説明

コンクリート型枠の中子におけるスペーサ部材の昇降用クランプ機構

【課題】中子枠の内部空間が小さく狭くなっても、充分な移動幅を確保できるコンクリート型枠の中子におけるスペーサ部材の昇降用クランプ機構を提供する。
【解決手段】本発明のクランプ機構15は、揺動リンク16、回転リンク17及び連結部材18より構成する。揺動リンク16の基部揺動軸をシャフト11の基端部に枢着する。揺動リンク16の揺動は中子1の外部で作用すると共に、基端は中子1の設置側端面と干渉しない位置まで近接させた。揺動リンク16の揺動端部と回転リンク17の回転端部を回動可能に軸着する。回転リンク17の基部支点軸をスリーブ12に延設して一体に形成した連結部材18の先端部に枢着した。連結部材18を前後板18Aと上面板18Bで門形に形成し、スリーブ12の基部端を抱持するように固着して連結する。揺動リンク16をこの門形内に装置して横振れを防いで進退をガイドすると共に、揺動リンク16の基端揺動軸部に上面板18Bに当接する弧状端面16Aを形成し、揺動軸への上方向の圧力による浮き上がりを抑止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製品である管ブロックを成形するのに使用するコンクリート型枠の中子に関するものであり、詳しくは、中子枠を縮小するスペーサ部材を簡単な機構で昇降すると共に、コンクリート製品を同一規格で壁面をより厚く成型可能とし、且つ容易に脱型することができるコンクリート型枠の中子におけるスペーサ部材の用クランプ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水道等の水路を形成する管ブロックは、中心部に貫通孔を有するコンクリート製品であり、この貫通孔を形成するために型枠と共に使用される中子は、コンクリート固化後に容易に製品の成型型との離型及び取り出しが可能な構造を必要とする。
【0003】
このような中子として従来は、外枠の内側に設置した内枠を抜出しやすくするため、枠面の一部をなすスペーサ部材をリンク機構と流体圧により機械的に外して周壁をすぼめ、又復帰させるものが提案されている。
又、側面方向に収縮可能とした中子枠に、ねじ棒により駆動されるリンク機構を設け、このリンク機構によって内側に引っ張って中子枠を弾性変形させ離型するものがある。
【0004】
さらに、リンク機構を利用してスペーサ部材を昇降させるものとして、中子枠とスペーサ部材間の長手方向にシャフトを配設し、シャフトにスリーブを摺動自在に嵌挿し、このスリーブとシャフトとにスペーサ部材を昇降するリンク機構を設け、スリーブとシャフトとの間にクランプ機構を介在させ、スリーブとシャフトの進退とリンク機構が連動して前記スペーサ部材を昇降させるものもある。
【0005】
そして、このクランプ機構として、例えば特開2004−1568号では、クランプ機構は、スリーブに延長して取り付け板を固着すると共に、この取り付け板の長手方向に溝を設け、回動板の駆動軸が取り付け板の先端部に回動可能に取り付けられ、シャフトの一側端に固着したピンが揺動リンク杆と連結すると共に、前記取り付け板の溝に摺動自在に挿入したものが開示されている。
【0006】
また、中子内には中子枠をスペーサ部材の昇降と共に拡縮する補助機構を有し、スペーサ部材は両端部にスペーサ部材より幅広い拡縮用ガイド板が上方に向けて突設され、この拡縮用ガイド板の両側に連結ピンが設けられ、この連結ピンは側壁部の補強板の長孔内に摺動自在に係合し、このような構成とすることにより、簡単な構成でかつ小さな駆動力で軸棒の進退を行うことを可能といている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平01‐142746号
【特許文献2】特開2004‐1568号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リンク機構でスペーサ部材を昇降させるものは、リンク杆の一端は中子枠又はスペーサ部材に枢着し、対応する他端を重合してスリーブやシャフトに枢着するものであるから、リンク杆が長いほど枢軸間の間隔が長くなるため昇降幅が大きくなり製品の離型および取り出しが容易となるものである。
【0009】
一方、自動車等の重量を受ける道路下に設置する管ブロックでは、強度が要求され壁がより肉厚のものが望まれる。
さらに、一面にスリット孔を有する製品においては、成型するスリット用枠板がスペーサ部材に垂設されており、一面が厚くなればその分スリット用枠板も長く垂下するため、スペーサ部材の昇降幅の確保が問題となる。
