説明

コンクリートブロック加飾方法

【課題】コンクリートブロックの表面に、屋外耐久性があり、高濃度かつ鮮明な画像を付与するための、コンクリートブロック加飾方法を提供する。
【解決手段】本発明は、下記式(1)で表す水分率が1.5%以内のコンクリートブロック表面に、インクを付与する工程を有することを特徴とする、コンクリートブロック加飾方法である。
水分率[%]={(W−W)/W}×100・・・・・・・(1)
W:インク付与前のコンクリートブロック重量(g)
:絶乾状態のコンクリートブロック重量(g)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートブロックへの加飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、意匠性を向上させたコンクリートブロックに関する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、コンクリートブロック成形用即時脱型枠、又はその型枠へ1回ごとに材料を運び込む移動ホッパーへの材料投入の際、連続的又は間欠的に、降り積もるように材料を落下させ、その積もりつつある材料の模様つけ予定位置へ適時、適量の顔料を噴射又は散布して色付けし、出来上がった製品ブロックの表面に上記色付けによる模様が出るようにする色模様つきコンクリートブロックの製法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されている製法では、ブロック表面に鮮明な画像を付与することはできなかった。
【0003】
そこで、コンクリートブロックに鮮明な画像を付与するための技術として、例えば特許文献2には、所望の型枠内にセメント,水,骨材,混和材等を混合したセメント混練物を打設し、振動及び押圧力を加えて一次成形する工程と、この一次成形物を加熱して内部のガスを抜く工程と、該成形物の表面に釉薬を塗布する工程と、乾燥した前記成形物の表面に主として釉薬,顔料,オイルからなるスラリー状の化粧材料で印刷する工程と、自然乾燥後、これを焼成する工程とを順次経る化粧コンクリート成形体の製造方法が開示されている。
特許文献2によれば、釉薬を焼成によりガラス化させることで、コンクリートブロック表面に存在する小さい孔や凹凸をガラスによって覆い、コンクリートブロック表面を滑らかでつるつるの状態にするとともに、釉薬の融着により強固に一体化した化粧層を形成させることができる。
しかしながら、特許文献2の製造方法では、後の焼成工程を経てコンクリートブロック表面に形成される化粧層に穴があくのを防止するためにコンクリートブロック内部のガスを抜く工程が必要であったり、釉薬の層が3〜4mm程度の厚さになるまで複数回塗布する必要があったり、釉薬層を形成した後に自然乾燥させる工程が必要であったりするため、製造工程が煩雑になるとともに、生産コストも高くなるという問題があった。
また、特許文献1および2に開示される技術は、コンクリートブロックを成形する段階で画像を付与する方法であって、すでに成形されたコンクリートブロックの表面に対して鮮明な画像を付与する方法については、未だ解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−19915号公報
【特許文献2】特開2000−327455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、所定の画像を基材表面に付与する手段の一つとして、インクジェット方式による画像の付与が挙げられる。インクジェット方式は、好適な画像を、高速で基材に付与することが可能であるため、従来基材として使用される紙や布帛に限らず、現在では様々な基材表面への画像付与手段として使用されている。また、このようなインクジェット方式による画像付与には、溶剤系インクや水系インクが一般に好んで使用されている。
【0006】
しかしながら、コンクリートブロックに対しては、従来のインクジェット方式を用いても、その表面に、屋外での使用にも耐えうる(屋外耐久性のある)高濃度かつ鮮明な画像を、直接付与することは困難であった。
その理由として、コンクリートブロックが保持する水分の影響が挙げられる。
【0007】
コンクリートブロックは、成形時に水を添加する必要があり、成形後も高温多湿環境下において養生を行う必要がある。また、保管についても、一般に、屋外や屋内の外環境に近い場所などの、水分を含みやすい環境で保管される。
【0008】
そのため、疎水性のインク(溶剤系インク)を表面に付与した場合には、コンクリートブロックが保持する水分によって、表面へのインク密着性が低下し、画像が付与されたコンクリートブロックを、特に屋外で使用した場合に、日光や風雨による曝露、外部からの衝撃、メンテナンス時のブラッシングや薬剤洗浄などにより、コンクリートブロックの表面に付与した画像が剥がれ落ちてしまうなど、屋外耐久性の面で問題があった。
【0009】
また、親水性のインク(水系インク)を表面に付与した場合には、コンクリートブロックが保持する水分によって、付与したインクが滲みやすくなり、高濃度かつ鮮明な画像をコンクリートブロック表面に付与することが困難であった。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、コンクリートブロックの表面に、屋外耐久性があり、高濃度かつ鮮明な画像を付与するための、コンクリートブロック加飾方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表す水分率が1.5%以内のコンクリートブロック表面に、インクを付与する工程を有することを特徴とする、コンクリートブロック加飾方法である。

