説明

コンクリートブロックとコンクリートブロックの製造方法

【課題】流動性のある通常の生コンクリートを使用して、ブロックの一部に無数の空隙を設けて、しかも全体の強度を向上して能率よく多量生産する。
【解決手段】コンクリートブロックは、無数の空隙のある多孔質成形体1を、表面の一部を外部に表出する状態でコンクリート製のブロック本体2に埋設している。さらに、コンクリートブロックは、多孔質成形体1とブロック本体2との境界に、ブロック本体2に押圧されて、多孔質成形体1の空隙に侵入するように変形できる可撓性シート3を配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、海や河川に使用されるコンクリートブロック、とくに表面の一部に、微生物や小動物が棲息する無数の空隙を設けてなる生態系のコンクリートブロックとその製造方法に関する。表面に無数の空隙のあるコンクリートブロックは、空隙に微生物や小動物を繁殖できるが、表面全体をコンクリートで成形したコンクリートブロックは、表面が平滑面となって、微生物等の棲息に適した環境にはできない。微生物の棲息できないコンクリートブロックは、自然の環境と著しく相違して生物を共存できない。本発明のコンクリートブロックは、自然に近い環境を実現して、生物が共存できる状態を実現するブロックである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、表面に無数の空隙のあるコンクリートブロックを開発した。(特許文献1参照)
このコンクリートブロックは、以下のようにして製造される。骨材と、この骨材の接点を結合するバインダーとを混練りした空隙骨材ペーストを、型枠に所定の厚さに注入して、骨材の間に空隙を設ける。空隙骨材ペーストを充填した後、この上に即時脱型コンクリートを注入してプレス成形し、成形されたコンクリートブロックを型枠から脱型して製造する。即時脱型コンクリートは、骨材とセメントに水を混練りしたものである。この即時脱型コンクリートは、空隙骨材ペーストの上に打設して、空隙骨材ペーストの骨材の間に流入しないように、スランプ値を0〜2に調整したものである。
【特許文献1】特開平8−311890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このコンクリートブロックは、空隙骨材ペーストで表面に多数の空隙を設ける。空隙骨材ペーストで成形される空隙を塞がないように、0スランプの即時脱型コンクリートを打設する。このため、ブロック全体の強度が低下し、また即時脱型コンクリートを使用するために、大きな漁礁等を製造できない。さらに、このブロックは、空隙骨材ペーストで表面に無数の空隙を設けることはできるが、たとえば、無数の空隙のある領域をブロックを貫通するように設けることはできない。
【0004】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、即時脱型コンクリートに限らず、流動性のある通常の生コンクリートを使用して、ブロックの一部に無数の空隙を設けることができ、しかも全体の強度を向上して能率よく多量生産できるコンクリートブロックとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコンクリートブロックは、無数の空隙のある多孔質成形体1を、表面の一部を外部に表出する状態でコンクリート製のブロック本体2に埋設している。さらに、コンクリートブロックは、多孔質成形体1とブロック本体2との境界に、ブロック本体2に押圧されて、多孔質成形体1の空隙に侵入するように変形できる可撓性シート3を配設している。
【0006】
可撓性シート3は、プラスチックフィルムとすることができる。多孔質成形体1は、骨材をモルタルで多孔質な状態に結合することができる。多孔質成形体1は、ブロック本体2を貫通して、両端面を外部に表出させる状態でブロック本体2に埋設することができる。多孔質成形体1は、筒状とすることができる。
【0007】
