説明

コンクリートブロック

【課題】 タイル剥落防止具に対して外装タイルから離反方向に力が加わったとしてもタイル剥落防止具が外装タイルの裏足から外れることを抑制することができる外装タイル剥落防止構造を提供する。
【解決手段】 外装タイル剥落防止構造1は、外装タイル2の裏面に形成され、底面61と、当該底面61の両側縁から略直角に立上がる一対の側壁62と、当該側壁62の底面61と反対側の端縁に互いに接近する方向に向かって前記底面61と平行に延びる天井面66と、を有する係止溝6に、一対の脚部31、これらの脚部31をつなぐ弾性体により形成された弾性部32、及び一対の脚部31の先端に互いに離反する方向に向かって突出する爪部33をするタイル剥落防止具3の互いに離反する方向に付勢された2本の脚部31を挿入し、その爪部33を天井面66と底面61との間に挿入して係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト工法で製造され、建築物のコンクリート外壁として用いられるコンクリートブロックであって、外装タイルが剥落することを防止するコンクリートブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外装タイル裏面に裏あしと呼ばれる凹凸又はリブが設けられており、特にセメントモルタルの接着性を高めるために先端が幅広で根元が先端よりも幅の狭い断面台形に形成されたあり状の裏あしが知られている(非特許文献1)。しかし、このようなあり状の裏あしを有したタイルであっても経年劣化により剥落する虞があり、特に高層建築物の外壁に用いられる外装タイルの剥落は極めて危険であるので問題であった。
【0003】
ところで、図15に示すように、外装タイル100とコンクリート層101との間にフェライト磁性板102が配置される電波吸収壁103においては、フェライト磁性板102が介装されるために外装タイル100裏面とコンクリート層101との接触面積が減少し、しかもフェライト磁性板102の表面は平滑であるためにコンクリート層101への付着性が弱いので、外装タイル100が剥落する虞が強い。そこで、このような電波吸収壁103において外装タイル100の剥落を防止するために、外装タイル100裏面に設けられたあり状の裏あし104にタイル保持部材105の脚部106が互いに離反する方向に付勢された状態で係止して、このタイル保持部材105をコンクリート層101に埋設することにより、アンカーとして機能させた電波吸収壁用化粧タイル取付構造107が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本工業規格 JISA5209:2008
【特許文献1】実開平6−17298
【特許文献2】特開平9−78793
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような電波吸収壁用化粧タイル取付構造107においては、裏足104がその先端に向かって広がる台形のあり状であるので、タイル保持部材105を外装タイル100の裏足104に係止したとしても、例えばコンクリートの打設の際などに、タイル保持部材105又は外装タイル100に力が加わった場合には、タイル保持部材105の脚部106が外装タイル100の裏足104の側面を滑ってタイル保持部材105が外装タイル100から外れる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、タイル剥落防止具に対して外装タイルから離反方向に力が加わったとしてもタイル剥落防止具が外装タイルの裏足から外れることを抑制することができるコンクリートブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のコンクリートブロックは、外装タイルの裏面にタイル剥落防止具が係止され、当該タイル剥落防止具が躯体コンクリートに埋設されることにより、前記外装タイルが前記躯体コンクリートの表面に固着されて、当該外装タイルの剥落を防止するコンクリートブロックであって、前記外装タイルの裏面には、当該裏面から所定距離凹んで形成された底面と、当該底面の両側縁から略直角に立上がる一対の側壁と、当該側壁の底面と反対側の端縁に互いに接近する方向に向かって前記底面と平行に延びる天井面と、当該天井面の互いに接近する端縁から前記外装タイルの裏面に向かって形成される開口側壁面と、を有する係止溝が形成され、前記タイル剥落防止具は、一対の脚部と、これらの脚部をつなぐ弾性体により形成された折曲部と、一対の脚部の先端に互いに離反する方向に向かって突出する爪部とを有し、互いに離反する方向に付勢された2本の脚部を前記係止溝に挿入し、該爪部を前記天井面と前記底面との間に挿入して係止されることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載のコンクリートブロックは、前記外装タイルは、前記係止溝の長手方向に沿って、前記底面から突出する中間突条が形成されることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載のコンクリートブロックは、前記外装タイルは、前記天井面と前記開口側壁面とが成す角度が鋭角になるように、前記開口側壁面が傾斜して形成されることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載のコンクリートブロックは、前記タイル剥落防止具は、前記爪部がその突出方向に沿って折曲部側の面が膨らんで膨出部を形成することを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載のコンクリートブロックは、内部に鉄筋が埋設されるコンクリートブロックであって、前記タイル剥落防止具の前記折曲部はその中央に前記鉄筋を載置する窪み部が設けられ側面視M字状に形成されるとともに、前記係止溝に爪部が係止されたときに、前記窪み部から前記係止溝の前記底面までの長さが所定かぶり厚以上であることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載のコンクリートブロックは、前記一対の脚部は、互いに対向する面側に膨らむ長手方向に沿って形成された1又は複数のリブが形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載のコンクリートブロックによると、外装タイルの裏面にこの裏面から所定距離凹んで形成された底面と、底面の両側縁から略直角に立上がる一対の側壁と、側壁の底面と反対側の端縁に互いに接近する方向に向かって底面と平行に延びる天井面と、天井面の互いに接近する端縁から外装タイルの裏面に向かって形成される開口側壁面と、を有する係止溝が形成されているので、タイル剥落防止具の2本の脚部を互いに離反する方向に付勢した状態で外装タイルの係止溝に挿入し、その後弾性応力によって2本の脚部が互いに離反し、脚部先端に形成された爪部が天井面と底面との間に挿入して係止されることにより、タイル剥落防止具を外装タイルに確実に係止することができる。
【0014】
請求項2に記載のコンクリートブロックによると、外装タイルの係止溝に沿って、この係止溝の底面から立ち上がる中間突条が形成されているので、外装タイルの裏面側に打設されるコンクリートへの付着強度を高めることができる。
【0015】
請求項3に記載のコンクリートブロックによると、天井面と開口側壁面とが成す角度が鋭角になるように開口側壁面が傾斜して形成されているので、タイル剥落防止具を外装タイルに係止する際に、タイル剥落防止具の脚部が開口側壁面の底面に近接する側の尖った部分にのみ接することになるので、タイル剥落防止具の脚部又は爪部が開口側壁面で引っ掛かる虞がなく、確実に爪部を天井面と底面との間に挿入することができる。
【0016】
請求項4に記載のコンクリートブロックによると、爪部がその突出方向に沿って上方に向かって膨らむ膨出部を有するので、この膨出部の最も膨らんだ位置が天井面に接することによりタイル剥落防止具の脚部が係止溝により深く挿入された状態で固定されるので、タイル剥落防止具をより強固に外装タイルに係止することができる。
【0017】
請求項5に記載のコンクリートブロックによると、タイル剥落防止具の折曲部はその中央に鉄筋を載置する窪み部が設けられ側面視M字状に形成されており、且つ、外装タイルの裏足に突片が係止されたときに、窪み部から外装タイルの係止溝の底面までの長さが所定かぶり厚以上であるので、プレキャスト工法でコンクリートブロックを生産する場合に、外装タイルを型枠の床面に並べて設置し、タイル剥落防止具を係止した上で、このタイル剥落防止具の窪み部に鉄筋を配設し、その上からコンクリートを打設することにより、容易に所定かぶり厚を確保した鉄筋コンクリートを打設することができる。
【0018】