水分率[%]={(W−W)/W}×100・・・・・・・(1)

W:インク付与前のコンクリートブロック重量(g)
:絶乾状態のコンクリートブロック重量(g)
【0012】
前記インクとして、光硬化型インクを用いることが好ましい。
【0013】
また、前記インクの付与方法が、インクジェット方式によるものであることが好ましい。
【0014】
また、前記コンクリートブロック加飾方法において、インクを付与する工程の前に、コンクリートブロックの水分率を調整する工程が設けられていることが好ましい。
【0015】
もしくは、前記コンクリートブロック加飾方法において、コンクリートブロック成形時にコンクリートブロックの水分率を1.5%以内に調整し、かつ、インクを付与する工程に至るまでの間に、コンクリートブロックの水分率が1.5%以内を維持するよう、環境湿度を管理することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンクリートブロックの表面に、屋外耐久性があり、高濃度かつ鮮明な画像を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のコンクリートブロック加飾方法においては、インクを付与する段階で、下記式(1)によって求められるコンクリートブロックの水分率が1.5%以内である必要がある。

水分率[%]={(W−W)/W}×100・・・・・・・(1)

W:インク付与前のコンクリートブロック重量(g)
:絶乾状態のコンクリートブロック重量(g)

ここで、本発明における絶乾状態(絶対乾燥状態)とは、コンクリートブロックを100℃〜110℃で定重量になるまで乾燥した状態を意味する。また、このときの定重量値を絶乾状態のコンクリートブロック重量(W)とする。
【0018】
インク付与段階におけるコンクリートブロックの水分率が1.5%を超えると、疎水性のインクを使用する場合には、インクとコンクリートブロックとの境界部分に水分が介在することによってインク密着性が低下する傾向がある。また、コンクリートブロック表面の細孔に水分が存在することで、表面の細孔内部にインクが入り込みづらくなり、これにより、インクが細孔に入り込んだ状態で硬化することによってインク密着性が向上する効果(アンカー効果)が得られにくくなる。
【0019】
また、親水性のインクを使用する場合には、水分率を1.5%以下にすることにより、インク滲みの発生を抑制することができる。
【0020】
なお、本発明においては、コンクリートブロックの水分率は低いほど好ましく、水分による影響を受けない点で、水分率0%に極めて近いコンクリートブロックを使用することが最も好ましい。
【0021】
コンクリートブロックの水分率を調整する方法としては、例えば、コンクリートブロックを乾燥させることによってコンクリートブロックが保持している水分を蒸発させる方法が挙げられる。
乾燥手段としては、特に限定するものではなく常法の乾燥手段から適宜選定すればよい。なかでも、対流伝熱乾燥機、輻射伝熱乾燥機、伝導伝熱乾燥機などといった、熱乾燥機を用いた乾燥を行うことが、生産性の点で好ましい。
【0022】
熱乾燥機を用いた場合の乾燥条件(乾燥温度、乾燥時間など)についても、特に限定するものではなく、コンクリートブロックの水分率が1.5%以下となるような乾燥条件設定を適宜行えばよい。
なかでも、乾燥温度は、80〜200℃に設定することが好ましく、さらには100〜150℃に設定することが好ましい。乾燥温度が80℃未満であると、水分を蒸発させるのに時間がかかり、生産性が低下する傾向がある。また、乾燥が不十分となるおそれもある。一方、乾燥温度が200℃を超えると、コンクリートブロックの劣化が生じやすくなる。
また、乾燥時間は、生産性および品質の点から、30秒〜24時間程度が好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0023】
なお、熱乾燥機を用いる場合は、乾燥後にコンクリートブロックを室温程度にまで冷却してからインクを付与することが好ましい。
このとき、コンクリートブロックが空気中の水分を吸収してコンクリートブロックの水分率が1.5%を超えることのないよう、空気中の湿度管理を行うことが好ましい。
冷却工程における環境湿度は、50%RH(相対湿度)以下であることが好ましく、さらに好ましくは40%RH以下である。
【0024】
また、本発明においては、コンクリートブロックの水分率を、コンクリートブロック成形時に調整してもかまわない。
コンクリートブロック成形時に水分率を調整する方法としては、特に限定するものではなく、添加する水の量や養生環境等を適宜設定することにより、調整することが可能である。
【0025】
コンクリートブロック成形時に水分率を1.5%以下に調整した場合は、インクを付与する工程の前に、コンクリートブロックの水分率を調整するための乾燥工程を設ける必要はない。
ただし、その場合には、コンクリートブロック成形後から、インクを付与する工程に至るまでの間に、コンクリートブロックの水分率が、1.5%以下を維持するように、環境湿度を管理することが好ましい。
このときの環境湿度は、50%RH以下に管理されていることが好ましく、さらに好ましくは40%RH以下である。
【0026】
また、成形したコンクリートブロックを保管し、後にインクを付与する場合には、コンクリートブロックを、湿度管理された環境下で保管することが好ましい。
これにより、保管期間中にコンクリートブロックの水分率が1.5%より大きくなるのを防止することができる。
コンクリートブロック保管期間における環境湿度は、50%RH以下であることが好ましく、さらに好ましくは40%RH以下である。
【0027】
