説明

コンクリート函体

【課題】曲線施工など特にコンクリート函体の接合端面に推力が不均一に加わる場合に、コンクリート函体同士のズレを確実に防止できるコンクリート函体を提供する。
【解決手段】コンクリート函体40の前後方向の端面4eに凸部15を一体的に形成し、隣接するコンクリート函体40の端面4eにはこの凸部15に嵌合する凹部14を形成し、これら凸部15と凹部14の嵌合でコンクリート函体40相互のずれ止めとする。凹部14および凸部15は円形であり、凹部14の深さおよび凸部15の高さを円の半径以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道、共同溝、電信・電話などの付設地下道等の地下構造物を市街地などに施工するオープンシールド工法や推進工法において使用するコンクリート函体であって、特に曲線施工を行う箇所において好適に使用することができるコンクリート函体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上下水道、共同溝、電信・電話などの付設地下道等の地下構造物を市街地などに施工する工法として、推進工法やオープンシールド工法が広く用いられている。推進工法とは、掘削機により切羽の掘削を行いながら掘削孔にコンクリート函体やヒューム管を発進坑に吊り降ろしてセットし、このコンクリート函体等を発進坑に配置した推進ジャッキにより押し出すことにより次のコンクリート函体等をセットするスペースを確保するという工程を繰り返して、順次縦列にコンクリート函体等を埋設する工法である。通常、先頭のコンクリート函体等の前には、刃口または掘進機が設置される。
【0003】
一方、オープンシールド工法は開削工法(オープンカット工法)とシールド工法の長所を活かした合理性に富む工法であり、オープンシールド工法に関する特許文献としては、例えば以下のものが存在する。
【特許文献1】特開2006−112101号公報
【特許文献2】特開2006−112100号公報
【0004】
このオープンシールド工法で使用するオープンシールド機1の概略は図4に示すように左右の側壁板1aと、これら側壁板1aに連結する底板1bとからなる前面、後面および上面を開口したもので、前記側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成し、また側壁板1aの中央または後端近くに推進ジャッキ2を後方に向け上下に並べて配設する。図中3は隔壁を示す。
【0005】
かかるオープンシールド機1を使用して施工するオープンシールド工法は、図示は省略するが、発進坑内にこのオープンシールド機1を設置して、オープンシールド機1の推進ジャッキ2を伸長して発進坑内の反力壁に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体4を上方から吊り降ろし、オープンシールド機1のテール部1c内で縮めた推進ジャッキ2の後方にセットする。推進ジャッキ2と反力壁との間にはストラットを配設して適宜間隔調整をする。
【0006】
また、発進坑は土留壁で構成し、オープンシールド機1を発進させるにはこの土留壁を一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入などで発進坑の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
【0007】
ショベル等の掘削機9でオープンシールド機1の前面または上面から土砂を掘削しかつ排土する。この排土工程と同時またはその後に推進ジャッキ2を伸長してオープンシールド機1を前進させる。この前進工程の場合、コンクリート函体4の前にはボックス鋼材または型鋼を用いた枠体よりなるプレスバー8を配設し、オープンシールド機1は後方にセットされたコンクリート函体4から反力をとる。
【0008】
そして第1番目のコンクリート函体4の前に第2番目のコンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内で吊り降ろす。以下、同様の排土工程、前進工程、コンクリート函体の4のセット工程を適宜繰り返して、順次コンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、さらにこのコンクリート函体4の上面に埋戻土5を入れる。
【0009】
なお、コンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろす際には、コンクリートブロック等による高さ調整材7をコンクリート函体4下に配設し、このテール部1c内でコンクリート函体4の左右および下部の空隙にグラウト材6を充填する。
