説明

コンクリート供試体用の記録票、記録票シート及びそれを使用したコンクリート供試体の製作方法

【課題】コンクリート供試体を作成するための生コンクリート打設する作業における作業効率を高めることができるコンクリート供試体用の記録票を提供する。
【解決手段】表面に情報を記入するための記載部を有するとともに、裏面に第1接着剤が塗付された記録面材と、記録面材の表面に記載部を保護するために接着される透明フィルムとを備え、透明フィルムの表面をコンクリート供試体10の型枠に密着させるコンクリート供試体10用の記録票1であって、透明フィルムの表面の少なくとも一部に第2接着剤を塗付し、透明フィルムの表面と型枠との接着力を、記録面材の裏面とコンクリート供試体10との接着力よりも低く設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば建設工事における生コンクリート打設時の打設コンクリートの品質証明に供するための供試体に貼り付けられるコンクリート供試体用の記録票と、その台紙を備えた記録票シート及びそれを使用したコンクリート供試体の製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状を呈する型枠等に生コンクリートを打設し脱型して得られるコンクリート供試体がコンクリートの品質保証の試験に用いられている。
【0003】
このコンクリート供試体の規格および製作方法はJISA1108に定められていて、直径(10cm以上)の2倍の高さをもつ円柱形とし、直径は粗骨材の最大寸法の3倍以上とする必要がある。
【0004】
コンクリート供試体を強度試験等の試験に供する場合には、打設したコンクリートに関する情報(生コンクリートの詰込年月日、試験年月日、発注者指定の強度、スランプ値、空気量、温度等)を、記録票に記載してコンクリート供試体に貼着するか、又はそれらの情報をコンクリート供試体に直接記入する必要がある。
【0005】
しかし、コンクリート供試体は水槽に収容して所謂水中養生することから、水によって記録票が剥離したり、必要事項が消失したりする問題がある。
【0006】
そこで、中央に孔を有する保護用のビニールケース内に上記記録票を入れて、これを円筒の型枠内底の上方に突出する支持杆に嵌入することで位置決め及び載置し、型枠内に生コンクリートを打設し、生コンクリート乾燥後にコンクリート供試体とビニールケースを密着一体化させることで上記剥離を防止する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかし、脱型後のコンクリート供試体の上面に記録票を貼り付ける場合、貼着をし忘れる虞があり、養生中の生コンクリートの表面に記録票を置くと養生中に生コンクリート内に記録票が埋もれる虞がある。一方、コンクリート供試体の下面に記録票を貼着する場合、情報確認が面倒となる。
【0008】
そこで、コンクリート供試体の周面に記録票を接着固定することが考えられる。コンクリート供試体の周面に記録票を貼着する場合、コンクリート供試体を製作する際に、型枠の内周面に記録票を密着させた状態で生コンクリートを打設することにより、脱型後にコンクリート供試体の周面に記録票を貼着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭63−16703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、型枠の内周面に記録票を手で押しつけた状態で生コンクリートを打設する必要があるため、作業効率が悪いといった問題がある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コンクリート供試体を作成するために生コンクリートを打設する作業の効率を高めることができるコンクリート供試体用の記録票、記録票シート及びそれを使用したコンクリート供試体の製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るコンクリート供試体用の記録票は、表面に情報を記入するための記載部を有するとともに、裏面に第1接着層が設けられた記録面材と、該記録面材の表面に前記記載部を保護するために接着される透明フィルムとを備え、前記透明フィルムの表面をコンクリート供試体の型枠に密着させるコンクリート供試体用の記録票であって、前記透明フィルムの表面の少なくとも一部に第2接着層を設け、前記透明フィルムの表面と前記型枠との接着力を、前記記録面材の裏面と前記コンクリート供試体との接着力よりも低く設定したことを特徴とする。