なお、成形時にコンクリートブロックの水分率を1.5%以下に調整した場合であっても、インクを付与する段階で水分率が1.5%を超えている場合には、上述した乾燥工程を経てから、インクを付与する必要がある。
【0028】
本発明におけるインクの付与は、インクジェット方式を用いて行うことが好ましい。インクジェット方式を用いることにより、多彩な色柄表現が可能となり、また、細線表現、グラデーション表現、3D調表現といった繊細な色柄表現も可能となる。
【0029】
本発明に用いられるインクとしては、溶剤系インク、水系インク、光硬化型インクが挙げられるが、なかでも、光硬化型インクが好ましい。
光硬化型インクは、紫外線などの光を照射することによって瞬時に硬化させることができるため、コンクリートブロックに付与したインクを、コンクリートブロック内部に過剰に浸透する前に硬化させることができ、硬化に時間がかかることで発生するインク滲みを防止することができる。
また、付与したインクがコンクリートブロック内部に過剰に浸透する前に硬化されることで、インクがコンクリートブロック表面付近にとどまり、画像濃度を向上させることができる。
さらに、溶剤系インクや水系インクが揮発性物質に顔料を分散させたものであるのに対して、光硬化型インクは、不揮発性物質に顔料を混合しているため、インクが硬化する際に得られるアンカー効果が大きく、コンクリートブロックに対して優れた密着性を発揮する。
以下、本発明に光硬化型インクを用いた場合について説明する。なお、以下、単にインクと記載したものは、光硬化型インクを意味する。
【0030】
前記光硬化型インクは、少なくとも、顔料と、重合開始剤と、反応性モノマーとで構成されることが好ましい。
【0031】
前記顔料としては、無機顔料および有機顔料が挙げられるが、なかでも無機顔料を用いることが好ましい。無機顔料は耐候性に優れており、加飾したコンクリートブロックを、特に屋外で使用した場合においても、鮮明な画像を維持することができる。
【0032】
前記顔料の含有量は、光硬化型インク100重量部に対して0.5〜20重量部であることが好ましい。0.5重量部未満であると、インクに含まれる顔料が少ないために、コンクリートブロックを十分に着色ができないおそれがあり、20重量部を超えると、インクが硬化しにくくなる。
また、含有量が20重量部を超えると、光硬化型インクの粘度が高くなり、インクジェット方式を用いて付与する場合にはノズル詰まりなどの吐出不良が発生しやすくなる。
【0033】
前記光重合開始剤としては、ベンゾイン類、ベンジルケタール類、アミノケトン類、チタノセン類、ビスイミダゾール類、ヒドロキシケトン類、およびアシルホスフィンオキサイド類が挙げられ、これらを単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、反応性に優れ、難黄変性である点で、ヒドロキシケトン類およびアシルホスフィンオキサイド類が好ましい。
【0034】
前記光重合開始剤の含有量は、光硬化型インク100重量部に対して、1〜15重量部であることが好ましく、3〜10重量部であることがより好ましい。
含有量が1重量部未満であると、硬化速度が遅く、また、重合が完了せずインクが完全に硬化しないおそれがある。また、含有量が15重量部を超えても、それ以上の硬化速度向上は期待できず、コスト高となる。
【0035】
前記反応性モノマーとしては、1〜6官能のアクリレートが挙げられ、特に限定するものではないが、なかでも、強靭性、柔軟性に優れる点で、2官能アクリレートが好ましい。
2官能アクリレートの中では、難黄変性である点で、炭化水素からなる脂肪族アクリレートが好ましく、具体的には、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレートなどが好ましい。
【0036】
また、前記反応性モノマーは、さらにリン、フッ素、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどの官能基を付与したものであってもかまわない。また、これらの反応性モノマーは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
反応性モノマーの含有量は、光硬化型インク100重量部に対して50〜85重量部であることが好ましい。50重量部未満であると、光硬化型インクの粘度が高くなり、インクジェット方式によってインクを付与する場合には、ノズル詰まりなどの吐出不良が発生しやすくなる。また、85重量部を超えると、インクの硬化不良が発生するおそれがある。
【0038】
また、本発明に用いられる光硬化型インクには、さらに、反応性オリゴマーを含有してもよい。
反応性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、シリコーンアクリレート、ポリブタジエンアクリレートなどが挙げられ、これらを単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、強靭性、柔軟性、コンクリートブロックに対する付着性に優れる点で、ウレタンアクリレートが好ましく、さらには、難黄変性である点で、炭化水素からなる脂肪族ウレタンアクリレートが好ましい。
【0039】
前記反応性オリゴマーの含有量は、光硬化型インク100重量部に対して1〜40重量部であることが好ましい。これにより、硬化したインクが、優れた強靭性、柔軟性、コンクリートブロックに対する付着性を有するものとなる。
【0040】
また、本発明に用いられる光硬化型インクには、必要に応じて、顔料を分散させる目的で、分散剤を添加してもよい。
分散剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤および高分子系分散剤などが挙げられ、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
