説明

コンクリートブロックによる護岸構築工法

【課題】護岸上を流れる流水等による護岸背面の土砂が吸い出しを受ける危険性を少なくするとともに、植物を育成し繁茂させるのに適した大きな目地部を確保することができて自然な景観を創出することが可能なコンクリートブロックによる護岸構築工法を提供する。
【解決手段】河川等の法面G上に複数のコンクリートブロック1を敷設して形成されるコンクリートブロックによる護岸構築工法において、相互に対峙するコンクリートブロック1,1間の目地部6の下部に多孔質繊維7を配置し、この多孔質繊維7の上面からコンクリート8を流し込み、コンクリート8のトロが多孔質繊維7内に流下して該コンクリート8が固化することにより多孔質状のコンクリート8が形成され、該多孔質状のコンクリート8により各コンクリートブロック1,1間の目地部6が閉塞されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートブロックによる護岸構築工法に関するものであり、特に、相互に対峙するコンクリートブロック間の目地部において植物を育成し繁茂させるのに適したコンクリートブロックによる護岸構築工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、河川や海岸等における護岸の構築工法として、法面上に複数のコンクリートブロックを面状に規則正しく敷き並べて護岸を形成する工法が、例えば特許文献1等で知られている。該特許文献1で知られる護岸の構築工法では、法面上に複数のコンクリートブロックを敷き並べる際、相互に対峙するコンクリートブロック間の目地部(隙間または開き幅ともいう)ができるだけ狭くなるようにして密に敷き並べた構造が採られている。これは、目地部の開き幅が大きくなると、該護岸上を流れる流水等により該護岸背面の土砂が吸い出しを受ける危険性が強まるのを防止するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3605397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、法面上に複数のコンクリートブロックを、相互に対峙するコンクリートブロック間の目地部ができるだけ狭くなるように密に敷き並べた構造では、該護岸上を流れる流水等により該護岸背面の土砂が吸い出しを受ける危険性は弱くなるが、植物を育成し繁茂させるのに適した目地部が少なくなり、植物を繁茂させるのには好ましくなかった。
【0005】
そこで、護岸上を流れる流水等による該護岸背面の土砂が吸い出しを受ける危険性を少なくするとともに、植物を育成し繁茂させるのに適した大きな目地部を確保することができて自然な景観を創出することが可能なコンクリートブロックによる護岸構築工法を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、河川等の法面上に複数のコンクリートブロックを敷設して形成されるコンクリートブロックによる護岸構築工法において、相互に対峙するコンクリートブロック間の目地部の下部に多孔質繊維を配置し、かつ該多孔質繊維の上面からコンクリートを流し込み、該コンクリートのトロが該多孔質繊維内に流下して該コンクリートが固化することにより多孔質状のコンクリートが形成され、該多孔質状のコンクリートにより各コンクリートブロック間の目地部が閉塞されるようにしたコンクリートブロックによる護岸構築工法を提供する。
【0007】
この構成によれば、目地部の下部に配置された多孔質繊維の上面よりコンクリートを流し込むと、該コンクリート内に含まれている粘液状のトロ(水、セメント、モルタル、小砂等を含む)が多孔質繊維内に流下することにより、該多孔質繊維の上側で固化されたコンクリート内には主として骨材だけが残り、該コンクリートが蜂の巣状の空洞を有して多孔質化され、同時に各コンクリートブロック間の目地部を閉塞する。また、この多孔質化されたコンクリートは、日が経つうちに空洞部分に土砂が入り込み、植物等の育成個所となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記コンクリートブロックの上表面部には、該コンクリートブロックと一体的に複数の自然石が固設されているコンクリートブロックによる護岸構築工法を提供する。
【0009】
この構成によれば、コンクリートブロックの上表面部に現地河川等で採取された複数の自然石を固設したことで自然石護岸が構築される。また、構築された護岸表面の耐磨耗性、即ち耐久性が向上する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、上記コンクリートブロックには、その上表面から下面にかけて貫通した植生孔が少なくとも1個形成され、複数の前記コンクリートブロックの敷設後に前記植生孔に現地採取の土砂を含む充填材を詰め込んだコンクリートブロックによる護岸構築工法を提供する。
【0011】
この構成によれば、コンクリートブロックの敷設後に、各植生孔に構築現場で採取された土砂等が詰め込まれることで、構築された護岸上に通水性に富んだ多数の植生部が形成される。該植生部は植物等の好適な育成個所となる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、目地部内を塞ぎ、かつ隣り合うコンクリートブロックと一体化された多孔質のコンクリートにより法面が保護されるので、護岸全体の強度が増加し、ブロック背面の土砂が吸い出しを受けるのを確実に防ぐことができる。また、護岸全体の強度が増すことにより、目地部の間隔を大きくすることも可能になる。そして、該目地部における多孔質化されたコンクリートには土砂が入り込み、この土砂の上に植物の種子等が飛来して定着するので、植物が育成されて繁茂し自然な景観の創出が期待できるという利点がある。
