説明

コンクリート型枠

【課題】 コンクリートから型枠構成部材を簡単に剥離することができるコンクリート型枠を提供する。
【解決手段】 側板部4内にコンクリートを充填し、コンクリートから側板部4を離してコンクリート製品101を成形するコンクリート型枠1において、側板部4にコンクリート外面に接する押圧部23を設け、この押圧部23を側板部4の内側に移動する移動手段26を設ける。充填したコンクリートが硬化したら、移動手段26により押圧部23を内側に移動することにより、コンクリート製品101の外面と側板部4の内面との間に隙間ができ、この後、コンクリート製品101から側板部4を簡単に離すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート型枠に係り、特に型枠構成部材をコンクリートから容易に剥離することができるコンクリート型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の型枠は、底板部の周囲に枢着部により側板部を展開可能に枢着し、それら側板部相互を締め金具により固定して組立てた後、コンクリートを充填し、コンクリートの硬化後に締め金具を外し、側板部を展開して脱型し、コンクリート製品を成形するようにしている(例えば特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
また、型枠には、コンクリートが硬化した後、側板部である外枠を外側にスライド移動させるようにして離すことにより脱型するものがある(例えば特許文献3)。
【0004】
上記のような型枠は、構造が比較的簡易で、量産用として優れた利点を有する。しかし、製品の形状が複雑になると、側板部にコンクリートが密着し、側板部に内面に剥離材を塗布しても、側板部を容易に展開又は離することができなくなり、生産性が大幅に低下する問題がある。
【特許文献1】特開平10−337716号公報
【特許文献2】特開2002−248614号公報
【特許文献3】特開2002−326213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、コンクリートから型枠構成部材を簡単に剥離することができるコンクリート型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、型枠構成部材内にコンクリートを充填し、コンクリートから前記型枠構成部材を離してコンクリート製品を成形するコンクリート型枠において、前記型枠構成部材に設けられ前記コンクリート外面に接する押圧部と、この押圧部を前記型枠構成部材の内側に移動する移動手段とを備えるものである。
【0007】
また、請求項2の発明は、前記押圧部の内面が前記型枠構成部材の内面と同一位置に固定可能なものである。
【0008】
また、請求項3の発明は、複数の押圧部を設け、前記移動手段は複数の前記押圧部を移動するものである。
【0009】
また、請求項4の発明は、前記型枠構成部材として底板部と側板部とを備え、前記底板部側に前記側板部を枢着部により展開可能に設け、前記側板部の反枢着部側に前記押圧部を設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、充填したコンクリートが硬化したら、移動手段により押圧部を内側に移動することにより、コンクリート外面と型枠構成部材内面との間に隙間ができ、この後、コンクリートから型枠構成部材を簡単に離すことができる。
【0011】
また、請求項2の構成によれば、コンクリート製品の表面に与える影響が少ない。
【0012】
また、請求項3の構成によれば、押圧部を複数設けることにより、コンクリート外面から型枠構成部材を均等且つ効率よく引き離すことができ、しかも、共通する移動手段により簡便に操作することができる。
【0013】
また、請求項4の構成によれば、枢着部と離れた側に押圧部があるから、枢着部を中心とした梃子の原理で、押圧部の移動による引き離し効果に優れたものとなり、また、開口側に近いから、引き離し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規なコンクリート型枠を採用することにより、従来にないコンクリート型枠が得られ、そのコンクリート型枠について記述する。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。図1〜図6は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、型枠1は、型体構成部材である外枠2を備え、この外枠2は、底板部3と、長手方向の側板部4,5と、幅方向の両端側板部6,6とからなる。尚、両端側板部6は、側板部4,5の展開時に略中央側の合わせ目Kから開くものである。
【0016】
前記側板部4,5には、図5などに示すように、所定間隔毎に仕切り部7,8が中央側に向って突出され、型閉め状態で、それら仕切り部7,8の先端7S,8S同士が当接して、型枠1内が複数の充填空間9に仕切られ、各充填空間9は製品101の形状に対応する。また、充填空間9に対応して、一方の側板部4には長手方向の凸部成形部14を設け、他方の側板部5には凹部成形部5Tが設けられている。また、一方の側板部4と一体に設けた前記仕切り部7には、製品101の側面に凹部を形成する側面凹部成形部10が形成されている。
【0017】
前記底板部3はベース体11上に設けられている。また、前記側板部4,5の下部には枢着腕部12,13をそれぞれ下方に突設し、それら枢着腕部12,13の先端内側を、枢着部12A,13Aにより前記ベース体11に回動可能に連結し、これにより前記側板部4,5が外側に展開可能になっている。
【0018】