【0013】
ここで、前記第2接着層が再剥離型の接着剤であってもよい。
【0014】
また、前記記録面材と前記透明フィルムとが接着した状態で、前記透明フィルムの表面部分に投影される前記記録面材の記載部の全面又はこの記載部を囲う、前記透明フィルムの表面の位置に前記第2接着層が設けられていてもよい。
【0015】
本発明に係る記録票シートは、上記いずれかのコンクリート供試体用の記録票を、この記録票とは異なる形状又は大きさの台紙に剥離可能に貼着して、この台紙の一部を把持部としたことを特徴とする。
【0016】
ここで、前記コンクリート供試体用の記録票の直線状の縁部を前記台紙の直線状の縁部と平行となるように貼着してもよい。
【0017】
本発明に係るコンクリート供試体の製作方法は、上記いずれかの記録票を用いたコンクリート供試体の製作方法であって、前記型枠に対して記録票を接着固定する位置を決定する工程と、前記型枠の内周面に前記コンクリート供試体用の記録票を押し付ける工程と、前記台紙を前記コンクリート供試体用の記録票から剥がす工程と、前記型枠にコンクリートを打設する工程と、前記型枠を脱型する工程とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る別のコンクリート供試体の製作方法は、上記記録票シートを用いた上記コンクリート供試体の製作方法であって、前記型枠に対して記録票を接着固定する位置を決定する工程は、前記記録シートの把持部を把持して行うことを特徴とする。
【0019】
ここで、前記型枠に対して記録票を接着固定する位置を決定する工程に、前記台紙の直線状の縁部を前記型枠の上縁部に沿って一致させる工程が含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るコンクリート供試体用の記録票によれば、記録票の透明フィルムの表面の少なくとも一部に第2接着層が設けられているので、生コンクリートを型枠内に打設する際に、型枠の内周面にコンクリート供試体用の記録票を接着固定することができる。そのため、記録票を手で押し付けて固定する必要がなく、生コンクリートを打設する作業効率が上昇する。
【0021】
また、前記透明フィルムの表面と前記型枠の内周面との接着力を、前記記録面材の裏面と前記コンクリート供試体の周面との接着力よりも低く設定したので、コンクリート供試体を型枠から脱型する際に、型枠の内周面に接着固定した記録票が型枠からコンクリート供試体に転着されやすいものとなる。
【0022】
前記第2接着層が再剥離型の接着剤であれば、脱型の際に型枠の内周面からコンクリート供試体に記録票が転着されやすいものとなる。
【0023】
また、前記記録面材と前記透明フィルムとを接着した状態で、前記透明フィルムの表面部分に投影される前記記録面材の記載部の全面又はこの記載部を囲う、前記透明フィルム表面の位置に前記第2接着層を設ければ、次のような効果が得られる。
【0024】
すなわち、コンクリート供試体の作製過程で、記載部が投影された透明フィルム表面を覆う又は囲う第2接着層が型枠の内周面に密着した状態で接着固定され、この状態で型枠に生コンクリートを打設・養生することから、養生中に記載部が投影された透明フィルム表面部分に生コンクリートが浸入することがない。そのため、脱型後に当該表面部分にコンクリートペーストが固着することがなく、コンクリート供試体に貼着された記録票から確実に情報を判読することができる。
【0025】
本発明に係る記録票シートは、上記いずれかのコンクリート供試体用の記録票を、この記録票とは異なる形状又は大きさの台紙に剥離可能に貼着して、この台紙の一部を把持部としたことから、この把持部を把持して、型枠に記録票を接着固定させることができる。
【0026】
そのため、型枠に記録票を接着固定する際に透明フィルム表面の第2接着層に誤って触れることがなく、第2接着層の接着力が低下することがない。その結果、接着力低下に起因した上記生コンクリートの浸入の問題を防止することができ、記録票の判読性が損なわれることを防止することができる。