【0010】
このようにして、オープンシールド機1が到達坑まで達したならばこれを撤去して工事を完了する。
【0011】
このようなオープンシールド工法では、前記のごとくコンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、コンクリート函体4は、オープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろされ、オープンシールド機1の前進とともに該テール部1cから出て地中に残されていくものであり、オープンシールド機1はこのように地中に残置したコンクリート函体4に反力をとって前進する。
【0012】
コンクリート函体4は鉄筋コンクリート製で、図5に示すように左側板4a、右側板4bと上床板4cと下床板4dとからなるもので、前後方向面を開口10として開放されている。図中12は、端面4eに開口し、前後のコンクリート函体4を緊結する緊結部材としてのPC鋼棒を挿入するためのシース孔、17はPC鋼棒の碇着用の箱抜きを示す。
【0013】
また、コンクリート函体4の強度を確保するため、一般的に角隅ハンチ部4fはハンチ形状としてコンクリートの厚みが大きく、開口10の形状が面取りしたようになっている。
【0014】
ところで、曲線施工を行う場合にはオープンシールド機1としては、機体を前後方向に複数に分割し、それぞれ独自に方向変換可能な中折れ構造として主に推進ジャッキ2の使用位置や本数を変えながら上下左右方向に方向制御を行い推進させる。
【0015】
図6に示すように、オープンシールド機1がコンクリート函体4に反力をとって曲線を描きながら前進する際には、左右の推進ジャッキ2でコンクリート函体4にアンバランスの力を加えることや、一点鎖線で示すように、コンクリート函体4に対してオープンシールド機1が傾くため、先頭のコンクリート函体4に加わる力は端面に対して均等ではなく偏心推力が作用し、その結果、縦列するコンクリート函体4の接合端面相互にずれが生じる。
【0016】
このように曲線施工を行う場合にはコンクリート函体4の接合面にずれを起こさせる力が特に大きく働くが、直線施工の場合においても、オープンシールド機1のローリングやピッチングなどによりコンクリート函体4端面4eに加わる力に偏りが生じ、コンクリート函体4の接合面にずれを起こさせる原因となっていた。
【0017】
このようなズレを防止するための方法としては、例えば図5に示すようにコンクリート函体4の端面4eに挿入孔13を形成し、ここにピンを挿入して、コンクリート函体4同士の接続端面同士を固定する方法も考えられる。
【0018】
なお、このようなコンクリート函体4相互にずれに対する対処の工夫は従来なされておらず、それに関連する特許文献も存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前記ピンによる結合方式では、施工個所の屈曲度合いが大きい場合などは、コンクリート函体4の接合端面にかかる分力が大きくなり、ピンでは分力に耐えきれずにピンが変形し、挿入孔13周りのコンクリートの欠けが発生してしまい、コンクリート函体同士の接合のズレを起こすおそれがある。
【0020】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、地中埋設用として順次縦列に並べられ、推進ジャッキの推力を受けるコンクリート函体において、曲線施工など特にコンクリート函体の接合端面に推力が不均一に加わる場合に、コンクリート函体同士のズレを確実に防止できるコンクリート函体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は前記目的を達成するため、第1に、地中埋設用として順次縦列に並べられ、推進ジャッキの推力を受けるコンクリート函体において、函体の前後方向の端面に凸部を一体的に形成し、隣接する函体の端面にはこの凸部に嵌合する凹部を形成し、これら凸部と凹部の嵌合で函体相互のずれ止めとしたこと、第2に、凹部および凸部は円形であり、凹部の深さおよび凸部の高さを円の半径以下とすること、第3に、凹部および凸部はコンクリート函体端面の角隅ハンチ部に設けること、第4に、凸部は先細りの台形状とすること、第5に、凸部はコンクリート函体端面を、先端部を面取りした円柱状または円錐柱状に膨出させてなるとともに、その周囲を根元をコンクリート函体端面に埋め込む鋼材で覆うこと、第6に、コンクリート函体同士を緊結させる鋼棒などの緊結部材挿入用のシース孔が中央に位置するように凸部および凹部を設けること、第7に、凹部および凸部の形成角度を、順次埋設されるコンクリート函体の列方向に追随させること、第8に、コンクリート函体は左右に傾く端面を有することを要旨とする。
【0022】
請求項1記載の本発明によれば、コンクリート函体端面に設ける凸部が、隣接するコンクリート函体の凹部に嵌合することにより、コンクリート函体同士のズレを防止することができる。そしてこの凸部はコンクリート函体の端面に一体的に形成されるから、コンクリート函体とは別部材である細いピン等を使用する場合に比べて、コンクリート函体の接合部においてズレを起こさせようとする力により確実に耐えることができる。よって、特にコンクリート函体の接合端面に対して推力が不均一に加わる曲線施工においても、コンクリート函体同士のズレを確実に防止することができる。また、凸部はコンクリート函体の端面に一体的に形成されるから、型枠によってコンクリート函体を製作する際に同時に凸部も作成することができ、別途手間がかからない。
【0023】
請求項2記載の本発明によれば、凹部および凸部は円形であるから、凸部の側面が滑らかな弧を描いて凸部側面の一部に外力が局所的にかかるのを防ぐことができ、更に凹部の深さおよび凸部の高さを円の半径以下とするようにしたから、細いピンのように局所的に力が加わりコンクリートの欠けが生じるようなこともなく、コンクリート函体同士のズレをより確実に防止することができる。
【0024】
また、凹部および凸部の形状は断面が円形であるから、据付けの際には嵌合方向を勘案する必要が無い上、凹部の深さおよび凸部の高さが円の半径以下と低く設定されているため、細い挿入孔にピンを挿入するのに比べて嵌合が容易であり、コンクリート函体を順次据付ける際、支障にならない。
【0025】
請求項3記載の本発明によれば、コンクリート函体はその強度保持のため、角隅部のコンクリートの厚みが厚くなっているが、凹部および凸部をコンクリート函体端面の角隅ハンチ部に設けるようにしたから、凹部および凸部を設けるためのスペースを充分に確保することができ、充分な大きさの凹凸部によって、更に確実にコンクリート函体端面の水平方向にかかる分力に対向することができる。
【0026】
請求項4記載の本発明によれば、凸部の形状を先細りの台形状にしたから、根元に行くほど太くなる安定した形状によって、外力に対する凸部の強度が増す。すなわち、コンクリート函体端面のおいてズレを起こさせようとする力に対する凸部の耐力が増し、コンクリート函体同士のズレをより確実に防ぐことができる。
【0027】
また、先細りの台形状は型枠としての抜きテーパが得られ、型枠によってコンクリート函体を製作する際に同時に凸部も作成するのに好適である。
【0028】
更に、凸部を台形状とすることで、コンクリート函体同士を接合する際、凹部と凸部との嵌合がより容易となり、コンクリート函体の据付がスムーズにできる。
【0029】
ところで、コンクリート函体同士のズレを起こさせようとする力を安定して支えるためには、凸部の径を大きくし、ある程度の高さを確保する必要がある。凸部を台形状にした場合には、底面積の広さに対して高さをあまり確保できない場合もあるが、請求項5記載の本発明によればこのような場合であっても、凸部の形状を円柱状とすることで、底面積の広さに関わらず高さを確保することができる。
【0030】
なお、凸部の形状を円柱状としたことで、台形状にした場合に比べて外力に対する強度が低くなるが、この周囲を鋼材で覆うことにより、充分な強度を確保することができる。鋼材の根元はコンクリート函体の端面に埋め込むので、鋼材が抜け落ちることはない。
【0031】
また、凸部の先端部分を面取り形状とすることで、コンクリート函体同士を接合する際、凹部と凸部との嵌合が容易となり、コンクリート函体の据付がスムーズにできる。
【0032】
請求項6載の本発明によれば、コンクリート函体同士を緊結させる鋼棒などの緊結部材挿入用のシース孔が中央に位置するように凸部および凹部を設けるようにしたから、緊結部材によるコンクリート函体同士の緊結を凹部および凸部が阻害することも無く、緊結部材による緊結と、凹部と凸部との嵌合の相乗効果により、コンクリート函体同士の結合がより強固となり、ズレをより確実に防止することができる。
【0033】
請求項7載の本発明によれば、コンクリート函体端面に対する凹部および凸部の形成角度を、順次埋設されるコンクリート函体の列方向に追随させるようにしたから、推進ジャッキの推力は凸部の正面から加わることとなり、凸部の側面に過大な負荷がかかることがなく、コンクリート函体同士のズレを起こさせようとする力に対してより安定して対向することができる。