本発明のコンクリートブロックの製造方法は、無数の空隙のある多孔質成形体1を製作する製造工程と、多孔質成形体1の表面を、ブロック本体2を成形する生コンクリートに押圧されて多孔質成形体1の空隙に侵入するように変形する可撓性シート3でカバーする被覆工程と、表面を可撓性シート3で被覆している多孔質成形体1を成形型4の定位置に仮止めする仮止工程と、多孔質成形体1を仮り止めしている成形型4に、多孔質成形体1の一部を外部に表出するように生コンクリートを打設する注入工程と、成形型4に注入された生コンクリートを形崩れしない状態で脱型する脱型工程とからなる。
ただし、本明細書において、「生コンクリート」は、大きな骨材を含まないモルタルを含む広い意味に使用する。
【0008】
本発明のコンクリートブロックの製造方法は、可撓性シート3にプラスチックフィルムを使用することができる。さらに、本発明のコンクリートブロックの製造方法は、多孔質成形体1がブロック本体2を貫通するように、多孔質成形体1を成形型4に仮止めして生コンクリートを注入することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンクリートブロックとその製造方法は、流動性のある通常の生コンクリートを使用して、ブロックの一部に無数の空隙を設けながら、全体の強度を向上して能率よく多量生産できる特長がある。それは、本発明が、無数の空隙のある多孔質成形体の表面を可撓性シートで被覆すると共に、この多孔質成形体を成形型の定位置に仮止めし、多孔質成形体の一部を外部に表出するように生コンクリートを打設し、さらに、成形型に注入された生コンクリートを形崩れしない状態で脱型してコンクリートブロックとしているからである。この構造のコンクリートブロックは、多孔質成形体とブロック本体との境界に、可撓性シートを配設しているので、流動性のある生コンクリートが多孔質成形体の空隙に侵入して多孔質成形体の空隙を塞ぐのを有効に防止できる。とくに、この可撓性シートには、ブロック本体を成形する生コンクリートに押圧されて、多孔質成形体の空隙に侵入するように変形するものを使用するので、注入される生コンクリートの圧力で可撓性シートを多孔質成形体の空隙に侵入させて、すなわち、可撓性シートを多孔質成形体の表面の凹凸に沿う形状に変形させて、注入される生コンクリートを多孔質成形体の表面に沿う形状に成形できる。この状態で、可撓性シートは、多孔質成形体の空隙に侵入するように変形して生コンクリートを多孔質成形体の表面に沿う形状とするが、生コンクリートを空隙に侵入させないので、流動性のある生コンクリートで多孔質成形体の空隙を塞ぐことなく、多孔質成形体をブロック本体に抜けないようにしっかりと固定できる。しかも、このように、即時脱型コンクリートに限らず、流動性のある通常の生コンクリートを使用するコンクリートブロックは、全体の強度を向上して能率よく多量生産できる特長も実現できる。
【0010】
さらに、本発明のコンクリートブロックとその製造方法は、多孔質成形体の一部を外部に表出するようにブロック本体に埋設するので、この表出部分から微生物や小動物を空隙に侵入できる状態として、これらの生物を理想的に生育できる特長がある。さらに、本発明の請求項4のコンクリートブロックと請求項8のコンクリートブロックの製造方法は、多孔質成形体をブロック本体に貫通するように埋設しているので、多孔質成形体が外部に表出する面積を広くして、より効果的に微生物や小動物を生育できる。とくに、請求項5のコンクリートブロックは、多孔質成形体を筒状としているので、筒状の内部に形成される空間に小動物等の生息空間を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのコンクリートブロックを例示するものであって、本発明はコンクリートブロックを以下のものに特定しない。
【0012】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0013】
図1と図2に示すコンクリートブロックは、無数の空隙のある多孔質成形体1をブロック本体2に埋設している。多孔質成形体1は、その表面の一部を外部に表出させてブロック本体2に埋設している。ブロック本体2は、コンクリートで成形している。
【0014】
