説明

コンクリートブロック

【課題】変化に富んだ壁体を構築することのできる斬新なコンクリートブロックの提供。
【解決手段】多角形状の輪郭を有するコンクリート製ブロック本体1の表面1Aと裏面1Bに異なる意匠が施されているコンクリートブロックである。ブロック本体1の表裏両面1A,1Bにはそれぞれ複数の凹溝4が所定の間隔をあけて平行に形成される。又、ブロック本体1の表面1Aは、該面1Aに形成される凹溝4の間が天然石の割り面を模した不規則な凹凸から成る割肌面5とされる。一方、裏面1Bには凹溝4の間で該凹溝4よりも底の浅い複数の意匠溝6が凹溝4に平行して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてコンクリート塀などの壁体を構築するのに用いられる建築用のコンクリートブロック(積みブロック)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家屋や敷地の囲いとする塀は、複数のコンクリートブロックを積み上げて構築されるが、係る積みブロックとしては高さ方向に穿設された長円形の貫通孔をもつ空洞コンクリートブロックが多用される(例えば、特許文献1)。
【0003】
特に、この種のコンクリートブロックはその高さに比較して横幅の大きな長方形の輪郭を有しており、その短辺側の両端面には当該端面同士の突合せによって貫通孔と同形となるU字形の溝部が形成される。
【0004】
又、係る空洞コンクリートブロックとして、端面に形成される溝部(凹部)の内壁間寸法を入口部よりも奥側部において大きくなるようにしたものが知られる(例えば、特許文献2)。
【0005】
そして、以上のようなコンクリートブロックによれば、これをコンクリート基礎上に順次積み上げると共に、各ブロックの貫通孔にコンクリート基礎の上面より延び出された鉄筋を通し、それら貫通孔にモルタル若しくはコンクリートを充填することにより強靭な壁体を構築することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−279277号公報
【0007】
【特許文献2】実開平6−22417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2などに開示される空洞コンクリートブロックは、その軽量化や補強用鉄筋の挿入を目的としてコンクリート製のブロック本体に貫通孔を形成しただけであるから、これによって構築された塀の壁面は平坦で趣がない。
【0009】
又、上記従来のコンクリートブロックは、その表裏両面がいずれも平滑なコンクリート面であるから、これによって構築された塀などの壁体は如何にも人工的で圧迫感があり、意匠性も乏しいものであった。
【0010】
尚、ブロック本体の表裏両面に縞模様などの意匠を施したものも存在するが、その種のブロックも表裏を気にせず積み上げられるだけで変化のない画一的な壁体しか構築することができない。
【0011】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は変化に富んだ壁体を構築することのできる斬新なコンクリートブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリートブロックは、多角形状の輪郭を有するコンクリート製ブロック本体の表面と裏面に異なる意匠が施されていることを特徴する。
【0013】
好ましくは、ブロック本体の表裏両面にそれぞれ複数の凹溝が所定の間隔をあけて平行に形成されると共に、該ブロック本体の表裏いずれか一方の面には前記凹溝の間で該凹溝よりも底の浅い複数の意匠溝が凹溝に平行して形成され、前記ブロック本体の他方の面は該面に形成される凹溝の間が天然石の割り面を模した不規則な凹凸から成る割肌面とされていることを特徴とする。
【0014】
又、ブロック本体が長方形の輪郭を有し、その短辺側の両端面には該端面の長さ方向に沿ってU字形の溝部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコンクリートブロックによれば、多角形状の輪郭を有するコンクリート製ブロック本体の表面と裏面に異なる意匠が施されていることから、ブロック本体を積み上げて趣のある壁体を構築することができ、しかも表裏両面における異なる意匠によって一種類のブロック本体で趣の異なる壁体を構築することができる。