また、本発明に用いられる光硬化型インクには、後述する表面張力を調整することを目的として、濡れ剤を添加してもよい。
前記濡れ剤としては、シリコーン型、アクリル型、フッ素型のものが挙げられ、なかでも、表面張力を小さくする効果の高いシリコーン型、フッ素型のものが好ましい。
【0042】
さらに、本発明に用いられる光硬化型インクには、そのほかに、光重合開始剤の開始反応を促進させるための増感剤、熱安定剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、浸透剤、樹脂バインダー、樹脂エマルジョン、還元防止剤、レベリング剤、pH調整剤、顔料誘導体、重合禁止剤、紫外線吸収剤および光安定剤などの添加剤を加えることもできる。
【0043】
本発明に用いる光硬化型インクは、上述した原材料を混合し、さらにその混合物をロールミル、ボールミル、コロイドミル、ジェットミル、ビーズミルなどの分散機を使って分散させた後、濾過することによって得ることができる。なかでも、短時間で大量の混合物を分散することができる点で、ビーズミルを使用することが好ましい。
【0044】
このようにして得られた光硬化型インクの表面張力は、25℃時に20〜30dyne/cmであることが好ましい。25℃時のインクの表面張力が、20dyne/cmより小さいと、インクの濡れ性が高くなりすぎて、画像を形成する際にインク滲みが発生しやすくなり、また、30dyne/cmを超えると、コンクリートブロック表面でインクがはじかれて、鮮明な画像が付与できないおそれがある。
【0045】
また、前記光硬化型インクを、インクジェット方式を用いて付与する場合には、吐出時において、1〜20mPa・sのインク粘度を有していることが好ましく、2〜15mPa・sであることがより好ましい。
吐出時のインク粘度が1mPa・s未満であると、インクジェット方式を用いてインクを付与した場合に吐出量の調整が難しくなり、吐出安定性が悪くなるおそれがある。また、20mPa・sを超えると、インク粘度が大きいためにノズルからインクを吐出できないおそれがある。
【0046】
なお、本発明において、前記光硬化型インクをインクジェット方式により付与する場合、インクを加熱することによって、吐出時のインク粘度が上記範囲になるよう調整してもよい。
インクを加熱する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、インクジェット記録装置に搭載されているインクジェットヘッドに加熱装置を設け、インクジェットヘッドを加熱することにより、インクジェットヘッド内部のインク温度を上昇させる方法が挙げられる。
【0047】
このときの加熱温度としては、25〜150℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。加熱温度が25℃未満であると、吐出時のインク粘度が上記範囲とならないおそれがある。また、加熱温度が150℃を超えると、加熱によってインクが硬化するおそれがある。
【0048】
前記光硬化型インクをコンクリートブロックに付与する場合の付与量としては、1〜100g/mであることが好ましく、1〜50g/mであることがより好ましい。
付与量が1g/m未満であると、コンクリートブロックに高濃度かつ鮮明な画像を付与することができないおそれがある。また、100g/mを超えると、付与したインクが硬化不良となるおそれがある。
【0049】
コンクリートブロック表面に付与した前記光硬化型インクは、紫外線などの光が照射されることによって硬化される。
【0050】
このとき、コンクリートブロック表面にインクを付与してから光照射が行われるまでの時間は、厳密に限定するものではないが、短いほうが好ましい。
着弾から光照射までの時間が長くなるにつれ、インクが徐々にではあるがコンクリートブロックの内部に浸透していく傾向がある。また、インク滲みについても同様の傾向がある。
着弾から光照射までの時間は、短いほどよく、インク着弾後直ちに光照射を行うことが最も好ましい。
【0051】
インクを硬化させるための光として、紫外線を使用する場合、紫外線ランプの出力が、50〜280W/cmであることが好ましく、80〜200W/cmであることがより好ましい。紫外線ランプの出力が50W/cm未満であると、紫外線のピーク強度および積算光量が小さいために、インクの硬化速度が遅くなり、また、インクが硬化不十分となるおそれがある。また、280W/cmを超えると、硬化したインクが、紫外線ランプが発する熱によって劣化するおそれがある。
【0052】
また、紫外線の照射時間は、0.1〜20秒であることが好ましく、0.5〜10秒であることがより好ましい。照射時間が0.1秒より短いと、インクが硬化不十分となるおそれがあり、また、20秒より長くなると、硬化したインクが、紫外線ランプが発する熱によって劣化するおそれがある。
【0053】
また、本発明においては、光硬化型インクの硬化が完了した後で、さらに、常法により、クリア塗装を施してもよい。ここで、クリア塗装とは、光沢などの外観調製、耐候性の向上のために施される塗装のことである。
クリア塗装に用いられる塗料としては、水系、溶剤系のいずれでもよく、適宜選定すればよい。なかでも、作業性および安全性の点で、水系塗料が好ましい。
【実施例】
【0054】
次に本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例によって得られたコンクリートブロックは、次に示す評価方法によって評価した。
【0055】
(1)画像品位
付与した画像について、次の評価基準に従い、目視にて評価した。