【0027】
前記コンクリート供試体用の記録票を、その直線状の縁部が前記台紙の直線状の縁部と平行となるように台紙に貼着すれば、例えばこの台紙の縁部を型枠の内周面の上縁部に一致させて記録票を型枠に接着固定することで、型枠に接着固定する時に、位置決めが簡単となり、手ブレ等の影響を排除できる。このため、記録票にシワが形成されたり、これに起因して記録票の型枠内周面への接着固定部分に気泡が侵入したりすることを防止できる。その結果、接着力低下に起因した上記生コンクリートの浸入の問題を防止することができ、記録票の判読性が損なわれない。
【0028】
本発明に係るコンクリート供試体の製作方法は、上記いずれかの記録票を用いたコンクリート供試体の製作方法であって、前記型枠に対して記録票を接着固定する位置を決定する工程と、前記型枠の内面に前記コンクリート供試体用の記録票を押し付ける工程と、前記台紙を前記コンクリート供試体用の記録票から剥がす工程と、前記型枠にコンクリートを打設する工程と、前記型枠を脱型する工程とを備えるので、生コンクリートを型枠に打設する際に、記録票を手で型枠の内周面に押し付けたまま打設作業をする必要がなく、コンクリート供試体を作製する作業効率が上昇する。
【0029】
ここで、記録票シートの把持部を把持して型枠の内周面に記録票を接着固定することとすれば、上述したように第2接着層の接着力低下の問題が生じない。
【0030】
また、このコンクリート供試体の製作方法が、台紙の直線状の縁部を型枠の上縁部に沿って一致させる工程を含んでいれば、上述したように手ブレの問題を排除することができるので、型枠の内周面に記録票を接着固定した部分にシワが形成されず、養生中に生コンクリートが浸入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る記録票が貼着されたコンクリート供試体を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る記録票シートを示す図である。
【図3】(a)は、コンクリート供試体の情報を記入した記録票の斜視図を示す。(b)は、(a)のA−A線矢視方向で見た断面図である。(c)は、(b)の透明フィルムを閉じた状態を示す図である。
【図4】(a)は、記録面材の記載部が投影された透明フィルムの表面部分を囲うように透明フィルム表面に第2接着剤を塗布した状態の記録票を示す図である。(b)は、記録面材の裏面全面に第1接着剤を塗布した状態を示す図である。
【図4A】記録面材の記載部が投影された透明フィルムの表面部分に第2接着剤を塗布した状態の記録票を示す図である。
【図5】(a)は、コンクリート供試体を製作するために型枠の内周面に記録票を接着固定している状態を示す図である。(b)は、(a)の状態から台紙を剥がして記録票を接着固定した後の状態を示す図である。
【図6】図5(b)の型枠内に生コンクリートを打設した状態を示す断面図である。
【図7】図6の記録票周辺の拡大断面図である
【図8】従来の記録票を型枠の内周面に手で接着固定して生コンクリートを打設した状態を示す断面図である。
【図9】(a)と(b)は、記録票の透明フィルム表面に第2接着剤を塗付する際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、コンクリート強度試験等に使用されるコンクリートの供試体10(以下、「供試体」と略称する)の斜視図である。この供試体10は、円筒状の型枠9(図5、図6参照)の内部に生コンクリートを打設し、養生および脱型することで得られる。
【0033】
本発明に係る記録票1は、この打設前にあらかじめ供試体10の型枠9の内周面に接着固定され、養生後の脱型時に、型枠9から供試体10の外周面に転着(図1参照)されるものである。
【0034】
この転着により、現場のコンクリートの品質を管理する上で必要な所定事項(事業主体、工事名、コンクリート打設場所、立合った人の氏名、コンクリートの採取日、スランプ試験、採取したコンクリートの空気量、温度、塩分の項目と内容)が供試体10の外周面に表示される。
【0035】