上記のような型枠1において、本実施例では、型枠構成部材である側板部4をコンクリートから剥離するための剥離装置21を備える。この剥離装置21は、前記側板部4に孔22を穿設し、この孔22を塞ぎ型枠1内に進退可能な押圧部23を備え、固定時には押圧部23の内面23Aが側板部4の内面と面一となる。尚、孔22を穿設する箇所には、円形の補強板24が側板部4に一体に設けられており、押圧部23は、側板部4と補強板24とを合わせた厚さを有し、補強板24と同心円でその内部に位置する。また、前記押圧部23の外面には、側板部4の内外方向の作動杆25が一体に設けられている。さらに、この例では、各充填空間9に対応して、前記押圧部23が設けられ、各充填空間9の型枠長手方向のほぼ中央に押圧部23を設けている。
【0019】
前記押圧部23は、移動手段26により内側に移動する。この例の移動手段26は、前記複数の押圧部23を同時に移動する。移動手段26は、側板部4の外面で、型枠1の長手方向に、該型枠1と略同一長さの駆動杆27を設け、この移動杆27には各作動杆25を挟んで前記長手方向に移動する係合移動部28を設け、この係合移動部28は各作動杆25を挟むコ字状部材29,29からなり、これらコ字状部材29,29の底部の長穴29A,29Aと前記作動杆25の孔25Aとに、頭部30A付きの伝達ピン30を挿通し、この伝達ピン30は、前記作動杆25の長さ方向に対して交差方向に穿設された前記孔25Aに挿通され、先端の孔に抜止めピン31を挿通して装着される。図4に示すように、前記長孔28Aは、長手方向一側が側板部4に近く、他側が側板部4から離れるように前記コ字状部材29に斜めに穿設されている。前記作動杆25と係合移動部28を案内する案内部材たる案内ブラケット32を設け、この案内ブラケット32は前記押圧部23を挟む両側に設けられ、それら案内ブラケット32,32は、側板部4に固着されており、前記コ字状部材29,29を挿入案内する案内孔32A,32Aが穿設され、これら案内孔32A,32Aに挿入された前記コ字状部材30,30が型枠長手方向に案内される。また、前記案内ブラケット32,32には前記押圧部23と平行に作動案内板33,33が設けられ、これら作動案内板33,33には、前記作動杆25を挿通案内する案内孔33A,33Aが穿設され、これら案内孔33A,33Aに挿入された前記作動杆25が、側板部4の交差方向でその内外方向に案内される。
【0020】
また、型枠1の端部には、前記駆動杆27を型枠長手方向に往復動する操作部34を設けられ、この操作部34は、例えば操作ハンドル35と、この操作ハンドル35の回転を前記駆動杆27の往復動に変換する往復動変換機構36とを備える。尚、このように操作ハンドル35により手動で駆動してもよいし、往復動変換機構36を電動や液体圧などの動力源を用いて駆動してもよい。
【0021】
そして、押圧部23の内面23Aが側板部4の内面と面一の状態で、作動杆25に挿通した伝達ピン30は、長孔29Aの一側にあり、この位置で固定されており、操作部34の操作により、駆動杆27を一側に移動すると、伝達ピン30が相対的に長孔29Aの他側に移動し、これにより伝達ピン30が側板部4側に近づき、押圧部23が型枠1内に押し込まれる。
【0022】
次に、前記構成につき、その作用を説明すると、型枠1を閉じた状態で、各充填空間9にコンクリートを充填し、このコンクリートが硬化したら、型開きを行う。ここで、まず、操作部34を操作して、押圧部23を型枠1内へと押し込んでやる。すると、硬化したコンクリート製品101が押圧部23により部分的に押され、コンクリート製品101と側板部4との間に僅かな隙間でき、両者の密着状態が解除され、この後は、側板部4を枢着部12Aを中心として簡単に展開することができる。
【0023】
このように本実施例では、請求項1に対応して、型枠構成部材たる側板部4内にコンクリートを充填し、コンクリートから側板部4を離してコンクリート製品101を成形するコンクリート型枠1において、側板部4に設けられコンクリート外面に接する押圧部23と、この押圧部23を側板部4の内側に移動する移動手段26とを備えるから、充填したコンクリートが硬化したら、移動手段26により押圧部23を内側に移動することにより、コンクリート製品101の外面と側板部4の内面との間に隙間ができ、この後、コンクリート製品101から側板部4を簡単に離すことができる。
【0024】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、押圧部23の内面23Aが側板部4の内面と同一位置に固定可能であるから、コンクリート製品101の表面に与える影響が少ないものとなる。
【0025】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、複数の押圧部23,23…を設け、移動手段26は複数の押圧部23,23…を移動するから、押圧部23,23…を複数設けることにより、コンクリート外面から側板部4を均等且つ効率よく引き離すことができ、しかも、共通する移動手段26により簡便に操作することができる。
【0026】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、型枠構成部材たる側板部4として底板部3と側板部4,5とを備え、底板部3側に側面部4を枢着部12Aにより展開可能に設け、側板部4の反枢着部側に押圧部23を設けたから、枢着部12Aと離れた側に押圧部23があり、枢着部12Aを中心とした梃子の原理で、押圧部23の移動による引き離し効果に優れたものとなり、また、上部の開口側に近いから、引き離し易くなる。
【0027】
また、実施例上の効果として、駆動杆27の移動方向に対して斜設された長孔29Aと、これに係合する伝達ピン30とにより、駆動杆27の往復動をこれと交差する押圧部23の往復動に変換することにより、複数の押圧部23を確実に駆動することができる。
【実施例2】
【0028】