【0013】
請求項2記載の発明は、構築された護岸の耐久性及び強度が向上してブロック背面の土砂が吸い出しを受けるのを一層確実に防ぐことができる。また、自然石護岸が構築されて、この点において自然な景観の創出が期待できるという利点がある。
【0014】
請求項3記載の発明は、護岸上における通水性に富んだ多数の植生部で植物が育成されることで、一層の自然な景観の創出が期待できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図は本発明の実施例に係るコンクリートブロックによる護岸構築工法を示すものである。
【図1】護岸構築工法で使用するコンクリートブロックの平面図。
【図2】図1の正面図。
【図3】図1の側面図。
【図4】敷設する護岸の端部に使用するコンクリートブロックの構造例を示す平面図。
【図5】図4の正面図。
【図6】構築された護岸の縦断面図。
【図7】図6の平面図。
【図8】図7中のX−X線拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、護岸上を流れる流水等による護岸背面の土砂が吸い出しを受ける危険性を少なくするとともに、植物を育成し繁茂させるのに適した大きな目地部を確保することができて自然な景観を創出することが可能なコンクリートブロックによる護岸構築工法を提供
するという目的を達成するために、河川等の法面上に複数のコンクリートブロックを敷設して形成されるコンクリートブロックによる護岸構築工法において、相互に対峙するコンクリートブロック間の目地部の下部に多孔質繊維を配置し、かつ該多孔質繊維の上面からコンクリートを流し込み、該コンクリートのトロが該多孔質繊維内に流下して該コンクリートが固化することにより多孔質状のコンクリートが形成され、而して該多孔質状のコンクリートにより各コンクリートブロック間の目地部が閉塞されるようにして実現した。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の好適な実施例を図1乃至図8を参照して説明する。まず、本実施例に係る護岸構築工法で使用するコンクリートブロックの構造を説明する。なお、本発明の護岸構築工法で使用するコンクリートブロックは、必ずしもこの構造に限定されるものではない。
【0018】
コンクリートブロック1は、図1の平面図に示すように、対向する一対の側壁1a,1aの中間部に内側へ向かう凹部1cがそれぞれ形成され、他方の一対の側壁1b,1bの中間部には外方へ向かう凸部1dがそれぞれ形成されている。各凹部1c,1cと各凸部1d,1dとは、平面視で、ほぼ同一形状に形成されている。これらの凹部1c及び凸部1dの各側面には、連結鉄筋2が外側に突出した状態で設置されている。
【0019】
また、コンクリートブロック1における下面1eの四隅には、図2及び図3に示すように、下方に向けて適宜量突出した下面凸部1fがそれぞれ形成されている。これらの下面凸部1fは、平面視で方形状に形成されている(図1中の点線部分)。
【0020】
さらに、コンクリートブロック1には、図1に示すように、中心Cから左右に適宜量離間した対称位置に、上表面から下面1eにかけて貫通した植生孔3,3がそれぞれ形成されている。該植生孔3,3内には、両植生孔3,3を左右に貫通している吊り込み鉄筋4が設置されている。
【0021】
また、コンクリートブロック1の上表面部には、多数の自然石S,S…が該コンクリートブロック1に一体的に固設されている。自然石S,S…は、構築現場において採取され、かつ選択された大きさのものが用いられている。コンクリートブロック1の上表面部に多数の自然石S,S…を一体的に固設することで自然石護岸が構築されるとともに護岸表面の耐磨耗性、即ち耐久性が向上する。
【0022】
コンクリートブロック1は、図1乃至図3に示した凸部1dを両側に設けてなる形状を有したコンクリートブロック以外にも、例えば図4及び図5に示すように、端部に敷設する際に使用するために片側だけに凸部1dを設けてなる形状を有したコンクリートブロック等が用意されている。そして、これらを組み合わせることによって所定の形状を有した護岸を構築することができるようになっている。
【0023】
次に、上述のような構造のコンクリートブロックによる護岸構築工法を図6及び図7を用いて説明する。護岸5は、複数のコンクリートブロック1,1…を、河川や海岸等の法面G上に順次面一に敷設して該法面Gを覆うことにより構築される。また、その構築時、必要に応じて植生孔3,3内の吊り込み鉄筋4に図示しないワイヤーを掛けると該コンクリートブロック1を吊して所定の位置に移動させることができる。
【0024】
さらに、隣接するコンクリートブロック1,1同士は、図7に示すように、一方のコンクリートブロック1の凹部1c内に他方のコンクリートブロック1の凸部1dを食い込ませて並設されるとともに、各コンクリートブロック1,1…同士の連結鉄筋2,2…間が図示しない連結金具でそれぞれ連結されて互いの相対移動が拘束される。また、各コンク
リートブロック1,1…の敷設後、各植生孔3,3には該構築現場において採取される土砂等が詰め込まれて通水性に富んだ植生部が形成される。
【0025】
土砂等が詰め込まれた植生孔3,3には植物の種子等が飛来して定着し、後日、植物が繁茂して護岸5の美観を良くするとともに自然な景観が創出される。このような植生孔3は、コンクリートブロック1の適宜の部位に少なくとも1個形成されていればよい。
【0026】