【0034】
請求項8載の本発明によれば、コンクリート函体は左右に傾く端面を有するようにしたから、コンクリート函体の端面を推進ジャッキの推力を受ける方向に追随させるようにすることができる。これにより、函体端面に加わる推力の偏りが軽減され、より確実にコンクリート函体のずれを防止することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上述べたように本発明のコンクリート函体は、曲線施工など特にコンクリート函体の接合端面に推力が不均一に加わる場合に、コンクリート函体同士のズレを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のコンクリート函体の第1実施形態を示す全体斜視図で、前記従来例と同一の構成要素については、同一の符号を付したものである。なお、本発明のコンクリート函体を使用するオープンシールド工法については、前記従来例と同様であるから詳細な説明は省略する。
【0037】
コンクリート函体40は鉄筋コンクリート製で、その基本構成は前記従来例と同様に左側板4a、右側板4bと上床板4cと下床板4dとからなるもので、前後面を開口10として開放されている。
【0038】
コンクリート函体40の角隅部はハンチ形状としてコンクリート函体40の強度を高めるためにコンクリートの厚みが大きくなっており、端面4eの角隅ハンチ部4fに断面円形台形状の凸部15を膨出させて設けた。また、コンクリート函体40のもう一方の端面4eには、コンクリート函体40を縦列した際に隣接するコンクリート函体40の凸部15に対応する位置に、凸部15と嵌合する凹部14を設けた。
【0039】
これら凸部15及び凹部14は、例えばコンクリート函体40の型枠に予め凹凸を設け、この型枠を使用してコンクリート函体40を製作することにより、コンクリート函体40の製作と同時に作成することができるとともに、凸部15をコンクリート函体40本体と一体的に作成することができる。
【0040】
また、コンクリート函体40の端面4eの角隅ハンチ部4fにはコンクリート函体40同士を緊結する緊結部材としてのPC鋼棒を挿入するためのシース孔12も設けるが、シース孔12が凸部15の中央またはその近傍にくるよう、凹部14および凸部15の形成位置を設定する。図中17はPC鋼棒の碇着用箱抜きを示す。
【0041】
図2に示すように、円形台形状の凸部15は、高さL2は断面積が最も小さくなる頂面15aの直径L1の半分以下とした。
【0042】
このようなコンクリート函体40を順次埋設する方法は、従来例と同様に、掘削機による排土工程、オープンシールド機の前進工程、コンクリート函体40のセット工程を適宜繰り返して、順次コンクリート函体40をオープンシールド機の前進に伴い縦列に地中に残置していくものである。
【0043】
そして先に地中に設置されたコンクリート函体40の前方に、次のコンクリート函体40を据付ける際には、お互いの端面4eに設ける凸部15及び凹部14同士を嵌合するようにして設置する。凸部15は円形の台形状であるから、嵌合は容易であり、据付作業に支障をきたすことはない。
【0044】
その後、PC鋼棒を碇着用箱抜き17において碇着し、緊結してコンクリート函体40同士の接続を強固にする。
【0045】
オープンシールド機が曲線施工するにあたってコンクリート函体40に反力をとって前進する際、コンクリート函体40接合面においてズレを生じさせようとする力が加わるが、凸部15は根元に行くほど断面積が大きい台形状であり、コンクリート函体40の接合部分に加わる外力にも安定して耐えることができる。
【0046】
さらにその上、凹部14および凸部15の中央部においてPC鋼棒による緊結力も加わるから、より確実にコンクリート函体40の接合面におけるズレを防止することができる。
【0047】
また、凸部15は根元に行くほど断面積が大きい台形状であり、且つ、その高さL3が頂面15aの直径の半分以下であるから、全体として安定した形状になっており、従来のピンのように局所的に外力が加わることによりコンクリートに欠けが生じてしまうということがない。
【0048】
第2実施形態として図3に示すように、凸部16を円形台形状ではなく円柱状または円錐柱状に形成するようにしても良い。このようなコンクリート函体40を製作する場合も前記第1実施形態と同様に、端面4eの角隅ハンチ部4fに、凸部16と凹部(不図示)とを互いの位置が対応するようにして形成するものであるが、凸部16の形状は、先端部を面取りした円柱状とする。
【0049】