しかし、外形寸法が一定であるため、中子枠の空間が小さくなるのに対して、リンク機構での昇降幅を大きくしなければ、製品との離型や取り出しが出来なくなってしまうのである。
【0010】
この様な状況の下、クランプ機構の作動において、構成材が中子内へ出入りするのを避けて、中子から離れてクランプ機構を配置すれば、妻板の起倒が不能となってしまうため、中子からの突出幅にも制約を受けるのである。
一方、構成材の一部が中子内に出入りすることが避けられないとすれば、より小さくなった中子空間に出入りするスペースを確保できる構成が要求されることになる。
【0011】
そこで、本発明は中子枠の内部空間が小さく狭くなっても、充分な移動幅を確保できるコンクリート型枠の中子におけるスペーサ部材の昇降用クランプ機構を提供し、製品の一面の肉厚形成を可能にすると共に、製品の型からの取り出しも従来どおり横方向への移動を可能とし、型抜き作業の効率化を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のコンクリート型枠の中子におけるスペーサ部材の昇降用クランプ機構は、筒形の枠面をなす周壁の下面の全長に亘って開口部を有する中子枠と、この開口部に介在すると共に開口部を開閉するスペーサ部材を備え、中子枠とスペーサ部材間の長手方向にシャフトが配設され、シャフトにスリーブを摺動自在に嵌挿し、このスリーブとシャフトとにスペーサ部材を昇降するリンク機構が設けられ、スリーブとシャフトとの間にクランプ機構を介在させ、スリーブとシャフトの進退とリンク機構が連動して前記スペーサ部材を昇降させるコンクリート型枠の中子において、クランプ機構が揺動リンク、回転リンク及び連結部材より構成され、揺動リンクの基部揺動軸をシャフトの基端部に枢着したこと、揺動リンクの揺動端部と回転リンクの回転端部を回動可能に軸着したこと、回転リンクの基部支点軸をスリーブに延設して一体に形成した連結部材の先端部に枢着したこと、揺動リンクの揺動は中子の外部で作用すると共に、基端は中子の設置側端面と干渉しない位置まで近接させたことを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1記載のコンクリート型枠の中子におけるスペーサ部材の昇降用クランプ機構において、連結部材を前後板と上面板で門形に形成し、スリーブの基部端を抱持するように固着して連結し、揺動リンクをこの門形内に装置して横振れを防いで進退をガイドすると共に、揺動リンクの基端揺動軸部に上面板に当接する弧状端面を形成し、揺動軸への上方向の圧力による浮き上がりを抑止することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、軸棒の進退はクランプ機構により簡単な構成で、かつ小さな駆動力で行うことができ、メンテナンスも容易であると共にコストも安価となる。
【0015】
そして、揺動リンクの揺動は中子の外部で作用すると共に、基端は中子の設置側端面と干渉しない位置まで近接させた構成であるため、揺動リンクや回転リンクが中子内に出入りすることなく、横方向に移動するのみの連結部材の一部が中子内に出入りする可能性があるのみである。
従って、中子内に装置スペースを有するスリーブとほぼ同等の外形幅とすれば格別のスペースを空ける必要なくクランプ機構を作動することができる効果を有するのである。
【0016】
また、揺動によっても揺動リンクの基端が中子の設置側端面と干渉しない位置まで近接させて設置することで、中子からの突出幅を最短とすることが出来、妻板の起倒に支障とならない長さまで回動リンクを長く設定することにより、クランプの移動幅を長くしてリンク機構の昇降幅を大きくできる効果を有するものである。
【0017】
さらに請求項2の発明は、連結部材を前後板と上面板で門形に形成し、スリーブの基部端を抱持するように固着して連結したため、スリーブの基端部を強靭とするもので、揺動リンクの揺動によるシャフトの上下方向への影響圧を充分に吸収してシャフトとスリーブの摺動を円滑とできる効果を発揮するものである。
【0018】
また、揺動リンクをこの門形内に装置して横振れを防いで進退をガイドすると共に、回転リンクの軸受けと成る前後板を上面板で連結して補強となるため、前後板を細幅としても回転リンクの回動に耐えられ、前後板の上下を細幅と出来ることによって、基部付近が中子内に出入りするスペースを小さくスリーブと同等近くまで可能となる効果を発揮する。
【0019】