請求項6に記載のコンクリートブロックによると、タイル剥落防止具の一対の脚部は、互いに対向する面が膨らむように1又は複数のリブがその長手方向に沿って形成されているので脚部が補強される。これらのリブは脚部の互いに対向する面、すなわち鍔部に当接しない側の面に形成されているので、鍔部とリブが互いに干渉してタイル剥落防止具の係止強度が低下する虞もない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コンクリートブロックの一部省略断面図。
【図2】外装タイルの主に裏面の外観構成を説明する斜視図及び側面図。
【図3】外装タイルの別の実施形態として六角形状の外装タイルを例示する斜視図及び側面図。
【図4】外装タイルの別の実施形態として係止溝の間に底面から突出する中間突条が設けられた状態を示す側面図。
【図5】外装タイルの別の実施形態として2本の係止溝が設けられた外装タイルを説明する斜視図。
【図6】タイル剥落防止具の外観構成を説明する斜視図。
【図7】タイル剥落防止具を説明する側面図及びリブが複数設けられたタイル剥落防止具を説明する側面図。
【図8】外装タイル及びタイル剥落防止具の寸法を説明する図。
【図9】外装タイルにタイル剥落防止具を係止する工程を説明する斜視図であって、(a)は、タイル剥落防止具の脚部の先端及び爪部を外装タイルの係止溝に挿入した図、(b)は、タイル剥落防止具を回転させて爪部をスリット空間に挿入した図。
【図10】外装タイルにタイル剥落防止具を別の方法で係止する工程を説明する斜視図であって、(a)は、脚部が互いに接近する方向に付勢した状態でタイル剥落防止具の脚部の先端及び爪部を外装タイルの係止溝に挿入する前の状態を示す図、(b)は、タイル剥落防止具の脚部の先端及び爪部を外装タイルの係止溝に挿入した状態を示す図、(c)は、脚部への付勢を解除した状態し、スリット空間に爪部を挿入した状態を示す図。
【図11】係止溝の鍔部の先端が底面に近接する側が尖るように傾斜して形成されていることを説明する側面図及び一部省略拡大図。
【図12】外装タイルを型枠の底に敷き詰めた後、格子状の鉄筋を上からタイル剥落防止具に載置する状態を説明する斜視図。
【図13】外装タイルの裏面に係止したタイル剥落防止具上に鉄筋を載置した状態を説明する側面図。
【図14】図13の状態からコンクリートを打設してコンクリートブロックを完成させた状態を説明する省略断面図。
【図15】従来の電波吸収壁用化粧タイル取付構造を説明する図及びその部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のコンクリートブロック1の最良の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。コンクリートブロック1は、建築物のコンクリート外壁に採用されるブロックであって、図1に示すように、外壁の屋外側に設けられる外装タイル2の裏面にタイル剥落防止具3が係止された状態でコンクリートを打設養生することにより、このタイル剥落防止具3が躯体コンクリート4に埋設されたものである。また、躯体コンクリート4内の屋外寄り及び屋内寄りにはそれぞれ鉄筋5が所定のかぶり厚を保持しつつ埋設されている。
【0021】
外装タイル2は、粘土その他の無機質材料を押出成形した後、乾燥させて高温で焼成した陶磁器質タイルである。この外装タイル2は、図2に示すように、長方形の平板状に形成されており、その裏面には、当該裏面から所定距離凹んで形成された底面61と、当該底面61の両側縁から略直角に立上がる一対の側壁62と、当該側壁62の底面61と反対側の端縁に互いに接近する方向に向かって前記底面61と平行に延びる天井面66と、当該天井面66の互いに接近する端縁から前記外装タイル2の裏面に向かって形成される開口側壁面67と、を有する係止溝6が形成されている。また、天井面66と開口側壁面67とが成す角度が鋭角になるように開口側壁面67は傾斜して形成されている。天井面66と底面61との間には細いスリット空間64が形成されている。
【0022】
なお、外装タイル2の形状は長方形の平板に限定されるものではなく、正方形、その他の多角形、円形などのタイルであってもよい。例えば図3に示すように、六角形のタイルを使用する場合であっても、その裏面に、当該裏面から所定距離凹んで形成された底面61と、当該底面61の両側縁から略直角に立上がる一対の側壁62と、当該側壁62の底面61と反対側の端縁に互いに接近する方向に向かって前記底面61と平行に延びる天井面66と、当該天井面66の互いに接近する端縁から前記外装タイル2の裏面に向かって形成される開口側壁面67と、を有する係止溝6が設けられていればよい。また、外装タイル2の成形は押出成形に限定されるものではなく、外装タイル2の形状に応じて例えば高圧プレス成形などの適切な成形方法を選択できる。さらに、外装タイル2の材料は無機質材料に限定されるものではなく、例えば合成樹脂などの有機高分子材料を用いたものであってもよい。