本発明に係る実施形態の記録票1は、図2及び図3に示すように、所定事項が記載される記録面材2と、この記録面材2の記載面を保護する透明フィルム3とにより主に構成されている。
【0036】
記録面材2の裏面、透明フィルム3の表面および透明フィルム3の裏面(又は記録面材2の表面)には、それぞれ第1〜3接着層としての第1〜3接着剤が塗布される。
<記録面材>
記録面材2は、コンクリートの品質に関する情報である所定事項が印刷や記入等される記載部を表面に有しているもので、その裏面全体が供試体10、つまりコンクリートに接触および接着される。コンクリートがアルカリ性であるため、記録面材2としては、耐アルカリ性、耐水性を有する化学合成紙が望ましい。例えば「YUPO#80」(マルウ接着剤株式会社製)が挙げられる。
【0037】
記録面材2が化学合成紙であれば、4週間以上の水中養生浸漬後も記入文字及び紙質に変化を生じないため、文字が鮮明で読みやすく、写真撮影も鮮明となる。また、紙質が変化しにくいので、透明フィルム3との接着が強く維持され、養生中に記録票1が供試体10から剥がれにくいものとなる。
【0038】
また、記録面材2として化学合成紙を用いることにより、引張強度が高いものとなり、通常では破損することがないため、破損に起因して記録票1が型枠9又は供試体10から剥離されることが防止される。また、取扱・記録保存がしやすいという利点があり、コンクリート品質管理記録として信頼性が高まる。
<透明フィルム>
透明フィルム3は、生コンクリートのペーストが記録面材2に付着するのを防止したり、記録面材2の記載事項が水で消失しないように記録票1の記載面を物理的に保護するものである。この透明フィルム3により記録面材2の記載面が保護され、供試体10を作るために型枠9に生コンクリートを打設して養生する際や、脱型して得られた記録票1が貼着された供試体10を水中養生等する際に記録面材2の記載事項が消失等することがない。
【0039】
透明フィルム3としては、耐アルカリ性、耐水性を示し、型枠9の表面に密着しやすいものが望ましい。例えば、「OPP#20」(マルウ接着剤株式会社製)が挙げられる。
【0040】
透明フィルム3の表面は、打設前に型枠9の内周面に接着固定され、養生後の脱型により型枠9の内周面から剥離される。これにより、記録票1が型枠9から供試体10へ転着されることとなる。
<接着剤>
上述したように、本発明に係る記録票1は、記録面材2とこれを保護する透明フィルム3により主として構成され、上述したように、記録面材2の裏面、透明フィルム3の裏面(又は記録面材2の表面)および透明フィルム3の表面には、それぞれ第1接着剤4,第3接着剤6および第2接着剤5が塗布される。
(透明フィルム表面)
透明フィルム3の表面に塗布される第2接着剤5は、記録票1の透明フィルム3の透明性を確保するために、少なくとも接着剤の固化後に透明性を有しているものが好ましい。
【0041】
また、第2接着剤5は、型枠9から剥離される透明フィルム3の表面に塗布されることから、再剥離用の接着剤であることが望ましい。このような接着剤として、中粘再剥離型のアクリル系溶剤「Rt−H」(マルウ接着剤株式会社製)を用いることができる。
【0042】
透明フィルム3の表面が記録票1の転着時に型枠9から剥離しにくいと、物理的な力により透明フィルム3が塑性変形して部分的に透明性が損なわれ、記録票1に記載された情報を判読しづらくなる虞があるが、再剥離用の接着剤であれば、このような問題が発生しない。
【0043】
その一方で、この第2接着剤5は、型枠9と接着した透明フィルム3の表面部分との間に生コンクリートが浸入しない程度の接着力が必要となる。
【0044】
第2接着剤5を記録票1の透明フィルム3の表面へ塗布する場合、少なくとも透明フィルム3の表面の一部に塗布する必要がある。
【0045】
この場合、記録面材2の記載部が投影される(透けて見える)透明フィルム3の表面部分のうち、記載部の情報の判読に必要な領域に第2接着剤5を塗付するか、この領域を囲うように第2接着剤5を塗付する(順に図4A及び図4(a)参照)。
【0046】
前者の場合は、記載部が投影された透明フィルム3の表面部分に塗付されることから固化後に第2接着剤が透明性を有している必要があるが、後者の場合は記載部を囲う透明フィルム3の表面部分に塗付されることから、その必要はない。