そして、揺動リンクの基端揺動軸部に上面板に当接する弧状端面を形成したため、回転リンクの下死点付近に生じる揺動軸への上方向への圧力を吸収してシャフト基部の浮き上がりを抑止でき、回転リンクの回転及びシャフトとスリーブの摺動を円滑とできる効果を発揮するものである。
【0020】
以上のように、本発明のクランプ機構によって、同一の外形を有する製品を成型する型枠において、中子のスペーサ部材の昇降幅をより大きくすることにより、中子を小さくして肉厚のある頑丈な製品の成型を可能とするものであり、製品の型枠からの取り出しも、横方向の移のみによってスリット用枠板の影響も受けずに行うことも可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のコンクリート型枠のクランプ機構の前板を省略した中子の下降時を示す簡略化した正面図である。
【図2】図1の中子の中間時の要部正面図である。
【図3】図1の中子の上昇時の要部正面図である。
【図4】本発明のコンクリート型枠の中子のクランプ機構の上面板を省略した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づき説明する。
本発明の中子1はコンクリート型枠(図示せず。)の本体と共に使用し、中空状の管ブロックの製造に使用されるものである。
【0023】
中子1は、下面の全長に亘って開口部2が形成された略円形の筒形状の中子枠3と、中子枠3の開口部2に介在し、開口部2を全長に亘って閉塞する断面が逆台形状のスペーサ部材4を具備している。
スペーサ部材4には製品の一面に設けるスリット孔を形成するスリット用枠板4Aが垂設してあり、中子枠3の天井部3Aの内側と対向するスペーサ部材4の間にリンク機構5A、5Bが設けられ、スペーサ部材4を昇降できるようになっている。
【0024】
次に、このリンク機構5A、5Bの構成について説明する。
中子枠3の天井部3Aの内側に軸受け部材8を固着し、この軸受部材8の正背面側に有する軸に上部リンク杆6A、6Bの上端部がそれぞれ回動自在に枢着9され、これと対向してスペーサ部材4上に軸受部材10を固着し、この軸受部材10に下部リンク杆7A、7Bの下端部がそれぞれ回動自在に枢着9されている。
【0025】
上部リンク杆6A、6Bと下部リンク7杆A、7Bの中間部には中子枠3内の長手方向にシャフト11が配設されている。
このシャフト11の一方(後述の進退機構側)の端部側の外周面にスリーブ12が嵌挿され、このスリーブ12にホルダー軸受14Aを装着しリンク機構5Aの上部リンク杆6Aの下端部及び下部リンク杆7Aの上端部が枢着9してある。
【0026】
他方、スリーブ12を設けた反対側でリンク機構5Bを配置したシャフト11にも同様に、ホルダー軸受14Bを設けて上部リンク杆6Bの下端部及び下部リンク杆7Bの上端部が枢着9してある。
図面では、前記リンク機構5Aと整合した昇降とするため調節パイプ13をシャフト11に一体に固定して設け、ホルダー軸受14Bを装着してある。
【0027】
また、シャフト11とスリーブ12の進退手段であるクランク機構15は、揺動リンク16、回転リンク17、及び連結部材18より構成されている。
揺動リンク16は、シャフト11の基端に設けた軸受19へ揺動可能にピン20により連結し、揺動リンク16の先部は回転リンク17の先部と回動可能にピン21で軸着してある。
【0028】
揺動リンク16の揺動は中子1の外部空間で行われるように、クランプ機構15の伸張時(製品の成型時)において、揺動リンク16の基端が中子1の外側に位置すべく、揺動が中子1の端面1Aと干渉せず、且つ出来るだけ近接させた位置でシャフト11と軸着されている。
この様に構成することで、中子1と妻板(図示せず。)との関係で進退距離を長く得られスペーサ部材の昇降に資するものとなる。
【0029】
連結部材18は前後板18Aと上面板18Bで門形に形成し、スリーブ12の基部端を抱持するように溶接固着して一体に延設してあり、延設した先部に回転リンク17をピン22で枢着すると共に、この門形内に装置した揺動リンク16の横振れを防ぐと共に、進退のガイド作用をするものである。
枢着した回転リンク17をハンドル23によって回動することで、シャフト11とスリーブ12は相対横移動してリンク機構5A、5Bを伸張・縮退させるものである。
【0030】
揺動リンク16の揺動により、揺動軸の在るシャフト11の基部が上下方向に揺動圧が生じてスリーブ12の端部に影響を及ぼすけれど、連結部材18が抱持して該部が強化されているため、充分に吸収できるものとなる。