多孔質成形体1は、骨材をその間に空隙ができるようにバインダーで接点を結合して製造できる。この多孔質成形体1は、骨材にバインダーを混合した空隙成形材を成形して製造される。空隙成形材の骨材は、天然石、天然石を粒状に破砕した砕骨材、無機粉末を粒状に成形して焼結した焼結材、焼結材を所定の大きさに破砕したもの等が使用できる。
【0015】
この多孔質成形体1は、骨材の大きさで空隙の大きさを調整できる。骨材に大きいものを使用すると空隙は大きくなる。反対に、骨材を小さくすると、小さい空隙が多数できるようになる。空隙の大きさは、コンクリートブロックの用途に最適な大きさに設計される。微生物等を効率よく棲息させるためには、微細な空隙を多く設けるのが良いので、使用する骨材を小さくする。微生物よりも、魚等の小さい動物の棲息環境を良くするためには、比較的大きな骨材を使用する。骨材1の平均粒子径は、コンクリートブロックの用途を考慮して、たとえば2〜50mm、好ましくは3〜30mm、さらに好ましくは3〜20mm、最も一般的には5〜20mmのものが使用される。また、用途によっては、大きな骨材と小さい骨材を混合して使用する。
【0016】
骨材に添加されるバインダーは、骨材を接点で結合して、骨材の間に空隙ができるように骨材を結合する。バインダーには、セメントが最適であるが、エポキシ樹脂等の耐水性の合成樹脂接着剤も使用できる。さらに、セメントに合成樹脂を混合した接着剤も使用できる。バインダーの添加量は、多すぎると骨材の空隙が閉塞されて空隙率が低くなり、少なすぎると充分な強度で骨材を結合できなくなる。バインダーの添加量は、骨材の結合強度と、要求される空隙率とを考慮して最適値に調整される。バインダーにセメントを使用する場合、100重量部の骨材に対して、たとえば3〜50重量部、好ましくは5〜30重量部、さらに好ましくは5〜20重量部に設定される。バインダーにセメントを使用する場合、骨材とセメントと水を混練りして空隙成形材とする。
【0017】
骨材を結合するバインダーは、好ましくはゼオライト粉末を添加する。バインダーに添加されるゼオライト粉末は、マイナスにチャージしている部分があって陽イオンの吸着能力に優れている。このため、ゼオライト粉末には、植物の生育を活発にする、鉄、コバルト、マンガン等の微量要素を、イオン結合する状態で担持させることができる。ゼオライト粉末に吸着して担持される微量要素は、急激に放出されることがなく、長期間にわたって経時的に放出される。微量要素がゼオライト粉末に単に混合して含まれるのではないからである。このため、ゼオライト粉末を添加して製造される多孔質成形体は、空隙がゼオライト粉末を含むバインダーで囲まれる状態となって、植物の生育を活発にする微量要素を、長期間にわたって放出できる特長がある。この特長は、骨材の間に無数の空隙を有することと相乗して、コンクリートブロックとして理想的な特性を実現する。空隙が、小動物の快適な生息環境を実現すると共に、ここに土砂等の堆積しやすい環境を実現し、さらに、土砂に生育する植物や苔の生育を活性にする微量要素を補給するからである。
【0018】
添加されるゼオライト粉末として最適なものは、下記の工程で製造する人工ゼオライトである。ただ、人工ゼオライトに代わって、あるいは人工ゼオライトに添加して、天然ゼオライトも使用できる。
(1) シリカとアルミナからなる無機粉体からNa型の人工ゼオライトを製造する工程無機粉体には、石炭火力発電所から廃棄物として多量に発生している石炭灰であるフライアッシュが使用できる。フライアッシュから、陽イオン吸着力の吸着担体である人工ゼオライトを製造する。フライアッシュを人工ゼオライトとするには、フライアッシュを、1Nの苛性ソーダ水溶液に数時間浸漬して攪拌する。苛性ソーダ水溶液の濃度は1N〜3Nである。その後、水洗、乾燥して、粉末状の人工ゼオライトとする。苛性ソーダ水溶液に浸漬されたフライアッシュは、SiとAlとがOを介して結合されたNa型の人工ゼオライトとなる。このようにして製造される人工ゼオライトは、SiとAlに4個のOが結合される。Siはプラスの4価、Alはプラスの3価であるので、Alの部分で電子が1個余剰になってこの部分がマイナスにチャージする吸着担体となる。Na型の人工ゼオライトは、Alのマイナスにチャージする部分に、プラスイオンである鉄、コバルト、マグネシウム等の金属イオンが結合できる。このようにして製造された人工ゼオライトは、陽イオン交換容量が約200meq/100gとなる。