【0047】
ここで、例えば、図9(a)に示すよう第2接着剤5を全く塗付しない場合や、図9(b)に示すように、記載部が投影された透明フィルム3部分の周囲の一箇所だけに、第2接着剤5を塗布するような構成とすると、記載部が投影された透明フィルム3の表面部分に、白抜矢印B、Cのように生コンクリートが入り込むこととなり、好ましくない。
【0048】
上記のように構成することで、記録票1を接着固定した型枠9内に生コンクリートを打設・養生している際に、記載部が投影された透明フィルム3の表面と型枠9の内周面との間に生コンクリートが浸入することがない。この結果、脱型して得られた供試体10の周面に貼着された記録票1の情報の判読性が損なわれることがない。
【0049】
各面の接着力の関係は、「供試体10の周面と記録面材2の裏面との接着力」>「透明フィルム3の表面と型枠9の内周面との接着力」とする必要があるが、第2接着剤5を透明フィルム3の表面の周縁部のみに塗布する後者の構成とすれば(図4(a)参照)、透明フィルム3の表面の接着力の調整が容易となり、また第2接着剤5を節約することができる。
(透明フィルムの裏面(又は記録面材2の表面))
透明フィルム3の裏面(又は記録面材2の表面)に使用する第3接着剤6は、その裏面(又は表面)の少なくとも一部に塗布されている必要がある。
【0050】
この場合、上記判読性を確保するために、記録面材2の表面において、記載部の全面又は記載部を囲う位置に第3接着剤6を塗付するのが好ましい。
【0051】
また、この第3接着剤6は、少なくとも固化後に透明性を有している必要がある。この第3接着剤6としては、例えばエマルジョン糊(マルウ接着剤株式会社製)が使用できる。
【0052】
さらに、「透明フィルム3の裏面と記録面材2の表面との接着力」は、上述したように、転着時に記録面材2と透明フィルム3が剥がれることがないように「透明フィルム3の表面と型枠9の内周面との接着力」や、「供試体10の周面と記録面材2の裏面との接着力」よりも高く設定する必要がある。
(記録面材の裏面)
第1接着剤4は、記録面材2の裏面に塗布され、上述の如く「供試体10と記録面材2の裏面の接着力」は、上記転着時に剥がれることがないように「透明フィルム3の裏面と記録面材2の表面との接着力」よりも低く設定する必要がある。
【0053】
この場合も、上述のように周縁部に塗付することで接着力の調整がしやすいものとなる。
<目印>
目印Mは、供試体10の外周面に適正かつ簡単に記録票1を貼着させるためのものである。ここでの「適正」とは、図1に示すように、供試体10に貼着された記録票1が、気泡を殆ど含まず、供試体10の上面に対して斜めに傾いていない状態であり、さらに供試体10の上面から記録票1が突出していない状態をいう。
【0054】
記録票1が供試体10の上面から突出している場合、供試体10を水中養生や、供試体10を持ち運ぶために手で触れた場合に記録票1が剥がれやすくなる。
【0055】
台紙7に対して記録票1を貼着する場合、図2に示すように、長方形の台紙7の直線状の上縁部7Bから所定距離ごとに、目印Mとしての上縁部7Bと平行な線(目印M,・・・)を引き、成形した記録票1を各区間内に収まるように貼着する。
【0056】
ここで、記録票1は、上縁部7B又は目印Mと重ならないように貼着されている。また、台紙7の上縁部7Bと下縁部7Aの各横巾は供試体10の外周長以下である。
【0057】
そして、図5(a)に示すように、記録票1を貼着した区画を形成する台紙7の目印M又は上縁部7B(M)を、型枠9の内側の上縁部9Aに一致させて型枠9内でこの区画の台紙7の部分を後ろ側から押し、台紙7を剥がすことにより、図5(b)に示すように、型枠9の所定位置に一枚目の記録票1が接着固定される。
【0058】
そして、図6に示すように、この型枠9に生コンクリートを打設して養生、脱型すれば、記録票1が適正に貼着された供試体10を簡単に得ることができる(図1参照)。
【0059】
ところで、記録票1の上縁部1aを目印にしてもよいが、型枠9内に記録票1を接着固定する際に、記録票1の上縁が型枠9の上縁部9Aに一致した状態で接着固定されることとなるので、型枠9内に打設した生コンクリート表面を手で均す作業等により、接着固定した記録票1の上縁に手が触れて、記録票1が部分的に剥がれる虞がある。したがって、目印Mを付した台紙7を用いて接着固定する方が好ましい。