また、揺動リンク16には、揺動軸(ピン20)の周縁に上面板へ当接する弧状端面16Aが形成してあり、回転リンク17の下死点前後に発生する揺動軸への上方向の圧力による浮き上がりを抑止する作用を奏する。
【0031】
このような構成の中子の使用方法は、コンクリート型枠本体(図示せず。)に中子1を拡張状態で装着し(図1)、コンクリートを打設してコンクリートを固化する。
固化後、中子1を縮退し脱型する時は、先ず、コンクリート型枠本体の前後枠及びクランク機構15側の妻板を転倒する。
【0032】
次に、シャフト11が中子1の前方側(クランク機構15の装着側)に進行するように、第1図の状態からハンドル23で回転リンク17を中子1の前方側に180度回動すると、連結している揺動リンク16(シャフト11)と連結部材18(スリーブ12)とは相対横移動して、各連係しているリンク機構5A、5Bは縮退し、コンクリート製品2との密着面の少ないスペーサ部材4を上昇させるのである(図2)。
【0033】
スペーサ部材4の上昇により、中子2の側壁部は弾力で内方へ屈曲縮小(実際には、縮小させる補助機構も有する。)し、中子枠3もコンクリートの密着面から離れるので、コンクリート製品を型枠本体及び中子1から横方向へ抜き出すことができるのである。
【0034】
次工程のコンクリート打設に備え、中子1を元に戻す時は、逆方向へハンドルを180度回動して戻すと、シャフト11は中子1の後方側に後退し、同時にスリーブ12は前進するため、反対にリンク機構5A、5Bが伸張し、スペーサ部材4が下降し、中子枠3の側壁部が弾力で元の状態に戻るのである(第1図)。
【0035】
以上、本発明を実施の形態を図面に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の思想を逸脱することない範囲の他の実施の形態にも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 中子
2 コンクリート製品
3 中子枠
4 スペーサ部材
5 リンク機構
6A、6B 上部リンク杆
7A、7B 下部リンク杆
8、10 軸受部材
9 枢着
11 シャフト
12 スリーブ
13 調節パイプ
14A、14B ホルダー軸受
15 クランク機構
16 揺動リンク
16A 弧状端面
17 回転リンク
18 連結部材
18A 前後板
18B 上面板
19 軸受
20、21、22 ピン
23 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形の枠面をなす周壁の下面の全長に亘って開口部を有する中子枠と、この開口部に介在すると共に開口部を開閉するスペーサ部材を備え、中子枠とスペーサ部材間の長手方向にシャフトが配設され、シャフトにスリーブを摺動自在に嵌挿し、このスリーブとシャフトとにスペーサ部材を昇降するリンク機構が設けられ、スリーブとシャフトとの間にクランプ機構を介在させ、スリーブとシャフトの進退とリンク機構が連動して前記スペーサ部材を昇降させるコンクリート型枠の中子において、
クランプ機構が揺動リンク、回転リンク及び連結部材より構成され、揺動リンクの基部揺動軸をシャフトの基端部に枢着したこと、揺動リンクの揺動端部と回転リンクの回転端部を回動可能に軸着したこと、回転リンクの基部支点軸をスリーブに延設して一体に形成した連結部材の先端部に枢着したこと、回転リンクの基部支点軸をスリーブに延設して一体に形成した連結部材の先端部に枢着したこと、揺動リンクの揺動は中子の外部で作用すると共に、基端は中子の設置側端面と干渉しない位置まで近接させたことを特徴とするコンクリート型枠の中子におけるスペーサ部材の昇降用クランプ機構。
【請求項2】
連結部材を前後板と上面板で門形に形成し、スリーブの基部端を抱持するように固着して連結し、揺動リンクをこの門形内に装置して横振れを防いで進退をガイドすると共に、揺動リンクの基端揺動軸部に上面板に当接する弧状端面を形成し、揺動軸への上方向の圧力による浮き上がりを抑止することを特徴とする請求項1記載のコンクリート型枠の中子におけるスペーサ部材の昇降用クランプ機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−148220(P2011−148220A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12126(P2010−12126)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(592011516)鶴田製作株式会社 (5)
【Fターム(参考)】