なお、前記第1実施形態と同様に、凸部16及び凹部は型枠によりコンクリート函体40を製作する際に同時に作成するものであるが、後述するように凸部16は周囲を鋼材で覆う構成であることを考慮して、その厚み分だけ凸部16部分の型枠の径を凹部の径よりも小さく設定するとともに、鋼材の根元を埋め込むための溝を端面4eに設けるようにする。
【0050】
凸部16は先端部を面取りした円柱状のコンクリート製芯部18の周囲を、鋼材よりなる鋼製筒19で覆い、鋼製筒19の根元はコンクリート函体40の端面4eの溝に嵌め込むようにして埋め込む。なお、鋼製筒19は、コンクリート函体40と一体的に形成されて外力に対抗するコンクリート製芯部18を補強するものである。
【0051】
一例として、凸部16全体として、円柱状とするとともに、先端部を面取りしてテーパ面16dを形成し、また、鋼製筒19の下端からテーパ面16dに至るまでの円筒部側面16cの高さL3は、円柱部分の直径L4の半分以下とする。
【0052】
なお、前記従来例と同様にコンクリート函体40の端面4eの角隅ハンチ部4fにはコンクリート函体40同士の緊結用のPC鋼棒を挿入するためのシース孔12も設けるが、シース孔12が凸部16の中央またはその近傍にくるよう、凸部16の突設位置を設定するものとする。
【0053】
このような凸部16を設けるコンクリート函体40の設置方法も前記1実施例と同じであり、先に地中に設置されたコンクリート函体40の前方に、次のコンクリート函体40を据付ける際には、お互いの端面4eに設ける凸部15及び凹部同士を嵌合するようにして設置する。凸部16は先端部が面取りされたテーパ面16dとなっているため、嵌合は容易であり、据付作業に支障をきたすことはない。
【0054】
その後、PC鋼棒を碇着用箱抜き17において碇着し、緊結してコンクリート函体40同士の接続を強固にする。
【0055】
オープンシールド機が曲線施工するにあたってコンクリート函体40に反力をとって前進する際、コンクリート函体40接合面においてズレを生じさせようとする力が加わるが、凸部16はその高さL3が円柱部分の直径L4の半分以下という安定形状である上に、鋼製筒19により補強されており、更に鋼製筒19の根元をコンクリート函体40の端面4eに埋め込んで安定度を高めているので、コンクリート函体40の接合部分に加わる外力にも安定して耐えることができる。
【0056】
さらにその上、凸部16の中央部においてPC鋼棒による緊結力も加わるから、より確実にコンクリート函体40の接合面におけるズレを防止することができる。
【0057】
なお、前記実施例においてはコンクリート函体40の片側の端面4eの四隅に凸部15を設け、他方の端面4eの四隅に凹部14を設けるようにしたが、一方の端面4eに凹部14と凸部15とを混在させるようにしても良い。また、凹部14と凸部15とによる嵌合と併せて、端面4eの適当な箇所に従来例と同様の挿入孔を形成し、ピンを挿入するようにしてもよい。
【0058】
また、図示はしないが、本発明のコンクリート函体40の第3実施形態として、コンクリート函体40の端面4eへの凸部の突設角度を、順次埋設されるコンクリート函体40の列方向に追随させるようにしてもよい。
【0059】
この場合、オープンシールド機が推進する際の反力は凸部の正面から加わることとなり、凸部の側面に過大な負荷がかかることがなく、コンクリート函体40同士のズレを起こさせようとする力に対してより安定して対向することができる。
【0060】
このような凸部及びそれに対応する凹部の、コンクリート函体40の端面4eに対する角度は、個々のコンクリート函体40毎に異なるものとなる。よって、コンクリート函体40を製作する際には、隣接するコンクリート函体40の端面4eを妻型枠として製作することが好ましい。
【0061】
この場合、妻型枠として使用する端面4eには剥離剤を塗布するかシートを設置して、打設コンクリートが接合されないようにすることが好ましい。
【0062】
更に本発明のコンクリート函体40の第4実施形態として、図1において一点鎖線で示すように、コンクリート函体40は左右に傾く端面4eを有するようにしても良い。
【0063】
これにより、端面4eの向きは施工曲線に追随したものとすることができ、端面4eにおける、オープンシールド機が推進する際の反力の偏りが軽減されることとなるから、凸部と凹部の嵌合によるコンクリート函体40のずれ防止に加えて、より確実にコンクリート函体40のずれを防止することができる。
【0064】