また、対峙するコンクリートブロック1,1間の目地部6は、図8に示すような構造にして隙間が塞がれる。同図に示す構造は法面G上に多孔質繊維7を配置し、その後、該多孔質繊維7上にコンクリート8を打設して該コンクリート8で形成されるコンクリート層8Aと多孔質繊維7で作られる多孔質繊維層7Aとで該目地部6を閉塞する二層構造にした構築工法が採られている。
【0027】
このように、多孔質繊維7の上からコンクリート8を打設すると、該コンクリート8が固化する前に、該コンクリート8内に含まれている粘液状のトロ(水、セメント、モルタル、小砂等を含む)が多孔質繊維層7Aを形成する多孔質繊維7内を流下し、該多孔質繊維7の上側に打設されている該コンクリート8内に主として骨材8aだけが残り、該コンクリート8が骨材8aにより蜂の巣状の空洞を有して多孔質化される。この多孔質化されたコンクリート8は、年月が経つうちに土砂が空洞部分に入り込み、この土砂に植物の種子等が飛来して定着し、かつ植物の育成が行われて繁茂する。
【0028】
なお、前記多孔質繊維7としては、例えば糸状の繊維材、金属性ワイヤーを複雑に絡めて丸め、内部に空洞部分を設けて多孔質状にしたもの、あるいは網状に作られた部材を丸めて内部に空洞部を設けて多孔質状にしたもの等であるが、コンクリート8内に含まれている粘液状のトロが流れ込むことができるような空洞部を有するものであれば、これ以外の構造であってもよい。
【0029】
ここで、対峙するコンクリートブロック1,1間の目地部6に、単に土砂だけを詰めた場合では、護岸上を流れる流水が目地部6に詰められている土砂及び該護岸背面の土砂が吸い出されて流出する虞があるが、このように多孔質化されたコンクリート層8A及び多孔質繊維層7Aを設けると土砂が吸い出されて流出することがなくなる。しかも、コンクリート8上に土砂が堆積して植物をより一層育成して繁茂させることができる。また、護岸の強度を増すことにより、目地部6の幅を大きくすることもできる。
【0030】
したがって、本実施例の護岸構築工法によれば、目地部6内をコンクリート層8A及び多孔質繊維層7Aで閉塞し、かつ該コンクリート層8A及び多孔質繊維層7Aが隣り合うコンクリートブロック1,1と一体化されるので、護岸強度を増大させてブロック背面の土砂が吸い出しを受けるのを確実に防ぐことができる。また、強度が増大することにより、目地部6の間隔を大きくすることが可能になる。そして、該目地部6における多孔質化されたコンクリート8には土砂が入り込み、この土砂の上に植物の種子等が飛来し定着するので、植物の育成効果が期待できる。
【0031】
なお、図6及び図7に示す実施例の護岸構造では、法面Gの法肩部に配置されるコンクリートブロック1Aび法尻部に配置されるコンクリートブロック1Bは、側面視で「へ」の字状に形成して配置されている。該両コンクリートブロック1A,1Bは同一形状のものであり、法肩部に配置されるときと法尻部に配置されるときとで、それぞれ180度裏返し及び向きを変えて配置するようにして用いる。このように、法面Gの法肩部と法尻部に「へ」の字状のコンクリートブロック1A,1Bを配置すると、法肩部及び法尻部の強度が増大して流水等に強い護岸5が形成される。
【0032】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
流水等の高水流に対する安定性が不可欠で、かつ構築後の環境保全をより良く実現し得る河川護岸工法、天端保護工法及び高水敷保護工法等への用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 コンクリートブロック
1a 側壁
1b 側壁
1c 凹部
1d 凸部
1e 下面
1f 下面凸部
2 連結鉄筋
3 植生孔
4 吊り込み鉄筋
5 護岸
6 目地部
7 多孔質繊維
7A 多孔質繊維層
8 コンクリート
8A コンクリート層
S 自然石
G 法面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川等の法面上に複数のコンクリートブロックを敷設して形成されるコンクリートブロックによる護岸構築工法において、
相互に対峙するコンクリートブロック間の目地部の下部に多孔質繊維を配置し、かつ該多孔質繊維の上面からコンクリートを流し込み、該コンクリートのトロが該多孔質繊維内に流水して該コンクリートが固化することにより多孔質状のコンクリートが形成され、該多孔質状のコンクリートにより各コンクリートブロック間の目地部が閉塞されるようにしたことを特徴とするコンクリートブロックによる護岸構築工法。
【請求項2】
上記コンクリートブロックの上表面部には、該コンクリートブロックと一体的に複数の自然石が固設されていることを特徴とする請求項1記載のコンクリートブロックによる護岸構築工法。
【請求項3】
上記コンクリートブロックには、その上表面から下面にかけて貫通した植生孔が少なくとも1個形成され、複数の前記コンクリートブロックの敷設後に前記植生孔に現地採取の土砂を含む充填材を詰め込んだことを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリートブロックによる護岸構築工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−189969(P2010−189969A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37012(P2009−37012)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000226356)日建工学株式会社 (24)
【Fターム(参考)】