○:良好
×:不良(画像がスジっぽい/滲んでいる)
【0056】
(2)インク密着性
画像を付与した箇所に、長さ10cmの布テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着タイプ布粘着テープ<LS>NO.121)を張り、上から手の平で5往復なぞった後、勢い良く剥がし、剥がした後の布テープ粘着面を観察した。その結果から、次の評価基準に従い、インク密着性を評価した。

○ : 粘着面に付着したインクの面積が、粘着面全体の10%未満である
△ : 粘着面に付着したインクの面積が、粘着面全体の10%以上50%未満である
× : 粘着面に付着したインクの面積が、粘着面全体の50%以上である
【0057】
[実施例1]
屋外管理されたコンクリートブロック(雨ざらしのもの)に加飾を行うことを想定し、コンクリートブロック(絶乾状態の重量:4840g)を、水中に2時間浸漬した後、引き上げ、25℃、40%RH条件下で3時間放置した。
次いで、コンクリートブロックを、熱乾燥機(アドバンテック東洋(株)製、送風定温乾燥機DRS420DA)にて110℃×2時間乾燥させた後、25℃、40%RH条件下で24時間放置した。
このときのコンクリートブロックの重量は4892gであり、水分率は1.09%であった。
【0058】
次いで、水分率1.09%のコンクリートブロック表面に、インクジェット方式を用いて、下記処方からなる紫外線硬化型インク(ブラックUVインク)を付与した。
このとき、使用したブラックUVインク中の顔料濃度は2重量部であった。
また、使用したブラックUVインクの粘度は11.5mPa・s(50℃時)、表面張力は26.2dyne/cm(25℃時)であった。