【0016】
特に、ブロック本体の表裏いずれか一方の面には複数の凹溝の間で該凹溝よりも底の浅い複数の意匠溝が凹溝に平行して形成されることから非常に美的で、しかも他方の面は該面に形成される凹溝の間が天然石の割り面を模した不規則な凹凸から成る割肌面とされることから人工構造物を思わせない壁面を形成することができる。
【0017】
又、長方形状の輪郭を有するブロック本体の両端面にU字形の溝部が形成されることから、隣り合うブロック本体同士を強固に結合して強靭な壁体を構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係るコンクリートブロックを示した斜視図、図2は同コンクリートブロックの平面図である。図1および図2において、1は横長の長方形の輪郭を有したコンクリート製(特に軽量コンクリート製)のブロック本体であり、本例ではその幅Wが約390mm、高さHが約190mm、厚さTが約120mmに設定されている。
【0019】
係るブロック本体1は、コンクリート塀などの壁体を構築するための建築用ブロック(空洞コンクリートブロック)を構成するもので、該ブロック本体1にはその上端面から下端面に通じる長円状の貫通孔2が複数(図示例において3つ)形成されると共に、相対向する短辺側の両端面にはその長さ方向に沿って貫通孔2の半分の大きさを有するU字形の溝部3が形成される。尚、本例ではブロック本体1の上端面が平滑面とされるが、当該部分に溝部3と同形の横溝(鉄筋を横方向に通すためのもの)を形成する場合もある。
【0020】
又、ブロック本体1の表裏両面1A,1Bには、それぞれ上下方向に延びる複数の凹溝4が所定の間隔をあけて平行に形成される。
【0021】
尚、係る凹溝4はブロック本体1の成形型にフレッシュコンクリートを充填することによりブロック本体1に一体として形成されるが、ブロック本体1の成型後にその表裏両面1A,1Bを部分的に切削して凹溝4を形成することもできる。
【0022】
又、本例において、ブロック本体1の表面1Aには約50mmの間隔で7本の凹溝4が形成され、ブロック本体1の裏面1Bには約67mmの間隔で5本の凹溝4が形成されるが、凹溝4の本数ならびに間隔をブロック本体1の表裏両面1A,1Bで同一にしてもよい。
【0023】
ここに、図3はブロック本体の表面側を示した正面概略図、図4はブロック本体の裏面側を示した背面概略図であり、図5、図6にはそれぞれブロック本体の表裏両面の部分拡大断面を示す。
【0024】
これらの図で明らかなように、ブロック本体1の表面1Aと裏面1Bには本数の相違する凹溝4を含む異なる意匠(意匠パターン)が施される。
【0025】
特に、図3および図5から明らかなように、ブロック本体1の表面1Aは各凹溝4の間が割肌面5とされる。この割肌面5は、天然石の割り面を模した不規則な凹凸から成る起伏面で、その高低差は5mm程度に設定される。尚、このような割肌面5はショットブラスト加工や天然石から型取りした成形型を用いるなどして形成することができる。
【0026】
一方、図4および図6から明らかなように、ブロック本体1の裏面1Bには、該裏面における各凹溝4の間で該凹溝よりも底の浅い複数の意匠溝6が形成される。この各意匠溝6は凹溝4に沿って平行に形成される直線状の細い溝で、その間には意匠溝6と略同幅の複数の凸条7が形成される。尚、意匠溝6は凹溝4の間に複数形成されるので、その間隔はブロック本体1の裏面1Bにおける凹溝4の間隔よりも小さい。
【0027】
そして、上記のように構成される本発明のコンクリートブロックによれば、図7のようにコンクリート基礎10上にブロック本体1を順次積み上げて家屋などを取り囲む壁体11を構築することができる。
【0028】
ここに、各ブロック本体1の貫通孔2には、コンクリート基礎10の上端から延び出される図示せぬ鉄筋(縦筋)が通されると共に、それら貫通孔2内にはモルタル若しくはコンクリートが充填される。
【0029】
尚、図7はブロック本体1の表裏両面1A,1Bにおける意匠を省略して示しているが、ブロック本体1は、例えばその表面1Aが壁体11の内側になるように積み上げられるのであり、これによればブロック本体1の表裏両面1A,1Bにおける異なる意匠によって、構築された壁体11の内側と外側で趣を変えることができる。
【0030】
