がコンクリート打設面を超える上面高さを有しているので、これら下内枠11および植生用上内枠13からなる内枠3の部分がコンクリートフレーム21の貫通開口部24となり、この貫通開口部24内に金網23が露出して、図3に示す植生タイプのコンクリートフレーム21が出来上がる。
【0022】
 一方、防草タイプのコンクリートフレーム22を成型する場合は、長方形の底板枠5の四辺に二対の堰枠6,7を固定して外枠2を組み立てた後、外枠2内の下内枠11上に防草用上内枠14を載せて、スタッドボルト26を下内枠11内のボルト挿通孔17に通過させ、底板枠5の下面へと挿通されたスタッドボルト26にナット16を螺合することにより、防草用上内枠14を固定する。
【0023】
 次にこの状態で、外枠2内に防草用上内枠14の上面を超える所定の高さまで生コンクリートを打設し、バイブレーターで振動を与えて隙間をなくす。
【0024】
 そして、養生した後に脱型すると、防草用上内枠14は、下内枠11上に取り付けた状態でコンクリート打設面を下回る上面高さを有しているので、減肉凹部25を形成することができ、これにより図4に示す防草タイプのコンクリートフレーム22が出来上がる。
【0025】
 このように本実施形態の型枠1によれば、コンクリートフレームの内形を区画する内枠3が下内枠11と上内枠12とに分割可能であり、共通の下内枠11上に、上内枠12として植生用上内枠13と防草用上内枠14とを選択配置することができるので、植生タイプのコンクリートフレーム21と防草タイプのコンクリートフレーム22との双方のフレームを共通の型枠1で製造することができ、作業スペースを縮小することができ、型枠材を大幅に節減することができる。そして、植生用上内枠13を使用すると、パッキング材8,9により金網23の線材を挟み付けて隙間なく密着させることができるので、セメントミルクが漏出することがない。したがって、脱型後のばり取りなどの後処理が簡単であり、開口部24に金網23を張ったコンクリートフレーム21を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本考案のコンクリートフレームの型枠の一形態であり、下内枠上に植生用上内枠を装着した状態を示す斜視図である。
【図2】本考案のコンクリート製フレームの型枠における外枠と下内枠を示す斜視図である。
【図3】植生タイプのコンクリートフレームを示す斜視図である。
【図4】防草タイプのコンクリートフレームを示す斜視図である。
【図5】本考案のコンクリート製フレームの型枠において、下内枠と植生用上内枠との間に金網を挟み込んだ状態を示す斜視図である。
【図6】本実施形態のコンクリートフレームの型枠であり、下内枠上に防草用上内枠を装着した状態を示す斜視図である。
【図7】本実施形態のコンクリートフレームの型枠において、防草用上内枠の固定状態を示す概略図である。
【図8】本実施形態のコンクリートフレームの型枠において、パッキング材の密着状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1 型枠
2 外枠
3 内枠
4 枕材
5 底板枠
6,7 堰枠
8,9 パッキング材
11 下内枠
12 上内枠
13 植生用上内枠
14 防草用上内枠
15,16 ナット
17,18 ボルト挿通孔
19 ボルト
21 植生タイプのコンクリートフレーム
22 防草タイプのコンクリートフレーム
23 金網
24 開口部
25 減肉凹部
26 スタッドボルト

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
 盛土の壁面に沿って配置するコンクリートフレームを生コンクリートの成型により製造する型枠において、
 コンクリートフレームの外形を区画する外枠と、該外枠の内側に配されてコンクリートフレームの内形を区画する内枠と、からなり、
 該内枠は、下内枠と上内枠とに分割可能であって、共通の下内枠上に、上内枠として植生用上内枠と防草用上内枠とを選択して取り付け可能であり、
 前記植生用上内枠は、前記下内枠上に取り付けた状態でコンクリート打設面を超える上面高さを有し、
 該植生用上内枠の下端周縁部と前記下内枠の上端周縁部とに、上下から金網を挟み込むパッキング材を備えたことを特徴とするコンクリートフレーム成型用の型枠。
【請求項2】
 前記防草用上内枠は、前記下内枠上に配した状態でコンクリート打設面を下回る上面高さを有することを特徴とする請求項1に記載のコンクリートフレーム成型用の型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【登録番号】実用新案登録第3099387号(U3099387)
【登録日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【発行日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【考案の名称】コンクリートフレーム成型用の型枠
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2003−270190(U2003−270190)
【出願日】平成15年7月22日(2003.7.22)
【出願人】(391052264)新興工材株式会社 (11)