<ブラックUVインク処方>
顔料分散液(顔料分:20重量部) 10.0重量部
(顔料:NIPex 35、カーボン、デグサジャパン(株)製、分散媒:SR9003、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、サートマージャパン(株)製)
反応性オリゴマー 25.0重量部
(CN985B88、2官能脂肪族ウレタンアクリレート88重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート12重量部、サートマージャパン(株)製)
反応性モノマー 58.5重量部
(SR238F、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、サートマージャパン(株)製)
光重合開始剤 3.0重量部
(イルガキュア184、ヒドロキシケトン類、ビーエーエスエフジャパン(株)製)
光重合開始剤 3.0重量部
(イルガキュア819、アシルホスフィンオキサイド類、ビーエーエスエフジャパン(株)製)
濡れ剤 0.5重量部
(R−08、フッ素系濡れ剤、DIC(株)製)

【0059】
また、インクジェット条件は次のように設定した。
<インクジェット条件>
イ)ノズル径 70(μm)
ロ)印加電圧 50(V)
ハ)パルス幅 15(μs)
ニ)駆動周波数 5(KHz)
ホ)解像度 180(dpi)
ヘ)ヘッド加熱温度 50(℃)
ホ)インク付与量 5(g/m
ト)画像 ベタ柄
【0060】
次いで、コンクリートブロックに付与したインクに対し、下記条件で紫外線を照射することによって、インクを硬化させた。
<紫外線照射条件>
あ)ランプ種類 メタルハライドランプ
い)出力 100(W/cm)
う)照射時間 0.5(秒)
え)照射高さ 10(cm)
お)インクの付与から紫外線照射開始までの時間 5(秒)
【0061】
このようにして、実施例1の加飾コンクリートブロックを得た。得られた加飾コンクリートブロックの評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2]
屋内で湿度管理されたコンクリートブロックに加飾を行うことを想定し、コンクリートブロック(絶乾状態の重量:4842g)を、25℃、40%RH条件下で24時間放置した。
このときのコンクリートブロックの重量は4890gであり、水分率は0.99%であった。
次いで、水分率0.99%のコンクリートブロック表面に、実施例1と同様のインクジェット方式による加飾および紫外線の照射を行い、実施例2の加飾コンクリートブロックを得た。
得られた加飾コンクリートブロックの評価結果を表1に示す。
【0063】
[比較例1]
屋外で保管されたコンクリートブロック(雨ざらしのもの)に加飾を行うことを想定し、コンクリートブロック(絶乾状態の重量:4840g)を、水中に2時間浸漬した後、引き上げ、25℃、40%RH条件下で3時間放置した。
このときのコンクリートブロックの重量は4940g、水分率は2.06%であった。
次いで、水分率2.06%のコンクリートブロックの表面に、実施例1と同様のインクジェット方式による加飾および紫外線の照射を行い、比較例1の加飾コンクリートブロックを得た。
得られた加飾コンクリートブロックの評価結果を表1に示す。
【0064】
実施例1および2の方法によってコンクリートブロックに付与した画像は、画像品位、インク密着性ともに優れるものであった。
一方、比較例1の方法によってコンクリートブロックに付与した画像は、コンクリートブロックが含む水分によってインク滲みが発生し、高濃度かつ鮮明な画像を付与することができなかった。
また、比較例1の方法によって付与した画像は、インク密着性に劣るものであり、十分な屋外耐久性を得ることができなかった。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表す水分率が1.5%以内のコンクリートブロック表面に、インクを付与する工程を有することを特徴とする、コンクリートブロック加飾方法。

水分率[%]={(W−W)/W}×100・・・・・・・(1)

W:インク付与前のコンクリートブロック重量(g)
:絶乾状態のコンクリートブロック重量(g)
【請求項2】
前記インクとして、光硬化型インクを用いることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリートブロック加飾方法。
【請求項3】
前記インクの付与方法が、インクジェット方式によるものであることを特徴とする、請求項1または2に記載のコンクリートブロック加飾方法。
【請求項4】
インクを付与する工程の前に、コンクリートブロックの水分率を調整する工程が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリートブロック加飾方法。
【請求項5】
コンクリートブロックの成形時にコンクリートブロックの水分率を1.5%以内に調整し、かつ、インクを付与する工程に至るまでの間に、コンクリートブロックの水分率が1.5%以内を維持するよう、環境湿度を管理することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリートブロック加飾方法。

【公開番号】特開2012−148935(P2012−148935A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9969(P2011−9969)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】