【0019】
(2) Na型の人工ゼオライトに金属イオンを吸着させる工程フライアッシュから得た吸着担体である人工ゼオライトを、金属イオンを含む水溶液に浸漬して、人工ゼオライトに金属イオンを吸着させる。金属イオンを担持する人工ゼオライトは、金属イオンの種類によらずほぼ同じようにして製造できる。以下、鉄を担持するFe型人工ゼオライトの製造方法を述べる。人工ゼオライトを、鉄イオンを含む水溶液に浸漬する。鉄イオンを含む水溶液には、濃度を1Nとする塩化鉄の水溶液を使用する。人工ゼオライトの浸漬時間は約3時間とする。人工ゼオライトを塩化鉄の水溶液に浸漬すると、マイナスにチャージしている部分に鉄イオンが結合されて、鉄を担持するFe型の人工ゼオライトとなる。鉄イオンを吸着させた後、水洗、乾燥して粉末状の鉄吸着担体とする。
【0020】
人工ゼオライトに、鉄に代わってコバルトやマグネシウムを担持させるには、塩化鉄の水溶液に浸漬するのに代わって、コバルトやマグネシウムの塩化物の水溶液に人工ゼオライトを浸漬する。塩化物水溶液の濃度や浸漬時間は、塩化鉄水溶液に浸漬するのと同じである。このようにして、コバルトやマグネシウムが挟着された人工ゼオライトが製造できる。
【0021】
以上の工程で製造されたナトリウム、鉄、コバルト、マグネシウム型の人工ゼオライトを3:3:1:1の割合で混合して、バインダーに添加するゼオライト粉末とする。鉄型の人工ゼオライトを多量に添加するのは、植物に鉄分を補給して、より効果的に生育できるからである。ナトリウム型の人工ゼオライトを混合するのは、このタイプの人工ゼオライトが最も製造コストを安価にできるからである。ゼオライト粉末には、鉄型の人工ゼオライトのみを使用することもできる。
【0022】
ゼオライト粉末の添加量は、セメント100重量部に対して、5重量部〜50重量部、好ましくは10〜40重量部、さらに好ましくは10〜30重量部とする。
【0023】
ゼオライト粉末を添加したバインダーに水と骨材を混練りして空隙成形材とする。空隙成形材は、成形型に入れて成形される。図1と図2に示す多孔質成形体1は、空隙成形材を円筒状に成形している。多孔質成形体は、多角筒状に成形することもできる。筒状の多孔質成形体1は、中心に貫通孔5がある。図1と図2のコンクリートブロックは、ブロック本体2を貫通する姿勢で多孔質成形体1を埋設する。このコンクリートブロックは、多孔質成形体1でブロック本体2に貫通孔5を設け、さらに、貫通孔5の内面に無数の空隙を設けることができる。このコンクリートブロックは、多孔質成形体1に理想的な状態で小動物を生息できる。小動物が貫通孔5を通過してブロック本体2の上下に移動でき、さらに小動物が移動する貫通孔5に無数の空隙を設けて、ここにさらに小さい小動物や微生物を生息でき、また海草等を繁殖できるからである。
【0024】
図のコンクリートブロックは、多孔質成形体1の貫通孔5がブロック本体2の両面に貫通するように、多孔質成形体1をブロック本体2に埋設しているが、筒状の多孔質成形体は、中心の貫通孔がブロック本体を貫通しないように埋設することもできる。このコンクリートブロックは、多孔質成形体の貫通孔の一端をブロック本体の表面に表出し、貫通孔の他端をブロック本体の内部に埋設する。このコンクリートブロックは、多孔質成形体の貫通孔でブロック本体に深い凹部を設けて、ここに小動物を生息できる。
【0025】
ただし、本発明のコンクリートブロックは、多孔質成形体を筒状には限定しない。また、多孔質成形体は、必ずしも貫通孔を設ける必要はなく、たとえばブロック本体の外部に表出される表面に凹部を設けることも、あるいは骨材の空隙を大きくして凹部や貫通孔のない形状とすることもできる。
【0026】
骨材をセメント等のバインダーで結合する多孔質成形体1は、空隙成形材を成形型に入れて安価に多量生産できる。ただし、本発明のコンクリートブロックは、多孔質成形体を無機質材の焼結体とすることもできる。この多孔質成形体は、以下のようにして製造する。