<記録票の外形>
記録票1は、図2に示すように異なる形状又は大きさの台紙7に貼着されており、この台紙7の余白部分を把持して接着固定をすることにより、記録票1の透明フィルム3に塗付した第2接着剤5に触れずに記録票1を型枠9に接着固定することができる。
【0060】
また、記録票1の直線状の上縁部1aを台紙7の直線状の上縁部7B(M)と平行となるように貼着し、台紙7に付した目印Mを型枠9の上縁部に一致させて接着固定することにより、供試体10に記録票1を適正に貼着することができる。
【実施例】
【0061】
本発明に係る実施例の記録票1について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0062】
図1に実施例の記録票1を付した供試体10を示す。図2に、目印Mを付した台紙7の各区間内に貼着した実施例の記録票1,・・・を示す。図3(a)に図2の部分斜視図、(b)に(a)のA−A線の断面、(c)に透明フィルム3を記録面材2に貼着したときの断面を示す。図4は、記録票1の表面側と裏面側の接着剤の分布を示す図である。
【0063】
図2及び図3に示すように、記録票1は、記録面材2と、この記録面材2の表面を覆う透明フィルム3等とを有している。
【0064】
記録面材2は、白色の化学合成紙(商品名「YOUPO」:マルウ接着剤株式会社製)で製造され、記録面材2の表面には供試体10の情報を記載するための記載部としての項目欄が印刷されている(図3(a)参照)。
【0065】
一方、透明フィルム3は、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(「OPP#20」:マルウ接着剤株式会社製)で製造されている。
【0066】
記録面材2の裏面は、全面に第1接着剤4の中粘再剥離型のアクリル系溶剤(商品名「Rt−H」:マルウ接着剤株式会社製)が塗布され(図4(b)参照)、台紙7の表面に貼着されている(図2参照)。
【0067】
一方、記録面材2の表面に接合される透明フィルム3の裏面は、図3(b)に示すように、全面に第3接着剤6のエマルジョン糊が塗布され、その一側縁部が記録面材2に接合されている。それ以外の部分にはポリラミグラシン製の剥離紙8が剥離可能な状態で接合されている。
【0068】
一方、透明フィルム3の表面は、図4(a)に示すように、その表面に投影された記録面材2の記載部を囲う位置に第2接着剤5の再剥離型接着剤の「Rt−H」が塗布されている。
【0069】
記録票1の台紙7(図2参照)は、クラフト紙の両面にポリエチレンをラミネートし、その片面の上にシリコーン処理したものであり、このシリコーンの表面により貼着された記録票1が剥離しやすいようになっている。
【0070】
この台紙7の表面と裏面の両面には、図2に示すように、目印M,・・・が印刷されており、台紙7の表面の各区間内には、記録票1が目印M又は台紙7の下縁部7Aまたは上縁部7B(M)に重ならないように接着されている。一方、台紙7の裏面には、さらに記録票1を型枠9へ接着固定する際の手順が印刷されている(不図示)。
【0071】
図3(a)〜(c)に示すように、記録面材2の項目欄に所定事項を記入して透明フィルム3の裏面の剥離紙8を剥がして記載面に貼着することで記録面材2の記載面が保護される。
【0072】
図5は、ステンレス製の型枠9の所定位置に記録票1を接着固定している作業状態を示す図である。
【0073】
記録票1の接着固定の手順としては、図5(a)に示すように、まず台紙7の区画のうち、記録票1を有する区間を形成する目印Mを型枠9の上縁部9Aに一致させ、この区画の台紙7の部分を型枠9側へ押して接着固定後に台紙7を剥すことで、図5(b)に示すように、型枠9の内周面に記録票1が接着固定される。
【0074】
図6は、図5(b)の型枠9内に生コンクリートを打設した状態を示す図である。図7は、図6の記録票1の周辺を拡大した図である。
【0075】
以下、本発明に係る実施例の作用、効果を説明する。
【0076】