又、ブロック本体1を一段ずつ表裏反転させて積み上げたり、縦一列ずつ表裏反転させて配列させたりすることにより、一種類のブロック本体1を用いながら変化に富む多様な壁体11を構築することが可能となる。
【0031】
以上、本発明に係るコンクリートブロックの好適な一例を説明したが、ブロック本体1の表裏両面1A,1Bにおける意匠パターンは上記例に限らず、ブロック本体1の表裏両面1A,1Bで凹溝4の方向を異ならせるなどしてもよい。例えば、図8のようにブロック本体1の表面1Aに縦方向に延びる凹溝4を形成すると共に、裏面1Bに横方向に延びる凹溝4を形成するようにしてもよい。尚、図8においても、少なくとも一方の面側において凹溝4の間を割肌面とすることができる。
【0032】
ここで、意匠パターンの好例を図9に示して説明すれば、(A)は縦方向に延びる複数の凹溝4を横方向に所定の間隔をあけて形成した第1の意匠パターン、(B)は第1の意匠パターンよりも凹溝4の間隔を小さくした第2の意匠パターン、(C)は縦方向に延びる複数の凹溝4を横方向に所定の間隔をあけて形成し各凹溝4の間を割肌面5とした第3の意匠パターン、(D)は縦方向に延びる複数の凹溝4を横方向に所定の間隔をあけて形成し各凹溝4の間に点線で示される複数の意匠溝6を形成した第4の意匠パターン、(E)は縦方向に延びる凹溝4を面中央部のみに密集状態で形成した第5の意匠パターン、(F)は横方向に延びる複数の凹溝4を縦方向に所定の間隔をあけて形成した第6の意匠パターン、(G)は面全体を割肌面5とした第7の意匠パターンであり、本発明ではそれら意匠パターンの中から選ばれる2種類の意匠パターンをブロック本体1の表裏両面1A,1Bに施すことができる。尚、2種類の意匠パターンの好適な組み合わせとして、A−B、A−C、A−D、A−F、A−G、B−C、B−D、B−F、B−G、C−D、C−E、C−F、C−Gなどが挙げられる。
【0033】
一方、ブロック本体1の形状は、長方形のほか、正方形、三角形、5角形、6角形などの多角形状の輪郭とすることができる。
【0034】
又、係るコンクリートブロックは、塀などの壁体を構築する積みブロックほか、外壁材や擁壁構成材などとしても用途もある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るコンクリートブロックを示す斜視図
【図2】同コンクリートブロックの平面図
【図3】ブロック本体の表面側を示す正面概略図
【図4】ブロック本体の裏面側を示す背面概略図
【図5】ブロック本体の表面を示す部分拡大断面図
【図6】ブロック本体の裏面を示す部分拡大断面図
【図7】本発明に係るコンクリートブロックの使用状態を示す斜視図
【図8】本発明の変更例を示すブロック本体の表面図(a)および裏面図(b)
【図9】ブロック本体の表裏両面に施される意匠のパターン例を示す説明図
【符号の説明】
【0036】
1 ブロック本体
1A ブロック本体の表面
1B ブロック本体の裏面
2 貫通孔
3 溝部
4 凹溝
5 割肌面
6 意匠溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形状の輪郭を有するコンクリート製ブロック本体の表面と裏面に異なる意匠が施されていることを特徴するコンクリートブロック。
【請求項2】
ブロック本体の表裏両面にそれぞれ複数の凹溝が所定の間隔をあけて平行に形成されると共に、該ブロック本体の表裏いずれか一方の面には前記凹溝の間で該凹溝よりも底の浅い複数の意匠溝が凹溝に平行して形成され、前記ブロック本体の他方の面は該面に形成される凹溝の間が天然石の割り面を模した不規則な凹凸から成る割肌面とされていることを特徴とする請求項1記載のコンクリートブロック。
【請求項3】
ブロック本体が長方形の輪郭を有し、その短辺側の両端面には該端面の長さ方向に沿ってU字形の溝部が形成されることを特徴とする請求項1、又は2記載のコンクリートブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−291786(P2007−291786A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122798(P2006−122798)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(592088622)マチダコーポレーション株式会社 (8)