(1) 最初に、主成分をシリカとアルミナとする無機粉末に水を添加して粒状に成形して無機粒とする。無機粒は骨材の大きさとする。
(2) 無機粒を焼結バインダーで空隙ができるように結合し、これを乾燥して焼成する。焼結バインダーは、低融点の無機質材を水で混練りしたものである。
(3) 焼成工程で、焼結バインダーが溶融されて無機粒を結合する。焼結バインダーが焼結する焼成温度で無機粒は溶融しないで粒状に保持される。焼結バインダーの融点を無機粒の融点よりも低くしているからである。
無機粒を焼結バインダーで焼結した多孔質成形体は、コンクリート製の多孔質成形体よりも中性に近く、小動物の生育と海草の生育に最適な環境となる。
【0027】
多孔質成形体1は、ブロック本体2を成形する生コンクリートが空隙を閉塞しないように、また、ブロック本体2に抜けないようにしっかりと固定する必要がある。本発明のコンクリートブロックは、このことを実現するために、多孔質成形体1とブロック本体2との境界に、ブロック本体2に押圧されて、正確にはブロック本体2を成形する生コンクリートに押圧されて、多孔質成形体1の空隙に侵入するように変形できる可撓性シート3を配設している。
【0028】
可撓性シート3は、ブロック本体2を 成形する生コンクリートの圧力で多孔質成形体1の表面に押圧されて破損せず、生コンクリートの圧力で多孔質成形体1の空隙に侵入するように変形し、さらに生コンクリートが多孔質成形体1の空隙を閉塞するように通過させない、可撓性のある全てのシートを使用できる。可撓性シート3として、プラスチックフィルムが適している。この可撓性シート3は、サランラップ(登録商標)が適している。多孔質成形体1の表面に簡単に密着でき、しかも一部を積層して積層部分も簡単に剥がれないように付着できるからである。
【0029】
ただ、サランラップ以外のプラスチックフィルム、たとえば熱収縮チューブ等も使用できる。熱収縮チューブの可撓性シート3は、内側に多孔質成形体1を挿入し、加熱収縮させて多孔質成形体1の表面に密着できる。さらに、可撓性シート3には、ブロック本体2の生コンクリートを通過させない不織布、耐水性の紙、布等も使用できる。
【0030】
多孔質成形体1は、ブロック本体2との境界、いいかえると、ブロック本体2に埋設される表面を可撓性シート3で被覆する。ただ、多孔質成形体は、全面を可撓性シートで被覆してブロック本体に埋設し、その後、コンクリートブロックの表面に表出される部分の可撓性シートを剥離することもできる。
【0031】
可撓性シート3で被覆された多孔質成形体1を、図3に示すように、成形型4に仮止めして、以下の工程でコンクリートブロックを製造する。
(1) ブロック本体2を成形する成形型4に多孔質成形体1を仮り止めして固定する。図3と図4は、多孔質成形体1の上端を仮止具6で連結して定位置に仮止めしている。この仮止具6は、各々の多孔質成形体1の上端に連結される連結アーム7を互いに連結したもので、連結アーム7の先端には、筒状多孔質成形体1に挿入して連結する連結部7Aを設けている。連結部7Aは、筒状多孔質成形体1の貫通孔5に挿入されるロッドとしている。この仮止具6は、複数の多孔質成形体1を連結して、倒れないように、また位置ずれしないように、成形型4の定位置に仮止めする。この仮止具6を使用すると、成形型4には多孔質成形体1を仮止めする機構を設ける必要がない。このため、従来の成形型4を使用して多孔質成形体1を定位置に埋設できる。
【0032】
ただ、成形型に多孔質成形体の仮止め部を設けることもできる。成形型は、成形型の底部に多孔質成形体の貫通孔の下端に挿入される凸部を設けて、仮止め部とすることができる。さらに、多孔質成形体を、成形型に配置して位置ずれしない形状とすることもできる。たとえば、複数の多孔質成形体を連結して、成形型に自立できる形状として、多孔質成形体を成形型の定位置に配置できる。また、多孔質成形体は、ブロック本体に埋設される補強用の鉄筋に連結して定位置に配置することもできる。
【0033】