本発明に係る記録票1によれば、記録票1の透明フィルム3の表面の少なくとも一部に第2接着剤5を塗付したので、生コンクリートを型枠9内に打設する際に、型枠9の内周面に供試体10用の記録票1を接着固定することができる。そのため、記録票1を手で型枠9の内周面に押し付けて固定する必要がなく、生コンクリートを打設する作業効率が上昇する。
【0077】
また、第1,2接着剤として同一の接着剤を用い、記録面材2の裏面全面に第1接着剤4を塗布し、これとほぼ同面積の透明フィルム3の表面の一部に第2接着剤5を塗布することで(図4(a)及び図7参照)、「記録票1の裏面と型枠9の周面との接着力」を「供試体10の周面と記録票1の裏面との接着力」より低く設定している。
【0078】
このように接着力を低く設定したことから、供試体10をその型枠9から脱型する際に、型枠9の内周面に接着固定した記録票1が型枠9から供試体10に転着されやすいものとなる。
【0079】
ここで、第2接着が再剥離型の接着剤であれば、脱型の際に型枠9の内周面から供試体10に記録票1が転着されやすいものとなる。また、記録票1を取り扱う際に、記録票1の透明フィルム3の表面を間違った箇所に接着した場合でも、剥離後に接着力が維持される。
【0080】
ところで、図4に示すように、記録面材2と透明フィルム3とが接着した状態で、透明フィルム3の表面部分に投影される記録面材2の記載部を囲う透明フィルム3の表面の位置に第2接着剤5を塗付すれば、次のような効果が得られる。
【0081】
すなわち、供試体10の作製過程で、透明フィルム3の表面の当該塗布部分が型枠9の内周面に密着した状態で接着固定され、この状態で型枠9に生コンクリートを打設、養生することから、養生している最中に記載部が投影された透明フィルム3の表面部分と、これに対向した型枠9の内周面との間に生コンクリートが浸入することがない。そのため、脱型後に記載部の情報の判読に必要な透明フィルム3の表面部分にコンクリートペーストが付着することがなく、供試体10に貼着された記録票1から確実に情報を判読することができる。
【0082】
本発明に係る記録票シート11は、図2に示すように、記録票1とは異なる形状又は大きさの台紙7に記録票1を剥離可能に貼着して、この台紙7の一部を把持部としたことから、図5(a)に示すように、この把持部を把持して、型枠9の内周面に記録票1を接着固定させることができる。
【0083】
そのため、型枠9の内周面に記録票1を接着固定する際に透明フィルム3の表面に塗付した第2接着剤5に誤って触れることがなく、第2接着剤5の接着力が低下させることがない。その結果、接着力低下に起因して生コンクリートが、記載部が投影される透明フィルム3の表面と型枠9の内周面との間に生コンクリートが浸入することを確実に防止できる。
【0084】
図2に示すように、記録票1を、記録票1の直線状の上縁部1aを台紙7の直線状の上縁部7Bと平行となるように台紙7に貼着すれば、図5(a)に示すように、例えばこの台紙7の上縁部7Bを型枠9の内周面の上縁部9Aに一致させて、記録票1を型枠9に接着固定することで、その位置決めが簡単となり、手ブレ等の影響を排除できる。
【0085】
このため記録票1にシワが形成されたり、これに起因して記録票1の型枠9の内周面への接着固定部分に気泡が侵入したりすることを防止できる。その結果、接着力低下に起因した上述の生コンクリートの浸入を防止することができ、記録票1の判読性が損なわれない。
【0086】
さらに、型枠9の下部側よりコンクリートの充填圧が低い型枠9の上部側に記録票1が貼着されるので、養生中に記録票1と型枠9との間に生コンクリートが入りにくいものとなる。
【0087】
以上、本発明のコンクリート供試体用の記録票、記録票シート及びそれを使用したコンクリート供試体の製作方法を実施の形態及び実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0088】
実施例では、透明フィルム3の表面に第2接着剤5用の剥離紙を付していないが、記録票1の製造段階でこの剥離紙を付しても良い。
【0089】
また、実施例では、台紙7の両面に目印Mを付したものについて説明したが、目印Mを付す台紙7の面は表裏のいずれか一方でよい。
【0090】