図7は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、剥離装置21の変形例を示し、作動杆25は単独で駆動し、前記側板部4の外側に案内筒体41を設け、案内筒体41は前記案内板33,33に固定され、これにより側板部4に固定されており、前記案内筒体41の内部に雌螺子部41Aを形成し、この雌螺子部41Aに螺合する雄螺子部25Bを、前記作動杆25に形成し、作動杆25の外端側に操作部たるバーハンドル42を挿通する。また、作動杆25の先端を、回動連結部25Cにより、前記押圧部23の補強板24に回動可能に連結する。さらに、作動杆25の先端側には前記案内板33に当接する内側ストッパ43が設けられ、前記内側ストッパ43が前記案内板33に当接した位置で、押圧部23の内面23Aは側板部4の内面と面一となる。尚、前記作動杆25及び案内筒体41などにより移動手段26Aを構成している。
【0029】
そして、押圧部23の内面23Aが側板部4の内面と面一の状態で、型枠1内にコンクリートを充填し、このコンクリートが硬化したら、型開きを行う。ここで、まず、バーハンドル42を操作し、作動杆25と押圧部23とは回動連結部25Cにより連結されているから、作動杆25のみが回転し、押圧部23を内側へと押し付け、これにより硬化したコンクリート製品101が押圧部23により部分的に押され、コンクリート製品101と側板部4との間に僅かな隙間ができ、両者の密着状態が解除され、この後は、枢着部12Aを中心として側板部4を簡単に展開することができる。
【0030】
このように本実施例では、型枠構成部材たる側板部4に設けられコンクリート製品101の外面に接する押圧部23と、この押圧部23を側板部4の内側に移動する移動手段26Aとを備えるから、請求項1,2及び4に対応して、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0031】
また、実施例上の効果として、螺子の回転により押圧部23を往復動するから、位置調整が容易で、且つ効率よく押圧部23の押し込み力を得ることができる。
【実施例3】
【0032】
図8は本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、剥離装置21の変形例を示し、押圧部23に、回動連結部25Cにより、作動杆25の先端を回動自在に設けられ、側板部4に固定したブラケット51に案内筒体41を固着し、この案内筒体41の雌螺子部41Aに、作動杆25の雄螺子部25Bを螺合し、作動杆25の基端側に回動操作部52を設けており、回動操作部52を操作することにより、押圧部23が側板部4の内側に移動する。尚、前記作動杆25及び案内筒体41などにより移動手段26Aを構成している。
【0033】
この例においても、請求項1,2及び4に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0034】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、剥離装置を側板部に設けたが、底板部に設けてもよい。また、押圧部の内面を側板部の内面から突出した状態でコンクリートを充填するようにしてもよい。さらに、隣り合う充填空間同士を部分的に連結するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1を示す型枠要部の断面図である。
【図2】同上、一部を切欠いた型枠の側面図である。
【図3】同上、押圧部及び移動手段回りの断面図である。
【図4】同上、移動手段の要部の断面図である。
【図5】同上、型枠の要部の平面図である。
【図6】同上、端部側を含む型枠の平面図である。
【図7】本発明の実施例2を示す型枠要部の断面図である。
【図8】本発明の実施例3を示す型枠要部の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 型枠
2 外枠
3 底板部(型枠構成部材)
4 側板部(型枠構成部材)
5 側板部(型枠構成部材)
21 剥離装置
23 押圧部
23A 内面
25 作動杆
26 移動手段
26A 移動手段
101 コンクリート製品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠構成部材内にコンクリートを充填し、コンクリートから前記型枠構成部材を離してコンクリート製品を成形するコンクリート型枠において、前記型枠構成部材に設けられ前記コンクリート外面に接する押圧部と、この押圧部を前記型枠構成部材の内側に移動する移動手段とを備えることを特徴とするコンクリート型枠。
【請求項2】
前記押圧部の内面が前記型枠構成部材の内面と同一位置に固定可能なことを特徴とするコンクリート型枠。
【請求項3】
複数の押圧部を設け、前記移動手段は複数の前記押圧部を移動することを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート型枠。
【請求項4】
前記型枠構成部材として底板部と側板部とを備え、前記底板部側に前記側板部を枢着部により展開可能に設け、前記側板部の反枢着部側に前記押圧部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンクリート型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−326944(P2006−326944A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151657(P2005−151657)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(591273292)株式会社徳利 (10)
【Fターム(参考)】