【0023】
外装タイル2の裏面に設けられた係止溝6の底面61は平坦に形成されていてもよいが、例えば躯体コンクリート4への外装タイル2の付着性を高めるために、図4に示すように、底面61から離れる方向に向かって広がって形成された断面台形のあり状の中間突条65が、係止溝6の長手方向に沿って形成されていてもよい。また、裏面の幅が広い外装タイル2を用いる場合には2以上の中間突条65が形成されていても良く、あり状以外の形状の中間突条65が形成されていてもよい。
【0024】
また、外装タイル2の寸法によっては、係止溝6を2本以上形成してもよい。例えば図5に示すように、2本の係止溝6を互いに平行に外装タイル2の裏面に形成し、それぞれの係止溝6にタイル剥落防止具3を取り付けることにより、コンクリートを打設して外壁を形成した時に、より強固に外装タイル2を躯体コンクリート4に固定することができ、外装タイル2の重量が重い場合にも本コンクリートブロック1を用いることができる。
【0025】
タイル剥落防止具3は、耐腐食性に優れたステンレスの板金をプレス加工して形成されている。このタイル剥落防止具3は、図6及び図7に示すように、一対の脚部31と、これらの脚部31をつなぐ折曲部32と、一対の脚部31の先端に互いに離反する方向に向かって突出する爪部33とを有している。一対の脚部31にはそれぞれ外側を凹ませて、内側を膨らませるようにエンボス加工を施すことにより、一対の脚部31の対向する面にリブ34を形成している。これら脚部31をつなぐ折曲部32は湾曲してその中央が凹んだ窪み部35を形成しており、側面視M字状に形成されている。爪部33はその突出方向に沿うように、折曲部32が形成された側に向かって膨らむ膨出部36を形成している。なお、一対の脚部31に形成されたリブ34は脚部31毎に1本に限定されるものではなく強度を高めるために2本以上形成されていてもよい。
【0026】
外装タイル2及びタイル剥落防止具3の寸法は、たとえば本実施形態においては、図8に示すように、タイル剥落防止具3が弾性変形していない状態のとき、タイル剥落防止具3の一方の爪部33の先端から他方の爪部33の先端までの距離aが43mmであって、一方の脚部31の先端から他方の脚部31の先端までの距離bが36mmである。また、外装タイル2の一方の開口側壁面67の底面61に近接する側の端縁から他方の開口側壁面67の底面61に近接する側の端縁までの距離cが30mmである。また、係止溝6の天井面66から底面61までの距離すなわちスリット空間64の高さeは1.5mmであって、タイル剥落防止具3の爪部33の膨出部36と反対側の面から膨出部36の最も高い位置までの距離dもまた1.5mmである。そして、タイル剥落防止具3の幅gは例えば15mmである。また、タイル剥落防止具3を外装タイル2に係止したときに、外装タイル2の係止溝6の底面61から窪み部35までの距離fは30mmである。
【0027】
上述の各寸法は、タイル剥落防止具3の材料の強度、建築物の外壁の意匠性や設計及び施工上の都合などに応じて適宜選択することができるが、少なくとも、タイル剥落防止具3を確実に外装タイル2の係止溝6に係止するために「b≧c」が好ましい。また、外装タイル2の係止溝6の鍔部63と底面61との間のスリット空間64にタイル剥落防止具3の爪部33がガタつきなく固定されるために「e≒d」が好ましい。そして、内部に鉄筋5を埋設してコンクリートを打設する際に、鉄筋5が所望のかぶり厚以上内側に配置されるために、「f≧カブリ厚」であることが好ましい。さらに、タイル剥落防止具3を係止溝6に挿入する際の作業を容易にするために「g<c」であることが好ましい。
【0028】