また、第2接着剤5が周縁部に塗布された透明フィルム3の表面は型枠9の内面に密着し、透明フィルム3と型枠9との間に生コンクリートが浸入しないのは、この第2接着剤5によるところ、第2接着剤5の最も外側部分は養生中に生コンクリートと接触するため、第2接着剤5にコンクリートの適正pH領域で呈色するpH指示薬(フェノールフタレイン)を混合するようにすることで、脱型時にこの外側部分の色を確認することでコンクリートが適正なpH範囲内であることを確認できるようにしてもよい。
【0091】
供試体10の型枠に記録票1と同じ形状、厚み分の深さの凹部を形成し、この凹部に記録票1をはめ込んだ使い捨ての型枠と記録票1のセットとしても良い。
【符号の説明】
【0092】
1・・・記録票
2・・・記録面材
3・・・透明フィルム
4〜6・・・第1〜3接着剤
7・・・台紙
8・・・剥離紙
9・・・型枠
10・・・供試体
11・・・記録票シート
12、12A・・・記録票

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に情報を記入するための記載部を有するとともに、裏面に第1接着層が設けられた記録面材と、該記録面材の表面に前記記載部を保護するために接着される透明フィルムとを備え、前記透明フィルムの表面をコンクリート供試体の型枠に密着させるコンクリート供試体用の記録票であって、
前記透明フィルムの表面の少なくとも一部に第2接着層を設け、
前記透明フィルムの表面と前記型枠との接着力を、前記記録面材の裏面と前記コンクリート供試体との接着力よりも低く設定したことを特徴とするコンクリート供試体用の記録票。
【請求項2】
前記第2接着層が再剥離型の接着剤であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート供試体用の記録票。
【請求項3】
前記記録面材と前記透明フィルムとが接着した状態で、前記透明フィルムの表面部分に投影される前記記録面材の記載部の全面又はこの記載部を囲う、前記透明フィルムの表面の位置に前記第2接着層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート供試体用の記録票。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載のコンクリート供試体用の記録票を、この記録票とは異なる形状又は大きさの台紙に剥離可能に貼着して、この台紙の一部を把持部としたことを特徴とする記録票シート。
【請求項5】
前記コンクリート供試体用の記録票の直線状の縁部を前記台紙の直線状の縁部と平行となるように貼着したことを特徴とする請求項4に記載の記録票シート。
【請求項6】
請求項1〜3いずれか1項に記載の記録票を用いたコンクリート供試体の製作方法であって、
前記型枠に対して記録票を接着固定する位置を決定する工程と、
前記型枠の内面に前記コンクリート供試体用の記録票を押し付ける工程と、
前記台紙を前記コンクリート供試体用の記録票から剥がす工程と、
前記型枠にコンクリートを打設する工程と、
前記型枠からコンクリート供試体を脱型する工程とを備えることを特徴とするコンクリート供試体の製作方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の記録票シートを用いた請求項6に記載のコンクリート供試体の製作方法であって、
前記型枠に対して記録票を接着固定する位置を決定する工程は、前記記録票シートの把持部を把持して行うことを特徴とする請求項6に記載のコンクリート供試体の製作方法。
【請求項8】
前記型枠に対して記録票を接着固定する位置を決定する工程に、前記台紙の直線状の縁部を前記型枠の上縁部に沿って一致させる工程が含まれることを特徴とする請求項7に記載のコンクリート供試体の製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−211853(P2012−211853A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78119(P2011−78119)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(504407480)技建開発株式会社 (2)
【出願人】(511081680)一般社団法人社会基盤技術評価支援機構・中部 (1)
【Fターム(参考)】