(2) 多孔質成形体1が仮止めされた成形型4に生コンクリート8を打設する。この生コンクリート8は、即時脱型コンクリートとする必要はなく、流動性のある生コンクリートとすることができる。生コンクリート8は、骨材とセメントと水を混練りしたもので、従来の漁礁や河川に使用されるコンクリートブロックを製造するのと同じ配合とすることができる。たとえば、この生コンクリート8は、骨材とセメントと水とを70:12:18の比率で混合したものである。
生コンクリート8は、多孔質成形体1の上端と同一面まで充填され、あるいは多孔質成形体1の上端よりも低いレベルに充填される。多孔質成形体1の上端を、ブロック本体2から外部に表出させるためである。
【0034】
(3) 生コンクリートが硬化してブロック本体2が形崩れしない状態で、コンクリートブロックを成形型4から脱型する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例にかかるコンクリートブロックの平面図である。
【図2】図1に示すコンクリートブロックのA−A線断面図である。
【図3】図1に示すコンクリートブロックの製造工程を示す断面図である。
【図4】図3に示す製造工程において、成形型に多孔質成形体を仮止めする状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…多孔質成形体
2…ブロック本体
3…可撓性シート
4…成形型
5…貫通孔
6…仮止具
7…連結アーム 7A…連結部
8…生コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無数の空隙のある多孔質成形体(1)が、表面の一部を外部に表出する状態でコンクリート製のブロック本体(2)に埋設されているコンクリートブロックであって、
多孔質成形体(1)とブロック本体(2)との境界に、ブロック本体(2)に押圧されて、多孔質成形体(1)の空隙に侵入するように変形できる可撓性シート(3)を配設してなることを特徴とするコンクリートブロック。
【請求項2】
可撓性シート(3)がプラスチックフィルムである請求項1に記載されるコンクリートブロック。
【請求項3】
多孔質成形体(1)が、骨材をモルタルで多孔質な状態に結合している請求項1に記載されるコンクリートブロック。
【請求項4】
多孔質成形体(1)がブロック本体(2)を貫通し、両端面を外部に表出させる状態でブロック本体(2)に埋設している請求項1に記載されるコンクリートブロック。
【請求項5】
多孔質成形体(1)が筒状である請求項4に記載されるコンクリートブロック。
【請求項6】
無数の空隙のある多孔質成形体(1)を製作する製造工程と、多孔質成形体(1)の表面を、ブロック本体(2)を成形する生コンクリートに押圧されて多孔質成形体(1)の空隙に侵入するように変形する可撓性シート(3)でカバーする被覆工程と、表面を可撓性シート(3)で被覆している多孔質成形体(1)を成形型(4)の定位置に仮止めする仮止工程と、多孔質成形体(1)を仮り止めしている成形型(4)に、多孔質成形体(1)の一部を外部に表出するように生コンクリートを打設する注入工程と、成形型(4)に注入された生コンクリートを形崩れしない状態で脱型する脱型工程とからなるコンクリートブロックの製造方法。
【請求項7】
可撓性シート(3)にプラスチックフィルムを使用する請求項6に記載されるコンクリートブロックの製造方法。
【請求項8】
多孔質成形体(1)がブロック本体(2)を貫通するように、多孔質成形体(1)を成形型(4)に仮止めして生コンクリートを注入する請求項6に記載されるコンクリートブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−205588(P2006−205588A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22038(P2005−22038)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000125107)開発コンクリート株式会社 (26)
【出願人】(594169330)
【Fターム(参考)】