タイル剥落防止具3を外装タイル2に係止するときには、まず、図示しない作業者がタイル剥落防止具3の一対の脚部31を挟持して、一方の脚部31の先端から他方の脚部31の先端までの距離が、係止溝6の両側の開口側壁面67の天井面66側の端縁間の距離よりも短くなるように折曲部32を弾性変形させる。そして、弾性変形した状態を保持したまま、図9(a)に示すように、一対の爪部33の突出方向が外装タイル2の係止溝6の長手方向と平行になるように、外装タイル2の係止溝6にタイル剥落防止具3の脚部31の先端及び爪部33を挿入する。そして図9(b)に示すように、タイル剥落防止具3を約90度回転させて、一対の爪部33を係止溝6の天井面66と底面61との間に形成されたスリット空間64に挿入する。このときタイル剥落防止具3の爪部33は互いに離反する方向に付勢されているので、互いにスリット空間64の奥行き方向へ付勢され、外装タイル2の係止溝6の天井面66と底面61との間で確実に固定できる。
【0029】
天井面66から係止溝6の底面61までの距離すなわちスリット空間64の高さe、及びタイル剥落防止具3の爪部33の膨出部36と反対側の面から膨出部36の最も高い位置までの距離dはともに1.5mmであるので、スリット空間64に挿入させた爪部33はほとんどガタつくことがない。また、爪部33全体の厚みが1.5mmあるのではなく、爪部33の突出方向に沿って設けられた膨出部36により1.5mmを確保しているので、材料を節約することができるだけでなく、タイル剥落防止具3を回転させる際に1.5mm以下の細い爪部33の側縁からスリット空間64に挿入され、その後、膨出部36がスリット空間64に挿入させることになるので、挿入作業をより容易にすることができる。
【0030】
また、外装タイル2の一方の鍔部63の先端から他方の鍔部63の先端までの距離cは30mmであるので、タイル剥落防止具3の一方の脚部31の先端から他方の脚部31の先端までの距離もほぼ30mmになるように折曲部32が弾性変形されている。すなわち、タイル剥落防止具3の脚部31は互いに離反する方向に付勢された状態で外装タイル2に係止されている。したがって、爪部33もスリット空間64の奥に向かって付勢された状態で保持されているので、爪部33がこのスリット空間64から脱落する虞もなく、確実に外装タイル2にタイル剥落防止具3を係止することができる。
【0031】
なお、タイル剥落防止具3を外装タイル2に係止する場合に、上述のように、タイル剥落防止具3を約90度回転させるものでなくてもよい。例えば図10に示すように、一方の爪部33の先端から他方の爪部33の先端までの距離を、両鍔部63の開口側壁面67間の距離cである30mmよりも短くなるように折曲部32を弾性変形させて、そのままタイル剥落防止具3の爪部33及び脚部31の先端を、外装タイル2の係止溝6に挿入してもよい。このようにした後、作業者が脚部31を開放すると、弾性応力により、脚部31の先端の間の距離が広がって、爪部33が係止溝6の鍔部63と底面61の間のスリット空間64に挿入され、タイル剥落防止具3に外装タイル2が係止される。
【0032】
また、図11に示すように、鍔部63の先端は外装タイル2の係止溝6の底面61に近接する側が尖るように傾斜して形成されているので、タイル剥落防止具3を外装タイル2に係止する際に、タイル剥落防止具3の脚部31が開口側壁面67の底面61側端縁の尖った部分にのみ接することになるので、タイル剥落防止具3の脚部31又は爪部33が開口側壁面67で引っ掛かる虞がなく、確実に爪部33を天井面66と外装タイルの係止溝6の底面61との間に挿入することができる。さらに、タイル剥落防止具3の一対の脚部31に設けられたリブ34は脚部31の互いに対向する面、すなわち開口側壁面67に当接しない側の面側が膨らんで形成されているので、鍔部63とリブ34が互いに干渉することがなくタイル剥落防止具3の係止強度を維持することができる。
【0033】
以上のようにしてタイル剥落防止具3を外装タイル2に係止した後、コンクリートを打設して外壁を形成する。例えば図12に示すように、プレキャストで外壁を形成する場合には、図示しない型枠を組み立てて、その型枠の図示しない底面に目地材7を挟んで外装タイル2を敷き詰める。タイル剥落防止具3は型枠内に外装タイル2を敷き詰めた後に外装タイル2に係止してもよく、また、型枠に敷き詰める前の外装タイル2に係止してもよい。タイル剥落防止具3を係止した外装タイル2を型枠の底に敷き詰めた後、四角い格子状に溶接した鉄筋5を上から載置する。
【0034】
図13に示すように、鉄筋5を載置するときに格子状の鉄筋5のうちの何本かがタイル剥落防止具3の折曲部32に載置されることになり、折曲部32の中央で窪んで形成されている窪み部35には特に安定して鉄筋5が載置される。このときタイル剥落防止具3の脚部31の先端から窪み部35までの屋内方向への距離fは30mmであるので、少なくとも鉄筋5から外装タイル2の係止溝6の底面61までのかぶり厚を30mm確保することができる。