また更に、傾きを設ける端面4eに対して、凸部および凹部を垂直に形成するようにしても良いが、形成角度を順次埋設されるコンクリート函体の列方向に追随させるようにすれば、凸部および凹部の形成角度の変更または端面4eへの傾きの付与のいずれか一方のみで施工曲線に対応する場合に比べて、より安定したずれ止めの効果を得ることができる。
【0065】
すなわち、施工曲線が急カーブとなる箇所においては、凸部および凹部の端面4eに対する形成角度は、端面4e自体の傾き分を差し引いたものとすれば足り、凸部および凹部の形成角度を端面4eに対して極端に傾けることにより互いの嵌合が困難になるなどのトラブルも無く、また、凸部の根元が浮いたような不安定な状態になることも無く、凸部と凹部との嵌合によるズレ止めの効果を充分に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のコンクリート函体の第1実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】本発明のコンクリート函体の第1実施形態の要部である凸部を示す縦断側面図である。
【図3】本発明のコンクリート函体の第2実施形態の要部である凸部を示す縦断側面図である。
【図4】オープンシールド工法の概略を示す縦断側面図である。
【図5】従来のコンクリート函体の斜視図である。
【図6】オープンシールド工法の曲線施工によりコンクリート函体の接合部にズレを生じさせる力が働く様子を示す平面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 オープンシールド機 1a 側壁板
1b 底板 1c テール部
2 推進ジャッキ
3 隔壁 4 コンクリート函体
4a 左側板 4b 右側板
4c 上床板 4d 下床板
4e 端面 4f 角隅ハンチ部
5 埋戻土
6 グラウト材 7 高さ調整材
8 プレスバー 9 掘削機
10 開口 11 刃口
12 シース孔 13 挿入孔
14 凹部 15 凸部
15a 頂面
16 凸部 16a 頂面
16b 底面 16c 円筒部側面
16d テーパ面 17 箱抜き
18 コンクリート製芯部 19 鋼製筒
40 コンクリート函体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中埋設用として順次縦列に並べられ、推進ジャッキの推力を受けるコンクリート函体において、函体の前後方向の端面に凸部を一体的に形成し、隣接する函体の端面にはこの凸部に嵌合する凹部を形成し、これら凸部と凹部の嵌合で函体相互のずれ止めとしたことを特徴とするコンクリート函体。
【請求項2】
凹部および凸部は円形であり、凹部の深さおよび凸部の高さを円の半径以下とする請求項1記載のコンクリート函体。
【請求項3】
凹部および凸部はコンクリート函体端面の角隅ハンチ部に設ける請求項1または請求項2記載のコンクリート函体。
【請求項4】
凸部は先細りの台形状とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコンクリート函体。
【請求項5】
凸部はコンクリート函体端面を、先端部を面取りした円柱状または円錐柱状に膨出させてなるとともに、その周囲を根元をコンクリート函体端面に埋め込む鋼材で覆う請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコンクリート函体。
【請求項6】
コンクリート函体同士を緊結させる鋼棒などの緊結部材挿入用のシース孔が中央に位置するように凸部および凹部を設ける請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のコンクリート函体。
【請求項7】
凹部および凸部の形成角度を、順次埋設されるコンクリート函体の列方向に追随させる請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のコンクリート函体。
【請求項8】
コンクリート函体は左右に傾く端面を有する請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のコンクリート函体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−31641(P2008−31641A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203148(P2006−203148)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000189903)
【出願人】(501200491)
【Fターム(参考)】