【0035】
そして、コンクリートを打設して養生した後、型枠から取り外して、図14に示すように、プレキャストコンクリートのコンクリートブロック1を完成させる。このようなコンクリートブロック1は、タイル剥落防止具3の折曲部32及び両脚部31の間にもコンクリートが充分に充填されるので、タイル剥落防止具3の変形の虞もなく、外装タイル2の剥落を極めて効果的に抑制することができる。
【0036】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係るコンクリートブロック1は、外装材としてタイルを使用する建築物の外壁に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 コンクリートブロック
2 外装タイル
3 タイル剥落防止具
4 躯体コンクリート
5 鉄筋
6 係止溝
31 脚部
32 折曲部
33 爪部
34 リブ
35 窪み部
36 膨出部
61 底面
62 側壁
63 鍔部
64 スリット空間
65 中間突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装タイルの裏面にタイル剥落防止具が係止され、当該タイル剥落防止具が躯体コンクリートに埋設されることにより、前記外装タイルが前記躯体コンクリートの表面に固着されて、当該外装タイルの剥落を防止するコンクリートブロックであって、
前記外装タイルの裏面には、当該裏面から所定距離凹んで形成された底面と、当該底面の両側縁から略直角に立上がる一対の側壁と、当該側壁の底面と反対側の端縁に互いに接近する方向に向かって前記底面と平行に延びる天井面と、当該天井面の互いに接近する端縁から前記外装タイルの裏面に向かって形成される開口側壁面と、を有する係止溝が形成され、
前記タイル剥落防止具は、一対の脚部と、これらの脚部をつなぐ弾性体により形成された折曲部と、一対の脚部の先端に互いに離反する方向に向かって突出する爪部とを有し、互いに離反する方向に付勢された2本の脚部を前記係止溝に挿入し、該爪部を前記天井面と前記底面との間に挿入して係止されることを特徴とするコンクリートブロック。
【請求項2】
前記外装タイルは、前記係止溝の長手方向に沿って、前記底面から突出する中間突条が形成されることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロック。
【請求項3】
前記外装タイルは、前記天井面と前記開口側壁面とが成す角度が鋭角になるように、前記開口側壁面が傾斜して形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンクリートブロック。
【請求項4】
前記タイル剥落防止具は、前記爪部がその突出方向に沿って折曲部側の面が膨らんで膨出部を形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンクリートブロック。
【請求項5】
内部に鉄筋が埋設されるコンクリートブロックであって、
前記タイル剥落防止具の前記折曲部はその中央に前記鉄筋を載置する窪み部が設けられ側面視M字状に形成されるとともに、前記係止溝に爪部が係止されたときに、前記窪み部から前記係止溝の前記底面までの長さが所定かぶり厚以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のコンクリートブロック。
【請求項6】
前記一対の脚部は、互いに対向する面側に長手方向に沿って膨らむ1又は複数のリブが形成されたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のコンクリートブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−49997(P2013−49997A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189082(P2011−189082)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(511212365)株式会社サムシング・ファイン (3)
【出願人】(511212354)株式会社デイコム (3)
【出願人】(598164511)不二窯業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】